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合格テクニックを公開して技術士合格を支援するコラム
申込書の書き方 (建設部門・施工計画の方の場合) 3 技術的体験の問題点の抽出
技術士二次試験の申込書の中で記入する「業務内容の詳細」の作成方法についてさらに詳しく考えてみましょう。業績についてまず最初に前提とすべきことがその業績の意義であり、社会的な重要性、必要性です。本研究所の講座では、この分析を「技術的体験チェックシート」を用いて添削形式で完成させていきます。
過去に本研究所の指導で学ばれた方の技術的体験(技術的体験論文)がどのように整理されたか検討過程を見てみましょう。業績の重要性を簡単に表すには、
- もしその業績がなかったとしたらどんな問題があるか
- 従来法で同じことやったとしたらどんな不経済なことになるか
ということを表せば簡単にその意義を表現することが可能です。
具体的に過去の受講者様がご自身の業績の意義をどのように表しているか見てみましょう。
4-1 技術的問題点
1) 施工業者は、ひび割れ対策として設計のBBより収縮率の小さいNの使用を提案したが、塩害対策区分IIとIIIに該当していたため、塩害に対する抵抗性向上に有効とされるBBを使用しないことに対して、不適切と考えられた。
2) ひび割れに対する抵抗性は、BBよりNの方が優れていた。
1)は、成功者の措置判断に対して誤りがあったことがありますが、しかしそれはどれほどの障害になるかと言う問題の程度についてはよくわかりません。これだけでは重大性が判断できず、必要性の高い業務に取り組んでいたかどうかも判断できかねる内容です。
2)は、BBとNの比較は分かるものの、だからといってそれがなぜ問題なのかが書かれていません。「ひび割れに対する抵抗性は・・の方が優れていた」という文章は、見方によっては問題点ではなく逆にメリットを書いている文章のようにも読み取れます。
ここで言える事は、問題点を書く時の書き方は次のようにしなければならないということです。
- 経済性や品質、環境の低下や、工期の延長と言った、明らかに悪い影響がはっきりと読み取れるものが良い。
- 影響の程度が定量的に現れるもの
- マイナスの影響の結果が事業の根幹を揺るがすものとなる事
- 評価の視点の立場がはっきりしている事 (例:事業主や請負業者)
これらの項目を満たしていれば、技術的体験の重要性が理解されて、業績の貢献の意義が大きくプレゼンすることが可能となります。同じ業務を行うにしても、その業務を行なわなかった時のマイナスの影響が大きいか小さいかによって評価が決まってくるのです。 こうしたことに留意して問題点を書き出してみると、技術的体験の内容の技術的問題点は次のようになります。
4-1 技術的問題点
1) 対策区分IIとIIIに該当しており、ひび割れ深さによっては塩害を助長するため、塩害対策とひび割れ対策の両立が必要となる。設計のBBは塩害に対し効果的であるものの収縮ひずみが大きく、ひび割れ対策に不向きである。
2) 巻立厚が250mmと薄い構造で、また高架橋のため橋脚の日照がよく、工事完成後に乾燥収縮が促進され、有害なひび割れの発生するリスクが高い。
以上、業務経歴の詳細に相当する技術的体験の存在意義をどう表現するかを考えてきましたが、その考え方は、単純に
その業務をやらなかったらどれだけ障害や問題が生じたか を考えて簡単に表現が可能であるということです。
申込書の書き方 (建設部門・施工計画の方の場合) 2 技術的体験の概要
技術士二次試験の申込書においては、業務経歴の後は、5つの業績から1つを選択して「業務内容の詳細」を書かなければなりません。この時必要となるのが業績についての技術的体験の整理です。本研究所の講座では、この分析を「技術的体験チェックシート」を用いて添削形式で完成させていきます。
過去に本研究所の指導で学ばれた方の技術的体験(技術的体験論文)がどのように整理されたか検討過程を見てみましょう。
技術的体験の書き始めの項目は次の3項目となります。
- 名称、時期
- 立場
- 業務概要
1はそれほど問題ありませんが、2は立場に相当するものが何であるかを厳密に考える必要があります。そして 3.業務概要 として書き出す項目は次の4つからなります。
- 物件の規模、仕様、難易度等
- 応用技術(技術名)
- 自分の貢献
- 成果
1. 名称、時期
工事名:〇〇川河口橋高架橋耐震補強工事
工期:H〇年〇月〜H〇年〇月
2. 立場
発注者支援の施工管理担当技術者として、施工者から提出された施工計画書の精査と指導、工程・品質・出来形管理の確認と指導を行った。
3. 業務概要
1) 物件の規模、仕様、難易度等
〇〇橋のRC巻立耐震補強13基。
2) 応用技術(技術名)
塩化物イオンの拡散係数を算出。
膨張補償コンクリート。
3) 自分の貢献
塩害対策として、コンクリートの種類をNとBBに選定。
ひび割れ対策として、収縮率の高いBBに膨張補償コンクリートを提案。
4) 成果
コンクリートのひび割れ対策と塩害耐久性向上を両立。
以上、業務経歴の詳細に相当する技術的体験をどう表現するかを考えてきましたが、その冒頭部分は先に分析した業務経歴書を利用して簡単に出来上がるということです。
申込書の書き方 (建設部門・施工計画の方の場合) 1業務経歴
技術士二次試験の申込書の書き方について、数回に分けてご説明していきます。まずは業務経歴として表す5つの業績の概要です。
ここでは技術士試験資格要件である経験年数7年以上に相当する経歴スパンを満たすような5つの業績を上げていきます。
業績を考えるときに有効なのが次の5つの項目です。
- 業務名
- 職務内容
- 物件規模、形式
- 応用技術、貢献
- 成果
これらを業績ごとに考えていくと次のような表形式となります。
業務名 | 職務内容 | 物件規模、形式 | 応用技術、貢献 | 成果 | |
1 | 〇〇共同溝液状化対策工事 | 計画 | 綱矢板IIIw157枚(L=20m) | 綱矢板壁頭部連結を溶接に変更 | コストダウン〇割 |
2 プレ |
〇〇高架橋下部耐震補強工事 | 計画 | RC巻立13基(t=250mm) | コンクリートを対策区分で使い分け | 耐久性向上 |
3 プレ |
〇〇橋梁補修工事 | 計画 | バイルベント橋脚枕梁補修2基 | 地表に突出した杭計算を応用し枕梁変位量決定 | コストダウン3割 |
4 | 〇〇共同溝立坑工事 | 計画 | 立坑1基(t=1.3m、H=7m) | マスコンクリート温度ひび割れ対策既往代替 | 耐久性向上 |
5 | 〇〇共同溝工事 | 計画 | 現場打ちL=19m(t=250mm、H=2m) | 地下歩道スラブの止水構造改善 | 耐久性向上 |
※no. 2 、no. 3はこの次の作業となる業務内容の詳細の候補となる業績です。
この表を見た限りでは、一見冗長のようにも見えますが、実はこの内容がコンピテンシーの基となる使用要件を簡潔に備えているということです
ここで1番表現が難しいのは、応用技術貢献と成果の関連性です。すなわち「〇〇という貢献によって、〇〇という成果が生み出された」ことが表の文面から読み取れなければなりません。
残念ながら、この最初の表に表した内容では、その貢献内容と成果の因果関係がまだ十分とは言えません。そこで次のように修正してみました。
業務名 | 職務内容 | 物件規模、形式 | 応用技術、貢献 | 成果 | |
1 | 〇〇共同溝液状化対策工事 | 計画 | 綱矢板締切延長150m | 継手補強板寸法を鋼管杭協会の仕様に変更し | コストダウン〇割 |
2 プレ |
〇〇河口橋下部耐震補強工事 | 計画 | RC巻立13基 | 塩害対策区分別にセメントの種類をNとBBで選別し | 塩害抵抗性向上 |
3 プレ |
〇〇橋梁補修工事 | 計画 | パイルベント橋脚2基 | 併設橋脚の分離に必要な離隔を、既製杭杭頭変位量を応用し | 離隔を定量化 |
4 | 〇〇共同溝立坑工事 | 計画 | φ15m、H7m | ひび割れ注入工法を、特徴から材料を選定し | 防水性、耐久性を確保 |
5 | 〇〇共同溝工事 | 計画 | 現場打ちL=19m | スラブ上面に傾斜を設け、地中浸透水の排水計画を実施し | 漏水リスクを低減 |
この貢献欄だけを比べますと、次のように工夫して修正されています。
- 綱矢板壁頭部連結を溶接に変更 ⇒ 継手補強板寸法を鋼管杭協会の仕様に変更し
- てコンクリートを対策区分で使い分け ⇒ 塩害対策区分別にセメントの種類をNとBBで選別し
- 地表に突出した杭計算を応用し枕梁変位量決定 ⇒ 併設橋脚の分離に必要な離隔を、既製杭杭頭変位量を応用し
- マスコンクリート温度ひび割れ対策既往代替 ⇒ ひび割れ注入工法を、特徴から材料を選定し
- 地下歩道スラブの止水構造改善 ⇒ スラブ上面に傾斜を設け、地中浸透水の排水計画を実施し
こうした業績内容を具体化して、技術者としての貢献や工夫の内容を表していくとコンピテンシーが表現可能なのです。
業績を効果的にまとめたいとお考えの方はこの表形式に当てはめて考えてみてください。
もしご自分の場合について、どう書いたら良いからベストの書き方がわからないという方は、本研究所の講座にお申し込みになればマンツーマン・コーチング方式で懇切丁寧にご指導致します。
口頭試験および申込書対策としての業務経歴の書き方 6
(1) 大学院における学歴
大学院の場合はこれを記入しますが、この在学期間を経験年数に含める場合、経験年数に含められるのは最大2年です。たとえ4年在籍していても2年までしか経験年数に算入できません。
(2)大学院における研究経歴
業務経験年数に大学院における経験年数(最大2年)を加えた人は必ず記入してください。経験年数に大学院を加えていなくても最終学歴を大学院とした場合は記入しておいたほうがよいでしょう。やはり大学院で研究した実績は専門的な研究業績として評価されるからです。ですからそれに応じた研究履歴を書いておいたほうがいいと思います。
(3)大学院における研究経歴の注意点
ただし、大学院修了者の大学院での研究内容は、その研究内容が「科学技術に関する高等の専門的応用能力」を発揮する立場にあったという前提に基いています。従って、単に研究を目的として学習していたというだけでは研究経歴とはなり得ません。このため、研究内容がどのように学会、業界に貢献したかが理解できるような研究名称とするのが理想です。
研究内容欄には、修士論文あるいは博士論文のテーマを書いておけばよいかというと、それだけでは研究内容の意味がわからない場合もあります。そのような場合は適切な副題を添えて説明したほうが良いでしょう。あくまでも業績のプレゼン資料ですので、実際の論文タイトルそのままでなくてもかまわないと思います。
口頭試験および申込書対策としての業務経歴 5
引き続き、業務内容の詳細として書く業績を選定する上で検討すべきことを挙げておきます。
次のような業績である必要があります。
- 高等の専門的応用能力であり単純な作業ではない
- 技術論文として、事実判断と自分の見解が記述できる
- 技術的な問題点やその解決策など業務の実態が把握できている
- 解決策や対応策に独創的過程が見られる
- 分析結果の図表や計算根拠の式が残っている
できれば確認しておきたい事項としては下記のことをお調べください。
- クライアント名、相談内容、課題、テーマが明確に選定されている
- 専門知識、技術応用能力の技術的レベルは低くない
- 失敗した事項の原因、対策は把握しているか、正確な記録は
- 業績の成果、効果、改良点内容について、データーはあるか
- 問題点の解決策のプロセス、目標設定、投入資源と成果
- 反省と現時点での評価ができる
- 波及効果が期待できる
- 社会環境、将来展望動向についての見解がある
- 特許等の工業所有権が得られた
- 業務の結果はクライアント等にプレゼンテーションしているか(機密事項ではない)
なお、技術士として相応しくない業務
数値チェック、トレースなどの単純な業務、研究・設計等の単純な補助的業務あるいは庶務的な業務があり、業績がそのようなものであるかのような誤解を受けないようにします。もしこのような内容に読み取れそうな場合は別な観点で見直すか、またはその業務を除外します。技術士としてふさわしくない業務の例を以下に示します。
- 図面のトレース
- 報告書等のタイプ、清書、製本
- 文献等の資料の単純な整理・仕分け
- 機械動力の運転、修理、保守
- 試験用機器の単純操作
- ワープロ等のOA機器の操作等
口頭試験および申込書対策としての業務経歴 4
職務内容には、物件名(固有名称)と、「計画、研究、設計・・」、規模・型式、技術名・貢献、成果に相当する内容、すなわち職務内容の5要素を57文字以内で記入するようにしてください。
そしてこれら5項目を『多項式』のように連結して表してください。
物件名(固有名称)、規模・型式、技術名、成果の書き方について補足しておきます。
1) 物件名 できるだけ具体的な名称としてください。大きさや複雑さ以外に、所在地や発注者など物件の難易度に関する情報なら何でも結構です。
2) 職務内容 「計画、研究、設計、分析、試験、評価」からふさわしい内容を選定してください。提出文書では「物件名」と「職務内容」を連結して「業務名」としてください。
3) 規模・型式 あまりくどくど書かないでスペック(型式、数値、グレード、仕様)を表す情報としてシンプルにまとめるのが良いと思います。
4) 技術名・貢献 ○○解析技術、○○予測技術、○○制御技術など。
5) 成果 あまりくどくどと書かず、経済性や生産性、高品質をイメージさせるうれしい結果の数値で表してください。貢献と成果の因果関係がわかるようにしてください。
在職期間 (年月数) 技術士に適合する業務の期間が所定の年数を超えていることが必要です。このほか10年以内の業務であれば近年の新しい学術用語に適合するように名称に留意してください。また、業績は古くとも過去15年以内とし、古いものについては技術が陳腐化していないか確認します。今後利用される可能性のない古い技術は業績欄に書く意味がないので、現時点での応用可能性から再評価しなければなりません。
以上、職務内容の記入方法の留意点を書きましたが、これらの記述のねらいは次の2点に集約されることを忘れてはなりません。
- 同じ部門の類似テーマに系統的に従事してきたという技術分野の「一貫性」と、ある程度幅の広い業績を経験したという「経験の幅」の両者を同時に示す。
技術士のT型、Π型の業績のイメージです。
- 受験者の技術力が次第にアップしていることを示す。すなわち、補助→一般職→現場代理人→主任技術者→技術総括・指導など、年を経るにつれ,高度な内容の業務に従事しているという成長の過程が読み取れること。下図のように時間とともに高まっていく能力の様子が読み取れることです。
職務内容欄のチェック方法
以上、職務内容欄の作成にあたっての留意点を述べましたが、これらをチェックする方法を示します。職務内容は、次にあげる事項に照らし合わせて、見直すことも大切です。
- 技術的体験論文に記述する予定の業務と対応している
- 受験部門の専門とする事項に関する業務に相当している
- 自分が責任者となり協力者を指導して行った業務
- 技術士としてふさわしい業務(高等の専門的応用能力)
- 経済的にプラス面での評価がされている
- 現状技術から見て陳腐化しすぎていない業務
- 将来の見通しについて記述できる業務
口頭試験および申込書対策としての業務経歴 3
申込書の記入方法
受験申込書の記入方法は、詳しくは毎年出される技術士第二次試験「受験の手引き」を参照する必要がありますが、ここではとくに重要となる業務経歴票の記入上の注意を述べます。
業務経歴の欄の記入
(1) 業務経歴記入項目ごとの留意点
業務経歴には、勤務先(部課)、所在地(市区町村まで)、地位(職名)、職務内容、在職期間 (年月数)の欄があり、それぞれ以下の要領で記入します。
1) 勤務先(部課) 業務内容がイメージできるような部所名(30字以内)
2) 所在地(市区町村まで) 地域性が理解できるように
3) 地位(職名) 「科学技術に関する高等の専門的応用能力」を発揮する立場かつ、自分が責任者として主体となり協力者を指導して行った業務であることが読み取れる名称とします。
4) 職務内容 「計画、研究、設計、分析、試験または評価」といった名称を用いて記述する。単純な技能的な業務、研究・設計等に付随する庶務的な業務ではないとわかること。業務の末尾に、「○○の研究」、「○○の設計」、「○○の施工計画」などと記入します。
5) また、職務内容には、物件名(固有名称)と、「計画、研究、設計・・」、規模・型式、技術名・貢献、成果に相当する内容、すなわち職務内容の5要素を57文字以内で記入してください。
そしてこれら5項目を下図の『多項式』に従って連結して表してください。
この多項式に従って、各項目を作成し、連結していくと業績を簡潔に表すことが可能です。その実例を示します。
- ○○県○○会社、駐車場(○m2)コンクリート舗装工事の施工計画(暑中コンクリートを〜法で実施、沈下対策○以下)
- ○○県○○会社、駐車場(○m2)コンクリート舗装工事の施工計画(暑中コンクリートを〜法で実施、沈下対策○以下)
- ○○市○○ポンプ場○○ポンプ他○○機械設備の詳細設計(送水量○、揚程○、○台、〜設計法により最適設計を行う。省エネ目標○○を達成)
口頭試験および申込書対策としての業務経歴 2
さて前回は、技術士二次試験の申込書を作成するに当たっての留意点を示しました。再掲します。
●業務内容を技術士法に定められた業務となるようにする。
●業務経歴に補助的な業務を記入しない。
●業務経歴期間が7年を満たすようにする(技術士補でない人)。
●受験部門、選択科目、専門とする事項の内容を一致させる。
これらを下記に示す申し込み用紙に記入することとなります。
この用紙は、技術士試験申込書の一部であり、この業務経歴を作成した後、所属機関で証明をもらう必要があります。会社等でのそうした事務手続きの期間が必要ですので余裕をもって仕上げてください。
申込書提出時に事務官によって行われる申込書の審査は、単に法定の受験資格相当経験年数に達しているかどうかのチェックに過ぎません。しかし面接口頭試験時の審査・評価は、経歴や業績の中身そのものであって、経歴・業績をもとに受験者の技術者としての全貌を想定し、その全体像が技術士としてふさわしいかどうかを評価・判定します。
この面接時には、試験官は手元に試験の答案用紙と、申込書を置いているので、申込み書は答案と同等の意味を持ちます。したがって、受験申込書中の業務経歴欄は、受験者にとって、自身の技術的業績・経歴や専攻分野における技術力の優位性を、積極的にしかも自由に表現できる唯一の機会といえます。この唯一の機会を利用して、試験官全員に、受験者自身の技術者としての全体像がいかに技術士にふさわしいかを認識させるため、受験申込書記載の時点から戦略的に対応することが合格への第一歩なのです。
では、試験官は技術士(試験)に対してどのような能力がふさわしいと考えているか。それは技術士分科会のホームページに掲載されています。本講座のホームページではわかりやすく要約してまとめてありますので見てください。
技術士に求められる資質能力
- 問題・課題をそしゃくし、自分の持っている知識や技術を基礎にして、不足する知識・技術を身に付けて解決する。
- 取りまとめ力・管理能力 自分にはないが、問題解決の能力のある人材/組織を活用して目的を達成する能力(特に昨今はプロジェクトの規模が大きく複雑化し、自分の専門分野以外の広い知識分野も協調させて目的を達成しなければならないケースが多い。)
- 自らの専門分野の知識・見識を幅広く有して、業務上の課題を発見し、分析する能力
- 業務上の課題発見・分析能力: 様々な制約条件下での対策案を企画立案できる能力
- 全体を俯瞰し総合的に検討しコーディネートする能力
- 論理的思考能力、戦略的思考能力
- 技術をベースにした問題解決能力
- プロジェクトマネジメント能力(成果の品質、工程、コスト、人材等の投入等を管理できる能力)
- リスクマネジメント: 万一事故が発生した場合の影響を十分に認識し、社会に対する責任を常に持つ
この詳しい内容は、次のページにあります。
口頭試験および申込書対策としての業務経歴 1
1. 業務経歴では何が問われるか
技術士試験は、申込書を書く時点から始まっているといわれています。それは技術士にとって過去の業務経歴が重要であるとともに、その表現力も重要な能力と判断されるためです。受験申込みに必要な技術士第二次試験受験申込書の業務経歴は、提出後3段階での評価を受けることとなります。
1) 申込書提出時 事務官によって法定の受験資格相当経験年数に達しているかどうか
2) 筆記試験の審査時 経歴や業績が受験した技術部門に相当するか
3) 口頭試験時の審査 経歴をもとに受験者の技術者としての全貌を想定し、経歴の全体像が技術士としてふさわしいかどうかを評価する。経歴や業績の中身が吟味されます。
現在、下記のように2つの意味で現在は、業績の準備時期です。
- 2017年口頭試験対策
- 2018年申込書対策
そこで両者を兼ねて、業務経歴の書き方についてまとめます。
口頭試験での評価採点は、単に試験官の質問に対する受験者の受け答えの良否ではなく、むしろ評価の中心は業績の記載内容です。このため口頭試験を受ける方も業績の中身を整理しておく必要があります。
申込書の審査は、申し込み段階とそれから口頭試験段階で期間が経るにつれて次第に厳しい審査を受けることとなります。口頭試験のときには(試験官は手元に試験の答案用紙と、申込書を置いているので)申込み書は答案と同等の意味を持つようになります。つまり申込書は試験の何ヶ月も前から業績をアピールできる機会であり、積極的に自分の業績をPRできるチャンスとして利用すべきであるといえます。逆にいえば、申込書の不備は取り返しのつかない減点を、試験前に生む可能性もあるため、慎重に経歴内容の整合を図る必要があるわけです。
以上のことから、受験申込書は、受験資格適格という最低限提出書類としてではなく、受験者がいかに技術士にふさわしいかを認識させる、戦略的な第一歩と考えるべきなのです。
2. 申込書作成の留意点
受験申込書の第一の目的は、技術士の受験者としてふさわしいか否かを判断するものであり、その判断基準は技術士法に定義されています。このため、申込書から、
科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務
が読み取れるようにします。業務内容、期間などは最低条件を満たすようにしなければならなりません。以下に、技術士法第2条を示します。
第2条 この法律において「技術士」とは,第32条第1項の登録を受け,技術士の名称を用いて,科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。
ここで受験申込書を作成するに当たっての留意点を改めて以下に示します。
●業務内容を技術士法に定められた業務となるようにする。
●業務経歴に補助的な業務を記入しない。
●業務経歴期間が7年を満たすようにする(技術士補でない人)。
●受験部門、選択科目、専門とする事項の内容を一致させる。
また、筆記試験において受験者の技術的体験論文と受験申込書の経歴・業績との一致が合否の判定条件となり、さらに、口頭試験では受験申込書に記入した内容が本入の経歴かを厳しく問われます。これらのことにも留意して申込書を作成する必要があります。
コミニケーション能力高める 3 「留意点」とは品質を高めるための方策、提案
文部科学省技術士分科会では技術士二次試験の合格基準の1つとしてコミニケーション能力を挙げています。このため論文試験では出題者の意図に応じて解答せねばならず、いわば会話の受け答えみたいな、コミニケーションが成立しなければ良い答えとして評価を受けることができません。
引き続き今回も機械部門機械設計科目の平成29年III−1問題について考えてみましょう。
問題文はこうでした。
近年、豊富な経験およびノウハウを有する技術者の高齢化が進む一方で、後継者不足や生産拠点の海外移転に伴う人材空洞化等により。我が国のものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を伝承することが困難になってきている。そこで、先人のノウハウや知識を組織的に継承して技術力を維持・向上する仕組みの構築が求められている。このような社会的状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)ものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を効率的にかつ早期に伝承するために実施されている仕組みや方法を3つ挙げ、それぞれについて特長と問題点を述べよ。
(2)(1)で挙げた技術を伝承するための仕組みや方法の中で、最も効果的と考えるものを1つ選び、その問題点を解決するための提案を示せ。
(3)(2)で挙げた提案がもたらす効果と留意点を具体的に述べよ。
この問(3)の解答である留意点について、検証してみましょう。例えば次のような解答どうだと思われますか。
なおここでは最も効果的な技術伝承の指導法として「業務手順書の作成」を取り上げ、
その方法: 計算書、過去トラブルシートを参照することで手順ごとに具体的で正確な判断を下すその効果: (手順の習得に加えて)背景となる原理や理論も併せて理解し、単なるマニュアル的な知識では無い有機的な技術伝承が行える。
としていたとします。ではその留意点はどうでしょう。
(3)−2 留意点(品質を高めるための方策、提案)
1) 更新し易い手順書とするため、手順書に記載する数値基準の根拠となる原典等
を明記し法規変更や新技術の置き換え等が発生時に手順書の見直しを容易にする。
2) 手順書に失敗体験談を記載して継承者が失敗体験を学ぶ。失敗体験を学ぶことでリスクの大きさや重要ポイントの理解を向上させて手順項目の優先度や重要度を学ぶ。
3) 手順書を問題方式として継承者の理解度を把握する。また問題形式とすることで継承者
の思考能力を高めて課題設定や未知なるものへの取組み姿勢を向上させる。
1は、法令等が変わった際に手順書の修正をスピーディーに行うという、いわば作業の効率化を目指した提案です。留意点としては着目は悪くはありません。ただし技術伝承と言う目的に対して、あくまでも作業の効率化と言う手段的な提案であり、残念ながら最終的な効果には貢献していません。
2は、失敗の体験談から学ぶという、学びの本質的な要素をを目指したものであり、本質的な技術の伝承に係る作業と言えそうです。
こ3は、さらに能力を高めるために問題形式で思考能力を高めるとしています。この点は評価できるものですが、ただし、課題設定や未知なるものの取り組み姿勢・・で終わってしまっては最終的な成果である「技術伝承」には届きません。
取り組み姿勢とは、技術者としての素養に位置づけられるコンピテンシーであり、あくまでも個人の資質を高めるという領域を超えないものです。本来は個人の勉強時間の中で行うべきことなのではないでしょうか。
以上をまとめますと、解答の末尾に来る提案は最終的な出題者の要求にぴったりとつながる成果を示さなくてはならないということです。
ここでは技術伝承を求められていましたので、未経験の若手に技術が伝承されて、その技術が提唱された本人によってどのように応用されるかということに関連づけて説明しなければならないことです。こういった論理性を通すこと、すなわちロジカルシンキングすることが技術士に求められているということです。
当研究所では、技術士二次試験の論文検索を通して、文部省技術士分科会が提案する技術士のコンピテンシーをいかに高めるかを研究しております。こうした成果を適用してさらなる合格者を輩出することを目指しており、1発合格されたい方は是非お申し込み下さい。必ずご期待に応えて合格力をアップするよう指導しております
コミニケーション能力高める 2 「効果」とは結果として得られる経済的成果
技術士試験の合格基準の1つとしてコミニケーション能力が挙げられていることはご存知ですか。文部科学省技術士分科会の合格基準の中で1つの項目として示されています。
筆記試験では出題者の意図に応じて解答せねばならず、いわば会話の受け答えみたいな、コミニケーションが成立しなければ良い答えとして評価を受けることができません。そこで、筆記試験の解答の模範例からどのように答えればよいかを探ってみましょう。
引き続き今回も機械部門機械設計科目の平成29年III−1問題です。
問題文はこのようになっています。
近年、豊富な経験およびノウハウを有する技術者の高齢化が進む一方で、後継者不足や生産拠点の海外移転に伴う人材空洞化等により。我が国のものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を伝承することが困難になってきている。そこで、先人のノウハウや知識を組織的に継承して技術力を維持・向上する仕組みの構築が求められている。このような社会的状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)ものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を効率的にかつ早期に伝承するために実施されている仕組みや方法を3つ挙げ、それぞれについて特長と問題点を述べよ。
(2)(1)で挙げた技術を伝承するための仕組みや方法の中で、最も効果的と考えるものを1つ選び、その問題点を解決するための提案を示せ。
(3)(2)で挙げた提案がもたらす効果と留意点を具体的に述べよ。
この問(3)の解答である提案がもたらす効果について、検証してみましょう。例えば次のような解答どうだと思われますか。
なおここでは最も効果的な技術伝承の指導法として「業務手順書の作成」を取り上げ、その方法として、計算書、過去トラブルシートを参照することで手順ごとに具体的で正確な判断を下すこととしていたとします。ではその効果はどうでしょう。
(3)−1 効果
1) 3DCADや動画により組立調整作業のこつを表現するため文書だけで伝えることが
困難な作業が理解し易い。
2) 関連資料を参照しながら手順を確認するため、手順に加えて原理や理論も併せて習得し易い。
3) 共通技術を標準化し伝承する技術を絞り込み、伝承期間が短縮される。
1は、わかりやすさ、効率性としての効果であり、スピーディーに技術継承するための方法としての効果です。あくまでも補助的な機能であり、本来は技術継承の実質的な向上を図るものが望ましいといえます。
3は、共通技術の伝承をに係る作業の重複を避けて、システマティックな伝承形態をとることによって、伝承作業を合理化するというものです。これも本来の狙いである、技術伝承の中身が深まるというものではありませんので、もつと本質的効果を高める方策の提案が好ましいといえます。
2は、「原理や理論も合わせて習得する」効果を挙げています。確かにこうした基礎的な学習は技術者としての素養をを高め業務の質を改善することになります。が、しかしあくまでも個人の資質を高めるという領域を超えないものです。本来は業務遂行とは別に、個人の勉強時間の中で行うべきことなのではないでしょうか。こうした原理を学ぶことが、直接的に業務の技術継承に役立つかどうかと考えてみると、必ずしも直接的な効果は薄い可能性があります。
また別な見方をしますと、前段の方法論で、
技術継承の方法として「原理や理論も合わせて習得する」と宣言していたのです。その効果が、
「原理や理論も合わせて習得する」ことができる・・ではイコール、直接的すぎます。やったことそのものという感じになってしまいます。
そもそも「効果」を求める問いでは何を求めていたのかというと、提案した行動、選択を実施した結果として、諸々の因果関係の結果、どのような経済的に評価できる成果が得られたかという意味です。
〇〇ということをやった。だから、効果として、〇〇が得られた。という解答では、
やったことと結果が同じで、わかりやすすぎて問題として問い掛ける意味もありませんし、そもそも効果とは呼びません。
関連資料を参照することで、もちろん手順は確認しやすくなりますが、最終目的は手順を確認することではなく技術伝承することなのです。
ですのでここでは、個人の勉強のためになるだけではなく、そのことが最終的な目的である技術の伝承にどのようにつながっていくか、という目的につなげていかなければなりません。こうした、
出題者が要求していることに、どれだけ貢献できるかを示すことが効果的なプレゼン
なのです。この解答の場合正解は次のようになります。
2) 手順の習得に加えて、背景となる原理や理論も併せて理解し、単なるマニュアル的な知識では無い有機的な技術伝承が行える。
正解はこの「有機的な技術の伝承が行える」ということです。もう一度まとめますと、効果を考えるときにともすると、やったことと結果が同じになってしまう危険性があります。そこで、最終的な目的を忘れずに、
出題者が求めている目的に対して、ご自分の提案がどのような貢献をもたらすかということをはっきりと示さなくてはならない
ということです。こういった論理性を通すこと、すなわちロジカルシンキングすることが技術士に求められているということです。
当研究所では、技術士試験の評価原理を分析するなど、試験の解析を行っており、文部省技術士分科会の試験官になり代わって高い得点を得るための方法を提案しております。多くの受講生様の敗因分析より、今回ご紹介したような、コミュニケーション能力の不足に由来する減点、が不合格の支配的な因子となっており、こうした合格の難関をクリアできるように指導しています。その結果、答案がすっきりと読み取れて、多少余白が多かったり、内容的に弱点があったとしてもコンピテンシーが感じられて合格できるということです。このような方法で
誰でもご自身の体験で技術士筆記試験に合格できる
よう指導しております
コミニケーション能力高める1 目的を誤らないように提案する
技術士試験の合格基準の1つとしてコミニケーション能力が挙げられていることはご存知ですか。文部科学省技術士分科会の合格基準の中で1つの項目として示されています。
筆記試験では出題者の意図に応じて解答せねばならず、いわば会話の受け答えみたいな、コミニケーションが成立しなければ良い答えとして評価を受けることができません。そこで、筆記試験の解答の模範例からどのように答えればよいかを探ってみましょう。
まず1つ目は機械部門機械設計科目の平成29年III−1問題です。
問題文はこのようになっています。
て近年、豊富な経験およびノウハウを有する技術者の高齢化が進む一方で、後継者不足や生産拠点の海外移転に伴う人材空洞化等により。我が国のものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を伝承することが困難になってきている。そこで、先人のノウハウや知識を組織的に継承して技術力を維持・向上する仕組みの構築が求められている。このような社会的状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)ものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を効率的にかつ早期に伝承するために実施されている仕組みや方法を3つ挙げ、それぞれについて特長と問題点を述べよ。
(2)(1)で挙げた技術を伝承するための仕組みや方法の中で、最も効果的と考えるものを1つ選び、その問題点を解決するための提案を示せ。
(3)(2)で挙げた提案がもたらす効果と留意点を具体的に述べよ。
この問(2)の解答である問題解決提案について、検証してみましょう。例えば次のような解答どうだと思われますか。
なおここでは最も効果的な技術伝承の指導法として「業務手順書の作成」というものを取り上げたとします。その理由は、手順書作成によりノウハウを文書化することで作業者のスキルに左右されずに業務を行えるからです。ではその課題と解決策はどうでしょう。
(2)−2 問題解決提案
1) 文章だけでは分かり辛い暗黙知を含む業務手順を動画や3DCADを用いることで、機構
や原理を含めて視覚的に理解し開発時の課題や改善項目の抽出を可能とする。
2) 業務手順と併せて図面、DR結果や計算書、過去トラブルシートを記述し関連資料を参
照しながら手順を確認できるようにする。
3) 作成する手順書の種類が多いと作成時間が多くかかる。共通技術の設計標準化・
モジュール化を行って手順書を共通化して作成する手順書の種類を絞り込む。
1、3は問題ありませんが、2は技術伝承をに係る最終的な課題を解決する提案が述べられていないために答えとしては不十分です。関連資料を参照することで、もちろん手順は確認しやすくなりますが、最終目的は手順を確認することではなく技術伝承することなのです。
ですのでここでは、手順書を確認するにとどまらず、そのことが最終的な目的である技術の伝承にどのようにつながっていくか、という目的につなげていかなければなりません。こうした、
出題者が要求していることに、提案内容が貢献しているということが明確に分かることが大事
なのです。この解答の場合正解は次のようになります。
2) 業務手順と併せて図面、DR結果や計算書、過去トラブルシートを参照することで手順ごとに具体的で正確な判断を下す。
もう一度まとめますと、課題解決の提案を考えるときにともすると、解決のための解決になってしまい、手段的な説明で終わってしまう危険性があります。そこで、最終的な目的を忘れずに、
出題者が求めている目的に対してご自分の提案がどのような貢献をもたらすかということをはっきりと示さなくてはならない
ということです。こういった論理性を示すこと、すなわちロジカルシンキングすることが技術士に求められているということです。
当研究所では、技術士試験で高い評価を得るための方法を分析しており、数々の敗因分析よりこうした、コミュニケーション能力が欠けると思われることに由来する減点、を注意しなければならない点をしてクリアできるように指導しています。その結果、答案がすっきりと読み取れて最小限の内容で、特別難しい事を提案しなくても高いコンピテンシーが感じられて合格できるということです。このような方法で
誰でもご自身の体験で技術士筆記試験に合格できる
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衛生工学部門 建築環境施設 H29V-1 論文の解き方4
2017年の衛生工学部門 建築環境施設、III-1問題について、引き続き解きかたを考えてみましょう。今回は4回目です。
問題を再掲します。
建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむかって、連携して取り組むことを宣言している。先ず、その骨子となる5つの方針とその概要を述べよ。次に、各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、それらの概要と実現に向けての方法と課題を具体的に述べよ。
課題解決能力に相当する問2、3を解いてみましょう。
- 建築関連5団体の「地球環境・建築憲章」の骨子となる5つの方針概要
- 各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、概要を具体的に述べる
- 実現に向けての方法と課題を具体的に述べる。
問2と問3では、技術を3つ提案し、概要、実現に向けての方法と課題を述べることとなっています。前回まで5つの方針の2つをあげましたが、今回は、最後のひとつの技術を挙げて解いてみましょう。
3番目の技術は地球環境・建築憲を章の骨子となる5つの方針の4つ目、省資源・循環です。
地球環境・建築憲章の骨子となる5つの方針では「建築は可能な限り環境負荷の小さい、また再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され、建築の生涯の資源消費は最小限に留められる。」と宣言しています。
建築物の資源消費といえばコンクリート、鉄鋼、木材等の資源が相当しますが、ここは衛生工学部門、建築環境施設の視点から、水資源と非再生性資源、3R、ゼロエミッションの3つを取り上げることとします。これらの対応はそれぞれ次のようになっています。
1) 水資源保護
雨水又は雑排水等利用システム、各種節水システムの採用等により、水資源の消費低減を図る。
・建物規模、建物用途、地域性等を考慮し、排水再利用システム及び雨水使用システムの採用を検討する。
・水使用量の削減を図るため、節水コマに加えて、節水型便器など香水型機器の採用を検討する。
2) 非再生性資源の使用量削減
環境負荷低減に資する資機材を使用するとともに、廃棄物の削減及び適正処理、資源の循環的な利用等を行い、総合的に環境負荷の低減を図る。
・躯体材料にリサイクル資材の使用を検討し、躯体材料以外でも舗装材などにリサイクル資材の採用を検討する。
3) 3R、ゼロエミッションよる再資源化 廃棄物を削減しできるだけ再資源化行うために分別管理する。 設備機器等については環境配慮設計が行われたもの を優先し、製品の軽量化、部品点数削減、再生資源の活用、希少材料の使用量削減などを検討する。
こうしたことを考慮して解答すれば、正解は難しくはありません。
理想的な解答例
■省資源・循環における技術:雨水・排水の再利用技術
(概要)多元給水システムとして上水設備とは別に、雨水・排水の再利用水(雑用水)の2系統で供給し、上水使用量の低減を図る。
(実現に向けての方法と課題)多元給水システムとして上水設備とは別に、雨水・排水の再利用水(雑用水)の2系統で供給し、水の有効利用を図る事で上水使用量の低減や環境負荷削減が効果的となる。また、原水量と再利用水の水収支バランスを考慮し、設備の稼働率を上げ処理機能を十分に発揮させることのできる有効水深の確保が求められ、イニシャル・ランニングコストの経済性のとれた計画が課題となる。
技術士衛生工学部門の試験では、空調や換気、水道、照明設備の知識が求められる一方で、設計をや設備設計の計算そのものが求められる場合もあります。このような場合に必要となる判断は、答案用紙の枚数の範囲で何を伝えるかです。
試験答案では、実務の作業とは異なり、結果を採点して受験者の能力を測ることが目的です。このため
出題者は受験者の能力が顕著に現れやすいような問題形式をとる
ことが一般的です。逆に言うと、解答者は
答えを想定して、受験者の能力によって差が開きやすいような問題形式を想定すると正解の範囲が絞り込める
といえます。このため出題者の意図を把握して、かつ答案の枚数の範囲で表現できる技術者の能力が何であるかを考えることが正解を類推する上で役立ちます。
実は不合格となる方の多くは、こうした正解のイメージを持たずに、出題者の意図を明確に把握することなしに、解答している場合が多いのです。この場合、曖昧模糊とした中で考えねばならず、正解の方向性がはっきりとしません。このような状態では、正解する確率は低下すると考えざるをえません。
そこで本講座では、こうした出題者の意図を、試験の能力測定の目的や、解答の枚数、前提事項となる条件などから、正解と思われる範囲を狭く絞り込むことによって、結果として正解率を高める事を指導しています。
本研究所では、論文の書き方の指導だけでなく、正しい判断力や取り組み姿勢、技術士にふさわしい考え方についても、音声ガイドを用いたコーチングや電話・面談指導によってご説明しています。基本に立ち返って考え方をしっかり理解することで合格力を高めることが可能です。
1)長寿命(概要)世代を超えて使い続けられる価値ある社会資産になるように、企画・計画・設計・建設・運用・維持される。
2)自然共生(概要)自然環境と調和し、多様な生物との共存を図りながら、良好な社会環境の構成要素として形成される。
3)省エネルギー(概要)建築の生涯のエネルギー消費は、最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される。
4)省資源・循環(概要)可能な限り環境負荷の小さい、また、再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され生涯の資源消費は、最小限に留められる。
5)継承(概要)多様な地域の風土・歴史を尊重しつつ新しい文化として創造され、良好な成育環境として次世代に継承される。
衛生工学部門 建築環境施設 H29V-1 論文の解き方3
2017年の衛生工学部門 建築環境施設、III-1問題について、引き続き解きかたを考えてみましょう。
問題を再掲します。
建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむかって、連携して取り組むことを宣言している。先ず、その骨子となる5つの方針とその概要を述べよ。次に、各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、それらの概要と実現に向けての方法と課題を具体的に述べよ。
問題は、最初知識を問う問題から始まります。問いを整理するとこうなります。
- 建築関連5団体の「地球環境・建築憲章」の骨子となる5つの方針概要
- 各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、概要を具体的に述べる
- 実現に向けての方法と課題を具体的に述べる。
問2と問3について、技術を3つ提案し、概要、実現に向けての方法と課題を述べることとなっています。前回は5つの方針の1つ目、長寿命化でしたが、今回は、次の技術を挙げて解いてみましょう。
2番目の技術は地球環境・建築憲を章の骨子となる5つの方針の3つ目、省エネルギーです。
地球環境・建築憲章の骨子となる5つの方針では「建築の生涯のエネルギー消費は最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される」と宣言しています。
建築のエネルギー消費は今日、建築の生涯を通して最小限とすべきという考え方が広がっています。
その端的な例をゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)に見ることができます。このZEBとは、簡単に言うとエネルギーを消費しないか、または消費する分を内部で作り出して相殺するビルです。
建築物内部で人間が活動する限り、まったくエネルギーを消費しない建物を作ることは不可能です。このため、建物で消費したエネルギー量を建物で発生させたエネルギー量で相殺することで「ゼロ」とできるのです。
こうしたゼロ・エネルギー・ビルの考え方は国で以前から検討されており、2009年には経済産業省の研究会が開されています。現状では先進的な企業が研究や新製品開発の一環として発表する例が多数見られます。
その考え方は、具体的には、下の図のようにまず従来行われている省エネルギーさらに進め、エネルギー消費を従来比1/2程度に低減し、次にそのエネルギーを太陽光等の新エネルギーで賄い、相殺して最終的に建物のエネルギー消費を0にするというものです。この中で空調や照明エネルギーの省エネルギーが大きな役割を果たし、一方で創エネルギーと称する新たに得られるエネルギーが重要だということがうかがえます。
き
こうしたゼロエネルギービルの技術要素を整理しますと、下の図のように、左側のエネルギーを作り出す創エネルギー技術と省エネルギー技術からなるといえます。
こうしたことに対応していけば、だんだん正解に近づいていくに違いありません。
理想的な解答例
■省エネルギーにおける技術:ハイブリッド給湯システム技術
(概要)給湯負荷に柔軟に対応しつつ実用性とCO2低減を両立するシステムとし、燃焼式給湯器にヒートポンプ給湯機を組み合わせた給湯システムとする。
(実現に向けての方法と課題)給湯負荷変動に合わせ互いの機器能力性能を補完し合う事で、従来の燃焼式給湯器のみの場合と比べ、給湯システム全体の高効率化を向上させる。また省エネルギーの推進、地球温暖化防止に向けたCO2排出量の削減は大きな課題であり、業務用給湯分野においては、エネルギー利用の効率化が求められる。
技術士衛生工学部門の試験では、空調や換気、水道、照明設備に関するエネルギー消費をコントロールする知識が必要です。そしてそれとともに、建物あるいは施設全体としてどれだけエネルギー消費が生ずるかと言ったらトータルな考え方考えを欠かすことができません。衛生工学のプロとして、建築生産や省エネルギー、地球環境問題についての実務的な視点からの判断や行動力が問われる試験です。文部科学省では、過去問から予想可能なテーマの範囲を超えて、新しい視点から課題解決の対応力を試す出題を行っています。
こうした出題傾向に対して、知識を暗記してかかる勉強では歯が立ちません。これからは地道に課題解決能力を身につけて、新規の問題を解けるように力をつけていくしかないのです。従来の勉強法である、
模範答案を数多く暗記して、試験場で書き出す方法は通用しません。
一方、応用力は独学の暗記勉強では身に付かず、コーチングによって技術継承を受けるしかありません。
プロエンジニアとして、こうした応用力を試す問題を楽勝で乗り切れるような判断力を付けてみませんか。そういう安心できる対応力があれば1発合格は可能です。
本研究所では、論文の書き方の指導だけでなく、正しい判断力や取り組み姿勢、技術士にふさわしい考え方についても、音声ガイドを用いたコーチングや電話・面談指導によってご説明しています。基本に立ち返って考え方をしっかり理解することで合格力を高めることが可能です。
1)長寿命(概要)世代を超えて使い続けられる価値ある社会資産になるように、企画・計画・設計・建設・運用・維持される。
2)自然共生(概要)自然環境と調和し、多様な生物との共存を図りながら、良好な社会環境の構成要素として形成される。
3)省エネルギー(概要)建築の生涯のエネルギー消費は、最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される。
4)省資源・循環(概要)可能な限り環境負荷の小さい、また、再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され生涯の資源消費は、最小限に留められる。
5)継承(概要)多様な地域の風土・歴史を尊重しつつ新しい文化として創造され、良好な成育環境として次世代に継承される。
衛生工学部門 建築環境施設 H29V-1 論文の解き方2
2017年の衛生工学部門 建築環境施設、III-1問題について、引き続き解きかたを考えてみましょう。
問題はこうです。
建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむかって、連携して取り組むことを宣言している。先ず、その骨子となる5つの方針とその概要を述べよ。次に、各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、それらの概要と実現に向けての方法と課題を具体的に述べよ。
問題は、最初知識を問う問題から始まります。問いを整理するとこうなります。
- 建築関連5団体の「地球環境・建築憲章」の骨子となる5つの方針概要
- 各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、概要を具体的に述べる
- 実現に向けての方法と課題を具体的に述べる。
今回は問2と問3について解いてみましょう。技術を3つ提案し、概要、実現に向けての方法と課題を述べることとなっています。
最初の技術は地球環境・建築憲章の骨子となる5つの方針の1つ目、長寿命化です。
ところで長寿命が最近活発に求められるようになった背景には,LCA に基づく設計及び評価が重視されるようになってきたこと, また地球環境の面から考えても,建物の長寿命化が必要不可欠となり,今後は 100年使用し続けられる建築を建てるという考え方が示されたことなどがあります。
建築設備の寿命(耐用年数)に関しても,建築業協会や国土交通省が実施した耐久性向上技術調査委員会などによる評価が行われています。
建築設備の物理的寿命の改善も難しいにもかかわらず,それ以前にいわゆる物理的寿命を全うさせた設備が極めて少ないことがあります。改修工事に伴い建築設備の多くが残存寿命があるにもかかわらず、廃棄されているのです。さらには,OA 化対応,個別空調対応,耐震対策など,いわゆる社会的ニーズの変化に対応する必要もあります。このような観点からも寿命が短くなる危険性があるのです。
こうしたことに対応していけば、だんだん正解に近づいていくに違いありません。
理想的な解答例
■長寿命における技術:設備ユニット及び配管プレハブ化技術
(概要)施工及び維持管理の合理化や省力化に配慮し、主要な機器や配管材料は、耐久性や耐食性並びに耐震性を有し、耐用年数を満足させるものとする。
(実現に向けての方法と課題)スペースの確保と将来への対応として設備類は、点検・保守・取替えが容易に出来るようなスペースを確保して設置し、将来、増築や模様替えなどを想定し、配管ピットやトレンチなども有効活用する。また機器の配置にあたっては、平面計画だけでなく高さの検討も併せて計画し、メンテナビリティの向上や構造躯体や仕上げなどの建築と設備の分離を図る事が課題となる。
技術士衛生工学部門の試験では、空調や水道設備に関する設計施工の知識が必要です。そしてそれとともに、建築設備がおかれた環境を考えると、建築物や環境とどう適合をしていくかという考えも欠かすことができません。衛生工学の専門家にふさわしい、建築生産や環境共生についての実務的な視点からの判断や行動力が問われる試験です。文部科学省では、過去問から予想可能なテーマの範囲を超えて、新しい視点から課題解決の対応力を試す出題を行っています。
こうした出題傾向に対して、対策法を見出せない方もいらっしゃいます。今年のV-1問題の地球環境・建築憲章の5つの骨子は記憶にないと答えにくいものです。確かに2000年に制定されたものですから、そこまで復習なんてできません。しかし、暗記していないと答えはまったく見当もつかないものだったでしょうか。骨子の5項目すべて挙げるのはともかく、その後の記述は何とかなると思います。
こうした予想外はどの受験者も同じように難問として感じられたはずです。地球環境・建築憲章やの知識や経験のある方が何割もいたとは思えません。答えようのない問題にどうこたえるか、知識では対応不能な領域だったのです。こうした従来にない応用力を試す傾向は、実はすべての部門で進んでいます。
そして、このような問題では知識を暗記してかかることなんて無意味です。これまで蓄えた見識で、それぞれ正解は何かとその場で推論しながら考えるしかありません。出題者の意図を推し量って正解の方向を絞り込むしかないと思います。
今年の問題は、暗記では到底解けず、建築環境の範囲外まで領域を広げないと解けない問題でした。
応用力もとうとう小手先では通じないレベルとなってきたということです。
今後は、難解な問題での応用力練習が必要になると考えます。練習法を変えて真剣に応用力の勉強をされてみませんか。
プロエンジニアとして、楽勝に問題を乗り切れるような応用力を付けてみませんか。そういう安心できる対応力があれば楽勝で合格は可能です。
本研究所では、この添削指導のように、字句の直しだけでなく、答案を解くにあたっての考え方やりぃ技術者としの姿勢がどうあるべきかといった事についても、音声ガイドを用いたコーチングによってご説明しています。基本に立ち返って考え方をしっかり理解することで合格力を高めることが可能です。
衛生工学部門 建築環境施設 H29V-1論文の解き方1
2017年の衛生工学部門 建築環境施設、III-1問題について、解きかたを考えてみましょう。
問題はこうです。
建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむかって、連携して取り組むことを宣言している。先ず、その骨子となる5つの方針とその概要を述べよ。次に、各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、それらの概要と実現に向けての方法と課題を具体的に述べよ。
問題は、最初知識を問う問題から始まります。問いを整理するとこうなります。
- 建築関連5団体の「地球環境・建築憲章」の骨子となる5つの方針概要
- 各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、概要を具体的に述べる
- 実現に向けての方法と課題を具体的に述べる。
この最初の知識はともかくとして、後は地球環境問題に資する技術提案ができればよいのです。他仕様の知識が思いつかなくても答えは想像つくと思います。
まず、地球環境・建築憲章の骨子となる5つの方針概要とは何か。 これは暗記していなければわかりませんが、思い出せなくとも類推できなくもありません。省エネや資源循環とか常識的に言われていることです。答えはネット検索ですぐにわかります。
-
建築は世代を超えて使い続けられる価値ある社会資産となるように、企画・計画・設計・建設・運用・維持される。(長寿命)
-
建築は自然環境と調和し、多様な生物との共存をはかりながら、良好な社会環境の構成要素として形成される。(自然共生)
-
建築の生涯のエネルギー消費は最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される。(省エネルギー)
-
建築は可能な限り環境負荷の小さい、また再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され、建築の生涯の資源消費は最小限に留められる。(省資源・循環)
-
建築は多様な地域の風土・歴史を尊重しつつ新しい文化として創造され、良好な成育環境として次世代に継承される。(継承性)
この5つです。これをもとに書けばよいのです。
理想的な解答例
(1)骨子となる5つの方針とその概要
1)長寿命(概要)世代を超えて使い続けられる価値ある社会資産になるように、企画・計画・設計・建設・運用・維持される。
2)自然共生(概要)自然環境と調和し、多様な生物との共存を図りながら、良好な社会環境の構成要素として形成される。
3)省エネルギー(概要)建築の生涯のエネルギー消費は、最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される。
4)省資源・循環(概要)可能な限り環境負荷の小さい、また、再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され生涯の資源消費は、最小限に留められる。
5)継承(概要)多様な地域の風土・歴史を尊重しつつ新しい文化として創造され、良好な成育環境として次世代に継承される。
技術士衛生工学部門の試験では、空調や水道設備の知識を確認する問題だけではなく、衛生工学の専門家にふさわしい、省エネや資源循環のについての俯瞰的な視点からの判断や行動力が問われる試験です。文部科学省では、過去問から予想される見識の枠を超えて会社全体をマネジメントするプロエンジニアとしての能力を診断するため、毎年独自の課題を受験者に提案し、その課題を解決する能力を測ります。このため、
問い(1)は現在の環境に取り組むための前提条件に過ぎず、衛生工学技術者としての心構えを確認しているに過ぎない
ということです。
本研究所では、この添削指導のように、字句の直しだけでなく、答案を解くにあたっての考え方やりぃ技術者としの姿勢がどうあるべきかといった事についても、音声ガイドを用いたコーチングによってご説明しています。基本に立ち返って考え方をしっかり理解することで合格力を高めることが可能です。
総合技術管理部門 H29論文の解き方4
2017年の総合技術監理部門、記述式の論文、I-2問題について、引き続き解きかたを考えましょう。
今回は総監としての総合力、課題解決力が問われる問い(4)です。
(4)あなたが取り上げた事業の「将来の課題」について,その課題を部分的にでも解決又は達成する方策について,次の1)〜3)に沿って示せ。
1) 前述した「将来の課題」のうち1つを取り上げ,その課題が顕在化した状況を想像し,その顕在化により引き起こされる影響を記せ。
2) 将来においてこの課題が顕在化した場合,部分的にでも解決又は達成するための方策を記せ。
3) 将来においてこの課題を解決又は達成するために現在から検討若しくは実施すべき方策を記せ。
(4)の問題では、(3)の現在の課題に対して将来の課題が問われています。例年、総監論文では(3)(4)問題が合否の分かれ道となっており、注意が必要です。
問題の回答は3段階に求められており、
- 将来の課題による影響
- 今行える対策
- 将来行なう対策のために今から準備すべきこと
の3つが求められています。
こうした付帯条件の意味を正確に読み解いて、時間軸に沿って答えていくことが正解率を高めます。
(2)で述べた将来の課題として当初この方は、
- 建物維持保全をする技術者不足(社会問題)
- 建物の維持保全をするための調査件数が増え間に合わない
この2つを取り上げていました。
しかし、総監としての視点を表すなら、単なる建設事情の問題ではなく、総監の解決策につながりやすい課題を取り上げるのが良いかと思います。例えばこのような2つです。
- ロボット化や機械化が進み雇用が減る
- BIMデータにLC項目を盛り込み計画な維持保全管理
(4)ではこのような2つの方向性へのいずれかに相当する解決策を提案すればよいのです。
好ましくない解答例
(4) 建物維持保全工事の将来の課題の部分的解決又は達成方策
1) -1将来の課題 メンテナンスフリーとなる建材を使用して維持費の削減。
1) -2影響 建物の供用年数を想定しLCCの構成を建設時にウエイトをおく。
2) 解決策 シーリング材に依存せずガスケット材で止水ラインを構成する。
3) 現在から検討すべき事項 建物の供用期間を明確にして維持管理にかかるコストを建設時にメンテナンスフリーの仕様で外装材を構成する。
上記の解答は、建設部門施工積算科目としてはよくお考えになった内容だと感じております。しかしこの内容は残念ながら、総合技術監理の視点からは解答にそぐわない内容です。
ガスケット材が耐久性に優れている事は事実ですが、そのことは建築材料の技術であり総監の技術応用とは呼べません。または維持管理コストがかかるからと言って、その後の費用を材料に上乗せしてメンテナンスフリーにする、という考え方は維持管理工学のたった観点から意味のある判断だと思いますが、その概念的思考が示されていないため、ただの対策としての結果だけでは、総監の視点が読み取れません。
このため、
まずは総監の視点で応用可能な対策を絞り込み、それに合わせて具体的な対策を提案する
のがよいと思います。
例えば正解は次のような内容です。
理想的な解答例
(4) 建物維持保全工事の将来の課題の部分的解決又は達成方策
1) -1将来の課題 ロボット化や機械化が進み雇用が減る
1) -2影響 ロボット化進むことにより建設業の熟年工が減り,熟練工が持つ技術の伝承をする機会が減り,技術の質が低下する。
2) 解決策 維持保全のための現状把握の調査は,センサーや自動計測のデータをIoT で解析し,熟練工の経験や勘に依存していた判断を,若いエンジニアでもシステムを用いて判断できるようにする。
3) 現在から検討事項 施工情報をビッグデータ解析により集約し,ORのシュミレーションにより,若いエンジニアが予見困難な事象についてバックアップを推進する。
上記の解答は、総合技術監理の視点から具体的な提案がなされており、出題者の要求に沿って答えている好ましい内容であると言えそうです
技術士総合技術監理部門の試験は、要求される内容が複雑で短時間で解答することが困難な為に、ともすると、ただ要求に対して工学技術で対処していくだけという内容になりがちです。しかし本来は、総合技術監理部門技術士としての巧みな対応が求められているわけでして、QC7つ道具やリスクマネジメント、PDPC法、マズローの段階説・・・など青本で学んだ総合技術監理の要素技術を駆使して、巧みに解決することが求められています。
こうした出題者の隠れた要求に沿って丁寧に答えることが合格力を高めます。こうした試験の解答の裏側に潜む問題点については多くの受験者は理解しがたいものであり、たいていは気づかないで 減点されていると思われます。文部科学省では、上級エンジニアとしてのコンピテンシーとして、俯瞰的な視点や自らの専門分野と技術を超えた取りまとめ力を挙げており、問題文に数々の条件を付けることによって、それらのコンピテンシーを測ります。このため、
総合技術監理の5つの管理はひとつの見方にとどめ、それだけではなく俯瞰的な立場で巧みに取りまとめる解決策の提案が望ましい
ということです。
本研究所では、この答案の添削のように、一般論ではなく、受験者の論文をごとにベストの提案は何かを指導しております。このため各自の業績についてヒアリングしながらコーチングを行ってまいります。答案としての構成がふさわしくないと感じられた時は、コーチングの手法によって
- 事前に予定を確認し、相手のペースを尊重しながら行います。
- 十分な時間を確保し、面談ではオープンに話し合えるセミナールームを用意しています。
- 不安を取り除いてリラックスし、まずは受講者さんの緊張をほぐしてから取り組みます。
- コーチングの入り口では状況を整理して方向性を定めて話し合いをします。
- 目標を設定して解決のイメージを共有します。
- 過去の成功体験を聞き、課題解決の目標達成のために活用できる資源をアップします。
- 具体的に行動計画を作成し、実行に移しやすくします。
- チェックシートで繰り返し確認し、添削で補いながらとにかく練習します。
このような事をお勧めしております。
総合技術管理部門 H29論文の解き方3
2017年の総合技術管理部門、記述式の論文、I-2問題について、引き続き解きかたを考えましょう。
今回はいよい課題解決力が問われる問い(3)です。
(3)あなたが取り上げた事業の「現在の課題」について,その課題の背景及び部分的にでも解決又は達成する方策について,次の1)〜2)に沿って示せ。
1)(2)2)で詳述した「現在の課題」のうち1つを取り上げ,その課題の背景について,事業を行っている組織内部における制約,外部の事業環境の制約を区別して記せ。
2)この課題に対して,事業を継続する中で部分的にでも解決又は達成する方策と,部分的にでも解決又は達成された際の事業の状況について記せ。解決又は達成には,事業を取り巻く内外の制約を技術発展により乗り越えること,社会的なコンセンサスの下で内外の制約を除外すること,などの方向性が考えられるが,そのような方向性にも留意して記すこと。
(3)の問題文はちょっと複雑です。午後からは課題を分析する際の方向性を整理して、答えが発散しないようにするため、いくつかの付帯条件が示されています。この意味を正確に読み解くことが正解率を高めます。
1)では「現在の課題」の背景について,
- 事業を行っている組織内部における制約
- 外部の事業環境の制約
を区別して記せと求められています。この意味はわかりますでしょうか。
事業を行う組織内部の制約とは、例えば会社の社員数が少ないために大規模なプロジェクトは手がけることができないとか、役所に所属するため民間企業のような営利zを伴うプロジェクトは取り扱えない、とかいうような制約を意味しています。
一方、外部の事業環境の制約とは、経済環境が好況のため、人手不足によって労働力が調達できないとか、原油価格が下落して再生可能エネルギー普及の障害になるとかいった制約を意味しています。
また、2)では、 解決策の方向性について、
- 事業を取り巻く内外の制約を技術発展により乗り越える
- 社会的なコンセンサスの下で内外の制約を除外する
などの方向性が与えられています。この意味はお分かりになりますか。
「技術発展により乗り越える」とはiot技術やAI技術の導入によって、生産やサービスの問題を解決する方法です。近年では量子コンピューターの応用によって、組み合わせ最適化問題、たとえば交通渋滞の解決法とか問題が瞬時に解けるようになっており、このような最近のテクノロジーにより問題を解決するという方向性を意味しています。
一方、社会的なコンセンサスの下で内外の制約を除外するとは、どういう意味でしょう。この例としてTPPや車の燃費・排ガス規制などが挙げられます。すなわち、自らの主体だけで物事を解決するのではなく、関係する会社や国が協調して、取り決めを行うことによって、予想される問題を解決していくという方向性です。
まずはこのような2つの方向性へのいずれかに相当する解決策を提案すべきと言うそうです。
好ましくない解答例
(3)建物維持保全工事の現在の課題の背景及び部分的解決又は達成方策
1)特定天井下地の耐震改修工事の課題の背景
1)-1組織内部における制約 天井足場を架設するため,工事が着手されると該当範囲の部屋は全く使用できなくなる。
1)-2外部事業環境の制約 映画館,大ホール,アリーナなどは,工事ために天井足場が架設されるため,休館をしたりスペースを使用が出来なくなる。
2)事業を継続する中で部分的にでも解決又は達成する方策 吊ボルトによる天井支持を,鋼材を使用し構造体と一体化した下地として特定天井条件から外す。
上記の解答は、建設部門施工積算科目としてはよくお考えになった内容だと感じております。しかしこの内容は残念ながら、解決策の要求条件として挙げられていた条件にはそぐわない内容です。
1)は組織内部の制約、外部環境の制約には相当せず、2)は技術発展による解決でも、社会的なコンセンサスによる解決でもありません。ぴったり相当しており、回答としては誤りではありません。
このため、
問題文の枠組みに合わせて、2つの制約条件、2つの解決方向性に絞て考えるのが良い
と思います。
例えば正解は次のような内容です。
理想的な解答例
(3)建物維持保全工事の現在の課題の背景及び部分的解決又は達成方策
1)新築案件が多いため維持保全工事に担当者を配属できない課題の背景
1)-1 組織内部における制約 組織の管理者が近視眼的に生産性至上主義の考えに陥り,生産性の低い保全工事は,少ない配員で管理しなければならない。
1)-2 外部事業環境の制約 2020年までは首都圏は五輪関連の施設工事がピークとなる。保全工事は,少ない作業員で施工しなければならない。
2) 事業を継続する中で解決又は達成する方策 TPMを取り入れ,事業継続のパートナーとしての営業活動,維持保全を見越した設計,設備計画を行い施工の効率化を図る。
上記の解答は、制約条件について、それから改善策の方向性についてそれぞれ具体的な提案がなされており、出題者の要求に沿って答えている好ましい内容であると言えそうです
技術士総合技術監理部門の試験は、近年では青本に書かれている総合技術管理部門の要素技術を駆使するだけではなく、出題者の細かい付帯条件に沿って丁寧に答える問題形式が増えています。このような試験問題ですと、出題者の意図を正確に読み解いて答える必要があります。実際、受講生も再現答案を添削する際にも、このような出題者意図の読み誤りが発覚し、問題文を何度も解説している経緯がありました。
文部科学省では、上級エンジニアとしてのコンピテンシーとして、分析力や課題解決力、取りまとめ力、コミュニケーション能力等を挙げており、問題文に数々の条件を付けることによって、それらのコンピテンシーを測ります。このため、
問い(3)、課題解決問題は、出題条件にぴったり沿って丁寧に解く必要がある
ということです。これまでよく言われてきた
青本に掲載されている総合技術監理の5つの管理で述べればよいでは×
ということです。実務的な制約条件をどう考えるかとか、コスト問題や環境問題を技術開発や社会的コンセンサスによって乗り越えるといった
部門科目の技術だけではなく、俯瞰的な立場で取りまとめる解決策の提案が望ましい
ということです。
本研究所では、この答案の添削のように、一般論ではなく、それぞれの受験者の業績におけるベストの正解は何かという事を求めております。このため各自の業績についてヒアリングしながらコーチングを行ってまいります。答案としての構成がふさわしくないと感じられた時は、コーチングの手法によって
- 事前に予定を確認し、相手のペースを尊重しながら行います。
- 十分な時間を確保し、面談ではオープンに話し合えるセミナールームを用意しています。
- 不安を取り除いてリラックスし、まずは受講者さんの緊張をほぐしてから取り組みます。
- コーチングの入り口では状況を整理して方向性を定めて話し合いをします。
- 目標を設定して解決のイメージを共有します。
- 過去の成功体験を聞き、課題解決の目標達成のために活用できる資源をアップします。
- 具体的に行動計画を作成し、実行に移しやすくします。
- チェックシートで繰り返し確認し、添削で補いながらとにかく練習します。
このような事をお勧めしております。
総合技術管理部門 H29論文の解き方2
2017年の総合技術管理部門、記述式の論文、I-2問題について、引き続き解きかたを考えましょう。
今回は問い(2)です。
(2)あなたが取り上げた事業が対象としている経済,社会,環境などの持続可能性の観点からの課題について,総合技術監理の視点から示せ。
1) この事業における「過去の課題」を2つ取り上げ,詳述せよ。
2) この事業における「現在の課題」を2つ取り上げ,詳述せよ。
3) この事業における「将来の課題」を2つ取り上げ,顕在化の要因となる将来の変化を含めて詳述せよ。
問題は複雑ですが、問い(2)は本題である問い(3)以降の前提となる課題を定義できれば良いのです。
好ましくない解答例
(2)建物維持保全工事の持続可能性の課題
1)-1過去の課題-1 昭和56年以前の旧耐震基準の建物の耐震改修(BCP対策)
1)-2過去の課題-2 在来天井下地の耐震天井(BCP対策)
2)-1現在の課題-1 特定天井下地の耐震改修(BCP対策)
2)-2現在の課題-2 外壁タイルの補修工事(タイルの落下による危険防止)
3)-1将来の課題-1 建物維持保全をする技術者不足(社会問題)
3)-2将来の課題-2 建物の維持保全をするための調査件数が増え間に合わない
上記の解答はよくお考えになった内容だと感じております。上記の内容は、前提条件として挙げられていた条件にぴったり相当しており、回答としては誤りではありません。しかし建設部門施工科目の技術が前年に出すぎており、総合技術監理部門としての提案が見えません。
このため、業務内容は、部門、科目の要素技術そのものではなく、
総監としてどう取り組むかという解決の方向性を含めた課題と考えた方が良い
と思います。
例えば正解は次のような内容です。
理想的な解答例
(2)建物維持保全工事の持続可能性の課題
1)-1過去の課題-1 大地震に対する建築物の構造部材の耐震性の確保
1)-2過去の課題-2 建築材料の耐火被覆や防火材料の無石綿化。
2)-1現在の課題-1 新築案件が多いため維持保全工事に担当者を配属できない
2)-2現在の課題-2 外壁タイルにおける剥離落下防止
3)-1将来の課題-1 ロボット化や機械化が進み雇用が減る
3)-2将来の課題-2 BIMデータにLC項目を盛り込み計画な維持保全管理
技術士総合技術監理部門の試験は、総合技術監理部門の専門家にふさわしい、俯瞰的な視点からの判断や行動力が問われる試験です。このため建設部門や機械部門といった総監以外の技術部門の考えだけでは解答になりません。文部科学省では、部門の枠を超えてマネジメントする上級エンジニアとしての能力を診断するため、独自のケースを受験者自らが提案し、その業務に由来する課題解決能力を測ります。このため、
問い(2)は総監的な課題解決に至るための方針を俯瞰的に考えて示す
ということです。逆に考えるとあとに控える本題において答えやすいように、
青本に掲載されている総監の要素技術に関連付けて方策を展開すれば考えやすい
ということです。建物の維持管理をどうするかとか、リフォーム問題など建設部門の技術で執り行える事項ではなく、ロボット化やBIMといった
iotや未来志向の技術を含めて取りまとめる立場での解決策の提案が望ましい
ということです。
本研究所では、この答案の添削のように、一般論ではなく、あなたの業績におけるベストの正解は何かという事を求めております。このため各自の業績についてヒアリングしながらコーチングを行ってまいります。答案としての構成がふさわしくないと感じられた時は、コーチングの手法によって
- 業績の有用性を心から伝えて相手を力づける
- 問題点として感じた事を伝えて気づきを提供する
- 視野を広げる 質問、パワフル・クエスチョンを行う
- 未来志向と解決志向、すなわち可能性を引き出す質問をする
- 望んでいることを明確化する
- 五感に問い掛けて心の声を引き出す
- 問題点にぶち当たると視点を変えて、リフレーミングや客観視を促す
- 技術屋の視点ではなく、クライアントの目で見て考える
ことを勧めております。
総合技術管理部門 H29論文の解き方1
2017年の総合技術管理部門、記述式の論文、I-2問題について、解きかたを考えてみましょう。
問題はこうです。
2015年に「国連持続可能な開発サミット」が開催され,持続可能な開発目標(SDGs)を含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。これは,開発途上国の開発に関する課題にとどまるものではなく,世界全体の経済,社会及び環境の三側面を,不可分のものとして調和させる統合的取組である。
我が国でも政府がSDGs推進本部を設置し,実施指針を示している。その中では,「持続可能で強靭,そして誰一人取り残さない,経済,社会,環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことがビジョンとして掲げられ,8つの優先課題と具体的施策が示されている。表1がその具体的な内容であり,これらは日本としての施策の観点からまとめられているものの,総合技術監理部門の技術士にとっても参考となろう。
ここでは,総合技術監理に携わる技術士として,事業における持続可能性(Sustainability)に関する課題を考えていきたい。持続可能性は,持続可能な開発(持続可能な発展とも訳されており,この方が先進国の実態には近い。)の前提となる概念であるが,経済,社会,環境などが将来にわたって適切に維持・保全され,発展できることを意味している。
なお,事業は有期のプロジェクト(開始と終了が計画されている。)とは異なり,ある程度の継続性を前提としたまとまりとして捉えるべきものである。例えば,一定の地域における水循環システムを対象とした上下水道事業などが該当する。また,水供給のみに限定し上水事業として捉えることもできるし,水処理事業,浄水場維持管理事業などとして限定的に捉えることも可能である。ただし,例えば個々の浄水場建設や高度水処理システム更新工事などは一過性のプロジェクトであり,ここでの事業の定義とは異なる。その他にも事業としては,河川維持管理事業,道路交通安全事業,電気自動車事業,医薬品事業など様々なものが挙げられよう。
ここで,あなたがこれまでに経験した,あるいはよく知っている事業を1つ取り上げ,その事業が目指している社会ニーズの充足や目的とする成果物の創出などを考えたとき,事業が対象としている経済,社会,環境などの持続可能性について,その課題と解決の方向性について,総合技術監理の視点から以下の(1)〜(4)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは,「業務全体を俯瞰し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う」立場からの視点をいう。また,表1の内容は施策を示したものであり,参考として利用することは推奨するものの,この中から項目を選択することを誘導しているものではない。
なお,書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。
表1 8つの優先課題と具体的施策
1あらゆる人々の活躍の推進
■一億総活躍社会の実現
■女性活躍の推進
■子供の貧困対策
■障害者の自立と社会参加支援
■教育の充実
2健康・長寿の達成
■薬剤耐性対策
■途上国の感染症対策や保健システム強化,公衆衛生危機への対応
■アジアの高齢化への対応
3成長市場の創出,地域活性化,科学技術イノベーション
■有望市場の創出
■農山漁村の振興
■生産性向上
■科学技術イノベーション
■持続可能な都市
4持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
■国土強靭化の推進・防災
■水資源開発・水循環の取組
■質の高いインフラ投資の推進
5省・再生可能エネルギー,気候変動対策,循環型社会
■省・再生可能エネルギーの導入・国際展開の推進
■気候変動対策・循環型社会の構築
6生物多様性,森林,海洋等の環境の保全
■環境汚染への対応
■生物多様性の保全
■持続可能な森林・海洋・陸上資源
7平和と安全・安心社会の実現
■組織犯罪・人身取引・児童虐待等の対策推進
■平和構築・復興支援
■法の支配の促進
8SDGs実施推進の体制と手段・マルチステークホルダーパートナーシップ
■国際協力におけるSDGsの主流化
■途上国のSDGs実施体制支援
(1)本論文においてあなたが取り上げる事業の内容を次の1)〜3)に沿って示せ。
1)事業の名称及び概要を記せ。概要については,事業の対象範囲についても明示すること。
2)この事業の目的(充足すべき社会ニーズ)を記せ。
3)この事業の成果物(創出すべき製品,構造物,サービス,技術など)を記せ。
問題は複雑ですが、問い(1)は本題である問い(2)以降の前提となる業績を定義できれば良いのです。
好ましくない解答例
(1)事業内容
1)-1事業名称 首都圏を除く関東地区における建物維持保全工事
1)-2事業の概要 建物の屋上外壁修繕工事,耐震補強,天井下地補強工事
2)事業の目的 建物修繕維持,構造補強で倒壊防止,天井下地補強で落下防止
3)事業の成果物 水平震度1G垂直震度0.5Gに対応できる天井の組み方
上記の解答では、表1マーカー部に相当しており、条件的には誤りではありません。その業務内容は確かにわかりますが、いくつかの理由で答えとして適切ではありません。その理由は、
- 「建物維持保全工事」では、個々の工事自体は一過性のプロジェクトであり、開始と終了が計画されている有期のプロジェクトである。
- 建設部門の業務そのものに近く、総合技術管理部門の問題解決を前提としたまとまり感に欠ける。
このため、業務内容は、部門、科目の要素技術そのものではなく、
多少経営的なマネジメントまでを含む業務の総体と考えた方が良い
と思います。
例えば正解は次のような内容です。
理想的な解答例
(1)事業内容
1)-1事業名称 新築工事獲得を有利にするためのメンテ工事によるパートナー作りビジネス
1)-2事業の概要 建物の屋上外壁,耐震補強,天井下地補強,インフラ更新
2)事業の目的 顧客の建物への要望に即応し好感度UPし特命発注率を高める
3)事業の成果物 新築案件引渡後も継続的な受注ができ顧客の事業発展に貢献
技術士総合技術監理部門の試験では、総監の知識や、総監以外の建設部門や機械部門の知識を確認する試験ではなく、総合技術監理部門の専門家にふさわしい、俯瞰的な視点からの判断や行動力が問われる試験です。文部科学省では、この試験では部門の枠を超えて会社全体をマネジメントする上級プロエンジニアとしての能力を診断するため、独自のケースを受験者自らが提案し、その業務に由来する課題解決能力を測ります。このため、
問い(1)はプレゼン提案を考えるための前提条件に過ぎず、高度な業務である必要は無い
ということです。逆に考えるとあとに控える本題において答えやすいように、
単純で説明しやすいご自身の日常業務を取り上げることがベストである
ということです。ただし、ある程度を俯瞰的なマネジメントが役立つように建物のメンテというような個別の業務ではなく、
ある程度(経営者のような)俯瞰的な視点からの判断を必要とする、技術経営的に見て業務的に広がりのある業務
が良いでしょう。
本研究所では、上記の添削のように、字句の直しだけでなく、答案としての構成がふさわしくないと感じられた時は、音声ガイドを用いたコーチングにより骨子に立ち返って修正をしながら、総監としての合格力を高めることに努めております。
建設・道路U-2問題の解き方3
2017年の建設部門、道路のU-2問題について、引き続き解きかたを考えましょう。
問題はこうです。
A市では、バイパスが完了し市内の交通状況に変化が生じていることから、中心部の4車線の幹線道路について、歩行者と自転車の輻輳による危険性や様々な地域課題の解決に向け、道路空間の再配分を検討することになった。この検討業務を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ
(1)事前に調査する事項
(2)業務を進める手順
(3)業務を実施する際の工夫や留意事項
前回(2)まで解答しましたので、今回は(3)から。ここでは「業務を実施する際の工夫や留意事項」と求められていますが、「工夫、留意事項とは」何でしょう。
工夫、留意事項とは、作業の付加価値です。道路空間の再配分において、ただ、歩行者、自転車、車を必要とする幅〇mとする・・・ではなく、どうやってその品質を高めるかです。
あなたならどうするか「ものづくりの品質やサービスの品質を挙げる工夫を提案せよ」
と読み替えるとわかりやすいでしょう。
好ましくない解答例
(3)業務を実施する際の工夫や留意事項
1) 車両・自転車・歩行者の通行空間を分離する:自動車、自転車・歩行者の相互安全・円滑性のため通行空間を分離。
2) 自転車網を設定する:BP完成に伴う自転車交通の円滑化のため、対象エリアの自転車網を再設定。
3) 市街地の魅力を創出する:景観向上、防災機能の強化のため無電柱化する。
4) 沿道生活環境を確保する:大気汚染を浄化し、自動車騒音低減、道路粉塵を補足するため、道路緑化を行う。また、車道部の低騒音舗装を行う。
この解答では、業務課題解決の方法は確かにわかりますが、それをどのように工夫して上手に行うかという提案を答えていません。
- バイパスが完了して中心部の4車線の幹線道路の交通量が減っているから、その余裕を利用して歩行者と自転車道を広げる。
- 歩行者と自転車の輻輳による危険性があるから、両者を分離する。
- 地域の課題を探して、道路によって改善する。
実はこれを動巧みに行うかというのが問(3)の趣旨であり、一般的な道路計画は求めていないのです。そこでこのような、出題者が用意した特記事項に対して提案する問題で注意すべき事は
解決策の提案に示した事項に対して、効果的に、品質アップを図る方法を提案する
ということです。解決策は(2)で述べたので、それに対してただ対策するのではなく、の方向性を見極めて、業務手順を提案することです。
- 解決策を実施する際に問題となりそうなことを予測して、未然に解決する。
- コストがかかる要因を探して、コストダウンできる改善案を提案する。
- 長寿命化、高品質化、安全性、社会環境的に品質がアップするような提案をする。
こうした実施方法の改善案は常に求められることを前提に考えておくべきです。
試験官はこうした、特に答えを求めていない問いに対して、ちゃんと顧客の利益を考えて品質改善の提案ができるかを見極めて、プロエンジニアとしての対応力を採点しようとしてるわけです。ですから「解決策」の良さとともに、(3)の留意点でさらに改善されると技術者としての評価が高まります。
例えば正解はのような内容です。
理想的な解答例
(3)業務を実施する際の工夫や留意事項
@車線数(2車線に縮小)は時間単位の検証する
交通量は地域や路線により時間変動特性を有するため、2車線の妥当性検証は、それに応じた車線数を決定する必要がある。車線数縮小に伴う、ピーク・方向特性、大型車混入率等の変化を考慮した時間単位の交通量を検証し適切な車線数とする。
A細路交差点の集約化・改良し交差点容量向上する
車線数の縮小により細路交差点への新たな交通需要が発生する恐れがあり、細路交差点の効果的な集約化を行い右折交通量に応じた滞留長の確保、及び従道路側で小型車1台分の滞留スペースを確保する。
B歩行者・自転車道は余裕のある通行空間確保する
歩行者・自転車道とも、交通量に応じた幅員とするが、歩行者道は車椅子と歩行者の並行に必要な幅員とし、自転車道は、対向に必要な幅員を確保する。このため、各々余裕のある最小w=2.0mを確保する。
技術士試験は、知識を確認する試験ではなく専門家としての判断や行動力が問われる試験です。文部科学省ではプロエンジニアとしての能力を診断するため、解決策としてすべきこと以外に、任意で独創的な品質管理能力を測ります。このため、
言われたことをやるだけでなく、顧客のニーズを先取りして提案しなければならない。
ということです。今回の問題のように、一貫性をもって解決内容の高度化を図ることを提案できれば、
一般的に行われる道路技術を用いた改善や、最近のニーズを予測した提案をすると専門家らしさが増す
ということです。
このような解答者としてのマネジメント方法を学ぶのに役立つのが、コーチングです。 本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
建設・道路U-2問題の解き方2
2017年の建設部門、道路のU-2問題について、さらに解きかたを考えましょう。
問題はこうです。
A市では、バイパスが完了し市内の交通状況に変化が生じていることから、中心部の4車線の幹線道路について、歩行者と自転車の輻輳による危険性や様々な地域課題の解決に向け、道路空間の再配分を検討することになった。この検討業務を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ
(1)事前に調査する事項
(2)業務を進める手順
(3)業務を実施する際の工夫や留意事項
前回(1)を解答しましたので、今回は(2)から。ここでは「業務を進める手順」と求められていますが、「手順とは」何でしょう。
手順とは、作業の順番です。道路空間の再配分を検討する、すなわち歩行者、自転車、車を幅何mとし、交差点をどう作るかです。
好ましくない解答例
(2)業務を進める手順
1)主要道路の交通容量の解析:現道の再配分検討資料として対象エリアの主要道路について交通容量を解析。
2)主要地点の交通量推計:社会環境変化による主要地点の将来交通量推計。
3)混雑率の計算:現況・将来交通量の混雑率を把握。
4)現道の計画横断構成の設定:現道の歩行者・自転車の安全走行及び沿道環境向上を図った横断面構成を設定。
5)再配分に対する渋滞予測:再配分横断構成により渋滞予測・解析。
6)道路断面の変更に伴う環境アセス実施:再配分による沿道環境の変化を環境アセスで確認。
7)現道の計画横断構成の決定:上記の5)、6)を踏まえ計画横断構成を決定。
この解答では、実際の業務がどのように行われるかは確かにわかりますが、問題の焦点となってい次のことに答えていません。
- バイパスが完了して中心部の4車線の幹線道路の交通量が減っている。
- 歩行者と自転車の輻輳による危険性がある。
- 地域課題の解決が求められている。
実はこれに答えるのが問題の趣旨であり、一般的な道路計画の説明は求めていないのです。そこでこのような、出題者が用意した特記事項に対して提案する問題で注意すべき事は
提起された問題点の解決を最優先課題とし、一般的事項は省略する
ということです。そして、解決策の提案が求められていますので、漫然とただ調べるのではなく、解決策の方向性を見極めて、業務手順を提案することです。
- 中心部の4車線の幹線道路の交通量が減っているから、2車線とし、空いたスペースを有効に利用する。
- 歩行者と自転車の輻輳による危険性があるから、余裕を持って過ごできるよう各レーンを設ける。
- 地域課題として、道路空間の景観の向上が求められているため、電線を地中化する。
上記の提案はほんの一例にすぎません。こうした要求に対する答えを調べるとは決して難しくはありません。手っ取り早く調べる方法は「歩行者 自転車 共存 中心市街地」のキーワードでネット検索してみることです。例えば、
中心市街地活性のページでは、ちょっと大きな話ですが、地域課題である街並みの活性化をどのように取めば良いかという政策がうかがえます。
都市における自転車通行空間の創出のページでは多数の自治体による取り組みの事例が整理されており、道路空間の断面図、すなわち再配分の答えみたいなものまで示されています。>
岡山市の中心市街地活性化基本計画では5つの基本方針の一つに道路計画が挙げられています。
その中で、人が主役の都心交通システムをつくることや、自然・歴史・文化に触れ合える都心をつくることが挙げられており、地域課題の方針の参考となります。>
試験官はこうした、提案力や問題解決力を読み取って、プロエンジニアとしての判断力を採点しようとしてるわけです。ですから正解である答えの「手順」とともに、具体的解決の方向性を添えて述べると完全な答えとなります。
例えば正解はのような内容です。
理想的な解答例
(2)業務を進める手順
1)現道を2車線に縮小する前提の交通容量解析
現道の主要地点について2車線に縮小し、交通量が処理できることを解析する。
2)主要地点の交通量・混雑度推計
社会環境変化による主要地点の将来交通量を推計し、現況・将来交通量の混雑度を推計しその最大容量を目標とする。
3)2車線道路に縮小、渋滞予測し横断構成の設定
現道を2車線に縮小する条件で渋滞予測・解析し、
渋滞長が最小となる計画横断構成を設定する。
4)歩行者、自転車、自動車通行空間を各々分離するこ
とにより相互の通行安全性を向上させ、交通容量や走行速度低下を防ぎ、自動車交通の円滑化を図る。
5)無電柱化による景観保護:電力配電及び、通信に必要な地中配管のスペースを確保する。
6)沿道環境保護:緑化を進めるとともに、街の史跡を掘り起こし、市民や来訪者が自然・歴史・文化に容易に触れ合える街づくりをする。
技術士試験は、知識を確認する試験ではなく専門家としての判断や行動力が問われる試験です。文部科学省ではプロエンジニアとしての能力を診断するため、応用力や提案力といったマネジメント能力を測ります。このため、
時代にマッチした答えの方向性を推論できなければ点を取れない
ということです。逆に今回の問題のように、出題意図から類推して
今日本の各地で進められている道路の改善や革新を推論しながら答えると、驚くほど合格力が増す
ということです。
このような解答者としてのマネジメント方法を学ぶのに役立つのが、コーチングです。 本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
建設・道路U-2問題の解き方1
2017年の建設部門、道路のU-2問題について、解きかたを考えていきましょう。
問題は次のようなものでした。
A市では、バイパスが完了し市内の交通状況に変化が生じていることから、中心部の4車線の幹線道路について、歩行者と自転車の輻輳による危険性や様々な地域課題の解決に向け、道路空間の再配分を検討することになった。この検討業務を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。(1)事前に調査する事項
(2)業務を進める手順
(3)業務を実施する際の工夫や留意事項
まず(1)から。ここでは「調査する事項」と求められていますので、とりあえず調べればよいのでは・・と考えてしまいます。
好ましくない解答例
(1)事前に調査する事項:対象エリアを設定し、以下の調査を実施。
1) 道路交通量(車、自転車、歩行者)12h、24h、旅行速度
2) BP開通後の交通事故(死傷事故件数、死傷者数、事故率)
3) 主要道路の横断構成:道路の交通容量解析するための基礎データ
49 主な自転車利用施設:主要施設を最短経路で結ぶため自転車利用施設(鉄道駅、公共施設、大型商業施設)、駐輪場、規模。
この解答では、知調べる事項は確かにわかりますが、何のためにとか、調べる狙いが分かりません。調べるべき事項が正しいのか否か判断のしようがないのです。
そこでこのような、自由に提案する問題で注意すべき事は
解答者の考え方や狙いが読み取れる
ということです。ただ単に調べる調査事項が書かれているだけでなく、
- なぜそのことを調べる必要があるのか(必要性)
- そのことを調べる意義はどこにあるか(有用性)
- それによってもたらされる効果は(効果、経済貢献性)
といった根拠や未来に関することを添えて説明すると回答者の考え方が分かり易くなります。
試験官はこうした、受験者の考え方を読み取って、プロエンジニアとしての判断力を採点しようとしてるわけです。ですから正解である答えの「調査事項」とともに、理由や根拠を添えて述べると完全な答えとなります。
例えば正解はのような内容です
理想的な解答例
(1)事前に調査する事項
1)車線数縮小時の現交通量の処理が可能であるか検証するため、12h道路交通量(車、自転車、歩行者)を調べる。
2)将来道路網における混雑度を推計するため、対象エリア内の道路改良計画、都市計画等を調べる。
3)交通渋滞要因を把握するため主要路線の車線数、主要なボトルネック交差点、路上駐車状況を調べる。
4)市街地の魅力向上を図るため、無電柱化計画に必要な道路を含む周辺の既存電力・通信線網、及び地下空間を調べる。
5)緑化に適した樹種選定のため、土壌、年間の降水量、平均気温を調査する。
技術士試験は、知識を確認する試験ではなく専門家としての判断や行動力が問われる試験です。文部科学省ではプロエンジニアとしての能力を診断するため、コミニケーション能力やとりまとめ力といったマネジメント能力を測ります。このため、
答えの内容だけでなく、伝わりやすい答え方をしなければ点を取れない
ということです。逆に今回の問題のように、出題意図から類推して
出題者が求める内容、事項を推論しながら答えると、驚くほど合格力が増す
ということです。
このような解答者としてのマネジメント方法を学ぶのに役立つのが、コーチングです。 本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
建設・施工V問題の解き方3
2017年の建設部門、施工計画のV-2問題について引き続き、解きかたを考えていきましょう。
問題は次のようなものでした。
建設産業には、安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの、今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており、建設現場の生産性向上は避けて通ることのできない課題である。そのため、国土交通省においては、産官学が連携して、生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるように、i-Constructionに取り組んでいるところである。他方、政府においては、一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するために、働き方改革にチャレンジしている。建設産業は他産業に比べて厳しい労働環境にあり、小規模な企業の技能労働者を始めとして、働き方改革の改善が喫緊の課題となっている。これらを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で、建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ、その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ挙げ、適用できる場面と具体的な利用方法、及びそれによって得られる改善効果を、事例を交えながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるために、雇用や契約制度などに関して改善すべき事項を取り上げ、あなたの考えを述べよ。
模範解答
1.建設業の慢性的な課題
(1)課題:長時間労働を削減する。
背景:経験のある労働者の不足。
(2)課題:女性や高齢者が働きやすいように就労環境を整備する。
背景:男性社会の名残りが多く、衛生面や就労体制が男性中心である。
(3)課題:高所などの危険を伴う作業を削減する。
背景:人身事故が多く発生する。
2. i-Constructionの有効策と適用、効果、改善効果
有効なi-Construction:マシンコントロール
a. 適用できる場面:広範囲を切土や盛土する造成工事
b. 具体的な利用方法:地形測量情報を記憶した重機により、自動的に切土と盛り土量を計算しながら施工する。
c. 改善効果:@測量待ちがなく、施工位置と施工量が短時間で確定するので、作業時間の短縮になる。
(2)施工の難易度が事前に把握できるため、重機の種類変更などがスムーズにでき、工程遅延による運転者への負担が減少する。
(3)重機と測量作業者の近接作業がなくなり、事故防止になる。
以上は前回述べた範囲です。
次に(3)では、「建設部門における働き方改革を効果的に進めるために、雇用や契約制度などに関して改善すべき事項を取り上げ、あなたの考えを述べよ。」と求められていました。
ここで注意しなければならないのは、(3)は(2)とは別個の問題であり、(3)が(2)に関連して因果関係を持って答えなくても良いということです。一般的に、IIIの問題は(1)(2)(3)と論理的に順番に、例えば、課題、解決策、留意点というように論理的な関連性を持った答えを求められることが多いのです。しかし今回はそうではなく、(2)(3)は別個にそれぞれ別な分野を広範囲に答えるという出題形式でした。
実はこの問いについても、国土交通省で答えが示されていました。雇用および契約制度について、それぞれ次のような提案がされています。
雇用については、建設キャリアアップシステムの構築や外国人材の活用です。
建設キャリアアップシステムとは、建設会社の社員や専門業者、技能者が数々の仕事の経験を経てある種の専門家としてキャリアアップしていける職能形態を表しています。単に現在行われているojtやかつての徒弟制度を超えた新しいシステムとしての創造的な提案を求めているということです。
契約制度についても、建設業で懸案となっている労働時間や雇用保険の問題がありました。これについて国土交通省から次のような提案がされています。
(3)の解答としては上記ページの
項目1「適正な工期設定 、施工時期の平準化」
項目2「社会保険の法定福利費や安全衛生経費の確保」が相当します。
このような事項を取り上げて記述すればほぼ正解だということです。
今回の資料の原典「建設業の働き方として目指していくべき方向性(参考資料)」はここにありますのでぜひ目を通しておいてください。>
今回建設・施工のIII問題は、(1)(2)(3)と論理的につながった1連の答えを確認するという形式ではありませんでした。こうした出題意図を素早くとらえて、(2)(3)はまったく異なる別系統の回答即座に答えていくという回答してを取る必要がありました。
これは何を意味しているかというと、回答者の応用力を試していることがいえます。それとともに過去の答案練習で得られた模範解答暗記して解答する・・・という旧来の試験勉強を無効にするための狙いもありました。なぜなら、
技術者のコンピテンシーを図るためには、暗記でで解答できる問題であってはならない
からです。今後ますます、こうした応用力重視の傾向が顕著になるものと思われます。出題者は回答者の裏を書くように、これまでになかった問題形式で問い掛けることが予想されます。そのためには、出題意図を正しく読み解いて解答の方向性誤らないにする必要が高まってくるといえます。
技術士試験では、専門知識を暗記してそれを書けば合格できる場合はほとんどなくなりました。文部科学省では応用力や課題解決能力を測るため、
形式や暗記だけで書ける問題は全く出題されなく
なりました。逆に今回の問題のように、出題意図から類推して
独自の体験の中から答えを導き出す力を試す
問題が普通になっています。つまり答えがなく独自に答えを導く問題に強くならなければならないことです。
このような問題を解く方法を学ぶのに役立つのが、コーチングです。 本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
建設・施工V問題の解き方2
2017年の建設部門、施工計画のV-2問題について引き続き解きかたを考えていきましょう。
問題は次のようなものでした。
建設産業には、安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの、今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており、建設現場の生産性向上は避けて通ることのできない課題である。そのため、国土交通省においては、産官学が連携して、生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるように、i-Constructionに取り組んでいるところである。他方、政府においては、一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するために、働き方改革にチャレンジしている。建設産業は他産業に比べて厳しい労働環境にあり、小規模な企業の技能労働者を始めとして、働き方改革の改善が喫緊の課題となっている。これらを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で、建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ、その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ挙げ、適用できる場面と具体的な利用方法、及びそれによって得られる改善効果を、事例を交えながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるために、雇用や契約制度などに関して改善すべき事項を取り上げ、あなたの考えを述べよ。
模範解答
1.建設業の慢性的な課題
(1)課題:長時間労働を削減する。
背景:経験のある労働者の不足。
(2)課題:女性や高齢者が働きやすいように就労環境を整備する。
背景:男性社会の名残りが多く、衛生面や就労体制が男性中心である。
(3)課題:高所などの危険を伴う作業を削減する。
背景:人身事故が多く発生する。
以上は前回述べた範囲です。
(2)については、(1)で挙げた課題について、次のことが求められていました。
- フォローフォロー「あなたが有効と考える」i-Constructionの方策を1つ挙げよtop。
- 適用できる場面と具体的な利用方法を事例を交えながら説明せよ。
- それによって得られる改善効果を事例を交えながら説明せよ。
この「具体的な利用方法」とか「事例を述べる」といったあたりは各自の経験に依存しているとこ男ろであり、いわばそうした業務経験が前提となった設問だと言うことができます。
しかし経験だけでは答えることができずi-Constructionが実際にどのような土木・建設の場面で行えるかを説明しなければなりません。
この答えは、実はそんなにたくさんはありません。国土交通省の資料によると、
- ドローン等による3次元測量と検査
- 3次元測量データによる設計・施工計画
- ICT建設機械による施工(建設現場のiot)
- コンクリート・鉄筋のプレハブ化
この4つぐらいしか相当するものがありません。この資料をご覧ください。>
ですので、上記から1つを選んで、その具体的な状況を述べればほぼ正解ということになります。
模範解答の1つを掲載しておきます
2. i-Constructionの有効策と適用、効果、改善効果
有効なi-Construction:マシンコントロール
a. 適用できる場面:広範囲を切土や盛土する造成工事
b. 具体的な利用方法:地形測量情報を記憶した重機により、自動的に切土と盛り土量を計算しながら施工する。
c. 改善効果:@測量待ちがなく、施工位置と施工量が短時間で確定するので、作業時間の短縮になる。
A施工の難易度が事前に把握できるため、重機の種類変更などがスムーズにでき、工程遅延による運転者への負担が減少する。
B重機と測量作業者の近接作業がなくなり、事故防止になる。
実はこの受講者様もict建設機械による施工の合理化が解答として正解である事は練習の早い段階からお気づきになっていたようです。しかし、答案添削で手間取ってしまったのは、そうした知識の部分ではなく問い掛けられていた要件、
- まずi-Constructionの方策であることを述べる。
- 具体的な事例を挙げて、適用場面、利用方法を表現すること。
- 改善効果を具体的に説明すること
このようなことに添削の時間を要していたのです。
技術士試験では、専門知識が分かっていても、そのことを書けば答えとなる場合は少ないようです。文部科学省では応用力や課題解決能力を測るため、形式や暗記だけで書ける問題はほとんど出題しなくなりました。逆にこの問題のように、前提条件を挙げて独自の体験の中から答えを導き出す問題が普通になっています。つまり答えがなく独自に答えを導く問題だと言うことです。このような問題を解く方法を学ぶのに役立つのが、
- 出題意図の読み取解き方を学ぶこと
- 答える趣旨の正しさを細かい視点でチェックすること。
- 何通りもの考え方、答えを掲示して、自分なりの判断基準を養うこと
です。
そのような力を養うため、本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
建設・施工V問題の解き方1
2017年の建設部門、施工計画のV-2問題は次のような問題でした。
建設産業には、安全と成長を支える重要な役割が期待されているものの、今後10年間に労働力の大幅な減少が予想されており、建設現場の生産性向上は避けて通ることのできない課題である。そのため、国土交通省においては、産官学が連携して、生産性が高く魅力的な新しい建設現場が創出されるように、i-Constructionに取り組んでいるところである。他方、政府においては、一億総活躍社会の実現に向けた産業・世代間等における横断的な課題を解決するために、働き方改革にチャレンジしている。建設産業は他産業に比べて厳しい労働環境にあり、小規模な企業の技能労働者を始めとして、働き方改革の改善が喫緊の課題となっている。これらを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)働き方改革を考える上で、建設業が抱える慢性的な課題を3つ挙げ、その背景も含め説明せよ。
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが有効と考えるi-Constructionの方策を1つ挙げ、適用できる場面と具体的な利用方法、及びそれによって得られる改善効果を、事例を交えながら説明せよ。
(3)建設部門における働き方改革を効果的に進めるために、雇用や契約制度などに関して改善すべき事項を取り上げ、あなたの考えを述べよ。
(1)から考えていきましょう。まず働き方改革とはどの様な事を改革すべきなのか。ここでは問題文からそのヒントを読み解くことができます。
「・・小規模な企業の技能労働者を始めとして・・」というあたりです。
小規模な企業の技能労働者の労働環境と言えば、いわゆる建設の3「きつい、汚い、危険」をまず思い起こします。国土交通省の「i-Construction」の取り組みでは、建設現場の生産性を高めることで、企業の経営環境や労働環境を改善させ「給与が良く、十分な休暇が取得でき、将来に希望が持てる」という新3Kの実現を目指しています。
このことは他産業からも注目されている日本の雇用問題大きな課題です。実は、株式会社 いよぎん地域経済研究センターは、地域経済広報誌の中で「建設業の生産性向上の取り組み、3Kから新3Kへ、ICT活用で建設現場が変わる」という記事としてこの課題を紹介されています。従来の3Kを、新3Kで解決すること次のような図で簡潔に表しています。
そして、こうした過去の3Kを、新3Kで解決するのが、i-Construction なのです。
i-Construction とは、すでにドローンの活用などとして始まっている建設業の生産性向上の取り組みであり、一方で現場で働く人々の「働き方改革」も含んでいます。
ところで、全産業的に見て、建設業は生産性があまり改善されていませんでした。中でも過去 30 年間で生産性改善が最も遅れている「土工」と「コンクリート工」をターゲットとし、3つの具体的施策が国土交通省から打ち出されています。先の紹介記事の中で土木工事への「ICTの全面的な活用(土工)」について取り上げられていますのでぜひお読みください。
さて問(1)の答えですが、上記のことを踏まえて解答としては例えば次のような答えが正解と考えます。課題とともに背景が求められていますので、対にして表すのが良いでしょう。
1.建設業の慢性的な課題
(1)課題:長時間労働を削減する。
背景:経験のある労働者の不足。
(2)課題:女性や高齢者が働きやすいように就労環境を整備する。
背景:男性社会の名残りが多く、衛生面や就労体制が男性中心である。
(3)課題:高所などの危険を伴う作業を削減する。
背景:人身事故が多く発生する。
さて問題の解き方について導入部分の答えの考え方をしましたが、今回の問い(1)のように見識問題的性格が強い問いは、ネット検索ですぐに答えが出るために、解答でそれほど悩むことはありません。
一方、技術士試験では、答えがなく独自に答えを導く問題が出題されることが多いようで、これが解答者を悩ましています。そのような場合に役立つのが、
- 出題意図を正確に読み解く洞察力
- マーケットの動向などから正解の方向性を推論する力
です。
そのような力を養うため、本研究所では従来の添削による赤ペン指導ではなく音声ガイドを用いたコーチングにより合格力を高めるのに成果をあげています。
業績の書き方5 業務内容では仕事の成り行きではなく業績の骨格を表現する。
2017.09.20
引き続き、鉄道設計技士論文指導コースの指導内容から、技術士および鉄道設計技士合格に役立つ情報をお伝えします。業績論文の書き方は、技術士試験でも鉄道設計技士試験でも共通しています
鉄道設計技士、電気科目を目指す方に対するこの指導では、業務経歴の導入部分を効果的にまとめるため、論文の冒頭部分で書かれたことを一つ一つ検証しました。この指導内容についてご紹介します。
講座の様式である「業績記述チェックシート」には次のように書かれていました。
---------------------------------------------------
名称、時期
1. 名称:〇〇本線線通信ケーブル更新基本計画の策定
時期:平成〇年8月〜平成〇年8月
2. 立場 (指導監督的立場がわかるように)
基本計画策定の中心的役割
3. 業務概要(物件・対策の概要、自分の成果・貢献を宣言する。)
(1)物件の仕様
本施策により、〇〇線の基幹通信網は2本の光ケーブルと各駅機器室間に設置されたWDM光搬送装置により整備される。
(2)対策の概要
メタルケーブルを使用している設備の光化を実施し、基幹通信用のケーブルを光ケーブルのみで構成する。
(3)自分の貢献、応用技術名
通信品質の向上と設備の通信伝送方法の基盤整備、将来の管路スペース確保、工期短縮
(4)経済的成果
メタルケーブル網として単純取替する場合と比較して、約115億円から約97億円(約19%)のコスト低減を達成した。
4. 技術的問題点と解決方法
4-1 技術的問題点
(1)光化が必要な約10種類の設備を全て、各設備のメーカに新しく開発させて導入するとコストも工期もかかってしまう。
(2)全ての沿線設備向けに多量の光ケーブルを敷設すると、事故リスクの増加や障害早期復旧を妨げるため、設備管理上望ましくない。
4-2 解決策(技術的提案、4-1を改善に導いた方策)
(1) 設備の設置環境や特性毎に、極力既設設備に手を加えずに光化を実施した。
(2) 最寄の基幹光ケーブルに最も近い位置から必要最小限のアプローチ用の光ケーブルを敷設できる、無切断後分岐工法を導入した。
以上前回掲載範囲、以下今回の範囲です。
4-3 苦心した点(解決策を検討、遂行する上で検討した事)
(1)約〇〇kmの沿線の中で、メタルケーブルを使用している設備は何があるかを発見しなければならなかったこと。また、その設備の情報伝送方法の種類を全て把握し、元設備の改良の可否を検討すること。
(2)メタルケーブルは接触導通させれば電流が流れ、任意の個所で分岐が可能であるが、光ケーブルはそれが難しいため、回線構成の変更方法を検討すること。
(3)変更による設備投資上の優位性については、法定耐用年数を使用してDCF法等により経済性の比較を実施し、最適な光の心線数(〇〇心)と決定したこと。
この「苦心した点」では、苦心して労力や時間を要した内容ではなく、苦心を乗り越えるためにどんな工夫をしたかが求められています。業績を評価するために必要なのは、人的資源の投入量や原材料費の金額ではなく、その本人が
- どれだけ独創的なアイディアによって経済性の高い問題解決を行たか
- その業務で開発したアイディアが、他の分野でどれだけ経済的な波及効果が得られるか
を評価する必要があるからです。
上記(1)から(3)をこうした独創性や汎用性の視点からチェックしてみましょう。
(1) 設備の台数を確認し、設備の改良の可否を検討しなければならないという業務上の必要性を記していますが、独創的なアイデアでそれを行ったという内容が書かれていません。そこで、
普通は長時間かかる、設備の台数確認や設備の改良の可否検討を、〇〇のアイデアを導入した方法で〇〇というようにスピード化した。
というように表すと良いでしょう。
(2) メタルケーブルから光ケーブルに変更する際、回線構成の変更方法を検討することが多大なる作業を要したという仕事の大変さを述べていますが、そういう苦労話ではなく、ではどうやってそれを可能にしたか。すなわち、
メタルケーブル配線を光ケーブルに変更する際、光の分岐困難性を解決するため、送り配線へ変更することで全設備を接続可能とした。
と表現するとよいでしょう。
(3) 設備の投資判断を定量的にDCF法によって経済性評価したことは、独創性に相当します。ただしこのような、設備の選択的な投資判断を行う必要性があったならば、それに相当する問題点と解決策を、それぞれ前期4−1、4−2で宣言しておく必要があります。つまり、
- アピールしたい独創的な考え方を最後に提示するのは話の一貫性を失うために好ましくない。
- もしそのような主張があるならば、最初の問題点の提起、解決策を提案の段階で、その考え方を導く業績内容を記しておく必要がある
ということです。
こうした、業績をどのように表現したら技術者としての先見性や考え方の一貫性を表現できるかということは、技術士試験の勉強を始めたばかりの方にとっては難しいものです。そこで本講座ではコーチングによって業績内容をヒアリングし、業績の中にどのような独創的で汎用性の高い、すなわちプロエンジニアにふさわしい、アピールできるポイントを探索しながら指導する作業を毎日行っております。
業績の書き方4 業務内容では仕事の成り行きではなく業績の骨格を表現する。
2017.09.19
引き続き、鉄道設計技士論文指導コースの指導内容から、技術士および鉄道設計技士合格に役立つ情報をお伝えします。業績論文の書き方は、技術士試験でも鉄道設計技士試験でも共通しています
鉄道設計技士、電気科目を目指す方に対するこの指導では、業務経歴の導入部分を効果的にまとめるため、論文の業績の分析(技術問題点の抽出)部分で書かれたことを一つ一つ検証しました。この指導内容についてご紹介します。
講座の様式である「業績記述チェックシート」には次のように書かれていました。
---------------------------------------------------
名称、時期
1. 名称:〇〇本線線通信ケーブル更新基本計画の策定
時期:平成〇年8月〜平成〇年8月
2. 立場 (指導監督的立場がわかるように)
基本計画策定の中心的役割
3. 業務概要(物件・対策の概要、自分の成果・貢献を宣言する。)
(1)物件の仕様
本施策により、〇〇線の基幹通信網は2本の光ケーブルと各駅機器室間に設置されたWDM光搬送装置により整備される。
(2)対策の概要
メタルケーブルを使用している設備の光化を実施し、基幹通信用のケーブルを光ケーブルのみで構成する。
(3)自分の貢献、応用技術名
通信品質の向上と設備の通信伝送方法の基盤整備、将来の管路スペース確保、工期短縮
(4)経済的成果
メタルケーブル網として単純取替する場合と比較して、約115億円から約97億円(約19%)のコスト低減を達成した。
4. 技術的問題点と解決方法
4-1 技術的問題点
(1)光化が必要な約10種類の設備を全て、各設備のメーカに新しく開発させて導入するとコストも工期もかかってしまう。
(2)全ての沿線設備向けに多量の光ケーブルを敷設すると、事故リスクの増加や障害早期復旧を妨げるため、設備管理上望ましくない。
以上前回掲載範囲、以下今回の範囲です。
4-2 解決策(技術的提案、4-1を改善に導いた方策)
(1) 設備の設置環境や特性毎に、極力既設設備に手を加えずに光化を実施した。
(2) 最寄の基幹光ケーブルに最も近い位置から必要最小限のアプローチ用の光ケーブルを敷設できる、無切断後分岐工法を導入した。
解決策では技術部門、専門科目の技術を応用した解決策を提示版しなければなりません。そのためには前段の4−1で問題点を核心をつくことが必要で、 4−2では問題の核心を技術によって改善に導く方法論や原理、具体的方法について述べます。
上記解決策の(1) は「極力既設設備に手を加えず」と言う目的ねらいを書いていますが、ではどんな技術でそれを可能にしたか、という本質的な記述がありません。試験官からすると物足りなく感じる危険性があります。そこで具体的に
既存設備の出力をそのままに、信号変換装置を設けることによって、その二次側設備増することによってシステムを構成した事を述べると良いでしょう。すなわち
解決策では、ご自身が所属する部門の専門技術でもって、どうものづくりを実施したかを述べる
ということです。
解決策(2)も「最寄の基幹光ケーブルに最も近い位置から必要最小限のアプローチ用の光ケーブルを敷設できる、」と云う狙いを示していますが、ではそれをどうやって実施したかという肝心の原理が書かれていません。すなわち
光伝送はメタルと違って、 2分岐することができないため、複数の設備を直列に送り配線でつなげるしかない
という事情があるわけで、つまりこのような光伝送に由来すること、すなわち、
解決策では、部門の専門技術や原理、法則、工法などを背景として課題解決をどう進めたか
を表現するとよいでしょう。
こうした、業務に対して本来どのように取り組んでいくか、すなわち技術者としての貢献のあるべき姿が何かということは、ご自身ではわかりにくいものです。そこで本講座ではコーチングによって業績内容をヒアリングして、ケースバイケースの対応で、受講者様の業績の中から技術的貢献の核となるものを拾いあげるという作業を毎日の指導をの中で行っております。
業績の書き方3 業務内容では仕事の成り行きではなく業績の骨格を表現する。
2017.09.15
引き続き、鉄道設計技士論文指導コースの指導内容から、技術士および鉄道設計技士合格に役立つ情報をお伝えします。業績論文の書き方は、技術士試験でも鉄道設計技士試験でも共通しています
鉄道設計技士、電気科目を目指す方に対するこの指導では、業務経歴の導入部分を効果的にまとめるため、論文の業績の分析(技術問題点の抽出)部分で書かれたことを一つ一つ検証しました。この指導内容についてご紹介します。
講座の様式である「業績記述チェックシート」には次のように書かれていました。
---------------------------------------------------
名称、時期
1. 名称:〇〇本線線通信ケーブル更新基本計画の策定
時期:平成〇年8月〜平成〇年8月
2. 立場 (指導監督的立場がわかるように)
基本計画策定の中心的役割
3. 業務概要(物件・対策の概要、自分の成果・貢献を宣言する。)
(1)物件の仕様
本施策により、〇〇線の基幹通信網は2本の光ケーブルと各駅機器室間に設置されたWDM光搬送装置により整備される。
(2)対策の概要
メタルケーブルを使用している設備の光化を実施し、基幹通信用のケーブルを光ケーブルのみで構成する。
(3)自分の貢献、応用技術名
通信品質の向上と設備の通信伝送方法の基盤整備、将来の管路スペース確保、工期短縮
以上前回掲載範囲、以下今回の範囲です。
(4)経済的成果
メタルケーブル網として単純取替する場合と比較して、約115億円から約97億円(約19%)のコスト低減を達成した。
経済効果はこのような簡潔な表現で結構です。
4. 技術的問題点と解決方法
4-1 技術的問題点
(1)光化が必要な約10種類の設備を全て、各設備のメーカに新しく開発させて導入するとコストも工期もかかってしまう。
(2)全ての沿線設備向けに多量の光ケーブルを敷設すると、事故リスクの増加や障害早期復旧を妨げるため、設備管理上望ましくない。
(1)については、光通信の一般的な問題を取り上げるのではなく、ではそのような難問をどうやって解決するのかという解決策を想定し、それをベーストして、そこから実施する上での技術的問題点がどこにあるかを論じます。つまり問題点を論じる場合は、
初期段階のわかりやすい問題ではなく、専門的な技術的な要因を洗い出すことが求められています。このため、初期の問題点に対して技術的対処をした場合に、どんな新たな問題があるかという事を取り扱うのか理想的です。
つまり、試験官が論文を読んで、受験者の技術対応能力を採点しようとしているとき に、誰でもわかる初歩的な問題の指摘に終始していては、能力をアピールするチャンスを失ってしまいます。
そこで、問題の指摘は、
- 初期段階の技術対応については、常識の範囲内なので、あえて論じる必要はない。
- 初期の技術対応を実施した後に、なお存在する、実務的な問題には真剣に取り組むべき
ということです。
(2)について、「すべての設備に対処すると、設備故障による問題発生が増加する」ことは、想像に難くない話です。ですからここではまずは、設備故障による事故を想定した上で、どうやって対象とする設備を絞り込んでいくか、ということを前提に問題点を洗い出すのが良いでしょう。
また光通信に関して新規設備であるという理由から、特別故障率が高いという弱点があるならば、そのような根拠を添えて問題点の前提とすべきといえます。つまり、
- たくさんの作業項目の中から、目的達成に結びつく有効な対処を絞り込んでいく
- 対象の絞り込みの判断に工学的な根拠の裏付けがある
といった姿勢が大事なのです。
こうした、業務に対して本来どのように取り組んでいくか、すなわち技術者としての貢献のあるべき姿が何かということは、ご自身ではわかりにくいものです。そこで本講座ではコーチングによって業績内容をヒアリングして、ケースバイケースの対応で、受講者様の業績の中から技術的貢献の核となるものを拾いあげるという作業を毎日の指導をの中で行っております。