R1/2019年 建設・鋼構造・コン Ⅲ-4
問題文 Ⅲ-4
平成27年末に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が締結され、これを踏まえ我が国では二酸化炭素等の温室効果ガスの中長期削減目標が示され、この達成に向けて取り組むことが定められている。建設分野のうち、コンクリート構造物の企画・設計・施工・維持管理・更新に至るまでの活動において、多くの二酸化炭素等の温室効果ガスが排出されている現状を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)二酸化炭素等の温室効果ガスを削減していくために、コンクリートに携わる技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
模範解答1 (簡易答案1) 添削履歴6 作成日2020/6/3 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート施工
(1)温室効果ガス削減のための課題
①設計:コンクリートの配合設計において、セメントの一部をフライアッシュや高炉水砕スラグに置き換えることで、セメントの使用割合を減らし、セメント製造過程におけるCO2排出量を削減する。
②維持管理:高強度コンクリートの使用や維持管理サイクルの転換により、コンクリート構造物の長寿命化を図り、更新に伴う温室効果ガスの排出時期を遅らせる。
③更新:コンクリート構造物の解体によって発生するコンクリート塊を再生砕石に再資源化することで、セメント水和物の炭酸化を通じてCO2を固定化する。
(2)最も重要と考える課題とその解決策
課題:②維持管理:コンクリート構造物の長寿命化
解決策①:高強度コンクリートの使用
・高強度コンクリートの使用により、耐久性を向上させる。
・加えて、高強度コンクリートの使用により、構造物のスリム化が可能となり、構造断面を低減することができるため、コンクリート使用量の削減にもつながる。
解決策②:プレキャスト部材の使用
・プレキャスト部材は、工場製作のため、天候や外気温に左右される現場打ちコンクリートに比べ安定した高品質な構造物とすることができる。また、鋼製型枠を用いるため、木製型枠の使用後の廃棄によるCO2排出がなくなる。
解決策③:維持管理を「事後保全」から「予防保全」に転換
・計画段階で劣化の前兆を捉えるための点検・調査方法、評価・判定方法を検討・決定し、劣化が生じる前や劣化が軽微な段階で対策を行い、必要な耐久性を維持する。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策
共通リスク:小規模構造物ではスケールメリットが少なく、高強度コンクリートやプレキャスト部材の使用による初期コストの増大分を、補修コスト減少分でキャンセルできず、約2割の高コストとなる。
対策:対象構造物の用途や計画供用期間に応じて、高強度コンクリート、プレキャスト部材使用の要否を判断し、予防保全による効果が最大となるよう、効率的な点検頻度、点検項目の設定、補修・補強水準の設定を行い、LCCを向上させる。
解説
解決策③:維持管理を「事後保全」から「予防保全」に転換
・従来の損傷が顕在化してから補修や更新等を行う「事後保全」から、損傷等が顕在化する前に補修・補強等を行うことで長寿命化させる「予防保全」に転換する。
■この提案はほとんど言葉の意味を言葉に下にすぎません。上記を行うにはどんな事をするのか。予防保全とは何が大変なのか。誰でも簡単にすぐできるものか。本質的なことを表現しないと技術士の提案とは言えません。
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(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策
共通リスク:高強度コンクリートやプレキャスト部材の使用による初期コストの増大分を、大規模構造物ではスケールメリットと予防保全による補修コスト減少分でキャンセルできるが、小規模構造物ではスケールメリットが少なく、補修コスト減少分でキャンセルできず、約2割の高コストとなる。
■ここはリスクを表現するところなので、リスクにならない大規模構造物のケースに言及しても始まりません。
このほかこの答案の添削指導では、次のようなことを申し上げました。
・企画・設計・施工・維持管理・更新の中から、項目が重ならないように課題を抽出する。
・課題は部分的・手段的なものではなく、本質的なもの、影響の大きなものを取り上げる。
・課題の内容は、その原理・技術まで言及する。(原理・技術の裏付けがなければ絵に書いた餅である)
・問3は問2の「解決策」に由来するリスクであり、無関係な原因を考えないこと。
・問3は「共通」したリスクを述べるのであって、解決策それぞれの答えは不要。
・「なぜ」そのリスクが発生するのか、本質的なことを述べること。
・複数の目的や効果を混同せず、主要な内容を1つに絞って述べる。
・解決策は具体的に表現すること。
・回りくどい表現、や前置きは不要。述べたいことを単刀直入・簡潔に記載する。
模範解答1 (簡易答案2) 添削履歴0 作成日2020/6/5 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート施工
(1)温室効果ガス削減のための課題
①設計:コンクリートの配合設計において、セメントの一部をフライアッシュや高炉水砕スラグに置き換えることで、セメントの使用割合を減らし、セメント製造過程におけるCO2排出量を削減する。
②維持管理:高強度コンクリートの使用や維持管理サイクルの転換により、コンクリート構造物の長寿命化を図り、更新に伴う温室効果ガスの排出時期を遅らせる。
③更新:コンクリート構造物の解体によって発生するコンクリート塊を再生砕石に再資源化することで、セメント水和物の炭酸化を通じてCO2を固定化する。
(2)最も重要と考える課題とその解決策
課題:②維持管理:コンクリート構造物の長寿命化
解決策①:高強度コンクリートの使用
高強度コンクリートを使用することで、耐久性を向上させ、構造物の長寿命化を図る。
加えて、高強度コンクリートの使用により、構造物のスリム化が可能となり、構造断面を低減することができるため、コンクリート使用量の削減にもつなげることができ、温室効果ガス排出量の削減効果をより高めることができる。
解決策②:プレキャスト部材の使用
プレキャスト部材は、工場製作のため、天候や外気温に左右される現場打ちコンクリートに比べ、安定した高品質な構造物とすることができ、構造物の長寿命化が図られる。
また、プレキャスト部材の製作には鋼製型枠を用いるため、現場打ちで通常使用する木製型枠の使用後の廃棄によるCO2排出がなくなる。
解決策③:維持管理を「事後保全」から「予防保全」に転換
計画段階で劣化の前兆を捉えるための点検・調査方法、評価・判定方法を検討・決定し、劣化が生じる前や劣化が軽微な段階で対策を行い、必要な耐久性を維持・確保し長寿命化を図る。
劣化が顕在化したり、劣化が甚大な段階での補修と比較して、広範囲のコンクリート不具合箇所の除去及びコンクリート打換えが不要となるため、温室効果ガス排出量の削減効果がより高くなる。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策
共通リスク:小規模構造物ではスケールメリットが少なく、高強度コンクリートやプレキャスト部材の使用による初期コストの増大分を、補修コスト減少分でキャンセルできず、約2割の高コストとなる。
対策:対象のコンクリート構造物の用途や建設される環境、計画供用期間に応じて、高強度コンクリート、プレキャスト部材使用の要否を判断する。
加えて、予防保全による効果が最大となるよう、効率的な点検頻度、点検項目の設定、補修・補強水準の設定を行うことで、ライフサイクルコストを悪化させることなく、対象構造物の長寿命化を図る。
解説
【添削で指摘された主な事項】
・企画・設計・施工・維持管理・更新の中から、項目が重ならないように課題を抽出する。
・課題は部分的・手段的なものではなく、本質的なもの、影響の大きなものを取り上げる。
・課題の内容は、その原理・技術まで言及する。(原理・技術の裏付けがなければ絵に書いた餅である)
・問3は問2の「解決策」に由来するリスクであり、新たな原因を考えないこと。
・問3は「共通」したリスクを述べるのであって、解決策それぞれの答えは不要。
・「なぜ」そのリスクが発生するのか、本質的なことを述べること。
・複数の目的や効果を混同せず、内容を1つに絞り、述べる。
・解決策は具体的に表現すること。その対策がどう課題の解決につながるかが焦点である。
・回りくどい表現、や前置きは不要。述べたいことを単刀直入・簡潔に記載する。
模範解答1 (完成答案) 添削履歴1 作成日2020/6/11 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート施工
(1)温室効果ガス削減のための課題
①設計:コンクリートの配合設計において、ポルトランドセメントの一部を石炭火力発電所で排出されるフライアッシュや、製鉄所で排出される高炉水砕スラグ等を用いた混合セメントに置き換えた低炭素型コンクリートを使用する。
これにより、ポルトランドセメントのクリンカ構成比が大幅に低減されるため、結果的にクリンカ製造過程で発生するCO2排出量の削減が可能になる。
②維持管理:高強度コンクリートの使用や維持管理サイクルの予防保全への転換により、コンクリート構造物の長寿命化を図る。
その結果、更新時期を延ばすことができるため、更新に伴う温室効果ガスの排出時期を遅らせることとなり、コンクリートのライフサイクルにおけるCO2排出量のうち、更新時に発生する約6%のCO2排出量の削減が可能になる。
③更新:更新に伴いコンクリート構造物の解体によって発生する大量のコンクリート塊を再生砕石に再資源化し、路盤材や再生骨材コンクリートとして活用することで、天然砕石の採取・運搬によるCO2排出量の削減につながる。また、解体後のコンクリート塊の破砕によりコンクリートの比表面積の増大、炭酸化が進行していない新破断面の出現により、炭酸化によるCO2固定速度が増大し、約8.5kg/tのCO2固定量となる。
(2)最も重要と考える課題とその解決策
課題:②維持管理:コンクリート構造物の長寿命化
解決策①:高強度コンクリートの使用
高強度コンクリートを使用することで、水密性が向上し、ひび割れの防止につながる。これにより耐久性を向上させることで、構造物の長寿命化を図る。
加えて、高強度コンクリートの使用により、構造物のスリム化が可能となり、構造断面を約3割低減することができることで、コンクリート使用量の削減につながる。その結果、削減したコンクリート1m3あたり約270kgのCO2排出量の削減効果が得られる。
解決策②:プレキャスト部材の使用
プレキャスト部材は規格が標準化されており、工場での屋内製作のため、天候や外気温に左右される現場打ちコンクリートに比べ、安定した高品質な構造物とすることができ、構造物の長寿命化が図られる。
また、プレキャスト部材の製作には鋼製型枠を用いるため、現場打ちコンクリート施工で通常使用する木製型枠の使用後の廃棄により排出される約1kg/tの温室効果ガスを削減することができる。
解決策③:「予防保全」への維持管理サイクルの転換
まず、計画段階で劣化の前兆を捉えるための点検・調査方法、評価・判定方法を検討・決定する。
施工後の維持管理段階では、その方法にしたがって劣化が生じる前や劣化が軽微な段階で対策を行い、そのサイクルを繰り返すことで対象コンクリート構造物が必要とされている耐久性を維持・確保し、長寿命化を図る。
劣化が顕在化した段階や、劣化が甚大な段階での補修を行う「事後保全」と比較すると、広範囲のコンクリート不具合箇所の除去およびコンクリート打換えが不要となるため、温室効果ガス排出量の削減効果がより高くなる。
(3)共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策
共通リスク:小規模のコンクリート構造物ではスケールメリットが少なく、高強度コンクリートやプレキャスト部材の使用による初期コストの増大分を、予防保全による補修コスト減少分でキャンセルできず、約2割の高コストとなり、ライフサイクルコストを悪化させる可能性がある。
対策:対象のコンクリート構造物の用途や建設される環境、計画供用期間に応じて、高強度コンクリート、プレキャスト部材使用の要否を判断する。
加えて、予防保全によるライフサイクルコストの低減効果が最大となるよう、対象のコンクリート構造物の用途や環境に応じた効率的な点検頻度、点検項目の設定、補修・補強水準の設定を行う。
その結果、ライフサイクルコストを悪化させることなく、対象構造物の長寿命化を図る。
解説
この答案の添削でご指摘申し上げた主な事項は次のようなことでした。
・企画・設計・施工・維持管理・更新の中から、項目が重ならないように課題を抽出する。
・課題は部分的・手段的なものではなく、本質的なもの、影響の大きなものを取り上げる。
・課題の内容は、その原理・技術まで言及する。(原理・技術の裏付けがなければ絵に書いた餅である)
・問3は問2の「解決策」に由来するリスクであり、新たな原因を考えないこと。
・問3は「共通」したリスクを述べるのであって、解決策それぞれの答えは不要。
・「なぜ」そのリスクが発生するのか、本質的なことを述べること。
・複数の目的や効果を混同せず、内容を1つに絞り、述べる。
・解決策は具体的に表現すること。その対策がどう課題の解決につながるかが焦点である。
・回りくどい表現や前置きは不要。述べたいことを単刀直入・簡潔に記載する。
・改行は多くしすぎない。続けてよいところは、接続詞や転換の言葉でつないで1段落とする。
・効果や手段は定量的に数値で表す。
・技術応用の背景となっている、原理、法則、化学反応名や方策名を専門用語で表す。
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このほか答案作成に役立ったことを参考のために挙げておきます。
(1)課題の分析のしかたについて
問題文で与えられた分野の中から、項目が重ならないように課題を抽出する。 (=多面的な観点)
課題の内容は、その原理・技術まで言及する。(原理・技術の裏付けがなければ絵に書いた餅である)
課題は部分的・手段的なものではなく、本質的なもの、影響の大きなものを取り上げる。
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
解決策は具体的に表現すること。その対策がどう課題の解決につながるかが焦点である。
技術応用の背景となっている原理、法則、化学反応名や方策名を専門用語で表す。
定量的に数値で表す。
(3)リスクの導き方、書き方などについて
「なぜ」そのリスクが発生するのか、本質的なことを述べる。
問2の「解決策」に由来するリスクであり、新たな原因を考えないこと。
「共通」したリスクを述べるのであって、解決策それぞれの答えは不要。
複数の目的や効果を混同せず、内容を1つに絞り、述べる。
(4) 少ない添削回数で正解に到達するために心がけたこと
音声ガイドを聞き返す、メール指導を読み返すことで、講師の添削趣旨を理解できているか、問いかけに100%応えられているかを確認しながら、論文を修正した。
回りくどい表現や前置きは不要。述べたいことを単刀直入・簡潔に記載する。
改行は多くしすぎない。続けてよいところは、接続詞や転換の言葉でつないで1段落とする。
模範解答2 (簡易答案1) 添削履歴6 作成日2020/6/14 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート構造
1.温室効果額削減に向けた課題
①低排出型セメント材料の利用促進(企画・設計段階)
・世界のCO2排出の5%はセメント製造時に由来。
⇒製造時CO2の少ない高炉セメント等の利用促進が課題
②予防保全による長寿命化の推進(維持管理段階)
・多くの自治体は事後保全のため、大規模修繕による大量のセメント使用や、工事
長期化に伴う建機由来のCO2排出が増大
⇒維持管理サイクルの確立による予防保全にて、長寿命化の推進が課題
③解体コンクリートの現場内再利用(施工・更新段階)
・解体したコンクリート塊の運搬に伴いCO2が排出される
⇒現場内再利用による解体コンクリートの運搬量削減が課題
2.最も重要と考える課題と解決策
最も重要な課題:予防保全による長寿命化の推進
解決策①:モニタリング技術による変状の早期検知と早期対処
・現状の劣化状況を踏まえ観測対象部位やパラメータを設定し、センサによる常時
監視にて、外観目視では得られない変状を定量的かつタイムリーに検知する。
これにより変状の検知および対策を早期に実施し、大規模修繕を抑止する。
解決策②:確率論的手法による劣化予測
・マルコフ連鎖モデルにより、点検データを用い健全度の推移確率を算出し、確率論的に劣化予測を行う。これにより管理橋梁群の部位や劣化機構毎の補修時期の選定や、中長期的な予算確保による予防保全の遅滞なき執行が可能。
3.解決策に共通して生じるリスクと対策
(1)共通リスク
解決策は共に現時点の主たる劣化機構を前提とするため、将来的に劣化機構が変動
すれば、結果の妥当性や信頼性が低下する。
例えば塩害環境下の道路橋では、低交通地帯では塩分浸透や鉄筋腐食の劣化予測や
変状観測を行うが、交通需要の変化に伴い重交通地帯となれば床版疲労等の劣化予
測や変状観測を行う必要がある。このように交通量等の外部条件が変動すれば、
主たる劣化機構も変化し、適用すべきモニタリング手法や劣化予測手法が異なる。
(2)対策
定期点検毎に外観目視等の結果から主たる劣化機構を判別し、モニタリングや劣化
予測の妥当性評価を行う。
解説
添削指導ではこのようなことをコメントいたしました。
・解決策の実施に伴い直接的に生じるリスクを挙げる。
解決策を実施する人的能力や実施体制、環境等に起因するなど、副次的に生じるリスクは、回答として不適。
・記載内容は抽象的な表現は避け、誰が読んでも理解できる文章に。
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6/12添削
(1)共通リスク
前提条件の経時変化に伴い、変状見落としや劣化進展の過小評価のリスクがある。
例えば、主な劣化要因が塩害の道路橋にて鉄筋腐食のモニタリングや劣化予測を実施する一方で、その後工場建設等により大型車交通量が恒常的に増加すれば、耐荷力に影響する床版の疲労や主桁の曲げ損傷を見落とし、施設全体の劣化度を過小評価する。
経時変化に依存するものなら、その予測パラメーターや予測モデルの違いによる誤差をリスクとして取り上げる。「見落としや過小評価」という人的能力不足による不手際では、問が求める「(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスク」ではないので×です。
大型車交通量は別要因であって、解決策によって生じうるリスクではありません。
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6/10添削
(1)共通リスク 前置き↓
・両解決策は、観測対象とする部位や劣化機構の選定、劣化予測に用いる施設全体の健全度を示す代表部位の選定が最初に必要となる。しかし、その後に外力条件や環境条件の変化等に伴い当初想定していない部位や劣化機構が支配的となった場合、損傷の見落としや劣化進行の過小評価をもたらすリスクが生じる。
前置きは1行程度に簡潔に書くように。リスクの内容↑が抽象的で意味不明です。そこで、リスクの説明に、例えばどんな部位が相当するか、橋梁でも構いませんので構造物例を挙げて、リスクの部位、現象を示してください。
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6/6添削
2.最も重要と考える課題と解決策
最も重要な課題:長寿命化の推進
解決策①:モニタリング技術による変状の早期検知と早期対処
・モニタリングセンサによる常時監視により、外観目視では得られない変状を
定量的かつタイムリーに検知し、早期対処による効果的な予防保全を実施
予防保全がなぜ、事後保全より良いのか。肝心な提案趣旨、根拠の説明が抜けています。それは大規模修繕による出費を回避すること
解決策②:確率論的手法による劣化予測
・マルコフ連鎖モデル等により将来の健全性の低下を予測することで、最適な補修時期の選定や、計画的な予算確保による予防保全の遅滞なき執行が可能・・
確率論的に取り組むのはともかく、どのように巧みに劣化予測するか技術提案がありません。あるのは①とダブリ
3.解決策に共通して生じるリスクと対策
(1)共通リスク
①複数ある観測・予測手法の中で最適な手法の選定や、使用データの加工等は技術者の経験や勘によるところが大きい。よって分析・予測値の精度は技術者の技量により大きく変動するリスクがある。
経験や勘に頼るなんて、どれだけ怪しい技術者なのかと思います。そもそもこのような問題を解決するための技術なのに、これでは本末転倒。常識を疑われます。最低限、基準に基づいて、マニュアルを見ながらやることとしてください。
⇒劣化予測や一部のモニタリング技術は、データの加工・補正や手法選定、実施方法、分析方法等の完全なマニュアルはありません。それが現実です。各技術者がケースバイケース且つ手探りでやっているので技術者差分が大きいのです。
内容が「予防保全」に関係する本質的な事項に絞り込むように。
「予防保全」をすればするほど、ある時大きな問題が発生することは何か?
添削の直しの弊害が出ています。本質に気づくことです。
6/3添削
解決策①:AIの活用 建設工学の応用ではないので好ましくありません。建設技術のレベルの高さをアピールすることになりません。
・AIにより、本来高度な知識を要する劣化事象の診断を支援し、健全度の診断精度を向上および平準化。結果、適切な補修工法や時期の判断が可能
解決策②:モニタリング技術の導入 ←モニタしてどうするのか?手段だけでなく目的まで言う。
・モニタリングセンサによる常時監視により、外観目視では得られない変状を定量的かつタイムリーに検知し、早期対処による効果的な予防保全を実施
解決策③:確率論的手法による劣化予測
・マルコフ連鎖モデル等により施設の健全性低下を予測することで、最適な補修時期の選定や、計画的な予算確保による予防保全の遅滞なき執行が可能
3.解決策に共通して生じるリスクと対策
【リスク】出力値の信頼性の不足 ←添削の繰り返しで、正解の領域外に発散しています
・AIの学習不足、モニタリングの測定・分析・閾値設定方法の不備、耐久性や供用環境が異なる施設の統合的劣化予測の実施等、初期条件や適用方法に不備があれば実態に沿わない結果が出力され、長寿命化効果の期待値を得られない
6/1コメント
【共通リスク1】既往情報未活用による調査コストの増大
既往情報が活用されないのはどうしてですか。
アセットマネジメントをやればやるほど、またモニタリングをやればやるほど、既往情報は使われなくなるのですか。
これは解決策に由来して生じたリスクではありません
・解決策①:竣工図や維持管理記録等を確認できず、本来不要な配合分析や強度試験、復元設計等の詳細調査を実施するリスク
・解決策②:既往の補修・補強履歴等を確認できず、本来不要なモニタリングや、モニタリング実施のための事前調査を実施するリスク
⇒対策:情報のデジタル化とDB化、管理者毎に異なるデータ様式の統一、CIM活用による調査・施工・維持管理までのデータ集約
【共通リスク2】発注機関技術者不足による解決策の実行困難化
・解決策①②:技術系職員のいない自治体では、維持管理サイクルを実施するため の技術的および運用的な意思決定ができない
⇒対策:国の技術相談窓口や修繕代行事業活用、地域一括発注方式の活用、民間の活用(CM・発注者支援)、研修制度充実化による人材育成
これは発注機関技術者不足という提案とは別な要因です。リスクがないからと言って新たに原因を探し出してリスクを作ったら×です。
模範解答2 (簡易答案2) 添削履歴1 作成日2020/6/17 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート構造
1.温室効果額削減に向けた課題
①低排出型セメント材料の利用促進(企画・設計段階)
世界のCO2排出の5%はセメント製造時に由来するため、製造時のCO2排出の少ない高炉セメントやフライアッシュ等の利用促進が課題である。
②予防保全による長寿命化の推進(維持管理段階)
多くの自治体は事後保全のため、施設の大規模修繕による大量のセメント使用や工期の長期化に伴う建機由来のCO2排出が増大する。そのため、維持管理サイクルの確立による予防保全にて、施設の長寿命化の推進が課題である。
③解体コンクリートの現場内再利用(施工・更新段階)
解体したコンクリート塊の運搬に伴いCO2が排出される。そのため、解体コンクリートの現場内再利用による運搬量の削減が課題である。
2.最も重要と考える課題と解決策
「予防保全による長寿命化の推進」を最も重要な課題として挙げる。
(1)モニタリング技術による変状の早期検知と早期対処
現状の劣化状況を踏まえ観測対象部位やパラメータを設定し、センサによる常時監視にて、外観目視では得られない変状を定量的かつタイムリーに検知する。これにより変状の検知および対策を早期に実施し、施設の大規模修繕を抑止する。
(2)確率論的手法による劣化予測
マルコフ連鎖モデルにより、点検データを用い健全度の推移確率を算出し、確率論的に劣化予測を行う。これにより管理橋梁群の部位や劣化機構毎の補修時期の選定や、中長期的な予算確保による予防保全の遅滞なき執行が可能となる。
3.解決策に共通して生じるリスクと対策
(1)共通リスク
解決策は共に現時点の主たる劣化機構を前提とするため、経済成長や都市化等の不確定要素に起因して自動車交通量等の外部条件が変動すれば、モニタリングや劣化予測で得られる結果の信頼性が低下し、実態に即した予防保全が実施不可となる。
(2)対策
定期点検毎に外観目視等の結果から診断した主たる劣化機構を確認し、モニタリングや劣化予測の妥当性評価を行うとともに、必要に応じ手法を見直す。また維持管理業務において、道路使用状況や気象状況等の外部環境の変化について定期的な調査およびデータの蓄積を行い、施設の維持管理計画や長寿命化修繕計画に反映する。
解説
6/16添削 前置き文は極力短くし、リスクを単刀直入にまとめる。
模範解答2 (完成答案) 添削履歴3 作成日2020/6/29 建設部門 科目:鋼コン 専門事項 コンクリート構造
1.温室効果額削減に向けた課題
①低排出型セメント材料の利用促進(企画・設計段階) 世界のCO2排出の5%はセメント製造時に由来しており、普通セメントで760kg-CO2/tのCO2を排出している。一方、高炉セメントB種は480kg-CO2/t、フライアッシュセメントは630kg-CO2/tと製造時のCO2排出量が普通セメントと比較してそれぞれ38%減、18%減と少ない。そのため、これら低排出型セメントの利用促進が課題である。
②予防保全による長寿命化の推進(維持管理段階) 多くの自治体ではインフラ等の管理施設を事後保全的に維持管理しており、結果的に修繕規模が大きくなる。施設の大規模修繕時には大量のセメント使用や工期の長期化に伴う建機由来のCO2排出が増大するため、予防保全への転換に基づく施設の長寿命化の推進が課題である。
③解体コンクリートの運搬量削減(施工・更新段階) コンクリート構造物の新設や更新時において、発生する解体コンクリート塊の処分量に応じ、運搬車両の排気ガスとしてCO2が排出される。そのため、現場内再利用等による解体コンクリート塊の運搬量の削減が課題である。
2.最も重要と考える課題と解決策
「②予防保全による長寿命化の推進」を最も重要な課題として挙げる。
(1)モニタリング活用による変状検知と修繕の早期化
自然然電位観測による鉄筋発錆有無や、変位観測や加速度から算出する固有周期観測により、ひび割れや鉄筋腐食進展に伴う剛性低下をモニタリングする。観測部位やパラメータは施設の劣化機構や維持管理水準を基に設定し、外観目視では得られないコンクリート構造物の変状を定量的かつ即時的に検知する。これにより補修補強をタイムリーに実施し、施設の健全度低下の抑制および長寿化により大規模修繕を抑止できる。
(2)確率論的手法による劣化予測 詳細調査結果を基にした中性化の√t則や塩分濃度の拡散方程式等の劣化予測式を用い、既往点検結果の統計分析にて推定した劣化曲線から部材毎に劣化予測を行う。またマルコフ連鎖モデルにより、既往点検結果から健全度ランク間の推移確率を算出し、コンクリート橋等の管理施設群の劣化予測を行う。これにより
管理施設の補修時期の選定や、中長期的な予算確保による予防保全の適宜実施が可能となる。
(3)鋼道路橋RC床版の疲労耐力向上
鋼道路橋RC床版において、輪荷重の繰返し作用により将来的な疲労発生が懸念される場合は、供用条件に応じ曲げやせん断補強および橋面防水等による計画的な疲労耐力向上を図る。過去の鋼道路橋の損傷起因の架け替えはRC床版の損傷、特に疲労損傷が主要因であるため、本策により疲労損傷の進展を抑止し、架け替えを回避できる。
3.解決策に共通して生じるリスクと対策
(1)共通リスク
解決策は共通して現時点の主たる劣化機構や供用環境および外力条件等を前提として行う。しかし大型車交通量等の外部条件は、各自治体の企業誘致方針や景気連動する貨物需要、通販需要増加等の消費者ニーズ変化等の影響で今後大きく増加する可能性がある。それにより当初想定した変状部位や劣化機構、劣化速度が変化し、倒壊等の大規模損傷が想定外に生じ、その復旧工事で大量のCO2が発生するリスクがある。
(2)対策
施設の定期点検毎に外観目視等の結果から診断した主たる劣化機構を確認し、各解決策の妥当性評価や効果検証を行うと共に、必要に応じ手法を見直す。
また都市開発計画や道路整備計画を踏まえ将来的な交通需要増大の可能性があれば、重交通環境下での劣化機構や劣化速度を仮定した維持管理シナリオを安全側ケースとして設定し、個別施設計画へ反映する。
更に近年衛星画像のビッグデータを用い、AIにて都市開発や道路利用状況をマクロ評価すると共に今後の車両交通量の予測技術の実用化が進んでいる。これら新技術を用い、車両交通量等の不確定要素を合理的に評価した個別施設計画を策定・運用することで、実態に沿った予防保全にて長寿命化効果を最大化する。
<添削コメント>
・解決策の提案は答案の中で最も重要であり、内容の充実が必要です。
・解決策はコンクリートの技術応用に特化して、鋼コンの論文にふさわしい内容とするように。
(他分野でも適用できる一般論は極力NG)
・課題、各解決策の内容でのダブリに注意する。(ダブると論理的考察力の欠如として信頼を失います)
・効果やリスクの表現は端的に。
・解決策の実施に伴い直接的に生じるリスクを挙げる。
解決策を実施する人的能力や実施体制、環境等に起因するなど、副次的に生じるリスクは、回答として不適。
・リスクは、実際に起こり得るものを記載すべきであり、その根拠(妥当性)も示す。
・対策として、従来手法を努力で高めるというのは内容として不十分。ICTの活用等を述べる。また新技術活用を提言する。
・記載内容は抽象的な表現は避け、一般的な技術者が読んで理解できる文章に。
本当案での指導事項のまとめ
(1)課題の分析のしかたについて
提案内容は重複しないこと(MECE)。
設問の通り、「企画・設計・施工・維持管理・更新」に区分するとわかりやすい。
前置きを短く、端的に述べる。
文字数バランスに配慮(少なすぎず、多すぎず)
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
本問は論文構成の中で非常に重要であり、内容の充実が必要。
解決策はコンクリートに特化し、鋼コンの論文にふさわしい内容とする。(他分野でも適用できる一般論は極力NG)
課題、各解決策の内容のダブリに注意する。(単語の使い方や言い回しの問題)
効果やリスクは端的かつドラスティックに記載し、回りくどい表現を回避するよう。
(3)リスクの導き方、書き方などについて
共通リスクは内容が充実していれば1個のみでも十分(量より質)
リスクは実際に起こり得るものを記載すべきであり、その根拠(妥当性)も示す。
リスクは、人的な能力不足やコスト増等を挙げるより、解決策の特性上カバーしきれないものを挙げる。
対策として、従来手法を努力で高めるというのは内容として不十分。
近年発展しているICTの活用による対策の記述は、新技術の知見として良い。
未だ確立していない未来技術は、技術者倫理の見地から、実効性の期待できるものに限定して述べる。