鉄道設計技士試験模範答案 鉄道車両 業績論文4「車上塗油装置」

1. 概要、実施時期および自身の役割

 〇〇電鉄の路線は、曲線箇所が多く、以前から車輪フランジの摩耗や曲線部での車輪キシリ音に悩まされてきた。これに対し、従来から最後尾台車部分へ取り付けた車輪フランジ塗油器によって対処してきた。

従来の方法では、一定の速度範囲(30〜60km/h)の場合に両フランジへ塗油する方法である。この方法を改善することでフランジ摩耗を抑制し、キシリ音も低減すべく必要な箇所で確実に塗油することを目的として、新規のフランジ塗油方式(以下、開発方式)を設計し、その実施結果・効果を確認した。

 200〇〇年4月からの1年間、私はこの開発方式の新規設計、試験計画・実施・評価の責任者として対応し、従来よりも効果的で経済的な方式を開発した。

2.技術上の課題とそれを解決するために、自身がとった方策とその理由

 新規の開発方式の考え方としては、曲線部(R500m以下の曲線)のみ、速度30〜60km/hの条件において塗油することとした。

この仕組みを作るには、列車自体が走行している位置を認識する列車番号設定器(始発駅で乗務員が列車番号を入力し、以後、車輪の回転数により現在のキロ程、ドアの開閉数により列車自身の位置情報を管理する装置)から、情報を受けるとともに、列車自身のデータとして曲線のキロ程を保有していれば、塗油のタイミングを設定することが可能である。このような仕組を構築するためには、列車番号設定器からキロ程情報と速度情報を貰い、塗油器の制御装置自身の中に持たせている塗油すべき曲線のデータ(右カーブ、左カーブ、曲線開始・終了のキロ程)とを突合せて、半径500m以下の曲線で、更に速度が30〜60km/hの範囲の場合に限って塗油することとした。また、加減速の激しい駅前後においては塗油禁止区間として設定した。

 当初、塗油量の使用量は従来方式と開発方式を比較すると1割程度の減少であったが、フランジ摩耗が進むのは外軌の車輪のみであることに気が付き、途中で各曲線の外軌側のみの塗布にソフトを変更している。また、雨天時において塗油することは、後続の列車に空転・滑走の頻度を増長してしまう。特に降り始めの際、乗務員が塗油装置の機能をOFFすることの失念により空転、滑走による遅延が多発したことから、電気式ワイパーを動作させた際は塗油を中止する機能を持たせた。

 この結果、従来の方式でのデータと比較すると、フランジ摩耗は100万キロ走行当たり0.07mmから0.05mmへと3割程度減少した。また、塗油禁止区間として常に加速・減速の発生する駅前後も含めることにした効果もあり、空転・滑走の発生頻度はVVVFのモニタリングや滑走防止弁の動作回数を確認したところ約5割程度減少した。また、塗油に必要な油量は、1編成当たり1か月44リットルから26.2リットルと約4割程度削減できた。

 現在までに、該当編成3編成のすべての改善が完了し、キシリ音も少なくなり、フランジ摩耗についても良好な状態が継続している。

3.私がとった方策に対して、現時点で改善すべき点

 駅構内において空転・滑走を減少されるために塗油制限を実施したが、この結果、キシリ音が少なくなったがゼロにはなっていない。この対策として塗油の効果は減らさず、塗油量のみを減らす方法として空気混入噴霧式の検討をしていきたい。

 更に、この塗油器を改良することに、フランジに対してでは無く、レール表面へ摩擦調整剤を塗布することでレールの波状摩耗が削減できることが推測されるため、ライフサイクルコストの削減に繋げていきたい。