R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210114

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBBAで、Ⅱ+ⅢはBと惜しい評価でした。その理由として、Ⅱで前提条件にぴったりの提案ができず、一般的な対応になってしまっていたことがあげられます。また、Ⅲは難問にも関わらずA評価を取られ、実力は感じますが、BIMの本質的な事項が不足しており、Aの中でも高得点は取れていなかった可能性があります。これがB評価の原因と思われます。

 敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。この問題のテーマ「既設構造物を使用しながら改築」は建設の現場経験を要する応用的な問題でした。技術士としての「技術応用」するには経験業務から選ぶ必要があります。しかしご経験がなくとも、おそらくこの方も具体的な対応練習をされていたら解答できたと思います。このような対応力は練習を重ねていけば、身につけられます。実際、講座の受講生様でそのように問題を変えられて正解されている方もいらっしゃいます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(13分39秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

(1) 老朽化対策に関する課題

1)点検・診断作業の省力化

 高度経済成長期に大量に建設された社会インフラが一斉に更新期を迎えている。一方で、社会インフラの多くを管理している市町村では、土木技術者がいない自治体が町では約3割、村では約6割に上っている。土木技術者が不足している自治体の観点から、点検・診断作業の省力化が課題である。

2)戦略的予防保全の推進

■戦略的予防保全とは何か。「戦略的」がダブリです。

つまりアセットマネジメントですか。

 我が国の維持管理は、老朽化インフラの劣化・損傷が大きくなってから対処する事後保全的な維持管理が中心である。対処の際には、補修・更新の設計、施工が大がかりになり、高コストとなっている。今後は老朽化インフラが急増するため、LCC削減と更新する構造物の更新時期を平準化していく必要がある。そのため、アセットマネジメントの観点から、戦略的予防保全の推進が課題である。

3)相互活用できる維持管理システムの構築

 高度経済成長期に集中的に整備された社会インフラの劣化・損傷の程度は、各地域、各施工条件により異なるため、多様で複雑化している。

■相互活用できる維持管理システムとはつまりどうすることか、ややあいまいです。目的だけでなく方策、方針に言及するようにしましょう。

そのため、各自治体の維持管理情報を定量的に収集し、自治体間で相互活用できるようにデータベース化し、プラットフォームを構築する必要がある。よって、多様で複雑化している劣化への対応の観点から、相互活用できる維持管理システムの構築が課題である。

(2) 最も重要と考える課題と解決策

 上述した課題のうち、点検・診断作業の省力化が最も重要であると考え、以下に解決策を示す。

1)ICT技術の活用

 ICT技術を活用する。ドローンやモニタリング技術などのICT技術を活用することで、従来では足場や高所作業車が必要であった点検作業を省力化できる。また、診断AIの活用により、人の作業の支援だけでなく、人の診断の支援を行うことで、さらなる省力化が期待できる。

2)CM方式の導入

 CM方式を導入する。CMRが自治体の補助者となることで、発注者側の体制不足を解消することができる。また、発注者支援型CM方式による民間技術者の経験・ノウハウを取り入れることで、発注者職員の技術力向上が期待できる。

3)社会インフラの選択と集中

 社会インフラの選択と集中を行う。インフラの重要度やストック効果の観点から、今後維持管理していくインフラを選択し、集中的に対策を講じることで、点検・診断作業の省力化を図る。また、地域住民の利用状況により、撤去でなく集約化することも有効である。

(3) 共通して新たに生じうるリスクと対応

1)共通して生じうるリスク

 ICT技術の活用による初期コストの増加、民間技術者派遣や社会インフラの選択と集中の仕組み整備に時間がかかる。そのため、上記対策を一斉に推進すると、普及しないリスクが新たに生じる。

■「普及しない」場合は、そもそも新たなリスクにならないことを理解しましょう。

2)リスク対策

リスク対策として、点検・診断作業を行う中小企業が共同出資して組合を作り、リースなどを行うことにより費用分担を図る。また、民間の専門技術者派遣や社会インフラの選択と集中の仕組み整備を早期に実現させるため、国と地方自治体でプラットフォームを構築し、人材派遣、基準や仕組みを整備していく。

(4) 業務遂行に当たり必要となる要件

1)技術者としての倫理

 社会インフラの維持管理では、技術者不足、財政難の中で膨大な社会インフラに対し業務を行うため、データ改ざんなどの不正が懸念される。業務遂行に当たり必要となる要件は、不正を行わないことである。

■維持管理とデータ改ざんではギャップがあります。

論理的に因果関係がつながるようにしましょう。

ISO9001の義務化、品質管理体制の構築が必要である。

2)社会の持続可能性

 社会を持続させるために必要となる要件は、安全・安心な社会資本を次世代に引き継ぐことである。そのため、人口減少社会を想定し都市構造を集約化することで、不要な社会インフラを撤去し、維持管理するインフラを選択と集中することで、次世代に引き継いでいくことが必要である。          以上

■新たにこのようなことをする、のではなく2の方策をやるだけで構わないです。だだ2のICT,CM,選択をやるのではなく、どうせやるなら社会の持続可能性も高めてするにはどうするかという問題ということを理解しましょう。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−4

 ①〜③に示すコンクリート構造物の劣化現象について1つを選択し、その劣化メカニズムを概説せよ。また、選択した劣化現象に対して、新設構造物の設計・施工における留意点、若しくは既設構造物の調査・診断、又は補修における留意点を説明せよ。

①   水分浸透を考慮した中性化による鋼材腐食

②   凍結防止剤散布環境下における凍害

③   アルカリシリカ反応

1.中性化の劣化メカニズム

 中性化とは、二酸化炭素がコンクリート表面から侵入し、水酸化カルシウムと炭酸化反応することで、炭酸カルシウムを生成し、pHが下がる現象である。pHが下がると、鋼材周囲の不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食する。鉄筋腐食が進行すると、コンクリート構造物の耐久性および耐荷性能に影響を及ぼす。

2.新設構造物の設計・施工における留意点

(1)設計における留意点

 設計の際には、現地条件(湿度条件、雨がかりの有無)などに留意する必要がある。上記条件を考慮し、水セメント比を小さくし、コンクリートを緻密化することで、中性化を抑制する。また、中性化の鋼材への到達を遅くするため、適切なかぶり厚さを確保する必要がある。水などの劣化因子による腐食を考慮し、ステンレス筋やエポキシ樹脂塗装鉄筋などの防食鉄筋を採用することも有効である。

(2)施工における留意点

 施工の際には、豆板などの初期欠陥は中性化を早める原因となるため、コンクリートの品質確保に留意する必要がある。そのため、施工時には、入念な締固めを実施するなど、新設コンクリートの品質向上を図る。また、水分浸透を抑制するため、表面被覆工法などの表面保護工法を施す。さらに、排水装置などの排水処置を適切に行うことも有効である。     以上

■十分です

Ⅱ-2-1

既設構造物を使用しながら、改築・増築、又は補修・補強に関する業務を行うこととなった。この業務を鋼構造あるいはコンクリートの技術に関わる担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする構造物を1つ挙げ、工事中の既設構造物の使用条件を設定し、業務の内容を明確にした上で、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 コンクリートに関わる技術者として以下に論述する。

(1)調査・検討すべき事項とその内容

 既設道路を夜間に通行規制して、その直下で打設するアンダーパスのコンクリートの打設責任者とした業務を想定する。

1)既設道路の交通状況

 既設道路の交通量や通行車両の種類などを調査し、覆工板が受ける影響やコンクリートの性状へ与える影響について検討する。

2)構造物条件

 構造物の配筋状況や配筋の過密度などを調査し、標準的な打込みや締固め方法で対応可能か検討する。また、特に配筋が過密な場合は、高流動コンクリートの採用を念頭に置き、検討する必要がある。

3)作業環境

 作業環境、作業時間、作業空間などの現地状況を調査し、作業環境について検討する。また、埋設物の有無などを確認し、近接施工の際に施工可能かについても検討する。

(2)業務を進める手順

1)施工計画

 上記の調査・検討事項を踏まえ、施工計画を立案する。また、施工時間に限りがあるため、高流動コンクリートを採用するなど、省力化を図る工夫を行う。

2)打設計画

■2は特別答案の前提条件と関係ない一般論となっています。

鋼コンの技術の視点からの提案をするようにしましょう。建設・施工ならOKです。

 施工計画を具現化するための打設計画を立案する。生コンの供給計画では、運搬時間や打重ね間隔の増大がないように留意する。GNSSを用いた運行管理システムを活用するなどの工夫を行う。

3)品質管理の実施

 コンクリートの品質管理を行うことによって、品質の精度を高める必要がある。また、夜間でもコンクリートの性状を確認できるようにするため、周辺環境に配慮しライトアップするなどの工夫が必要である。

(3)関係者との調整方策

1)発注者との調整方策

■このような手続きは必要ですが、しかし技術士がやる必要はないです。

 ここは試験官が、受験者がどのように巧みに対応してくれるか、技術者コンピテンシーを(黙って試している)測っているところです。 解答としては試験官が読み取りやすいように、プロマネの調整の本質を表すような意識が必要です。

 施工計画を計画する際には、 

確認を行う必要がある。また、高流動コンクリートなどへ発注仕様を変更する場合、発注者の承認が必である。そのため、仕様の変更で品質が向上するなどの施工実験などを行う。

2)協力会社との調整方策

 生コンプラントや下請会社の関係者と施工計画における留意点について協議、打合せを実施し、施工計画に反映する必要がある。 

3)地域住民などとの調整方策

 域住民や警察に対し、作業内容や作業時間などについて、個別に訪問し事前説明を行う。  

Ⅲ−1

 Ⅲ−1 国土交通省は,調査・測量から設計,施工,検査,維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i ―Construction」を推進し,建設現場の生産性を,2025年度までに2割向上させることを目指している。建設業で生産性を低下させている要因の1つとして,2次元の紙の図面で各種作業を進めていることが挙げられることから,建設生産・管理システムでも3次元モデルを利活用することで,全体の効率化・高度化を図る,いわゆるIM/CIMが生産性革命のエンジンとして推進されている。このような 状況を踏まえ,鋼構造あるいはコンクリートに関わる技術者の立場から以下の問いに答えよ。

(1)BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務を1つ挙げよ。また,BIM/CIMを導入してその業務の生産性を向上させるために解決すべき課題を多面的な観点から抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前間(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

■この答案は1見して、1〜2ページとも良く書けて いるように 見えますが実は肝心な 内容が述べられていません。 あるのは一般論としての ITに対する取り組み姿勢だけであって、 建設の本質的な BIM/CIMに関する 技術応用が見られません。一応Ⅲ答案単独ではAでしたが、それが原因となってⅡ+ⅢではB評価となって、Aまで持ち上げることができなかったと思われます。

 コンクリートに関わる技術者として以下に論述する。

(1)BIM/CIMを活用する業務と課題

 BIM/CIMの活用により、生産性の向上が期待できる業務として、コンクリート橋脚の設計業務を想定し、以下に課題を示す。 

1)BIM/CIMに精通した技術者の不足 

 BIM/CIMの活用には、コンクリート技術に加えて、BIM/CIMに精通した技術者が必要である。しかし、従来のコンクリートに関する専門知識に加え、BIM/CIMの知識を取得するには、業務量が増加している中で、負担が大きくなる懸念がある。よって、BIM/CIMに精通した技術者の不足が課題である。

2)BIM/CIMの導入による初期コストの増加 

 BIM/CIMを活用するためのソフトの導入には、初期コストやメンテナンスコストがかかる。そのため、中小企業の経営を圧迫する懸念がある。よって、BIM/CIMの導入による初期コストの増加が課題である。

3)ICT依存によるトラブルの発生 

 BIM/CIMの活用が進み、ICT技術への依存が進むことで、システムエラーなどのトラブルが発生した場合、対応困難となる懸念がある。また、コンクリート橋脚の設計業務の作業工程の遅れは、橋梁上部工の工程遅延などの影響を及ぼす。よって、ICT依存によるトラブルの発生が課題である。

(2)最も重要と考える課題と解決策 

 上記課題のうち、最も重要と考える課題は、BIM/CIMに精通した技術者の不足である。なぜなら、建設業界全体として、担い手不足であるため、コンクリート技術に加え、BIM/CIMに精通した有能な技術者が必要である。また、BIM/CIMに精通した技術者不足では、BIM/CIMの活用が進まないからである。

1)民間活力の活用 

 民間活力を活用する。BIM/CIMの知識がない民間会社や技術者に対し、民間の建設コンサルタント会社の専門技術者を派遣し、民間会社の経験・ノウハウを伝承することで、BIM/CIMの知識を取得できる。また、建設業界内での人材育成を行うためには、BIM/CIMに関する研修会や講習会を開催することで、技術力向上を図る。

2)IT技術者の活用 

 IT技術者を活用する。建設業界外からIT技術者を獲得することで、BIM/CIMに精通した技術者不足の解消を図る。また、コンクリート構造物は一品毎に仕様が異なるため、コンクリート部材の規格の標準化を進め、IT技術者でもBIM/CIMを活用しやすく簡略化を図る必要がある。

(3)共通して生じうるリスクと対策 

1)他業種への移動

 民間の専門技術者の派遣やIT技術者の活用により、コンクリート技術に加え、BIM/CIMに精通した有能な建設技術者となる。そのため、労働環境が良い建設業界外の他業種に移動してしまうリスクが新たに生じる。

 対策として、建設業界を労働環境が良い魅力ある環境にしていく必要がある。そのためには、設計業務の省力化を進めていく必要がある。コンクリート橋脚の設計業務では、ハーフプレキャスト化による規格部材の採用による設計の簡略化や性能規定方式の積極的な採用により設計の省力化が図れる。

■リスクも一見よさそうに見えます。しかしよく考えてみるとBIM/CIMと関係ないことです。

2)コストの増大

 民間の専門技術者の派遣回数や研修会、講習会の開催数の増加、IT技術者の人材獲得の費用増加により、コストが増加する懸念がある。そのため、将来的なコストの増加がリスクとして新たに生じる。

 対策として、官民連携したプラットフォームを構築する必要がある。プラットフォームを構築することで、民間会社の費用負担だけでなく、国と民間会社で費用分担を図ることができる。また、プラットフォームにおける専門技術者を人材派遣するなど、積極的に行うことで、更なる推進が図れる。

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