R2年、2021年 建設・道路 Ⅲ−2 問題 模範解答と解説

Ⅲ−2 甚大な被害をもたらした東日本大震災から9年が経過したが、その後も、大きな地震や集中的豪雨、豪雪による甚大な被害が発生しており、また今後も首都直下地震、南海トラフ地震が高い確率で発生することが予想されている。このような状況を踏まえて、道路の防災対策に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)激甚化・頻発化する災害に備え、道路が発災時に救命救助・復旧活動や広域的な物資の輸送等に貢献し続けるため、技術者としても立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、新たな懸案事項への対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

 模範解答1簡易答案形式1 建設部門、道路 専門:道路設計 2021/11/27

1. 多面的な課題

(1)道路のレジリエンスを確保

・レベル2地震動において耐震性能2以上を確保して、ネットワークを確保する。

(2)ICT を活用した災害情報収集・発信

・AIカメラ等が交通状況を常時モニタリングにし、災害やパンデミック発生時には情報提供や交通誘導により人流・物流を最適化。

(3)デジタル技術を活用した土砂流出の予測と対策

・レーザープロファイラーにより高精度で広範囲に地すべり等の危険個所を絞り込み、土層強度検査棒による調査、土砂流出の予測、対策立案。

2.最も重要な課題

道路のレジリエンスを確保

(1)橋梁の耐震強化  

・ロッキング橋脚の耐震化、支承部の補強、跨道橋の耐震化、落橋防止対策

(2)無電柱化

・電柱倒壊による緊急輸送道路における道路閉鎖の防止。

(3)道路陥没防止

・マイクロ波を用いて空洞の位置と形状を把握する。そして、空洞が確認された箇所にモルタルやウレタン樹脂を注入して地盤の強度強化を図る。

3.波及効果と新たに生じる懸案事項への対策

(1)波及効果

・災害による死者抑制、サプライチェーン寸断の防止、インフラの長寿命化

(2)新たに生じる懸案事項

・鋼板巻立て補強済みの橋脚柱に追加補強(RC巻立て)を行う場合、鋼板とRC巻立ての境界面にずれが生じ所定の耐力が発揮できない可能性がある。

・地震により電線が切断された際に、電線が地中に埋設されているため切断箇所を肉眼で見つけるのが困難である。(無電柱化)

・空洞部に樹脂等を注入しても給排水繰返しによって再び空洞が発生する。(道路陥没) 

(3)新たに生じる懸案事項への対策

・橋軸と直角方向の免震構造化(既設支承の可動化+免震バッファの設置(桁間))により地震時慣性力を軽減させることで、曲げ耐力不足を改善する。(橋梁の耐震強化)

・一定区間ごとに常時モニタリングを行い、切断箇所を推定できるようにする。(無電柱化)

・不織布の持つ土粒子の流失抑止、透水・通水機能と、ジオグリッドの引抜き力による地盤の補強を期待し、地盤内の空洞拡大抑止(道路陥没防止)

模範解答1答案形式 建設部門、道路  専門:道路設計   2020.12.23

1.多面的な課題

(1)道路のレジリエンスを確保

レベル2地震動において耐震性能2以上を確保して、災害に強いネットワークを構築するためミッシングリンクの整備、ロッキング橋脚の耐震化、落橋防止対策、地方公共団体が管理する跨道橋の耐震化による通行止めを防止する等の対策を施す。これにより、ネットワークを確保して災害時の通行止め時間を最小化する。

(2)ICT を活用した災害予測、災害情報収集・発信

CCTVカメラ等で撮影した映像から水位観測を行い、その結果を基に津波や高潮、豪雨時における洪水等の氾濫や浸水予測して対策を立案する。また、AIカメラ等が交通状況を常時モニタリングにし、災害やパンデミック発生時には情報提供や交通誘導により人流・物流を最適化する。

(3)デジタル技術を活用した土砂流出の予測と対策

レーザープロファイラーによりレーザ計測と同時に空中写真を撮影し、立体画像である地形起伏図から地形判読を行う。高精度で広範囲に崩壊地や地すべり等の危険個所を絞り込み、土層強度検査棒による調査、土砂流出の予測を行う。この結果を基に危険性が高い箇所の道路法面・盛土対策、道路拡幅等を実施する。

2.最も重要な課題「道路のレジリエンス確保」

(1)橋梁の耐震強化  

ロッキング橋脚の耐震化を図るため、完全自立構造や半自立構造により水平・鉛直方向に対する抵抗力を向上させる。鋼板併用RC 巻立て工法や連続繊維シート巻立工法により跨道橋の耐震化、支承部の補強(水平力を分担する構造、段差防止構造)、床板補強等を行うことで、落橋を回避して災害後の早期機能回復を図る。なお、橋梁の耐震化は確率論的地震動リスクより南海、東南海沿岸エリアを優先的に整備する。

(2)無電柱化

電柱倒壊による緊急輸送道路の道路閉鎖を防止するために無電柱化を推進する。その際に浅層埋設、小型ボックス等を活用して施工時に既設ガス管や水道管等への影響を少なくして工期やコストを削減する。なお、緊急輸送道路や避難所へのアクセス道路の内、市街地区間は、電線・電柱の密度が高く甚大な被害が予想されるため優先的に整備を行う。

(3)路肩拡幅

災害時には道路に一定の欠損が生じることを考慮して、路肩を従来よりも広くする。そのため、経済性を優先した整備水準から、災害に配慮した整備水準に見直す。2車線道路により斜面崩壊等により片側1車線が利用できなくなっても残りの1車線と路肩を有効活用して道路ネットワークを確保する。

3.波及効果と新たに生じる懸案事項への対策

(1)波及効果

平常時や災害時を問わずに複数の物流ルートを選定でき、安全かつ円滑な物流機能を確保できる。これは、災害時におけるサプライチェーン寸断の防止や通常時の交通事故抑制、時間信頼性向上に繋がる。

 落橋防止や道路陥没を防ぐことにより災害時における死者を抑制することができる。

(2)新たに生じる懸案事項

免震支承等により橋の固有周期が比較的長くなり、長周期地震動と共振して変位が増大して、橋脚にかかる作用力も大きくなる。そのため、長周期波が卓越した地震が発生すると新たな損傷発生する。

バリアフリー構造基準、車両の乗り入れ等により歩道を切り下げる必要がある。その際に、所定の土被りを確保できなくなる可能性がある。

路肩拡幅が多くなり、広域的に地形が改変されることとなり、斜面の力学バランスが変化して斜面崩壊の可能性が高まる。

(3)新たに生じる懸案事項への対策

標準波の代わりに、そのサイトの局所的な地盤条件を反映させ作成したレベル2 地震波で照査を実施する。

埋設されている管路を防護するため、管路上に防護鉄板等を設置し、管路に作用する応力を小さくする。

光ファイバセンサにより広範囲なエリアを線的や面的に計測を行い、のり面に変形等が確認された場合はグラウンドアンカー工法等の対策を行う。

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