R2年、2021年 建設・鋼コン Ⅲー1  問題 模範解答と解説

Ⅲ−1  国土交通省は、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i-Construction」を推進し、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指している。建設業で生産性を低下させている要因の1つとして、2次元の紙の図面で各種作業を進めていることが挙げられることから、建設生産・管理システムでも3次元モデルを利活用することで、全体の効率化・高度化を図るいわゆるBIM/CIMが生産性革命のエンジンとして推進されている。このような状況を踏まえ、鋼構造あるいはコンクリートに関わる技術者の立場から以下の問いに答えよ。

(1)     BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務を1つ挙げよ。またBIM/CIMを導入してその業務の生産性を向上させるために解決すべき課題を多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)     前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)     前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

模範解答1 簡易答案1 建設部門、鋼コン 専門:PC 2021/6/1

1. BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務と多面的な課題

 コンクリート構造物への適用に関して述べる。

生産性の向上が期待できる業務:コンクリート道路橋の施工業務

(1)計画・設計段階からの導入 

・設計段階から鉄筋の干渉を回避した配筋計画が可能。

・施工時の架設検討に利用できる。

・設計段階から適用するような発注形態の整備が必要。

(2)属性データの拡充

・出来形寸法、コンクリート配合などの属性データをBIM/CIMに格納することで、検査が容易になる。

 ・後工程(維持管理)への引渡しもBIM/CIMデータのみで必要十分となる。

(3)単独の保有技術を合体させるBIM/CIMオペレーターの育成

・3Dモデルオペレーター、ICT技術の技能者など個々の保有技術を円滑に活用させる。

・定期的にBIM/CIMの活用方法や制度の改定に関する講習会の開催が必要。

2.最も重要と考える課題と課題に対する解決策

施工段階からBIM/CIMを導入すると、2D図面から3Dデータを作成することとなり、事業計画一連を通しての生産性が向上しないと考えることから、最も重要な課題として「計画・設計段階からの導入」に対する解決策を述べる。

(1)規格の標準化

・プレキャスト化の拡大

・プレハブ鉄筋。大型プレキャストへの適用で、プレキャスト化の更なる拡大。

・BIM/CIM制度をISO基準とする。海外建設事業へも適用。

(2)ICT技術の活用

・インフラデータプラットフォームの活用

・設計計算データより自動3Dモデル作成

・BIM/CIMモデルより、AIによる自動配筋システムの導入。

(3)BIM/CIM活用工事の原則義務化

・新技術導入入札制度の推進

・NETISの活用

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

・新技術を活用する際、規格に入らず適用外となる場合がある。

・技術革新に応じた制度の都度見直しが必要。

模範解答2 簡易答案1 建設部門、鋼コン 専門: コンクリート構造 2021/5/30

1.鋼橋コンクリート床版更新のプレキャスト生産業務の多面的なの課題

(1)全体計画・現地情報・部材情報・点検情報のデータ化 

 プレキャスト生産は、事前に整理された情報で円滑な施工を行うことが必要。調査から更新まで見据えた情報が正確にデータ化されてないので、各事業毎のデータが循環できる環境が不十分で、CIM特徴の一元管理を事業全体として活かせてない。

(2)3次元モデル作成に時間と労力が必要

 建設業がCIM活用へ向けた3次元化移行期間であり、発注情報が2次元の場合は変換・新規モデル化の作業が発生する。各事業毎のデータ精度も異なり、取捨選択の省力化が困難。事業途中でCIMモデル精度を高めた作業には時間と労力がかかる。

(3)CIMを利活用できる人材の不足

 CIMを扱える人材が不足している。データ入力・検証が行え全体を見据えた情報処理を熟せる技術者・経験者を、迅速に人材育成できる環境が整備されていない。

2.最も重要な課題と解決策

全体計画・現地・部材・点検情報のデータ化が重要な課題と考え、解決策を示す。

(1)建設生産情報の属性データ連携と管理システム整理

 フロントローディングによる円滑な施工のため、CIMデータ反映の目的よりデータ情報集約化を推進する。既橋梁情報の3次元データ化、ドローンや点群データによる現地情報データ化を行い、基幹システムとしてクラウド一元情報管理を行う。

(2)3次元データの汎用による設計作業省力化

 CIMの橋梁情報より、構造寸法データを利用して構造解析・設計計算・数量計算の自動作業を行う。FEM有限要素解析のモデル作成にも汎用できるようにデータの汎用性を高め、情報の共有化によるCIMの利活用を行う。

(3)3Dプリンターおよび4DCIMの活用

付属物や施工域情報を反映し、作業模擬を行うために3Dプリンターを活用する。取合いや施工障害物との離隔を事前に把握し、時系列がわかる4DCIMを活用する。

3.リスクと対策

リスクは、継続中の事業では、整理中の情報とタイムラグが生じ、情報読取りミスが発生ことである。測量・調査結果と混乱し誤った条件で作業するリスクもある。

対策は、最新および高精度の情報を随時更新すると共に、データ移行の同時性を含めた3次元スキャナーの普及、点群データから3 次元モデルの構築技術が必要。

模範解答3 簡易答案1 建設部門、鋼コン 2021/5/28

1)橋梁の点検業務において生産性の向上が期待できる

●解決すべき課題点

・導入コストが高額

・既存橋梁の3次元化に時間とコストがかかる

・既存の維持管理情報が異なるシステムで管理されている。

・人材・教育不足⇒教育により効率化(生産性の向上)(人手不足の解消)

・ソフトウェアの標準化と導入のタイミングの精査

(2)既存橋梁の3次元化にかかる時間とコストの解決策

・写真測量による3次元モデルの構築

・レーザースキャナーによる点群データ取得からの3次元モデル化

・徒歩環境にない箇所のドローンの活用

(3)共通して新たに生じるリスクと解決策

・データの大容量化と、辺境地における通信環境の確保

データの大容量にはクラウドを活用する⇒保存場所の確保とデータ共有

SDカードと高速通信の併用

5G環境をリスト化、クラウドへデータ抽出の頻繁化により端末データの軽量化

解説

 この問題は難解です。BIM/CIMは実際にはまだ普及していないにも関わらず、時代の新テーマを先取りする形で出題されました。しかし、実際に経験されているのはスーパーゼネコンや大手設計事務所の方だけかと思います。想像で解答したら一般論に終始して点が取れません。もしご経験がなければⅢ-2を解かれることをお勧めいたします。

(1)BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務として、「鋼橋コンクリート床版更新のプレキャスト生産業務の部材情報・点検情報のデータ化」などを挙げる方がいます。しかし、 データ化したとして、CIMでどう活用するのか、あてがなければ提案として成立しません。こうした提案では空想のアイデアではなく実現性のある提案が求められます。

  また同じく「3次元モデル作成のスピード化」、「2次元データを3次元化する作業」とかについては、必要ではありますが手段的なことであり、この問いの本質であるCIMの活用が見えていません。2Dの図面ではミスがあるからと、とりあえず3Dでは根拠のある提案になりません。

  このほか「CIM利活用の人材育成」とかあり得ますが、どんな人材を育成すればよいでしょうか。のCIMを活用するには、3次元CAD技術者では対応できません。 具体的に汎用のCADオペレーターの育成など何が違うか示す必要があります。

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