R2年、2021年 建設・鋼コン Ⅲー2 問題 模範解答と解説
Ⅲー2 鋼構造又はコンクリートの分野において,コスト削減や技術開発の促進、アカウンタビリティの向上、 国際化の対応等を図ることを目的として、性能規定化を一層促進させる取組が実施されている。しかしながら、様々な理由・課題により性能規定化の推進はいまだ十分とは言い難い。これらの状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1) 設計・施工において、性能規定化を促進するための課題を技術者として多面的な観点から示せ。
(2) 前問 (1) で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問 (2) で示した解決策を適切に実行した上で、新たに生じる懸念事項とその解決策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
模範解答1 簡易答案1 建設部門、鋼コン 2021/5/15
1、性能規定化促進のための課題
(1)第三者認証機関による新技術や設計施工法の審査・認定手続きの早期化推進
腐食診断技術等を開発し公平で統一的な審査・認証を可能とするため高度な技術力を有する第三者認証機関を設立し審査・認定の精度向上及び手続きの早期化
(2)技術(シーズ)と性能(ニーズ)のマッチング制度構築で相互サイクル促進
鋼道路橋設計施工ノウハウ不足の発注者支援や促進するため、ニーズとシーズマッチングを担う人材確保した拠点整備と同時に実装後フォローでサイクル促進
(3)鋼道路橋技術基準類の体系的性能規定化促進し高度化
鋼橋の要求性能(耐荷力、耐久性、安全性、使用性、環境性能、施工性)の性能確認方法と技術基準類体系的に整備し性能設計を高度化し促進
2、(3)の『技術基準類の体系的性能規定化』に対する解決策
(1)耐候性鋼材適用性評価の精緻化による作用側評価の高度化
同時期・同地域施工の橋梁に対して、立地条件、部材との立体的位置関係、遮蔽有無などの追加条件による腐食状況追跡調査分析で耐久性評価信頼性向上
(2)耐久性向上させるダメージコントロールの抵抗側評価
トラス橋格点の複雑な地震時塑性挙動実態を解析的、実験的検討により、がセット板厚式を定式化し挙動評価可能な構造細目等条件を絞り込みダメージコントロール設計可能とし高度化
(3)維持管理への性能規定化設計の適用拡大
腐食当板補強設計における損傷程度や補強材料のばらつきを足し合わせる際は母材と補強材の断面積(剛性)比率を重みにした係数設定で適正断面・工法選定
3、新たな懸念と解決策
懸念①:精緻化に必要となる実験や解析データの大量収集により、値のばらつきが大きくなり信頼性低下が懸念
解決策①:蓄積した試験データの統計分析から、差別化候補を抽出し、説明変数を絞り込む事(変数減少法)で評価精緻化
懸念②:性能規定設計法にて鋼鈑桁設計時に正曲げ部の上フランジ(35mm)と下フランジ板厚(33mm)で逆転し実現象で想定される応力状況との齟齬
解決策②: 圧縮時の上フランジの変動作用時に制限値を割増して永続作用時での割増を考慮し上フランジはコンクリート床版との断面合成を考慮し応力低減
解説
鋼コンで言う性能規定、性能とはどのような事項なのか?まずはそれを明らかとするように。
主題である「性能規定」か不明確だと、答案全体が一般論での解答となってしまい、最悪の場合C評価となる危険性があるので注意してください。前提条件を与えられたのに、それにこたえていないと、すなわち答えが書かれていないと判断される危険性があります。
模範解答1 簡易答案2 建設部門、鋼コン 2021/5/17
1、性能規定化促進のための課題
(1)第三者認証機関による審査・認定手続きの早期化
高度な技術力を有する第三者認証機関を設立し、腐食診断技術等の開発技術に対して公平で精度の高い審査・認証を可能とすることで、手続きを早期化する。
(2)開発技術と必要性能のマッチング制度構築で相互サイクル促進
必要性能と開発技術マッチングを担う高度人材確保による拠点整備し、鋼道路橋設計施工ノウハウ不足発注者に対する技術支援と発注者との連携経験が少ない技術開発者とのマッチング支援と実装後フォローで開発と実装サイクルを促進する。
(3)技術基準類の体系的・包括的性能規定化による性能規定設計の促進
鋼橋の要求性能(耐荷力、耐久性、安全性、使用性、環境性能、施工性)に関する確認方法について関連するすべての技術基準類を体系的かつ包括的に性能規定化することで設計整合性を維持しつつ性能規定設計を促進する。
2、(3)の『技術基準類の体系的性能規定化』に対する解決策
(1)推定精度向上による作用側評価の信頼性向上
同時期・同地域施工の橋梁に対して、海岸線からの距離の指標に加えて、立地条件、部材との立体的位置関係、遮蔽有無の条件追加による腐食環境の推定精度の向上により耐久性評価の信頼性向上させる。
(2)被災形態と解析的分析によるダメージコントロール(抵抗側)の信頼性向上
トラス橋格点の複雑な地震時塑性挙動実態を解析的、実験的分析により、ガセット板厚式を定式化し、挙動評価可能な構造細目等条件を絞り込無ことでダメージコントロール設計を実現し、損傷制御(抵抗側)の信頼性を向上させる。
(3)性能規定化設計の維持管理部門への適用拡大
腐食当板補強設計では、母材と補強材の断面積(剛性)比を重みにした部分係数設定し減肉や補強材料ばらつきを考慮することで、当て板断面設計を適正化する。
3、新たな懸念と解決策
懸念①:精緻化に必要となる実験や解析データは多種多様な材料、規格、溶接条件下で収集されているため、耐久性評価の信頼性低下が懸念される。
解決策①:蓄積した実験・解析データの統計分析から、差別化候補を抽出し、説明変数を絞り込む事(変数減少法)で評価を精緻化する。
懸念②:鋼桁の上フランジ断面が仕様規定設計時より厚くなり、その決定ケースが永続荷重作用時となることから、RC床版と鋼桁との合成効果を考慮できてなく非合理的断面となっていることが懸念される。
解決策②: 応力実測値を分析し、永続作用時でも変動作用時と同様に鋼桁上フランジの圧縮制限値に合成効果による割増しを考慮することで実態に見合った設計合理化する。
模範解答1 答案形式 建設部門、鋼コン 2021/5/18
1、性能規定化促進のための課題
(1)第三者認証機関による審査・認定手続き早期化
高度な技術力を有する第三者認証機関を設立する。腐食診断技術等の開発技術に対して公平で精度の高い審査・認証を可能とすることで、手続きを早期化する。
開発技術に加えて、設計・施工におけるに対する
(2)マッチング制度構築で技術開発サイクル促進
必要性能(ニーズ)と開発技術(シーズ)のマッチングを担う拠点を整備する。
それにより、鋼道路橋設計施工ノウハウの不足する発注者に対する技術支援と、発注者との連携経験が少ない技術開発者とのマッチングの支援と、実装後のフォローアップが可能となり、技術開発と実装のサイクルが促進される。
(3)技術基準類の体系的・包括的性能規定化
鋼橋の要求性能(耐荷力、耐久性、安全性、使用性、環境性能、施工性)の確認方法について関連するすべての技術基準類を体系的かつ包括的に性能規定化する。
これにより、関連する設計基準類の整合性を確保しつつ性能規定化されるため、構造安全性や品質を担保できる。開発された新材料・新工法は、信頼性に応じて適切な評価がなされ、採用が促進されることで工期短縮やコスト削減が実現可能となる。
2、(3)の『体系的・包括的性能規定化』の解決策
(1)推定精度向上による作用側評価の信頼性向上
同時期・同地域施工の橋梁に対して、海岸線からの距離の指標に加えて、立地条件、部材の立体的位置関係、遮蔽の有無の条件を追加し腐食状況の調査を実施する。
それにより、腐食発生度合いの推定精度が向上し鋼橋の耐久性に関する作用側評価の信頼性を向上させる。
(2)ダメージコントロール(抵抗側)の信頼性向上
トラス橋格点の複雑な地震時塑性挙動を実構造物での損傷調査により主要な破壊形態を特定し、実験的や解析的に再現したパラメータ解析することで、ガセット板厚式を定式化する。
その際は、挙動を再現・評価可能な構造細目等の条件を塑性化順序や塑性部位を絞り込むことでダメージコントロール設計の信頼性を向上させ、損傷制御(抵抗側)の評価を精緻化させる。
(3)性能規定化設計の維持管理部門への適用拡大
鋼I桁端部下フランジ腐食部への当板補強設計では、引っ張り及びせん断照査時は、母材と補強材の断面積(剛性)比を重みにした部分係数を、曲げ照査時はさらに終局時の中立軸からの距離も重みとして足し合わせた部分係数を設定する。
その結果、減肉評価や補強材料と損傷面との接合相性や施工方法の違いに応じた効果のばらつきが考慮可能となることで、当て板断面設計の信頼性が向上する。
3、新たな懸念と解決策
(1)懸念①:前提条件過多による信頼性低下
精緻化に必要となる実験や解析データは多種多様な材料、規格、溶接条件下で収集されているため、不要なデータによる耐久性評価の信頼性低下が懸念される。
(2)解決①:変数減少法による精緻化
まず、蓄積した疲労強度試験データを大まかな継手形式で差別化する。その上で、実験・解析データにおける使用材料、溶接パス数、仕上げの有無等の溶接条件毎の主成分得点と因子負荷量を統計分析し、差別化候補となる条件を抽出し、説明変数を絞り込む事(変数減少法)で各種溶接継手の疲労寿命の推定精度を向上させ、耐久性の信頼性を向上させる。
(3)懸念②:導入時初期時における不整合
鋼桁の上フランジ断面照査RC床版と鋼桁との合成効果を考慮できてないため仕様規定設計法より厚くなることから、過大設計が懸念される。
(4)解決②:既往設計結果と実応力による比較検証
応力実測値を収集・分析し、安全性を確保しつつ、永続作用時でも変動作用時と同様に鋼桁上フランジの圧縮制限値に合成効果による割増しを考慮することで板厚を最適化する。
その他、導入当初の不整合に対しては、仕様規定設計を参考に、設計適合みなし規定における照査式や構造詳細と経済性や安全性の比較することで導入初期の不整合の検証が可能となる。
鋼コンで言う性能規定、性能とは何なのか?まずそれを明らかとする。