前記のような傾向を、実際の過去問を比較して確認してみましょう。過去問の中から数例を選んで示します。平成19年度、20年度の過去問比較ですが、平成20年度は19年度とあまり変化していません。その後は平成25年から平成30年までは択一試験となり、論文試験はなくなりました。
そして、令和元年からは再び必須科目の論文試験が復活しました。新しい論文試験では過去の平成24年までの論文で見られたような「あなたの意見を述べよ」というような問はなくなり、「課題、解決策、リスク、要件」など出題者の求める視点が絞り込まれるようになりました。試験としては、解答が難しくなり平均点が下がることとなり、より少ない合格者を厳密にえり分ける試験に変化しています。
部門 | 19年度 | 20年度 | 19→20年度の変化 |
建設 | 1. 産業構造の変化等により、人口減少傾向にある地域における社会資本整備の課題を挙げ、厳しい財政の制約の下で、地域の活性化を図っていくための社会資本整備のあり方について、具体策を示しあなたの意見を述べよ。2. 我が国の技術の発展を支えてきた“団塊の世代”の多くの技術者が、定年退職により実務の第一線から退く事態を迎えている。そのような経験豊富な技術者の大量退職が、社会資本を整備するための技術に与える影響と課題について多面的に述べ、それを踏まえて、今後技術を維持継承するための方策についてあなたの意見を述べよ。 | 1. 社会資本の維持管理に関する現状と課題を述べ、これに対する対策としてのアセットマネジメントの必要性及びその実用化に向けた方策についてあなたの意見を述べよ。 2. 我が国の公共事業は、近年、縮小傾向にあるが、このような状況が、建設分野における技術力の維持及び向上に与える影響とその課題を挙げ、今後とるべき方策についてあなたの意見を述べよ。 | 課題、具体策、意見影響、課題(多面的)、方策、意見↓1現状と課題対策の必要性実用化方策 2事業傾向技術力の維持向上課題今後の方策 |
水道 | 次に示す図表は、「河川・湖沼等の水質の推移」及び「生活環境の保全に関する環境基準:河川(湖沼を除く)」である。これらを参考にして、これまで上水道及び下水道がそれぞれ実施してきた技術的対応とその効果を述べるとともに、今後の上水道及び下水道それぞれが解決すべき課題を抽出し、その技術的対策について論ぜよ。 | 次に示す図表等を参考にして,目本の水利用の現状と課題を整理し,健全な水循環系を構築するために上水道及び下水道がそれぞれ取り組むべき技術的対策について述べよ。 | 図表をもとに考える技術的対応、効果課題、技術的対応↓現状と課題、技術的対策 |
衛生工学 | 2−1 地球環境問題は、ポスト京都議定書をめぐって国際的に大きく動いている。下記の新聞報道記事を読んで、(1)〜(3)の股間に答えよ。(1) 大気中の炭酸ガス濃度が増えると、どうして地球の平均気温が上がるのか、そのメカニズムを示せ。 (2) 京都議定書では、各国の排出量について1990年を基準にした削減割合を決定し、それにむけた取組を合意したが、その合意の内容について述べよ。 (3) 新聞記事にもあるように、2013年以降を見据えた取組や枠組みが既に行われ、EUや日本がイニシアティブをとるような動きがある。京都議定書の約束を実行するためには次に示す4つの取組がある。このうち1つを選択し、その内容を具体的に述べ、その有効性と問題点および解決方法について、あなたの考えを述べよ。 ①主的取組 ②規制 ③地球温暖化防止のための環境税 ④排出権取引 | 2−1 我が国の政府は,循環型杜会を形成するうえで,第一次循環基本計画においては,適正な物質循環を確保するために,物質指標に関する次の3項目の目標を表1 に定めて取り組んできた。・資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)・循環利用率(:循環利用量/(循環利用量十天然資源等投入量)・最終処分量表1物質フロー表2最終処分量【問い】(1)家庭から排出されるゴミ(一般廃棄物)についていろいろな取組がなされている。これら想定される取組と上記物質フロー指標との関連について考えられることを述べよ。(2)循環型杜会の形成に向けて,地域の特性を活かした地域循環圏の構築が課題であるといわれている。地域循環圏の構築の必要性について述べよ。(3)循環型社会形成に向けて,あなたの専門とする分野で取り組むべき課題と将来の目標を述べよ。 | 新聞報道記事をもとに温暖化メカニズム京都議定書合意内容取組内容、有効性と問題点および解決方法↓データをもとに物質フローを考察改善策の考案課題と将来目標 |
農業 | 「食料・農業・農村基本法」の理念や「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月策定)の基本方向を踏まえ、次の5項目の中から1項目を選び、その現状と課題について.複数の視点から述べるともに、課題解決の方策、今後のあり方について、主として技術的側面からあなたの意見を述べよ。(解答項目番号を明記し、答案用紙3枚以内にまとめよ。) 2−1 食の安全確保と消費者の信頼確保への取り組み 2−2 我が国の食料消費・食料生産の動向と食料自給率向上への取り組み 2−3 農業の持続的な発展に向けた担い手の育成・確保と農地の有効利用の促進 2−4 農業のもつ自然循環機能の維持増進と持続的な農業生産の推進 2−5 都市・農村の共生・対流の促進と農村地域の活性化 | Ⅱ次の3問題の中から1問題を選び解答せよ。(解答問題番号を明記L、答案用紙3枚以内にまとめよ。)各問題の図は平成18年度及び平成19年度の「食料・農業・農村白書」から引用した。Ⅱ−1 担い手の育成・確保と我が国農業の体質強化について、下図を参照して、その現状と課題を説明するとともに、課題に対する対応策を述べよ。Ⅱ−2 我が国の食料の安定確保と食料自給率向上について、下図を参照して、その現状と課題を説明するとともに、課題に対する対応策を述べよ。Ⅱ−3 農村資源の活用と農村環境の向上について、下図を参照して、その現状と課題を説明するとともに、課題に対する対応策を述べよ。 | 理念をもとに基本方向性、見解を述べる食料安定供給、食料自給率向上、地域農業の構造改革と国内農業生産の展開、環境保全、地域資源の保全・活用↓データをもとに考察現状と課題対応策を述べる |
上記問題例から、次の2つの出題形式が見られます。
形式 | 内容 |
①データ分析型 | 図表、新聞記事等から与えられた課題についての情報を読み取って判断する。 |
②問題解決、計画策定型 | 与えられた情況から、解決すべき問題点や課題を設定し、それらの解決方法を提案する。 |
上記①②はいずれの部門でもありえることで、しかも①②を同時に求められることも予想されます。したがって、白書や特集・解説記事、ハンドブックなどを読んで勉強しておくのはもちろんですが、与えられた情況、問題に応じてその場でじっくり考える必要があります。 部門によっては平成19年と20年で傾向が変化しないケースもありますが、一方、形式が変わっている部門もあります。今年がどうなるか保障はありませんので最低限の対応はしておいてください。