良くある減点ポイントと高得点の書き方 1 「要求趣旨にないことを書いたら大幅減点」

2017.01.17

 技術士試験ではどうやったら高得点が取れるか、一般的には

高度な内容を披露すれば点は取れる

と考えられている節があります。しかし実態はそうでは無く、高度な内容以前に、多くの稚拙な書き方によって大きく減点されています。まずはこうした減点要因をなくしていくことが先決です。そうすれば自然と技術内容を読んでもらえて、技術士にふさわしい答案ができていくというものです。

 今回は添削答案や試験当日の再現答案より、減点につながった答案の書き方と本来どうあるべきかという高得点を狙える書き方についてご説明します。今回は9回シリーズの第一回目で

要求趣旨にないことを書いたら大幅減点

です。 平成28年衛生工学部門建築環境II-2-1問題は

「超高層集合住宅における給水方式の決定の考え方と給水配管跡の留意点を述べよ」

という問題でした。この問題ではまず最初に給水方式決定の考え方を述べ、次に給水配管設計の留意点を述べます。

 出題趣旨とは超高層集合住宅での設備について求めていますので、給水配管にかかる鉛直方向の水圧が主要課題となり、この圧力をどう緩和するかということが課題となり、求められる考え方は高さ方向に2〜3の系統に分けて給水し、各系統ごとに最大圧力を緩和するということが表現できれば正解です。

 次に留意点は、上下方向の配管に生じる高い水圧をどう解消するかということ1点に焦点を絞って留意点を述べでは正解です。ところが添削でよく見かけるのは、一般的な配管設計に関する工夫、例えば防錆や施工法などです。これでは減点されても仕方ありません。なぜなら出題者の要求は超高層集合住宅の配管だからです。

 技術士試験は答えのない問題であって、だれでもご自分の体験に沿って考えて正解を造り出すことが可能です。ただし出題意図に反してしまうと大幅減されますのでこうした大きな出題の狙いを間違えずに読み取ることが合格のポイントとなります。

 今回は衛生工学部門の事例を挙げましたが、出題趣旨を読み取る作業は、建設部門でも機械部門でも何部門でも変わりはありません。技術知識に没頭せずに、部門の技術を越えて、こうした技術経営や市場動向を感じ取ることが正解の早道なのです。

 当研究所の指導では、マンツーマン個別指導により出題意図を間違えずに読み取って、確実に高得点を狙い、楽勝で合格出来るように指導ています。関心のある方は是非お問い合わせください。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 7 「今後の展望」とは専門家が唱える社会変革方針

2017.01.16

「今後の展望」とは専門家が唱える社会変革方針

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、7回シリーズでご説明します。今回はその最終回で、今後の展望」とは専門家が唱える社会変革方針です。

 技術士論文や業績論文のまとめとして「今後の展望」が求められることがよくありますが、この意味はご存知ですか。一般的には

「将来の市場や技術の動向は(たぶん)〜のように思われる。」

という漠然とした未来予想を自由に述べれば良いと思われがちですが、それは全く違います。今後の展望の真の意味は、

業績の実施内容の延長線上に今後専門家として何を提案すべきかという方針の表明

だからです。この理由は、プロのエンジニアというものは、

業績から学んだことをベースに、使命感から公益性向上のため、社会変革を目指すべき

ものだからです。これは義務感と言うより、(使命感ですから)自由意志でそうなると言う意味です。このため、将来展望を求めるときには、出題者からの解答の誘導とかはめったにありません。大事なことは、

  • 業績の実施内容をから学んだことをベースに述べる
  • 公益性を高めるような提案として、できれば社会変革を伴うような提案を述べる
  • 評論的な意見ではなく、専門家自らどう行動するかという方針を表明する

といった内容がふさわしいといえそうです。

 将来展望を問う問題は次のように言い換えることが可能です。

専門とする分野のこれからの発展方向についてどうお考えですか。

 そして例えばどんな答えがあり得るかという例をいくつか挙げてみましょう。

建設部門道路科目 道路設計を専門的に行ってきた業績の方なら

ビックデータ等の高度通信技術を活用した効果的な対策を行う必要がある。

情報活用方法として

対策箇所の絞り込み(ヒヤリハットや急ブレーキ箇所の対策)継続的なモニタリング(交差点方向別の必要所要時間の把握による交差点改良)対策の事前検証(効果の事前検証による追加対策の実施)

建設部門、鋼構造コンクリート 鋼構造設計をされていた方なら

 今後は、大応力がかかるプラント架構では、長周期に対応する制振性能を確保した円形鋼管ブレース補強工法にも着目し、耐震性を確保したい。一方、維持管理業務では、3Dスキャンを活用し、設計時点で正確な納まりをできるようにし、補強する。

建設部門、施工積算   現場所長をされた方なら

 建築は,エネルギー問題や環境問題は避けて通れない。エネルギー問題は,再生可能エネルギーを取り入れたゼロエネルギービル(ZEB)の取組,環境問題は,建設副産物の更なる縮減,再利用の推進と環境破壊を最小限にした施工方法の開発が必要である。

と言うような、安直な未来予測ではなく地に足のついた提案をすることが大切です。

 以上、「今後の展望」についてチェックポイントを述べてまいりましたが、本講座の業績指導では各受講者様の業績をヒアリングして、業績の課題、解決策の内容について意義の高いものどうかなどを判断して、その方が本当にアピールすべきものを見極めるように指導しています。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 6 「現時点での評価」とは、実施した当時の方針に対するPDCA

2017.01.14

「現時点での評価」とは、実施した当時の方針に対するPDCA

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、7回シリーズでご説明します。今回はその6回目で、「『現時点での評価』とは、実施した当時の方針に対するPDCA」です。

 技術士試験の申し込み書の業務内容の詳細では「現時点での評価」が求められますが、これをご理解されている方はほとんどいないみたいです。一般的には

  • まあまあ良かった。
  • うまく行った。

という肯定的な評価が良いと思われがちですが、それは全く逆です。現時点での評価の真の意味は

  • 実施内容について、当時の方針についての反省点をあげよ

という意味だからです。この理由は、

  • プロの業績に対してPDCAをやって、改善に努めているか
  • CPDを行って業績の研鑽に努めているか

ということの確認です。したがってPDCAの結果は厳しいチェックによって反省点が見いだせていることが必要です。実際、

仕事で厳しいチェックを行う人が高品質の仕事を行っている

という事は想像しやすい話です。このため技術士試験でもPDCAのチェックの厳しさが技術者の資質判定のチェック項目となっているのです。

 一方CPDもまた同じく資質判定のチェックも項目であり、過去に終えた業績に対してそのまま継続して改善点を探し続ける姿勢、すなわちCPDが長い目で見て能力を高める行動パターンだと試験官の間で一般的に位置付けられているということです。

 以上のことから「現時点での評価」では、

過去に行った業績に対して反省点を示す。業績の失敗点のポイントについて、当時の方針に関する誤りを指摘する。その体験からわかった(業績の改善につながる)知見を述べる。

この様な3段論法でまとめることが肝要です。

 以上4つのチェックポイントを述べてまいりましたが、本講座の業績指導では各受講者様の業績をヒアリングして、業績の課題、解決策の提案内容について論理性や技術士の提案として意義の高いものどうかなどを判断して、その方が本当にアピールすべきものを見極めるように指導しています。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 5 「解決策」とは、プロの提案を示すこと

2017.01.21

「解決策」とは、プロの提案を示すこと

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、7回シリーズでご説明します。今回はその5回目で、「『解決策』とは、プロの提案を示すこと」です。

 技術士試験では毎回決まって解決策が問われ、ほとんどこれで正解か否か評価されることとなります。解決策の意味は理解されているはずですが、効果的な、「点を取れる解決策」になっているでしょうか。よく見かけるのは、

単発的な作業内容の羅列となっている。部門・科目の技術応用が明確でない。課題との関連性があいまい。提案内容は間違いではないが、効果のほどが定かでない。

という場合を多く見かけます。

 解決策を求める理由は、エンジニアとして問題点を解決し、経済性の良い方向に導く力があるかどうかを確かめるためです。文部科学省技術士分科会が「コンピテンシー」を技術士の資質、能力としていることから、提案の結果として、経済的改善や品質改善等の効果がもたらされると推論できることがカギとなります。

 そのためには、対策が単発的な作業内容の羅列となっていては、個々の作業はできたとしても汎用的な対応が出来るとは限らないし、作業リストを告げられても、なぜそうするのかとか選定理由や根拠がわからないといった問題があります。この「対策が意味不明となってしまう」ことは試験官にマイナスの印象を与えて減点される原因となります。

 そこで、対策を述べる時は原理や根拠を添えて、〜のために〜する。という文で述べるようにすればよいのです。

 次に部門科目の応用技術が明確でない場合には、応用すべき技術と技術名を表すのが間違いありません。例えば機械部門流体力学の説明では、圧力と流速に関するベルヌーイの定理とか法則名を挙げて説明することです。また、こうした定理として確立したものでなくても、実用式みたいな計算式で表せるものなら技術と呼んで差し支えないと思います。〇〇式によって設計したというように式名を表せば良いのです。

 チェックポイントの3つ目の「課題と解決策の関連性」については、課題から解決策をどう導いたか、論理的な一貫性が読み取れる内容でなければなりません。

 例えば建設部門、施工の課題と解決策の例ですと

  • 課題  担い手不足を解消するため建設工事の工場生産比率を高める。
  • 解決策 プレキャストコンクリートを持ちいた工法を採用する。

と言うように「課題と解決策」が「目的と方策」の関係になるような提案となれば良いのです。

 4つ目のチェックポイント、「解決策が効果的であると分かる」には、目的とする効果を産むものであるか原理的な検証が第一に問われます。これは技術知識や経験の継続研鑽が必要となります。

 一方、原理的検証以外に、現在の市場動向から判断できる実現性があるかどうかも大事なチェックポイントで、こちらは考え方の転換ですぐにでも可能です。例えば建設部門、施工の解決策として、

「現場施工の分野で現場内の資材搬送にドローンを使用する」

という対策は、技術的に可能だとしても実現性の面で難点がありそうです。ドローンの使用は、測量や調査の分野で普及段階にはありますが、現場の施工においては研究段階かまだ開発中であり、そのような未来の技術を解決策として提案する事は好ましくありません。エンジニアの提案はプロの答えなので、現時点で実現性のあるものでなければ提案すべきではありません

 以上4つのチェックポイントを述べてまいりましたが、本講座の業績指導では各受講者様の業績をヒアリングして、業績の課題、解決策の提案内容について論理性や技術士の提案として意義の高いものどうかなどを判断して、その方が本当にアピールすべきものを見極めるように指導しています。どなたでも技術士にふさわしい業績をまとめることが可能です。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 4 「課題」とは前向きな方針

2017.01.11

「課題」とは前向きな方針

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、7回シリーズでご説明します。今回はその3回目で、「『課題』とは前向きな方針」です。

 技術士試験で毎回課題が問われますが、正確にその意味を把握されてる方が何割いるでしょうか。よく見かけるのは、問題点と課題の違いが曖昧なこと、解決策と課題を混同している場合です。

 課題の定義は、問題を解決するのにふさわしい技術的な方針です。なぜ技術士試験で「課題」が求められるのか。その理由は、

  • 技術的な判断根拠の正しさをチェックする
  • 実現性効果をチェックする

という2つの意味があります。
いずれもその課題によって技術解決が正しい方向に進んでいくかを確認するという意味があります。これは
解決策をいきなりチェックしたのでは、

  • その根拠がわからないために判断できない。
  • たまたまの思い付きではなく、原理的な技術応用を知りたい。
  • 汎用的な解決姿勢を見るために、個別な対応(解決策)ではなく、一般性のある対応姿勢や考え方を知りたい

ためです。

 課題とは、技術的な方針を含んで、解決策より広い視点で、問題解決に至る道筋を示す、必要があります。

 また、よくありがちなのが問題点と混同している場合です。例えば、

  • CO2濃度が高い。
  • CO2濃度が上昇している。

は問題文そのものです。悪い状況を表しているだけです。

  • CO2濃度が高いことが課題である。
  • CO2を排出しないことが課題である。

というほとんど同じ意味の2文も見かけますが、いずれも適切ではありません。CO2濃度や排出をを否定しているだけで、CO2濃度を下げるための前向きで技術的方針が見えないからです。課題をチエックするため、

  • 〜しない」という否定語、否定文ではなく、「〜を〜する」という肯定文で表す。

のも一法です。「CO2濃度が高い」問題点に対しては、一歩進んで、

  • 化石燃料を使わない。

という課題があり得ます。しかし、今日「CO2濃度=化石燃料」という常識がありますので、これだと方針として意味がありません。常識的過ぎる事項を、クライアントがわざわざ技術士から教わる必要はないからです。そこで、

  • 自然再生エネルギーを利用することが課題である。
  • 風力発電を普及させることが課題である。

というような前向きで具体的な方策を示すことによってだんだん技術的な方針が言えてくるということです。

 そして技術士試験では、専門とする部門、科目によって取り扱う技術が異なります。このため、同じ機械部門でも機械設計材料力学流体力学では、技術の視点が異なるため課題の書き方が違ってきます。先程の例ですと、機械部門の3つの科目でそれぞれ、

  • 機械設計 風力発電による高効率発電が課題である。
  • 材料力学 軽くて強度の高い風力発電用風車の開発が課題である。
  • 流体力学 風力エネルギーを風車の回転力に変換する高効率な風車の開発が課題である。

と言うように、技術士試験では専門とする部門、科目の技術が問われますので、ぴったりの課題を挙げる必要があります。

 また、この技術方針は、技術士が技術者に指導する際に必要です。技術士は一般的に技術マネージャーとなり他の技術者を指導する役目があります。ですから、

専門用語を使って、技術課題を技術者に正確、素早く伝える。

必要があるのです。そのときに必要なのは、明確な技術方針です。

 部下に対して否定語で「CO2を出すな」というだけでは、どうしたら良いのか迷うだけです。技術部門の組織で無駄なく正確に作業指示するには、技術者に通じる専門用語で語る前向きな技術方針が必要です。市民に対するプレゼンと違って、仕事の効率を考えると深い内容を1回で短時間で伝える必要があります。技術者なら、こと細かく指示しなくても、自然エネルギーなのか太陽光なのか技術方針さえわかれば行動可能です。

 そして、もうひとつ課題で大事なことは、その考え方、方針が効果的である。(実施したとき効果が高いと思われる)ことです。前記の風車の例では、今から昔ながらのオランダの風車小屋にあるような風車は提案できません。技術進歩の結果、カーボン繊維やアルミ合金が軽くて強度があることが自明だからです。

 つまり、プロエンジニアとして現状の技術レベルを考慮して、経済性を高める貢献をする、すなわち技術経営の視点が求められるのです。

 以上まとめますと、

  • 課題とは問題を解決するのにふさわしい技術的な方針である。(問題点の言葉ではない。)
  • 専門とする部門、科目の専門技術が表れている。(部下の技術者がすぐに実施可能である)
  • 実施したときに効果的である。(現在の技術レベルを考慮して経済性が高いといえる)

となります。

 本講座の業績指導では各受講者様の業績をヒアリングして、課題が技術士の方針判断としてふさわしいものかどうか技術的根拠経済性独創性などを判断して、その方が一番に提案すべきことが何かということを見極めるようにしています。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 3 技術士にふさわしい貢献の3条件

2017.01.06

技術士にふさわしい貢献の3条件

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、7回シリーズでご説明します。今回はその3回目で、「技術士にふさわしい貢献の3条件」です。

 技術士にふさわしい業績の根拠は何かという問いに対して、独創的な工夫があったことを挙げる方が多いと思います。筆記試験の問題でも工夫を求める問いかけが多いようです。これは何を意味しているかというと、工夫によって今までなかった新しい成果が得られたことをもって技術士の貢献と解釈するからです。

 技術開発の現場での発明は、担当する技術者のアイデアや工夫によってもたらされています。また困難なプロジェクトを遂行するために、プロジェクトマネージャーの工夫や独創的な対応がその成否を分けることが少なくありません。

つまり「貢献」の意味は

独創的な工夫の結果として、(従来得られなかった)成果が導かれている

ことだといえます。

こうした工夫に対する誤解としてよく見受けられるのが、

  • 日本で初めて・・・した。(前例がない実施例)
  • 特許出願できた(商品、考え方として前例がない)
  • 論文発表できた(新しい発見、発明)

などです。

 これらは、前例がなくただ新しいことをもって独創と解釈しているわけですが、これらは真の独創ではありません。前例が無いのは、安全性や経済的な理由があるから避けているだけのことであって、その理由を解消して初めて貢献として意味があると言うものです。

 また一方、技術応用的な意味の薄い工夫は、やはり技術士の貢献としてふさわしくありません。

 実用新案の消しゴム付き鉛筆があります。鉛筆の一端に消しゴムが付いた商品で、書きながら頭の消しゴムで消すこともできる便利な商品です。しかし鉛筆に消しゴムを取りつけたら便利である事は誰もが考えることですし、鉛筆に消しゴムを取り付ける事は困難はありません。ですのでこのような事例は実用新案として成立はしますが、技術士の貢献にはならないと言うことです。

 ここで技術士にふさわしい独創的な提案の定義となる3条件をまとめておきましょう。

  • これまで(従来法では)安全性や経済性の理由から実施困難であったことを可能としている
  • 解決するために(専門とする部門、科目の)技術応用の工夫を行ったことがきっかけとなっている。
  • 独創的な工夫の結果として経済的な成果が得られている。

 こうした3条件をチェックすることによって技術士にふさわしい貢献の判断が明確になっていきます。

 紛らわしい事例を一件紹介します。かなり以前ですが、空調ダクトの切り替えに、ダンパーを3個使用して、水配管の3方弁と同じように流れを閉止しても圧力を上昇させることなく循環流を保ちながら制御するという方式を提案された方がいました。そのような事例がどこにもないため、独創的と解釈されたわけです。

 この事例を先程の3つの条件照らし合わせてみると、

 ダンパーの制御に専門とする部門の技術応用があることから条件2は満たしています。また、ある程度省エネ性が得られることから条件3も満たしています。一方、条件1は満たしていません。

 なぜなら、(条件1)ダンパーを複数組み合わせる事は設備費がかさむため経済的理由から誰も行わないということで、この業績では経済性の問題を解決できていなかったのです。

 現実的な選択としては、空気ダクトの切り替えはダンパー単独で行うことが一般的で、水配管のようには行いません。なぜかと言うと

  • 水配管と違って空気ダクトは空気が圧縮性流体であるため、その冗長性から水配管にあるような厳密な制御する必要がない。
  • 末端の枝管を閉止することによって、根元の送風機を制御するような機構が早くから取り入れられていた。

という理由があったからです。

 このように技術的な工夫は技術士の貢献の元となりますが、その判断は深い吟味が必要です。

 本講座の業績指導では各受講者様の業績をヒアリングして、その工夫が真に技術士の貢献として意味のあるものかどうか技術的根拠や経済性、独創性などを吟味して、その方が本当にアピールすべきものが何かを見極めるようにしていますので、技術士にふさわしい業績を見誤ることなく安心して業績のプレゼンが可能です。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 2 がんばりではなく技術応用による貢献を訴える

2017.01.05

申込書にはがんばりではなく技術応用による貢献を訴える。

 申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、今日から7回シリーズでご説明します。今回はその2回目で、「がんばりではなく技術応用による貢献を訴える」です。

 申込書の中で技術士にふさわしい業績を訴えと言うと、大抵の方がイメージするのが「私は頑張った」、「努力した」ことを表現すればよいとお考えのようですが、これは全く正反対です。

 頑張ってできた業績や努力して初めて成功した事例は、言い換えると二度と再現することが困難な事例に相当するわけで、業績の紹介としては決して良い話ではありません。また一方、能力資質面から申し上げると、そのように努力しなければならないという事は基本的な能力が低いことを意味しており、例えば仕事ができる人なら楽々できることなのに、能力のない人が行うと苦労伴うと言う、能力不足を露呈することになりかねません。

 ではここは何を訴えれば良いか、答えは体系的な技術応用による貢献を訴えることです。すなわち

  • 努力ではなく、技術体系から引用する。
  • 固有技術を取り出して実際のケースに当てはめて応用する。
  • その結果毎回必ず信頼性の高い成果が得られる

ことになります。技術体系から引用するだけなので、自分自身はそれほど努力しませんし、事例が変わっても対応する技術を持ってくればすぐにベストの対応が可能です。

 つまり努力ではなく、技術体系を背景とした技術の引用技術応用を訴えれば良いわけです。ある意味努力を避けて、いつも楽をして仕事をするのと同じになります。業績の表現と言えば努力を前面に出すことが定番だと考えている方にとって目からウロコの発見かもしれません。ある方はこの私の指導に対して驚きを次のように表現されています。

ITエンジニアリング株式会社事業部長 加藤様 技術士情報工学部門(情報システム・データ工学)に合格 <口頭試験コースA受講> の合格者の声(電話インタビュー、←クリックすると音声が聴けます。 テキスト版はこちら)

 スマホでWMA形式の音声ファイルを聴くには、iPhoneの場合ですとmedia player OPlayer Liteなどのアプリが必要です。

問2 講座で学んだことで印象に残っていることはどんなことですか。

「技術士というのは、一生懸命苦労して成功すればいいというものではない。何回やってもうまくいくという方法論を持って、楽に成功することが良いことだ。」(言葉は正確でないかもしれませんが)という考え方を聞いて、これまで、「うまく行ったことがいかに大変であったか」という説明をしようとしていた自分が、全く間違った説明をしていたことに気がついた瞬間というのが、いまでも非常に印象に残っています。

逆説的な表現になってしまいましたが、努力を厭うと言う事ではなく、努力とは関係なしに客観的に技術応用をどう行ったかをしっかり述べることが大事だと言うことです。

一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方 1 申込書には「貢献」を表現する

2017.01.04

申込書には「貢献」を表現する

 みなさま、明けましておめでとうございます。今年こそは技術士合格に向かって一直線に進んでいきましょう。技術士試験の申し込みを4月に控え、そろそろ今年の受験手続きに着手する時期となってきました。そこで申し込み書の業務経歴とそれから業務内容の詳細(業績論文)について、一目で合格できる、ワンランク上の業績の書き方について、今日から7回シリーズでご説明します。

 まずこれらの申込書は何のために行うか? それは第一は経験年数を確かめることですが、実際にはそれだけではなく経験のグレードを採点する役目も担っています。 

 そこで手堅く合格するためには申し込み初の中で技術士にふさわしい業績を訴える必要があります。

 一般的に申し込書は事務的な文書であり、あるがままに書き連ねれば良いとお考えの人が多いようですが、試験官は業務経歴や業績論文から技術士としての資質能力を確かめようとしています。このため単なる物件の大きさやスペックを書くだけでは技術者としての務めが見えてきません。技術者個人としての取り組みから資質能力を読み取るためには「貢献」まで表す必要があります。

 つまり物件(ものづくり)の結果ではなく、

技術者個人の貢献を表すことが合格するための申し込み書の課題であり、実は誰も教えてくれない困難な作業

なのです。

 技術士試験における貢献とはいくつかの条件があり、簡潔な中でこれらすべてを満たすことが実際に押し込み書作成の上で合格戦略のカギとなっています。その条件とは、

従来の営みの踏襲ではなく、新しい改善の内容を含んでいる。技術提案によって経済的な成果が生まれている。技術提案は専門とする部門科目の技術を背景としている提案内容が1つの業務だけでなく広く汎用性がある。独創的な技術応用によって、従来できなかった事を可能にしている。

 このような内容を読み取れるような業績にしていけば、試験官が一目で技術士としてのふさわしさを認め、合格できること間違いありません。

 本研究所の指導では、講座の初期段階でこうした、ワンランク上の業績の書き方を指導し実際に受講者様の申込書作成していきますす。その際に使用するのは業務経歴チェックシートや技術体験チェックシートといった専門のチェックリストであり、そうした様式に従って書き込んでいき、添削するだけで技術士にふさわしい業績の顧客が出来るようになっていますです。

 さらに面談やSkypeでの指導によって、業績の本質的部分を引き出して、だれでも貢献が読み取れるようなわかりやすい文書として仕上げていきますので安心です。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)をこのような指導で引き出しています 4

2016.12.22

4. 業務内容としてふさわしい内容が捉えられていない

 建設部門鉄道のF様は、申し込み初の業務内容の詳細に次のような業務内容の記述をされていました。

  • 構造設計するにあたって〇〇がわからないことが問題であった。
  • 〇〇を調査することが仕事であった。
  • 業務内容はFEM解析をすることであった。

この表現のどこがいけないかお分かりですか。

 「わからないこと」は問題ではなく、わからないなりに実施してみて目標を達成できないということが確定した時に問題となります。ですからわからないこと自体は真の問題点ではないと言うことです。

 「調査すること」を仕事にされている方は現実には多いようですが、実は調査自体は対策するための手段であって本質的な対策ではありません。調査の業務を外注することも出来ますし、他者が行なった調査を引用することも可能です。つまり本質的なことではないのです。実務では、ビル計画する場合には、まずは地盤調査などして前提条件を把握することが第一歩となっているます。調査の後に本来の計画(対策法)をが行なわれるということです。

 FEM解析も最近まではそれ自体が難度の高いものであったために、FEM解析自体が技術士の業務になってしまっていました。しかしこれも「調査」と同じく、解析結果を用いて設計や施工をの仕様を決定することが目的なのです。FEM解析はそうした方策を決定するための手段に過ぎないことに注意すべきです。

 技術士試験では正答のない問題に対して思考力判断力表現力豊駆使して論旨の通った提案をしていく必要があります。そのためには目的と方策、手段と結果など論理的な展開を明確に意識しながら一貫性のある文章を作成する必要があります。今回挙げた3つの問題点はいずれも対策ありきで業務を行っているためそうした論理性が不明確となってしまっている結果だといえます。

 本講座の指導では過去の業績を再確認するとともに、論旨が通った明快なプレゼンが行えるように数々の方法で指導しています。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)をこのような指導で引き出しています 3

2016.12.21

3. 対策内容がただの作業手順になってしまって目標や中身が見えない

 建設部門鋼構造およびコンクリートのO様は口頭試験の解答でお悩みでした。

既に実施済みの物件に瑕疵が見つかったらどう対応しますか?

という質問に対して、

まず原因の究明と対策を考えます。その後、客先に謝罪し補償方法の説明をし、対策を実施します。対策後は、再発防止策を考えます。
このような答え方がよいと真剣にお考えでした。しかしこの回答は
問題解決の一般的な手法
であり、既に実施済みの物件に瑕疵が発生した場合の対応としては不足しています。実施後物件ならもっと
具体的できめ細かい対応が必要
です。それが正解なのです。例えば、応急措置を行うこと派生的に発生する新たな問題を予防すること今回の事故について歯止めをすることなどが必要と考えられます。

 また、別の見方をすれば、

建設鋼コンの試験の解答なのに、専門技術が何も現れていない

そのような回答が高い評価を受けるとは思えません。なぜなら技術士試験では、技術士にふさわしい技術的な対応をの巧さが評価されるからです。

 この様な具体的な技術内容の有無をチェックするために、作成された解答を別な部門に当てはめて適合性をチェックすることをお勧めしています。

 例えば先の内容は、建設鋼コンではなく、

木造住宅のマイホームに瑕疵が発生したときの答えとしてどうか?

と考えてみると、十分通用することがあります。問題を変えたにもかかわらず答えが当てはまることから、すなわち答えが適切でなかったと悟るべきです。

 このような具体的な指摘によって、わかりにくい技術士コンピテンシーを受講者様が知らず知らずのうちに高めるように講座では指導しています。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)をこのような指導で引き出しています 2

2016.12.20

 本講座では難解なコンピテンシーをマンツーマンコーチングなどの技法で引き出して、答案や業績を見違えるほど技術士らしく表現しています。その方法をご覧ください。

2. 普通にだれでもやる内容であり工夫が見られない

 建設部門施工のM様は、口頭試験対策として質問「現在の主業務は?」でお悩みでした。ちなみにM様の主業務は次の3つでした。

  • 現場の技術支援
  • アルミ製カーテンウォールの技術指導
  • クレーム対応

 正しい業務内容を説明するだけでは普通の仕事のリストになってしまって、技術士らしい取り組みが表現できないでいました。

 そこで、提案した事は

  • 技術的な取り組みを中心に具体的に表現する
  • 新しい変化に対応した業務の位置づけをする
  • ダメ直し的な改善作業ではなく、問題に対して予防的に対処する姿勢を打ち出す

 こうしたことを提案しました。この結果答案は次のようになりました。

技術支援を必要とする外壁タイル貼工事等では残存寿命を延ばすには初期性能アップが有効なので、施工中の品質を確保するために現場ごとに最適な工法を選択して外壁タイル浮き,剥離事故防止に努めています。

 外壁サッシはデザイン要求に対してメーカーの性能保証範囲が狭く、設計と現場技術のギャップの大きい工種なので、性能を確保するための施工手順を検証し,デザイン性と品質が両立するよう技術指導しています。

 施工の不具合に対してはナレッジマネジメントで現場管理にフィードバックしています。不具合現象の原因・対策を分析し、再発防止策を部位別、工程時系列毎に整理し、現場でのスピーディーな活用に努めています。

技術士の試験では正解が1つだけある多肢選択式問題とは異なり

  • 正答のない問題に対して、物事を構造化する思考力
  • その構造を的確に表現する力
  • 自ら答えを生み出していく判断力

を求められます。

 こうした応用力はコンピテンシー指導によって十分獲得可能だと考えています。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)をこのような指導で引き出しています

2016.12.19

 本講座では難解なコンピテンシーを引き出して、答案や業績を見違えるほど技術士らしく表現しています。その方法をご覧ください。

1. 建前ばかりで中身がない答案

 建設部門道路のT様はH28年II-2問題の留意点でお悩みでした。

(1)効果的な自転車ネットワーク計画を作成するために事前に調査すべき事項は何か

(2)計画策定するために留意すべき事項は何か

(1)の調査事項として、道路交通量、自転車台数、自転車事故データの3つを挙げました。しかしこれらは基本的な交通量をの状況を表すデータであり、この問題で求められている効果的な自転車ネットワーク計画を作成するためには直接的には関係薄いといえました。

 そこで、もっと自転車交通のを利便性快適性に関連する因子をとらえて調査事項を挙げるべきことを申し上げました。

(2)留意事項としては、

  • 路肩のエプロン幅の最小化
  • 交差点の通行帯歩道隣接のセミフラット・バリアフリー構造

を提案されていましたが、これらは設計ガイドラインの抜粋であり、本問題の要求事項である

効果的な自転車道の策定

ということを考えると、もう少し要求品質とのつながりを説明すべきだと考えました。また全体の一貫性も求められます。この答案では駐輪場の設置が解決作の目玉となっており、留意点においても

駐輪場の台数や設計法に

ついてコメントするのがふさわしいことをお伝えしました。

 このようにして、解答がともすると、一般的な業務のマネジメント事務的な対応考えればすぐに思いつく当然のやるべきことになってしまう場合が多いですがこれでは技術士にふさわしいとの評価が得られません。そこで

  • 受講者様の体験をもとに
  • ご自身ではわかりにくいコンピテンシーを引き出しながら、
  • 具体的に何を提案すれば技術士にふさわしいのか

を答案ごとに指導しています。

 このような練習をしていけば、やがてご自分の考えだけで技術士にふさわしい提案がどんどんできるようになれると言うことです。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 まとめ

2016.12.16

 技術士分科会資料、(参考2)「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」のまとめです。

 これまでの説明をまとめると、試験の段階ごとに次のような資質能力を確認されることとなります。

1. 受験申込み時

  • 受験申込書
  • 業務経歴票

 所定の経験年数の証明

 これまでに従事した業務内容、業務を進める上での問題や課題、技術的な提案や成果、評価及び今後の展望などを記載

2. 筆記試験

  • 専門の技術分野の業務に必要で幅広<適用される原理等に関わる汎用的な専門知識
  • これまでの知識や経験にもとづき、与えられた条件下の問題を認織、必要な分析ヽ業務遂行手順等について説明できる能力応用能力
  • 社会や技術における様々な状況から、複合的な問題を把握、多様な視点からの調査・分析、解決策の導出にかかる論理的・合理的な説明能力問題解決能力、課題遂行能力

3. 口頭試験

  • 公衆の福利等を最大限考慮、社会等に対する影響を予見、社会の持続性の確保に努めて倫理的に行動できる能力
  • 多様な利害を調整できる能力
  • 他の技術分野の関係者との間で明確かつ効果的に意思疎通できる能力
  • (筆記試験3と同様)問題解決能力・課題遂行能力
  • これまでの自己研さん(IPD等)に対する取組姿勢、今後の継続研さん(CPD)に対する基本的理解。

 こうした段階ごとに試験官から受験者に対して求められるチェック項目について、それぞれの段階ごとにベストの対応をしていくのが本講座の指導となっています。各段階の指導手順については次のページをご覧ください。これまで培ってきた指導体系によって安心の合格をもたらす方法であると言うことがお分かりいただけるかと思います。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 7 継続研鑽

2016.12.15

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」の続きです。
技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。

(7)継続研鑽

 今後、業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うことが求められる

 マネジメントとは制約条件を満たしながら、求められる成果を生むために資源を配分することを意味していますが、これだけではどう行動したらよいかよくわかりません。

 そこで、土木学会の継続教育プログラムの解説「技術者の能力向上と継続教育−継続教育プログラムの実情と課題−」より土木学会認定技術者資格制度の説明図を引用して説明します。 下の図は2001 年(平成 13 年)度に制定された土木学会認定技術者資格制度における4ランクの資格の位置づけを表しています。この内容は次のようなものです。

dobokugakkaishikaku.jpg (500×362)


  • 一般的に、大学時代から若手のうちは基礎能力を基に、実務を通じて、「専門的技術能力」(解析力や設計力など)や「人間的能力」(倫理観、交渉力、コミュニケーション力、組織運営能力、指導力、経済社会情勢に対する理解力など)、そしてそれらを統合した形の「総合的能力」(問題発見・解決力、洞察力、分析力、統合化能力など)を身に付けていく。
  • 30 代後半ぐらいまでは「専門的技術能力」を高めることに重点が置かれるが、その後、徐々に社会的な活動やマネジメントに関与することが増えるにつれて、「人間的能力」を高めることに比重が移っていく。
  • さらに年齢を重ねると、この傾向が顕著となる。このような過程の中で、技術者としての「総合的能力」が形成されていくと考えられる。

 こうした能力向上の傾向を背景として、各段階での技術者の資質・能力を確認するうえで、継続的な自己研鑽を確かめることは、未来の能力を予見することとなり、将来的な技術者の能力を格付けする技術士資格の試験項目として必須要素となっています。筆記試験ではともかく口頭試験で問われることとなります。

 このような試験官の継続研鑽に関する問いかけに対して、本講座の指導では具体的に何をどうを学んで身に付けてきたか表現することによって継続研鑽の実績を効果的に訴えるように指導しています。このためだれでも口頭試験で専門家らしい印象を打ち出すことが可能です。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 6 コミュニケーション

2016.12.14

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」の続きです。
技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。

(6)コミュニケーション

  • 業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザ一等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと
  • 海外における業務に携わる際は、−定の語学力によるよ務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協力すること

 上記1は広く一般的な業務遂行上をのコミュニケーション力を意味しています。一方、上記2は海外での外国人とのコミュニケーションを目指すものです。ここでは1を中心に考えてみましょう。

 実務において物作りに携わるものが多様な関係者との間で意思疎通を図る必要性がある事は説明不要かと思います。こうした能力は口頭試験でチェックされることとなります。

 一方、技術士試験では解答を文章(論文)で表現する必要があるため、この文章表現でのコミニケーション力がまず第一に問われます。実際の技術士の業務においては、仕事の成果を報告書にまとめる必要があるため、こうした文章でのコミニケーション力がないと仕事が務まらないという事になりかねません。

 このため、わかりやすくて内容が伝わる論文の書き方が技術士の資質・能力として求められるということです。

 文章術については、学ぶべきことがたくさんあり、かつたくさんの教科書があることから、ここでその方法について説明する必要は無いかと思います。

 講座でいつも行っているワンポイントアドバイスをご紹介します。

主語を短くする、一文を短くする  自分ではわかっているつもりでも、ついつい主語や文が長くなったりしており、これが文章分かりにくくする最大の要因となっています。そこで仕事なるフレーズを別の文に分けて短くし、文章自体も100字程度で切って短くすることによってわかりやすくなります。提案しようとする意図、狙いを明確にする
 書かれている内容が何を提案しているのか意味がわからないことがよくあります。提案者として目的や狙いを明確に意識しながら一貫性のある文章にすることが大切です。
目的や課題を述べる時は曖昧にならないように、「目的は・・」と主語にして文を作成する。
 問題文で要求される目的や課題といった項目についての文章は、それらの項目そのものを主語にして文を作成すると、趣旨が明快なものとなります。

 論文試験においてコミニケーション能力がなぜ必要かイメージしにくいかもしれませんが、論文としてのメッセージが伝わらなければ評価してもらえないばかりか、点を取ることもできません。このため最低限の文章上で意思疎通を図る手法は見につけておかなければなりません。本講座の指導では上記のようなワンポイントアドバイスを添削のたびごとに音声ガイドで申し上げることによって知らず知らずのうちにコミニケーション力を高めています。この結果、申込書や答案を作成する上でコンピテンシーに満ちた印象を作り出すことが可能となり、合格に役立っています。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 5マネジメント

2016.12.13

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」の続きです。
技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。

(5)マネジメント
 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること

 マネジメントとは制約条件を満たしながら、求められる成果を生むために資源を配分することを意味していますが、これだけではどう行動したらよいかよくわかりません。

 ドラッカー著「マネジメント」によりますとマネージャーに必要な能力は次の5つとされています。

目標を設定する能力体系化する能力動機付けする能力コミュニケーション能力評価測定する能力人を育てる能力

 上記1の目標設定する能力とは技術士試験で言う課題設定に相当し、技術問題を解決に向けてマネジメントをする上で必須の能力であると言えるでしょう。

 2の体系化する能力とは個々の対策を漏れやダブりなく整えて、結果として大きな目標に向かって束ねていくそういった能力です。

 こうしたマネジメントの能力は年代とともに変わっていくことが言われています。例えば会社の役職、課長、部長、役員クラスではどうかと見てみると、

(1) 課長クラスの管理職に求められる資質・能力

傾聴力マルチタスク(分散注意力)段取力チームを取りまとめてひとつの方向性に向かわせる力

(2)部長クラスの管理職に求められる資質・能力

見通す力立ち向かう力実行力(巻き込む力と説得力)

(3)役員クラス以上の管理職に求められる資質・能力

  • 決断力・(経営)判断力

と言うように役職が変わるとともに求められる資質能力も変わっていくということです。

 技術士試験においても専門家としてのレベルが高くなるにつれて、求められる資質能力が上記の課長クラスから部長クラス役員クラスへと移行していく事は想像に難くありません。

 一見わかりにくいマネジメント能力ですが、こうした複数の異なる視点を持つことによって、具体的な業務において実行可能な方策として提案可能となります。本講座の指導ではこのような考え方の転換によって技術士に必要な資質能力を申込書や答案の中で表現できるように指導しています。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 4技術者倫理

2016.12.12

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」の続きです。
技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。


(4)技術者倫理

業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること

 技術者倫理が技術士のコンピテンシーの1つである事はご存知かと思いますが、その段階的な倫理規範の構成についてはあまり知られてないと思います。

 上記の1は、法律で定めた最低限のものであり、今日この範囲では技術士として必要な資質を表現することはできません。

上記の2は、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚することから、より責任の高いものとなっています。

そして上記3は上記1,2を包含して、さらに結果や波及効果、次段階までの考慮を求めており、非常に範囲の広いものとなっています。

 現在こうした技術者倫理に関する資質は、もっぱら口頭試験でチェックされますが、その試験の問いかけは「技術者倫理に関する事例を述べてください」と言うような解答者の自由裁量を認めたものとなっています。

 技術者倫理問題の解き方については、イリノイ工科大学のマイケル・デイビス教授が整理した「7 段階法」が知られています。この方法は、自らが複雑な倫理的状況に置かれた際に、感情的で短絡的な行動に走ることを戒め、冷静に対処方法を考え抜くためのガイドラインで、土木学会が主催する講習会でも技術者倫理教育に取り入れられています。

倫理的意思決定のための 7 段階法

  1. 倫理的問題を明確に述べよ。
  2. 事実関係を検討せよ。
  3. 関連する要因、条件などを特定せよ。
  4. 取りうる行動を考案し、リスト・アップせよ。
  5. 代替案を次のような観点(省略)から検討せよ。

    (1)

    与える危害が大きくないか
    (2)

    報道されても大丈夫か

    (3)

    決定を大勢の前で弁明できるか

    (4)

    自分が被害者になっても支持できるか

    (5)

    同僚はどう考えるか

    (6)

    所属機関はどう考えるか

  6. 1から5の検討結果を基に、取るべき行為を決定せよ。
  7. そのような倫理的問題に再び陥らないためにどのような方策を採るべきか、あるいは、問題点の改善方法を考えながら、1から6のステップを再検討せよ。

 こうした方法で考えていけば、業務遂行上の広い範囲や別の業務の改善も含めて資する提案が可能で、すので、技術者倫理を高いレベル表現出来ます。技術士試験では自由解答形式で、特段答え方の方法は指定されません。しかし、試験官は技術者倫理についてどこまで理解して、深く解いているかをチェックしていますので、このような方法で解答すれば試験官が求める技術者倫理を高いレベルで身につけた技術者の印象を与えることは間違いありません。

 本講座のこうしたレベルまで指導を行なっており、安心の対応が出来ると言うことです。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」 3評価

2016.12.07

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)

「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」

技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。

(3)評価

 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。

評価は論文試験の中で「〇〇についての効果を述べよ」や「メリット、デメリット、リスク」といった形で求められます。この意味で資料に書かれている「最終的に得られる成果やその波及効果」は理解しやすいものです。

 一方、最後の文言である「次段階や別の業務の改善に資すること」は何を意味しているかお分かりですか。実はこれが評価の本質なのです。評価とはあれこれコメントをすることではなく、より良い成果につなげるための改善、そのための分析なのです。こうした結果に結びつけていくという視点が大切です。

 実はこの、

  • さらに性能を高めていく
  • 成果につながる改善や工夫を行う

ことはコンピテンシーの本質を表しています。技術士分科会の議論でも、

  • コンピテンシーとは粘って良い結果を導くこと
  • 工夫して人よりも優れたものを生み出すこと

という表現を用いています。

 ですので、メリットやデメリットを述べるときには、客観的に述べるだけではなく、それらによって最終的な品質をどう高めていくかを考えねばなりません。逆に品質を高めるには何に着目すべきかという視点でメリットデメリットを考えても良いのです。

 技術士の二次試験ではII-2やIIIの(3)問題で必ず評価が求められるようになっています。すべての部門、科目においてです。この時に漫然と答えるのではなく、こうした問いかけの趣旨を考えて、試験官から見たときにコンピテンシーが高まるような答え方をしていけば、試験の評価は驚くほど良くなる事間違いありません。実はこうした原理に基づいて指導するのが本講座の指導原理であり、このことが合格率を高める要因となっています。

技術士に求められる資質能力「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」

2016.12.06

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、別紙5の後に(参考2)

「IEC-PC、技術士コンピテンシー、段階別判定項目」

という資料がありこれが試験の採点基準を直接表しているように見られます。

 この表の項目は左側に、IEC-PCによって定められた資質能力が書かれており、真ん中には技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)が書かれています。そしてその右側に今後の技術士第二次試験についてどの段階で考課するかが書かれています。

 この背景には、、IEC-PCと技術士が同等な資格となるために、技術士がなんとしてもこうあらねばならないという目標を表しています。つまり技術士資格(試験)の方向性は必ずこのようなものとならないと方向付けられているのです。

 ここで注意していただきたいのは、真ん中の項目「技術士コンピテンシー」が、

「平成26年3月7日技術士分科会決定」

と書かれていることです。この下の図をご覧ください。 より確かな試験の基準であることが理解できます。

IEC_PC_shishitsu2.jpg (222×153)


ではその技術士コンピテンシーの項目を追っていきましょう。

(1)専門的学識

 これは専門とする部門、科目の業務に必要な専門知識のことであまり説明する必要は無いかと思います。

(2)問題解決

 業務上直面する複合的な問題に対して内容を明確にし、調査し、潜在する問題要因を抽出・分析することが記されています。

 問題文ではよく調査すべき事項とかが求められますが、その意味はこの資質能力の項目から来ています。また問題の分析に対しては潜在していることや分析用要するような複雑な要因の抽出が求められるということです。問題点を求められたときにはある程度複雑な背景を前提に考える必要がありそうです。

このほか、複合的な問題に関しては、

相反する要求事項(必要性、昨日勢、技術的出現性、安全性、経済性)を考慮する要求事項による影響を考慮する、複数の選択肢を提案する

その結果ベストの解決策を合理的に決定することが求められています

 この相反する要求事項とは一般的に言うトレードオフ問題の解決を意味しており、すなわち簡単には解けない問題をどのように工夫して解決するかという高度な提案を求めているということです。

 技術士の資質と言うものがどのような要件を求めているか、もう少しこの資料を分析してみましょう。

技術士に求められる資質能力を試験で表現する 1

2016.12.05

 平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会資料、

別紙5 今後の第二次試験のあり方について

からも、技術士の資質、能力が読み取れます。ここでは、技術士試験の段階や技術者と技術士との違いなどが対比して書かれています。これを見れば、技術士の資質と言うものがさらに細かく理解できるでしょう。

 技術士試験の年間の全体イメージは次の「今後の二次試験のあり方について」を見ると大体の流れが理解しやすいです。


 最初の段階が申込書の提出ですが、ここで提出する業務経歴表が口頭試験の資料となります。その内容は、これまでに従事した業務内容のほか、問題、課題、技術提案、成果、評価、今後の展望までを含むものとなっています。

 つまり筆記試験よりも何カ月も前に、業績論文を仕上げておく必要があるということです。

 申し込み書の中には、(1)業務経歴(2)業務内容の詳細(業績論文)の2つからなっています。

(1)業務経歴

 業務経歴とは、一般的に何をやったかという物件の説明が出来ですが、

試験官のチェック対象はモノではなくて個人の業績

なのです。しかもその受験者の貢献について、どれだけ巧みな技術士としての務めがあったかという点をチェックします。ですので携わった物件の名称を挙げるだけでは業績の説明として不十分だと言うことです。

(2)業務内容の詳細

 ここでは720文字で、これまで従事したベストの業績について、概要、問題、課題、技術提案、成果、評価、今後の展望を記述していきます。やはりここでも、

物件の内容ではなくて個人の貢献がチェック対象となる

ので、できるだけ技術士らしい技術的な対応が行われた事を述べる必要があります。

 よくありがちな悪い例が、わかりやすく説明するために、前置きとなる業務概要や問題点の説明が冗長になってしまうことです。これでは物件の内容が分かっても、個人の貢献は効果的には伝わらず、結局説明が無駄になってしまいます。

 そこで大事な事は、できるだけ簡潔に書くということと、問題点の記述ではなく貢献の内容を力説することです。すなわち、問題解決として行った対策が効果的で独創性に富んだものであり、かつ汎用性も面でも優れたものであるというような説明をすることです。

 よく言われる「技術士にさわしい業績」とはこのような、

  • 独創的で効果的な解決策
  • 実施物件だけでなく、他でも役立つ、広く汎用的な応用性に富んだ技術開発

を意味するものです。

 わずか720文字の中にこの2つの概念を盛り込む事はとても大変だとお感じの方がいらっしゃいます。あれもこれもと書いていくとすぐに文字数がオーバーしてしまうからです。その原因は簡単です。技術士に求められる資質能力をコンピテンシーの視点で見ていないから散漫になってしまうということです。

 そこで、業績論文全体をコンピテンシーの視点で骨子を構成し、必要な説明を肉付けしていくと論文作成スタイルをとれば簡潔にまとまっていくに違いありません。

 実はこのような、コンピテンシーを軸とする業績論文の書き方を本講座では指導しているため、出来あがった内容簡潔かつアピール性に富んだものとなりほとんどの方が満足される業績の記述が出来上がっています。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
9:00~18:00
定休日
不定期

ご不明点などございましたら、
お問合せフォームかもしくはメールよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

03-6661-2356

マンツーマン個別指導で驚異的合格率!
技術士二次試験対策ならお任せ!
面談、電話、音声ガイド・コーチングで100%納得
添削回数は無制限、夜間・休日も相談可能

お電話でのお問合せ

03-6661-2356

<受付時間>
10:00~17:00

  • 試験対策講座のご案内

株式会社
技術士合格への道研究所

住所

〒103-0008
東京都中央区日本橋中洲2-3 サンヴェール日本橋水天宮605

営業時間

10:00~17:00

定休日

不定期