R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114
この過去問答案の評価はⅠⅡⅢすべて、Aということで実力派の答案と言えます。一応、合格点だから何も言うことはないのですが、次の口頭試験で楽勝でパスされるには、弱点を押さえておく必要があります。口頭試験で筆記関連連問題が聞かれるからです。それぞれコメントいたします。ここではAをAのままさらに高得点にするにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。
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問題 Ⅰ-2
我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1) 社会・経済情勢が変化する中で、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.課題の抽出と観点
建設業は、「社会資本の担い手」としてストック効果の積極的な引出しと効果の向上を求められている。以下に課題を抽出し、観点を述べる。
■こういった解釈や出題者意図の追認は不要です。
(1)効率的な維持管理
我が国の社会資本は、今後10年で施設の老朽化に伴い維持管理・更新工事の増加が懸念されている。また、建設投資は、2020年は減少傾向にあるが政府投資工事は大型事業を中心に底堅く推移する見通しである。増加する建設需要に加え、財政的人材的制約の中で、いかに効率的に維持管理に取組むかが課題となる。
この前提は問題文にあることの繰り返しに留まってしまっています。
一方、肝心の効率化の課題が無いので、そのことを述べるようしましょう。
(2)想定外な災害への対応
我が国の国土は脆弱で毎年のように自然災害により多くの被害を受けている。近年の災害からわかるように施設の能力を超える外力により甚大な被害が発生している。これに加え、南海トラフ地震などの巨大地震の切迫性も高まっている。国民の安全安心を確保する観点から、いかに維持管理による防災・減災対策を講じるかが課題となる。
この「・・いかに・・することが課題である。」文を無くして、具体的に方針を示すようにすると、良くなります。
(3)人材の確保
建設需要は整備から維持管理・防災・減災へとニーズが変化している。しかし地方を中心に建設事業者は減少しており維持管理を担当する人材や知識が不足している。事業の持続性の確保の観点から、いかに担い手を確保し育成・訓練するかが課題となる。
■人材育成の本質的課題について述べましょう。
前提事項を整理するだけでは消極的で、試験官から見ると、冗長で退屈にとられてしまうため。
2.重要な課題と解決策
戦略的にメンテナンスを実施するためには、「賢く投資・賢く使う」が重要であるため、効率的な維持管理を最も重要な課題とし、以下に解決策を記述する。
■「選択と集中」の意味を考えてみましょう。
冷静に考えると同義語2つ
そして本文の趣旨はやや異なります。「政策」用語を安直に引用せず、技術提案をするようにしましょう。
(1)選択と集中
従来の事後保全では、増加する維持管理・更新工事に対応することは困難であり非効率である。ストック効果の高い事業を目的や役割などを考慮して選択・集中する。想定外な災害に対して、施設特性や経済性などを考慮し人命や財産の保護に重点を置いた対策の実施などが有効であると考える。これを併せて、維持管理に予防保全の考えを導入した長寿命化計画を策定し、これらの情報を活用したメンテナンスサイクルを構築することでメンテナンスに係るトータルコストの縮減・平準化にも期待できる。
(2)維持管理の省力化
地方を中心に新たなニーズに対応する人材・技術が不足しており、限りある人的リソースを有効活用することが重要である。そこで、ICTの活用し、維持管理の省力化・省人化を図る。具体的には、UAVを使用した劣化診断と三次元設計図を連動した劣化範囲診断図の作成、ICT施工による自動制御、モニタリングシステムの構築などを行う。また、これらの情報をビックデータとして活用する共有データプラットフォームを構築することで将来的な維持管理の効率化にも期待ができる。
■解決策は◎です。これを導く課題が1. にあればさらにベストです。
(3)民間投資の誘発と新技術の活用
継続的な維持管理の効率化を図るため、メンテナンス産業の育成・拡大による競争力の強化が不可欠である。優れた技術やと知識を活用し産学民を総動員した取組みを実施する。具体的には、地方フォーラムやメンテナンスに関する優れた技術の表彰や全国展開、点検診断に関する民間資格の創設などが有効であると考える。
■解決策は◎。 ややや提案が幅広で漠然としています。
3.リスクと対策
(1)リスク
以上(1)〜(3)の対策を講じた場合、ストック効果が小さいことで廃棄される社会資本の代替が必要となるリスクが生じる。
■つまりリスクは何なのか?を考えてみましょう。
「代替が必要となる・・」では対策ありきになってしまいます。
「ストック効果が小さいから廃棄」したのにそれのどこがいけないのか。
「代替」がないことに由来する真のリスクが見えるようにしましょう。
(2)対策
選択と集中、集約と再編により廃棄される社会インフラの代替案について、周辺住民や使用者に対しストック効果の見える化や事業の必要性などの説明を行い、事業への理解を得られるようにする。
■2. と同じことをひたすらやるのみでは請負企業としての責任を示したのみになってしまいます。
公益性(市民の経済活動)についての解決策としては物足りなくなります。
4.必要となる要件
維持管理は公共性が高く常にエンドユーザーの安心安全を第一に考え、地域特性に応じた対策を実施し、ニーズに沿った合意形成が必要である。また、継続的な維持管理や将来的なコスト削減、地域環境の保全と環境再生に取組むことが重要である。
■合意形成や地域配慮は技術者としての基本事項ですが、それだけで戦略的維持管理ができるものではなく、その心構えを求めてはいないことを理解しましょう。
また、問4の問題趣旨についてですが、
「問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件」
1つは技術者倫理の観点から述べ、他一つは社会の持続可能性の観点から述べるようにしましょう。
以上
■末尾の「以上」は多くの方々が記載されていますが、実は無くて構いません。
Ⅱ−1−4
鉄筋コンクリート構造物の劣化機構について次のうちから2つ選び、それぞれについて、劣化現象を概説せよ。また、選んだ劣化機構について、劣化を生じさせないよう事前に取るべき対策を各2つ以上述べよ。
① 中性化
② 塩害
③ 凍害
④ 化学的侵食
⑤ アルカリシリカ反応
1.劣化現象の概説
(1)塩害
塩害は、塩化物イオンにより鉄筋の不動態被膜が破壊される。そこに水分・酸素が供給されることで鉄筋腐食が促進し、膨張することでひび割れが発生する。塩化物イオンには、骨材に海砂使用による内在塩分と飛来塩分や融雪剤などの外来塩分とがある。
■専門知識は◎です。
(2)アルカリシリカ反応
アルカリシリカ反応は、アルカリ反応性鉱物とアルカリ水溶液が反応しアルカリシリカゲルを生成し、吸水・膨張することで軸方向鉄筋に沿ったひび割れなどが発生する。
2.事前に取るべき対策
(1)塩害
①コンクリート中の塩化物イオン総量を0.3kg/m3以下にする必要がある。骨材に川砂を使用する。②水セメント比の小さい密実なコンクリートや表面被膜工法による劣化因子の遮断を行う。また、受入れ時にカンタブ等を使用して塩化物量を確認することも重要である。
■「事前に取るべき対策を各2つ以上を示す」ですので末尾は③としましょう。
(2)アルカリシリカ反応
事前に取るべき対策を各2つ以上を示す
①コンクリート中のアルカリ総量を3.0kg/m3(Na2O換算)とする。モルタルバー法や化学法により無害と判断された骨材を使用する。②高炉セメントやフライアッシュセメントなどを使用し、密実で化学抵抗性に優れたコンクリートとすることが有効である。
■対策なので文末は「‥する」でよいでしょう。
Ⅱ−2−1
図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、堤内地は耕作資料されており、現場へのアクセス可能な道路はないものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。
(1)検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2)業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。
(3)業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
1.検討すべき事項
(1)流水部の切回し検討
河川区域内での橋脚構築に伴い、流水部の切回しが必要であると考えられる。河川上流や下流部の河川線形や流量、段丘崖の状況など施工条件を確認する。調査結果から、切回し線形や仮設流水部面積の検討、使用材料や濁水防止対策などを検討する。
■本体(下部工)の施工検討も述べましょう。
(2)橋梁下部工の仮設検討
堤内地は耕作利用されているため、アクセス道路を確保できない。そこで、仮設道路や施工ヤードの検討を行う。農道や河川上下流部から乗込み可能か確認する。また、橋脚構築には掘削を必要とするため、工事車両などを考慮して河川内アクセス道路の検討を行う。
また、土留め掘削について地盤調査から検討を行う。
■不要な前置きです。わかりきったことなので説明不要になります。
ここでは施工の手順が焦点になりますのでそのことを述べるようにしましょう。
2.業務手順および工程管理上の留意点・工夫点
(1)業務手順
業務は、仮設計画・土留め工計画・コンクリート計画・施工及び河川復旧の順に行う。
(2)工程管理上の留意点・工夫点
①仮設計画では、河川特性・流量・堤内地に留意して仮設計画を行う。流水部を切回すことが望ましいが堤内地側は工事用道路や施工ヤードをして使用するため、大型土のうによる仮堤を構築する。
仮説を立てて、大事な工事のポイントを説明する。
これにより流水部の幅員を減少させ、河川流水部断面積を確保しつつ線形規制を行う。
■内容はOKですが、やや冗長です。
②土留め施工計画では、河川や地下水位に留意し、施工計画を行う。土留め壁は鋼矢板もしくは鋼管矢板とする。通常バイブロハンマーにより打設するが、河川底面ということで玉石による打設不能が考えられるため、ウォータージェット併用方式とする。また、可能であれば鋼管矢板を使用し剛性を向上させる。これにより切梁・腹起しを削減し後工程の短縮を図る。
■ここは具体的に書かれていてOKです◎
③コンクリート打設計画では、作業手順に留意し計画を行う。通常足場・鉄筋・型枠・打設・養生と行うが、ハーフプレキャスト工法を採用し、鉄筋・型枠工の省力化・省人化を図る。
■一般的事項になっております。他の現場と同じことにならないようにしましょう。
これによりコンクリート工の工期短縮と安全性を確保する。
④施工・河川復旧では、施工条件・施工環境の変化に留意する。
■前提事項のような内容になっております。もっと具体的に提案しましょう。
施工計画による作業手順にて施工を行うが、雨季などの増水など施工環境の変化に対応するため、余裕のある工期を確保する。
■こちらも質問の意味を理解し、具体的に何をどうするか提案しましょう。
3.関係者との調整事項
(1)河川管理者協議
河川管理者と事前協議を行い、河川切回しにおける対策や安全対策・濁水防止対策について検討する。また、緊急時の体制構築や情報の伝達方法などを確認し効率的・効果的に施工を進めるように調整する。
以上
Ⅲ−1
我が国は人口減少局面にあることに加え、総人口に占める高齢者の割合は増加しており、他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか、全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では、今後の地域社会の維持管理・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ、施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当たって,多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
1.課題の抽出と観点
(1)施工管理の効率化
我が国の社会資本は今後20年で増加する老朽化に伴い維持管理・更新工事の重要性はますます高まっている。一方、維持管理は施設の劣化状況に講じた対策が必要とされ、設計変更が必ず生じる上、品質確認には手間を要する。さらに、施工量は流動的で工期も不明瞭である。過疎化が進行する地域においては維持管理を担当する人材が不足している。人的リソースの有効活用の観点から、いかに施工管理の効率化を図り対応するかが課題である。
■出題趣旨の追認では消極的になってしまうので気を付けましょう。
(2)調査における安全性の確保
維持管理が必要とされる施設は、建設後50年が経過しているものも多く、設計図書や点検調書などが不足している場合もある。これに加え施設の劣化状況の確認が必要となり供用中の施設にて調査が必要となる。
■こちらも問題文に書いてあることで出題趣旨の追認になってしまっております。
労働災害防止の観点から、いかに調査における安全性を確保するかが課題となります。
(3)工事の瑕疵リスクの軽減
維持管理・更新工事では、様々な原因による劣化現象に対し多様な工種・工法・材料から組合せて適用する。
出題趣旨とあまり関係性のない提案にならないようにしましょう。
そのため、知識・技術不足から時に予期せぬ不具合が生じ再施工などの不具合事例が多く余分な工期やコストが発生するリスクがある。施工会社のリスク軽減の観点から、いかに施工を進めるかが課題である。
テーマを見誤った可能性があります。
高齢化社会→安心安全だけで問題は解決しません。
施工技術者の視点で述べましょう。
2.最も重要な課題と解決策
安全安心の確保・生活の質の向上のストック効果の確保が重要であり、確実に維持管理・更新工事を実施するため、施工管理の効率化を最も重要な課題と考え、以下に解決策を記述する。
(1)三次元設計図の活用
維持管理・更新工事では施設の劣化状況に応じた対策を講じるため手戻りの軽減が重要である。三次元設計図を用いたフロントローディングを実施することで
■3Dが安全安心の施工になるのか今一度考えてみましょう。
設計の品質を向上することが有効であると考える。調査結果から属性情報の作り込みを行い分析・解析・問題点の抽出、対応策の検討を行うことで、手戻り・手持ちの軽減を図る。これと併せて設計・施工一括発注方式を採用することで施工条件に応じた合理的な設計とするこができ、更なる省力化・工期の短縮に期待できる。
(2)新技術の活用
維持管理では施設の劣化状況を的確に把握することが重要である。しかし調査診断には専門性が求められ、超音波や赤外線などの機器を要する。
「新技術」 新しければよいというものでは無く、ねらいや目的があるはずですので、中身の話を述べましょう。
3Dは(1)とダブリになっております。
新技術を活用することで点検調査の寮緑化を図る。具体的にはAIによる劣化診断や三次元設計図と連動した劣化範囲図の作成や共有データプラットフォームを構築し専門家による診断システムを構築することが有効であると考える。これにより、診断ミスの防止・対策の検討の省力化、検討に関する時間短縮に期待できると考える。
(3)施工記録のデータベース化
維持管理・更新工事において、施設毎の状況に応じて対策を検討するため時間を要する。そこで施工記録などの情報をベータベース化し有効活用することで更なる効率化に有効であると考える。
提案の前置きがやや長いようです。データベースは業務改善の手段に留まっています。
どうやって応用するかという本質的提案をしましょう。
施設の劣化状況、診断方法・補修方法・使用材料や施工条件などの情報の共有化・見える化を行う。そしてこれらの情報をビックデータとして共有データプラットフォームを構築し、類似工事へ適用することで発注業務や施工業務の継続的な効率化と省力化、また人材不足や担い手不足に有効であると考える。
3.リスクと対策
(1)リスク
上記(1)〜(3)の対策を講じた場合、過去の納品データの活用が困難になるリスクが生じる。
■「リスク」は
本題が見えないため、仕方なくこの結論に持ち込んだ結末となっています。
正しい分析をしましょう。
(2)対策
老朽化が懸念される施設の設計図書などはデジタル化されていないことが多い。過去の納品データを有効活用するため、デジタル化を促進する。また、これらのデータの共通プラットフォームを構築し過去の納品データを有効活用し、今後の維持管理に利用する。