R2年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。 20200927

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はABB、Ⅱ+Ⅲの平均評価はBとの残念な結果でした。その理由としてⅠは広い視点が評価されたようですが、一方Ⅱ、Ⅲでは出題者が求めた事項に対して、具体的に上水道及び工業用水道としての全体形を目指した提案ができていなかったことがあげられます。主題が見えないため答えが発散してしまったように拝見いたします。

 こうした敗因について「専門知識の不足」とお感じの方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(22分24秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

音声ガイドの添削時期が合格発表前であったため、判定については明確にはできておりません。この時点ではもっぱら口頭試験対策としてお伝えしております。

問題  Ⅰ-2

 I−2 上下水道事業は,都市生活を支えるインフラとして整備が進められてきた。水道晋及率は98.0%,下水道処理人口普及率は79. 3%ともに平成30年度末)となっており,両事業ともこれまでに整備した膨大な施設を有している。一方で,日本の総人口は平成20年のピーク後に減少へ転じており,大半の地域では水需要減少が見込まれている。 各事業体の財政状況は厳しく,官民双方における技術者不足,施設の老朽化等の多くの課題を抱える中で,快適で衛生的な生活に不可欠な上下水道事業を安定的に継続させるための方策が求められている。  このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)上下水道事業を将来的に安定して継続させるためのさまざまな取組が求められている。  これについて,技術者としての立場で多面的な観点から,上下水道事業に共通する課題を複数抽出し,その内容を観点と共に示せ。

(2)前間(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その理由を述べるとともに,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)上下水道に共通する課題。

■↓ほとんど前提事項の確認に終始しており、消極的な感じを与えます。出題者が提供している内容ですから、解答になっていないことを理解しましょう。

日本の水道事業は、高度経済成長期に建設した水道施設が耐用年数に達し、今後それら施設の更新・再構築が急務となっている。

併せて、頻発する地震や集中豪雨などの自然災害への対策も必要であり、それら事業の実施に必要な資金、人員の確保が必要である。

しかし、人口減 に伴う給水量減 のような外部環境の変化により、現状の料金体系にあっては、必要な収入を確保することが困難な状況となっている。

また、団塊世代職員の大量退職による水道施設職員の減少や高齢化により、人材不足や水道技術の継承、水道サービスの質の低下、災害時対応力の低下が課題となっている。

そのため、特に中小規模の事業体においては、その多くが技術基盤や財政基盤が脆弱であるため、将来にわたり持続可能な水道事業の運営が困難な状況である。 

■これ↓が課題です

これらの課題に適切に対応していくため、アセットマネジメントによる資産管理、広域連携、官民連携、人材育成・組織力強化、ICT活用や省エネによる経営効率の向上、ダウンサイジングも含めた水道事業の再構築を図ることにより、運営基盤の強化を図ることが求められている。

(2)最も重要と考える課題に関する技術的提案

 民双方における技術者不足のため、官民連携の推進を重要課題として挙げる。

■「官民連携」は役立つかもしれませんが、これらの解決策は、ほとんどが事業のやり方に留まっています。上下水道技術に関するものを提案しましょう。技術士試験は、真のコンピテンシーを表すことが重要です。

①個別委託:水道事業者等の管理下で設計や水質検査など業務の一部を委託するものである。

②第三者委託:水道の管理に関する業務を委託するものである。水道法上の責任は委託事業者が負うこととなる。

③DBO:施設の設計、建設、維持管理等の業務について民間事業者のノウハウを活用して包括的に実施する委託。水道事業者が資金調達を行う。

④PFI:施設の設計、建設、維持管理等の業務について民間事業者のノウハウを活用して包括的に実施する委託。委託事業者が資金調達を行う。

⑤コンセッション:水道資産を地方公共団体が所有し、地方公共団体と民間事業者が事業権契約を締結することで、民間事業者が水道施設を経営する方法。間事業者が水道利用者から直接料金を徴収して水道事業を運営する。

⑥完全民営化:水道事業を実施している地方公共団体が、民間事業者に水道資産を含めた水道事業を譲渡し、民間事業者が資産を保有した上で水道事業を経営する方法。民間事業者が水道利用者から直接料金を徴収して水道事業を運営する。

■「官民連携の導入のための技術的提案を以下に示す」とありますが、実際は、「官民連携」の技術領域以外に入り込んでいます。

民連携の導入のための技術的提案を以下に示す。

対応時期は施設の更新にあわせて実施することが有効である。発注範囲はアセットマネジメントにより得られた更新需要や財政収支の見通しから課題を抽出し、その課題に対して目標となる対応レベル、対応期間を見極めて決定する必要がある。実施期間は、長い方が効果が期待できるが、請負者の倒産リスクを考慮する必要がある。機械・電気・計装設備の耐用年数が30年程度以内になることを踏まえ、対応期間は10年程度にすることが有効である

(3)リスクと対策

■一般論になっています。求めているのは2の提案内容に対するリスクです。問題の趣旨を考えましょう。

道事業は、水道水の安全性の確保と供給体制の持続性の確保が強く求められる事業である。そのため、リスクの分担に加えて、リスク発生を事前に察知し、またリスクが発生した際の対応策を事前に検討することが必要である。

・モニタリング実施によるトラブル予兆の早期発見

・ 水道事業者と民間事業者間の情報共有、信頼関係の構築

・ 水道事業者と民間事業者双方における事業継続計画等の策定

(4)業務遂行において必要な要件

■漠然とした技術者の責務になっています。この業務において、技術者倫理・社会持続性を高める要件を述べましょう。

設計、施工、維持管理等、業務遂行における全段階において、衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努める必要があ。    以上

 本講座ではこのような細かい意味、対処法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

 地表水を原水とする浄水場に紫外線処理を導入する場合、確保すべき施設整備の技術的要件を述べる。

■サービス問題のように拝見いたします。不要な前置きなしに、単刀直入に述べて、楽勝で合格点を取りましょう。

リプトスポリジウムは耐塩素性の病原生物である。

クリプトスポリジウムは家畜の糞便の河川排出によって発生するため、浄水施設でクリプトスポリジウム等を十分に不活化できなければ、感染症による健康被害が発生する可能性がある

リプトスポリジウム対策として、紫外線処理設備を導入する必要があるが、確保すべき技術要件は以下の通りである。

①       原水はろ過処理水である必要がある。

②       原水濁度2度、色度5度、紫外線透過率75%超という条件を満足する必要がある。濁色度計、UV計等を設置し、常時監視を行う必要がある。

③       紫外線強度計により常時紫外線強度を監視し、紫外線(253.7nm 換算)の照射量が概ね 10mJ/cm2 以上得られていることを確認する。

④       ンテナンスや事故時に備え、予備施設を設ける必要がある

■↓こちらも得点にならない不要な後付けです。

おわりに

リプトスポリジウム対策としては、紫外線処理以外に処理水濁度を0.1度以下に処理できるろ過設備が挙げられる。ライフサイクルコストや維持管理性、将来の水質汚染リスク、環境負荷低減技術の導入などを比較検討し、最適な選択を行う必要がある。  以上

Ⅱ−2−2

   河川表流水を原水とする浄水場において横流式沈殿池からのフロック流出が問題となっており、改善が求められている。

 あなたが、この改善業務の担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について説明せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

1. 調査、検討すべき事項とその内容

■問題趣旨に含まれる前提事項に留まっています。

ロック流出が継続した場合、後段のろ過池の閉塞などの被害が発生するため、迅速な対応が求められる。

必要情報の整

(1)水水量、水質(濁度や色度)のデータ収
■横流式沈殿池からのフロック流出問題に対して、これのみでは対処は無理になります。

(2)既存施設に関する情報(施設台帳、財務台帳、維持管理台帳、構造物の図面など)

2.業務手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

■確かな見通し(経験)に基づいた手順、提案をするようにしましょう。

(1)危害原因事象の抽出

・水源

 ・下水未処理水の放流

 ・湖沼の富栄養化

 ・油事故などの突発的な事象

・浄水場

 ・誤操作によるもの

・凝集剤注入量設定ミス

   ・原水流量の設定ミス

・老朽化などによるもの

   ・凝集剤注入設備の故障

   ・混和池の撹拌機の故障

   ・沈殿池の洗浄不足によるフロック流出

  ・薬品に関するもの

  ・凝集剤などが粗悪品

 ・管理の不徹底

(3)対策

■対策は求めていません。あくまでも「手順」を述べましょう。

・水源

 原水水質が変化している場合は、以下の手順で薬品注入量の変更や凝集剤の変更を実施する。

①  ジャーテスト

既存の凝集剤以外も含めた最適凝集剤注入量の確認

②  設備の見直し(必要に応じて)

③  実証実験(後段のろ過地への影響などの確認)

④  性能評価(処理水濁度など)

⑤  維持管理(貯留箇所や条件、凝集沈殿処理の管理方法の決定)

・浄水場

・誤操作によるもの

 凝集剤注入量や原水流量の適正化を行う。

・老朽化などによるもの

 定期的な点検、劣化状況の診断、健全性の評価を行い、補修や補強、更新などのいずれかの対策を講じる。

・薬品に関するもの

 薬品受入れ時の比重測定や品質の確認。適切な管理の実施

3.関係者との調整方法。

術者は、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等の関係者との間で、口頭や文書等の方法を通じて、明確かつ効果的な意思疎通を行う必要がある。このため、ICTを活用し、依頼主に迅速かつ確実に情報提供を行うとともに、関係者間で情報共有を行う。    以上

■雇用者としての責務になっています。一般論に留まらず、技術的内容を述べましょう。

ここで求められているのは「横流式沈殿池からのフロック流出問題解決」に際しての調整です。

また、末尾の「以上」はなくても構いません。

Ⅲ−2

 水道事業では,外部環境として,原水水質の悪化,水需要の減少及び自然災害の頻発化への対応等の多くの課題を抱えている。また,内部環境として,水道事業の基幹施設である多くの浄水施設で老朽化が進んでいる。このため,今後の水道水の安定供給に向けた浄水施設の更新や機能強化が求められている。  上記の状況を踏まえ,水道分野の技術者として,以下の問いに答えよ。 

(1)浄水施設に関して,上記の要因を考慮した多面的なそれぞれの観点(水質,水量,強靭)について複数の課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。 

(2)前問(1)で抽出した課題のうち,強靭の観点に関して,近年の自然災害を踏まえ,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対して浄水場で実施する場合の複数の解決策を具体的に示せ。 

(3)前問(2)で提示した解決策に新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)水質、水量、強靭に関する課題。

■ここは不要な前置きです。問題文では「・・上記の状況を踏まえ」と書かれているにすぎず、その内容を記述することは求めていないことを理解しましょう。

本の水道事業は、高度経済成長期に建設した水道施設が耐用年数に達し、今後それら施設の更新・再構築が急務となっている。

併せて、頻発する地震や集中豪雨などの自然災害への対策も必要であり、それら事業の実施に必要な資金、人員の確保が必要である。

しかし、人口減 に伴う給水量減 のような外部環境の変化により、現状の料金体系にあっては、必要な収入を確保することが困難な状況となっている。

また、団塊世代職員の大量退職による水道施設職員の減少や高齢化により、人材不足や水道技術の継承、水道サービスの質の低下、災害時対応力の低下が課題となっている。

そんな中、特に中小規模の事業体においては、その多くが技術基盤や財政基盤が脆弱であるため、将来に渡る持続可能な水道事業の運営が困難な状況である。

また、近年、都市部への人口集中、産業構造の変化、地球温暖化に伴う気候変動等の様々な要因によって水循環の健全性が損なわれている

■ここから下が真の課題です。しかし、箇条書き形式では、技術者としての見解が読み取れないので気をつけましょう。

以上の事を踏まえ、水道事業の役割は、新水道ビジョンで掲げている「安全(水道水の安全性の確保)」、「強靭(確実な給水の確保)」、「持続(供給体制の持続性の確保)」を維持する事である。

そのため、克服すべき課題としては以下の事項が挙げられる。

・安全

水源保全、水質・水量監視、水安全計画に基づく施策の推進

・強靭

耐震化対策、事故・災害に対する危機管理体制の構築

・持続

適切な資産管理(点検を含む維持・修繕やアセットマネジメントの活用)、広域連携、官民連携、人材育成・組織力強化、ICT活用や省エネによる経営効率の向上、給水人口減少を踏まえた水道事業の再構築

 水質、水量、強靭に関する具体的な課題は以下の通りである。

・水量

①地下水の過剰揚水による地盤沈下

②都市化の進展等により雨水の地下浸透量が減少

・水質

①過疎化等により森林や農地の手入れがされず水源涵養機能が低下する地域が存在する。

②湖沼等の閉鎖的水域は改善されておらず、水道水の安全性が損なわれている。

・強靭

地震や集中豪雨などの自然災害への対策

(2)最も重要と考える課題と対策(強靭:浄水場)

 地震は広範囲で被害が発生するため、重要課題として挙げる。

■解決策の内容はわずかこれだけです。わずか10行ではコンピテンシーを十分に表現できません。

・耐震化対策

①  施設の耐震化(耐震設計、耐震補強、耐震管や伸縮可とう管の布設)

②バックアップの確保(施設間のネットワーク化、施設の複数化(予備施設)、連絡管の整備、自家発電設備の整備)

・応急対策

①応急復旧(人員の確保、資機材の備蓄(配管材料、補修金具等))

②応急給水(人員の確保、資機材の備蓄(給水車、ボトルウォーター等)、拠点給水施設の整備)

(3)リスクと対策

■ここは設問を誤解されています。出題者は2で解答したご自分の提案「耐震化、応急対策」についてのリスクを聞いています。なぜかというと自らの方針の見直しやチェック能力を求めているからです。(それが技術士の資質、能力というものです)

問題文の意味を解釈しても答えになりません。

日本大震災等では液状化発生地区、盛土地区における管路被害が多く発生している。

設計段階では適切な技術であっても、新たに発生した災害等により、新たな課題が明らかになる場合もある 

これ↑がリスクというものです

このため、被害想定にあたっては、ハザードマップ等により旧河道、埋立地等の液状化の可能性がある地区、盛土地区を十分把握する必要がある。

被害想定を再度実施したうえで、耐震補強や耐震設計の見直しや、耐震管や伸縮可とう管の変位量、伸縮量の見直しを図る必要がある。       以上

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