R1/2019年 化学・高分子化学 Ⅱ-1-4

問題文

 自動車軽量化の取組として、熱硬化樹脂をマトリックスとする炭素繊維硬化複合材料(CFRP)及び熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料(CFRTP)の自動車構造部材への適用が進められている。これらの加工法の概要及び両者の長短(①生産性,②力学特性、③コスト、④リサイクル性)を述べよ。

模範解答1 (完成答案)    添削履歴2    作成日2020/4/5     化学部門  高分子化学    専門事項 成形加工

(1)加工法の概要

①熱硬化性炭素繊維樹脂(CFRP):数cmの炭素繊維をエポキシ樹脂に分散させたシート(SMC)を作り、加熱しながらプレス成型する。または炭素繊維を形状プレス後、型内で樹脂を注入固化させる。

②熱可塑性炭素繊維樹脂(CFRTP):樹脂を炭素繊維に浸み込ませ、樹脂が溶融状態にあるうちに型でプレスし、その状態で冷却する。 

(2)両者の長短

①生産性:CFRPは炭素繊維に2液エポキシ樹脂を浸透させるので硬化反応10分。CFRTPはポリアミドなどの熱可塑性樹脂プリプレグを加熱、冷却するので5分。生産性はCFRTPが速い。

②力学特性:CFRPは2液反応エポキシ樹脂がベースなので、強度は環境温度に影響されない。CFRTPは熱可塑性樹脂がベースなので温度上昇により、熱可塑性樹脂が柔らかくなり、曲げ強度が落ちる。

③コスト:CFRPは炭素繊維樹脂が60%以上、マトリックス樹脂、加工コストも高い。一方、CFRTPは炭素繊維20%以下、マトリックス樹脂・加工コストとも安価。

④リサイクル性:使用後のCFRPは埋め立て処理でリサイクルはできない。CFRTP廃棄物からの取り出しも含めて炭素繊維リサイクル実用化が行われている。

R1/2019年 化学・高分子化学 Ⅱ-2-2

問題文 

 コストと品質の両方が求められる中、熱可塑性樹脂を用いた射出成形工程の技術者として、自工程で生じる不良品・ランナー等の再利用によるコストダウンを進める場合、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

模範解答1 (完成答案)    添削履歴3    作成日2020/4/22     化学部門  高分子化学    専門事項 成形加工

(1)調査検討すべき事項とその内容

①発生した不良品のリサイクル成形品の物性検討。 

・不良品を粉砕して材料としてバージン材にまぜ、使用可能か検討。 

・粉砕材100%成形時の物性:曲げ強度・アイゾット強度、色差、重量測定。

・1日で得られるスプルー、ランナーの重量、不良品の重量。

②粉砕再成形で、どの程度のコストダウンが可能か? 

・スプルー・ランナー・不良品を粉砕再成形とした場合の、コストダウン閾値

・スプルー・ランナーのみをリサイクルした場合、コストダウン効果が出るか?

(2)業務を進める手順の留意すべき点、工夫を要する点 

①社内合意を得ること。 ・現在の不良、及びスプルー・ランナーの処分に必要な金額を計算

・スプルー・ランナーを粉砕再成形して新規材料に混入して問題ないことを証明

・コストダウンできる金額の算出

・上記の点にてリサイクルがコストダウンになることを証明、社内合意を得る。

②物性データを出すこと

・①スプルー・ランナー粉砕材のみ②不良品粉砕材のみ③バージンペレットのみ

 で、ダンベル片、アイゾット片を成形。

・引張・曲げ・アイゾット強度・色差を測定、すべての配合で問題なきことを確認。

・どのような配合方法でも良品の成形が可能なことを証明。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策案 

①社内承認:まず社内関係者への相談をはじめとして、疑問点を洗い出す。 その資料にて、客先にお願いに上がる。そのとき、客先の利益も算出。

 経営者に、不良品・スプルー・ランナーの粉砕再成形品を材料に混ぜて、コストダウンの計画を説明、客先承認を得たい旨相談。この際、現在の不良率、粉砕再成形して外観、物性に問題がないこと、コストダウン推定金額を報告。

②客先相談、報告:客先に、本プロジェクトを実施したい旨の提案・相談。

測定予定物性(アイゾット強度、引張強度、曲げ強度)確認方法、目視検査方法(色差、異物検査)を報告。必要な物性・寸法測定などを聞く。承認を得る。

③計画提出:物性測定の計画を社内展開、承認を得る。つぎに客先承認を得る。

④物性測定実施、報告:粉砕材成形品の物性測定、色差測定、重量ばらつき、MFRなどを測定。社内に報告、承認を得る。つぎに客先報告、承認を得る。

R1/2019年 化学・高分子化学 Ⅲ-1

問題文

 Ⅲ-1 最近マイクロプラスチックによる海洋環境の汚染が指摘されている。マイクロプラスチックの発生量抑制の対策の1つとして、従来の石油化学原料を用いた難分解性の合成高分子からバイオベースの生分解性高分子への置き換えが挙げられている。もともと石油化学系原料で高分子を製造している企業が、バイオプラスチック事業テーマとして研究開発から企画する際に考えておくべきことについて以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で多面的な観点からバイオプラスチックの課題を4つ抽出し、分析せよ。 (2)抽出した課題のうちあなたが重要と考える課題2つを選択し、それ其れの課題に対する2つの解決策を示せ。

(3)解決策に関連して新たに生じうるリスクを3つ挙げ、それぞれのリスクへの対策について述べよ。

模範解答1   (簡易答案2)    添削履歴3    作成日2020/5/21    化学部門  高分子化学    専門事項 成形加工

(1)バイオプラスチックの課題4つ

①安価で安定的に入手できるバイオ及びバイオプラスチック原料の確保。

 バイオプラスチックは、バイオ原料の発酵にてバイオアルコールを造り、脱水重合して合成する。安定且つ食料と競合しない安価なバイオ原料の確保を行う。

②原料発酵工程の効率化などバイオアルコール製造能力増大を計画する。

 酵素能力を高め、バイオアルコールの生産効率を上げる。

③ポリプロピレンなど需要の大きいプラスチックのバイオプラスチック化

 現在国内生産石油系樹脂の26%はPPであるがバイオ樹脂化は完成していない。糖を発酵してバイオIPAを造り、脱水重合してバイオPPを造る。

④コンパウンド化や機能性充填剤などによる成形加工技術の開発を行う。

 ポリ乳酸はバイオアルコールから合成される代表的な生分解性プラスチックであるが、融点が60℃、強度はもろい。金型内での結晶化・結晶核のブレンドによりABSレベルの品質となる。

(2)重要課題2つとそれぞれ2つの解決策

(2)-1 安価で安定的に入手できるバイオ及びバイオプラスチック原料の確保。

バイオプラスチックはバイオアルコールの脱水・重合で造る。酒醸造と同原理で、原料は①糖質作物②穀物③農産残渣④木材である。量産は①②を用いてスタート、③④は別途発酵方法を確立する。①②では作物を生産し、発酵条件(温度・濃度)菌の健康管理を行う。③④は有機廃棄物からの発酵条件を研究する。

(2)-2 原料発酵工程の効率化によりバイオアルコール製造能力増大を計画する。

①耐高アルコール濃度酵母の安定生産:発酵が進むとアルコール濃度が高まり、酵母の反応が止まる。高アルコール濃度で生きる突然変異の清酒酵母きょうかい11号と通常の清酒酵母きょうかい7号のゲノム配列の解読を行い、耐高アルコール酵母を遺伝子組み換えにより製造する。

②高温ストレス耐性の酵母発掘:一般酵母の発酵温度は40℃が限界である。バイオマスが多い熱帯地方は高温であること、発酵発熱にて30℃を容易に超え、発酵槽の費用冷却費が必要となる。熱帯フルーツからの41℃でも発酵する酵母C3723株などを検討する。

(3)解決策に関連して新たに生じうる3つのリスクと対策

①バイオアルコール製造時の酵母変質による生産量の減少リスク 

酵母は生き物であり、生産継続過程・酵母年齢で性質変化の可能性が否めない。量産時に、複数の酵母菌及び原料種類別にプラント設定し、問題発生時の回収アルコール減少を減らす。

②バイオ燃料の確立普及によるバイオプラスチック用アルコール減少リスク

バイオアルコールは地球温暖化防止のため石油に代わり必要である。交通機関に普及した場合、価格高騰が起こる。これに備え遺伝子組み換えによる新規バイオ酵母開発を続ける。

 ③気候変動による目的農作物の収穫減少

  バイオ樹脂を中心に社会を回すには量が必要である。気候変動による収穫量減少に備え、必要量+αの原料作物を栽培する。

模範解答1   (完成答案)    添削履歴0    作成日2020/6/5    化学部門  高分子化学    専門事項 成形加工(1)加工法の概要

(1)バイオプラスチックの課題4つ

1)バイオアルコール製造能力増大

 バイオプラスチックは、バイオアルコールの重合によって造られ、これは酵素発酵によって得られる。酵素能力を高めバイオアルコール生産効率を上げることが、安定供給につながる。また、石油系樹脂とはプラントの容量レベルが大きく異なる事に留意する。

2)PPなど需要の大きい樹脂のバイオプラスチック化。

 現在国内生産石油系樹脂の26%はPPであるがバイオ樹脂化は完成していない。糖を発酵してバイオIPAを造り、脱水重合してバイオPPを製造する。

3)成形加工技術の開発

 ポリ乳酸はバイオアルコールから合成される代表的な生分解性プラスチックであるが、融点が60℃、強度はもろい。金型内での結晶化・結晶核のブレンドによりABSレベルの品質を得られる。また、コンパウンド化や機能性充填剤適用により、性能を上げる。

4)安価で安定的に入手できる原料の確保。

 バイオプラスチックは、バイオ原料の発酵にてバイオアルコールを造り、脱水重合して合成する。安定且つ食料と競合しない安価で安定的なバイオ原料の確保を行う。

(2)重要課題2つとそれぞれ2つの解決策

1) バイオアルコール製造能力増大

原料発酵工程の効率化によりバイオアルコール製造能力増大を計画する。

①耐高アルコール濃度酵母の安定生産:発酵が進むとアルコール濃度が高まり、酵母の反応が止まる。高アルコール濃度環境下で発酵可能な酵母を量産する。

例えば高アルコール濃度で生きる突然変異の清酒酵母と通常の清酒酵母のゲノム配列の解読を行い、耐高アルコール酵母を遺伝子組み換えにより製造する。

②高温ストレス耐性の酵母発掘:一般酵母の発酵温度は40℃が限界である。バイオマスが多い熱帯地方は高温であること、発酵発熱にて30℃を容易に超え、発酵槽の費用冷却費が必要となることが問題である。熱帯フルーツからの酵母C3723株など、41℃の高温でも発酵する酵母を検討・導入する。

2)需要の大きい樹脂のバイオプラスチック化。

 現在の石油系樹脂をバイオ樹脂に置換するためには代替として遜色ない物性及び価格のバイオ樹脂を開発することが求められている。

①バイオPP(ポリプロピレン)

三井化学はバイオマス原料から発酵によりIPAを製造脱水してプロピレンに変換する方法を開発した。これにより従来のPP樹脂重合方法を利用でき、重合窯など石油系設備がそのまま使用可能になる。今までのバイオPP製造方法より価格は安価となり、ゴムを配合しTSOPなど自動車PP材料に適応させる。

②ポリ乳酸のABS樹脂レベル物性確保

 ポリ乳酸はバイオアルコールから合成される代表的な生分解性プラスチックであるが、融点が60℃、強度はもろい。金型内での結晶化・結晶核のブレンドによりABSレベルの品質を得られる。 (3)解決策にて新たに生じる3つのリスクと対策 

①バイオアルコール製造時酵母変質による生産量減少

酵母は生き物であり、生産継続過程・酵母年齢で変化の可能性がある。量産時に複数酵母菌及び原料種類別にプラント設定、回収アルコール減少を防ぐ。

②不純物混入による、高分子合成の不具合発生。

遺伝子組み換えにより製造した耐高アルコール菌や高温ストレス耐性の酵母が、さらなる突然変異で性質が変わり、発酵工程でバイオアルコール以外の物質を含む可能性がある。これにより、重合時に予定量・物性の高分子が得られなくなる。備えとして石油系PPを用意し、不足分を補える状態とする。

③使用済みバイオ樹脂の廃棄問題

バイオPPや、物性を強化したポリ乳酸など、使用済み樹脂のリサイクルが確立していなければ、現在の石油系樹脂と同じ扱いになり、海洋汚染問題・環境問題に直結する。これを防ぐには、製品にリサイクル方法を誰でもわかるように記載する。ないしは、リサイクル料をパーツ単価に上乗せし、高い金額で買い取りを行う。

解説

(1)課題の分析のしかたについて

問題文をよく読み、出題者が意図している背景や前提を正確につかむようにしてください。

化学と高分子に関係すること、直結する課題を挙げるようにしてください。

出題者がどのような答えを求めているか考えることです。

問題の物ごとを解決するのに何が重要か?まずポイントを絞ることです。

専門家相手にふさわしい専門用語で定義するようにしてください。

キーとなる化学技術を挙げること。

(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて

漠然とした意見ではなく、具体的に物質名を挙げて述べるように。

化学・高分子化学の問題であり、関係が薄い解決策を挙げてはいけません。

本質的な解決策を求められていますので、複数絞って挙げるように。

課題を受けての解決策です。選んだ課題に対応させて書くように。

 (3)リスクの導き方、書き方などについて

提案した解決策に直結しているリスクを選ぶこと。

具体的に書き、概念的な話は避けるるのが良いでしょう。。

話を発散させないこと。解決策に関係ないリスクは書かないようにしてください。

<全般で留意すること。>

見出しは1項目とし、1つに2項目書かないようにしてください。

化学・高分子化学がベースであることを意識することです。

専門家が読むので、専門用語で簡潔に書くように。

専門家に聞かれているイメージで答えること。

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