R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20201006

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この答案についての講評

 この過去問答案は、必須科目の問題番号を書き忘れたため、失格となり、評価は不明だったということです。残念な結果です。答案の記載事項は十分注意が必要です。それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(37分44秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するための課題 

■冗長です。短くしましょう

1−1.対策すべき社会インフラの増加

 が国の社会インフラは高度経済成長期にその多くが整備され、建設後50年を経過化する施設の割合は、2033年に道路橋で64%、河川管理施設で63%になると試算されている。また、その維持管理費は、予防保全を行ったとしても、2044年には7.1兆円になると想定されている

■問題文の追認、前提事項の整理にならないようにしましょう。

1−2.技術者の不足

 少子高齢化の進展により、建設部門の労働環境の良くないイメージもあり、就業者数は減少している。労働者の高齢化や熟年労働者の持つ技術の継承が課題である。

■この中身について議論しましょう。

1−3.人口減少に伴う利用密度の低下

 口減少を背景として、中山間地域の自治体では、過疎化が進行し、社会インフラを利用する人が減少する。社会インフラは、利用者が減少したとしても、安全に利用できるよう、適正な管理が求められることから、相対的に維持管理費は増大することとなる。利用の低密度化により、利用者数と維持管理に要するコストとのバランスに不均衡が生じることとなる。

■本質的な課題になっていません

2.増加する社会インフラについての対応・解決策 

2−1.ICTの活用

■3Dにすればよいという話ではないので、CIMなどを挙げたりして、もう少し具体的に何をするか方向性を示しましょう。

 情報通信技術の土木分野への導入により、計画・設計段階から3次元データを活用し、施工や維持管理においてもこのデータを更新して利用することで、構造物の見える化が図られ、直感的な状態把握が可能となる。

 国が進めるi-Constructionを活用し、点検や施工の自動化、ロボットによる画像取得から損傷診断など、人が行っている業務を支援し、業務の簡素化を図る。

 また、道路の分野ではETC2.0を活用し、車両の走行データをビックデータとしてデータベース化することで、危険箇所(段差の把握、ブレーキポイントの把握など)を特定し、効率的・効果的な対策を講じることが可能となる。

■キーワードの羅列になっており、あまり内容が読み取れません。

2−2.計画・設計段階から維持管理しやすい構造とする

■簡単なことなので、解決にならないことを理解しましょう。

 点検孔や管理用通路などを設け、管理しやすい構造とするとともに、更新時の作業性を考慮し、躯体の補強や開口部(搬入路)を予め設けておく。

2−3.既存ストックの有効活用

 既存ストックの有効活用の観点から、適正なメンテナンスサイクルを実施し、社会インフラの長寿命化を図ることが必要である。

■漠然としたアセットマネジメントの話です。具体的に述べましょう。

 ストック効果の最大化を目指し、「賢く使う、賢く投資」の観点に立ち、ダム再生やねばり強い河川堤防への改修など、老朽化対策に合わせて、施設の改築を実施する。

■考え方として親近性はありますが、都市及び地方計画の提案ですので、必ずしも解決にならないことを理解しましょう。

2−4.コンパクト+ネットワーク

 増加する社会インフラと人口の減少に伴う維持管理コストの上昇に対応するため、コンパクトな街づくりを進める必要がある。核となる市街地を中心に、人口を集中させ、効率的なインフラの管理を行うとともに、都市間を結ぶネットワークの形成により、生産性を確保できるよう、土地利用の規制・誘導を進めなければならない。

3. 共通して新たに生じるリスクとそれへの対応 

3−1.社会インフラをなくすことはできないというリスク(増加し続ける) 

■題意を誤解しないようにしましょう。

 人々の暮らしの根幹をなす社会インフラは、経済・生活を支えるうえで欠くことはできない。また、新たに建設された社会インフラについても、管理の必要が生じることから、増加し続ける構造物をいかに管理していくかは共通の課題であ

3−2.効率的・効果的な維持管理の実施(無くならない社会インフラへの対策について)

■冗長になっています。発散しないようにしましょう。

 既存の社会インフラを適切に維持管理していくためには、予防保全の観点に立った長寿命化計画を策定し、着実に実施してく必要がある。また、新規建設を行う場合にも、可能な限り施設の統廃合を検討し、管理する構造物を少なくする。 

 人の手による作業を簡素化し、効率化するため、メンテナンスサイクルにおける、これまでのドローンやロボットによる点検支援から、ビックデータを活用し、AIによる損傷分析までの診断支援までが自動化されるような、技術開発・取組みが求められる

■ここは題意を誤解されています。有効な解答になっていません。

4.務遂行にあたっての技術者要件 

 公益性の確保を最優先として、法令を遵守しつつ、社会インフラの構築と適正な維持管理について、継続的に取り組む

本講座では細かい意味、対処法について、より具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−2

 将来にわたり貯水池機能が確実に発揮されることを可能とするために実施する、適正な貯水池土砂管理のための調査・観測の目的を説明した上で、調査・観測の項目とその内容について各々説明せよ。また、貯水池土砂管理のための調査・観測の項目における技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.適正な貯水池管理のための調査・観測の目的

■冗長すぎます。端的に述べるようにしましょう。

 ダムの堆砂は100年を計画期間としており、容量配分の中に、あらかじめ堆砂容量を設けている。

 一方で、現実の堆砂は、上流の緩傾斜の区間で堆砂が進み、デルタの肩と呼ばれる地点を境に、堆砂が沈み込む状況となる。

 そこで、運用開始後何年で、どの場所に、どの程度の土砂が堆積してるのかを把握するために、貯水池内の観測を行う。

2.貯水池土砂管理のための調査・観測の項目とその内容

2−1.深浅測量

■2〜3個項目を挙げて幅広い対処を述べたほうが良いでしょう。

 ダム貯水池において、縦断測量、横断測量を行う。

 予め定めた横断測量地点で、船上からポールやレーザーにより水深を観測する。ダム運用開始時、前年度、当該年度観測時の横断面を記載し、経年変化を確認する。必要に応じて、堆砂対策の検討を行う。

3.貯水池土砂管理のための調査・観測の項目における技術的留意点

3−1.洪水調節容量内への堆砂量把握

■技術士でなくてもわかる一般的なことです。

何のために留意点が求められているか考えましょう。

ここは2で書いた内容について、性能アップ策を述べてください。

 水調節容量内に堆砂が進むと、洪水調節に充てられる容量が減少し、洪水調節機能の低下、異常洪水時防災操作のリスクが高くなる。 

 洪水調節容量内への堆砂は、ダム機能に直結するため、早期の掘削・撤去が必要である

3−2.地震・大規模出水後の調査・観測 

■災害対応ですので別課題になっています。

 地震や大雨の後は、上流からの土砂流入や、周辺地山の崩壊など、堆砂の状況が大きく変化することがある。そのため、緊急的に堆砂の状況を確認するべきである。

Ⅱ−2−2

 近年、毎年のように発生する大規模な水害・土砂災害において、逃げ遅れによる犠牲者が数多く発生している状況を踏まえると、住民の適切な行動を促し避難の実効性を高めることが極めて重要となる。あなたが台風襲来時の水害・土砂災害に対する市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査・検討すべき事項とその内容

1−1.その土地の状況把握(地形・人口など)

■内容が分かり易いにもかかわらず、説明が冗長です。

 当該市町村の位置する状況について、山間部の高齢化が進んでいる地域なのか、市街地で人口が密集している地域なのかなど、地域の特徴を把握する。

 合わせて、要配慮者施設がどこにあり、どの程度の人が、どこに避難するのかを予め確認しておき、町内会毎の防災に関する取り組み状況などをとりまとめ、基礎資料とする。■←これが目的ではないです。

1−2.過去に発生した洪水の調査・把握

■調査の中身の説明に終始せず、ねらいを言いましょう。

 この地域での実績洪水がどのようなものであったのかを調査・把握する。降雨強度(時間最大雨量、24時間雨量、48時間雨量など)、降雨波形(前線か台風か、1山か複数波形かなど)、浸水区域などを調査する。洪水実績を把握することで、想定最大規模の降雨にスケールアップし、警戒避難体制の整備に活用する。

1−3.現在の河川整備状況

 現在の河川の整備状況について、流域の堤防やダム、遊水地、下水道、排水機場などがどのように整備されているかを把握し、ボトルネックになっている箇所、河川管理設備の故障などを確認し、必要に応じて対策を検討する。

2.調査を進める手順についての留意すべき点、工夫を要する点   ■↑冗長なので1行にしましょう。

2−1.ハード整備

 これまでに河川整備は着実に進めてきているが、気候変動に伴う降雨の激化の進行により、既存の整備水準では、治水安全率を満足しない状況が生じている。

■対策内容は求められていません。

ここは「手順」と「留意点」です。

そこで、「想定を上回る洪水は必ず発生するもの」との観点に立ち、中小規模の洪水は防ぐが、大規模洪水に対しては避難の時間を確保するような対策を進める。

 既存の社会資本ストック有効活用の取り組みを念頭に、ねばり強い堤防、ダム再生など国土強靱化につながる整備を実施することで、円滑な避難を実現する。

2−2.ソフト対策

 危機管理型水位計や河川カメラの情報で河川の状況を把握するとともに、気象情報、河川の危険度部分布などにより、的確に避難情報を発表する。

 緊急時には、プッシュ型のエリアメールを活用し、危機感が伝わる情報発信を行う必要がある。加えて、行政機関が発表する情報の意味を理解し、住民避難につながるよう、出前講座などにより、防災情報の意味を理解してもらう。

 また、町内会レベルから行政機関まで、それぞれの部門で、防災体制、避難体制を構築し、災害弱者の避難を確実に確保する方策などを予め定めておく。

3.関係者との調整方策

 防災減災対策協議会や治水協定など様々な場面、機会を捉えて関係者同士の顔の見える関係を築き、気軽にコミュニケーションが取れる状況を構築しておく。

■建設工学的にあまり意味のないコミュニケーション術の話です。

建設技術士のプロマネとしては、具体的に問題を捉え、関係者に指示を与えてプロジェクトの進行が改善するようなアクションを取る必要があります。

 近年では、気象観測精度や降雨予測精度が向上しており、これらも活用して他機関連携型のタイムラインを運用することで、水害・土砂災害の被害軽減を図ることが可能となる。

■この問3での焦点は関係者間の行動をプロマネとしてどのようにコントロールするかにあります。

Ⅲ−1

 気候変動の進展に伴い、海面水位の上昇などによる海岸浸食の更なる進行や山間部からの土砂流出の変化が懸念される中、流砂系全体として持続可能な土砂管理の目標について検討し、総合的な土砂管理の取り組みを推進することが求められている。

(1)国土を保全するため、流砂系全体として持続可能な土砂管理を実現するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.流砂系全体として持続可能な土砂管理を実現するに当たっての課題  

■いずれの見出しも冗長です

1−1.山間部における山腹崩壊や山肌の露出(山地の荒廃)

 我が国では、山間部において植林が成され、下草刈りや枝打ちにより、適正な管理が行われていたが、工業化や生活スタイルの変化により、樹木の活用が減少している。 

■分かり易い現象(問題点)の記述です。

主題は「持続可能な土砂管理の目標について検討し、土砂管理する」ことです。

そのために技術士が提案する課題は何かを考えましょう。

また、近年の降雨の激甚化とも相まって、保水機能が低下した樹林地での大規模な土砂崩れや山腹崩壊が発生している。山腹崩壊や山火事が起きた土地は民地であることから、そのままの状態で放置され、山肌の露出が進行し、土砂流出の原因となっている。

1−2.ダムによる流水の連続性の分断

 ダムは河川を横断する形で建設され、上下流の流水の連続性を分断している。これにより、河床の砂の移動がなくなる、水生生物の移動がなくなる、貯水池の水質悪化、下流河川での無水区間の発生、巨石化・アーマー化など、河川環境悪化の原因となっている。

■やはり現況の問題点の記述です。

1−3.天井川による市街地の水害・土砂災害リスクの増大

 ■昔から言われている問題点です。技術士の視点に相応しい独自の工夫を述べるようにしましょう。

川は築堤により流域の水を安全に流下させているが、同時に上流域から土砂が供給され、河道や河床に堆積する。市街地では河床の上昇に伴い、更に築堤を実施することとなり、これを繰り返すことで、市街地の地盤高よりも河床が高い状況の河川(天井川)となる。この状況で、内水氾濫や越流・越水による破堤が起こった場合には、甚大な被害となることが想定される。

1−4.海浜への土砂供給不足による海岸浸食の進行

■こういった現象も、今日常識的に市民によく知られていることですので、特別有意義な知見とは言えません。

何かがおかしいと気づきましょう。

海浜の土砂供給原理に基づいて、技術士の視点に相応しい独自の工夫を述べるようにしましょう。

 浜は河川からの土砂供給によって、良好な環境が形成されるが、ダムや堰により土砂供給が不足することで、水産資源の枯渇・減少や海浜浸食による国土の減少が起こる

2.ダムによる流水の連続性の分断を防止するための解決策 

2−1.排砂バイパストンネルの設置

■具体的ではありますが、単発の提案です。

汎用的に広い視野で提案するようにしましょう。

 気候変動に対応した既存社会インフラの有効活用の観点からも、ダムの排砂バイパストンネル設置は有効な対策であり、ダム再生のメニューのひとつに位置付けられている。

 通常、ダムの堆砂対策は水中掘削し、ダンプトラックにより運搬・処分を行うが、経済性・環境面から推奨されない。

 そこで、ダム上流と下流をバイパストンネルで結び、洪水時に合わせて上流土砂を下流に流下させる。これを土砂還元と呼び、洪水時に合わせて実施することで、濁りの問題を生じず、下流への土砂供給が実現する。 

2−2.フラッシュ放流の実施

■ダムに焦点を合わせた一連の対策です。間違いではありませんが、ダム以外の対策も挙げましょう。

Ⅱ-2やⅡ-1ではないので視点の広さが欲しいです。

 洪水調節容量に一時的に水を貯留し、一気に下流へ流すことで、河床に付着した藻類の除去、瀬や淵の形成が促進される。

 フラッシュ放流に合わせて、ダム湖内から掘削した土砂をダンプで運搬したのち、下流河川に置土することで、本来の河川環境が形成される効果が期待できる。

 フラッシュ放流は、晴天放流となることから、下流河川における危害防止を確実に実施しなければならない。

2−3.透過型ダムの採用

 新規に建設するダムにおいては、通常は流水を流下させ、洪水時には貯留する透過型ダムの採用を検討する。

 ダム上流の湛水エリアは、通常時は水がないことから、河川公園の利用など、地域活性化や地域コミュニティ形成に寄与するような活用を検討する。

3.共通して生じたリスクとその対策 

3−1.利害関係者における土砂管理についての意識共有

■「関係者の意識共有」自体がリスクになることはありません。

問2の解決策に由来して発生するリスクを考えるようにしましょう。

 ダム下流には利水者や沿川住民がおり、土砂管理について共通の認識を持つ必要がある。例えば、内水面漁業者は水質の悪化、上水道事業者は取水施設の閉塞、沿川住民は河床上昇についての懸念など、相反する意見を調整しなければならない。

3−2.対策

 土砂還元の実施により、良好な河川環境の創出が実現できることを、長良川において実証実験されている。これらのデータや、更なる効果検証の結果を踏まえ、データに基づく土砂還元の有効性を関係者に示し、理解を得ながら事業を進めていく

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