R2年、2021年 建設・鋼コン Ⅱ−1−4 問題 模範解答と解説

 Ⅱ-1-4  ①〜③に示すコンクリート構造物の劣化現象について1つを選択し、その劣化メカニズムを概説せよ。また、選択した劣化現象に対して、新設構造物の設計・施工における留意点、若しくは既設構造物の調査・診断、又は補修における留意点を説明せよ。

①   水分浸透を考慮した中性化による鋼材腐食

②   凍結防止剤散布環境下における凍害

③   アルカリシリカ反応

模範解答1 答案形式 建設部門、鋼コン 専門: PC 2020.9.29

1.中性化の劣化メカニズム

 中性化とは、二酸化炭素がコンクリート表面から侵入し、水酸化カルシウムと炭酸化反応することで、炭酸カルシウムを生成し、pHが下がる現象である。pHが下がると、鋼材周囲の不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食する。鉄筋腐食が進行すると、コンクリート構造物の耐久性および耐荷性能に影響を及ぼす。

2.新設構造物の設計・施工における留意点

(1)設計における留意点

 設計の際には、現地条件(湿度条件、雨がかりの有無)などに留意する必要がある。上記条件を考慮し、水セメント比を小さくし、コンクリートを緻密化することで、中性化を抑制する。また、中性化の鋼材への到達を遅くするため、適切なかぶり厚さを確保する必要がある。水などの劣化因子による腐食を考慮し、ステンレス筋やエポキシ樹脂塗装鉄筋などの防食鉄筋を採用することも有効である。

(2)施工における留意点

 施工の際には、豆板などの初期欠陥は中性化を早める原因となるため、コンクリートの品質確保に留意する必要がある。そのため、施工時には、入念な締固めを実施するなど、新設コンクリートの品質向上を図る。また、水分浸透を抑制するため、表面被覆工法などの表面保護工法を施す。さらに、排水装置などの排水処置を適切に行うことも有効である。     以上

模範解答2 答案形式 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート 2021.4.23

②の「新設構造物の設計・施工」を以下に示す

1.凍結防止剤散布環境下における凍害のメカニズム

凍害は、コンクリート中の水分の体積膨張(9%膨張)と融解を繰り返しに組織が緩む。それにより、コンクリートの脆弱化が進行し、ひび割れやスケーリング等が発生する。さらに、凍結防止剤散布環境下では、散布剤に含まれる塩分の影響により凍害の進行が促進される。

2.新設構造物の設計・施工における留意点      

(1)設計            

①凍結時の移動水分の逃げ道を確保するため、エントレインドエアを混入し、気泡間隔係数を小さくする。また、空気量を多めに混入する(5〜7%)。

②水セメント比を低く、密実なコンクリートして、耐凍害性を高める。

③水切り、水勾配、防水等の処置を実施し、塩分を含んだ水を滞留させない。

(2)施工

①エントレインドエアは、輸送・圧送・締固め等でエアロスが生じる。それ故、エアロス分を見込んだ空気量でコンクリートを製造する。

②打設するコンクリートの品質を確保するため、受入時に単位水量試験(エアメータ法等)を実施し、単位水量の±20㎏/を超えるものは打設しない。

模範解答3 簡易答案形式1 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート維持管理 2020.10.18

②凍結防止剤散布環境下における凍害

新設構造物の設計・施工

【メカニズム】凍結融解作用の繰り返しにより、ポップアウトやはく離・はく落を生じる。さらに凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの硬化体への侵入により、エトリンガイトを生成させる。その生成に伴う体積膨張により、凍害劣化を促進させる。合わせて鋼材腐食による体積膨張により、ひび割れやはく離・はく落の進行を深刻化させる。

【留意点】

①設計面 ・AE剤を使用し、耐凍害性を向上させる。

・滞水を発生させない排水経路を設計し、塩化物イオンを含んだ水分の侵入による鋼材腐食を防止する。

②施工面 ・打設時のコンクリート温度は10〜20℃となるよう施工する。

・締固めはスパイラル型内部振動機を用い、密実かつ緻密なコンクリートとする。

 ・養生時は、初期強度(条件により5〜15N/mm2)となるまで、コンクリート温度を5℃以上に保つ。外気の影響が大きく保温が困難な場合は、給熱養生を行う。

模範解答3 答案形式 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート維持管理 2020.10.18

選択:②凍結防止剤散布環境下における凍害

対象:新設構造物の設計・施工

【メカニズム】 寒冷地の外気温の変化により、コンクリート中の水分が凍結融解作用による、膨張と収縮を繰り返すことで、ポップアウトやはく離・はく落を生じる。

 さらに凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの硬化体への侵入により、エトリンガイトを生成させ、その生成に伴う体積膨張により、凍害劣化を促進させる。合わせて、鋼材腐食を引き起こし、ひび割れやはく離・はく落の進行を深刻化させる。

【留意点】

①設計面: 配合設計では、AE剤を使用し、一様な空気連行性能により耐凍害性を向上させる。

 また、滞水を発生させない排水経路を設計し、塩化物イオンを含んだ水分侵入による鋼材腐食を防止する。

②施工面: 打設時のコンクリート温度は10〜20℃となるよう施工する。締固めは、振動伝達効果が高く、エントラップトエアの排出効果の高いスパイラル型内部振動機を用い、密実かつ緻密なコンクリートとする。

 養生時は、打設箇所をシートで覆い、初期強度(条件により5〜15N/mm2)となるまで、コンクリート温度を5℃以上に保ち、その後最低2日間は0℃以上を確保する。外気の影響が大きく保温が困難な場合は、給熱養生を行う。

模範解答4 簡易答案形式1 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート 2021.4.24

①を選択

1.劣化メカニズムの概説

1)pH低下

大気中の二酸化炭素が細孔溶液中に溶解し、水酸化カルシウムが炭酸カルシウム化し細孔溶液のphが低下する。

2)不動態被膜の消失

pH低下により不動態被膜が消失、水分および酸素の供給により腐食が発生

3)ひび割れの発生

 鋼材腐食の進行により、ひび割れの発生、かぶりコンクリートの剥離・剥落、鋼材の断面欠損による耐荷力の低下等、性能低下が生じる。

2.調査診断における留意点

●水分浸透は鋼材腐食を加速させるため、はつりによる鋼材腐食・中性化の確認は、雨がかり等水分供給箇所も選定する。

●塩分は未中性化部分へ移動濃縮する傾向があるため、複合劣化を想定した試験項目を選択する。

●中性化進行については、中性化深さ測定、√t則を基本とし中性化残りは、含有塩分の有無により設定する。

●中性化深さの確認は破壊試験であるため、はつり・コア採取は最低限とし、ドリル法の選択も提案する。

模範解答4 答案形式 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート 2021.5.24

調査診断におけるアルカリシリカ反応(ASR)を選択した。

1.  劣化メカニズム

ASRは、高いアルカリ性に骨材が反応し、亀甲状を特徴とするひび割れを発生させる現象である。

反応性骨材がアルカリシリカゲルを生成し、給水膨張したシリカゲルの内部応力によりひび割れを発生させ、進展すると鋼材を変形・破断させる。

2.調査診断における留意点

①スクリーニング

使用材料、施工場所、施工時期からASRの可能性の有無を確認する。また、ASRの進行は水分の供給を原因とする為、雨掛かりや伸縮装置からの漏水等、原因箇所の有無を確認する。

②構造特徴の反映

 ASRは、膨張による内部応力がひび割れを発生させる。PC等により膨張が拘束された構造物においては、拘束方向にひび割れが発生する。拘束1方向へ伸びたひび割れも対象として調査する。

④短期間でのASR判定

促進膨張試験では養生期間が4週間から半年以上と長期に及ぶ。期間を確保できない場合は、圧縮強度試験や静弾性係数測定値からの推定、顕微鏡によるシリカゲルの確認等、短期間でのASR判定を実施する。

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