技術経営、市場動向について学ぶべし 8 「MECE(ミーシー)でモレダブリのない明解な文章」
2017.02.15
技術士試験の勉強法は、一般的にはキーワード学習と呼ばれる専門用語の暗記学習が知られていますが、こうした専門知識だけでは問題は解けません。なぜなら、試験問題は現実のコンサルティングの場面を想定して、技術経営や市場動向を前提として回答するよう求められ、ヒントを与えてくれないからです。多くの方は技術経営や市場動向について学ぶ機会が少ないみたいです。そんな方が専門知識だけで解こうとすると、出題趣旨の中心がどこにあるかわからず、答えが絞り込めずにほとんどが正解では無い、意味のない答えを書いてしまいます。
こうした、技術経営や市場動向がいかに大切かと言うことを、指導実績をもとに説明してみたいと思います。今回は「技術経営、市場動向について学ぶべし」8回シリーズの最終回で
「MECE(ミーシー)でモレダブリのない明解な文章」
です。
平成28年建設部門、施工のIII−1問題は、
我が国の労働人口が総じて減少する中で、将来にわたる社会資本の品質確保を実現するためにその担い手(建設技術者、建設技能労働者)の中長期的な育成及び確保を促進するために対策を講じる必要があると考えられる。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)担い手不足が生じる要因を2つ挙げ、それに伴って発生する施工分野の課題を記述しなさい
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが実施できると考える具体的な対応策と期待される成果を発注者、受注者の立場を明確にしたうえで記述しなさい
(3)担い手不足に対応するために建設部門全体で取り組むべきとあなたが考える方策を記述しなさい。
という問題でした。
建設部門施工のT様は、(3)建設部門全体で取り組むべき方策についてどう対処すべきなのかが理解できていませんでした。
(3)建設部門全体での取り組む方策
上記を踏まえた対策として、建設業に従事する労働力自体の不足を解消する必要がある。超高齢社会となった現在の日本においては、活用できる労働力としては、女性や外国人の活用が考えられる。機械化により重労働が解消されれば、女性が活躍できる可能性が広がる。そのためには、衛生面や育児支援体制の労働環境を整えていくことで、十分な可能性がある。また、未経験を含め、外国人などの新たに建設業に従事しようとする者に対しても、プレキャスト材や仮設材のユニット化により、長い経験を積まずに安全で優れた現場での組立作業が可能である。
これは前置き文であまり意味はありません超高齢社会となった現在の日本においては、活用できる労働力としては、女性や外国人の活用が考えられる。
女性と外国人を労働力として提案しています。機械化により重労働が解消されれば、女性が活躍できる可能性が広がる。
女性や外国人の使い方ではなく、機械化に展開し、その結果として女性の可能性が広がることをに触れています。結論として労務か機械化なのか意図がわからなくなります。そのためには、衛生面や育児支援体制の労働環境を整えていくことで、十分な可能性がある。再びに女性の労務課題に戻って労働環境を整えることを提案しています。また、未経験を含め、外国人などの新たに建設業に従事しようとする者に対しても、プレキャスト材や仮設材のユニット化により、長い経験を積まずに安全で優れた現場での組立作業が可能である。
今度は、女性でも外国人でもない「未経験者」という新しい労働力をいきなり定義しています。後半の「プレキャスト材、ユニット化」は工法の提案なのか、あるいは労働力に対しての相乗効果を言っているのかよくわかりません。
- Mutually( 相互に)
- Exclusive(重複せず)
- and Collectively(全体として)
- Exhaustive(漏れがない)
- 網羅できるので見落としを排除できる
- 混乱がなくなる
- 整然としてコミュニケーションが取りやすい。
つまり、答案の答えが
MECE「ミーシー」なら、わかりやすく試験官に伝わり合格点を取りやすい
ということです。 一方、 T様が解答として書かれた内容は、工法による対策が漏れていたり、労務対策等工法対策が混同していたりして、提案の焦点がどこにあるのかよくわかりませんでした。これでは提案内容がはっきりしないばかりか、提案者の真意を疑われかねません。最悪の結果は分析力や判断力が欠けているという評価をされて、答案内容とは別に最低の評価を受けることになってしまう危険性があると言うことです。
すなわちこうした複雑な内容に対しては、一読して内容が伝わるように、 2〜3の柱ごとに整理して伝えるべきで、解答者としては読み手の理解力を考慮してわかり易い構成を取るべきなのです。逆に出題者としては、こうした複雑な提案を求めることにより、分析や提案における明快な問題解決能力を試しているともいえます。
論文試験では、解答者は出題者の期待しているテーマに沿って書くことが求められます。建設部門施工のこの問題では、技術者個人としてではなく建設部門全体での取り組みが求められました。このような問題では、個人としての活動等部門全体としての提案を分けて考える必要があります。そして部門全体における対策としては、すなわちそれは
コーディネーターかマネジメントリーダーとして会社または組織を束ねていく、取りまとめの役割
を担う事を意味しており、プロジェクトマネージャーってとしての技術経営の知識が必要です。
こうした問題はこれからも出題されることが予想されます。そこでは事例が何であるかはとくに縛りはありません。ご自分の体験の中にある建設部門が抱える課題に対する提案であれば何でも良いのです。大事な事は提案内容に矛盾がなく、漏れやダブリがないこと、すなわちミーシーであると読みとれることです。こうした考え方を短時間で組み立てていく必要があります。
これは暗記する勉強で学ぶ事は出来ません。自分で考え提案し、上司や先輩と相談することで初めて培われるものです。相談相手のいらっしゃらない方は本講座にしつつお申し込みいただければ、上司や先輩に変わって講師が相談に乗り課題解決力や応用力を鍛えることが可能です。
技術士試験の勉強は長期間にわたるものとなります。今回の記事で述べたような、評価を高めるようなポジティブな提案ができる様になるためには一朝一夕では無理です。講師と相談しながら地道に提案力を高めていくしかなく、長期間にわたる勉強となりますので1番大事な事は、無駄のない思考を学ぶ訓練です。長い勉強期間を有効にすごすためには無駄のない思考を身につけないと、長い年月の末には大きな差となり、合格に影響を及ぼしかねません。
建設部門のT様は、現場の施工管理の業務に携わってこられ、その業務が定型作業的な業務が多かったために、新たなケースを想定して解く問題では力が発揮できませんでした。これまで技術経営を学ぶ機会が少なかったようです。しかし技術士試験では1人のマネージャーとしての姿勢を問う問題が出題されるため、正しい技術経営や市場動向を勉強する必要があります。
当研究所では、申込書の業績論文対策や筆記試験論文対策指導、口頭試験対策の際に、受講者様の解答の趣旨を面談やスカイプ、電話で詳細に確認、分析し、その認識のどこに誤りがあるかを分析し、根本原因を突き止めます。この時ネガティブな考え方を払拭して、前向きな考え方をコーチングによって言葉で伝えます。この結果だれでもむだのない思考を学ぶ訓練が行えることとなり、正しい提案が早くできるようになり、試験も楽勝で合格出きるということです。
当研究所の指導では、マンツーマン個別指導により、こうしたそれぞれの受講者様の認識の違いにきめ細かく対応して、確実に高得点を狙い、楽勝で合格出来るように指導しています。関心のある方は是非お問い合わせください。