H28/2016年 機械・情報精密 Ⅲ−1 問題 模範解答と解説
III-1: 製品開発に携わる技術者にとって、製品が市場でどのような競争力を持っているかは重要な問題である。常に製品競争力の向上に努めないと、たとえ現時点では市場で優位性を持っていても、いずれ競争力を失ってしまう。このような状況を考慮して情報・精密機器の開発責任者として以下の問いに答えよ。
(1) 対象とする情報・精密機器を1つ選択し、その機器の製品競争力を決定する主な要因を多面的な観点から3つ述べよ。
(2) (1)で挙げた3つの課題から、最も重要と考える課題を1つ選び、それに関する革新的な技術的提案とその効果を示せ。
(3) (2)の提案により生じるリスクについて説明し、その対処法を述べよ。
模範解答1 (簡易形式1) 添削履歴 1回 2019/06/28 専門事項 精密機械技術開発
(1) 「手術支援ロボット」の製品競争力の決定要因
手術支援ロボットは低侵襲アプローチが可能で、患者体表の複数の切除孔(ポート)からロボットアームを体内に挿入する。体内の様子をモニタで表示し、ロボットアームで外科医の精密な手技を再現することで、外科手術を支援する。なお、低侵襲とは、手術による患者身体への負担をできるだけ低減することを指す。
① ポート数の減少: 出血が少ない等の患者身体の負担低減と、従来の手術支援ロボットで課題であった体外でのアーム同士の干渉の低減が必要。
② 治療の自動化機能: 若手医師であっても、自動的に縫合する機能など、熟練医師と同等レベルで治療を代替する自動化機能が必要。
③ 手術時間の短縮: 操作性が良く、スピードや動きに無駄がない等が必要。
(2) 課題「① ポート数の減少」の革新的な技術的提案と効果
(2)−1. 技術的提案: 体外からMRIで患者身体の3Dデータを取得し、AIによる治療計画・支援に基づき、VRで対照しながら体外からの集束超音波によりポートなし(非侵襲)で手術する。
- 観察: 予め取得した画像と対比しながら、MRIと超音波の画像で患部を観察。
- 認識: 2つの画像に基づいて、AIがロボットを位置決めする。VR表示する。
- 治療: 予め計画した条件で治療用の集束超音波を照射し、照射前後の画像差異から治療成否をAIが判定する。
(2)−2. 効果: 切開不要により、次の効果が期待できる。
- 時間のかかる縫合が不要となり、出血もなく、感染症の心配も要らない。
- 専用のディスポ処置具が不要となり、バックヤード業務を削減できる
- AIにより手術を半自動化できるため、医療品質を底上げ、均質化できる。
- 日帰り手術が可能となり、病院の経営効率が向上する。
(3) 提案で生じるリスクとその対処法
- 臨床情報の不足によるAI誤診断による医療インシデントのリスク: AI判断に必要な情報の質・量を予め設定。手術情報不足のとき、不足内容のアラートを出す。
- 通信遅延による医師のVR酔いが原因の医療インシデントのリスク: VR生成に必要な高速大容量通信、低遅延の実現のため、第5世代移動通信システムを導入。