H28/2016年 機械・情報精密 Ⅲ−2 問題 模範解答と解説
III-2: IoT (Internet of Things)が普及する前段階として、社会に存在する多くの機器が広義の情報機器となり、M2M (Machine to Machine)のコンセプトに基づく機器間通信が一般的になり、多くの機器が統合的に機能するようになると予測されている。M2Mにより情報化した機器を例に、以下の問いに答えよ。
(1) これまでにない新たな機器へのM2M導入時に留意すべき課題を多面的な観点から3つ挙げ、その内容を述べよ。
(2)(1)で挙げた3つの課題から、最も重要と考える課題を1つ選び、それを解決するための具体的な技術的提案とその効果を示せ。
(3)(2)の提案により生じるリスクについて説明し、その対処法を述べよ。
模範解答1 (簡易形式1) 添削履歴 1回 2019/06/22 専門事項 精密機械技術開発
(1) 「生産工場」へのM2M導入で留意すべき課題
(1)-1.シームレスな機器の接続: M2Mで高度な制御が求められる。導入コストの関係上、工場では、既に導入済みの機器をM2M化する場合がある。機器が古くデータ出力や、ネットワーク接続が不可能な場合もある。データ取り出し装置の後付けや出力信号の変換等、異なる規格の機器同士を如何に接続するかが課題。
(1)-2.通信速度: M2Mでは、膨大なセンサデータの送信を行う。通信遅延は他の機器の動作に影響するため、通信速度を低下させないことが必要。
(1)-3.省エネ化: M2Mで通信電力も増加する。通信頻度低減が必要。
(1)-4.無線化に伴うセキュリティ確保: 利便性の観点で機器接続の無線化が進む。無線通信によるサイバーリスクに備え、暗号化等のセキュリティ担保が必要。
(2) 「シームレスな機器の接続」の課題解決の技術的提案と効果
①技術提案: レトロフィットで、稼働中の機器を活用したM2M環境を構築する。
(i) アナログ出力の遠隔監視: アナログ出力の一例として、パトライトを挙げる。Webカメラでパトライトを撮影し、画像処理によってRGBの点灯をデジタル化する。色別の点灯データに基づき、コントローラが装置を遠隔制御する。
(ii)通信機能のない装置の部品、モジュール等を通信機能付きのものに交換する。
(iii) USB、RS232C、イーサネット等をGPIBに統一化し、Bluetoothで無線化する。
②効果
(i) 機器の稼働停止や交換をすることなく、後付けでM2M対応できる。
(ii) ネットワークを介して他の機器と組み合わせた制御が可能。
(iii) 古い機器にも搭載されているGPIBを介して無線化することで、
(3) 提案で生じるリスクとその対処法
・レトロフィットでは、基本的に、旧来からの装置に後付けで機能を追加するため、以下のリスクがある。
①消費電力が増加し、ランニングコストが増えるリスク: 対処法は、追加するセンサとして「Normally off」タイプを優先的に採用する。または、エネルギーハーベスティング技術も合わせて導入する。
②新規設備を導入する場合と比較して、低効率/低性能となるリスク: 対処法としては、ボトルネックとなる装置の新規導入を検討する。
③レトロフィット後に装置本体が故障して投資回収できないリスク: レトロフィットを恒久的対策とせず、新規設備導入の計画も併せて検討する。