鉄道設計技士試験模範答案 鉄道車両 業績論文2「電気機関車の設計」
1.業務概要、実施時期
〇〇〇〇形電気機関車(保線運用や電車回送に使用する経済性の高い小型機関車)の設計を実施した。成果として、開発コストとLCCの低減、電磁両立性の確保を実現した。
20〇年4月から20〇年4月。
2.私自身の役割
ランニングコスト低減のため汎用型(旅客車用)機器を利用し、旅客車と保守手法を共通化する開発責任を担った。
3.技術上の課題、解決方策及びその理由
3.1 技術上の課題、問題点
機関車用機器は、特殊性が高くそのまま使っても又は、小型化するとしても開発コストがかさむ。このため設計の自由度の高い汎用機器を用いたコンパクト設計をすることが課題であった。
しかし問題は、
① 機関車用の仕様容量となると大型化し、機械室配置を横配置にせざるを得ない。その結果、機械室が高温となるため、主制御器やブレーキ受信器などの電子機器寿命が短くなる。
② 機械室が狭くなるため、密集して配置すると信号設備の継電器誤動作や主制御器やブレーキ受信器の誤動作など誘導障害が発生する恐れがあった。
3.2 私自身が採った方策とその理由
① 旅客車用機器の高密度配置設計
旅客車用サイズの小型の台車、主電動機のほかに、小型の補助電源一体型の車両制御装置等をカスタマイズして、高密度に配置する。旅客車用は機関車用と比べ、汎用性が高いために新たな開発コストが不要だからである。
② 自然換気による機械室の温度低減
機械室内機器を許容温度(50℃)以下に保つため、温度差換気による冷却を採用した。機器枠を上下2段とし、放熱機器の上段配置、屋根排気口と車体側面下部に低圧損のSGWフィルタによる吸気口を設け、冷却に必要な外気流量70/minの流量を確保した。これらの理由は、機関の環境温度を下げ、長寿命化させるためである。
③ 電磁ノイズの低減
踏切制御子、ATS関連機器、軌道回路の妨害許容値4mV以下を確保するため、放射ノイズ対策として、金属箱にリアクトル機器を納めた。又、伝導ノイズ対策として、アルミ溝型材の機器吊枠の内側を電線管に見立て、ケーブル種別毎に配線した。これらの理由は、電磁ノイズの影響を、金属反射原理によりシールドして、他の機器動作に影響を与えないためである。
4.技術的成果
①旅客車用機器の使用による開発コストの8千万円低減とLCCの2百万円(定期検査1回当り)の低減、②機械室温度の低減による電子機器の延命、③電磁ノイズの低減による信号設備の安定動作の3点を達成した。
5.現時点で技術的に改善すべき点
保線運用において、上り勾配でバラスト散布を行ったところ、機械室内機器が許容温度を越える64℃まで上昇した。この温度上昇は長時間の低速(5km/h一定)走行によるものであり、機器発熱の冷却に必要な外気流量が不足したためである。
当初設計は下りの保線運用と限定していたが、実際の運用では、均一に砂利散布するため、(下りのブレーキではなく)上り走行が多用され、この結果機関発熱が当初設計の150%となっていた。現時点では機械換気により、上り運転時は外気流量を当初設計の185%となるようにしている。設計にあたり、保線運用に関する現場ニーズを精査し設計仕様を決定すべきであった。