〒103-0008 東京都中央区日本橋中洲2-3
サンヴェール日本橋水天宮605
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定休日:不定期
問題 機械部門 必須 Ⅰ-1
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人類が初めて月に降り立ってから半世紀が経過する今、人類の活動圏を拡げて持続的な人類活動に貢献する宇宙探査の活動が世界中の科学者や技術者によって行われている。その活動の中で、人類が住める可能性のあるのが火星であり、水、そして生命体の存在も期待されている。
このような状況において、地球上での仕様を前提として製品化された機械を、下表に示す火星の環境で使用するための実現可能調査を行うことになり、あなたがその統括担当者となった。
(1)機械部品1つを想定して、その概要を簡潔に記したうえで、その機械製品を火星で使用する際の課題を多面的な観点から3つ以上抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する解決策を機械技術者として3つ示せ。
(3)全問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。
(4)全問(1)~(3)の業務遂行に当たり、機械技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解答者 Ⅰ-1 機械部門 材料強度 専門事項:強度解析 簡易形式 添削回数4 2022/4/26
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(1)機械製品を火星で使用する際の課題
機械製品として井戸掘削機を挙げる。掘削機はロータリー式で、地中にある水を掘削して取り出すため。
{C}① {C}低温環境への対策
火星表面の最低気温が-89℃であるため、ビット刃先の脆性破壊、軸受潤滑油の粘度低下、燃料の凍結が予測される。刃先や主軸の材質をチタン合金、オーステナイトステンレスに変更、非接触軸受の採用。
{C}② {C}駆動機用の燃料確保
火星の大気はCO2が95.1%であるため、CO2からメタンと酸素を製造して燃料とする技術を導入する。又が原子力電池の採用。
{C}③ {C}機器の保守
火星では砂嵐や強風の影響もあり、分解検査が困難である。作業ロボットの導入やメンテナンスフリーの構造を採用する。
(2)最も重要な課題と解決策(①低温環境への対策)
①主要部の材質変更
最低気温-89℃でも低温脆性が発生せず、耐摩耗性に優れたチタン合金を使用する。シャフト部分についてはオーステナイトステンレス鋼とする。
②一体成型品の使用
溶接構造品は残留応力、ブローホールの存在により、低温脆性破壊が発生し易いため、保護管はシームレス管を採用する。
③非接触軸受の採用
潤滑油を使用しない非接触磁気軸受を採用する。磁気によってラジアルとアキシアル方向にスキマを確保し、軸受摩耗を防止する。
(3)波及効果と懸念事項、対応策
波及効果:耐久性の向上により、火星での成功技術として注目され、世界的に投資が加速する。火星用掘削機として特許を取得でき、企業の利益向上。
懸念事項:非接触軸受は電力が必要であるが、停電時に磁力喪失し、軸受損傷の懸念がある。
対応策:主軸の回転を利用する発電機を付属し、電力喪失時にも磁力を発生して軸受機能を維持する。
(4)技術者として必要な要件・留意点
機械技術者倫理の観点:予兆保全による整備計画を立案。整備コストを削減し、機器の信頼性向上を図る。技術士倫理綱領「公共の利益の確保」相当。
社会の持続可能性の観点:火星の環境対策として、使用する機械部品の標準化、規格化による互換性確保。部品の再利用により廃棄物削減。
これはSDGsの「つくる責任、使う責任」に相当する。
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解答者 Ⅰ-1 機械 材料強度 完成答案形式 添削履歴 0 作成日 2023.5.1
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(1)機械製品を火星で使用する際の課題
火星で使用する機械製品として井戸掘削機を挙げる。掘削機はロータリー式で、地中にある水を掘削して井戸を建造し、生活に必要な水を確保する。
①低温環境への対策
火星表面の最低気温が-89℃であるため、ビット刃先の脆性破壊、軸受潤滑油の粘度低下、燃料の凍結が予測される。刃先や主軸の材質をチタン合金、オーステナイトステンレスに変更する。また、潤滑油が不要である非接触軸受を採用する。
②駆動機用の燃料確保
火星の大気はCO2が95.1%であるため、CO2からメタンと酸素を製造して燃料とする技術を導入する。例として、水を電気分解して水素と酸素を作成し、メタネーションによって二酸化炭素からメタンを生成する技術を導入する。又は太陽光発電により発電を行う。
③機器の保守
火星では砂嵐や強風の影響もあり、分解検査が困難である。また、酸素が無く、低温環境での過酷な条件下での人の作業は困難である。そこで、メンテナンスフリーの構造やAIによる自己診断機能、更にロボットを導入した保守を導入する。
(2)最も重要な課題と解決策
最も重要と考える課題として、①低温環境への対策を挙げ、以下に解決策を述べる。
① 主要部の材質変更
最低気温-89℃でも低温脆性が発生せず、耐摩耗性に優れた材料を使用する。岩盤を掘削するカッタービットには強度が高く、低温脆性の発生しないチタン合金を使用する。シャフトと保護管については加工性が良く、耐食性に優れるオーステナイトステンレス鋼を採用する。
一方で、チタン合金は切削加工が難しく、加工熱による変形が発生する恐れがあるため、可能な限り簡略化した形状とする。オーステナイトステンレスは酸洗いを行って表面の錆を除去して耐食性向上させる。
②一体成型品の使用
溶接構造品は残留応力、ブローホールの存在により、低温脆性破壊が発生し易いため、保護管はシームレス管を採用する。溶接部が無い為、内圧、ねじり、引張荷重に強く、耐食性の向上を図ることができる。
③非接触軸受の採用
潤滑油を使用しない非接触磁気軸受を採用する。磁気によってラジアルとアキシアル方向にスキマを確保し、軸受摩耗を防止する。大気圧は地球上の1/100で圧力差によるダスト混入が考えられる為、ガスを封入してダスト侵入を防止する。
また、低温環境下で消磁が少ないネオジウム磁石を使用することで、信頼性を向上させる。
(3)波及効果と懸念事項、対応策
解決策①により耐久性が向上し、安定した水資源の確保に成功することで、火星開拓への気運が高まり、掘削機器への投資が加速する。又は、掘削した地層から火星地質学の研究資料を得ることが出来、生命体の痕跡を発見出来る可能性がある。
懸念事項として、非接触軸受は電力が必要であるが、停電時に磁力を喪失して、回転体と主軸が接触して軸受機構が損傷する懸念がある。
対応策として、主軸の回転を利用する発電機を付属し、電力喪失時にも磁力を発生して軸受機能を維持する。又は、太陽光発電を利用して、バックアップ出んけを確保する方法を採用する。
(4)技術者として必要な要件・留意点
機械技術者倫理の観点から、予兆保全による整備計画を立案する。振動の増加等、故障の予測によって整備を行い、整備コストを削減と機器の信頼性向上を図る。技術士倫理綱領「公共の利益の確保」相当する。
社会の持続可能性の観点から、火星の環境対策として、使用する機械部品の標準化、規格化による互換性を確保する。部品の再利用により廃棄物削減しつつ、再生可能品は地球へ運搬して再利用を図る。これはSDGsの「つくる責任、使う責任」に相当する。
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問題 機械部門 必須 Ⅰ-2
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コロナウイルス感染症防止のためテレワークの導入が急速に進められてきており、今後は単なるテレワークのためのツールや環境の開発・整備だけでなく、テレワーク自体のあらたな形態への変革が進むと考えられる。一方、現在の機械製品の製造現場においては、実際に『現場』で『現物』をよく観察し、『現実』を認識したうえで業務を進める『三現主義』の考え方も重要と考えられている。特に、工場での製造業務や保守・メンテナンスを含む生産設備管理業務においては、機械稼働時の音や振動、潤滑油のニオイ等、人の感じる感覚的な情報を活用して業務にあたることが少なくない。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)生産・設備機械を看視・監督する保全技術者が三現主義のメリットを活かせるようにテレワークを実現する場合、どのような課題が考えられるか、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明確にしたうえで、それぞれの課題内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する解決策を機械技術者として3つ示せ。
(3)全問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。
(4)全問(1)~(3)の業務遂行に当たり、機械技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解答者 Ⅰ-2 機械部門 材料強度 専門事項:強度解析 簡易答案 添削回数26 2022/3/5
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(1)テレワークを実現するための課題
①アバターロボット導入による遠隔作業
各種センサ、アーム、走行手段を装備し、遠隔操作により現場を巡回して点検作業を行うアバターロボットを導入する。
②有毒ガス、臭い、熱など環境条件の遠隔検知
現場にて危険な硫化水素や燃料臭、燃焼ガス、放射温度など環境条件を各種センサで遠隔にて検知し、現場の人に危険を知らせる。
③力触覚、近接覚の遠隔検知
ロボットハンドが物体に接近し、触れた時の振動、反力を検知し、遠隔操作者に直感的に伝えるリアルハプティクス技術を導入する。
(2)①現場ロボットについての解決策
①無限軌道走行手段を装備したアバターロボット
アバターロボットは視聴覚センサを持ち、無限軌道走行により、段差の走行も可能とする。センサにより接触、転倒防止し、遠隔操作をサポートする。
②現場とのコミュニケーションツールを搭載
作業者が遠隔で現場作業を助力できるように、モニタを搭載し、ビデオ通話が可能なシステムを搭載する。ロボットアームは遠隔者の腕と同じように動かすことができ、検査箇所の指示や方法を直感的に表現できる。
③赤外線カメラを搭載
人の目では見えない表面温度を赤外線カメラにて可視化する。機器の温度上昇を接近することなく検知することが出来る。夜間に作業を行う場合でも、鮮明な映像にて点検を行う事が出来る。
(3)解決策実施による波及効果と新たに生じる懸念、対応策
モニタにより現場の作業者に対して図や動画で説明ができる。このためコミニケーションが正確、早くなり、誤解が減る。また、モニタに操縦者の顔を表示できるので、現場作業者は相手と直接会話をしている感覚を得る。このため、接客の現場で評価されて需要が伸びる。
懸念事項として、監視業務に集中すると、移動操作によって、視聴覚センサーの視界に入らない機械、人に衝突する。
対策策は、距離センサーの設置により、障害物への接近を警告する機能設置。
(4)技術者として必要となる要件・留意点
ロボットの動作パターンを記録し、AIに機械学習をさせることで、現場パトロールを自動化、人手不足解消。技術士倫理綱領「公共の利益の優先」に相当。
ロボットの移動操作を音声だけで行える機能を搭載、手が使えない人でも使
用可能とする。SDGsの「働きやすさも経済成長も」に相当。
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解答者 Ⅰ-2 機械部門 材料強度 専門事項:強度解析 簡易答案 添削回数4 2022/3/21
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1)テレワークを実現するための課題
①アバターロボット導入による遠隔作業
各種センサ、アーム、走行手段を装備し、遠隔操作により現場を巡回して点検作業を行うアバターロボットを導入する。視聴覚センサーによって、計器盤の圧力計、電流計等のチェック行い、音響を確認して、うなり音、摩擦音の有無を確認する。
②有毒ガス、臭い、熱など環境条件の遠隔検知
現場にて危険な硫化水素や燃料臭、燃焼ガス、放射温度など環境条件を各種センサで遠隔にて検知する。特に、嗅覚を遠隔で監視する技術の導入が課題である。危険を現場作業者に発信して労働災害を未然防止する。
③力触覚、近接覚の遠隔検知
ボルトの緩みや機械表面の振動など、人が物体に触れて検査を行う場合も多い。そこで、ロボットアームが物体に接近し、触れた時の振動、反力を検知し、遠隔操作者に直感的に伝えるリアルハプティクス技術を導入する。
(2)①現場ロボットについての解決策
①無限軌道走行手段を装備したアバターロボット
アバターロボットは視聴覚センサとカメラを持ち、無限軌道走行により、段差の走行も可能とする。センサにより接触、転倒防止し、遠隔操作をサポートする。超信地旋回機能を採用し、狭い現場でも小回りが効く設計とする。
②現場とのコミュニケーションツールを搭載
作業者が遠隔で現場作業を助力できるように、モニタを搭載し、ビデオ通話や図を表示できるシステムを搭載する。また、ロボットアームは遠隔者の腕と同じように動かすことができ、検査箇所の指示や方法を直感的に表現できる。
これにより、アバターロボットとして、現場作業の指導を行ったり、作業の様子を確認できる。
③点検可能領域の拡張
赤外線カメラを搭載し、光の無い地下室の巡回や夜間の現場で作業を行う場合でも、鮮明な映像にて点検を行う事が出来る。これにより、作業範囲を拡張することができ、人間の目で確認が難しい夜間の点検が容易となる。さらに、停電時での現場の状況確認と安全確認を、人に代わって広範囲且つ、安全に実施できる。
(3)波及効果と新たに生じる懸念、対応策
モニタにより現場の作業者に対して図や動画で説明ができる。このためコミュニケーションが正確、早くなり、誤解が減る。また、モニタに操縦者の顔を表示できるので、現場作業者は相手と直接会話をしている感覚を得る。このため、接客の現場で評価されて需要が伸びる。
懸念事項として、監視業務に集中すると、移動操作によって、視聴覚センサの視界に入らない機械や、作業中の人に衝突する可能性がある。また、ロボットの移動速度が速くなると、目視点検の密度が増えて、検査者が疲弊する。
対応策は、距離センサの設置により、障害物への接近を検知し、操作者に警告音で通知して衝突回避を促す。また、アバターロボットの専用レーンと点検作業用の停止ポイントを設け、運用ルールを策定して事故の防止を行う。
(4)技術者として必要となる要件・留意点
①技術者倫理としての倫理
ロボットの動作パターンを記録し、AIに機械学習をさせることで、現場パトロールを自動化する。これにより、人手不足を解消し、人材をより付加価値の高い設計開発等の業務に人材を集中させることにより、新たなイノベーションを促す。これは、技術士倫理綱領「公共の利益の優先」に相当する。
②持続可能性の観点
ロボットの移動操作を音声だけで行える機能を搭載し、手が使えない人でも使用可能とする。また、VRゴーグルで現場を見易くし、操作者の頭の動きでカメラの方向操作を可能にできるシステムを導入し、操作性の向上を図る。これにより、身体的に障害のある人だも働き易く、作業に参加できるシステムを構築する。これはSDGsの「働きやすさも経済成長も」に相当する。
問題 機械部門 材料強度 Ⅱ-1-2
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高温環境下で日々起動停止する鉄鋼製の機械·構造物を設計する際に、高温環境で特徴的に見られる材料の力学的挙動を踏まえて、考慮すべき破損様式を挙げ、その特徴を述べよ。また、その破損様式に対する強度評価方法について説明せよ。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 完成答案形式 添削回数1 2022/10/24
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1.高温疲労の特徴
日々起動停止する機械は、起動時の負荷と停止時の無負荷の繰り返しにより、定荷重の場合と比べて寿命が短くなる。更に高温環境では、ヤング率が低下して荷重に対する材料の変形が大きくなる。そのため、高温環境下では、金属結晶内の格子欠陥を起点とした粒界すべりが発生し易くなる。
高温の繰り返し変形では、その結晶粒界のすべりが、常温より早く材料表面に突き出し、入り込みの形態で現れ、すべり面に沿ってき裂が発生する。この亀裂は、成長と合体を繰り返し、やがて有効な断面を減少させて、痩せた断面が破壊する。
2.強度評価法
高温環境における負荷-無負荷の繰り返し荷重で破壊しない強度を評価するため、高温環境下で低ヤング率での片振り疲労試験を行う。
一般的に、応力振幅と破壊までの回数の関係はS-N曲線で表される。低サイクル疲労(104回以下)〜高サイクル疲労(104〜107回)まで、応力振幅を変化させて破壊までの回数との関係を調査すると、高温環境下で疲労強度を評価出来る。
実機への応用として、1日の起動・停止の回数を調査し、S-N曲線を用いて、機器の余寿命を予測することが可能である。この場合、FEM解析により引張応力が卓越する箇所を評価する必要がある。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:非破壊試験 簡易答案 添削回数3 2023/6/26
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1.破損様式
①熱疲労破壊、②クリープ破断、③高温強度低下
2.特徴
1)熱疲労破壊
加熱・冷却サイクルにより、材料内表面にクラックが形成され、サイクルごとに成長し、破壊に至る。
評価法
➀疲労寿命予測 クラックの成長速度や破壊までの時間を予測する疲労寿命予測(例:Larson-Miller パラメーター法等)
②応力解析 FEM、数値シミュレーションで、構造物にかかる応力を評価する。
➂ 破壊試験:疲労試験
2)クリープ破断:高温時に応力が一定の状態で長時間作用することによって発生(時間依存性)する。クリープによる変形は徐々に不均一に進行し、割れが起こる。
評価法
➀クリープ曲線:ひずみに対する時間の関数(クリープ曲線)で材料のクリープ挙動解析
②クリープ試験:一定の応力状態で材料を一定時間加熱し、変形の進行を評価し、破断寿命を予測する。
3)強度低下:酸化、剥離、軟化等が起き、強度低下がおこる。
評価法
①表面色:酸化程度、剥離確認
②強度評価:高温時引張試験
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:非破壊試験 完成答案形式 添削回数2 2023/6/26
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1. 熱疲労破壊
加熱・冷却サイクルにより、材料内表面にクラックが形成され、サイクルごとに成長し、破壊に至る。
1)疲労寿命予測と応力解析評価
熱で構造体が伸縮することによる、クラックの成長速度や破壊までの時間から、Larson-Miller パラメーター法を使用して疲労寿命を予測する。PLM線図の作成を行い、ひずみをチェックする。ひずみがサイクルにより成長するので、S-N線図上、発生応力振幅がその材料の疲労限度を超えたとき疲労破壊が起きる。鉄鋼系材料の場合、最大運用回数を10^7回を想定する。
2.クリープ破断
高温時に応力が一定の状態で長時間作用することによって発生する。クリープによる変形は徐々に不均一に進行し、割れが起こる。
1)クリープ曲線とクリープ試験評価
ひずみの経時変化(クリープ曲線)で材料の挙動解析を行い、破断寿命をクリープ設計曲線から計算する。この曲線では実測のクリープ破断時間に対して、予測値をプロットして予測式の違いを検証する。領域分割解析法でデータを確認し、精度よく予測評価する。基準より低い場合には許容応力の見直しも行う。
粒界のボイドの生成状態でミクロより硬度の変化などが確認されたら強度低下を判断する。
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問題 機械部門 材料強度 Ⅱ-1-2 Ⅱ-1-3
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複数種の部材を用いて引張荷重のみが作用するように設計された構造物において、部材の破損確率を支配する3つの因子を示せ。また、この構造物のすべての部材の安全裕度が同じであっても、それぞれの部材で破損確率が異なる場合がある理由を先に挙げた因子と関連付けて述べよ。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 簡易答案 添削回数6 2023/4/4
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1.部材の破損確率を支配する3つの因子
①材料の強度
各部材の引張強度、破断ひずみ、応力―ひずみ特性
②線膨張係数の影響
③材料の耐食性
鉄鋼材料の酸化(発生)、ステンレス鋼の応力腐食割れ
2.破損確率が異なる場合がある理由
①引張強度と破断ひずみが異なると各部材への荷重分布が異なるため
強度が高く破断ひずみの小さい部材は、引張荷重が集中すると共に、ひずみ限界に早く到達するので、破損の確率が高くなる。逆に、強度が低く破断ひずみの大きい材料は引張荷重を回避して、且つひずみ限界まで余裕があるので破損し難い
②線膨張係数が異なると、熱による変形が異なるため
温度上昇により、異なる部材の接合部に熱応力が発生する。線膨張係数の大きい部材は、ボルト接合部など拘束部分において熱応力が大きくなり破損しやすい。
③耐食性が異なると、腐食速度が異なるため
耐食性の低い部材では腐食速度が速くなるため、引張応力が加わり応力腐食割れが発生する。欠損が進行し、有効断面積が減少して応力が大きくなり破損し易い。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 完成答案形式 添削回数1 2023/4/10
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1. 部材の破損確率を支配する3つの因子
①部材の強度
形状や材質によって決まる引張強度、破断ひずみ、応力―ひずみ特性。
②線膨張係数の影響
温度上昇による部材の伸び、体積膨張。鉄鋼材料に対してアルミ合金、樹脂は熱膨張が大きい。
③材料の耐食性
鉄鋼材料は酸化(発生)、ステンレス鋼は応力腐食割れが発生し易い。
2.安全裕度が同じでも破損確率が異なる理由
①引張強度と破断ひずみが異なるため
強度が高く破断ひずみの小さい部材は、引張荷重が集中すると共に、ひずみ限界に早く到達するので、破損の確率が高くなる。
逆に、強度が低く破断ひずみの大きい材料は引張荷重を回避して、且つひずみ限界まで余裕があるので破損し難い。
②線膨張係数が異なり、熱による変形が異なるため
温度上昇により、異なる部材の接合部に熱応力が発生する。線膨張係数の大きい部材は、ボルト接合部など拘束部分において熱応力が大きくなり破損しやすい。
③耐食性が異なると、腐食速度が異なるため
耐食性の低い部材では腐食による欠損が速くし、有効断面積が減少して応力が増加し破損し易い。
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問題 機械部門 材料強度 Ⅱ-1-2 Ⅱ-2-2
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稼働中の回転機器において異常振動が生じる事象が発生した。あなたは、設備保全の責任者として原因調査及び対策案の策定を実施することとなった。このとき、具体例を想定して下記の内容について記述せよ。
(1)異常振動の発生について調査すべき事項とその内容について説明せよ。あわせて、それぞれの発生要因への対策案について述べよ。
(2)発生要因の調査及び対策案の策定における業務を進めるうえで、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)保全責任者として業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策を述べよ。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 簡易答案 添削回数12 2022/11/25
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1.多段遠心送風機の調査すべき事項、対応策
① 羽根車の摩耗、損傷調査
破面観察を行い、疲労強度の改善とダスト対策を検討する。
対応策は、疲労破壊にはS-N曲線と疲労限度線図を用いて、破断繰り返し数を評価し、実機の運転上限を検討する。エロージョン摩耗は、送気中のダストをろ過するバグフィルター設置を検討する。
② ころがり軸受の損傷調査
転動体と内外輪の損傷のフレーキングを確認し、取付け不良による過大荷重を検討する。対応策として、締め代が大きいと転動体への負荷が大きくなる為、ハウジング内径、シャフト外径を測定し、設計管理値と比較する。
2.業務項目と留意すべき点、工夫を要する点
①破断面の評価
ミクロ観察において、繰り返し荷重の方法との相関を見るため、き裂進展の方向を確認し、ストライエーション(縞模様)発生している方向を確認する。
②摩耗量の測定
板厚の摩耗量と変形量を迅速に測定するため、三次元測定器を導入する。測定で得られた形状から、振動の原因となるアンバランスの発生位置を特定する。
③ 破壊力学を用いた損傷許容設計
FEM解析を利用し、強度が低下しないように側板の板厚を減らして遠心力を軽減し、ハネに作用する引張応力を低減して、き裂が進展しない構造を設計する。
④ 高引火点潤滑油の導入による潤滑性能の向上
軸受温度の上昇に対して十分な油膜を形成でき、締摩擦力の軽減と油膜の形成による相乗効果によって転動体と内外輪の凝着摩耗を防止できる。
3. 関係者との調整方策
私は、設計部門の立場で、維持管理部門に対して、送風機の損傷許容設計による長寿命化運用を申し入れる。羽根車構造に対して、FEM解析とパリス則を用いた疲労き裂進展解析することにより、板厚を減らして遠心力を軽減し、き裂の成長・拡大を抑制し、疲労強度を向上させることで、機器が長寿命化する。疲労亀裂進展解析を羽根車のみでなく、鋼板製ケーシングの補強部や吸い込みベーンのブレードにまで応用することで、全体で10%の経済効果が期待できる。
このようにして機器の異常振動を避けるだけでなく、組織の環境負荷低減も達成して、経済的な設計を取りまとめる。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 完成答案形式 添削回数1 2022/12/2
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(1)多段遠心送風機の異常振動の調査事項
羽根車の摩耗、損傷調査
羽根車の摩耗・疲労破壊により回転体のアンバランスが発生して振れが大きくなり、異常振動が発生する。破面観察を行い、疲労強度の改善とダストによる摩耗対策を検討する。
対応策は、疲労破壊にはS-N曲線と疲労限度線図を用いて、破断繰り返し数を評価し、実機の運転上限を検討する。エロージョン摩耗は、送気中のダストをろ過するバグフィルター設置を検討する。
ころがり軸受の損傷調査
ころがり軸受の内外輪と転動体の損傷により、軸受部の振動が増大する。転動体と内外輪のフレーキングを確認し、取付け不良による過大荷重を検討する。
対応策として、締め代が大きいと転動体への負荷が大きくなる為、ハウジング内径、シャフト外径を測定し、設計管理値と比較する。
(2)留意すべき点、工夫を要する点
①破断面の評価
破断面のミクロ観察において、繰り返し荷重の方法との相関を見るため、き裂進展の方向を確認し、ストライエーション(縞模様)が発生している方向を確認する。
②摩耗量の測定
板厚の摩耗量と変形量を迅速に測定するため、三次元測定器を導入する。測定で得られた形状から、振動の原因となるアンバランスの発生位置を特定する。
③破壊力学を用いた損傷許容設計
FEM解析とパリス則を用いた疲労進展解析を実施し、き裂が発生しても進展しない構造を設計する。強度が低下しないように側板の板厚を減らして遠心力を軽減し、ハネに作用する引張応力を低減する。
高引火点潤滑油の導入による潤滑性能の向上
高引火点潤滑油は通常の潤滑油と比べて、温度の上昇に対する粘度の低下が10%小さい。そのため、軸受温度の上昇に対して、十分な油膜を形成でき、摩擦力の軽減と油膜の形成による相乗効果によって転動体と内外輪の凝着摩耗を防止する。
3.関係者との調整方策
私は、設計部門の立場で、維持管理部門に対して、送風機の損傷許容設計による長寿命化運用を申し入れる。羽根車構造に対して、FEM解析とパリス則を用いた疲労き裂進展解析を実施する。板厚を減らして遠心力を軽減し、き裂の成長・拡大を抑制し、疲労強度を向上させることで、機器を長寿命化する。
疲労亀裂進展解析を羽根車のみでなく、鋼板製ケーシングの補強部や吸い込みベーンのブレードにまで応用することで、全体で10%の経済効果が期待できる。
更に、機器の異常振動防止の他、組織の環境負荷低減も達成して、経済的な設計を取りまとめる。
■正解のヒント
・送風機以外の振動事例でも良い。
・調査項目は選択科目に沿ったものにする。
・留意点は経済性、安全性、品質を高めるためにこす行動を示すこと。
・業務項目と留意点は業務を実行する上で新たに必要となる事項を述べる。
・事実、経験をもとに具体的な対応策を述べる。
・調整方策は業務の高速化、経済効果、品質管理、環境負荷低減などを目的とする。材料強度、信頼性の要素を含めることが重要
・調整方策として定量的にメリットを示すことが重要である。
・調整方策では業務のプロセスまで示す。
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Ⅲ-1 地球環境問題への取組への重要性が増している。ものづくりにおいても、製品の直接的な省エネルギやCO2排出削減対策だけでなく、環境配慮設計の取組が進んでいる。環境配慮設計は、環境配慮設計は、環境負荷低減を、製品の開発や設計の段階で、製品のライフサイクル全般にわたって考慮する取組である。この取組には材料強度・信頼性にかかわる事項も多く、製品の安全性や信頼性の担保が重要である。
(1)具体的な機器や部品などを想定して、環境配慮設計を目的とした取組を行ううえでの課題を、技術者の立場で多面的な観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題を示せ。
(2)抽出した課題のうち、材料強度・信頼性分野において最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3)全問(2)で示した解決策を実行した際に生じ得る懸念事項を挙げ、それに対する対応策を示せ。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 簡易答案 添削回数8 2022/12/30
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(1) 下水処理施設の曝気ブロワの課題
① ブロワの高効率化
曝気ブロワは下水処理場の電力消費量の50%以上を占めるため、送風機の機械効率を改善して電力消費量を低減し、CO2排出量の削減を図る。羽根車の軽量化と流体効率の改善を行い、消費電力の削減が課題である。
② ブロワの長寿命化
下水処理場の曝気ブロワは40年以上運用される機器多いため、整備によるCO2の発生が問題。羽根車の軽量化による軸受摩耗の低減、CAE解析を使用した強度設計の最適化、き裂進展解析による損傷許容設計による長寿命化が課題である。
③ オイルレス軸受の採用
下水処理場の曝気ブロワは、すべり軸受ところがり軸受を使用しており、使用潤滑量が多い。磁力によりスキマを発生させて、回転軸を非接触で支持する軸受を採用し、オイルレス化によって、油汚染を回避、廃棄物を削減する。
(2) ②ブロワ長寿命化への解決策
① 軽量化による羽根車の耐久性向上
炭素鋼で溶接構造をアルミ合金製でリベット構造の羽根車に変更し、軽量化して遠心力を軽減する。CAE解析で羽根車の強度を最適化することにより質量を65%低減して、ブロワは20%長寿命化できる。
② 破壊力学を用いた損傷許容設計
破壊力学のパリス則とCAE解析を用いて、ハネの板厚を増加すること無く、き裂が発生しても進展しないように損傷許容設計を行う。また、リベットのカシメ効果による圧縮の残留応力を付与して疲労寿命を向上させる。
③ 摺動部の耐食性向上
曝気槽への風量制御を行うブロワ入口案内羽根の軸受を自己潤滑性のある樹脂製とし、摺動面の耐食性を向上させる。
(3) 新たに生じる懸念事項と対応策
曝気ブロワの一日の起動停止の回数は1~2回程度であり、この範囲では問題なく運用できる設計である。アルミ合金は、炭素鋼に比べて、低サイクル疲労における、疲労強度が20%低い。そのため、想定外の大雨によって下水処理量が増加した場合、ブロワの起動・停止の頻度が1日当たり5回程度となり、羽根車へも負荷も大きくなることから、疲労寿命が短くなる懸念がある。
対応策として、設計寿命30年として機器を運用するため、運転、保守、整備計画を策定し、累計損傷則によって疲労寿命を管理し、技術マネジメントを行う。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 完成答案形式 添削回数1 2023/1/13
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(1)環境配慮設計を行う為の課題
①ブロワの高効率化
下水処理場の電力消費量はわが国全体の0.7%である。特に下水処理場内の曝気ブロワは電力消費量が多く、全体の50%以上を占める。曝気ブロワの機械効率を改善して電力消費量を低減し、CO2排出量の削減を図る。羽根車の軽量化と流体効率の改善を行い、消費電力の削減を図ることが課題である。
②ブロワの長寿命化
下水処理場の曝気ブロワは40年以上運用される機器多いため、定期的な整備による部品の製造・交換、機器の輸送、分解・組立作業によるCO2の発生が問題である。羽根車の軽量化による軸受摩耗の低減、CAE解析を使用した強度設計の最適化、き裂進展解析による損傷許容設計による長寿命化し、CO2の削減を図る。
③オイルレス軸受の採用
下水処理場の曝気ブロワは、すべり軸受ところがり軸受を使用しており、使用潤滑量が多い。このため、磁気軸受技術によりアキシアルとラジアル方向に軸受隙間を発生させて、回転軸を非接触で支持する軸受を採用する。オイルレス化によって、潤滑油による汚染を回避し、廃棄物を削減する。
(2)②ブロワ長寿命化への解決策
①軽量化による羽根車の耐久性向上
羽根車の材質を炭素鋼性(比重7.86)からアルミ合金(比重:2.70)に変更する。CAE解析によって羽根車のハネ板厚を維持しつつ、応力を低減し、質量を65%低減して、ブロワは20%長寿命化できる。
溶接構造とする場合、アルミ合金は炭素鋼に比べて、溶融潜熱が高く、入熱量がより多く必要となるため、十分な強度が得られない。そこで、強度の低下を防ぐため、摩擦撹拌接合技術(FSW)を導入する。摩擦熱によって母材を軟化し、塑性流動によって練り混ぜ、ハネと主側板の接合を行う。ブローホールや溶け込み不良が発生しにくいため、ガス溶接に比べて、致命的な強度低下の可能性を低減することができる。
アルミ合金の材質として、加工性、耐食性、強度に優れたA5052Pをハネに使用する。ボス材については、より強度の高いA6061を使用する。
②破壊力学を用いた損傷許容設計
破壊力学のパリス則da/dN=C(ΔK)m(da/dN:き裂進展速度、ΔK:応力拡大係数範囲、C、m:材料によって決まる定数)とCAE解析を行う。ハネの板厚を増加すること無く、き裂が発生しても進展しないように損傷許容設計を行う。
その他、摩擦撹拌接合によって接合した、き裂を有する試験片を製作し、疲労破壊試験を実施する。試験は静荷重を負荷して平均応力下において引張、曲げ方向に対して実施する。試験データはCAEによる疲労解析を実施するための設計データとして運用する。
③摺動部の耐食性向上
曝気槽への風量制御を行うブロワ入口案内羽根の軸受を自己潤滑性のある高力黄銅系合金とし、摺動面の耐食性を向上させる。黄銅系合金は高周速では使用できないため、周速50m/secとして摩耗が発生しないように設計する。案内羽根の前後で発生する圧力差から軸受に作用する荷重を計算し、PV値を算出する。
(3)新たに生じる懸念事項と対応策
S-N曲線で見ると、アルミ合金は、炭素鋼に比べて、破断繰り返し回数10000回以下の低サイクル疲労における、疲労強度が20%程度低い。そのため、想定外の集中豪雨によって下水処理量が増加した場合、ブロワの起動・停止の頻度が1日当たり5回程度となる。羽根車へも負荷も大きくなって繰り返し回数が増加し、疲労寿命が短くなる懸念がある。
対応策として、設計寿命30年として機器を運用するため、運転、保守、整備計画を策定し、マイナー則による累計損傷度によって疲労寿命を管理する。曝気ブロワの起動、停止の回数によって、羽根車の疲労寿命を管理し、余寿命に応じて非破壊検査、補修整備を実施し、疲労破壊を防止して長寿命化する。
その他、羽根には箔型ひずみゲージを貼り付け、応力・ひずみをワイヤレス計測で直接測定し、き裂の発生・進展を検知して、予防保全する。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 簡易答案 添削回数18 2023/6/13
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(1) リスクを基準とした保守導入への課題
想定機器:軸受ユニット、羽根車、ケーシングで構成される産業用送風機
想定リスク:異常振動発生による軸受部品の損傷、回転体接触による損壊。分解検査を行わず、状態監視のみで故障を予測する。
① IoT による状態監視システムの構築(破壊現象を監視する観点)
・振動センサー、温度センサー、音響データを取得し、IoTによるリアルタイム監視と計測データの取得を行うシステムを構築する。
② 要因分析による故障の予知(故障解析の観点)
・温度、振動振幅(X-Y-Z方向)から異常箇所を診断する。
・データによる故障モード影響解析(FMEA)と振動モード、強度解析。
③ 改良設計による部品の高強度化(安全設計の観点)
・羽根車ブレード、主軸、ケーシングについて、過去の破損事例を基に原因究明、強度設計を実施し、材質の変更、応力の低減を図る。
(2)最も重要な課題と解決策(①状態監視強化について)
①振動計測による故障予測
・ラジアル、アキシアル方向の振動変位から、アンバランス量の増加、材質劣化の状態を推定する。軸受振動の垂直、水平方向の振幅から軸受摩耗推定。
②音響計測による故障予測
・軸受の損傷時に発生するうなり音や回転部の接触時に観測される高調波を計測する。音響データを解析して劣化の診断、故障の予測を行う。
③回転数、圧力の監視によるブレード疲労破壊の予測
・起動停止の回数、回転数の変化、吸込、吐出圧力の変化を計測し、羽根車ブレード溶接部に作用する応力変動から疲労強度の低下を予測する。
(3) 専門技術を踏まえた、懸念事項
① リスクの誤情報、ノイズに由来した懸念
リスク情報に基づく保守の懸念は、正常な金属音を異常音と誤検知して、正常時にアラームが頻繁に作動し、危険信号が把握できなくなることである。
対応策は、異常時の金属音の特徴は、部品の回転運動に起因する周期性を持つため、周波数解析により、卓越する周波数を算出し要因を判別する。
②リスク情報の検出漏れに由来した懸念
異常温度や異常振動は、特定の場所で局部的に発信することがあるため、センサーを隈なく設置してもとらえきれない場合がある。このため、ハイスピードカメラで機器全体を撮影しながら振動を可視化する技術が必要となる。
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解答者 機械部門 材料強度 専門事項:強度設計 完成答案形式 添削回数1 2023/6/20
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(1)リスクを基準とした保守導入への課題
軸受ユニット、羽根車、ケーシングで構成される産業用送風機を想定する。想定するリスクとして、異常振動発生による軸受部品の損傷、回転体接触による部品の損壊を挙げる。
①IoT による状態監視システムの構築
破壊現象を監視する観点から、IoTセンサーを使用した状態監視システム構築が課題である。センサーにより、振動、温度、音響を取得、IoTによるクラウド環境を構築する。センサーによる計測値を破壊現象の指標として監視し、異常値の計測に応じて、アラームを発信して管理者に通知し、予防保全を行う。
②要因分析による故障の予知
故障解析の観点か(X-Y-Z方向)を取得して故障診断、予知する。データによる故障モード影響解析(FMEA)と振動モード、強度解析を実施する。解析の結果により、最も損傷、劣化の及ぶ部品を推定し、予防保全を行う。
③改良設計による部品の高強度化
安全設計の観点から、羽根車ブレード、主軸、ケーシングについて、高強度化設計を行う。すなわち、過去の破損事例を基に原因究明、強度設計を実施し、材質の変更、応力の低減を図る。高強度化設計を実施することにより、将来の運転計画における故障のリスクを低減することが課題である。
(2)最も重要な課題と解決策
「①IoT による状態監視システムの構築」を最重要課題として解決策を述べる。
①振動計測による故障予測
ラジアル、アキシアル方向の振動変位から、アンバランス量の増加、材質劣化の状態を推定する。軸受振動はオービット解析を実施し、垂直、水平振幅の変動から軸受摩耗の進行を予測する。
また、アキシアル方向振動の変化から、軸継手部の経年劣化を予測し、アライメントのずれを予測する。振動の要因となる軸接手のリーマボルトやゴムブッシュの摩耗、損傷を予測して、早期の故障対策を行う。
②音響計測による故障予測
音響センサーを設置し、機器から発生する高調波やうなり音、きしり音、キズ音を検知する。軸受の損傷時に発生するうなり音や回転部の接触時に観測される高調波を計測する。音響データを解析して劣化の診断、故障の予測を行う。
また、振動波形データから周波数分析を行うことにより、ブロワの回転数に起因する周波数を抽出する。これにより、各主要部位の損傷を検知する。
②ブレード疲労破壊の予測
起動停止の回数、回転数の変化、吸込、吐出圧力の変化を計測し、運用開始時からの負荷荷重の変化を計測する。修正グッドマン線図とS-N曲線、マイナー則による累計損傷率を計算し、余寿命の予測を行う。これにより、羽根車ブレード溶接部に作用する応力変動から疲労強度の低下を予測する。
(3)専門技術を踏まえた、懸念事項
①リスクの誤情報、ノイズに由来した懸念
リスク情報に基づく保守の懸念は、正常な音響を異常音と誤検知して、正常時にアラームが頻繁に作動し、危険信号が把握できなくなることである。例えば、軸受の潤滑グリースを交換後に発生するきしり音は、金属同士の摩耗音に類似しているため、異常時として誤検知する可能性がある。
対応策は、異常時の金属音の特徴は、部品の規則的な運動に起因する周期性を持つため、周波数解析により、卓越する周波数を算出し要因を判別する。
③リスク情報の検出漏れに由来した懸念
異常温度や異常振動は、特定の場所で局部的に発信するため、センサーを隈なく設置しても異常値を検知できないことがある。すなわち、センサーを設置出来ない箇所で異常振動、温度上昇は検出されない。
対応策として、ハイスピードカメラで機器全体を撮影しながら振動を可視化する技術が必要となる。温度管理についても、赤外線サーモグラフィを使用した追加設備が必要となる。
問題 電気電子部門 Ⅰ-2
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地域(都市部を含む)医療では、従来から地域に密着した医療や遠隔医療の取組が行われている。しかし、技術実証から社会インフラとしての医療への移行・普及のため、健康ケア及び介護ケアを含めた、医療全体を考える必要がある。また、その対応は地域やそこに住む人々、職場、家族構成などによって異なり、実情に即した展開が必要である。地域医療を充実・発展させるため、以下の設問に技術面で答えよ。(政策などは含まない)
(1) 持続可能な地域医療の実現に向けて、電気電子分野の技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ、専門技術用語を交えて示せ。解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(3) 前門(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前門(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会持続可能性の観点から代位に即して述べよ。
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解答者 Ⅰ-2 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 簡易答案形式 添削回数4 2023/7/8
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1. 課題
①遠隔診療通信システムの実現
地域医療格差解消の観点から、遠隔診療システムの実現が課題。ローカル5Gを整備して5G(第5世代移動通信システム)を普及。5Gは高速大容量、低遅延、多数同時接続して、遠隔画像診断、遠隔手術支援、在宅医療。
②最先端の医療技術
地域医療の発展の観点から、最先端医療技術の導入が課題である。医療の精度向上のために、AI画像処理能力、手術ロボット、ウェアラブルデバイスを導入。
③地域医療情報連携ネットワークの高度化
利便性向上の観点から、地域医療情報連携ネットワークの高度化が課題。高度医療を提供するために、クラウド技術型電子健康記録ネットワークの拡大。電子カルテ、医療情報の一元化、関連機関の相互連携、医療関連情報デジタル化を行う。
2.解決策(遠隔医療)
①インフラストラクチャの改善と整備
遠隔診療は安定したブロードバンドインターネット接続が必要。地方では、インターネット接続の安定性や帯域幅が問題となるために5Gが必要。 無線通信技術の改善や光ファイバーケーブルの設置など、地方のインターネット環境を改善する。
②オンライン診療プラットフォームの開発
・画像や聴診音をリアルタイムで共有のため、クラウドを活用。タブレット等で予約から診察、処方箋まで一連の流れを実現。インフラの困難な地域では、移動式の遠隔診療設備を提供。広範囲で安定した接続のため衛星インターネットも利用。
③オンライン資格確認システムの活用
・電子カルテ情報を全国で共有するために、オンライン資格確認システムを活用。薬歴情報、検診情報を患者・医療機関が確認のためにシステム互換性と規格を統一。
3.リスクと対策
・医療情報のデータ共有可能になると、職員によるS NS拡散のリスクが発生。
・対策は、定期的な情報セキュリティ教育を実施。過去の問題事例を教育プログラムに追加し適宜見直しする。
4.業務遂行に必要な要件
・人の命に関わる情報のため、外部への漏洩の防止や不正利用の排除に努める。これは技術士倫理要綱の公衆の利益の優先に該当する。
・地域医療・介護従事者、住民の立場に立って、高齢化社会の進展に配慮する。これはSDGsの産業と技術革新の基盤の貢献につながる。
問題 電気電子部門 電気応用 Ⅱ-1-2
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飛行時間計測(Time of Flight, TOF)方式のLiDAR (Light Detection and Ranging)の距離計測について,その原理と留意すべき点を述べよ。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 簡易答案 添削回数8 2022/9/9
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1. TOF方式のLiDAR距離計測原理
LiDARは、レーザ光源と反射光検出器からなる3Dマッピング用距離測定機器。2D走査に、メカニカル方式:モータでミラー制御、メカレス方式:MEMSミラー等、フラッシュ方式:面に一括放出、等がある。
放出光が対象物に反射し戻るまでの飛行時間から距離を求めるのがTOF方式で、距離算出方式の1つ。直接方式(飛行時間を直接計測)と間接方式(発射光と反射光の位相差から間接的に算出)がある。
2.留意すべき点
・分解能向上には光源を高輝度化する。
・LiDARは、他センサでは得られない、カメラの2D画像の画素毎に距離情報を付加可能。特に距離<約200m、広角<45度程度で有用。
・メカニカル方式は大型となるが、メカレス方式は、小型に構成可。
・直接方式は、高精度だが距離分解能1cm取得に約70psの測定精度要。間接方式は、より経済的に構成可で多くのアプリケーションに適用できる。
・センサは、環境光の取り込みを避けるように設置要。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 完成答案形式 添削回数10 2022/10/10
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1.TOF方式のLiDAR距離計測原理
TOF方式とは、放出光が対象物に反射し戻るまでの飛行時間から距離を求める方法であり、その1つLiDARは、2D走査するレーザ光源と反射光検出センサからなる3Dマッピング用距離測定機器である。
距離算出方式には直接TOF方式(飛行時間を直接計測)と間接TOF方式(発射光と反射光の位相差から間接的に算出)がある。光の走査方法は、ミラーを用いてスキャンしたり、フラッシュで一括放出する。
2.留意すべき点
分解能を上げるには、半導体レーザやフォトニック結晶レーザーを用いて光源を高輝度化する。
経済的で汎用的な用途では、間接TOF方式を用い、一方、精度重視の場合は直接TOF方式とし、高い精度で信号処理を行う。
光源スキャンは一般的な自動車用途等では、旧来のメカニカル方式よりも、今後は小型に構成出来るメカレス方式が有利である。
正確な測定のためには、測距光以外の太陽やヘッドライトなどの外乱光を排除する必要があるが、一般的な平均化処理では距離のクラスタリング現象により遠距離の検知データも除去されてしまう。そこで高解像度測距技術以外に、クラスタリングの発生を抑制しながら誤検出を排除するアルゴリズムなどが必要である。
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問題 電気電子部門 電気応用 Ⅱ-2-1
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電鉄自動運転路線における列車の無人運転に関して,逆走防止システムの設計責任者にあなたが任命された。折り返し駅における逆走防止システムを設計するに当たり,下記の内容について記述せよ。
( 1 )車上システム構成,地上システムとの連携のそれぞれに講じる措置を考慮したうえで,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
( 2 )業務を進める手順とその際に留意すべき点について,工夫を要する点を含めて述べよ。
( 3 )業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 簡易答案 添削回数10 2022/11/15
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1.調査検討事項
①「モータ(M)制御装置」動作条件調査で、進行方向選択線加圧で力行する制御信号入力回路検討。
②「逆走検知システム」動作条件調査で、転動検知で停止する「進行方向指示値」/「進行方向」常時照合機能検討。
③地上-車上の各装置間進行方向信号伝達経路調査で、進行方向信号経路確認、ループ回路設置で「M制御装置」受信値の地上返送検討。
2. 逆走防止システム設計の手順と留意/工夫点
手順① 「M制御装置」の設計
指令入力時のみ指令方向に力行する仕様とする。留意点は、指令入力で力行し、他に入力経路を作らず単純化すること。
手順② 「逆走検知システム」の設計
「逆走検知システム」による「非常ブレーキ」制動を「指令線無加圧」、「走行検知」の直列リレー接点ONで動作させる。留意点は、「指令のあるとき力行」/「無い時は制動」と単純化し制御論理明確化。
手順➂ 「返送信号系統」の設計
「返送信号」は、「M制御装置」が受けた信号をループさせそのまま地上装置まで戻す。留意点は、「M制御装置」が受けた生信号を返送し、確実に指令状態をモニタ可とすること。
3.関係者との調整
車両運営会社、車両/各機器設計の代表者に「機器制御の実指令のみを用い機器を直接制御する」という単純設計を指導。その結果 各装置/機能は、複雑で過剰な制御論理を排除し、単純論理で制御される構成に至る。各設計者が、単純化でシステムの理解不足を解消し、システムの1部として担当箇所の制御仕様を認識し、全体を統合された1システムとしての構築推進するよう促す。
そして設計前に必要な安全要件抽出を容易化し、逆走に至る危険事象の原因発生抑制に必要な安全確保の実施/検証を逆走の懸念を解消し、防止できると確証するまで各設計関係者が分担して行うよう各代表に指導する。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 完成答案形式 添削回数5 2023/1/8
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(1).調査,検討すべき事項とその内容
①モータ制御装置の動作条件
逆走発進防止のため、進行方向指示値に対する車上システムのモータ制御装置の動作条件を調べ検討する。
②逆走検知システムの動作条件
逆走時制動・停止のため、進行方向指示値と進行方向に連携し、車両逆走検知時にブレーキ作動させる車上システムの動作条件を調査し検討する。
③進行方向を示す返送信号のやり取り
モータ制御装置の進行方向モニタのために地上システムと連携する返送信号のやり取りを調査し検討する。
(2).逆走防止システムの設計手順
①設計体制の構築
システムインテグレーションが実施可能な設計体制を構築する。取りまとめ会社が全体の安全要件の抽出と安全性の検証を行うよう留意し、それが可能な1社に取りまとめ業務を担わせるよう工夫する。
②モータ制御装置の設計
力行指令に基づき指令方向に力行するよう設計する。制御論理の明確化に留意し、指令のあるときは力行、無い時は制動と単純化するよう工夫する。
③逆走検知システムの設計
指令と異なる方向に走行した時、逆走検知システムを作動させ、非常ブレーキで制動させる。入力指令と実際の車両の進行を常時照合・確認するよう留意し、それらが相違時には力行を停止させるよう構成、および動作論理を工夫する。
④返送信号系統の設計
モータ制御装置が動作した方向を示す信号を地上装置に返送する系統を設計する。モータ制御装置の実動作の状態を地上装置に返送するよう留意し、モータ制御装置の実動作を示す信号を発生させるよう工夫する。
(3).関係者との調整
モータ制御装置は内部機器設計会社が設計し、逆走検知システムは、モータ装置と連動して車両設計会社が設計とりまとめするよう電鉄運営会社が要求する。
逆走検知システム構築には、ATO(自動列車運転装置
)地上システムからの進行指令信号とモータ制御装置の進行状態信号との連動が不可欠である。しかし別会社が設計する2装置で動作を連携させるには、2社が連携し共有できる統一した制御論理仕様が必要である。
そこで私は、以下の統一論理仕様を提案する。
①ATOの指令信号方向とモータ進行信号方向が不一致
②ATOの進行指令がないのに車輪転動を検知
①または②の時、本システムは非常停止指令を出す。
この仕様に基づいて、両設計担当会社はそれぞれ分担して独自に設計を進めることができ、各信号を発信/取り込みすることで逆走検知システムが構築可能になる。これにより、両社は連携作業に煩わされることなくスムーズにそれぞれの設計推進が出来る。
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問題 電気電子部門 電気応用 Ⅲ-2
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ITS (Intelligent Transport Systems,高度道路交通システム)分野では,車両の安全装備の充実が図られ,様々な自動車の運転支援システムが実用化されている。今後は,さらに安全性と効率性を高めた高度な運転支援が期待されている。このような状況を考慮して,以下の問いに答えよ。
(1)運転支援システムにITS技術を活用することで,自動車交通の「安全性」と「効率性」を向上するに当たって,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 簡易答案 添削回数3 2023/2/21
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(1)課題
安全運転支援
道路及び車両の各種センサによる道路や周辺車両状況等走行環境把握のための車載機、及び道路情報提供装置からの情報活用を観点に、如何にリアルタイムで関連する運転中の全ドライバに走行環境情報を配信し、危険警告して安全運転支援するかが課題。
歩行者支援
交差点に設置する光通信装置と携帯端末との双方向即時情報交換等を観点に、如何に支援が必要な屋外場面のみで携帯端末機や磁気、音声活用で施設、経路案内・誘導し通行する高齢者、身体障害者に安全な移動を支援するかが課題。
公共交通支援
運行状況、混雑状況、運賃、スマホマップ連携等、公共交通利用者への情報提供を観点に、如何に交通機関の最適な利用分担実現を図り公共交通における事業運営の効率化を図るかが課題。
(2)「①安全運転支援」の解決策
①前方車載カメラ映像、ミリ波レーダを駆使して前方障害物を検知し、衝突予測して運転者にナビ画面、音声、ブザーで警告、及び、衝突被害を軽減する自動ブレーキ補助、必要に応じシートベルト自動引き締め操作を行う。
②道路設置センサや通信機器(路側インフラ)と車載器装備車とで無線LAN路車間通信し、ドライバが視認困難な位置にいる車両や歩行者をセンサ検知して、①と同様な方法で双方に注意喚起する。歩行者測位は歩行者専用端末―複数衛星活用で精度向上を図る。
③自動制御可能な運転補助機能、及びカーナビ機能を発展させ、カメラ、及びLiDAR活用の周辺走行環境把握、自動ブレーキ、アクセル操作等の速度制御、ハンドル制御で自動運転を実現。
(3)リスクと対策
事故未然防止には、単なるセンサの周囲状況情報に基づく自動運転では不十分で、突然の状況変化に対応不可。事故が起きやすい状況から遠ざかる自己防衛的操作が不可欠で、全センサ情報を総合的に判断した運転が求められる。そのため、走行中のセンサデータをビッグデータとして蓄積、それを用いてクラウド上のAIで深層学習/モデル生成をする。その結果を随時取り込み、同時に運転の即時性対応のため、車載エッジAIにてリアルタイムに最も事故から遠ざかる運転操作を判断し自動運転を実施。
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解答者 電気電子部門 電気応用 専門事項:アクチュエータ 完成答案形式 添削回数0 2023/3/10
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(1)課題
①センサ技術の向上
運転支援システムは、安全かつ効率的なハンドル、アクセルやブレーキ等の運転支援を行う。それには、自車両とその周辺の歩行者等交通弱者や周囲を走行する車両の状況を正確に把握することが不可欠である。
そのため、これらを検知するミリ波レーダ、LiDAR、超音波センサ、画像センサ等の車載センサの広いセンシング範囲、及び高い精度、信頼性が必要である。同時にセンサの小型化、及び低消費電力化等によるセンサ技術の高性能化が課題となる。
②情報処理技術の多角的改善
運転支援システムには、リアルタイムで運転判断を決定するため、膨大なセンサ情報や通信情報の高速処理が必要である。
そのため、データを処理するプロセッサは、半導体微細化製造技術適用による高速化が求められる。同時に異常検知や予測機能、および自動車特有の高低温度等に対する耐環境性能、低消費電力化が必要である。
すなわち周辺状況判別の高性能化等のセンサ情報の情報処理技術の多角的改善が課題となる。
③通信技術の改善
運転支援システムには、交通状況の把握や事故の回避、及び効率的な運転をするため、車両間通信や車両とインフラ間の通信が必要である。それによって、車両の位置情報や交通状況などを共有する。
通信には、ITSのV2V(車車間)通信のIEEE802.11p及びV2I(車両-インフラ間)通信のDSRCがある。これらの通信技術の改善のため、通信の帯域幅の拡大およびアンテナの複数化等による高速化かつ安定化した通信技術の改善が課題となる。
(2)「①センサ技術の向上」の解決策
①センサの改良
周辺の歩行者や走行車両の確実な検知のためのLiDAR、超音波センサ、画像センサ等の車載センサがある。これらのセンサのセンシング範囲(:縦横方向、角度)の広角化、高精細化、画像処理技術改善、長距離化による検知範囲拡大と高性能化を図る。
同時に、半導体微細化製造技術を応用した低消費電力化、MEMSによる小型化等の性能向上で車両設計に負担をかけない運転支援用センサの質的向上を図る。
②センサの複数化
歩行者や周辺走行車両検知に際し、昼間は可視光画像センサならはっきり検出できる。しかし、雨や濃霧、夜間では検出困難になることがある。そのため赤外線画像センサ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等特性の異なるセンサを複数組み合わせて使用する。
これにより、一つだけのセンサでは得られないより正確で広範囲な情報取得を行い個々のセンサの弱点を補完しあって精度・性能向上を図る。
③機械学習、AIの導入
自車両周辺や周囲の交通状況等の情報は、ミリ波レーダ、LiDAR、超音波センサ等の車載センサからのデータ、およびITS通信データからのものがある。
機械学習技術で、これらのデータから自車両周辺の歩行者や周辺車両等の正確な情報を抽出する。さらにディープラーニング技術により、蓄積したこれらのビッグデータを統合し、それらの検知した周辺の歩行者や車両の情報を高精度化する。
これにより周囲状況に即した自動運転の向上を図る。
(3)リスクと対策
センサ表面に落ち葉やごみ等異物が付着することがある。そうするとセンサが誤動作する恐れがある。
また、センサで歩行者を発見することが出来ても、車両とは異なり、歩行者の移動方向を予測することは困難であり、即座の衝突回避が困難になることがある。したがって、歩行者などの弱者と接触する恐れがある交通状況では、車両速度を十分に制限する必要がある。
制限速度以上での車両走行を防止するISA(Intelligent
Speed Adaptation)がある。これを活用し、路車間通信やナビゲーションシステムのマップ連携によって、その場所ごとに制限速度を車両に設定することができる。
これにより車両の運動エネルギーを低減し、歩行者の死亡事故や重傷事故を低減することが期待できる。
問題 電気電子部門 電気設備 Ⅱ-1-2
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三相かご形誘導電動機の減電圧始動方式を3つ挙げて説明し、全電圧始動方式と比較して、その特徴を述べよ。
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解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 簡易答案 添削回数1 2023/4/19
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1.スターデルタ始動
始動時に。
全電圧と比較して始動電流・トルク33%。
スタートとデルタ結線用に配線が3芯ケーブル2本必要
結線方法による始動のみため減電圧始動の中で最も安価
デルタ結線へ切替時、一時電源から切り離されるため突入電流発生
軽負荷始動できる電源容量の小さい場合に適用(目安11kW~45kW)
3.リアクトル始動
始動時にリアクトルを直列に挿入し、タップ値で電圧降下分だけ減圧させて始動電流を抑制し、始動トルクはタップ値の2乗に低減する
全電圧と比較してタップ60%時(80%)の始動電流は60%(80%)、始動トルクは36%(64%)
順次電圧を上昇させて始動できるため電動機の始動時のショックを軽減できる。
リアクトルを設置する分、スターデルタ始動よりスペースと費用が掛かる。
低い電圧で始動して順次リアクトルを消去して電圧を上昇させるので、大きな負荷に適している。(目安45kW~90kW)
4.コンドルファ始動
単巻変圧器で減圧して、始動電圧をタップ値に低減し、始動トルクをタップ値の2乗にする。
全電圧と比較してタップ60%時(80%)の始動電流は36%(64%)、始動トルクは36%(64%)
単巻変圧器を設置するため、減電圧始動の中で最も高価
巻線の一部がリアクトルとして作用し、運転切替時に電源を開放しないため突入電流を阻止。
特に電動機の設備容量が大きく始動電流を制限したい場合に適用。(目安90kW以上)
スター結線で減圧(1/√3)させることで始動電流、始動トルクを制限させる起動方式
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解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 完成答案形式 添削回数3 2023/5/13
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1. スターデルタ始動方式
始動時にスター結線で減圧させて始動電流とトルクを制限させる方式である。全電圧と比較して、始動時の電流とトルクが33%になる。価格は、外部始動装置がないため減電圧始動で最も安い。
特徴は、加速トルク特性が悪いので軽負荷始動が可能な小型電動機に適している(目安11〜45k W)。一方、結線用の3芯ケール2本必要である。
2.リアクトル始動方式
始動時にリアクトルを直列挿入し、タップ値で電圧降下分だけ減圧させて始動電流を抑制させる方式である。全電圧と比較して、タップ60%時の始動電流は60%、トルクは36%とになる。価格は、外部始動装置なので巻線コイル分がスターデルタ始動より8割高くなる。
特徴は、任意の電圧を多段階的に上昇させるので大きな負荷に適している(目安45〜90k W)。
3.コンドルファ始動方式
単巻変圧器を減圧して、始動電圧をタップ値に低減する方式。全電圧と比較してタップ60%時の始動時の電流とトルクが36%とになる。価格は、数個のコイルを組み合わせているため減電圧始動で最も高い。
特徴は、三相単巻変圧器の巻線の一部がリアクトルとして作用し、電動機が始動から運転に切替わる時、電源開放しないため突入電流を防止出来ることである。
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問題 電気電子部門 電気設備 Ⅱ-2-2
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鉄道のターミナル駅の拡張プロジェクト(事務所・ホテル・商業施設)に電気設備の防災設備の防災担当責任者として参画することになった。既存設備と一体運用が可能な防災設備を計画するに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策を述べよ。
(4) -----------------------
解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 簡易答案 添削回数3 2023/6/6
1. -----------------------
2. 調査、検討すべき事項
(1) 利用者移動に対応した避難警報
施設間を行き来する利用者の流動を調査して、火災時における施設間の流入防止、周辺建物への連絡通路における火災状況の把握・警報方法を検討し、非常放送の区分鳴動を検討する。
(2) 不特定多数の利用客を想定した避難誘導
商業施設・ホテルなど、不特定多数の利用者では避難に時間がかかる。群衆の人の流れを調査し、火災避難シミュレーションを用いて、人の集まりや動きを予測して、水平避難するなどの避難誘導を検討する。
(3) I C Tを活用した習熟度の高い防火管理の検討
店舗(テナント)の防火管理者は、入れ替りが多いため、避難誘導や火災への対応に慣れていない。防火管理者の習熟度を調査し、ITCを利用した防火管理を検討する。
2. 業務手順と留意点・工夫点
(1) 用途変更の確認申請 この要点↓は何か
・非特定用途の防火対象物10項から特定用途を有する複合用途の防火対象物16項へ変更による確認申請を行う。防災センターの設置、総合操作盤の設置が必要となる。各種防災設備に対する操作・制御・管理・表示機能の統一や提示情報の視覚化を行う。防災ンターに勤務する人以外でも操作しやすいようにシンプルにする。
(2) 周辺施設との連携
・周辺建物と連結される駅では、管理設備の閉鎖による避難経路の遮断等が発生するため、避難障害が生じないように建物間の連携を行う。連絡通路部分では、自火報設備の相互受信、専用インターホンなどの連絡装置やITVカメラを配置する。
(3) 避難経路の防犯解除
・建物内外・棟間・事務所の占有部と廊下を分ける部分に設置したセキュリティシステムは、火災時に防災センターで一括解除できるようにする。
(4)区分鳴動による非常放送のパニック防止
・非常放送は用途や管理区分ごとに区分けし、非常放送による混乱が生じないように区分鳴動方式とする。シネマエリア・ホール等では、観客のパニックを防止するため感知器作動放送をシネマやホール事務室に限定し、駆けつけ要員等による火災確認後にシネマ・ホールエリアに対する火災放送を行うようにする。
3.効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
・各防災設備担当者にインターフェースの統一化を依頼する。防災監視盤の監視制御対象となる設備は警報設備(自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、非常警報設備等)、避難設備(非常照明・誘導灯)、排煙設備(防火・排煙)、空調調和設備等多岐にわたる。これら設備の制御方式や制御電圧はそれぞれ標準仕様に合わせた場合、信号変換器や変圧器が必要になりシステム構築が複雑になる。インターフェースを統一することで、管理運用しやすいシンプルなシステムの構築が可能となる。
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解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 完成答案形式 添削回数0 2023/6/11
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1. 調査検討すべき事項
(1) 利生者の移動に対応した避難警報
火災した施設へ人の流入を防止するために建物外部へ避難警報が必要である。施設間を行き来する利用者の流入を調査して、周辺建物の連絡通路における火災状況の把握、警報方法や非常放送鳴動方式を検討する。
(2) 不特定多数の利用客を想定した避難誘導
不特定多数の利用客が多く避難に時間が掛かるため、避難誘導が必要である。群衆の人の流れを調査し、火災避難シミュレーションを用いて人の集まりや動きを予測した水平避難などの避難誘導を検討する。
(3) I C Tを活用した熟練度の高い防火管理
店舗の防火管理者は、入れ替わりが多いため、防火管理の浸透が必要である。防火管理者の熟練度を調査し、I C Tを活用した防火管理を検討する。
2. 業務手順と留意点・工夫点
(1) 制御しやすい総合操作盤
非特定用途の防火対象物10項から特定用途を有する複合用途の防火対象物16項へ変更になるため、総合操作盤を設置する。総合操作盤は、多くの防災設備を連携するためインターフェースの統一化を行なって、操作・制御・管理がしやすいように留意する。
(2) 周辺施設との連携
周辺建物の火災発生に気づかずに列車が駅に次々と到着すると被害が拡大するため、建物間の連携を行う。総合操作盤で他の管理区分の火災情報についても詳細表示出来るようにする。
(3) 避難経路の防犯解除
管理設備の閉鎖による避難経路の遮断等が発生するため、防災センターで防犯システムの一括解除を行なえるようにする。異常発生時には監視カメラが連動できるようにする。
(4) 区分鳴動による非常放送のパニック防止
火災時に非常放送の一斉鳴動を行うと混乱が生じるため、用途や管理区分に設けた区分鳴動方式を行う。シネマエリア・ホール等では、感知器作動方法をシネマやホール事務室に限定し、駆けつけ要員等による火災確認後にシネマ・ホールに対する火災放送を行う。
3. 効率的、効果的に進めるための関係者と調整方策
ホテルや商業施設の店舗などテナントは、建物本体工事の計画より後に入居する会社が決まる為、本体工事の設計より工程が遅れる。そのため、総合操作盤に他の施設の監視制御点数が定まらない。そこで、私は過去事例の原単位を使用して算出した副防災盤の設置場所を用意した。各建物設計者には、各防災センターでそれぞれの管理境界に設置される防火戸等を制御するものとし、駅防災センターへ作動表示する副防災盤を設置するよう指示した。これにより総合操作盤の設計が容易となり、業務が効率化された。
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問題 電気電子部門 電気設備 Ⅲ-2
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近年、国内外で様々な気象災害が発生しており、ここに気象変動問題との関係を明らかにすることは容易ではないが、国内においても自然生態系の他、産業・経済活動等に影響が出ると指摘されている。気象変動の原因となっている温室効果ガスは、生活排出量がわが国全体の過半を占めるという分析もあり、あらゆる主体が削減に取り込む必要があり、ビジネス・商業エリアでは脱炭素が勧められている。
(1) 上記を踏まえ、地域脱炭素への移行・実現に向けた取組を加速させるため、電気設備分野の技術者としての技術者としての立場でエネルギー利用についての課題を多目的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、その課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ、専門技用語を交えて示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
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解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 簡易答案 添削回数6 2023/6/26
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1.課題
①再エネの導入する
・地域のエネルギー自給率向上の観点から、再エネの導入が課題である。
・需要家近傍に再エネを導入して、効率よく電力運用するために地域電力需給の調整、周波数の調整、余剰電力の調整を行う。
② MaaSを導入する
・輸送エネルギーの地域脱炭素の観点から、MaaSの導入が課題である。
・自転車シェア、EVカーシェア、EV充電設備、マルチモーダルサービスを行う。
③ スマートハウスを普及させる
・地域のエネルギー脱炭素の観点から、スマートハウスの普及が課題である。
・太陽光発電と電気自動車および家電・設備をIoTで繋いでV2H(Vehicle to Home)を行う。
2.最も重要な課題(再エネ)の解決策
① CEMSによる地域と需要家間の電力需給調整を行う。
・地域の創エネ・蓄エネ・省エネを効率良く運用するために、地域発電と蓄電池及び需要家間をIoTで繋いで電力調整を行う。
・需要家間での電力の余剰や不足を平準化するためにP2P(Peer to Peer)を行う。
① 蓄エネルギー設備による余剰電力の利活用
・地域電力のピークカット・平準化・周波数の調整・余剰電力の調整のために、電設備が安定化電源として応答速度が速い充放電を行う。
・ナトリウム及び硫黄は危険物の扱いに該当するため、設置場所の安全性を確保すする。
② 仮想発電所による地域と発電所間の電力需給調整を行う
・仮想発電所により再エネ事業者及び需要家のリソース電力を統合して、デマンドレスポンスや出力変動および余剰電力の無駄をなくした電力需給調整を行う。
・予測技術(需要量・発電量・蓄電量)とリソース制御技術の活用が不可欠である。
3.波及効果
・電力需給調整によりピークカット・平準化が進むことで電力コストを低減できる。
・電力需給調整の省力化が進み生産性が向上する。
4.懸念事項と対策
1)懸念事項
・予測技術を用いた電力需給調整が状態化しても、予測を外す危険もある。
・通信異常が発生すると地域停電事故になる恐れがある。
・省力化が進み技術者の技術力が低下する。
2)対策
・仮想発電や蓄エネの分散設置、通信ネットワークの二重化を行う。
・技術力育成のためにeラーニング・情報共有・勉強会を実施する。
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解答者 電気電子部門 電気設備 専門事項:建築電気 完成答案形式 添削回数0 2023/6/28
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(1) エネルギー利用の課題
① 再エネを導入する。
地域の自給率向上の観点から、再エネの導入が課題である。効率良く電力運用するために、需要家の近傍に再エネを導入して地域電力需給、周波数の調整、余剰電力の調整を行う。これによりエネルギーロスの削減に繋がる。
② MaaSを導入する。
輸送エネルギー利用の地域脱炭素の観点から、MaaSの導入が課題である。電車・車の利用効率化を行うために自転車シェア、カーシェア、EV充電スタンドの普及、マルチモーダルサービスを行う。これにより無駄な走行距離を削減、渋滞の緩和、エネルギー消費量の削減に繋がる。
③ スマートハウスを普及させる。
地域のエネルギー脱炭素の観点から、スマートハウスの普及が課題である。需要家の自給率を向上させるために家庭用太陽光発電や電気自動車及び家電・設備をIoTで繋いでV2H(Verhicle to Home)を行う。これにより、快適、省エネ、エネルギー自給を実現することが可能となる。
(2) 最重要な課題「再エネの導入」の解決策
① CEMSによる地域と需要家間の電力調整を行う。
地域の創エネ・蓄エネ・省エネを効率よく運用するために、地域発電と蓄電池および需要家間をIoTで繋いで電力調整を行う。需要家間の電力か不足を平準化するためにP2P(Peer to Peer)を行う。地域の発電者であるプロシェーマのブロックチェーン技術の活用が必要となり・・○○のため○○する。
電力取引の制度、託送料金の仕組み、セキュリティ面の強化が必要である。
この結果、災害等で系統停電が発生した際に、系統を切り離して、地域の電力を確保する。
② 蓄エネ設備による余剰電力を利活用する。
地域電力のピークカット・平準化・周波数調整・余剰電力の調整のため、蓄エネ設備が安定化電源として応答速度の速い充放電を行う。この結果、需要間や地域間電力融通する。
③ 仮想発電所による地域と発電所間の電力調整
仮想発電所(VPP)に再エネ事業者及び需要家のリソース電力を統合して、デマンドレスポンスや出力変動および余剰電力の無駄をなくした電力需給調整を行う。そのためには、アグリゲータによる予測技術(需要量・発電量・蓄電量)とリソース制御技術を○○として○○する。この結果、エネルギーロスを削減する
(3)波及効果・懸念事項と対応策
①波及効果
電力需給調整でピークカット・平準化が進み電力コストを削減できる。また、電力需給を行う作業の省力化が進み生産性が向上する。
②懸念事項
省力化の進展により電力需給の自動化、遠隔管理が状態化すると技術者自身の技術力が低下する懸念が考えられる。アグリゲータの危険性に対する認識不足による波及事故というような事故というような、従来では考えられなかった電気事故の増加が懸念される。
③対策
技術者の持つ知識を形式知化し、誰もが利用できる形で蓄積・共有することを目指すネジメントが必要である。
1) 情報の共有とアップデートの迅速化
データベースを構築すると、必要な情報や知識をいち早く理解でき、蓄積された情報を随時更新することによりいつでも最新の情報を得ることができる。
2)教育機会の構築
データベースを共有し活用する機会を作ることが需要である。社内イントラ上に質問できる場を提供し、一人で悩みを抱えないようにバックアップ体制を構築する。eラーニングや勉強会を開催して業務に必要な知識を得る機会を提供する。
問題 金属部門 必須 Ⅰ-1
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2018年、経済産業省より示されたDX(デジタルトランスフォーメーション)施策は,近年発達が著しいデジタル技術の利用推進によって,我が国の産業力の維持・強化に革命的な変化をもたらすことを目指している。産業界におけるDX推進は,新しいビジネスモデル構築等の経営戦略,製品・サービスの向上による国際競争力の強化などに留まらず,人材有効活用を含む働き方改革まで,その適用範囲は多岐にわたる。
上記の状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。
(1) 金属関連産業に携わる技術者としての立場で,DX推進を図るための技術的な課題を多面的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 上記事項を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解答者 Ⅰ-1 金属部門 金属加工 専門事項:溶接接合 完成答案形式 再現 2022/7/18
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(1)DX推進を図るための技術的課題
高圧ガス貯蔵タンクなどの大型溶接構造物製造において、以下の課題を挙げる。
■いきなり特別な用途に絞るのではなくできるだけ汎用性を保った方が良いでしょう。
1-1)合金設計の高度化(サプライチェーンの観点)
金属の性質に及ぼす合金成分の影響は古くから研究されており、シュレディンガー方程式に基づく第一原理計算や熱力学計算に基づくCalPhad計算などがあるが、それらは何れも計算精度や計算時間に課題があり、素材価格の変化(近年のNi価格高騰)などへの迅速な対応が難しいという問題がある。サプライチェーン強靭化の観点から、合金設計の高度化が課題である。
■ご指摘の計算法は合金設計理論という金属工学の技術そのものであって、残念ながらDXには相当しにくいかと思います。Ⅰでは専門技術に限らない、マネージャとしての広い視点が求められています。
■素材価格高騰への対処も、サプライチェーン強靭化も課題ではありますが、問題点に着目しただけでは、DX推進を図るための技術的課題とは言えません。具体的に
どうやって問題解決するか、DX推進の方針を述べましょう。
1-2)技能伝承の高度化(技術力維持・向上の観点)
大型溶接構造物の製造では、技能伝承に関して以下の問題がある。①切削の位置決め精度悪いとが寸法精度が大きく低下する。②溶接時のトーチの微妙な狙い位置がずれると溶接品質が大きく低下する。③塗装の前処理が難しい。また、今後は生産年齢人口の急激な低下が予想されており、単に熟練技能を伝承するだけでは不十分である。技術力維持・向上の観点から、技能伝承の高度化が課題である。
■技能伝承はともかく、そのような旧来からの課題をどうやって問題解決するか、DX推進するかが求められています。
1-3)溶接技術の高度化(品質向上・安全の観点)
溶接技術は、①有害なヒュームが発生し、安全確保が難しい、②溶接変形により寸法精度が低下する、③多層溶接において、溶接完了後に欠陥検出されると、大きな後戻り(溶接部の除去→再溶接)が必要となり生産性が低下する、という問題がある。品質向上・安全性確保の観点から、溶接技術の高度化が課題である。
■どうやって問題解決するか、そのためにどうDX推進するかの方針、道筋を述べましょう。
DX推進とは、デジタル技術の利用推進によって,
① 新しいビジネスモデル構築等の経営戦略,
② 製品・サービスの向上による国際競争力の強化
③ 人材有効活用を含む働き方改革
によって、金属分野の産業力の維持・強化に革命的な変化をもたらすことです。この1~3のいずれかを考えると良いでしょう。
(2)最も重要と考える課題とその解決策
1-3)の溶接技術高度化を挙げる。その理由は、万一溶接作業中の事故や、溶接品質不良による事故を引き起こした場合、作業者や近隣住民を危険にさらす、重要課題といえるからである。
■溶接技術による生産性や品質に対する前向きな姿勢はともかく、ここでは「DXに前向きに取り組む姿勢」を具体的に打ち出した方が良いでしょう。
2-1)解決策1:ヒューム吸引機構
粒子画像流速測定(PIV)法を活用した流体計算などを用いてヒューム吸引機構を構築し、ヒューム濃度が労働安全衛生法の定めるマンガン量として0.05mg/m3以下になるように制御する。吸引機構で生じる風で溶接欠陥が発生しないよう、溶接部近傍の風速が溶接協会規格の2m/s以下となるように制御する。
2-2)溶接変形解析を活用した自動溶接
以下の順序で自動溶接する。①設計部門が作成したCAD図面をもとに、自動的に溶接変形解析FEMモデルを構築、②溶接変形を極小にする溶接順序をFEMで選定する。③選定した溶接順序でティーチングする。④レーザセンサなどで狙い位置を微修正しながら自動溶接する。それにより生産性向上が図れる。
2-3)インプロセスでの溶接欠陥検出
溶接完了後に放射線探傷試験(RT)などの非破壊検査(NDT)を行うのでなく、非接触で欠陥検出できるレーザ超音波探傷試験(UT)を活用してインプロセスで欠陥検出する。それにより、溶接欠陥が残存したまま次パスを行い、後戻りすることを防ぐ、欠陥発生時はアークの状態や電流・電圧波形の異常も同時に発生するため、それらのモニタリングも行い、精度向上を図る。
(3)新たに生じうるリスクとその対策
3-1)リスク1:技能者の能力低下を挙げる。検査装置がブラックボックス化し、熟練技能が伝承できなくなるリスクがある。対策として、熟練技能の形式知化を行う。CGを活用した教育で技能伝承の効率化も図る。
3-2)リスク2:AIの暴走を挙げる。サイバー攻撃などをうけて誤った条件でヒューム吸引などを行い、ヒュームが十分吸引できなくなるリスクがある。対策として、プログラムとのデータのやり取りは暗号化されたセキュリティUSBの使用に限定する。
(4)業務遂行にあたっての要件・留意事項
4-1)技術者倫理の観点:NDTでは、常に公衆の利益を優先して、安全最優先で欠陥検出を行う。プログラム構築の際は、有識者と総合に協力して真実性の確保を図る。同時に継続研鑽を行い、常に向上心をもつ。
4-2)社会持続性の観点:製造プロセスでは特定の地域や企業のみができるプロセスをなるべく避ける。BCPを考慮して複数の企業が製造できるようにする。NDTでは作業者の安全を確実に確保し、「働きがい」向上に努める(SDGs8)。また、「つくる責任」を考慮して社会のニーズにあうものづくりを行う(SDGs12)。
問題 金属部門 金属加工 Ⅱ-1-1
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鋼は加熱と冷却による熱処理により、目的となる性質を得ることができる。代表的な熱処理である「焼入れ」「焼戻し」に関して概要を述べよ。また、「加工熱処理技術」について変態温度との関係を用いて説明せよ。
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解答者 金属部門 金属加工 専門事項:鍛造 簡易答案 添削回数3 2023/1/15
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1.鋼の代表的な熱処理
(1)焼入れ:鋼の硬さや強度を上げるためオーステナイトにした後、急冷することでフェライトになり切れず、Cが過飽和に固溶する硬いマルテンサイトにする操作。
(2)焼戻し:焼入れ後の鋼は硬くもろいため、再加熱してCを析出させ、フェライトへの変態を進行させることで硬さを減じ、靭性をもたせる操作。
2.加工熱処理技術
塑性加工と熱処理を組み合わせて、強靭性を得る技術である。
(1) 高強度・高靭性を得る制御圧延
950℃以上で粗圧延、950℃~Ar3点および750℃近傍で仕上げ圧延することで結晶微細化を図り、その後加速冷却する操作。
(2) 超強力鋼を得るオースフォーミング
オーステナイトから焼入れる途中の600℃~880℃の準安定オーステナイトで加工し、焼入れすることでマルテンサイト変態を起こさせる操作。
(3) 高硬さを得るアイソフォーミング
600℃~350℃のパーライト、ベーナイト変態中に加工し、非金属介在物の球状化を促進する操作。
(4) 加工変形部分の強度を高める加工誘起変態
900℃以上に加熱後、急冷して残留オーステナイトを残存させ、常温加工することで残留オーステナイトをマルテンサイトに変える操作。
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解答者 金属部門 金属加工 専門事項:鍛造 完成答案形式 添削回数0 2023/1/21
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1.鋼の代表的な熱処理
(1)焼入れ:鋼の硬さや強度を上げるためオーステナイト状態にした後、急冷することでフェライトになり切れず、Cが過飽和に固溶するマルテンサイト変態により硬いマルテンサイト組織を得る。
(2)焼戻し:焼入れ後の鋼はもろい状態のため、再加熱してCを析出させ、フェライト変態を進行させることで硬さを減じ、靭性をもたせる。
2.加工熱処理技術
塑性加工と熱処理を組み合わせて、強靭性を得る技術である。
(1)高強度・高靭性を得る制御圧延:950℃以上で粗圧延、950℃~Ar3点および750℃近傍で仕上げ圧延することで、結晶微細化を図り、その後加速急冷する。
(2)超強力鋼を得るオースフォーミング:オーステナイトから焼入れる途中の880℃~600℃の準安定オーステナイトで加工し、その後焼入れすることでマルテンサイト変態を起こさせる。
(3)高硬さを得るアイソフォーミング:600℃~350℃のパーライト、ベーナイト変態中に加工し、非金属介在物の球状化を促進する。
(4)加工変形部分の強度を高める加工誘起変態:900℃以上に加熱後、急冷して残留オーステナイトを残存させ、常温加工することで、その加工エネルギーで残留オーステナイトをマルテンサイトに変える。
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問題 金属部門 金属加工 Ⅱ-1-2
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鋼材の疲労とはどのような現象か。また溶接構造物の疲労強度を改善するには(母材は変更しない),どのようなことをすれば良いか。継手設計上の留意点及び施工面の対策について述べよ。
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解答者 金属部門 金属加工 専門事項:溶接接合 完成答案形式 再現 2022/7/18
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(1)鋼材の疲労の概要
鋼材に繰返し応力がかかると、降伏応力より小さい荷重でも破断に至る現象である。今日の構造物の破壊の7~8割を占めると言われている。疲労強度はSN線図で予測できる。繰返し数と繰返し数を両対数グラフにプロットすると図1のような線となり、寿命が予測できる。なお、素材によっては疲労減が現れない場合もあり、その場合はN=107の時間強度が便宜上疲労強度として扱われる。疲労き裂進展速度は図2に示すParis則で予測できる。
■主題趣旨から外れた記述はなるべく無くすことです。
そして、問題の主体は見識の(1)ではなく、技術応用の(2)にあることに気づいてください。
こうした試験に勝つためのポイントを知ることも楽に合格するためのテクニックです。
疲労破面は巨視的にはビーチマークとなり、走査型電子顕微鏡ではストライエーションが確認される。
(2) 溶接構造物の疲労強度を改善する方法 ○
2-1)設計上の対策:①応力集中を起こす余盛の除去を指示する。②角変形が起こりやすいV開先を角変形が起こりにくいX開先に修正し、曲げ応力の負荷を防ぐ
2-2)施工上の対策:①ピーニングによる圧縮残留応力の導入、②磁粉探傷試験(MT)や超音波探傷試験(UT)でき裂を早期発見し、除去する。
③き裂にRをつけてき裂先端の応力集中係数を低減する。(図3参照)。
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問題 金属部門 金属加工 Ⅱ-2-1
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鋳造で精密な部品を作る工場において、今までは鋳造により製造していた部品が形状の精密化・複雑化に伴い、欠陥や鋳込み不足の部分が生じるようになった。
改善策を試みたが十分な成果が得られなかった。そこで、新技術導入を検討することになりあなたはそのチームの責任者をまかされた。
(1) 新技術導入に当たって調査検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順を列記し、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 金属部門 金属加工 専門事項:鍛造 簡易答案 添削回数5 2023/3/3
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1. 新技術導入に当たって調査、検討すべき事項
1)ロストワックス精密鋳造法による複雑な中空形状部品の鋳造には中子を組付けた鋳型を用いるため、中子の動きや鋳型と中子の膨張、収縮の違いによる寸法精度や表面粗さを調査し、高寸法精度や高表面品質を確立する方法について検討する。
2)溶融金属へのガスの巻込みによるガス巣や凝固収縮による引け巣を調査し、ガス欠陥や引け巣を除去する方法について検討する。
3)溶融金属の抜熱や押し湯不足状態を調査し、鋳込み不足の除去方法について検討する。
2.業務を進める手順、留意工夫を要する点
1)人口砂調整:粒径50~600μmおよび積層ピッチ0.25~0.3mm、バインダーにフラン樹脂2.0%或いはフェノール樹脂3.5%添加する。
2)砂型造形シュミレーション:高寸法精度、高表面品質、良好な通気度、高強度の得られる条件を絞り込む。
3)複雑な砂型造形:バインダージェット方式の3Dプリンターで作製することで高寸法精度や高表面品質を得る。溶融金属の抜熱を防ぐため砂型の砂には断熱性の良いセラミック人口砂を用いる。
4)低圧鋳造装置による差圧鋳造:ガス欠陥や引け巣、押し湯不足、鋳込み不足を無くすため、鋳型室に挿入した砂型を低圧鋳造機に設置し、鋳型室には溶融金属の抜熱を防ぐため高温の加圧ガスで砂型を予熱し、低圧鋳造機の保持室には常温の加圧ガスで差圧を加えることにより溶湯の流れが乱れることなくスムーズに隅々まで圧入する。
3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
砂型の生産性を向上するため人工砂調達担当者に低膨張、高耐熱性の無アルカリガラスを人口砂にコーティングすることでリサイクルを可能とし、砂型造形シュミレーション結果に基づく造形を低コスト化するように指導する。一方、砂型の通気性や強度の低下が考えられるため鋳造担当者には低圧鋳造機の保持室内に製品と同体積の給湯室を設置し、給湯室の溶融金属をガス加圧する差圧鋳造により制御を精密化するように指導する。以上の方法で品質確保しながら生産性を向上するよう関係者らを取りまとめる。
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問題 金属部門 金属加工 Ⅲ-1
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近年の急激な経済状況の変化もあり,主力製品の受注が大きく減少した中,新しい金属加工製品(切断,曲げ,溶接,熱処理,非破壊検査などの工程がある)の製造委託の引き合いがあり受注した。寸法や重量,加工工程は自社工場・設備で製造可能な範囲であり,継続的な受注が見込める。
材料は鉄鋼材料であるが従来扱ったことのない材料である。溶接の施工法や要員の資格,検査,品質記録に関する要求があり対応が必要である。顧客からは着手前に溶接施工要領書(WPS)を含む製造計画書の提出と説明が求められている。
工場の技術者であるあなたがリーダーで製造計画書の検討を進めることになった。
(1) 受注生産品の製造計画書の作成を進める観点から調査,検討すべき事項とその内容について,説明せよ。
(2) 受注製品の製造計画書の作成を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。
(3) 業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 金属部門 金属加工 専門事項:溶接接合 完成答案形式 再現 2022/7/18
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(1)調査・検討すべき内容
1-1)顧客要求と自社の強み・弱み:顧客の要求性能を確認し、従来の主力製品で得た技術を生かすことができないか、自社の弱みはないかを調査し、設備導入計画や人材配置などを検討する。
■やや漠然した課題のようです。事業戦略的に主力製品の受注が大きく減少しているのだから、新しい金属加工製品(切断,曲げ,溶接,熱処理,非破壊検査などの工程がある)を開拓するような転換、設備投資も必要かと思います。
1-2)材料の特性:新たに使用する材料の組成、主な特性、使用するうえでの注意点を調査し、材料の強みを生かす製造方法を検討する。例えば、高強度な二相ステンレス鋼を新規適用する場合は、プレス加工が可能か調査し、フェライト・オーステナイトの相比を維持する溶接条件を選定する。
1-3)溶接施工法試験条件:WPSに記載すべき事項を調査し、施工法試験条件を検討する。例えば、板厚tで施工法試験を行った場合、板厚t/2~2tの範囲で適用可能となる場合が多い。少ない試験数で有効な結果を得る条件を選定する。
■具体的対策ではなく、汎用性のある検討方法を述べた方が良いでしょう。
1-4)技術調査:社内外の特許や技術資料を調査し、特許侵害しない範囲で有効活用できる技術がないか検討する。
(2) 製造計画書作成を進める手順
2-1)素案の提示:(1)で調査・検討した内容をもとに、製造プロセスの素案を提示する。留意点:情報伝達不足による後戻りを防止する。例えば、曲げ工程でのスプリングバックによる寸法精度の低下で次工程の溶接でギャップ幅が過大で溶接できなくならないようにする。工夫点:各工程の要求性能を全体で見える化する。
■ビジネス改善的な要件はともかくとして、金属加工の要件を書かれると良いでしょう。
2-2)確認実験:提示した素案で目的とする性能が得られるか、小型試験片による確認実験を行う。留意点:想定外の結果で後戻りしないようにする。工夫点:各工程完了後のビッカース硬さ試験および断面マクロ・ミクロ試験を行い、硬さおよび組織変化が起きるタイミングを明確にする。
■こうした基本的な操作はともかくとして、新しい金属加工製品(切断,曲げ,溶接,熱処理,非破壊検査などの工程)を実現するの方法を述べた方が良いでしょう。
2-3)QCDSE評価:複数の製造方法に対してQCDSE(品質・コスト・納期・安全・環境)評価を行い、採用するプロセスを決定する。留意点:調達コストの変化に柔軟に対応できるようにする。工夫点:試行錯誤の過程を含めて文書化し、臨機応変に対応する仕組を作る。
■やや一般論となっているようです。ビジネス改善の一般論ではなく金属加工の視点を力説しましょう。
(3) 関係者との調整方策
業務を効率的・効果的に進めるため、上述の調査・検討・実験等の各段階で関係者と会議を行い、進捗状況・今後の予定・懸念事項を共有し、合意を得たうえで次工程を行う。それにより後戻りが低減し、効率化する。調整する関係者および調整内容は以下の通り。
・知財部門:特許侵害の有無の調査及び特許化の要否
・調達部門:素材選定および調達先
・研究開発部門:シミュレーションの活用方法
・工程管理部門:設備導入および人材配置方法
・安全部門:危険予知およびそれを防ぐ方法
・品質保証部門:顧客要求およびそれを満足する方法
・顧客:顧客の要求を満足しているか確認する。以上
■残念ながら、旧来の金属加工の一般論にちかいです。この問題の本質を見極めた解答が求められています。
問題 建設部門 必須 Ⅰ-1
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我が国では、技術革新や「新たな日常」の実現など社会経済情勢の激しい変化に対応し、業務そのものや組織、プロセス、組織文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進を図ることが焦眉の急を要する問題となっており、これはインフラ分野においても当てはまるものである
加えて、インフラ分野ではデジタル社会到来以前に形成された既存の制度・運用が存在する中で、デジタル社会の新たなニーズに的確に対応した施策を一層進めていくことが求められている。
このような状況下、インフラへの国民理解を促進しつつ安全・安心で豊かな生活を実現するため、以下の問いに答えよ。
(1) 社会資本の効率的な整備、維持管理及び利活用に向けてデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4) 前問(1)~(3)を業務として、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 河川砂防 専門事項:河川計画 完成答案形式 添削回数4 2023/6/10
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1)建設ロボットの導入による施工
労働力集約型から機械化への転換の観点から、ICT機器(GPS,自動操舵装置、障害物検出センサー、カメラ、制御コンピュータ)を搭載したロボットによる施工の無人化または遠隔化が課題である。
土工で使用する重機に航法装置、アーム制御器を搭載して施工を自動化することで、施工のスピード化が図れ3割の生産性の向上となる。
2)画像やセンサーによる構造物の損傷状態の把握
橋梁などの点検時の仮設の無駄を省いて合理化する観点から、画像や物性データを取得してその損傷状態を確認し補修を行うことが課題である。
取得した構造物のコンクリート画像などを、AIで判断させ、ひび割れの変状を自動検出し、点検員の点検診断を支援する。
3)デジタル化による業務のスピード化
業務管理の統合化の観点から、設計時からムダのない施工方法を検討し、構造物の安定解析などの業務において、デジタル化推進を行い、構造決定をスピード化する。
3次元CADに属性情報を追加したCIMを設計で行い、そのデータをICT搭載した重機に入力しマシンコントロール技術で施工を行う。
2.建設ロボットによる施工の解決策
1)自動重機(ユンボ、ダンプ)による無人・遠隔施工
土の運搬、敷均し、締固めという異なる作業を複数の自動航法機能、操作機能を付加して施工を自動化する重機を使用して施工を行う。
また、水中作業となり危険が伴う浚渫作業においても、一度に広範囲の地形を計測できる音響測深技術であるマルチビーム測量で出来高を確認しながらICT重機で施工を行う。
2)各種専門工の現場施工ロボット導入
鉄筋の交点を見つけて結束する結束マシンや、コンクリート打設現場の左官ロボット、トンネル内コンクリー吹付けマシンなど、各種専門作業機械に自動走行、操作機能を融合させて作業を自動化する。
人間の作業と比較して4割以上のスピード化となる。また人間が高所や不安定な箇所などの危険な場所に近づかなくなり安全性が向上する。
3)自走式ロボットによる現場内データ収集、監視
現場の進捗状況や出来高のデータを、カメラやセンサーを搭載したロボットで取得して、工事の進捗確認や作業者や資材を確認する。
進捗状況の把握が遠隔地からすることで、複数の視点から現場の施工計画を立案する。またカメラで現場の段差や開口部を検知し、危険予知活動を支援する。
3.波及効果と懸念事項
1)波及効果
ロボット導入により生産性が向上し、働き方改革が推進される。建設業の3Kも解消され、人材の確保につながる。
2)懸念事項とその対策
DX推進により、設計時の外力(流量、土質など)の設定などを検討する機会や、設計上の数値の背景を学ぶ機会が無くなり、技術者の技術力の低下が懸念される。
対策は、画一的なマニュアル設計による結果の事故例や、想定外の使用による故障例を集大成し、一般的な設計では予見しにくいリスクを感じ取るトレーニングを行う。
4.業務遂行要件
1)技術者倫理:
施工のデジタル情報を維持管理に役立てる観点から、腐食箇所(感潮域)データを維持管理担当部署に申し送りし、長寿命化やライフサイクルコストの低減を図る。これは「公衆の利益の優先」に相当する。
2)社会持続性「低炭素社会の構築」:
重機をハイブリット型に変更してCO2排出量を4割削減するなど、エネルギー消費や温室効果ガスの排出量を削減する。これは、SDGsの13「気候変動に具体的な対策を」に該当する。
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 道路 専門事項:道路設計 簡易答案 添削回数16 2023.2.17
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1. 社会資本の効率的な整備
(1)点検・管理業務の効率化
センサと通信システムの設置によって構造物を常時監視し、平常時の異常を早期に把握することで事故を未然に防ぐ。また、モニタリングによって収集・蓄積したデータを分析して構造物の劣化を予測し、最適な時期に補修を実施してコスト抑制。
(2)無人建機の遠隔操作技術
遠隔操作では地質や不整地状況、奥行きの距離間隔を把握できない。5Gや3D技術によりリアルタイムで高解像度且つ立体的な動画データを送受信、力触覚伝達型遠隔操作システム、VR技術等を活用して現場で搭乗した状態を再現。安全性向上。
(3)デジタルツインを活用した生産性向上
ドローンによるセンシング(センサーによる計測)とそのデータの点群化処理を行い、現場の進捗情報や状況をモデルにて可視化して管理工数を削減。また、工事車両の現在位置を把握、現場への到着時間を予測、遅延による待ち時間を作業に費やすなど仮想空間でシミュレーションして最適化したものを現実空間で実現。
2.課題「点検・管理業務の効率化」の解決策
(1)ICT技術等を活用した損傷箇所の早期特定
ICT技術を活用して床板上面や堤防、護岸背面の空洞調査、河道の変状を把握して点検箇所をスクリーニング。計測・モニタリングによりデータを監視して損傷箇所を特定。収集したデータとBIM/CIM等の3次元モデルと連動。損傷箇所を可視化。
(2)劣化予測に基づく補修時期の提案
IoT機器による計測を行い異常の予兆をリアルタイムに検知して、統合回帰分析を基に劣化予測を行い予知保全により、インフラの損傷を防ぐことで、「緊急措置判定」による補修見送りや撤去を無くし、多数のインフラを更新可。
(3)AIを活用した診断
AIがコンクリートのひび割れを自動で検出し診断。導入初期は限られた学習データを基に診断するため、判別精度を保証できる範囲は限定的であるが、技術者が継続的に、判別の難しいもの、特殊事例等を追加していくことで、適用範囲を拡大。
3. 波及効果と懸念事項
波及:インフラ機能確保による災害時の被害抑制。早期復旧が可能。懸念:DX等で省人・迅速化の反面、AIではトレードオフの采配が困難。AI認知判断プログラムへPDCAを回し、改善改良を繰返し、精度を高める。トレードオフ采配を可能。
4. 技術者倫理と社会持続性
ICT等を活用して施工管理等の作業負担を軽減。安全性向上。公衆の利益の優先。
女性や多様な人材を起用するダイバーシティーに取り組み、ジェンダー平等を実現する。
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数4 2023.3.10
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1. 多面的な課題
(1)点検・管理業務の効率化
センサと通信システムを設置して構造物を常時監視し、平常時の異常を早期に把握することで変状の進展による事故の発生を未然に防止する。また、モニタリングによって収集・蓄積したデータを分析して構造物の劣化を予測し、最適な時期に補修を実施する。
(2)建設機械の無人化による安全性・施工性向上
遠隔操作では、奥行きの距離間隔を把握できないため、4K3Dモニターを用いる。建機に取り込んだ3次元設計データと衛星測位システム(GNSS)などによる位置情報も組合せて作業機操作を支援する。また、操作システムに力覚・触覚の提示機能を加え、近接領域で対象物を壊さずに繊細かつスピーディーに操作する。
(3)デジタルツインを活用した生産性向上
人手による測量で日々の進捗や現場状況を把握しているため、相当な時間を要するボトルネック工程となっている。そのため、ドローンによるセンシング(センサーによる計測)データを点群化処理し、現場の進捗情報等をモデル化して可視化する事で管理工数を削減する。
2.課題「1.点検・管理業務の効率化」の解決策
(1)ICT技術等を活用した損傷箇所の早期特定
点検箇所をスクリーニングするため、ICT技術を活用して床板上面や堤防、護岸背面の空洞調査、河道の変状調査を実施する。
加速度センサーやスーパーAEセンサー等により収集したモニタリングデータを基に社会インフラを監視する。また、収集したデータとBIM/CIM等の3次元モデルと連携させることで損傷箇所を可視化でき、経験の浅い技術者でも早期に検出可能とする。
(2)劣化予測に基づく補修時期の提案
コンクリートや鉄筋部等における内部の劣化は表面に表れにくく、外見検査では内部での劣化進行を判別できない。よって、IoT機器による計測を行い異常の予兆をリアルタイムに検知して、重回帰分析を基に劣化予測を行い予知保全により、インフラの損傷を防ぐ。これにより、「緊急措置判定」による補修見送りや撤去を無くし、多数のインフラを更新する。
(3)AIを活用した診断とデータ整理
UAVによる安全・簡便に短時間で大量の高解像度・高密度なデータを取得し、損傷と措置の関係、劣化機構等をオントロジー化して技術者の診断を支援する。また、損傷度合、位置、相互関連、進行性、類似例など多様なデータを連携し、維持管理のストーリを自動作成する。さらに、GPS画像データの位置情報からAIにより、自動に画像データを繋ぎ合わせ、展開図を作成することで作業日数を短縮する。
3.波及効果と懸念事項
(1)波及効果
作業時の省人化やコスト抑制により、人材と予算を新設のインフラ構築に活用できる。これにより、早期にインフラが完成できB/Cが向上する。また、施工の効率化、交通規制抑制等によりCO2排出を抑制でき、社会環境への影響を抑制できる。
(2)懸念事項
モニタリングやICTのスクリーニング調査を実施する際、効率を重視するあまり、損傷発生率が高い箇所を中心に実施し、逆に損傷発生率が低い箇所については見落とされる懸念が有る。
人為的バラツキを補正するため、台帳やセンシングデータにより各種インフラの構造を把握し、FEM解析等により応力集中箇所を特定して、効率的調査の重点領域以外での検査漏れを無くす。
4.技術者倫理と社会持続性
技術者倫理を高めるため、遠隔化・自動化した建機の管理に建機FMSを導入して、安全性や生産性の向上を図る。これは技術士倫理綱領第1項の「公衆の利益の優先」に相当する。
社会持続性を高めるため、建設DXを活用して業務の遠隔化や自動化を図る。これにより、性別や人種に捉われない多種多様な人材を採用して人手不足の解消を図る。これはSDGs17の目標である「ジェンダー平等を実現」に相当する。
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問題 建設部門 必須 Ⅰ-2
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世界の地球温暖化対策目標であるパリ協定の目標を達成するため、日本政府は令和2年10月に、2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、新たな削減目標を達成する道筋として、令和3年10月に地球温暖化対策計画を改定した。また、国土交通省においては、グリーン社会の実現に向けた「国土交通グリーンチャレンジ」を公表するとともに、「国土交通省環境行動計画」を令和3年12月に改定した。このように、2050年カーボンニュートラル実現のための取り組みが加速化している状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)建設分野におけるCO2排出量削減及びCO2吸収量増加のための取組を実施するにあたり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を一つ上げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるうるリスクとそれへの対応策について述べよ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 鋼コン 専門事項:コンクリート構造 簡易答案 添削回数10 2023.5.30
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(1)CO2排出量削減及び吸収量増加のための課題
①低炭素まちづくりの推進
都市全体で低炭素化する観点から、CO2排出量を削減する都市構造の構築を推進。
②ICT施工の推進
建設のプロセスを低炭素化する観点から、ICT施工の導入で、CO2排出量を削減。
③セメント量を削減したコンクリート製品の促進
建設材料の観点から、セメント一部を高炉スラグ微粉末や特殊混和材γ2Sで置換したコンクリートの製作を促進する。また、エポキシ樹脂系鉄筋で中性化を防ぐ。
(2)低炭素まちづくりの推進
①緑化コンクリートの活用
都市公園等の駐車場へ緑化コンクリートを活用する。新たに、道路のり面や擁壁でポーラスコンクリートを活用してCO2を削減する。
②再生可能エネルギーの利用
固定価格買取制度を利用し、公共施設へ再生可能エネルギーを普及させる。
③建設廃棄物の削減
建設発生土を盛土や埋立てする。プレキャスト杭にして、残コン量を少なくする。
④建設資材の利用促進
低炭素型コンクリートは、基礎躯体やプレキャスト製品に利用してCO2を遮断。
(3)新たに生じるうるリスクとそれへの対応策
リスクは、従来方法と比較し、構造物の耐久性やインフラ機能の確保が懸念。
対応策として、数年ごとに1回のところを、1年に1回以上の非破壊試験による定期点検で強度測定等を行い、要求性能を満たせていないものは修繕を行う。
(4)技術者としての倫理、社会の持続性の観点の要点・留意点
➀技術者としての倫理の観点
提案した業務では、私は蒸気養生や防錆処理を提案し、長寿命化によってLCC低減して、結果として炭素量を減らす。これは技術士倫理綱領の「1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する。」に相当する。に相当する。
②社会の持続可能性の観点
提案した業務では、私はポーラスコンクリートを提案し、空隙量により透水性能を高めて植栽機能を向上して、緑化に貢献する。これはSDGsの№15「陸の豊かさを守ろう」に相当する。
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 鋼コン 専門事項:コンクリート構造 完成答案形式 添削回数4 2023.6.5
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(1)CO2排出量削減及び吸収量増加のための課題
①低炭素まちづくりの推進
都市全体で低炭素化する観点から、CO2排出量を削減する都市構造の構築を推進する。そのためには、公共施設へ太陽光発電など再生可能エネルギーの普及,建設発生土を盛土・埋立て,低炭素型コンクリートを建物の基礎躯体へ活用があげられる。
②ICT施工の推進
建設のプロセスを低炭素化する観点から、ICT施工の導入で、3次元データを活用する等作業効率を向上し、作業時間を短縮する。ICT施工機械の導入により、機械のCO2排出量が削減され、低炭素社会に貢献する。
③副産物を活用したコンクリート製品の促進
建設材料の観点から、セメント一部を高炉スラグ微粉末や特殊混和材γC2Sで置換したコンクリートの製作を促進する。
高炉スラグ微粉末コンクリートでは、セメント使用量が40%程度削減して、CO2排出量を減らす。
γC2Sコンクリートは、γC2Sを結合材(石炭灰+高炉スラフ微粉末+γC2S+早強セメント)の約2割使用している。CO2を吸収し、硬化時にCO2を固定化して、CO2排出量を削減する。
(2)低炭素まちづくりの推進
①緑化コンクリートの活用による都市緑化
都市公園等の駐車場へ緑化コンクリートを活用し緑地を確保する。また、擁壁,側溝やブロック等の強度が小さいプレキャスト製品で砕石ポーラスコンクリートを植生基盤材料で活用してCO2を削減する。
砕石ポーラスコンクリートにすることで、かさ容積法で配合設計する。ペースト量を減らし普通コンクリートより空隙量を多くして強度も確保する。
②再生可能エネルギーの利用
地域再生可能エネルギーを促進して、都市のコンパクト化を実現する。そのためには、固定価格取制度を利用して、公共施設へ太陽光発電など再生可能エネルギーの導入・普及させる。太陽光パネルの設置費用を抑えて電力消費量を減らすことで、太陽光発電を普及させCO2排出量を削減する。
③建設廃棄物の削減
建設発生土を盛土や埋め立てすることで、建設廃棄物を削減して、CO2排出量を減らす。また、プレキャスト杭の採用により、場所うちコンクリート杭に比べ、残コン発生量が少ないうえ、建設発生土及び建設汚泥の発生を抑制する。建設廃棄物を上記のように活用して、多くの構造物のCO2排出量を削減し、グリーンインフラを構築する。
④低炭素コンクリート製品の活用
コンクリート構造物を低炭素型コンクリート製品で構築することで、低炭素街づくりに貢献する。
低炭素型コンクリートは、中性化の懸念から無筋コンクリートで使用されることが多いため、基礎躯体やブロック製品,側溝,擁壁などのプレキャスト製品に利用してCO2を遮断する。
また、エポキシ樹脂鉄筋の使用、亜硝酸リチウム入りの撥水剤を塗布してCO2侵入を遮断したうえで、負価の亜硝酸イオンにより、不働態皮膜を再生し、劣化防止して長期間構造物を供用する。
(3)新たに生じるうるリスクとそれへの対応策
リスクとして、セメントの水和反応が促進されず、中性化速度が大きくなるため、強度発現されず、構造物の耐久性確保が懸念される。
対応策は、数年に1回のところを、1年に1回以上の非破壊試験による定期点検で強度や中性化深さ等を測定し、要求性能を満たせていないものは修繕を行う。
(4)技術者倫理、社会の持続性
➀技術者としての倫理の観点
製品製作するときに蒸気養生や防錆処理を提案し、長寿命化によってLCCを低減して、結果として炭素量を減らす。これは技術士倫理綱領の「1」に相当する。
②社会の持続可能性の観点
コンクリートの光合成において、ポーラスコンクリートを提案し、空隙量により透水性能を高めて植栽機能を向上して、緑化に貢献する。これはSDGsの№15「陸の豊かさを守ろう」に相当する。
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解答者 Ⅰ-1 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数0 2023.5.28
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1.多面的な課題
(1)デジタル化によるリアルタイムな工程改善
スマート化の観点から、ICTにより現場の作業状況を分析し、行動履歴、機械稼働状況等のデータの活用し、工事全体の生産性向上を図る。また、IOTやデジタルツイン等を活用し、建設現場のリアルタイムな工程改善により、機械稼働時間を抑制してCO2排出抑制を図る。
(2)重機の電動化・ハイブリッド化
環境性能向上の観点から、ディーゼルエンジンなどの内燃機関からハイブリッド、電動化、燃料電池など、よりクリーンな動力源へ移行してCO2の排出を抑制する。大容量化・急速充電の実現、移動可能な電力供給技術の開発と環境整備を図る。
(3)CO2吸収材料/低炭素材料の活用
カーボンリサイクルの観点から、低炭素型コンクリートの活用を図る。低炭素型コンクリートは、高炉スラグ微粉末の混合割合が増えるほど粘り気が強くなる。また、セメント量が少ないため、中性化速度が速く鉄筋の腐食が生じやすい。よって、地下構造物等での活用を図る。
2.課題「リアルタイムな工程改善」の解決策
(1)工程監視による生産性向上
作業ごとに把握している建機などの稼働状況や行動履歴等のデータを、現場全体で活用・分析する。そして、デジタルツインやBIM/CIM等により工事進捗状況をリアルタイムで可視化して、現場責任者がボトルネック部を特定可能とする。ボトルネック部に人員を集中的投入して、工事全体の施工計画を適時最適化する。これにより、CO2排出を抑制する。
(2)コンクリート打設システムによる生産性向上
自動化システムにより、施工計画から骨材製造、施工・品質管理までの一連作業を集中監視室で制御する。骨材の製造状況と施工機械の位置情報を可視化し、最適化アルゴリズムを活用してコンクリートの打設を効率化する。これにより、CO2排出を抑制する。
(3)ICT 杭打設管理システムによる生産性向上
トータルステーションによる計測情報を基に、杭の打設状況を3Dモデルで車載モニター上に表示する。オペレータは、打設杭の位置や傾斜、高さを360度方向から俯瞰的に確認でき、施工性が向上する。
杭の1打撃ごとの貫入量やリバウンド量をリアルタイムで計測し、現場で採用された支持力算定式を用いて推定支持力を自動算定する。これにより、待ち時間の短縮をする。
可視化により、関係者間との情報共有がリアルタイムで可能となり、余分な時間と労力が削減可能となる。これにより、CO2排出抑制が可能となる。
3. 波及効果と懸念事項
(1)波及効果
スマート化による建設機械の稼働時間を短縮することで残業時間を抑制でき、新3Kの実現、ワークバランスの実現が可能となる。これにより、建設業界の働き方が改善できると伴に、ICTを活用する事で性別や人種の壁を壊すことができ、建設業界への入職者数が増える。
(2)懸念事項
ICT等を活用して効率化を求めたことにより、技術者の能力低下や現場でトラブルが発生した際の適応能力、コンピテンシーの低下が懸念される。効率化により得た時間を活用して、OJTやOFF-JTによる社内外研修による能力向上を図る。
4.技術者倫理と社会持続性
技術者倫理を高めるため、効率化のみならず接触防止安全装等を活用して施工時の安全性も向上させる。これにより、現場作業の安全性が向上し、事故による工事の中断を防止できる。これは、技術士倫理綱領の第一項の「安全・健康・福利の優先」に相当する。
社会持続性を高めるため、ICT等を活用して業務を効率化するには、データサイエンティストなどのIT技術者が必要となる。テレワークを導入することにより、育児や介護中の社員でも在宅勤務を可能とし、労働環境や給料、社会保障を確保する。これは、SDGs目標8の「働きがいも経済成長も」に相当する。
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解答者 建設部門 河川砂防 専門:砂防 再現答案(必須A) 2022.7.28
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1.DX推進への課題
(1) 人材の観点より担い手不足による生産性向上
1995年をピークに生産年齢人口が減少しており、今後、65歳以上のベテラン技術者の大量離職により、継続的な担い手不足が予想される。したがって、少子高齢化により、効率的な整備、維持管理の担い手不足は今後も加速していくことから、新技術を活用したDX推進により、生産性の向上を図るべき。
(2) 国民理解の観点よりデジタル化の浸透・定着
新型コロナウイルス拡大により、ICT技術を活用したテレワークが浸透してきているが、諸外国に比べデジタル化が遅れているのが現状である。働き方へのデジタル化定着は、デジタル社会のニーズに対応するために重要であることから、リモートワーク等、柔軟な働き方を選択できるシステム構築を図るべき。
(3) 安全・安心な生活の観点よりセキュリティ対策
DXが進展した場合、インフラに設置されたセンサー、監視カメラ等のリアルタイム情報がネットワーク上に流通することになるため、常にサイバー攻撃のリスクがある。サイバー攻撃によりシステムがダウンした場合、安全・安心で豊かな生活に影響を及ぼすため、VPN接続やデータの真正性確保、ゼロトラストモデルの考え方により、セキュリティ対策の強化をすべきである。
2.最も重要と考える課題に対する複数の解決策
担い手不足による生産性向上は、建設部門のみならず、我が国全体に関わる課題であることから、最も重要な課題であると考え、以下に解決策を述べる。
(1) iConstructionの推進
建設分野において、GNSSを搭載したICT対応の重機を用いることで、クアッドアクセル等、自動化・自律化が可能となることから、生産性向上に向けた解決策である。ウェアラブルカメラ、センサーを活用することで遠隔臨場が可能となり、立地の辺陬性や危険性などの悪条件な現場でも意思疎通が可能となる。また 工場製作であるコンクリートのプレキャスト化を進めることで、品質の確保が可能となり、規格の標準化に繋がる。繁忙期と閑散期のバランスを整えることで工期の平準化を図ることも、解決策である。
(2) BIM/CIMの活用
調査、計画、検討、設計、施工、維持管理の建設プロセスにおいて、3次元データを横断的に連携・活用することが解決策である。具体には、調査プロセスにおいて、3次元測量の実施、基盤地図情報、LPデータ、SAR衛星等の高度な地形データを用いる。設計プロセスにおいて、階層ごとに属性情報を付与し、施工、維持管理の精度向上、効率化を図る。
(3) インフラメンテナンスの効率化
■これは目標↑です。できればここはDXの解決策を書かれた方が良いでしょう。
高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの老朽化が加速度的に増加し、国民の安全・安心で豊かな生活が確保されていないため、事後保全型の維持管理から予防保全型の維持管理へと転換した、効率的なインフラメンテナンスが解決策である。具体には、ドローン等のUAVを活用した効率的な点検・診断や、IoT、AIを活用した高度な劣化予測を行うことで、ストック効果の高い施設に予算の選択と集中を行う。3.波及効果と懸念事項への対応策
DX進展により社会資本の効率的な整備、維持管理が可能となり、ハード対策の強化に繋がることから、国土強靭化が波及効果である。
懸念事項は、ハード整備が進むことによって、現在のソフト対策との連携にズレが生じる可能性があることである。対応策は、3D都市モデルを活用し、プラットフォーム化された共通のシステムを構築することである。
4.業務を遂行するに当たり、必要となる要件・留意点
技術者としての倫理から、公衆の安全、健康、財産等の利益を最優先に確保する。留意点は、適応する法令、基準に適合され、現在の技術水準を確保すること。
■やや消極的な↑印象を与えかねません。もっと積極的に問2の業務を効率化する提案が良いでしょう。
社会の持続性の観点から、社会資本の整備、維持管理を行うことによる環境への影響を出来る限り小さくするよう努める。留意点は、立地、土地利用にあたって、生態系の構成に影響がないかを事前に調査し、環境の安定性と持続可能性を保つ方策を選定する。
■ここは心構えを書くのではなく問2の業務、すなわちGNSS・ICT対応の重機、BIM/CIM、UAVの効率化について言及すると良かったです。生態系はあまり関連性ないように感じます。
問題 建設部門 土質基礎 Ⅱ-1-1
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鋼は加熱と冷却による熱処理により、目的となる性質を得ることができる。代表的な熱処理である「焼入れ」「焼戻し」に関して概要を述べよ。また、「加工熱処理技術」について変態温度との関係を用いて説明せよ。
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解答者 建設部門 土質基礎 専門事項:鍛造 簡易答案 添削回数3 2023/1/15
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1.鋼の代表的な熱処理
(1)焼入れ:鋼の硬さや強度を上げるためオーステナイトにした後、急冷することでフェライトになり切れず、Cが過飽和に固溶する硬いマルテンサイトにする操作。
(2)焼戻し:焼入れ後の鋼は硬くもろいため、再加熱してCを析出させ、フェライトへの変態を進行させることで硬さを減じ、靭性をもたせる操作。
2.加工熱処理技術
塑性加工と熱処理を組み合わせて、強靭性を得る技術である。
(1) 高強度・高靭性を得る制御圧延
950℃以上で粗圧延、950℃~Ar3点および750℃近傍で仕上げ圧延することで結晶微細化を図り、その後加速冷却する操作。
(2) 超強力鋼を得るオースフォーミング
オーステナイトから焼入れる途中の600℃~880℃の準安定オーステナイトで加工し、焼入れすることでマルテンサイト変態を起こさせる操作。
(3) 高硬さを得るアイソフォーミング
600℃~350℃のパーライト、ベーナイト変態中に加工し、非金属介在物の球状化を促進する操作。
(4) 加工変形部分の強度を高める加工誘起変態
900℃以上に加熱後、急冷して残留オーステナイトを残存させ、常温加工することで残留オーステナイトをマルテンサイトに変える操作。
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解答者 建設部門 土質基礎 専門事項:鍛造 完成答案形式 添削回数0 2023/1/21
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1.鋼の代表的な熱処理
(1)焼入れ:鋼の硬さや強度を上げるためオーステナイト状態にした後、急冷することでフェライトになり切れず、Cが過飽和に固溶するマルテンサイト変態により硬いマルテンサイト組織を得る。
(2)焼戻し:焼入れ後の鋼はもろい状態のため、再加熱してCを析出させ、フェライト変態を進行させることで硬さを減じ、靭性をもたせる。
2.加工熱処理技術
塑性加工と熱処理を組み合わせて、強靭性を得る技術である。
(1)高強度・高靭性を得る制御圧延:950℃以上で粗圧延、950℃~Ar3点および750℃近傍で仕上げ圧延することで、結晶微細化を図り、その後加速急冷する。
(2)超強力鋼を得るオースフォーミング:オーステナイトから焼入れる途中の880℃~600℃の準安定オーステナイトで加工し、その後焼入れすることでマルテンサイト変態を起こさせる。
(3)高硬さを得るアイソフォーミング:600℃~350℃のパーライト、ベーナイト変態中に加工し、非金属介在物の球状化を促進する。
(4)加工変形部分の強度を高める加工誘起変態:900℃以上に加熱後、急冷して残留オーステナイトを残存させ、常温加工することで、その加工エネルギーで残留オーステナイトをマルテンサイトに変える。
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問題 建設部門 土質基礎 Ⅱ-2-1
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鋳造で精密な部品を作る工場において、今までは鋳造により製造していた部品が形状の精密化・複雑化に伴い、欠陥や鋳込み不足の部分が生じるようになった。
改善策を試みたが十分な成果が得られなかった。そこで、新技術導入を検討することになりあなたはそのチームの責任者をまかされた。
(1) 新技術導入に当たって調査検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順を列記し、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 土質基礎 専門事項:鍛造 簡易答案 添削回数5 2023/3/3
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1. 新技術導入に当たって調査、検討すべき事項
1)ロストワックス精密鋳造法による複雑な中空形状部品の鋳造には中子を組付けた鋳型を用いるため、中子の動きや鋳型と中子の膨張、収縮の違いによる寸法精度や表面粗さを調査し、高寸法精度や高表面品質を確立する方法について検討する。
2)溶融金属へのガスの巻込みによるガス巣や凝固収縮による引け巣を調査し、ガス欠陥や引け巣を除去する方法について検討する。
3)溶融金属の抜熱や押し湯不足状態を調査し、鋳込み不足の除去方法について検討する。
2.業務を進める手順、留意工夫を要する点
1)人口砂調整:粒径50~600μmおよび積層ピッチ0.25~0.3mm、バインダーにフラン樹脂2.0%或いはフェノール樹脂3.5%添加する。
2)砂型造形シュミレーション:高寸法精度、高表面品質、良好な通気度、高強度の得られる条件を絞り込む。
3)複雑な砂型造形:バインダージェット方式の3Dプリンターで作製することで高寸法精度や高表面品質を得る。溶融金属の抜熱を防ぐため砂型の砂には断熱性の良いセラミック人口砂を用いる。
4)低圧鋳造装置による差圧鋳造:ガス欠陥や引け巣、押し湯不足、鋳込み不足を無くすため、鋳型室に挿入した砂型を低圧鋳造機に設置し、鋳型室には溶融金属の抜熱を防ぐため高温の加圧ガスで砂型を予熱し、低圧鋳造機の保持室には常温の加圧ガスで差圧を加えることにより溶湯の流れが乱れることなくスムーズに隅々まで圧入する。
3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
砂型の生産性を向上するため人工砂調達担当者に低膨張、高耐熱性の無アルカリガラスを人口砂にコーティングすることでリサイクルを可能とし、砂型造形シュミレーション結果に基づく造形を低コスト化するように指導する。一方、砂型の通気性や強度の低下が考えられるため鋳造担当者には低圧鋳造機の保持室内に製品と同体積の給湯室を設置し、給湯室の溶融金属をガス加圧する差圧鋳造により制御を精密化するように指導する。以上の方法で品質確保しながら生産性を向上するよう関係者らを取りまとめる。
問題 建設部門 鋼コン Ⅱ-1-1
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鋼構造物の腐食を防止する方法の代表例として塗装、溶融亜鉛めっき、金属溶射を用いた鋼材表面の被覆や、耐候性鋼材の使用が挙げられる。これらの方法から2つを選択し、その防食機構を概説するとともに、その防食機能が劣化した場合の対処方法とその留意点を説明せよ。ただし、鋼素材に有害な断面減少は生じていない段階を対象とする。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:鋼構造物 簡易答案 2023/4/24
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1.塗装
(1)防食機構
・ち密な膜が、鋼材への環境因子(水、酸素、塩分)の透過を遮断
・腐食因子(酸素、水)が塗膜下に進入しても鋼材より電極電位の低い金属顔料が鋼材よりも先に化学的に反応し、腐食を不活性化
(2)劣化した場合の対処と留意点
・再塗装時、鋼材面にさびが残存すると、短期間で塗膜内の腐食が進行し、ふくれ、われ、など起こすため素地調整にてさびを完全に除去
・気温5℃以下で、極端に塗料粘度が増し作業性が悪くなり、稀釈剤の量が増えることで薄膜になり防食効果が期待できないため作業しない
2.溶融亜鉛めっき
(1)防食機構
・表面のクロムが酸化し不働態皮膜を形成、ち密な被膜が劣化因子の侵入を遮断
・亜鉛などイオン化傾向が大きい金属が先にイオン化し鋼材のイオン化を防止
(2)劣化した場合の対処と留意点
・めっき被膜の電気化学的保護作用と塗料の防錆により鋼材を保護するため、同程度の耐食性を有する補修材を使用
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問題 建設部門 鋼コン Ⅱ-1-3
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JISに規定されている高炉セメントB種あるいはフライアッシュセメントB種を使用したコンクリートについて、共通する特徴と異なる特徴をそれぞれ2つ挙げて説明せよ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物 完成答案形式 添削履歴7 2022.11.26
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1.共通する特徴
①長期強度が大きい
高炉セメントは、潜在水硬性によるケイ酸カルシウム水和物の生成でコンクリート組織が密実のため、長期強度が大きい。同様に、フライアッシュセメントも、ポゾラン反応でケイ酸カルシウム水和物が生成されるため長期強度が大きい。
②中性化しやすい
高炉セメントは、高炉スラグを加えた分だけセメント量が減少し、それに伴って水酸化カルシウムも減少するため、中性化しやすい。同様に、フライアッシュセメントもフライアッシュを加えた分だけセメント量が減少し、結果的に、中性化しやすくなる。
2.異なる特徴
①ワーカビリティ
高炉スラグは角ばった形状の粒子であり、セメントは標準的な流動性である。一方、フライアッシュは微細な球形であるため、セメントとしての流動性が良くなる。
②乾燥収縮ひび割れ抑制効果
高炉セメントの乾燥収縮量は、標準的である。一方、フライアッシュセメントは2.①の通り、流動性が良くなる分、単位水量を低減できるため、乾燥収縮量が小さくなり、ひび割れ抑制に効果的である。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物 再現答案 2022.11.--
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1.共通する特徴
1-1.アルカリシリカ反応抑制効果
高炉セメントB種(以下BB)とフライアッシュセメントB種(以下FB)は、いずれもアルカリシリカ反応抑制効果がある。BBは、アルカリ刺激による潜在水硬の過程で、FBはポゾラン反応の過程で水酸化カルシウム等のアルカリ成分を消費する。いずれも新設のASR対策に用いられる。
■共通する特徴の原理、理由だけを言及すればよいでしょう。
1-2.環境負荷軽減効果
高炉スラグは銑鉄時の副産物で、フライアッシュは火力発電時の副産物である。これをセメントと置き換えることで、産業副産物の有効利用に繋がるとともに、製造過程で大量にCO2を排出するセメントを節減できる。
■これはリサイクル材の前提事項であり、当然のことでもあります。できたらそのほかの共通点、長期強度の増進、水和熱による温度上昇の抑制、水密性の向上などを上げると知見の広さをアピールできて、なおよいでしょう。
2.異なる特徴
2-1.品質の安定性
フライアッシュは未燃炭素が含まれる場合があり、品質にバラツキがある。未燃炭素はAE剤を吸着し、エントレインドエアの起泡を阻害する。対策としてFB用AE剤を使用する。BBは、品質が安定しており橋台や橋脚などの鉛直部材の標準材料として使用している。
2-2.水和熱低減効果
FBは水和熱低減効果があるため、マスコンクリートや高強度コンクリート等の温度ひび割れ抑制のために使われる。BBは水和熱が高くなるという報告もある。
■このような↑例外的な要因より、もっと汎用的に言える相違点を挙げた方が良いでしょう。
違う点は例えばこのような解答があり得ます。
l 高炉セメントは潜在水硬性があって、ポルトランドセメントなど刺激剤によって、難溶性の水和物に変わる。
l フライアッシュは、ポゾラン反応性。球形であるため流動性がよく、単位水量を減らせる。
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問題 建設部門 鋼コン Ⅱ-1-4
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スランプ値で管理し締固めを要するコンクリートを使用した鉄筋コンクリート構造物の打込み、締固めの段階での充填不良の発生原因について1つ示し詳述せよ。その発生を防ぐために、設計・配合・施工で留意すべき事項を複数示し、それぞれに対し留意する理由と対策を述べよ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物補修 簡易答案 添削履歴7 2023.3.20
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1.充填不良の発生原因:コールドジョイント
旧コンクリートがセメントの水和反応で硬化して発熱した後に冷却する。その旧コンクリートの上に新コンクリートを打継いだ時、新コンクリートは熱膨張するため、旧コンクリート面と新コンクリート面で逆方向の移動が発生して、境目にコンクリートの不連続層が生じる。コンクリートが冷えた後に発生するためこの名がついている。
2.留意事項
1)旧コンクリートの硬化時間を遅らせることで、新旧同時に硬化させる。
理由:遅延材を使用して硬化時間を遅らせる。
対策:オキシカルボン酸塩を主成分とした遅延系の混和剤を使用し、硬化時間を遅らせる。
2)レイタンスをなくして、境界層を無くす。
理由:ブリーディングによる自由水を減らすことでレイタンスをなくして新旧コンクリートを連続にできる。
対策:AE減水剤などセメント粒子に対する分散作用が活発になることで10%以上の減水効果がある混和剤を使用して自由水を減らす。
3)コンクリートの打設間隔を短縮する
理由: 新旧コンクリート打設間隔を短縮することにより、上層と下層のコンクリートを連続にできるから。
対策:型枠設計で打継ぎ部を一体型として連続に打設し、打設施工管理ではSF(スピードフォーム)工法で打設をスピード化する。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物維持管理 再現答案(評価A) 2023.3.23
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(1)充填不良の発生原因
発生原因として、流動性の低下が考えられる。理由として、コンクリート温度が高いと水和反応が活発となることや、練混ぜから打設までの時間が長く、水分の蒸発がされてしまう。
これ↑はコンクリートの一般的現象です
これらにより、コンクリートの流動性が低下し、充填不良が発生することとなる。
■スランプ値で管理しているのですから、一応の流動性はあるものと推定されます。しかし、流動性はあるにせよ、ばらつきがあったりして、ジャンカや豆板ができやすいかもしれません。それが答えと思われます。流動性低下では直接的すぎるし、「設計」の留意点としてふさわしくないです。
(2) 設計・配合・施工で留意すべき事項
・練混ぜから打設までの所要時間を最小限にすること。
・スランプ保持機能が高い、高性能AE減水剤を使用し、
初期の水和反応を遅らせること。
・アジテーター車の待機時間を無くすよう調整し、待
機が生じてしまう場合は、遮熱性ドラムカバーの設置や仮設上屋の設置を検討する。
・打込み面にコンクリートの水分が吸収されないよう、
あらかじめ湿潤状態にすること。
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問題 建設部門 鋼コン Ⅱ-2-1
構造物の供用時期が決定している場合、計画、設計、製作、施工等の各段階における技術的工夫による工期短縮が強く求められることがある。技術的工夫とは、工期短縮を目的として既に設計された構造物の構造変更による工夫、製作・施工における工夫あるいはそれらの組合せによる工夫などである。このような状況において、あなたが既に計画された構造物に対して工期短縮を検討する技術者として業務を行うに当たり、下記の内容について記述せよ。ただし、技術的工夫がなく人的資源の追加のみによる方法は除く。
(1)対象とする構造物と工期短縮方法を設定し、工期短縮を実現するために調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務の手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物 完成答案形式 添削履歴7 2022.12.12
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対象は、最大支間長100mのPC連続箱桁橋(跨道橋)とし、工期短縮方法は、プレキャスト化を採用する。
1.調査、検討すべき事項
(1)搬入ルートの調査
主桁構造を選定するため、製作工場から現場までの搬入ルートを調査し、搬入、連結の回数を少なくできる主桁の断面形状や長さ、本数を検討する。
(2)ヤードの調査
機材配置を計画するため、作業ヤードを調査し、一括架設に必要な地組ヤードや大型クレーンの配置スペースを検討する。
(3)工事工程の検討
コンカレントエンジニアリングを実施するために、同時進行可能な工程を調査し、ヤードの取り合いや作業の前後関係を踏まえて、施工順序を検討する。
2.業務手順
業務手順は、①構造検討、②施工計画、③施工である。
(1)構造検討
外ケーブルにはプレファブケーブルの採用し、現場グラウト作業を省略する。セメント材料(アルカリ環境)での端部処理は発錆の可能性があるため、樹脂系材料を使用する。
(2)施工計画
カンチレバー工法とプレキャストセグメント工法を組み合わせ、コンクリート場所打ちに要する工期を短縮する。さらに、場所打ち施工箇所数を減らすため、中央閉合部の幅を最大鉄筋間隔(300mm程度)まで短くし、無筋の場所打ち調整目地に変更する。
(3)施工
上部工のクリープ・乾燥収縮により、下部工に常時水平力が作用するのを避けるため、ポストスライド工法を採用する。支承変位量をポストスライド量へ正確に反映させる必要があるため、各下部工に変位計を設置し、計算値との差を補正する。
3.関係者との調整方策
私は発注者に、中央閉合にカンチレバーを使用することで、通常、支保工の解体に要する作業を無くし、工期短縮する方法を提案した。しかし、この提案を実現するには、施工ステップ変更による応力バランスの変化に対応できるようPCケーブル本数を増加させる必要があり、コスト増が懸念された。私は、工期短縮効果だけでなく、支保工関連作業による桁下道路への落下物や作業員の墜落事故を防止する安全性の向上を説明し、理解を得た。私はプロジェクトマネージャーとして、業務を調整し、効率的、効果的なものに導いた。
■下記は他答案に転用できる解答例です。
3.調整方策
側径間下にある道路の管理者から上部工架設の際の通行止め期間を短縮したい要望があった。
私は、側径間の分割先行施工を提案した。桁端部をブラケット支保工により張出し架設と並行して先行施工する。私は、発注者には、支保工変更によるコスト増より、工期短縮によるコスト減の方が大きいことを説明し、道路管理者の要望通り、通行止め期間の短縮を実現した。この提案により、私はプロジェクトマネージャーとして、両関係者間を調整し、業務を効率的、効果的なものに導いた。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物 再現答案(評価A) 2022.11.--
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1.対象とする構造物と調査、検討すべき事項
1-1.対象とする構造物と工期短縮方法
対象とする構造物は、道路を跨ぐ大型ボックスカルバート(内空高5m、幅7m)である。工期短縮方法は現場打ちコンクリートをプレキャストコンクリート(以下PCa)へ変更することとする。
1-2.現地および周辺環境の調査
PCa部材の搬入路、PCa部材の揚重機規格を決めるため、製造工場から現場までの道路状況(幅員、荷重制限、建築限界等)と使用できる施工ヤードを調査する。また、現場打ちに比べ重機が大型化するため、地耐力をCBR試験等で調査する。
■出来たらPCaの検討に言及した方が良いでしょう。CBR試験は施工(土質基礎)に関する周辺事項です。
1-3.PCa部材1ブロックあたりの質量の検討
運搬路、使用できる重機の規格に応じたPCa部材1ブロックあたりの質量を検討する。1ブロックが小さくなると、接合部が増え工期短縮効果が低くなる。そこで、高強度コンクリートを使用し薄肉化により1ブロックを大きくすることを検討する。
1-4.接合方法の検討
性能を確保するための接合方法を検討する。重ね継手で接合すると、接合部が大きくなり、水分等の劣化因子が浸入し劣化するリスクが高くなる。そこで、スリーブ等の機械式継手使用を検討する。
2.業務の手順とそれぞれの項目ごとの留意点、工夫点
2-1.手順(1)PCa部材の構造設計
既に設計された現場打ちコンクリートと同程度の性能を確保できるようにPCa部材を設計する。その際、接合部の耐震性に留意する。耐震性を確保する工夫として一断面全数継手の位置が塑性ヒンジ領域にならないようにする。
■これだけではやや不完全↑なので、留意点(継手位置)を明確に示した方が良いでしょう。
2-2.手順(2)施工計画
運搬時、吊り上げ時のPCa部材の損傷に留意する。工夫として、運搬や吊り上げに必要な初期強度等の情報を施工計画書に記載しておく。
2-3.手順(3)PCa部材の製造・架設
PCa部材の寸法、架設時の精度に留意する。接合面にズレが生じると局所応力が生じひび割れ等の原因となる。これを防止する工夫として、製造前に3次元モデルを作成し、それを基に製造・架設を行う。
■何をどう検討して改善するか、手順の方法論を示すと実効性が伝わってきて評価されます。
3.関係者との調整方策
関係機関との協議成立待ちにより工事の遅滞を防止するため、事前に道路管理者へPCa部材運搬の特殊車両申請を行う。
工事中の事故を防止するため、PCa部材の重心位置をマーキングする。これにより、吊り上げ時の傾き等による事故を防ぐ。また、経験の少ない技能者に対してはPCa部材の施工を動画等でわかりやすく説明する。
■ここはできたら施工や搬送の事項ではなく、問2に書いた構造設計業務について述べるのが良いでしょう。
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問題 建設部門 鋼コン Ⅱ-2-2
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鋼またはコンクリート構造物の調査は、突発的な作用に対して行う場合があり、火災や車両の衝突が挙げられる。このような突発的な作用による変状を受けた構造物について、部材の再利用を想定した調査を行うことになった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 対象とする構造物とそこに起こる突発的な作用(設計で考慮している地震等は除く)を上げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物補修 簡易答案 添削履歴11 2023.4.4
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(1)火災を受けたコンクリート構造物の調査、検討事項
①変色箇所のコア強度を打撃試験で調査し、断面修復・繊維補強範囲を検討する。
②加熱により失われたアルカリ度を調査し、再アルカリ化工法の範囲を検討する。
③建設時の耐力を調査し、必要な断面修復材・繊維補強材量を検討する。
(2)手順と留意点
①変色箇所の打撃試験
強度試験結果から、断面修復・繊維補強範囲を決定。
②再アルカリ化工法
アルカリ溶液入りの仮設陽極材と1-2週間の通電可能な電源装置の設置が必要である。
③断面修復材の選定
不働態皮膜が再生可能とするため、中性化抑制可能な亜硝酸リチウム入りポリマーセメントモルタルを使用する。
④鉄筋、補強材の設計
軽量化のため、アラミド繊維を使用し、連続繊維シート補強工法で施工する。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
発注者へ材料・施工法改善によるコスト・品質トレードオフ解決を申し入れる。設計者に亜硝酸イオンで中性化抑制できるよう断面修復材量を設定する。また,アラミド繊維で建設時の耐力を下回らずに補強できるよう指導する。トータルの品質向上につながり、LCCを低減できることを発注者に提案する。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物補修 完成答案形式 添削履歴2 2023.4.8
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(1) 火災によるコンクリート構造物の調査、検討事項
①断面修復・繊維補強範囲
変色箇所のコア強度を打撃試験で調査し、補修・補強範囲を検討する。
②再アルカリ化工法の範囲
加熱により失われたアルカリ度を調査し、工法適用範囲を検討する。
③必要な断面修復材・繊維補強材量
建設時の耐力を調査し、必要な分量を検討する。
(2)手順と留意点
①変色箇所の打撃試験
変色箇所のコア強度試験結果から、建設時の耐力より30-50%低下したものは断面修復のみとし、50%以上低下の箇所は断面修復のうえで繊維補強する。エポキシ樹脂系プライマーとアラミド繊維シートを接着して補強する。そこで、強度低下が大きい箇所を把握し、補修・補強範囲を決定する。
②再アルカリ化工法
pH値が低い箇所のコンクリート内部にアルカリ溶液を電気泳動させることでアルカリイオンがコンクリート内部にいきわたり、(コンクリートの)失われたアルカリ性を回復する。
外部の仮設陽極材からコンクリート内部の鋼材に向けて防食電流を流す。防食電流を流した後は炭酸カリウムなどがコンクリート内部から出ないよう表面被覆する。PC構造物の場合は、PC鋼材の水素脆化が懸念されるため、過防食とならないよう通電量を管理が必要である。また、アルカリシリカ反応が促進する可能性があるので、浸透させる溶液量に留意する。
③断面修復材の選定
不働態皮膜を形成し、中性化抑制可能な亜硝酸リチウム入りポリマーセメントモルタルを使用する。負価の亜硝酸イオン(2NO2 -)が鉄筋表面で、酸化鉄を還元し鉄筋の不働態皮膜を再生する。
④鉄筋、補強材の設計
軽量のアラミド繊維を使用した連続繊維シート補強工法で施工する。提案工法ではエポキシ樹脂系の含浸材を用いてコンクリートの接着強度を大きくする。この補強で長期間要求性能を維持することで品質向上につながり、補修回数も減りLCCが低減できる。
(3)関係者との調整方策
発注者へ材料・施工法改善によるコストと品質のトレードオフ解決を申し入れる。設計者に亜硝酸リチウムで中性化抑制や繊維補強できるよう断面修復材とアラミド繊維の量と施工範囲を設定する。発注者へは、この工法が長寿命化により品質向上し、コストメリットがあることをLCCシミュレーションで説明する。こうして、品質、コストともに解決して関係者を取りまとめる。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物維持管理 再現答案(評価A) 2023.3.2
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(1)対象構造物と突発的な作用、調査・検討事項
①対象構造物は高速道路に位置するRCカルバートボックスであり、車両火災による頂版損傷を挙げる。
②構造物条件や火災状況の確認を目的に、設計図書・施工記録・維持管理記録、CCTV映像記録を調査する。
③火災影響の確認を目的に、目視・打音による外観調査、コアによる圧縮強度・静弾性係数、コンクリートの色調や中性化試験、UVスペクトル解析を行う。
④調査・補強工法検討を目的に、対象橋梁の交通規制
形態・可能時間やボックス上道路を含む周辺状況に異常が生じてないかを調査する。
⑤火災による影響や発注者・関係者などの要望を加味
し、コストや工期を意識した補修対策も検討する。さらに、経年劣化がみられる場合は、そこへの予防保全等を含めた将来的な維持管理も検討する。
(2) 業務手順と留意点・工夫点
①机上・現場調査
上記②~④の調査を行う。留意点は、火災による影響や範囲が分かるよう健全部も含め、試料採取箇所を選定することである。工夫点は、構造物への影響を最小限にするために、小径コアを用いり採取後は剥落防止ネットを設置することである。
②構造物の健全性評価
調査結果を基に健全性を評価する。留意点は、火災による影響範囲や深度を的確に把握するため、外観調査と試料採取箇所を重ね合わせて評価することである。
③部材の再利用を考えた補修計画
健全性評価より、大規模な損傷は生じていないこととする。部材の再利用を考慮し、対策は主に断面修復工法となる。留意点は、塩化物イオンが多く混入されていた場合は、母材コンクリートと断面修復の電位差によりマクロセル腐食が生じるため、補修範囲や犠牲陽極の設置を検討する。工夫点は、断面修復部の剥落防止として、アンカーピンを埋め込むことである。
(3) 関係者との調整方策
①発注者
調整方策は、安全で合理的な計画の策定である。具体的には、協力会社と合同現地踏査を行い、各意見を踏まえて手戻りがなく合理性がある調査計画を策定する。また、各作業に関するリスクアセスメントを実施し、安全性を確保した作業ができるよう調整する。
②交通管理者・道路利用者
調整方策は、交通規制時の安全を確保することである。具体的には、現場に即した安全な規制計画を策定し、交通管理者と的確に協議する。また、カルバートボックス部は道路幅員が狭いことも考えられるため、規制外作業が生じないように、作業計画を策定する。
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問題 建設部門 鋼コン Ⅲ-1
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我が国は、老朽化する社会インフラが急速に増えていく時代に直面している。これらの社会インフラに対し効果的に老朽化対策を進めるためには、限られた財源を有効に活用できる方策が重要である。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)社会インフラに対する老朽化対策を立案する場合、膨大な数の構造物に対策の優先順位をつけることが必要となるが、鋼構造及びコンクリートの技術者として、順位を決定するために解決すべき課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門:技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門:技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造 簡易答案 添削履歴15 2023.1.26
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1.優先順位決定のために解決すべき課題
(1)構造物の寿命の評価: 建設年度や補修履歴、劣化進行度等の指標を利用し、総合的に残存性能や将来的な劣化予測の評価に取り組む。
(2)民間、市民の維持管理への寄与: 過疎地等の適切な維持管理が難しい構造物は、地元民間企業、地域住民の維持管理への協力の程度で優先順位を決定する。
(3)公益性の数値化: 地域単位で公益性を維持できる総合的な優先順位評価とするため、地域人口当たりの利用者や農商業での利用率(乗用車以外の利用率等)で公益性の数値化に取り組む。
2.「構造物の寿命の評価」の解決策
(1)残存耐力の評価: 構造物の耐荷性能(塑性率等)を劣化を考慮したパラメータ(鉄筋量は腐食を考慮して低減する等)により数値化する。劣化予測と併せ、寿命を推定する。
(2)供用期間内の経済性: 耐用年数を100年とし、現況から耐用年数が終わるまでの補修費用(断面修復、架け替え等)を算出する。
(3)環境条件の抽出: 暴露環境、使用環境(大型車交通量、交差道路のCO2排出量等)から、今後の構造物の寿命に影響する因子を抽出する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)更新費用の増大: 優先的に維持管理され、度重なる補強追加により、設備が増設(コンクリートの増厚、鋼製ブラケットの追加等)され撤去等費用が増大する。ジャッキや支保工、工具等に配慮した作業空間を確保し、市場性のある安価な工法で撤去等を可能にして増額を抑える。
(2)事故リスク:補修補強は新設より制約条件が厳しく、施工の難易度が高い。寿命まで維持するためのこれらの業務が増加する一方、難易度が高い業務に対応できる人的資源は限られているため、事故が増加する恐れがある。→施工の難易度を低下させる補修補強工法の採用
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造 完成答案形式 添削履歴5 2023.2.27
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1.優先順位決定のために解決すべき課題
(1)構造物の寿命の評価
建設年度や補修履歴、劣化進行度等のデータベース化が進められている。構造解析の観点から、これらの指標を基に、残存性能や劣化予測を計算して構造物の寿命を評価し、寿命の長短による優先順位決定に取り組む。
(2)民間、市民の維持管理への寄与
過疎地等の構造物には、適切な維持管理が難しいものがある。そのような構造物は、地元民間企業、地域住民の維持管理への協力により、継続的に利用する。多様な人材活用の観点から、管理者の手が回らない構造物は、管理者以外の協力の程度で優先順位を決定する。
(3)公益性の数値化
差別化が難しい近傍の同機能を持つ構造物同士の優先順位づけには、地域経済活動の維持の観点からの整理が必要である。具体的には、地域人口当たりの利用者や農商業での利用率(乗用車以外の利用率等)で公益性の数値化に取り組む。
2.「構造物の寿命の評価」の解決策
(1)残存耐力の評価
劣化を考慮したパラメータにより、構造物の耐荷性能(塑性率、応力度等)を数値化する。これには、鉄筋腐食量分を控除した鉄筋量や、はく落分を抵抗断面から控除したコンクリート断面等を用いる。老朽化対策を実施している場合にはそれも耐荷性能に反映する。現況の耐荷性能と劣化予測とを併せ、その構造物の劣化曲線を描き、許容値として設定した耐荷性能に達するまでの年数を推定する。
(2)供用期間内の経済性
構造物の耐用年数を100年とし、LCCを算出する。この年数は平成29年の道路橋示方書に規定されたものであり、これを鋼構造及びコンクリート構造物全体に準用する。LCCにおける老朽化対策は、適用する基準が当初か現行かにより費用が大きく異なる。道路橋示方書では、平成14年には帯鉄筋による横拘束効果が考慮され、平成24年にはL2地震動が追加される等の変遷がみられ、準拠基準によって耐荷性能が変わる。構造物の重要度等から要求性能を設定する。
(3)環境因子からの寿命の推定
点検診断結果に基づいた暴露環境、使用環境(大型車交通量、交差道路のCO2排出量等)の情報から、劣化の進行を予測し、構造物の寿命を算出する。鉄筋腐食等を劣化指標として、外的要因と変状の特徴から、劣化予測モデル(フィックの拡散方程式、√t則等)や維持管理記録データベースを利用して、その進行を予測する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)空間的制約による更新費用の増大
老朽化対策が繰り返された構造物は、コンクリートの増厚、鋼製ブラケットの追加等で設備が増設される。更なる補強、撤去等の際には、仮設工の複雑化や規模の拡大、特殊工法の使用等により、費用が増大する。
対策として、ジャッキアップや支保工設置、工具とそれを扱う動作等で必要となる作業空間を確保する。特殊工法を使用せざるを得ない状況を回避し、一般的な工法の使用で費用の増大を抑制する。
(2)高難易度工事によるヒューマンエラー
構造物の補修補強は新設より制約条件が厳しく、施工の難易度が高い。これは、現場条件が新設時より厳しく、供用しながらの施工で安全性を求められることが多いためである。そのような業務に適切に対応できる人材、経験を保有している企業は限られているため、事故が増加する恐れがある。
対策として、以下のような事故リスクの低減方策がある。
・事前調査の実施と詳細な施工計画書の作成、遵守
・予定外作業に対しスポット作業指示書の作成、遵守
・定点カメラ設置による不安全行動の認識と抑止
・類似現場事例による勉強会の開催
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造 再現答案(評価A) 2022.8.18
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1.対策の優先順位を決定するために解決すべき課題
1-1.メンテナンス技術者の育成・確保
社会インフラの維持管理は、予防保全型を基本として行っている。この方法は劣化が顕著になる前に補修等の対策を行うものである。対策の判断は、技術者が知識と経験に基づき健全度判定、劣化予測等を行い判定している。しかし、高齢化により熟練技術者が大量に離職し、メンテナンス技術者が不足している。
よって、人材の観点から、官民で連携し研修会を開催する等により、メンテナンス技術者を育成・確保することが課題である。
■単なる「メンテナンス」ではありなく、求められている「順位」を決定するため課題を考えましょう。
1-2.構造形式に応じた劣化機構と復旧性の把握
構造物は形式により劣化機構や復旧の安易さが異なる。例えば、パイルベント式橋脚の場合、洗掘による沈下が生じやすい。また、PC橋は腐食によりPC鋼材が破断すると復旧が困難となる。それら復旧が困難となる構造物は対策を優先的に行う必要がある。
よって、モノの観点から、優先順位を合理化するため、構造形式に応じた劣化機構や復旧性を把握することが課題である。
■「構造形式に応じてする」とはどういうことか、やや抽象的です。具体性に表現しましょう。
1-3.健全度把握と劣化予測の高精度化
対策の優先順位は構造形式、施設の重要度を踏まえ、現況の健全度、将来の劣化予測に応じて決めている。この健全度、劣化予測は技術者が定性的に判定しているため、バラツキが生じている。
よって、品質の観点から、優先順位を効果的に決定するため、健全度把握と劣化予測を高精度化することが課題である。
■機構を解明することは確かに不可欠ですが、それだけで順位が決まるものでもありません。課題として有効な答えを示すと良いでしょう。
2.重要と考える課題とその解決策
私は、「1-3.健全度把握と劣化予測の高精度化」を最も重要な課題として挙げ、以下に解決策を示す。
2-1.ICT技術を活用した状態把握
構造物の状態把握にレーザースキャナやひずみセンサーを用いて変位情報を取得する。また、固有周期を計測できるセンサーを構造物に取り付け、固有周期を計測する。構造物は劣化すると、剛性が低下し固有周期が長くなる。これらにより、定量的なデータを用いて健全性を診断することで高精度化を図る。
■膨大な数の物件に優先順位をつける方策としてはやや物足りないです。
2-2.データベースを用いたAI解析
これまでの点検記録、健全度診断結果等をデータベース化し、それらを教師データとして利用し、AI解析を行えるようにする。例えば、現地での点検で変状写真から、健全性、劣化速度を判定できるようにする。AI解析で判定することで技術者によるバラツキを防止できる。
■2-2、2-3共にAI技術はともかく、建設技術の視点から述べた方が無難です。成果を「順位」に結論付ける説明をするとさらに良いでしょう。
2-3.AI解析による残存強度の算出
既設構造物の残存強度をAI解析で算出し、定量的に健全度を判定する。AIで構造物の使用限界状態、終局限界状態を判定できるようにする。また、現状の残存強度を踏まえ、将来の劣化を予測する。AI解析は教師データが多いほど精度が向上する。そこで、国、民間、地方自治体が所有する維持管理データをAPIで連携して集約し、それを教師データとして活用する。
3解決策後に新たに生じうるリスクと対策
3-1.新たに生じうるリスク
AI解析による診断は誤診断の可能性がある。これにより、対策が必要な施設が放置され市民の安全を脅かすリスクがある。また、AI解析に依存多過になることで技術者の技術力が低下し、市民への技術的な説明責任が果たせなくなるリスクがある。
■AIのリスクとなっています。建設・鋼コンとして本質的でない領域(情報工学)に入り込んでおり、建設技術の視点から述べた方が無難です。一方、このようなことはAIの分野では常識であり、提案価値は小さいかもしれません。
3-2.リスクへの対策
リスクへの対策として、AIによる健全性診断、劣化予測と従来の現地での点検、診断を組み合わせることを提案する。熟練技術者と若手技術者がチームを組み、現地でAI解析の妥当性を確認する。併せて、熟練技術者から若手技術者へ技術継承を行う。とくに、応力が集中する塑性ヒンジ領域や混合構造物の接合部などの重要部位は現地確認を念入りに行う。また、off-JTとして技術研習会を開催し、メンテンナンス技術の向上を図る。
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問題 建設部門 鋼コン Ⅲ-2
建設分野では,原材料の調達,製造,施工までを行う多様な工種があり複雑を極める。そこで,i-construction推進の方策の1つである最先端のサプライチェーンマネジメントの導入を掲げ,生産性向上を目指している。このことに関して次の問いに答えよ。
(4) 建設分野において,サプライチェーンマネジメントをより積極的に推進するために,鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多目的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。
(5) 抽出した課題のうち最も重要な課題と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を、専門:技術用語を交えて示せ。
(6) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうる波及効果と懸念事項への専門:技術を踏まえた対応策を示せ。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物補修 簡易答案 添削履歴10 2023.5.3
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(1)サプライチェーンマネジメント推進の課題
①タブレット端末で施工管理状況を共有する。
タブレット端末で施工状況を撮影し、3社(管理・供給・施工会社)がリアルタイムの状況を伝達して、鉄筋・型枠の組立、コンクリート打設の時期を伝え、工程決定を速め、生産性を向上する。
②鉄筋コンクリート構造の形状・強度の規格を標準化する
部材の仕様(サイズや強度)を標準化して、型枠や鉄筋加工を定型化することで、生産を単純化すると共に、互換性や対応性を増してRCに絡む全体の工種で生産性向上させる。
③RC・PC工事の施工時期の設定
4月~6月の閑散期、年度末の繁忙期を解消して建設現場において生産性向上するため、余裕期間制度を活用して、円滑に工事を進めることで、建設工事の生産性を向上する。
(2)コンクリート・鋼材工事規格を標準化する
①「埋設型枠」や「鉄筋のプレハブ化」などの要素技術に関する基準類を整備し,鋼材の機械式鉄筋継手工法や機械式定着鉄筋工法を活用することで、生産性を向上させ、業務の効率化を図る。
②鉄筋では配筋仕様の基準類を整備し,端部曲げ加工寸法が変化(フックの余長が変化)しても鉄筋加工組立を速めることで生産性を向上させる。
➂プレキャスト工法では、橋脚、桁、型枠、鉄筋などのサイズの部材の仕様の基準類を整備することで,多くの種類を作らずにすむので、現場打ち工法に比べ工期を速めることで生産性を向上させる。
(3)波及と懸念事項
規格による標準化は、工事を省力化して、働き方改革に貢献する波及効果がある。また、人員削減にもつながり、技術者は他の業務に注力できる。
懸念事項はとして、計画の早期段階での綿密な設計や施工計画が必要になり、計画面での負担が大きくなり、現場管理に支障をきたす。
鋼コン技術の解決策として、規格に沿って材料、工法などを選定できる、メニュー形式での材料選定、鋼コン施工計画支援ツールを導入する。このメニューは鋼コンの○○などをもとに設定する。
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解答者 建設部門 鋼コン 専門:コン構造物補修 簡易答案 添削履歴2 2023.5.10
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(1)サプライチェーンマネジメント推進の課題
①情報通信機器で施工管理状況を共有する。
現場が全国各地に分散しているので、必要な資材の加工や納入を大量の企業群から生み出すことになる。
そこで、タブレット端末で施工状況を撮影し、情報通信技術を導入する。3社(管理・供給・施工会社)がリアルタイムの状況を伝達して、鉄筋・型枠の組立、コンクリート打設の時期を伝える。お互いが情報を共有し、工程決定を速め、生産性を向上する。
②RC構造の形状・強度の規格を標準化する。
セメントや鋼材などは複数の製造工程が必要になる。現場ごとにサイズや工法がバラバラで非効率である。
そのため、部材の仕様(サイズや強度)を標準化して、型枠や鉄筋加工を定型化することで、生産を単純化すると共に、互換性や対応性を増してRCに絡む全体の工種で生産性向上させる。
③RC・PC工事の施工時期調整と業務平準化
建設現場は繁忙期と閑散期が極端なため、収入が不安定で休暇が取得しづらいといった現状がある。
4月~6月の閑散期、年度末の繁忙期の施工を極力避けるため、余裕期間制度を活用し、技術者配置や建設資機材を確保する準備期間を設け、稼働率を平準化する。よって、安定的に工事を進めて、建設工事の生産性が向上させる。
(2)コンクリート・鋼材工事規格を標準化する
①「埋設型枠」の基準類整備
工場製作による埋設型枠表面のデザイン自由度、高品質化による耐久性や美観が向上する。埋設型枠は、工場内で製作できる型枠サイズを規準化する。そして、設計は、製作可能な型枠のサイズのみで死荷重や施工時荷重に耐えられるようにする。また、現場条件を考慮し、現場作業は規格化製品を組み立てるのみにするよう計画する。
②「プレハブ鉄筋」の基準類整備
部材の仕様(サイズ等)の標準化を進めるために、工場内で製作するプレハブ鉄筋のサイズを標準化してタイプを限定する。その後は、寸法条件に合うよう基準サイズの配筋の組み合わせによって組み立て方法を決定する。
手間のかかっている鉄筋の継ぎ手作業や定着部の合理化を図るため、機械式定着工法等を一般化する。鉄筋継手が目視で確認できないため、接合部で性能が得られるよう機械式鉄筋継手のあき、かぶりの規格値を定め、大型部材でもプレキャスト製品(以下,PCa)を組み立てるだけにして所定性能を確保する。
③配筋仕様の基準類整備
鉄筋では配筋仕様の基準類を整備し、フックの余長が変化しても鉄筋加工組立を速めることで生産性を向上させる。鉄筋加工を定型化することで、互換性や対応性を増してRCに絡む全体の工種で生産性向上させる。
④プレキャスト製品の基準類整備
プレキャスト工法では、橋脚、桁、型枠、鉄筋など
のサイズの部材の仕様の基準類を整備する。長スパン桁や大型ボックスカルバート等、従来現場打ちでしか行われていなかった構造や部材が多い。そこで、プレキャストコンクリート構造物に適用する機械式継手工法の基準を整備して継ぎ手部の課題を解決し、PCaのパーツを組み合わせて大型構造にもプレキャストを活用する。
(3)波及と懸念事項
規格による標準化は、計画全体を合理化して、労働時間を削減し、働き方改革に貢献する波及効果がある。
懸念事項は、規格の制約条件下では最適設計のために試行錯誤的な検討が発生しがちである。したがって、計画の早期段階での綿密な設計や施工計画が必要になり、計画面での負担が大きくなり、現場管理に支障をきたす。
鋼コン技術の解決策として、規格に沿って材料、工法などを選定できる、メニュー形式での材料選定、鋼コン施工計画支援ツールを導入する。このメニューは鋼コンのコンクリート容量、PC鋼材・鉄筋の数量算出・3次元BIM・CIMモデル・部材干渉の確認・アニメーション作成・施工シミュレーションなどをもとに設定する。
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問題 建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋 Ⅱ-1-3
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土砂災害において、流木が被害の発生や復旧に及ぼす影響について述べよ。また、土石流区間と掃流区間で流木の移動形態が異なることを踏まえ、砂防基本計画における流木捕捉のための施設計画について、その概要及び計画上の留意点を述べよ
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解答者 建設部門 河川 専門事項:河川設計 簡易答案 添削回数8 2023/2/28
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1.流木が被害の発生や復旧に及ぼす影響
1)流木による既設堰堤の機能低下
渓流での流木発生量は、土砂流出量に比例する。そのため土砂だけでなく多くの流木が既設の堰堤を詰まらせて砂防機能を失わせる。
2)流木の下流流下による河岸侵食
流木は、比重が軽く堰堤で捕捉されず、下流に至り河岸を侵食する。河岸侵食で、流域の樹木も流出させて巻き込んで、流木被害を増大させる。
3)流木が絡み合って撤去が困難
流木が流れ堆積した場合、流木の掘り出し、切断など、復旧作業量が甚大となる。また橋梁に流木が絡まり水圧によって橋が流出する。
2.砂防基本計画における流木捕捉施設計画の概要及び計画上の留意点
1)透過型砂防堰堤
土石流区間では、水を透過し、流木を土と共に捕捉する透過型砂防堰堤とする。通常時および中小出水時の土砂を下流に供給するため、常に堰堤上流の捕捉空間(ポケット)は空で維持される。
2)流木捕捉工
掃流区間では、流木は河川湾曲部で遠心力によって外側を流下する。そのため、
水衝部の外岸側に捕捉池を設置し、捕捉池の下流側にスリット型の流木捕捉工を設置する。
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解答者 建設部門 河川 専門事項:河川設計 完成答案形式 添削回数3 2023/3/10
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1.流木被害の影響
1)流木による既設堰堤の砂防機能低下
土砂だけでなく多くの流木が既設の堰堤を詰まらせて砂防機能を失わせる。
2)河岸侵食
下流に至った流木は河岸を侵食する。河岸侵食で、流域の樹木も流出させて、さらに巻き込んで、流木被害を増大させる。
3)流木による橋梁の流出
橋梁に流木が絡まり水圧によって橋梁が流出する。
2.流木捕捉施設計画の概要及び計画上の留意点
1)透過型砂防堰堤
土石流区間では、水を透過し、流木を土石と共に捕捉する透過型砂防堰堤とする。
透過部が広いほうが流木捕捉効果が高いため、開口部幅を上流の谷幅程度に広く設定する。この設定で、洪水時や土石流時に堰上げによる越流水を発生させない計画とする。
2)流木捕捉工
掃流区間では、水面に浮かぶ流木を捕捉する流木捕捉工を設置する。
平面的な配置として、土石流区間の砂防堰堤の流心位置に合わせて配置する。また流木は水面に浮いて流れるため、流木捕捉工の部材は、水面より突出させる。
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解答者 建設部門 河川 専門事項:砂防 再現答案(評価A) 2022/7/28
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1.流木が被害の発生や復旧に及ぼす影響
避難路や緊急輸送道路が流木で塞がり、迅速な物資の支援、復旧・復興作業に支障が生じることとなる。橋などのボトルネックで流下断面が小さくなり、流木が捕捉されることで、上流域で堰上げが発生し、被害が拡大する。
土石流に対し土砂洪水氾濫では、氾濫被害が広くなる傾向があることから、流木の捕捉機能を有さない施設で捕捉された流木が決壊し、河口まで流木の影響が及ぶ場合もある。
2.砂防基本計画における流木捕捉の施設計画
(1) 概要
土石流区間では、土砂、流木、水が一体となって土石流として流下するが、掃流区間では、流木、水、土砂が分離して流下してくる。土石流区間では、土砂と流木を同時に捕捉できる機能を有した施設(鋼製透過型砂防堰堤等)で整備し、掃流区間では流木のみを捕捉できる施設(鋼製流木捕捉工等)で整備する。
(2) 計画上の留意点
既設不透過型砂防堰堤が整備されている区間に流木捕捉計画を検討する場合は、水通し部上流に堆砂高を考慮した鋼製流木捕捉工を改築、または前庭部に副堤流木捕捉工を改築する等、既存施設を有効活用する検討を行うことに留意する。
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問題 建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋 Ⅱ-2-1
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地方のある中核都市を震源とする震度7の巨大地震が発生し(ただし、津波は発生しないものとする。)、広範囲にわたり河川、ダム、砂防又は海岸に関わる複数の防災施設に被害が発生した。あなたが、これらの防災施設の被害状況の把握や、応急措置を担当する責任者となった場合を想定して、下記の内容について記述せよ。なお、解答に当たっては、河川、砂防又は海岸・海洋のうち選択した分野を最初に明記すること。
(1)複数の防災施設の被災状況の把握や応急の措置を行うに当たって、あらかじめ収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それ
らの目的や内容について説明せよ。
(2)応急措置に着手するまでの調査・検討の手順について述べよ。併せて、それらの調査・検討に関し、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。
(3)応急措置を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 河川 専門事項:砂防 再現答案(評価A) 2022/7/28
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以下、砂防分野について述べる。
1.収集・整理すべき資料や情報
(1) 収集すべき資料や情報
自然特性を把握する目的で、過去の被災範囲や被災履歴等の災害履歴を収集する。また、保全すべき重要種、希少種等の動植物の生育環境が記載された調査結果を収集する。
建設当時の性能条件を把握する目的で、対象範囲の施設、寸法、形状等が記載された施設台帳を収集する。また、当時のガイドラインやマニュアル等の文献を収集する。
(2) 整理すべき資料や情報
法令指定状況を把握する目的で、土砂災害(特別)警戒区域、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、保安林指定範囲を整理する。
検討するうえでの基本事項を把握する目的で、流域特性、土砂移動形態、計画対象流量、礫径、流木径、流木長、土砂・流木整備計画の内容を整理する。
2.調査・検討の手順
調査・検討の手順は、現地の被災状況の調査→対策方針の検討→施工検討である。
(1) 現地の被災状況の調査
現地調査により流出土砂量・流木量を調査・分析し、巨大地震による土砂移動現象を時系列に整理する。留意点は、調査の際に、復元のみならず、土砂を安全に流下させることが出来る渓流保全工の配置可能性に配慮することである。工夫点は、調査は危険を伴う可能性があるため、UAVを活用して効率化を図ること。
(2) 対応方針の検討
分析結果を基に、透過型・不透過型砂防堰堤、床固工、導流堤、山腹工、砂溜工を総合的に評価する。留意点は、山腹崩壊による残土がある場合、砂防ソイルセメントによる現地発生材を有効に活用する。工夫点は、数値シミュレーションによる高精度化である。
(3) 施工検討
工事用道路、仮設工を検討する。留意点は、巨大地震により現地には不安定土砂が堆積している可能性があるため、施工時の二次災害のリスクである。工夫点は、NETIS を活用し、早期復旧に向けた施工性の向上である。
3.関係者との調整方策
(1) 関係部局間との調整
砂防部局のみならず、治水部局、福祉部局とも連携を図る必要があるため、図表を用いてわかりやすい資料を作成する。
(2) 地域住民との調整方策
事業内容の理解・協力に向け、ワークショップを開催し、丁寧なプロセスを踏んだ合意形成を図る。
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問題 建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋 Ⅲ-1
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近年、激甚な水災害が全国各地で発生し、今後、気候変動の影響による降雨量の増加等により、さらに頻発化・激甚化することが懸念される。このため、河川・砂防・海洋におけるⒶ施設整備の加速化やⒷ避難体制の強化に加え、水災害リスクを踏まえたⒸ防災まちづくりを推進することが求められている。
(1) 洪水(外水氾濫)、雨水出水(内水)、津波、高潮、土砂災害による水災害リスクを踏まえた防災まちづくりを推進していくうえでの課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
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解答者 建設部門 河川 専門事項:河川設計 完成答案形式 添削回数2 2023/4/17
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1.防災まちづくり推進の課題
1)外水による氾濫拡大の抑制
市街地では住宅が多く堤防整備が困難な地域もあり、洪水被害が度々発生している。市街地の治水向上の観点から、外水氾濫拡大の抑制を行う。
堤防の沿川地区で洪水被害の恐れがある市街地においては、高規格堤防を整備し、堤内地の住宅の移設を行う。土地の問題から堤防拡幅などが困難な場合は、堤内地の公園や田畑を遊水池とし、洪水時は河川水を一時的に貯留させる調整池とする。
2)雨水流出抑制施設の設置
市街地では豪雨発生時に内水による災害が度々発生する。内水氾濫防止の観点から、雨水浸透桝や雨水貯留施設などの雨水流出抑制施設を設ける。
雨水排水は下水道で処理する従来の集水を行わずに、住宅や民間事業者が雨水浸透桝や貯留施設を設置して、雨水を地下に貯留させる。
3)津波による地域防災計画の策定
沿岸地域の津波被害防止の観点から、高台移転や防浪地区の設定など地域防災計画を策定する。
津波による被害がシュミレーションで確認され、防潮堤背後の土地利用が進んでいる地域は、地域内の建築物をRC化やピロティ化など耐浪化を行う。小規模集落については、住宅の高地への移転を誘導する。
■参考ページ
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chousakai/tohokukyokun/5/pdf/2.pdf
2.「外水による氾濫拡大の抑制」の対応策
1)高規格堤防
川裏勾配1/30を確保し、越流水による洗堀破壊を防ぐ。高規格堤防は区間により不均等に沈下すると、超過洪水時の越水による荷重が設計荷重より局所的に増大する恐れがある。そのため、すべり破壊や地震時の液状化破壊を防ぐため、地盤改良を行う。
2)遊水地整備
遊水池の容量は、未来の気候状態の予測を高精度で行ったデータベースd4PDFを用い、今後の気候変動に対応した降雨量から算出する。
遊水地への越流流量は越流堤の幅、越水深のほか、河床勾配に伴う越流水の流向に規定されるため、越流流量を確保するためには、河床勾配が緩い箇所とする。
親水性を確保した遊水地として、地域住民の憩いの場とする。遊水地内に管理施設など建物が建設される場合は、ピロティ構造とする。
3)放水路(地下河川)
都市部の河川では川沿いに家屋が連なっているため、川幅を広げて流下能力の確保が困難である。そこで道路下の地下空間にトンネル建設して、河川から分流した洪水を圧力差(あるいは水位差)で分流する地下河川を整備する。
3.リスクと対策
1)高水敷の樹林化
洪水の流下能力が増加すると、土砂を流す掃流力が落ちるため、河岸に土砂が堆積して植生が繁茂することがある。高水敷の樹林化が進むと洪水流の妨げとなる(水位が上昇する)ので、伐採することが必要である。
2)河川に生息する動植物の減少
堤防や遊水地など整備後に、洪水が発生した場合、流砂量が多い河川では砂州が発達することで、瀬や淵が変化し生息する魚類や植物への影響が発生する恐れがある。
対策は、多自然型河川工法を行うことである。直線的な河道を避け、自然に近い河道形態とし、縦断的な瀬と淵、横断的な寄州と淵により流速や水深に変化を与えて、多種類の魚類が生息できるようにすることである。
3)土砂供給バランスの変化
高規格堤防や遊水地の整備により河川の土砂堆積機構が変化し、河床洗堀や河口部の土砂堆積などの問題が発生する。
2次元流況解析で整備後の土砂堆積や洗堀を予測し、洗堀予想箇所への土砂還元や床固整備を実施する。
問題 建設部門 道路 Ⅱ-1-3
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舗装の再生利用に関し、再生加熱アスファルト混合物の製造方法について、新規加熱アスファルト混合物の製造方法との相違点を説明せよ。また、舗装発生材であるアスファルトコンクリート塊は高い再資源化率となっているが、その理由と今後の課題を述べよ。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 簡易答案 添削回数3 2022/9/9
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1.製造方法の相違点
相違点は製作時に添加剤を用いる事である。アスファルトに劣化が生じると低分子量の成分が蒸発し、高分子量のアスファルテン分が多くなる。アスファルテンは硬くてもろい黒色の粉状物質であるため、増加するとアスファルトバインダが硬化する。そのため、製作時に低分子量であるレジンを添加する。レジンは比較的融点が高い樹脂状物質であり、接着性や可塑性を与えて、アスファルトの塑性変形性の向上を図る。 を高められる。
2.高い再資源化率となっている理由
循環型社会を実現するため、撤去されたアスファルト塊は混合所に集積され、破砕機により大きさが整えられ、再生骨材として使用される。されている。また、当初破砕時に骨材その物を破壊していたが、 近年では、破砕機の技術力向上により、アスファルトガラを細骨材・粗骨材として原料にもどし、元のカタチに還元することが可能としている。となった。以上のことから、サプライチェーンの構築、骨材の品質向上が再資源化率の高い理由といえる。
3.今後の課題
繰返し再生すると熱劣化によるアスファルトが硬質化するため、フォームドアスファルト技術などにより、常温で湿潤状態の骨材との混合を可能とすることが課題である。フォームドアスファルトとは、加熱アスファルトに微量の水または水蒸気を添加することによって発生させた泡状のアスファルトであり、体積が元のアスファルトの10~20倍にまで膨張すると共に、泡により粘性を大幅に減少できる。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数0 2022/9/13
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1.製造方法の相違点
新規との相違点は製作時に添加剤により柔軟化する事である。アスファルトに劣化が生じると低分子量の成分が蒸発し、高分子量のアスファルテン分が多くなる。アスファルテンは硬くてもろいため、増加するとアスファルトバインダが硬化する。そのため、製作時に低分子量であるレジンを添加する。レジンは比較的融点が高い樹脂状物質であり、接着性や可塑性を与えて、アスファルトの塑性変形性を高められる。
2.高い再資源化率となっている理由
循環型社会を実現するため、廃棄アスファルト塊は混合所に集積され、破砕機により大きさが整えられ、再生骨材としての使用が義務付けられている。また、近年では、破砕機の技術力向上により、アスファルトガラを細骨材・粗骨材として原料にもどすことが可能となった。サプライチェーンの構築、骨材の品質向上の2つが再資源化率の高い理由である。
3.今後の課題
繰返し再生すると熱劣化によりアスファルトが硬質化する。そこでフォームドアスファルト技術等により、常温で湿潤状態の骨材と混合可能とすることが課題である。アスファルトプラントで安定した微細泡、アスファルト水の混合性を向上し、かつ小型化することで、既設プラントにも設置可能である。
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問題 建設部門 道路 Ⅱ-2-1
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高速道路が通過するにも関わらずインターチェンジ(以下「IC」という。)が設置されていないため、通過するのみとなっているA市において、地域活性化を目的としてスマートICを計画することになった。この計画を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。なお、A市内の高速道路には、休憩施設やバスストップ等、スマートICに活用できる施設は存在しないものとする。
(1)ICの位置の選定に当たり、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について、留意すべきき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 簡易答案 添削回数20 2022/10/28
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1.調査および検討すべき事項
(1)観光地までの利便性向上
A市の観光箇所や周辺地域の商業施設立地状況、鉄道や船舶の交通状況を調査。観光バスや車両による移動時間が、鉄道とTAXIの組合せよりも短縮でき、スムーズに観光地に到着できるようにルート形成の検討を実施。
(2)物流輸送の高速化
ETC2.0のデータを活用して物流倉庫、物流ルート、物流の起終点等、現在の物流需要を調査。また、スマートIC設置後に輸送の高速化により交通量がどの程度増加し、交通需要率が満足するかを調査。交通需要率を満足して利便性が最大となるように運搬ルートを検討。
(3)住民の移動性向上
住民が通勤や買い物等に利用している交通ルートを調査。また、現況の一般国道やバイパス道路の設置箇所を調査。どの路線にICを接続すれば交通ネットワークが向上して住民の移動が効率化するかを検討。
2.業務を進める手順
(1)ICの概略位置の選定
地域産業基盤強化、観光・文化・芸術施設のアクセス向上、物流生産性向上、住民の移動性向上を図るため、それぞれの項目について交通ルートを地図上にプロットする。そして、プロットした路線が重複する経路を概略路線としてICの設置位置を絞り込む。
(2)ICの形状を選定
交通量が多い場合は完全立体交差型、交通量が少なく、建設費のうち用地費の占める割合が高い場合はダイヤモンド型や不完全立体交差型により用地費を抑制する。なお、交通量調査はAIカメラにより実施し、映像解析AIツールによりデータ整理を行う。これにより、調査時の人員や収集データの品質向上や調査時の安全性向上を図る。
(3)ICの整備計画
IC整備により地域間における相互交流を促進して商業施設やレクリエーション施設への集客力増加により内発的な活性化を図れるようにする。また、工業団地の造成計画と一体となりIC整備を行ことで工場が集積する工業団地の交通アクセスを改善し、さらなる産業活動の活性化や企業集積、雇用の促進につなげる。
3.調整方法
市街地から離れた箇所にICを計画することで広大な土地を安価に取得でき、道路線形や道路拡幅等、余裕を持った道路計画を実現する事が可能となる。また、IC付近の田園地帯に企業や大型商業施設等のレクレーション施設を誘致可能となる。観光拠点とICの位置が離れるため途中に休憩施設として道の駅等を整備する。その際、地域密着型PPP/PFIを活用する事で事業ノウハウ・競争力ある企業との連携・融合が可能となり観光客の集客を図る。この手法で私は発注者、観光協会と著性を図った。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数0 2022/10/31
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1. 調査および検討すべき事項
(1)観光地までの利便性向上
A市の観光箇所や周辺地域における商業施設の立地状況、鉄道や船舶の交通状況を調査する。観光バスや車両の移動時間が、鉄道とTAXIの組合せよりも移動時間が短縮でき、スムーズに観光地に到着できる交通ルートを検討する。
(2)物流輸送の高速化
ETC2.0のデータを活用して物流倉庫、物流ルート、物流の起終点等、現在の物流需要を調査する。また、スマートIC設置後に輸送の高速化により交通量がどの程度増加するのかを予測し、交通需要率が満足するかを調査する。物流輸送の利便性が最大となるように物流ルートを検討する。
(3)住民の移動性向上
住民が通勤や買い物等に利用している交通ルートや一般国道やバイパス道路の整備状況を調査する。そして、どの位置や路線にICを接続すれば交通ネットワークが向上して住民の移動が効率化するかを検討する。
2.業務を進める手順
(1)ICの概略位置の選定
地域産業基盤強化、観光・文化・芸術施設のアクセス向上、物流生産性向上、住民の移動性向上を図るため、それぞれの項目について交通ルートを地図上にプロットする。そして、プロットした路線が重複する経路を概略路線としてICの設置位置を絞り込む。
(2)ICの形状を選定
交通量が多い場合は完全立体交差型、交通量が少ない場合はダイヤモンド型や不完全立体交差型を計画して用地費を抑制する。なお、交通量調査はAIカメラにより実施し、映像解析AIツールによりデータ整理を行う。これにより、調査時の人員や収集データの品質向上や調査時の安全性向上を図る。
(3)ICの整備計画
IC整備により地域間における相互交流を促進して商業施設やレクリエーション施設への集客力増加により内発的な活性化を図れる。また、工業団地の造成計画と一体となりIC整備を行ことで工場が集積する工業団地の交通アクセスを改善し、さらなる産業活動の活性化や企業集積、雇用の促進を図る。
3.調整方法
市街地から離れた田園地帯にICを設置する事で用地買収に要する時間とコストを抑制する。そしてその分を大型商業施設やレクレーション施設費に用いる。
商業施設設置後は、コンセンション方式を用いて民間企業に経営を委託してサービスの向上、コスト抑制によるVFMの向上を図り集客を増加させる。そして、抑制した費用を道路整備に活用して集客数増加を見込んだ道路整備を実施する。これにより、地方公共団体や商業施設運営会社と調整を図る。
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問題 建設部門 道路 Ⅲ-1
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道路は,交通ネットワークの要として,人の移動や物資の輸送に欠かすことのできない基本的な社会資本であり,また,公共空間としても重要な役割を果たしている。近年,社会・経済情勢の変化,デジタル技術やモビリティ分野の進展等により,道路に対するニーズが多様化し,こうしたニーズヘの対応が課題となっている。
このような状況を踏まえて,道路に携わる技術者として,以下の問いに答えよ。
(1)道路に対するニーズについて,技術者としての立場で多面的な観点から,近年の多様化している道路へのニーズを3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,そのニーズの内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した道路へのニーズのうち,最も重要と考えるニーズを1つ選択し,そのニーズに対する複数の対応策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての対応策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数14 2023/4/20
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1.多面的な課題
(1)耐久性向上
モータリゼーションの普及や大型車混入率の増加により、繰返し応力や応力振幅が増加により高速道路の老朽化が加速。耐久性が高いコンクリート床板等の長寿命化技術、鋼橋の防食・排水性を高めた構造とした耐食性向上。補修サイクルを長期化。
(2)点検の効率化
老朽化施設の増加速度が早く、余剰の技術者が加勢しても全箇所を近接目視や打音点検を実施するには時間とコストが不足。だから、ICTや広帯域超音波法、放射線(X線)透過法等を活用して点検の効率化。
(3)劣化予測に基づく最適時期の補修
点検結果を基に劣化予測を行う事で、劣化初期の軽微な段階で補修でき、事後保全と比較して人員や作業量を抑制できる。最適時期の補修により、「緊急措置判定」による補修見送りや撤去をなくして、多数の高速道路を更新可能とする。
2.重要な課題「耐久性向上」とその対策
(1)新素材・新材料を活用した高速道路の長寿命化
舗装部にSFRCやダクタルパネルを用いて鋼床版に作用する応力を抑制。鉄筋やPC鋼材に代わり、高強度繊維補強コンクリートとアラミドFRPロッドを使用して腐食による劣化を抑制。高性能床板防水により、路面からの水、塩化物イオンのコンクリートへの浸透を遮断。インフラの老朽化を抑制でき長寿命化が可能。LCC抑制。
(2)監視による早期に損傷箇所を特定
点検で損傷を探して対処しても、損傷が認められた段階では内部で破壊が進みその段階では大規模な補修・補強、全面改修が必要。スーパーAEセンサや加速度センサ、振動センサ卓越振動数の変化により橋梁損傷を早期に検知し、損傷箇所特定。
(3)補修データからのフィードバック設計
補修時に頻度の高い劣化要因は、漏水による腐食や、風雨にさらされるボルトの遅れ破壊、桁高変化部の応力集中による疲労破壊などである。こうした劣化要因に設計段階から対処して、重防食化や早期ボルト交換、フランジ当板補強をする。
3.新たに生じるリスクと対応
プレキャスト部材を治具で接合するが、接合形式によっては、接合作業が煩雑であり熟練した技能を要する場合が多い。経験の浅い作業員が接合作業を実施した場合、接合部の施工品質が問題となって構造物全体の弱部となる可能性が否めない。
プレキャスト部材の接合構造をできるだけコンパクトかつ矩形型のはめ込み式とし、接合部の施工量を縮小化と簡略化することで品質低下のリスクを抑制する。
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問題 建設部門 道路 Ⅲ-2
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我が国の高速道路は、供用からの経過年数が30年以上の区間が大半を超え、老朽化が進行している。こうした中、平成24年の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故を受け、平成26年度以降、定期点検結果に基づく修繕や更新事業を進めながら、2巡目の定期点検を実施しているところであり、これらの取組を通じて新たな知見も得られている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)高速道路を取り巻く国土・経済社会の現状等を踏まえ、その機能を将来にわたり維持するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 簡易答案 添削回数23 2023/1/10
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1.多面的な課題
(1)耐久性向上
モータリゼーションの普及や大型車混入率の増加により、繰返し応力や応力振幅が増加により高速道路の老朽化が加速。耐久性が高いコンクリート床板等の長寿命化技術、鋼橋の防食・排水性を高めた構造とした耐食性向上。補修サイクルを長期化。
(2)点検の効率化
老朽化施設の増加速度が早く、余剰の技術者が加勢しても全箇所を近接目視や打音点検を実施するには時間とコストが不足。だから、ICTや広帯域超音波法、放射線(X線)透過法等を活用して点検の効率化。
(3)劣化予測に基づく最適時期の補修
点検結果を基に劣化予測を行う事で、劣化初期の軽微な段階で補修でき、事後保全と比較して人員や作業量を抑制できる。最適時期の補修により、「緊急措置判定」による補修見送りや撤去をなくして、多数の高速道路を更新可能とする。
2.重要な課題「耐久性向上」とその対策
(1)新素材・新材料を活用した高速道路の長寿命化
舗装部にSFRCやダクタルパネルを用いて鋼床版に作用する応力を抑制。鉄筋やPC鋼材に代わり、高強度繊維補強コンクリートとアラミドFRPロッドを使用して腐食による劣化を抑制。高性能床板防水により、路面からの水、塩化物イオンのコンクリートへの浸透を遮断。インフラの老朽化を抑制でき長寿命化が可能。LCC抑制。
(2)監視による早期に損傷箇所を特定
点検で損傷を探して対処しても、損傷が認められた段階では内部で破壊が進みその段階では大規模な補修・補強、全面改修が必要。スーパーAEセンサや加速度センサ、振動センサ卓越振動数の変化により橋梁損傷を早期に検知し、損傷箇所特定。
(3)補修データからのフィードバック設計
補修時に頻度の高い劣化要因は、漏水による腐食や、風雨にさらされるボルトの遅れ破壊、桁高変化部の応力集中による疲労破壊などである。こうした劣化要因に設計段階から対処して、重防食化や早期ボルト交換、フランジ当板補強をする。
3.新たに生じるリスクと対応
プレキャスト部材を治具で接合するが、接合形式によっては、接合作業が煩雑であり熟練した技能を要する場合が多い。経験の浅い作業員が接合作業を実施した場合、接合部の施工品質が問題となって構造物全体の弱部となる可能性が否めない。
プレキャスト部材の接合構造をできるだけコンパクトかつ矩形型のはめ込み式とし、接合部の施工量を縮小化と簡略化することで品質低下のリスクを抑制する。
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解答者 建設部門 道路 専門事項:道路設計 完成答案形式 添削回数4 2023/1/15
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1.多面的な課題
(1)耐久性向上
モータリゼーションの普及や大型車混入率の増加により、繰返し応力や応力振幅が増加、凍結防止剤の散布により鉄筋や鋼材の腐食が誘発され高速道路の老朽化が加速している。そのため、耐久性が高いコンクリート床版等を活用した橋梁の長寿命化、伸縮装置の漏水対策、鋼材の重防食化等を行い高速道路の耐久性向上を図る。
(2)点検の効率化
高速道路の老朽化速度が早く、物件増に伴って点検の作業負担が大きくなっている。点検の効率化を図るため、ICTや広帯域超音波法、放射線(X線)透過法等を活用してスクリーニングにより点検箇所を絞り込む。また、AIを活用してインフラの変状の進展や診断を支援する。これにより、近接目視を抑制して技術者の作業負担を軽減する。
(3)劣化予測に基づく最適時期の補修
点検結果を基に劣化予測を行う事で、劣化初期を推定でき損傷が軽微な段階で補修することで、事後保全と比較して人員や作業量の抑制が可能となる。よって、最適時期に補修を行う事で、「緊急措置判定」による補修見送りや撤去を無くし、多数の高速道路を更新可能とする。
2.重要な課題「耐久性向上」とその対策
(1)新素材・新材料を活用した高速道路の長寿命化
近年進歩の著しい高強度材料技術を応用し、舗装部にSFRCやダクタルパネルを用いたり、高強度繊維補強コンクリートとアラミドFRPロッドを使用して補強する。防水性能の新技術も導入し、高性能床版防水工により、路面からの水、塩化物イオンがコンクリート内に浸透するのを遮断する。
新素材・新材料を活用する事で、塩害や凍結融解及び摩耗等の発生する劣悪な環境下においても、高速道路の長寿命化や、ライフサイクルコストの抑制が可能となる。
(2)監視による早期に損傷箇所を特定
コンクリートや鉄部の内部の劣化は表面に表れにくく、外見検査では内部での劣化進行を判別できない。このため損傷が軽微な内に、目視では見えない損傷をとらえる必要がある。それには、スーパーAEセンサや加速度センサ、振動センサ卓越振動数の変化を監視し、橋梁の損傷を早期に検知する。
モニタリングにより収集したデータとBIM/CIM等の3次元モデルと連動させ、橋梁の損傷箇所を視覚化して監視する事で、設計段階から早期に損傷を検知可能となる。
(3)補修データからのフィードバック設計
補修データから、頻度の高い劣化要因は、漏水による腐食や、風雨にさらされるボルトの遅れ破壊、桁高変化部の応力集中による疲労破壊などである。
損傷データを基に、設計段階から伸縮装置の二重止水構造、2 層式鋼製伸縮装置の採用による漏水防止、ボルトの強度区分12.9以上の長期使用を回避する事による遅れ破壊防止、割込みフランジ形式による応力集中を回避等の対策を施す。既存の橋梁に対しては重防食化や早期ボルト交換、フランジ当板補強等を実施し、インフラの耐久力向上設計を導入する。
3.新たに生じるリスクと対応
プレキャスト部材を治具で接合するが、接合形式によっては、接合作業が煩雑であり熟練した技能を要する場合が多い。経験の浅い作業員が接合作業を実施した場合、接合部の施工品質が問題とり早期損傷が発生する。これにより、プレキャスト部材間の一体化の低下やプレキャスト部材間端部に応力集中が発生し、床版との接着力が低下し、橋梁の早期損傷に繋がる。
品質確保のため、鋼製治具の鉄筋に矩形のプレートを取付け、もう片方の鉄筋に矩形を包み込むC型治具を取付け、嵌合する形式を用いる。品質は静的試験による曲げ、せん断力、引張力、輪荷重走行試験による疲労耐久性が確保している事を確認した。これにより、継目部を起点とした早期損傷を防止し、橋梁の長寿命化が可能となる。
問題 建設部門 トンネル Ⅱ-1-3
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山岳工法における鋼製支保工の効果を3つ以上挙げ、それぞれについてその効果の概要を説明せよ。
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解答者 建設部門 トンネル 専門事項:トンネル設計 完成答案形式 添削回数0 2023/4/24
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1.山岳工法における鋼製支保工の効果
1)岩塊保持効果
鋼製支保工は掘削直後の岩塊の崩落に対し、作業員の安全を確保する重要な役割を担っている。支保工と地山を密着させることにより、部材の曲げ抵抗から掘削後にゆるんだ岩塊の崩落を防止する。
2)弱層補強効果
地山掘削後の切羽上面に対し、開口亀裂や規模の小さい弱層等の地山が弱点となって崩落する箇所を、鋼製支保工が支持することにより、地層弱部箇所へ内面から補強する。
3)地山への内圧付与効果
グラウンドアーチの形成されにくい軟岩主体や土砂地山においては、鋼製支保工を反力とした内圧付与により地山耐力を向上させる。
4)吹付けコンクリートの補強効果
吹付けコンクリート強度は小さいものの、鋼製支保工と一体化することで地山に密着し、トンネル軸方向に連続したアーチシェル構造を形成して補強しトンネル周辺地山を安定化さす。
5)脚部への荷重伝達効果
建込みと同時に機能を発揮させるため、強固に連結された鋼製支保工にて、掘削断面と相似な形状で作用荷重を鋼製支保工の底板やウイングリブを介して地山(脚部)へ伝達させる。
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問題 建設部門 トンネル Ⅱ-2-1
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トンネル掘削時には、施工の安全性の確保、また周辺環境の保全を目的として補助工法を採用する場合がある。補助工法はトンネルの設計や施工方法と密接に関係するため、その目的や効果を検討したうえで実施する必要がある。また、補助工法の実施記録は維持管理段階でもトンネルに変状が生じた場合には、その原因を検討するうえで重要な情報の1つとなる。
複数の断層破砕帯が存在する泥質岩(軟岩)地山において、切羽での施工の安全性を確保するために実施される補助工法に関し、以下の問いに答えよ。
( 1)補助工法を採用する目的を複数挙げ、その目的に応じた補助工法を選定、採用するうえで検討すべき事項とその内容について説明せよ。
( 2)調査、設計から施工段階において、補助工法を採用するうえでの業務を進める手順を列挙し、それぞれの項目ごとに留意すべき点や工夫すべき点を述べよ。
( 3)あなたが担当業務の責任者の立場でこれらの業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 トンネル 専門事項:トンネル設計 簡易答案 添削回数5 2023/5/13
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1. 補助工法を採用する目的及び検討事項
1) 切羽安定
・破砕帯部における切羽面の状態を評価する。
・注目し評価する点は、圧縮強度、亀裂状態、割れ目間隔、風化変質である。
・湧水を伴っている場合は、湧水による劣化も考慮し評価する。
2)突発湧水の防止
・断層破砕帯部の帯水層を把握する。
・ボーリング調査、坑内比抵抗探査を行い滞水層の位置を確定させる。
3)地表面沈下
・上部からの作用荷重に対し、支保工の保有強度(耐力)を有しているか検討する。
・支保工荷重を受け持つ脚部底版の地盤状況(亀裂、地耐力強度)も確認する。
2.業務を進める手順と留意点、工夫点
1)採用区間の設定
・断層破砕帯の正確な位置や状態を把握する。
・幅や傾斜を確定させ対策範囲を設定する。
・通常の鉛直や水平ボーリングに対し、斜めボーリングを追加し必要な情報を得る。
2)数値解析設計で切羽安定を評価する
・有限要素法(FEM解析)を用いた数値解析手法で先行変位を可視化する。
・前方地山改良による切羽自立を限界ひずみ法を用いて評価する。
3)工法選定の妥当性評価
・他トンネルの同種地層条件における採用工法に対し類似性を判断する。
4)変位値の超過
・地山のモデル化による実現誤差から解析値を超過した変状への対応を行う。
・実地層を反映したモデルの再構築より変状原因の特定を行う。
3.業務を効率的、効果的に進める調整方策
1)関係者との調整
・破砕帯部の解析予測と出現岩質の異なりから、予測変位の誤差より施工現場では追加対策の有無が分からず業務進捗に支障が生じていた。
・解析予測には、複数の破砕帯から土質定数において一貫性に問題を抱えており、調査、設計、施工段階において問題を抱えていた。
・私は、3関係者の問題に対し解決手法を策定した。その結果、技術マネジメントによって追加対策工の選定が容易となり業務が効率化された。
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解答者 建設部門 トンネル 専門事項:トンネル設計 完成答案形式 添削回数0 2023/5/19
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1.補助工法を採用する目的及び検討事項
1)切羽安定の確保
切羽面の状態(圧縮強度、亀裂、割れ目、風化)を評価し、割れ目間隔が小さいほど未固結度が高いため、切羽自立に対し天端の先受け改良や鏡の補強を要する。また、切羽湧水を伴っている場合は、亀裂が坑奥に達しており止水効果を得られる改良注入を検討する。
2)突発湧水の防止
切羽前方の帯水層を把握するため、坑奥の地層確認からボーリング調査、滞水状況の確認から坑内比抵抗探査を行い滞水層位置を確定する。
3)地表面沈下の抑制
上部斜面からの作用荷重に対し、支保工の保有耐力、また、支保工荷重を受け持つ脚部底版の地盤反力を確認し、脚部補強を検討する。
2.業務を進める手順と留意点、工夫点
1)採用区間の設定
断層破砕帯の正確な位置や状態を把握し、幅や傾斜を確定させ対策範囲を設定する。通常の鉛直や水平ボーリングに追加し、上部からの斜めボーリングを用いて必要な情報を得る。
2)数値解析設計で切羽安定を評価する
切羽安定評価のため、有限要素法(FEM解析)を用いた数値解析手法で先行変位を可視化する。評価には、切羽部に発生するせん断ひずみ量が限界せん断ひずみ量を超過しない対策工を選定する。
3)工法選定の妥当性を評価する
同種地盤条件における採用事例より、切羽安定に対する鏡ボルト本数や先受け工の打設ピッチを比較し、同程度の対策工となっているか妥当性を判断する。
4)深層部の近似モデルの再現
深層部の地山モデルは、弾性波探査を用いた地層推定より、想定地層と相違の場合は、岩盤定数や傾斜角を修正し近似モデルを再現して再解析を実施する。
3.業務を効率的、効果的に進める調整方策
1)関係者との調整
補助工法選定において、解析予測と出現地層が異なり予測変位と誤差が生じ、施工現場では追加対策の必要性から業務進捗に支障が生じた。
解析予測に際して、設計業者は複数ある破砕帯区間に対し解析結果の不一致を主張し、地質業者は地層推定から定数設定に文献及び他事例からの設定に疑義を訴えた。私は2関係者の問題に対して、施工業者には岩質状況の確定を指示すると共に、地質業者には出現岩質からの各地質定数の再設定、設計業者には再解析における対策工選定を指示した。
その結果、技術マネジメントによって出現地層における対策工のパターン化が行え、追加対策工の選定が容易となり業務が効率化された。
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問題 建設部門 トンネル Ⅲ-1
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トンネルは地山内に構築される線形構造物であるため、坑口部では地形が改変され、トンネル掘削では大量の掘削ズリとともに湧水が排出される。そのため、トンネルの建設時には、様々な周辺環境を保全した施工が求められ、供用開始後の影響を考慮したうえで、調査・計画、設計、施工の各段階において十分に配慮、して業務を遂行することが重要となる。このことを考慮して以下の問いに答えよ。
(1)山間地のトンネノレ工事において配慮すべき周辺環境に関する課題を、トンネルの技術者として多面的な観点から3つ以上抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。なお、施工条件は以下のとおりである。
・民家や重要構造物は近接していない。
・土捨て場は坑口近くに計画されている。
・トンネルルートは河川や沢等と交差する。
・坑口周辺には保全すべき動植物が生育している。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える項目を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しでも新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 トンネル 専門事項:トンネル設計 簡易答案 添削回数5 2023/6/11
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1.山間部のトンネル工事に配慮すべき周辺環境
(1)河川水量保持の観点から、坑内湧水を抑制し地下水の低下防止を図る。
トンネルと交差する河川や沢部からの、坑内に引込む湧水量(施工時の突発湧水)を抑制し、地上河川の水位低下や沢の枯渇対策を行う。
(2)生態系保全の観点から、坑口周辺の地形改変の抑制及び復元を行う。
坑口付け時に発生する地形改変を抑制するため、坑門計画において周辺地形に馴染む竹割り式坑門の採用検討や改変地形の復元及び修景保全を行う。
(3)環境保全の観点から、掘削ズリの適切な廃棄処理を行う。
掘削土には自然由来の重金属が含有することあり、周辺土壌への汚染拡大防止から大量の掘削ズリに対し遮断シートで覆うなど適切な管理を行う。
2.「坑内湧水を抑制し地下水の低下防止」の解決策
(1)浸透流解析の実施
調査結果の透水係数を基に、浸透流解析を行い、坑内の水位影響範囲を特定する。
(2)止水対策の実施
トンネル坑内への突発湧水の回避から、坑外からの連続止水壁の施工は困難を要するため、坑内施工における薬液注入工により地山の透水性を低下させる。
(3)防水型トンネルの採用
トンネルの構造として地下水位を低減させないために、一般的な排水型トンネルに替わり、防水型トンネル(ウォータータイト構造)を採用する。
(4)復水工法の採用
地下水の低下影響を最小限にするため、湧水を河川や沢に復水する復水工法(リチャージウェル工法)を採用する。
3.新たなリスクと対策
(1)新たなリスク
地下水を排出(低下)させない施工は、常時、地下水位の影響を受けることになり、トンネル構造として水圧(外力)の増加を考慮した構造体とする必要がある。
(2)リスク対策
水圧の発生による外力抵抗性能を付加した覆工検討及び、施工時における防水シートの密着管理、打継ぎ目地部の止水対策を図る。
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解答者 建設部門 トンネル 専門事項:トンネル設計 完成答案形式 添削回数0 2023/6/17
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1.山間部のトンネル工事に配慮すべき周辺環境
(1)坑内湧水を抑制し地下水の低下防止を図る。
河川水量保持の観点から、トンネルルートは河川や沢と交差しており、施工時及び供用後においてトンネル上部の地下水低下に対し配慮する必要がある。
交差する河川や沢部からの坑内に引込む湧水量(施工時の突発湧水及び供用後の漏水)を抑制し、地上河川の水位低下や沢の枯渇に対し対策を講じる。
(2)坑口周辺の地形改変の抑制及び復元を行う。
生態系保全の観点から、坑口周辺の動植物の保全から、坑口付け時に発生する地形改変を抑制する必要がある。
地形改変を抑制した坑門計画には、面壁型坑門よりも周辺地形に馴染む竹割り式坑門(突出型)の採用検討や改変地形の復元及び修景保全対策を講じる。
(3)掘削ズリの適切な廃棄処理を行う。
環境保全の観点から、掘削ズリには自然由来の重金属が含有することがあり、土捨て場において汚染拡大を封じ込めた措置を行う必要がある。
坑口付近に土捨て場が計画されており、土捨て場までの搬出においても汚染土の拡散防止措置を行う。また、残土処理については、汚染拡大防止から大量の掘削ズリに対し遮断シートで覆う封じ込め工法を採用し適切な処理対策を講じる。
2.「坑内湧水を抑制し地下水の低下防止」の解決策
(1)水位低下の影響範囲及び地下水挙動の予測
トンネル交差部の地下水流動について把握する。
地盤の調査結果から、浸透流解析を行い地下水の流れ、トンネル掘削時に作用する影響を予測し、地下水の水位影響範囲を特定する。解析時の透水係数は、同一の地層であってもバラツキが生じ、平均値を用いてモデル化しマクロ的な地下水の動きを予測する。
(2)地山の透水能力を低下させ湧水量を抑制
掘削時に発生が予想される突発湧水の回避から、地山の透水性を低下させ、湧水量をコントロールする。
湧水抑制には、坑外対策(連続止水壁工)と坑内対策(薬液注入工)が挙げられ、河川交差部より対策は坑内からの施工の方を選択、薬液注入工により地山の透水性を低下させる。また、水位下の施工となり、注入時の材料流出の懸念から、固化時間(ゲルタイム)を調整し確実な改良効果を得る。
(3)防水型トンネルを採用し坑内流入を防止
一般的な排水型トンネルに変え、地下水位を低減させない構造形式の採用を行う。
河川交差部から地下水の影響を受ける範囲において、常時水位下となるため、防水型トンネル(ウォータータイト構造)を適用し、坑内への地下水流入を防ぐとともに、地下水の低下を防止する。
(4)河川流量低下に対し湧水の復元
交差河川の流量低下に対し、河川流量を回復させる。
坑内流入の湧水に対し、湧水を利用した復水工法(リチャージウェル工法)を採用する。復元に湧水を利用するため、河川類型に準拠した濁水処理を行い復水時の濁り発生を抑制する。
3.新たなリスクと対策
(1)付加外力による覆工機能不足及び変形発生
防水型トンネルの採用は、常時、地下水位下にトンネルが位置し水圧(外力)が常に覆工に付加される。
覆工には地圧+水圧が作用し、一般的な覆工機能では耐力不足となり、覆工にひび割れの発生や外力による目地ズレ(変形)等が発生し、大量地下水の坑内流入が発生する。その結果通行不能リスクが生じる。
対策は、トンネル構造に作用する外力(作用荷重)を設計時に付加させ、覆工構造の安定(構造計算から増厚及び有筋化構造への変更)を確保する。
(2)薬液使用における下流の水位変動
河川や沢に対し、薬液注入による止水対策を行うことは、既存の水道に変化をもたらし、上流側が堰止めとなり、下流の水位が変動する。
対策は、地表面や河川、沢などのモニタリング(監視カメラ)により経年変化を把握する。また、水位に変化が生じるようならば、坑内への流入有無を確認し、流入なしならば流域変動の可能性から、地盤の浸透流解析のフィードバックより復水対策を行う。
問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅱ-1-3
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労働安全衛生法施行令等の改正(2022年1月完全施行)において、墜落による労働災害の防止に関する規定等が改正された背景を説明せよ。また、その改正された内容について具体的に説明せよ。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 簡易答案 添削回数2 2023/1/13
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1.規定等が改正された背景
l 胴ベルト型の安全帯では、墜落時にベルトに荷重が集中し、内臓の損傷や胸部などの圧迫などの災害を防ぎきれない。
l 技術進歩により着用者の身体を肩、腰部、腿などの複数箇所で保持する形式の人体への負担を軽減する効果の有効性が認められ、フルハーネス型安全帯の支持が高まっている。
l ビル・マンションの壁面や橋梁主桁の補修など、高所作業が増加しており、それに伴い墜落・転落災害が増加している。
2.改正された内容
{C}① 墜落制止用器具
フルハーネス型を使用することが原則であり、着用者の体重及びその装備品の重量の合計に耐える構造にする。また、墜落制止用器具は、墜落時の衝撃を緩和する役割をもつショックアブソーバーの設置が義務付けられている。
{C}② 安全衛生特別教育の実施
特別教育は、墜落制止用器具の取付けや点検・整備方法、労働災害防止に関する知識、関係法令などについて行う。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 完成答案形式 添削回数0 2023/1/21
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1.規定等が改正された背景
ビルやマンションなどの壁面や橋梁主桁、橋脚などの補修・補強工事が増加している。それに伴い、高所作業も増加し、墜落・転落災害が発生している。
建設現場で使用される安全帯は、胴ベルト型が主流である。胴ベルト型は、墜落時にベルトに荷重が集中し、内臓の損傷や胸部などの圧迫などの災害を発生させている。
安全帯着用者の身体を肩、腰部、腿などの複数箇所で保持する形式は、技術の進歩により、人体への負担を軽減する効果が認められた。そのため、フルハーネス型安全帯の支持が急速に高まっている。
2.改正された内容
(1)墜落制止用器具
制止用器具は、フルハーネス型を使用することが原則であり、着用者の体重及びその装備品の重量の合計に耐えられる構造にする。また、ショックアブソーバーの設置は、墜落時の衝撃を緩和する役割をもつため、義務付けられた。
(2)安全衛生特別教育
特別教育は、学科と実地について行う。学科は、作業に関する知識のほか、墜落制止用器具の取付けや点検・整備方法、労働災害防止に関する知識、関係法令などについて行う。実地は、墜落制止用器具の使用方法について行う。
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問題 建設部門 施工 Ⅱ-2-1
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地方都市郊外の丘陵地を切土(粘土混じり砂質土:25万m3)して盛土(20万m3、最大高さ10m)する大規模宅地造成工事を行うことになった。このうち鉄道に近接する範囲の一部分には補強土壁(最大高さ6m、延長約200m)が計画されている。以上を踏まえて、本工事の現場責任者として、以下の内容について記述せよ。
(1) 補強土壁部の施工計画を立案するに当たって検討すべき事項のうち、本工事の特性を踏まえて重要なものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2) 本工事の品質低下となる重要なリスクを1つ挙げ、現場責任者として、どのようにマネジメントするか、留意点を含めて述べよ。
(3) 補強土壁の最上段を施工中、豪雨により一部の補強土壁に異常な変形が発生した。この対応に当たり、現場責任者として発揮すべきリーダーシップについて述べよ。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 簡易答案 添削回数10 2023/2/27
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1.補強土壁部の施工計画立案時における検討事項
l 切土材の使用方法の検討
粘土混じり砂質土であるため、N値が15~30程度と想定される。基礎地盤としては不十分であるため、安定処理を行い使用方法について検討する。
l 締固めの管理方法の検討
粘土質混じり土は、土粒子同士の結びつきが弱くなり層厚30㎝の均等締固めが困難となる。補強土壁内に水を溜めないような締固め方法の検討を行う。
l 排水対策の検討
粘土質混じり土の場合、補強土壁内に侵入した雨水は、補強土壁の安定に影響を及ぼす。安定に影響を及ぼさないように、水平排水材等の検討を行う。
2.品質低下となる重要なリスクとマネジメント
①リスク:凍結による壁面材と盛土材の連結部の破断
②マネジメント:破断原因は凍結による体積膨張と考え、切土材を砕石に置き換え、隙間を確保することで排水性の向上を促し、細粒分含有量を25%以下に管理する。
3.発揮すべきリーダーシップ
地山に沿った全体滑りに対して、発注機関に押え盛土技術で滑り破壊を防止するよう指導する。一方、盛土の沈下に対して、鉄道事業者に地盤改良技術で地盤沈下を抑止するよう指導する。このようにして関係者らに提案して取りまとめることで補強土壁工事を完成する。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 完成答案形式 添削回数0 2023/4/7
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1.補強土壁部の施工計画立案時における検討事項
(1)切土材の使用方法の検討
補強土壁に使用する切土材は、粘土混じり砂質土であり、N値が15~30程度と想定される。そのため、基礎地盤として、充分な支持力や強度が確保できない。強度確保のために、切土材の安定処理を行う必要があり、セメントや石灰等を混合した場合における配合方法の検討を実施する。
(2)補強土壁の締固め管理方法の検討
粘土質混じり土は、土粒子同士の結びつきが弱くなり、補強土壁に用いられる層厚30㎝の均等締固めが困難となる。土粒子同士の結びつきを密にするため、試験盛土を実施し、最適な締固め回数を検討する。
また、最大乾燥密度や最適含水比等を算出し、これらの値を基に振動ローラの機種を選定し、補強土壁内の締固め方法の検討を行う。
(3)排水対策の検討
粘土質混じり土の場合、補強土壁内に侵入した雨水は、補強土壁の安定に大きな影響を及ぼす。安定に影響を及ぼさないように、現場状況を確認し、地下排水工や暗渠排水工等の水平排水材の設置の有無について、検討を行う。なお、水平排水材を設置する場合、段数当たりの配置位置や、配置本数について検討を行う。
2.品質低下となる重要なリスクとマネジメント
(1)重要なリスク
品質低下となるリスクは、盛土材の圧縮沈下による壁面のはらみ出しである。はらみ出しの原因は、基準値内に収まっているものの、細粒分含有量の多い盛土材がはらみ出し部分に集まったからである。
(2)現場責任者としてのマネジメントと留意点
①マネジメント:掘削時においては、盛土材との連結部に小段を設ける。盛土材に使用する材料は、細粒分含有量25%以下の砕石を準備し、砕石同士の隙間を確保する。締固め時においては、振動ローラを使用し所定の強度を発現させる。
②留意点:締固め中に降雨が発生した場合、締固め面に勾配をつけ雨水が溜らない様な処置を行う。
3.変形の発生原因とリーダーシップ
(1)異常な変形の発生原因
豪雨による異常な変形の原因は、表面水の流下による盛土材の流出とそれに伴う沈下であると考えられる。
(2)発揮すべきリーダーシップ
盛土材の流出に対して、発注機関に、工事施工中において、排水ポンプを使用し、表面水を排出する仮排水技術で、盛土材の流出を防止するよう指導する。
一方、盛土の沈下に対して、鉄道事業者に、補強土壁以深の強度を向上させる地盤改良技術で、地盤沈下を抑止するよう指導する。このようにして関係者らに提案して取りまとめることで、補強土壁工事を完成する。
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問題 建設部門 施工 Ⅲ-2
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我が国は、これまでも、安全・安心の確保や持続可能な地域社会の形成、経済成長を図るためにインフラ整備を進めてきたが、引き続きこれらの目的を達成していくためには、我が国のインフラが置かれている状況や社会情勢の変化も踏まえて、必要となる社会資本の整備に取り組んでいく必要がある。
上記を踏まえ、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1) 社会資本の整備を持続的に円滑かつ適切に実行していくための、計画、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの建設生産プロセスにおける課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。ただし、ICT・DXの推進による個々の建設現場の生産性向上に関する課題は除く。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 簡易答案 添削回数7 2023/6/15
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1.建設生産プロセスにおける課題
(1)予防保全型維持管理への転換:建設業務におけるコスト縮減の観点から、事後保全型ではなく補修に対して予測的に取り組むことが課題である。今後は、建設・施工における予防保全型技術で、計画的な修繕を実施し、持続可能なインフラメンテナンスへと改善する。これにより更新費用の抑制を行う。
(2)プレキャスト化による社会資本整備の更新:業務短縮の観点から、維持管理業務では、材料の拾い出しや施工手順を検討などを合理化することが課題である。準備作業に多くの負担や時間が発生する。そこで建設・施工のプレキャスト化技術を活用し現場業務の時間短縮を行う。
(3)仮設構造物の省力化:現場施工における安全性の観点から、調査・施工などの高所作業を伴う仮設の省力化が課題である。そこで、建設・施工の低所作業車等を利用する特殊車両技術を活用し、仮設の省力化を行う。
2.最も重要な課題と解決策
課題は予防保全型維持管理への転換とする。
(1)メンテナンスサイクルの確立:メンテナンスサイクルを確立するためには、インフラの各要素(建物、道路、橋など)の現状を評価し、どの部分が最も劣化しているか診断し、修繕や更新の必要性を把握する。設備や構造の老朽化度や劣化状況、過去のメンテナンス履歴なども調査する。
(2)損傷が深刻な構造物:損傷が深刻で安全上のリスクがある場合は、緊急の修繕や補強を実施し、より大きな損傷や構造の崩壊を防ぐ。補修工事は、構造物の重大な損傷を回避し、将来的なリスクを軽減する。損傷が深刻な既設構造物に荷重を載荷しないように留意し、損傷箇所を補足できるような仮受け設備を構築する。
交通量や損傷程度から、インフラの選別も実施する。
(3)交通量が増加した構造物:交通量など負荷、荷重が増加している場合は、既存のまま補修では耐力不足となる。将来予測も加味して持続可能な余裕のある設計とする。桁幅の広い場合、車道と歩道では荷重が異なることに留意して設計する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)リスク: 焦点となる事項は修繕や更新が進むが、見落としや未知の弱点により構造物は安全上のリスクを考える可能性がある。崩壊や倒壊、橋の損傷による交通事故など。水処理施設の劣化では環境汚染が予想される。
設計面では将来予測と持続可能な余裕を持った設計では、設計の複雑化と技術的な困難さが増大する。車道と歩道で異なる荷重を考慮する場合、設計の複雑化が起こる。
(2)対策
設計の複雑化へ対応するため、差異要件に対応するためよりコンピューターシミュレーションなど緻密な解析や設計手法を取り入れる。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 完成答案形式 添削回数0 2023/7/3
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1.建設生産プロセスにおける課題
(1)予防保全型維持管理への転換
建設業務におけるコスト縮減の観点から、補修・補強に対して予測的に取り組むことが課題である。今後は、建設・施工における予防保全型技術による調査・診断を行い、計画的な維持管理・更新を実施し、持続可能なインフラメンテナンスへと改善する。これにより、損傷が軽微なうちに補修・補強を行い、更新費用の抑制を実施する。
(2)プレキャスト化による社会資本整備の更新
建設現場における業務短縮の観点から、維持管理業務では施工計画段階において、鉄筋や型枠などの材料の拾い出しや施工手順の検討など、合理化することが課題である。そこで、建設・施工におけるコンクリート製品などのプレキャスト化技術を活用し、現場業務の時間短縮を実施する。
(3)仮設構造物の省力化
現場施工における安全性の観点から、墜落や転落の危険性のある調査・施工について、吊り足場などの高所作業を伴う仮設工の省力化が課題である。そこで、建設・施工における橋梁下部の点検・診断に使用される低所作業車等の特殊車両技術を活用し、効率的に作業が行える仮設工事を実施する。
2.課題「予防保全型維持管理への転換」の解決策
(1)調査・診断方法の策定
メンテナンスサイクルを確立するためには、対象構造物を調査し、インフラの各要素(建物、道路、橋など)の現状を評価し、どの部分が最も劣化しているか診断し、修繕や更新の必要性を把握する。
特に橋りょうなどでは、繰り返し荷重による桁の疲労や漏水による桁端部の腐食や支承部の腐食が懸念される。状況を踏まえて、修繕や更新の必要性について検討する。
また、対象構造物の損傷程度をより詳細に把握するため、設備や構造の老朽化度や劣化状況、過去のメンテナンス履歴なども調査する。調査結果は、定期的に更新し、現在のインフラの老朽化状況を把握し、今後の修繕方法に役立てる。
(2)重大な損傷の回避
調査した結果、損傷が深刻で安全上のリスクがある場合、緊急の修繕や補強を実施し、より大きな損傷や構造物の崩壊を防止する。緊急時の対応として、損傷が深刻な既設構造物については、自動車や列車等の荷重を既設構造物に載荷しないように留意し、損傷箇所を補足できるような仮受け設備を構築する。
また、定期的な補修工事の実施により、構造物の重大な損傷を回避し、将来的な災害リスクを軽減することが可能となる。
交通量が少なく、損傷が深刻なインフラについては、廃道などの検討も実施する。
(3)将来を予測した耐震設計
交通量の増加などにより、既設構造物に当初想定した設計荷重以上の負荷がかかっている場合は、既存のままの補修では耐力不足となる。現在の設計荷重を算出し、現状に合った耐震設計を実施する。
また、将来の補修方法を予測し、加味した上で、耐震設計を実施する。具体的には、沓座を交換しやすいように、その周辺をあらかじめ拡幅しておくことなどである。
桁幅が広い国道などにおいては、車道と歩道で設計荷重が異なる。全体のバランスを考慮して耐震設計することに留意する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)リスク
将来予測と持続可能な余裕ある設計は、設計の複雑化と技術的な困難さが増大する。車道と歩道で異なる荷重を考慮する場合、偏った荷重が載荷される。これに加え、沓座周辺の拡幅は、構造物の全体のバランスを崩し、設計の複雑化を発生させる。そのため、多くの既設構造物で、崩壊を引き起こすことが懸念される。
(2)対策
設計計算は、一般的にそれぞれの部材について応力度照査を行っている。差異要件に対応するため、コンピューターによる三次元シミュレーションなど緻密な解析を行う。
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解答者 建設部門 施工 専門事項:施工設計 再現答案(評価A) 2022/11/5
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1.多面的な観点からの課題の抽出
(1)増え続ける老朽化構造物への対応 目標、目的
橋梁などの維持管理・更新業務では、老朽化が進んでから補修・補強作業を行っている。そのため、事後保全型となり、損傷が深度化しているため構造物の崩壊が懸念されている。大規模な災害等により構造物が崩壊すると、人命を保護することが困難となる。人命保護の観点で考えると、老朽化構造物が増え続けていることが課題となっている。
■老朽化構造物が増え続けていることはともかくとして、だからどうすべきかという建設部門技術士としての取り組み姿勢が欲しいです。
(2)設計・施工時期の集中
建設産業では、調査・設計業務を上半期に行い、施工業務を下半期に行っている。そのため、施工業務を実施する場合、補修作業に必要な足場設置作業などの同工種を同時期に行っており、施工時期が集中してしまい、担い手不足となっている。担い手確保の観点で考えると、施工時期が集中していることが課題となっている。
■なぜ集中するのか。困難問題の解消策を建設・施工の視点で考えるのが課題です。
(3)建設生産プロセスへの対応
建設構造物の施工計画書の作成は、現場技術者が行っている。しかし、建設構造物を製作するための過程において、測量や設計業務が必要であり、専門技術者がそれぞれ現場調査を実施している。そのため、施工計画段階において整合性が取れない状況となっている。施工計画作成の観点で考えると、建設生産プロセスへの対応が課題となっている。
■この問題が出題された前提に関する議論となっています。それはそれとして、議論を一つ先へ進めましょう。
2.最も重要と考える課題と複数の解決策
2-1.最も重要と考える課題
最も重要と考える課題として、増え続ける老朽化構造物への対応を挙げる。損傷が深度化した老朽化構造物が崩壊すると、人命を保護することが困難となるからである。
2-2.複数の解決策
(1)予防保全型維持管理への転換
維持管理・更新業務では、損傷が深度化してから行う事後保全型で対応していた。深度化してからの対応は、補修方法の調査や検討、実施工に多くの時間が発生し、構造物の崩壊を防ぐことが困難となる。今後は、損傷が軽微なうちに維持管理・更新を行う予防保全型へ転換する。軽微なうちに補修することにより、人命を保護することができる。
■建設・施工の方策としてはやや抽象的な感じも致します。具体的に個別の技術を提案するのが良いでしょう。
(2)メンテナンスサイクルの実施
維持管理業務では、点検・診断・補修・記録のメンテナンスサイクルを構築する。構築することにより、損傷が深度化する前に補修・補強を行うことができる。
そのため、老朽化した構造物が崩壊する可能性が少なくなり、人命を保護することができる。
(3)アセットマネジメント
構造物を定期的に診断・点検し長期的に活用できるように、アセットマネジメントの考え方を導入する。
導入には、管理水準や管理方法を踏まえて、大掛かりな補修・補強方法とならないように、優先順位を付けて行う。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対応
3-1.新たに生じうるリスク
(1)点検業務の増加
予防保全型維持管理への転換を行い、損傷が深度化する前に補修業務を行うと、点検業務が増加することになる。新たに生じうるリスクとして、点検業務の増加が挙げられる。
(2)点検データ増加による管理方法
補修補強業務による点検業務の増加は、点検データの増加につながる。新たに生じうるリスクとして、点検データ増加による管理方法が挙げられる。
3-2.それへの対策 ←「それ」ではなく具体的に述べる
(1)ロボティクスによる点検
点検業務増加への対応として、ロボティクスによる点検を実施する。河川上空における点検作業では、点検ロボットを高水敷に設置するだけで点検作業を実施することができる。また、点検データは、点検ロボットから取り出すだけで済むため効果的である。
(2)点検データの一元管理
点検データ増加による管理方法として、各官公庁における一元管理が挙げられる。一元管理を実施することにより、損傷箇所や損傷状態を把握することができ、今後の補修計画を立案することが可能となる。
■データの一元管理も良いと思いますが、出来たら積極的にどう活用するかを述べた方が良いでしょう。保存するだけでは益は生まれませんので。
また、国、自治体に依存するのは時代に逆行しているので、むしろビジネス的手法で企業が担う方法を提案した方が良いでしょう。
問題 建設部門 港湾及び空港 Ⅱ-1-3
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空港の滑走路端安全区域(RESA)の拡張に際して、現状の滑走路配置では用地内での整備が困難な場合、考えられる整備方策の選択肢を3つ以上挙げ、各々の利害得失について述べよ。
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解答者 建設部門 空港 専門事項:空港計画 再現答案(評価A) 2022/9/22
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1.RESA拡張の整備方策
(1)空港用地の拡張
空港外用地を買収し、場周道路や場周柵の移設などの用地造成を行う。
■用地拡張以外の移設などの提案も良いかと思います。
https://www.mlit.go.jp/common/001179909.pdf
①メリット
場周道路や場周柵の移転としった比較的簡単な工事のみで事業が完結する。
②デメリット
拡張する用地が民有地であった場合、用地の買収交渉が難航し、事業が完結するまでに時間を要する。
(2)アレスティングシステムの導入
滑走路の過走帯付近に、比較的ぜい弱な材料を設置し、オーバーランした航空機を物理的に拘束する。
① メリット
空港用地内に設置し、用地買収が不要であるため、事業が完結するまでに時間を要しない。
②デメリット
設置する材料や施工自体が非常に高価であるため、初期費用や再設置の際に財源確保が困難である。
(3)滑走路の短縮運用
RESA用地分を確保し、滑走路を短縮運用する。
① メリット
標識の書き換えなど、軽微な整備で完結する。
②デメリット
短縮によって離着陸できない機種がある。 以上
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問題 建設部門 空港 Ⅱ-2-1
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港湾や空港に対するニーズの変化、施設の老朽化、陳腐化等に対応するため、埠頭地区やターミナル地区の再編を行うことが増えてきた。このような状況の中で、機能が不足する港湾や空港の埠頭地区やターミナル地区において、当該地区の物流や人流の機能を再編し強化する基本計画の内容をとりまとめることになった。あなたがこの業務を担当責任者として進めることとなった場合を想定し、下記の内容について記述せよ。ただし、環境および防災に関する事項は解答に含めなくてよい。
(1)再編する地区の種類・機能を明記したうえで、調査、検討をすべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 建設部門 空港 専門事項:空港計画 再現答案(評価A) 2022/9/22
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1.調査・検討すべき事項とその内容
(1)旅客ターミナル地区
旅客ターミナル地区は、航空機利用者が搭乗する旅客ターミナルビル、空港アクセスに必要な鉄道駅、バス停、構内道路・駐車場が位置する地区であり、利便性の向上について検討する。
(2)貨物ターミナル地区
航空貨物として輸送する荷物を市街地から空港へと搬入し、航空機へ搭載させるための施設が位置する地区であり、市街地からのアクセス性向上や建物の機能向上などを検討する。
■参考資料としてこのような提案もありますのでご参考にしてください。
https://www.mlit.go.jp/common/001042510.pdf 26ページ
横田飛行場 旅客輸送の実現に向けた課題
○管制 運用面
-技術的な課題について、十分な検討が必要
○旅客ターミナル地域の整備
-現在米軍が使用している既存のターミナルビルとは別途、民航機専用のターミナル地域を整備する必要
○地上アクセスの整備
-旅客利便性向上のため、鉄道やバス等のアクセス手段を確保する必要
○騒音対策
-新たに騒音影響が発生又は拡大する地域については騒音対策が必要。また、騒音対策の検討にあたっては、騒音影響を受ける地域との合意形成を図る必要
2.業務を進める手順
(1)事前調査
ターミナル地区の利用状況や建物の老朽化度合いなどを事前に調査する。調査にあたっては、繁忙期のみのデータに着目しないよう留意する。
(2)将来需要の検討
当該空港における将来的な旅客や貨物の需要を検討する。検討にあたっては、地元の地方公共団体や経済団体などの方針などを確認することに留意する。
(2)所要規模の算出
将来需要の検討結果から必要される施設・設備の規模を算出する。算出にあたっては、将来的な需要の伸びについても見込むが、あまりにも過大な規模にならないよう留意する。
(3)施設の配置計画
算出した規模に基づき、施設配置を立案する。立案にあたっては、既存施設との干渉や導線の支障にならないよう留意する。
(4)施工計画の立案
工程表や施工ステップなど、ターミナル再編のための施工計画を立案する。立案にあたっては、空港の運用やセキュリティに支障が出ないよう留意する。
3.業務を効率的に行うための調整方策
(1)調整対象となる関係者
空港管理者、空港運営権者、航空会社、貨物事業者、二次交通などの空港内関係者および地方公共団体などの行政機関が関係者となる。
(2)調整方法
個別調整を行った上で、空港協議会などの場を活用して関係者全体へ説明し合意形成を図る。この手順を踏む事で調整の手戻りが少なくなり、効率的に業務を進めることができる。説明にあたっては、定量的かつ分かりやすい表や図などを用いた資料を作成することが調整を円滑に進めるためには効果的である。
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問題 建設部門 空港 Ⅲ-2
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問題文 Ⅲ-1 地方創生が主要課題の1つである我が国では、新型コロナウイルス感染症流行に伴う大きな影響を踏まえ、地方の経済振興に取り組んでいくことが求められている。港湾及び空港においては、アフターコロナを見据えつつ、物流・人流の脆弱性や今後の動向等を考慮し、地方の経済振興に貢献していくことが期待されている。
(1)国際の物流・人流に着目し、地方の経済振興に貢献するために港湾及び空港において取り組むべき課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。ただし、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、地球温暖化対策、自然災害対策に関する取組は除くものとする。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した全ての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者 建設部門 空港 専門事項:空港計画 再現答案(評価A) 2022/9/22
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(1)空港の魅力向上
コロナ禍以前は、格安航空会社(LCC)や訪日外国人によって需要が増加し、空港はにぎわっていた。一方で、市街地から空港までのアクセス手段が少ないため、旅行者の行動範囲は限られていた。また、空港はひとつの交通手段としてのみ考えられており、利用者の滞在時間は短いものであった。空港内消費の観点から、いかにして空港の魅力を向上させるかが課題である。
■空港の魅力について具体的な機能、役割を述べた方が良いでしょう。魅力ある空港とは究極の目標(結果)であり、経済振興はそのための1観点です。
(2)貨物ターミナル地区の機能向上
空港で取り扱う貨物は、食料品、電子機器、化粧品などの軽量で付加価値が高いものが多くなっている。北九州空港においては、食用の生体馬が輸送されるなど、航空輸送貨物の品目は多様化している。一方で、地方空港には保税スペースや大型の冷蔵施設が備えられていないことが多く、海外貨物の受け入れを断らざるを得ない状況となっている。国際貨物受け入れの観点から、いかにして貨物ターミナル地区の機能を向上させるかが課題である。
(3)空港背後圏の活性化
地方空港の多くは、市街地から離れた場所に位置している。これは、周辺住民に対する騒音への配慮や安価な土地に立地しているためである。これにより、市街地からのアクセスが不便な箇所となっており、空港利用者以外が空港背後圏の街を目的地として訪れる機会は少ないものとなっている。空港周辺用地有効活用の観点から、いかにして空港背後圏を活性化させるかが課題である。
■空港による地方活性化の議論ですから、その利用者以外の人が有効活用して活性化するでは話が逆のように感じます。
2.最も重要な課題とその解決策
最も重要な課題は、(1)空港の魅力向上だと考える。なぜなら、空港の魅力が向上し、海外からの訪日旅客が増加することで、地方の経済振興に貢献することができるためである。
(1)ビジネスジェット専用施設の整備
世界の富裕層などを顧客としたビジネスジェットの需要が高まっている。一般の旅客ターミナルとは別の場所にビジネスジェット専用施設を整備する。これにより、海外から地方空港へ訪日する旅客を増加させることで、地域の経済振興に貢献することができる。
(2)旅客ターミナルの利便性向上
旅客ターミナルの出入国管理施設、チェックインカウンター、二次交通へのアクセスなどの利便性を向上させる。具体的には、FAST travelの推進、構内道路・駐車場の再編整備などである。このように旅客ターミナルの利便性を向上させることで、空港の魅力を向上することができる。
(3)多様な人に配慮した施設の整備
世界各国の人々に地方空港を利用して頂くため、様々な考え方や習慣を持った方々に対応した施設整備を行う。具体的には、多言語に対応した案内看板、翻訳デバイスの配置、礼拝用スペースの設置などである。
3.新たに生じうるリスクと対策
(1)新たに生じうるリスク
解決策を実行しても新たに生じうるリスクはコストの増加であると考える。なぜなら、従来まで無かった施設や設備の初期投資費用や維持管理費が発生する可能性があるからである。
■新たな取り組みでコストが発生するのはよくあることなので、このような前提事項では月並みに感じます。また、建設費なら見積であらかじめわかることで、回避できます。
ビジネスジェット、FAST travel、多言語の外国人が増えれば増えるほど問題となることがたくさんあります。施策に隠れたサプライズのリスクを提示され他方が良いでしょう。
(2)リスクへの対策
リスクへの対策として、地方空港のコンセッションを推進する。これにより、効率的な空港運営を行うことで、コストが増加するというリスクを低減することができる。
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問題 上下水道 Ⅰ-2
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上下水道は、生活基盤を支えるインフラとして重要な役割を果たす一方で、その事業活動においては、多くの資源やエネルギ-を消費し、温室効果ガスや廃棄物等を大量に排出している。このため、上下水道には、事業活動に伴う環境負荷を低減し、地球温暖化の抑制や持続可能な社会の構築に貢献していくことが求められている。この状況を踏まえて、以下の問に答えよ。
(1)上下水道分野において事業活動に伴う環境負荷を低減するため、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の具体的な対策を示せ。
(3)すべての解決策を実行して新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。
(4)前門(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
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解答者 水道部門 下水道 専門事項:下水渠 簡易答案 添削回数13 2023/5/23
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(1) 上下水道分野の環境負荷を低減するための課題と内容
1)主ポンプ機器の省エネルギ-化の推進:処理水質に影響のない主ポンプの運転水量をインバ-タ制御により、流入量に対する送水量を回転調整し、電力の削減する。また、大口径ポンプの運転停止頻度を少なくし、ポンプ寿命の影ない。
2)新エネルギ-のバイオ発電の導入:バイオ発電で、下水汚泥を消化槽に送り、消化タンクに汚泥を嫌気条件下で発酵することで消化ガスが得られ、そのガスをガスタービンで燃焼させて発電使用する。処理場に太陽光発電の導入し発電の利用。
3)汚泥資源のリサイクル材料による循環:下水道脱水汚泥を肥料やセメント原料・建設資材にリサイクルする。乾燥汚泥は緑農地へ利活用する。浄水発生土の有効利用する。水道汚泥を機械脱水処理し、セメントや園芸用土に活用する。
(2)省エネルギ-化の推進の解決策
①位置エネルギー有効利用:水の運用と適正化するため、需要ピークに備えて適正な配水池貯留を確保することは、浄水量や送水量をできるだけ均等化する。②可変速ポンプ及び容量制御:配水管の末端の圧力監視を行い、ポンプ吐出圧のきめ細やかな制御を実施し、過剰な配水圧を少なくする。③管路抵抗の低減:送水管や浄水管等の管路の抵抗を低減して、管路の損出を少なくする。
④改築計画に伴う省エネ化 :浄水場の更新改築に伴い、配水池入口の水圧を利用して小水力発電と直接配水ポンプ2台の小水力発電を導入する。
(3)新たに生じるリスクと対策
1)リスク:高効率の良いポンプ交換やインバ-タ制御のポンプ交換を順次毎年行っていく当初の計画だったが、線状降水被害や鉄鋼の高騰により、経済的に交換が困難な状況となった。
2)対策 ①送水管整備見直し:送水管で高低の低い浄水場からポンプ圧送を見直して、送水管ネットワ-クを進めで、高低差に配慮した水の運用を行う。取水についても高低差を考慮した適正ル-ト見直し行う。②小水力発電の導入 :浄水場から複数の給水所へ送水する際、最も標高の高い給水所に向けてポンプを圧送するが、比較的標高の低い給水所では余剰の水圧が発生する。小水力発電機を設置すること余剰水圧を電気エネルギーとして回収する。
③給水所の新設・充実 :給水所の地域的な配水池容量の不足を解消し給水所を順次整備する。効率的な水の運用を実施する。
(4)技術者倫理と社会の持続可能性
1)技術者倫理:技術者倫理を高めるため、各ポンプの貯留池水面と吐出し高さをべるぬ-いの定理から揚程を見直し、損出水頭を減らすことでポンプ消費エネルギ-を減らし年間の費用を減らす。これは公衆の利益に相当する。
2)社会の持続可能性:社会持続可能性を高めてするには、処理場やポンプ場を24時間体制で運営管理して、気候関連災害や自然災害に対するレジリエンス強化に貢献する。これはSDgs13気候変動に具体的な対策をに相当する。
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解答者 水道部門 下水道 専門事項:管渠設計 簡易答案 添削回数5 2023/6/11
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1.上下水道分野における環境負荷の低減に関する課題
1)省エネルギー対策の強化
エネルギー利用効率向上の観点から、送配水・水処理・汚泥処理の工程において、多くの消費電力を必要とする、ポンプ設備の改善、設備の省電力化が課題。
2)再生可能エネルギーの活用
新たな電力源創出の観点から、環境負荷低減のため、再生可能エネルギーの活用が必要。下水汚泥によるバイオマス発電、小水力発電、太陽光発電の実施が課題。
3)省資源の推進
資源活用・再生の観点から、浄水場・下水処理場で大量に排出される汚泥の再利用や、浄水場・処理場における薬品注入の自動制御運転による最適化が課題。
2.最重要課題に対する解決策
1)最重要課題:「省エネルギー対策の強化」。喫緊の課題で、コスト縮減に繋がる。
2)解決策
➀水処理設備の効率化
浄水場において、撹拌装置・ポンプ設備については、高効率のモーター、インバ
ータ制御、台数制御を行う。施設更新時は、標高の高い施設を統廃合し、高低差を
利用した水処理フローに変更する。
➁創エネルギーによる省エネ
配水池・処理場の屋上に太陽パネルを設置し、太陽光発電を行う。下水処理水の
高低差を利用した小水力発電、汚泥消化施設では、消化ガス発電により、電力を供
給し再生可能エネルギーの有効活用を図る。
➂処理プロセスの改善
上水道では、原水水質が良好な上流から取水量を増加させ、次亜塩素ナトリウム
や凝集剤の薬品流入量の削減を行う。下水道では、更新の際に酸素移動効率の高い
散気装置を採用、反応タンクでの硝化促進を図る。
3.新たに生じうるリスクとその対策
発電開発が無計画に拡大すると、山林開発による土砂被害に発展するリスクがある。対策としては、上下水道施設の配水池・処理場屋上に、太陽光発電のパネル
を設置する。新たに発電のための用地は確保せず、既存施設内に整備する。
4. 業務遂行において必要な要件
1) 上下水道事業の環境負荷低減のため、処理場等の制御にICT自動運転管理を導入し、水処理する。電力消費の抑制を図り、温室効果ガスの排出量を削減し、地球環境の保全に貢献する。
{C}2) {C} 上下水道事業の処理水系統の各所に小水力発電を導入し、再生可能エネルギーを得る。これは、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」に相当する。
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解答者 水道部門 下水道 専門事項:管渠設計 完成答案形式 添削回数5 2023/6/14
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(1)上下水道分野における環境負荷低減の課題
1)省エネルギー対策の強化
エネルギー利用効率向上の観点から、上下水道事業では、送配水・水処理・汚泥処理の工程において、多くの電力を消費し、二酸化炭素等の温室効果ガスを大量に排出している。そのため、上下水道施設について、ポンプ設備の改善、設備・機械の省電力化が、課題である。
2)再生可能エネルギーの活用
新たな電力源創出の観点から、環境負荷低減のため、
上下水道事業活動については、再生可能エネルギーの活用が必要である。そのため、下水汚泥の消化ガスを活用したバイオマス発電、配水池間の標高差を利用した小水力発電、施設用地を利用した太陽光発電等の実施が、課題である。
3)省資源の推進
資源活用・再生の観点から、浄水場・下水処理場では、多くの薬品や電力を使用して水処理を行い、大量の汚泥を排出させている。省資源を推進するため、浄水場・下水処理場における薬品注入の自動制御運転による最適化、汚泥の有効利用を実施することが課題である。
(2)最も重要な課題1「省エネルギー対策の強化」の解決策
➀水処理設備の効率化
浄水場・下水処理場において、撹拌装置・ポンプ設備及びろ過濃縮・汚泥濃縮設備等については、高効率型のモーター、インバータ制御、台数制御を実施する。
複数の浄水場や配水池の間に、連結管が整備されている場合、エネルギー使用効率が最小になるよう、施設の運用方法を調整する。施設の更新時には、標高の高い施設を統廃合し、高低差を利用した水処理フローに変更する。
➁創エネルギーによる省エネルギー
配水池・下水処理場の屋上や、空きスペースに太陽パネルを設置し、太陽光発電を行う。下水処理場の放流水の高低差を利用した小水力発電、汚泥消化施設では、汚泥の集約化を図り、消化ガス発電により、施設内に電力を供給することで、再生可能エネルギーの有効活用を図る。
また、下水や下水処理水が有する熱を、熱交換システムにより、上下水道施設内の冷暖房・電灯や道路融雪に使用し、省エネルギーを実施する。
➂処理プロセスの改善
上水道では、原水水質が良好な上流から取水量を増加させ、次亜塩素ナトリウムや、凝集剤等の薬品流入量の削減を行う。下水道では、処理設備更新の際には、酸素移動効率の高い散気装置や高効率ブロアを採用し、反応タンクへの消化促進を図る。
また、下水処理場における二軸管理(処理水質と消費エネルギーを両立させた最適管理)を実施することにより、季節によって運転方式を変えて、処理水質の改善を図る。
(3)新たに生じうるリスクとそれへの対策
1)新たに生じるリスク
太陽光発電の用地開発のため、無理な山林開発による短時間強雨等に伴う土砂災害発生のリスクがある。
2)リスクへの対策
上下水道施設である配水池や下水処理場の屋上に優先的に、太陽光パネルを設置する。新たに発電のための用地は確保せず、既存施設敷地内の空きスペースに、太陽光パネルを整備する。
(4)業務遂行において必要な要件
1)技術者としての倫理
技術者倫理も高めてするには、上下水道事業の環境負荷低減のため、処理場等のICT自動運転管理を導入した水処理技術により、電力消費の抑制を図る。
電力消費に伴う温室効果ガスの排出量を削減し、地球環境の保全に貢献する。
2)社会の持続可能性の観点
社会持続可能性を高めてするには、上下水道事業の処理水系統に、小水力発電を導入し、再生可能エネルギーを得る。これは、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」に相当する。
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解答者 水道部門 上下水道 専門事項:送配水 再現答案(評価A) 2022/8/27
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1. 上下水道共通の課題
(1)省資源化(資源の観点)
上下水道事業は事業運営に伴い、大量の資源を消費している。浄水場や処理場における薬品注入、発生する汚泥等大量に資源を消費している。このため、リサイクル、リデュース、リユースを行い、省資源化を図ることが課題となっている。
■やや課題としては大きすぎのようです。それ自体が難題なので、分解して実現性の高い課題とした方が良いでしょう。
(2)省エネルギー化(エネルギーの観点)
上下水道事業は水輸送に多大なエネルギーを消費している。ポンプ加圧方式による電力消費、管路破損(漏水年2万件、管渠破損による道路陥没年3000件)等によりエネルギーを浪費している。このため、水運用の効率化、補修等を行い、省エネルギー化を図ることが課題となっている。
■いわゆる省エネとはやや観点が違うように感じます。
(3)長寿命化(施設の観点)
高度経済成長期に一斉に整備された多くの施設が老朽化している。これらの施設を法定耐用年数で更新すると多くの資源を必要とする。コンクリートや埋め戻し材等の使用、重機に使用するエネルギーの大量消費。このため、施設の健全性を把握した補修等を行い、長寿命化を図ることが課題となっている。
■主題である長寿命化を図る課題を述べた方が良いでしょう。埋め戻し材や重機のエネ消費は関係薄いようです。
2. 最重要課題と解決策
省エネルギー化が環境対策として最も効果があるため、最重要課題と位置付けた。以下に解決策を述べる。
(1) 再生可能エネルギー導入
自然流下方式で未利用エネルギーがある場合の小水力発電、浄水場や処理場の空き用地を活用した太陽光発電、風力発電、下水でのバイオマス発電等を導入して省エネルギー化を図る。
■再エネと省エネではやや観点が違うので、矛盾があります。ここはZEBなどが良いのでは。
(2) 高効率機器等の導入
ポンプ等においてインバーター制御の導入、建築物の照明ではLEDの導入を行う。また、移動車には電気自動者の導入を行い、省エネルギー化を推進する。
(3) 施設の統廃合・ダウンサイジング
人口減少の伴い、水需要が減少して施設能力の過大が生じている。施設能力の過大は非効率な運転が強いられ、エネルギーの浪費に繋がる。このため、施設能力の適正化を図る統廃合ダウンサイジングを実施する。また、隣接事業体との広域化を図ることで効率的なダウンサイジング統廃合を実施できる。
3. 新たなリスクと解決策
(1) 人材不足による事業の停滞(リスク)
人口減少・職員の退職が今後加速することで人材不足による事業の停滞が生じる恐れがある。
(2) 官民連兼(解決策)
民間の経営ノウハウや人材を活用する官民連携を実施する。DB方式やDBO方式を活用して、職員が行う業務を民間事業者が行う。
4.技術者として必要な要件
技術者倫理:業務遂行において、国民の安全を最優先とする。また、利害関係が発生する場合の判断基準として公衆の利益を判断基準とする。
■これは技術士倫理綱領の言葉そのものであって、求められている問2の要件ではないみたいです。ご自身の提案に即した独自性のある提案が求められます。いつでも通用する一般論ではご自身の貢献を表明しにくいです。独自の改善提案を示して、専門家としてのコンピテンシーを主張してください。
社会持続性:社会の持続性を優先して業務に取り組む必用がある。環境負荷の少ない材料の採用、施設の統廃合の提案により、次世代に渡って継続可能な社会を確保する。
問題 上下水道部門 下水道 Ⅱ-1-3
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下水道管路における圧送式輸送システムのリスクについて2つ挙げるとともに、それぞれのリスクについての対策について述べよ。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 簡易答案 添削履歴4 2023/2/12
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1. 硫化水素による下水道施設損傷のリスク
下水量が少ないと圧送間隔が伸びて、下水が管内で長時間滞留し、嫌気状態となり、下水中の硫酸イオンが硫酸塩還元細菌により還元され、硫化水素が発生する。液相中の硫化水度が気相部に放散され、硫酸が発生し、管路内の壁面やマンホール内面が損傷するリスクがある。
対策
ポンプの低水位運転を行い、ポンプ運転間隔を短くする。高圧洗浄による管内清掃を行い、堆積物を除去する。管路・マンホール内面を耐食性材料で防食する。
2. 管路つまりや破損により機能停止するリスク
圧送管路は、ポンプによる高水圧が常に作用するため、下水中の汚物や管壁付着による管路つまりや地震時の地盤変動による管破損が発生し汚水が溢水、下水の圧力輸送が停止するリスクがある。
対策
ポンプ槽内での汚水撹拌が可能なポンプへの改修、汚物が管路へ流入しないスクリーン設置を行い、定期的に槽内の点検清掃を実施する。耐震性の管材・継手使用による管路更新を行う。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 完成答案形式 添削履歴0 2023/3/5
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1.硫化水素による下水道施設損傷のリスク
(1)概要
下水量が少ないと圧送間隔が伸び、下水が管内で長時間滞留し、嫌気状態となる。液相中の硫化水素が気相部に拡散され、硫酸が発生し管内の壁面やマンホール内面が損傷するリスクがある。
(1)対策
①圧送ポンプの低水位運転を行い、ポンプ運転間隔を短くし、管内に下水が長時間滞留しないようにする。
➁高圧洗浄による圧送管内清掃を行い、堆積物や管壁付着物を除去排出する。
③管路・マンホール内面を、耐食性材料により防食を行い、内面を防護する。
2.管路つまりにより機能停止するリスク
(1)概要
圧送管路は、ポンプ設備により下水を圧力輸送するため、油脂類の管内付着箇所から汚物による管路つまりが発生し、下水の圧力輸送が停止するリスクがある。
(2)対策
➀槽内洗浄装置付ポンプへ改修することで、スカムの発生を防止する。
➁汚水流入箇所に汚物用バスケットとスクリーン設置を行い、圧送管路への汚物流入を防止する。
➂ポンプ槽内の汚物や堆積物を、高圧洗浄により除去排出する。
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問題 上下水道部門 施工 Ⅱ-2-1
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近年、都市化の進展等に伴う浸透面積の減少により雨水の流出量が増え、河川や下水道にかかる負荷が増加していることに加え、気候変動の影響等により大雨等が頻発し、内水氾濫が発生するリスクが増大している。また、昨年には「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」が施行され、流域治水の取組が法的にも加速されることとなった。このような状況の中、ある流域において流域治水を考慮した「気候変動を踏まえた下水道による都市浸水対策計画の策定」をすることになった。あなたがこの業務の担当者に選ばれた場合、下記の内容について記述せよ。
(1) 調査・検討すべき事項とその内容について記述せよ。
(2) 業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 簡易答案 添削履歴9 2023/3/26
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1. 調査・検討すべき事項とその内容
1) 市街地の舗装比率の高い地域を調査して、雨水浸透の浸透ます整備を検討する。
2) 雨水排水管の余裕度の小さい系統を調査し、雨水貯留の貯留管整備を検討する。
3) 排水系統ごとの浸水リスクを調査して、ポンプ所の分担割合を検討する。
2. 業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
➀集中豪雨被害軽減地区の設定 重点的に浸水対策を実施すべき区域は、浸水被害
の発生状況や浸水リスク、資産・人口の集積状況等を勘案して設定する。雨水貯留
浸透施設整備の対策し易い公共施設を先にリストアップし、優先的に整備する。
➁雨水貯留施設整備 排水能力に余裕がある管きょ系統に一次貯留させるため、バイパス管整備による既設管のネットワーク化を図り、貯留能力の増強を図る。雨水の速やかな排除の為、ポンプ能力増強として台数増、高効率ポンプへの更新を行う。
➂下水道総合浸水対策方針の策定 照査降雨の浸水シミュレーションにより、地域状況や当面・中期・長期の段階に応じた対策方針を設定する。既設管渠の増径・増補管整備、リアルタイムコントロールによるポンプ運転管理システムを構築する。
3. 関係者との調整方策
河川管理者は、整備に時間要する為流出抑制対策の貯留整備を主張する。事業者は、貯留施設整備には事業費がかかるので反対。住民は、民間施設への施設要請を拒否。そこで私は、浸水対策計画の策定時浸水シミュレーションによる浸水危険度分析から、被害解消に伴う経済効果を3者に説明し、重点地区の早期対策とする貯留管の道路内布設を主張した。併せて関係者に雨水貯留浸透施設整備を要請した。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 完成答案形式 添削履歴4 2023/4/13
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(1) 調査・検討すべき事項とその内容
1)雨水浸透施設整備の調査・検討
市街地の舗装比率の高い地域を調査し、雨水浸透の浸透桝を地下に配置することを検討する。
2)雨水貯留施設整備の調査・検討
雨水排水管の余裕度の小さい系統を調査し、雨水貯留の貯留管整備を検討する。
3)ポンプ所分担割合の調査・検討
排水系統ごとの浸水リスクを調査して、ポンプ所の排水能力が増となるポンプ運転調整の割合を検討する。
(2) 業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
➀-1浸水対策実施地域の設定
対策を実施すべき区域は、浸水被害の発生状況や浸水リスク、資産分布、人口分布、都市機能状況、投資効果等の情報を収集し、水害規模に応じて設定する。
➀-2公共施設の優先的整備
都市浸水被害の事前防災とする浸水被害対策として、雨水の排除、浸透、貯留の施設を整備する。対策のし易い公園・緑地などの公共施設を先にリストアップし、優先的かつ集中的に整備を進める。
➁-1雨水流出抑制対策の実施
気候変動に伴う将来の降雨量増加を反映した地域ごとの浸水リスクを想定し、浸水要因分析を行う。浸水シミュレーションに基づくリスク評価で、評価指標の高い地域から計画的に雨水貯留浸透施設を設ける。
➁-2雨水貯留対策
貯留施設は、雨水の貯留後に短時間で排水できるものとし、かつ整備の早期化のため、浸水被害軽減の効果が大きい既存の下水道施設を利用した対策とする。
➁-3観測情報からの即時対応
内水浸水の即時対策に必要なリアルタイムの被害把握のため、浸水センサーを設置し、変化する水害に対応した流域治水の水門や貯留対策を行う。
➂排水ポンプのリアルタイムコントロール
流域全体に雨量計、水位計を設置し、リアルタイムに降雨強度をとらえてその雨量を排水できるよう、遠隔操作可能なポンプ運転制御システムとする。
短時間強雨に対して、降る前に排水貯留管内の雨水を、河川へ放流しておくことで、貯留対策で雨水負荷を緩和し、都市部流域の浸水被害の軽減を図る。
(3)関係者との調整方策
河川管理者は、雨水貯留施設での整備を主張する。事業者は、雨水貯留施設の整備を拒否する。住民は、民間施設への雨水貯留施設整備を拒否している。
そこで私は、浸水対策実施が困難な公園内への貯留施設整備による被害の早期軽減及び投資効果を、浸水氾濫解析シミュレーションの結果に基づき主張した。
重点地域への浸水対策実施による被害軽減面積及び被害軽減額を、多段階における浸水解析図を活用し、対策の必要性を3者に説明することで取りまとめた。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:下水渠 簡易答案 添削履歴6 2023/7/1
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(1) 調査、検討する内容
1)内水氾濫、被害状況調査・検討:近年の内水氾濫からバックウォーターによる浸水被害や堤防を越える状況の調査を行う。浸水状況が、低地部で毎年床上・床下浸水の発生する地区を重点地区として検討を行う。
2)計画降雨に対する安全性の検討:計画降雨レベル1の50㎜/hに対して、既存雨水渠と増補管を圧力状態で許容する。照査降雨レベル1´60㎜/hに対して貯留施設を多用し、管渠流れを自由水面流れとし流下の安全を解析し検討する。
3)流域内の施設に対する調査・検討: 市街外の浸水については、水田貯留や農業用水路を活用して貯留量確保可能か調査し検討する。市街地内においては、民間の貯留施設ができるか調査し貯留量を検討する。さらに、管渠の能力不足を補いため、バイパス管ルート検討を行う。
(2)業務を進める手順と留意すべき点と工夫すべき点
1)目標降雨設定: 既存降雨強度3年:47.5mm/hから、計画降雨レベル1の5年55.5mm/hに全地域を変更し、雨水管渠 貯留施設浸規模の決定に用いる。浸水重要地区については、照査降雨レベル1´の7年60.5mm/hを使用し減災対策の設定とする。また最大規模降雨レベル2は、10年65.7mm/hで安全避難の確保を図る設定とする。
2)流域内貯留施設 :流域水害を減らすため、流域内に雨水浸透施設や雨水貯留施設の対策を強化する。また、水田貯留・農業用水路を活用・民間貯留施設等の設置事業進める。
3)河川放流口逆流防止と内水処理 :現在河川の吐口が開口のみで、逆流防止弁(フラップゲ-ト)が設置されていないとことが多く、河川からの氾濫を防ぐ。また、樋門が設置されている場合、ゲ-トを閉めると、内水処理する場所がないため内水氾濫を防ぐのみ、ポンプゲ-トに変更し、内水を河川に影響ない範囲で放流する。
4)耐水施設化:内水氾濫により、浄水場やポンプ場が冠水し被害が発生するため、施設を耐水化施設変更する。電気施設を浸水しない2階に変更し扉を防水扉とする。また、処理場内に雨水が侵入しないように、門に止水板を設置する。
(3)関係者との調整方針
河川管理者は、気象変動による内水氾濫を防ぐため河川改良を進める。地域住民は、内水氾濫しないように下水道の整備を求める。そこで私は、下水道課に既設管渠のネットワーク化と幹線管渠の活用し、既存施設に暫定的な貯留を行うことを提案する。さらに、関係者間で情報ネットワークを構築し、緊急時における情報連絡体制を構築し、河川水位状況と下水運転上状況を示し、住民に安全状況を示すことにより避難体制の充実を図る。
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問題 上下水道部門 下水道 Ⅲ-1
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D県A市(人口約60万人)の単独公共下水道B処理区(合流区域(汚水・雨水)、分流区域(汚水))のC処理場は、供用開始から50年以上経過し、更新時期を迎えている。人口減少に伴い、厳しい財政状況の中、施設の耐震化や合流式下水道の改善、高度処理の導入などの機能の高度化や処理区の不明水対策も進んでいなかった。そこで、単独公共下水道B処理区に隣接しているD県流域下水道E処理区(分流式(汚水))のF処理場に編入することとなった。こうした状況を踏まえ、単独公共下水道処理区を流域下水道処理区に編入する技術者として、以下の問いに答えよ。
(1) 単独公共下水道処理区を流域下水道処理区に編入するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 全問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について示せ。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 簡易答案 添削履歴6 2023/5/5
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1. 公共下水道を流域下水道に編入する課題
1) 合流区域の分流化 (雨天時の負荷を軽減する観点)
B処理区をE処理区へ編入した場合、雨天時増水によりF処理場の処理能力以上の汚水が流入し、放流水質が悪化する。そのため、B処理区合流区域の雨水を切り離し、雨天時に約4割増加する浸入水量を減少させる。
2)F処理場の処理能力についての分析評価 (既存施設での処理を優先する観点)
最新の計画汚水量や水量実績を基に、F処理場施設の容量計算(処理能力207,800m3/日)を行い、既存処理施設の余裕能力を明確化する。処理能力の余力が不足の場合は、水処理・汚泥処理設備の一部改造や運転管理の改善を図る。
3)不明水対策及び機能の高度化対策 (下水道品質向上/キャッチアップの観点)
幹線系統別に流量調査を行い、簡易水位計による浸入箇所の絞り込みを行う。
F処理場の耐震化と併せて、高度処理設備の増強を図る。
2. 課題1「合流区域の分流化」とその解決策
2)解決策
➀B処理区における雨水の分離
B処理区幹線での貯留施設として雨水貯留管や雨水滞水池を設置する。B処理区合流管きょから汚水を分離する管きょを増設する。
➁処理能力の増強
C処理場において、単独の合流区域からの流入箇所に分水人孔と汚水管・雨水管へのバイパス管を増設する。
➂B処理区に浸透施設の設置
雨水浸透施設として、浸透桝・浸透舗装・浸透側溝・浸透管をB地区に設置して、
雨水の流入量を削減する。
3. 新たに生じうるリスクとそれへの対策
1)汚水分離管、汚水バイパス管の接続箇所が、一部既設管使用のため脆弱であり
大規模地震時においてずれや破損が発生し、陥没事故が起きるリスクがある。
2)リスクへの対策
➀接続箇所は、レベル2地震動発生時に、耐震性能2が確保できる補強を行う。
➁既設管との接続箇所は、耐震性可とう継手を設置する。
➂接続箇所の幹線管きょ、汚水管・雨水管は、更生工法により耐震化する。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 完成答案形式 添削履歴1 2023/5/13
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(1) 流域下水道処理区に編入するに当たっての課題
1)合流区域の分流化(雨天時負荷を軽減する観点)
B処理区のE処理区への編入は、雨天時増水によりF処理場の能力以上の汚水が流入する。そのため、合流区域の雨水を切り離し、雨天時増水が推測される浸入水量を減少させる必要がある。
2)F処理場の処理能力についての分析評価(既存施設での処理を優先する観点)
最新の計画汚水量や排水量実績を基に、F処理場施設の容量計算を行い、処理施設の余裕能力を明確化する。そのため、処理能力が不足する場合は、既存処理設備の改造や運転管理の改善を図る必要がある。
3)不明水対策及び機能の高度化対策(下水道品質向上・キャッチアップの観点)
B処理区幹線系統別の流量調査により、簡易水位計を使用し、不明水浸入箇所の絞り込みを実施する。そのため、F処理場の耐震化と併せて、高度処理設備の増強を図る必要がある。
(2) 最重要課題「1合流区域の分流化」の解決策
1)解決策
➀B処理区合流区域における雨水の分離
B処理区の幹線における貯留施設として、雨水貯留管や雨水滞水池及び地下貯留施設を、新たに整備する。
下水を一時的に貯留して、降雨後に処理場に送水する
ことで、公共用水域への雨水流出の抑制を図る。
B処理区合流区域の幹線下流域に、新たに雨水吐を設け、越流堰を超えた雨水は速やかに河川に放流する。B処理区合流区域内の既設合流管きょから、汚水のみを分離排水する管きょを増設する。公共用水質保全の観点から第一に行うべき方策である。
➁処理能力の増強
単独公共C処理場において、単独合流区域からの流入箇所に、汚水と雨水を分離する分水人孔と、既設の汚水管・雨水管へのバイパス管を新設する。管きょ排水容量を増大するため、管きょの増径・増補管を設置する。同時にC処理場内既存施設の一部を、雨天時の不明水処理対策とするため、一時貯留施設に改造する。循環型社会推進の観点から既存施設の改善が良い。
➂B処理区に浸透施設の設置
雨水浸透施設として、浸透桝・浸透性舗装・浸透側溝・浸透管を、B処理区の全域に設置することで、合流管きょ、汚水管・雨水管への雨水流入量削減を図る。質的な効果として、分水人孔からのファーストフラッシュの流出抑制の汚泥負荷削減が可能となる。都市浸水被害対策の観点から積極的導入とするのが望ましい。
(3) 新たに生じうるリスクとそれへの対策
1)新たに生じるリスク
汚水分離管や汚水・雨水バイパス管の接続箇所が、一部既設管使用のため脆弱であり、大規模地震発生時に管ずれや破損・クラックによる、道路陥没事故が起きるリスクがある。
2)リスクへの対策
➀耐震性能確保
B及びE処理区幹線系統における既設管との接続箇所は、地震発生時に耐震性能レベル2の確保が可能となる、耐震性可とう継手を設置し、耐震補強を図る。
➁既設管耐震化
幹線管きょ、既設汚水管・雨水管については、更生工法により管きょの耐震化と併せて、長寿命化を図る。既設管きょ内に、新管または既設管と一体となり、土圧に対抗できる構造の管を構築する。
耐震性能を有していない既設管や、接続不良箇所が多い路線、原型断面が維持されていない路線については、地震に強い耐震性可撓管への布設替えを実施する。
➂液状化対策
新設箇所については、埋戻し土のセメント等による固化、砕石材による埋戻し、埋戻し土の締固めを行う。
布設替え箇所は、固化工法(埋戻し土へのセメントや石灰混入)、振動工法(周辺地盤の締固め)、砕石ドレーン(過剰間隙水圧の消散)を実施する。
マンホール箇所の対策としては、支持層へのアンカー設置、基礎やコンクリート底板による重量増、マンホール上部へのカウンターウエイトを行う。
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解答者 上下水道部門 下水道 専門事項:管渠計画 完成答案形式 添削履歴3 2023/7/8
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(1)多面的観点からの課題
1)単独処理場の汚水量を流域下水道へ編入の調整
分流地域の汚水量と合流地区の汚水量を全部流域下水道編入する受水量は、事業計画で決めた計画一日最大汚水量を限度として、この量を超える部分が調整して分流させ滞水池へ放流する。また、汚水管渠に入っている不明水については、対策し削減する。
2)雨水滞水池の整備
市では雨天時の計画汚水を超えた下水が河川放流され水質の悪化を防止するため、一定量の雨水を貯留し滞水池を整備する。
3) 処理場施設規模縮小に伴うストックマネジメント
単独処理場の流入量縮小に伴い施設を縮小処理場のストックマネジメント計画を行う。また、合流下水道の改善に伴う、水質改善計画も行う。
(2)の解決策
2)重要課題に対する複数の解決策
最も重要課題は、単独処理場の汚水を流域下水道に編入の調整である。
①分流式汚水の早期接続
流域下水道の受け入れ整備を順次行うため、C処理区の分流汚水を最初に流域下水道分に送水し、不明水につては、削減し計画汚水量する。
②流域下水道の受け入れ整備
流域下水道では、処理水量の増加に伴い沈砂池ポンプ棟や水処理施設5系統の新設を整備する。このうち、水処理については、高度処理施設の対応行う。
③合流施設の分水人孔での調整
市では、合流区域の1Qの汚水を流域下水道に送水し、必要量の汚水を分水人孔ゲートにより調整する。
(3) 新たに生じるリスクと対策
1)リスク
編入があった市で線状降水帯が発生し、○○していた○○によって内水氾濫が発生し処理場施設が浸水被害に見舞われてしまった。当初の計画から既存処理場整備や編入の予算計画が厳しい状況となった。
2)対策
①段階的な整備:汚水整備後段に階的に合流下水道施設について編入する。また、既設処理場の反応槽を暫定的な滞水池として、雨天時の汚水量を調整する。
②編入計画遅延:単独処理場施設が老朽化しているため、設備のストックマネジメント対策として、省エネ効果の高いポンプ施設の導入を行う。
③合流施設の分水人孔での調整:合流式汚水量を分水人孔の中にゲートを設置して、流域下水道への放流量を調整する。
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問題 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 Ⅱ-1-3
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廃棄物の選別技術を4つ挙げ、それぞれの技術について述べよ。
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解答者 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 専門事項:廃棄物処理 完成答案形式 添削履歴2 2023/5/20
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(1)ふるい選別機
選別原理は、径の異なる孔を配置した円筒をわずかに傾けて設置し、電動で回転させ、廃棄物が移動していく過程で、廃棄物の粒径差により選別を行う。主に、家屋解体等の建設廃棄物において、砕石、土砂、木くずなどの選別に使用される。
(2)比重差選別機
廃棄物を上部から投下させる際、横方向に空気を送風し、選別対象物の比重差により、水平移動距離に差が生じ、選別される。主に、金属、プラスチック、紙類の選別に使用される。
(3)磁気選別機
選別原理は永久磁石や電磁石を組み込み、廃棄物の中から、磁性物(鉄)を引き付けて、他の廃棄物から分離する。 ○
(4)センサー選別機
プラスチック類や金属類を含む廃棄物をCCDカメラや近赤外線カメラで、対象物の色、素材、形、位置を読み取り識別する。
特に近赤外線カメラではガラス片やプラスチック片などの分光反射率・分光透過率が異なる原理を利用し、ガラスの色やプラスチックの素材、例えばPET・PP・PE・PS・PVCを識別し、エアージェットで選別を行う。
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問題 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 Ⅱ-2-1
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世界的なエネルギー資源価格の高騰やカーボンニュートラルの実現において、再生可能エネルギーとして位置づけられている廃棄物発電の重要性は今後さらに増してくる。こうした発電設備を備えた廃棄物処理施設を計画、建設するに当たり廃棄物処理の技術責任者として下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。
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解答者 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 専門事項:廃棄物処理 簡易答案 添削履歴10 2023/6/24
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1.調査・検討すべき事項
1)地域で発生する廃棄物量と組成
廃棄物中の食品残渣、紙、木竹草類、下水汚泥などのバイオマス組成量を調査し、廃棄物処理施設で発電する電力量から、再生可能エネルギーとして利用できる量を検討する。
2)熱回収技術の把握
ごみ焼却熱を回収する技術について、焼却炉の各構成機器における熱回収効率と排ガスの影響を調査し、費用対効果の大きな組み合わせを検討する。
3)エネルギー利用における地域ニーズ
廃棄物処理施設周辺のエネルギー供給に関する地域ニーズ(熱・電気)を調査し、その供給方法を検討する。
2.業務遂行手順、留意・工夫すべき点
1)廃棄物処理システムの設計
ごみ組成調査により、ごみ量及び低位発熱量に見合った焼却炉容積やボイラ容量を決定する。その際、プラスチック資源循環促進法の施行によりプラスチック分が減少し、有機性廃棄物の割合が多くなることが今後予想されるため、ごみ焼却炉とメタンガス化システムの併用を推奨する。
2)高効率熱回収設備の採用
ごみ焼却炉に、低温エコノマイザー、低空気比燃焼、排ガス再循環などを導入し、ボイラによる熱回収効率を増加させる。また、排ガス再循環方式とし、窒素酸化物を低減させる。
3)安定したエネルギー供給設備の採用
コージェネレーションや蓄電池を導入し、発電と熱出力の平準化やエネルギー需給バランス調整を容易とする。特に蓄電池は、電力需要量の少ない夜間に蓄電し、昼間に施設内で消費し、より多くの電力を地域内に供給する。また、災害時に非常用電源として地域に供給し、地域全体のレジリエンスを向上させる。
3.効率的、効果的業務のための関係者との調整方法
メタンガス化の過程において、高温を維持することが発酵促進となるため、市建設担当者に対して、回収したボイラ熱を発酵槽に適用させ、さらなるごみ焼却熱の回収とメタンガス化の効率化を両立させる。
また、工場運営者に対して、需要家との電力取引にダイナミックプライシングを採用させ、限られた供給量に対して、節電行動を促し、エネルギー需給バランスを確保させ、ダイナミックプライシングする。
問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅱ-1-3
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質量分析を行うための装置を1つ挙げ、測定対象と測定の原理及び特徴について説明せよ
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解答者 応用理学部門 物理及び化学 専門事項:電磁気現象応用 簡易答案 添削履歴7 2023/3/18
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1.装置:扇形磁場型質量分析装置
2.測定対象:有機化合物、タンパク質、核酸、糖質、薬剤、化粧品等の化学物質・生物学的分子等。ダイオキシン等環境汚染物質の分析にもよく使われる。
3.測定の原理:
扇形磁場中でイオンがローレンツ力を受け、その法則に従って旋回運動し、旋回半径が質量/荷電量によって増大するという物理現象による原理を使い質量分析する。
イオンは扇形磁場中で、質量/荷電量(m/z)により次式の半径rの旋回軌道を描くことで分離される。r=(2mV/zB2e)1/2 (V:加速電圧、B:磁場強度、e:電気素量)。
4.特徴:
扇形磁場型質量分析装置は、磁場中でのイオンの扇形軌道の曲率半径を精密に制御できるので、
他の一般的TOF型、ICR型に比べて容易に高分解能化しやすい。
しかし、磁場強度が分解能性能に作用し、旋回半径数十cm程度の分離用扇形電磁石が必要なため高性能装置ほど大型になり比較的高価。
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問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅱ-2-1
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自社の研究部門でなされた基礎的な発見を、新たな製品開発・製造につなげるためのプロジェクトが立ち上がり、あなたはその責任者として業務を担当することになった。発見の内容と開発製造する製品を具体的に特定した上で、下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について、説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、 工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、 効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者 応用理学部門 物理及び化学 専門事項:電磁気現象応用 簡易答案 添削履歴5 2023/4/27
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新たなシート構造材を発見し、フレキシブルディスプレイの新製品開発・製造につなげるためのプロジェクト(PJ)責任者として 以下を述べる。
(1)調査、検討すべき事項
1)特性調査
新材料が持つ柔軟性:曲げ曲率と耐久性の関係、画素見栄えへの影響を調査、高信頼要件/製品仕様検討。
2) 商品性、軽量化技術調査
新材料による差別化商品要件、軽量化のための構造・材料、コスト水準を調査、曲げと軽量が「売り」の商品性検討。
(2) 業務手順と留意点、工夫点
1)商品品揃え/発売戦略構築
調査に基づき試作、製品構成/品揃え戦略構築:垣根なき商品群連携機能提供に向けた共通顧客体験(UX)に留意。更に大型機:軽量/耐震化、携帯機:「曲げ」に加え使い勝手の良い入力等、差別化機能付加で具体的商品設計を工夫。
2)製造受託サービス(EMS)活用
製品設計と同時に自社で生産工程構築と品質管理実施:高信頼性確立。生産N倍化フェーズ(Ph)にてEMS活用:生産効率向上、品質確保、短期市場投入を図る。事業運営効率化に留意し、最新技術を採用、価格競争力、信頼性、品質管理力あるEMS選択、効果的生産体制構築。
(3)関係者との調整方法
1)内部調整
特別PJサイトにて研究開発、製造/EMS、営業、品質保証各部門間で情報を随時共有/交換、定期集約、最小打合せで効果的問題解決に導き効率化。必要に応じ、開発Ph:営業⇒研究開発へ市場要求反映。設計Ph:品証⇒設計へ品質要求反映。製造立ち上げPh:研究開発⇒製造部門に新材料製造ノウハウ提供等、プロマネとして部門間の情報・資源有効活用を促し事業全体を指揮監督管理。
2)外部調整
販売後、顧客サポート迅速対応/満足度向上に向け、顧客限定特設WEBサイトにてフィードバックを積極収集、サービス向上に反映。
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解答者 応用理学部門 物理及び化学 専門事項:電磁気現象応用 完成答案形式 添削履歴1 2023/5/4
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新たなシート状構造材を発見し、フレキシブルディスプレイの新製品開発・製造につなげるためのプロジェクト(PJ)責任者として、以下を述べる。
(1)調査、検討すべき事項とその内容
1)新材料基本特性調査
新材料を調査し、微細構造解析で曲げ曲率、画素への曲げ影響を検討して、高品質要件を把握する。
2)軽量化技術調査
新材料を調査して、構造を検討し、曲げ機能による重量増軽減のための軽量化技術を確立する。
3)新製品の商品性調査
商品市場を調査して、商品性を検討し、新材料の曲げ機能、軽量化を含めた差別化要件を把握する。
(2)業務手順と留意すべき点、工夫を要する点
1)パネルの微細構造解析
曲げ時のパネルの微細構造解析を行う。曲げた時、パネルがどのように破損するか、メカニズムに留意し原因を顕微鏡観察で把握する。更に、様々な曲率で曲げ、破損に至る臨界曲げ曲率を工夫して見出す。
2)パネル曲げ部の設計
臨界曲げ曲率に基づき、それを下回らない曲率で曲げ機構を設計する。生産品質安定化のため、数値公差に余裕のある組立・製造に留意した設計を行う。
3)軽量化パネル構造の設計
曲げ機構は、曲げなしパネルよりも重量が増加する。パネルの薄型化等軽量化技術を工夫し、曲げ機能付加による重量増を抑制する。
4)製造受託サービス(EMS)の活用
自社で試作品を製作し、生産工程、品質管理基準を確立させた後、生産N倍化フェーズ(Ph)にて実績があり信頼できるEMSを活用し、技術移管して生産効率向上、品質確保、短期市場投入を工夫する。
(3)業務を効率的効果的に進める関係者との調整方策
1)パネルの微細構造解析人員調整
パネル曲げ時の破損現象は、品質管理部門の関心事でもある。製品設計Phで、まだPJで具体的業務のない検査員にパネルの曲げ時の微細構造解析の支援をさせ、現象把握ためのリソース確保を調整する。
2)製造パラメータの最適化調整
新材料製造では、微妙なパラメータ調整が必要となる。試行錯誤せず最適値の迅速選出ため、新材料発見の研究員に製造条件出しを支援させ、調整する。
3)商品性構築人員調整
商品には曲げ等の差別化機能1つでは足りず、製品全体の魅力が不可欠である。しかし、設計者は機能設計に追われ、ユーザ立場での思考が希薄となる。
十分な検討のため、商品市場に長け、販売前の閑散期である専門営業員を動員して試作品評価、商品性提案をさせ、検討人員確保を調整する。
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問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅲ-1
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Ⅲ-1 社会のICT化が進み,様々なサービスが電子化される中で,個人認証の重要性がますます高まっている。特に近年では、幅広い分野で生体認証が用いられるようになった。このような状況を考慮し,以下の問いに答えよ。
(1) 生体認証が普及するに当たって,技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 全ての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考え方を示せ。
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解答者 応用理学部門 物理及び化学 専門事項:電磁気現象応用 簡易答案 添削履歴10 2023/6/23
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(1)観点と課題の内容
①計測センサ技術の向上
生体情報取得の正確性の観点から、生体計測用センサの技術向上が課題。センサの大きさや解像度についての光学技術改善。照明条件や周囲のノイズに対するセンサ耐性が必要。
②生体情報の信頼性確保
生体は、体調や加齢で変化する。変化する生体情報の信頼性確保の観点から、生体情報取得時に健康状態や体調変動を踏まえて情報収集し、影響低減が課題。
③環境変化に対応した生体認証情報収集または補正、計測
多様環境対応の観点から、多様環境下での生体情報取得、認識精度向上が課題。光環境、温度変化対応センサ、アルゴリズム開発。体調変化、障害対応の柔軟性要。
(2)最重要課題:「①計測センサ技術の向上」の解決策
①光学センサーの解像度の要件確保
指紋では、モアレ干渉縞回避のためセンサー画素サイズは指紋縞幅の1/2未満が必要。顔でも、虹彩でもそれぞれにメガピクセル台の画像情報が必要で、そのようなカメラを準備する。
②光学センサーの感度の適正化
生体情報撮像時、最近の画像センサーは照明が暗いとノイズを発生。そのため、センサー感度やシャッタースピード調整、画像信号処理、及び、人が適当な明るさと感ずる400Lux以上の照明環境を確保する。
③マルチモーダル認証の採用
複数の異なる生体認証方式を組み合わせ、認証精度向上、誤認証を低減させる。顔と虹彩、指紋と静脈等は、場所的に同じなので、同時撮影出来、被認証者の手間を省ける。
(3)新たに生じうるリスクとそれへの対策
① ユーザー生体情報の想定外の変化
指紋や顔等、生体情報の特徴は時間と共に変化し得る。病気、事故、治療で正確な認証不能となるリスクがある。このため新たなアルゴリズム、ユーザーの再登録方法の開発が必要。
② ユーザーの快適性
技術向上で高機能により、より高度なアルゴリズムが必要な場合、システムの簡便さや操作のしやすさが後回しにされ得る。このため一般的ユーザには使いにくくなる。また、技術の向上で、ユーザーはより高い精度とセキュリティを期待する。期待に応えられない場合に不満を抱く。適切な期待管理と教育が必要。
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