「地震災害後のインフラ復旧に向けた課題と解決策:能登半島地震を踏まえた技術者の視点からの考察」

予想問題
能登半島地震では、斜面崩壊が連続して発生し、大量の土砂により原位置での復旧が困難な箇所が多数生じた。その結果、別ルートでの整備が必要となり、主要幹線道路の整備ができず、復旧作業が遅れて広範囲の集落の孤立も生じた。こうした新しい形の地震被害形態を踏まえて、安全・安心で豊かな生活のためのインフラの維持管理を実現するため、以下の問いに答えよ。

  1. 災害後のインフラの迅速な復旧を推進するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
  2. 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
  3. 前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
 

解答

1. 技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題

1)国土強靭化による防災レジリエンス強化

持続可能なインフラ構築の観点から、インフラの耐震化や土砂災害防止工事の強化、堤防や護岸の補強等災害に強い都市計画や地域防災計画を策定する。また、GIS(地理情報システム)を活用した代替ルートの設計と実装を進める。これらの自然災害に対する防災・減災対策を強化するレジリエンス対策を推進する。

2)スマートインフラによる維持管理の高度化

迅速な状況把握と評価の観点から、災害発生直後に被害状況を迅速に把握するため、センサーやIoT、ビッグデータ解析を活用し、インフラの状態をリアルタイムで監視する。仮想環境でのシミュレーションにより高度な維持管理運用や被災時の迅速な状況把握、災害復旧の最適化を行う。

3) 災害時の初動対応力の向上

効果的なコミュニケーションと連携の観点から、災害発生時に迅速かつ効果的に対応するための体制を強化する。地方自治体や関係機関との緊密な連携を図り、災害対応訓練や応急復旧用資機材の整備、災害情報報等による統合情報システムの構築等の初動対応力の向上を図る。

2.課題2スマートインフラ維持管理の解決策

1) リアルタイムモニタリングシステム

災害時に異なる施設管理者のインフラの状態を一元監視できる仕組みを構築する。異常検知時に迅速な対応ができる体制を整えるため、水門等に無線通信等に対応したセンサーを設置し、開閉状況等をリアルタイムで監視する。動力源喪失や交通途絶等の危機的状況下でも確実に水門操作できるよう、水門自重降下やカウンターウェイト等の組合せによる水門閉鎖を遠隔操作で行うシステムを開発する。

2) 防災デジタルツインの構築

インフラのデジタルツイン(仮想モデル)を作成し、シミュレーションによる運用環境での挙動を予測し、問題発生時の対策を検討する。例えば、地震や台風など災害被害の規模をサイバー空間上において、気象データ等に基づき予測することで、災害発生前から早期に救援・救助計画を立案する。

また、災害発生時のリアルタイムデータの迅速な情報共有や、3D都市空間モデルに基づいた市民参加型のデジタル防災訓練による避難訓練の可視化やトレーニングにより、迅速かつ的確な災害対応を行う。

3) データ駆動型の維持管理

センサーから取得したデータを解析し、構造物の劣化や異常の予兆を把握する。これにより、予防保全の計画が精緻化され、劣化が進行する前に対策を講じる。データの維持管理スケジュールを動的に調整し、リソース最適配分の実現による効率的なメンテナンスが可能とする。

3.波及効果と懸念事項への対応策

1)波及効果:予防メンテナンスの促進によるレジリエンス強化により、予防保全の推進により、不良箇所の出現率が増加し、全体の運用コストが低減される。インフラに不具合が起きる前に予防保全を行うことで品質低下の抑制や資源の無駄遣いの減少による波及効果が生じる。

2)懸念事項:異常前兆の発見精度の向上に大量データ、長期間の収集分析が必要になる。

3)対応策:AIを使った予測分析・データ分析ツールを活用し作業プロセスにおいて、人手を介さないデータ駆動型システムの活用による自動化や効率化を行う。

4.業務遂行するに当たり必要となる要件

1)技術者倫理:AIやIoTシステムの導入に際して、データ取得プロセスについて公表など透明性を確保する。関係者に対して正確かつ理解しやすい対話型合意形成プロセスによる情報を提供し、意思決定の透明性を高める。技術者倫理綱領の公正かつ誠実な履行に関連し、透明な情報共有を通じて信頼性と社会的責任を果たす。

2)社会の持続性:IoTを活用した産業廃棄物等収集運搬の効率化を図る。集積所に計量センサーを設置することで、収集車が効率的に収集する仕組みを構築し、リサイクル率を向上させる。SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に関連し、リソースの持続可能な社会を実現する。

講評

良い点、評価できる点

  1. 課題設定の多面的な視点
     課題を抽出する際、国土強靭化、スマートインフラ、初動対応力という3つの観点から考察しており、インフラ復旧における多様な側面に目を向けている点が評価できます。特に、スマートインフラの活用を提案している部分は、現代技術の進展を踏まえた実際的なアプローチであり、先進技術を活用した解決策が含まれています。

  2. 具体的な技術提案
     リアルタイムモニタリングシステムや防災デジタルツインなど、具体的な技術の活用方法を明示しており、技術的な裏付けがしっかりしている点が良いです。これにより、問題解決に向けた実効性が高い提案となっています。

  3. データ駆動型の維持管理と波及効果
     データ解析を通じた予防保全の促進や、リソースの最適配分を目指した提案が的確です。特に、予防メンテナンスによるレジリエンス強化や運用コストの低減といった波及効果の説明は論理的で、課題解決の効果が具体的に示されています。

改善を要する点と改善案

  1. 課題の優先順位の明確化
     3つの課題を挙げていますが、それぞれの課題が相互にどのような優先順位を持つのかがやや不明瞭です。特に「スマートインフラの維持管理」を最も重要な課題として挙げていますが、その理由が他の課題と比べてなぜ最優先されるのか、もう少し明確に論じる必要があります。優先順位の論理的な根拠を強調することで、より説得力が高まります。

  2. 懸念事項への対応策の具体性
     懸念事項としてデータの大量処理や長期間の収集分析の必要性を挙げていますが、その対応策として「AIを使った予測分析・データ分析ツールの活用」を提案しています。この部分は抽象的であり、AIの具体的な導入プロセスやコスト、運用上の課題などについてさらに詳細に触れることで、リスク対策の具体性を高めることが期待されます。

  3. 技術者倫理と社会持続性の考察の深さ
     技術者倫理や社会持続性について触れていますが、議論がやや表面的です。特に、技術者倫理においてAIやIoTの導入に伴うデータ管理の倫理的側面に対してより深い考察が求められます。例えば、プライバシー保護やサイバーセキュリティの問題など、社会的な懸念にも踏み込んだ説明があると、論文全体がさらに充実します。

合否の可能性の判断

合格の可能性は高い
技術的な知識や具体的な提案が的確で、課題に対する解決策も論理的に示されています。また、インフラ復旧における技術者としての役割を多面的に捉え、専門的な知見を活かしている点も評価に値します。ただし、いくつかの部分で説明の深掘りが必要であり、特に倫理的考察や懸念事項への対応策の具体性が向上すれば、さらに高い評価を得られるでしょう。

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