技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)2
2016.12.02
平成2 6 年3 月7日、科学技術・学術審議会、技術士分科会、別紙2に記された技術士の資質の続きの項目です。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
6項目の資質の4から6について解説します。この資質がすなわち試験の問いかけとなり、それに答えることが合格の鍵となります。
4. 評価
- 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。コミュニケーション・業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
- 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
---------------------
評価とは、業務で得た成果について、その結果の大きさや波及効果を見積もって、本来の業務が行えたか反省することです。上記では「次段階や別の業務の改善に資すること」とありますが、つまりそれはすでに実施した内容がどうであったか反省することに他なりません。
これはいわば業務のPDCAです。実施結果をチェックして、修正し歯止めすることです。この場合大事なことは、チェックが十分厳しくないと意味がないということです。
よく業績論文で自らの業績に対して、
「まあまあよかった」とか「クレームがなかった」という評価は決してよくありません。
「結果は・・が・・の理由で不十分であった。」とするほうがずっと人物に対するコンピテンシーは高まります。なぜなら、人はチェックの目が厳しい人のほうが能力が高いと考えるからです。仕事のできばえは必ずよくなるはずです。
そして、失敗の結果、「・・ということが判明した」という発見を添えると、継続的な技術研鑽の姿勢も見られて◎です。技術士試験の自己評価はこのような、改善姿勢を暗に求めているものだということをご理解ください。
5. コミュニケーション
- 業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
- 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
---------------------
こうした意思疎通が重要なことはいうまでもありません。技術士試験は論文式ですから、まずは問題文の意味をよく読み取る感受性がないといけません。また、わかりやすい文章で解答を書き表すことです。
H28年 建設・施工 II-2-2
幅10m、厚さ3m、高さ10mの鉄筋コンクリート橋脚の施工に当たり、以下の問いに答えよ。
(1)発生しやすい初期ひび割れの原因を3つ挙げ、それぞれについて概説せよ。
(2)(1)で挙げた3つの原因のうち2つについて、初期ひび割れを防ぐため、施工計画段階で検討するべき事項及び施工時に実施すべき対策を述べよ。
今年の建設・施工では「幅10m、厚さ3m、高さ10m」という3Dの寸法が付加されていました。このことが意味することは、幅、高さに対して厚さが薄い構造物では、どこにひび割れが発生しやすいか、推論してとかねばならないということです。単に初期ひび割れといっても場所によって原因も対策も異なるからです
6. リーダーシップ
- 業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
- 海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること
---------------------
リーダーシップは、別な言い方で「取りまとめ力」とも呼ばれます。すなわち、自らの専門外である異分野の技術者もまとめてひとつのプロジェクトを遂行するというものです。プロジェクトマネージャーに必要な能力とお考えください。専門外の技術については、新たに学んで知識を習得することはできませんので、専門外の分野のスタッフを活用するしかありません。そのとき専門外の技術に精通しなくとも、概念的に役割を規定してメンバーとして協調しながらプロジェクトをまとめていくという姿勢が求められています。
7. 技術者倫理
- 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
- 業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
---------------------
技術者倫理とは、ただ道徳的に正しく行動するというものではありません。まず、社会に対する影響を予見しなければなりません。その上で技術士としての使命を果たすことです。
技術者倫理については主に口頭試験で問われ、近年では「最近の具体例で述べよ」という問題となることが多いようです。こうした質問では、最近の事故等について事実を整理しておき、その上で何が技術者倫理に相当するかを明確に説明できなければなりません。
たとえば、博多駅前の陥没事故です。高い地下水位や薄い岩かぶりといった地盤条件に対して,NATM工法を採用しました。この方法で現場管理責任者は,地盤が崩壊することを,事前に追跡調査をして安全性を確認しながら工事を進める必要があったにも関わらず,調査不足のために道路の陥没という事故を発生させてしまいました。調査をして絶対事故を発生させないという技術者なら気づく問題事象の予見するための取り組みが不足していたと言えます。これが技術士倫理の核心です。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)2のまとめ
技術士試験の基準はとは、これら資質を確かめることであり、ここまでわかってくれば試験は難しくありません。試験問題が難しいのは、ヒント無しに、
出題者が受験者の能力を試す問題を作成する
からです。この試験の方法は今後も変わりません。コンピテンシーという実務で役立つ資質を測るには技術者を試すしかないのです。
本講座では、こうした受験者を試すコンピテンシー試験の本質を分析し、楽勝で合格する方法を指導しています。このテクニックは部門科目に依存しません。すべての科目で効果的に指導しています。もし、短期間で合格されたい方はぜひお問い合わせください。