技術士二次試験模範解答と解説 H28年 総合技術監理部門

問題文 Ⅰ−2

 近年,科学技術は急速に進展しており,新しい技術の導入によって様々な事業活動がその内容や形態を変化させている。このような科学技術の進展に関心を払い,それに見合ったより高度な業務を遂行できるように日々努めることは,総合技術監理部門の技術士に要求される重要な役割の1つである。

 そこで,あなたがこれまでに経験した,あるいはよく知っている事業(事業全体若しくはその一部である特定の業務,継続的若しくは繰り返して行う複数プロジェクトの集合体などでもよい。)を1つ取り上げ,その事業において最近の科学技術の進展が引き起こした事業の内容や形態の変化とその影樺,及び将来の科学技術の進展に伴ってその事業の内容や形態が大きく変化する可能性とその変化が及ぼす影響や課題などについて,総合技術監理の視点から以下の(1)〜(4)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは,「業務全体を俯瞰し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う」立場からの視点をいう。

 なお,定量的な記述が可能なものについては,相対的な表現(「大きい」,「小さい」,「高い」,「低い」など)は避け,できるだけ数値(概略でよい。)を用いて記述すること。書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。

(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業の内容を次の①〜③に沿って示せ。この際,以後の問い(2),(3),(4)の解答に必要な内容を含めて記すこと。

  (問い (1)については、問い (2) とあわせて答案用紙3枚以内にまとめ,解答せよ。)

 ① 事業の名称及び目的を記せ。

 ② 事業の規模及び担当する組織の人数や構成を記せ。

 ③ 事業の置かれている背景状況及び事業上の制約を示し,それを踏まえて事業内容の概略を記せ。

(2)取り上げた事業に最近(必ずしも直近でなくとも,5年前とか10年前でもよい。)導入された技術で,事業の内容や形態に比較的大きな影響を与えたものを1つ取り上げ,この技術導入によって,事業の内容や形態がどのように変化したか,またその変化の影響はどのように評価できるかを,次の①〜③に沿って示せ。

  (問い 2 については問い(1)とあわせて答案用紙3枚以内にまとめ,解答せよ。)

 ① 取り上げる技術の名称とその機能及びこの技術が導入された理由を記せ。

 ② この技術導入により事業の内容や形態がどのように変化したかを記せ。

 ③ この技術導入による事業への影響について,その評価をメリット,デメリフト,トレードオフ等に留意して記せ。


(3)遠からぬ将来(将来の具体的な時期は問わない。),新技術の導入により,この事業にいま存在する課題の1つが,部分的あるいは完全に解決されるであろう状況について,次の①〜③に沿って示せ。

 (問い(3)については問い答案用紙を替えて1枚以内にまとめよ。)

 ① 想定する新技術の名称とその機能を記せ。

 ② この新技術により部分的あるいは完全に解決されるであろう課題を記せ。

 ③ この新技術導入により課題がどのように解決されるか,また解決されない部分があるとしたらそれは何かを記せ。

問題文についての解説

 平成会28年の問題では新しい科学技術を技術士の業務の関係が問われています。その中心となるのは科学技術の進展をウォッチングして、活用するための工夫を問い掛けるものです。

前置き文の第二段落では問いかけの趣旨である、科学技術が事業に対してどのような変化を及ぼすか、かつ将来の科学技術の発展に伴って事業の内容や形態が変化する可能性を問いかけています。例年のことですが「あなたがこれまでに経験した事業」と言う指定があるため各自の個別の体験業務が題材となります。

 今回初めて問題文に要求されることとなったのは定量的な表現です。相対的な表現、大きい、小さいなどではなく出来るだけ数値で答える事を求めています。こうした表現方法の指定は制約事項を与えることによって試験の難易度を上げていると言う文部科学省の意図が伺えます。

 そして問題文の末尾に書かれた「書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。」とは、合格基準の一部を離したものであり、本来コンピテンシーを文章から評価すべきものを、採点基準が分かりにくいということからこのような指定を明確に表したのだと思います。こうしたガイダンスによって試験の考課を有意義な方向に導き、正しい能力評価によって合格者をふるい分けたい、すなわち誤解や思い込みで誤った解答姿勢となることを防ぎ、全受験者を一律に評価したいという文部省の考えが伺えます。

(1)事業の内容

 ここでは事業内容の概略を求め求めています。ここでは事業の貢献や成果を評価するものではなく、この後に続く(2),(3)で解答する内容の前提条件に過ぎません。内容の貢献や成果よりも以降の記述で説明しやすい題材とすべきかと思われます。

 また前述の前置き文の要求にあった「考察における視点の広さ」を確保する意味から、少人数で行った小さくまとまった事業より、ある程度広がりのある事業がふさわしいといえます。

(2)導入した技術による影響

 事業に導入した技術が事業の内容にどんな影響を与えたか、比較的影響の大きい技術を取り上げねばなりません。

(3)新技術による課題解決の展望

 ここでは新技術の導入による、現在の課題の解決方法が問われています。すなわち自らたずさわる事業について課題解決の意志を持ち、新技術の動向を追跡しながら、将来において解決する姿勢があるかどうかが問われています。こうした長期的な視野で専門課題に取り組む姿勢というのは専門的な技術マネージャの特徴であり、技術者コンピテンシーの本質を問い掛けるものです。

 例年、総合技術監理部門の問題では、(3)問題が最も難しい問題となっており、専門家の視点がないと合格できない難易度の高い、試験の関門となっています。

模範解答1

(1)取り上げる事業の内容

①事業の名称及び目的

①-1事業の名称:橋梁の設計・施工・維持管理

①-2事業の目的: 港湾や地元自治体出先機関の統廃合までに海上橋梁を新設し2つの島の市町村合併を支援する。供用後は適切に維持管理し島の定住を支える。

②事業の規模及び組織の人数や構成

②-1 事業の規模:橋長(L=1500m)、幅員(W=8m、2車線)、上部工はPC連続箱桁橋、下部工はRC橋台、RC橋脚である。

②-2 組織の人数や構成:私は○離島土木事務所の総責任者で、計5名の職員が橋の発注業務を実施する。

③事業の背景、事業上の制約、事業内容の概略

③-1 背景: 海上橋梁は、人口減少が進む離島の生活関連サービスを維持するため長期にわたり交通機能を維持する必要がある。また、海流の早い海峡部を通過することや厳しい塩害環境下やう回路がないことから、高い耐塩害性能・安全性能・信頼性能が要求される。また、橋の供用開始後、内地の振興局へ事務所が統合される予定でメンテナンス性能も要求される。

③-2 制約:離島事情により日常点検や定期点検の際、点検者や点検車の移動、海上橋梁による補修工法などの制約を受ける。また、将来的には人口減少などにより技術者や作業員、維持管理予算が制約される。

③-3 事業の概要:市町村合併の支援や長期間離島定住を支えるため100年の耐用性能確保を目標にメンテナンス性のいい橋を工期内に完成させる。供用開始後は限られた経営資源で橋梁群全体(2400橋)のメンテナンスサイクル(点検・診断・措置・記録)を効果的・効率的に実施する。 

(2)最近の技術導入による事業内容の変化とその影響

①取り上げる技術名称、その機能、導入の理由

①-1 技術名称:コンクリート構造物の性能規定技術

①-2 機能:設計段階では新技術導入による耐塩害性能を向上し最新照査技術により耐久性能を保証する。施工段階では設計時想定外の現場施工問題に対し最新解析技術で課題を解決し製造品質を保証する。

①-3導入の理由:道路橋示方書などの想定を超える厳しい塩害環境下であることから標準の仕様規定では設計耐用期間(100年)の要求性能が保証できないため。

②最新の技術の導入による事業内容の変化

a設計時従来(仕様規定):鉄筋かぶりやコンクリート材料などの仕様について示方書やJISの規格により設計する。導入後(性能規定):コンクリート材料について使用期間中に鉄筋位置において腐食限界イオン濃度を超えないことによる耐久性能など要求性能を満足するか照査し仕様を決定する。この際生じる諸問題については民間の新技術提案などにより解決する。

b.施工時従来(仕様規定):共通仕様書に基づき施工計画されているか確認し、施工計画に基づき現場が施工されているか段階確認や検査を行う。導入後(性能規定):JISに定められた規格外のセメント量や混和材料(混和材,混和剤)などを使用した特殊な配合となり、配合試験が必要となる。また、セメント量の増よりコンクリートが固まるときの有害なひび割れが生じるので適切な施工管理が必要となる。

③技術導入のメリット、デメリット、トレードオフ

③-1 メリット:W/Cを50%から43.5%に低減することで耐用年数を90年から100年に長寿命化が可能となり、厳しい塩害環境下でも長期にわたり交通機能を維持できる。また、橋梁のLCCを1割程度縮減や長期的な維持管理の業務負担が軽減できる副次的効果も発生する。さらに、民間提案を受け入れることで新技術の普及が進む。

③-2 デメリット:設計時の各種工法検討、照査、解析作業が発生するため、2ヶ月間程度の工期延長が生じる。また、受注者にとって慣れない施工方法となるため、厳密な工程管理・品質管理・安全管理が必要となる。

③-3 トレードオフ:W/C低減しコンクリートを緻密化することによって耐塩害性能が向上するが、一方水和熱の上昇に伴う温度応力によりひび割れ発生確率が10%から50%となる。

(3)遠からぬ将来の新技術導入

技術名称:ドローンによる点検・診断計測・補修技術

機能1:ドローン搭載のデジタルカメラによるうき、ひび割れ、剥離などの損傷状況や回転式打音検査器によるコンクリート内部の空洞状況などを点検・診断する機能。

機能2:ドローンに搭載したコンクリート表面含浸材吹きつけ器によるコンクリート補修機能。

②新技術により解決される課題将来的な人口減少などによる維持管理技術者不足や維持管理予算不足の課題が解消される。

③課題解決の理由、残される課題

③-1 理由:点検・診断・措置の各段階で、作業車や足場を必要としないため、設置や撤去にかかっていた作業工程・人力の負担削減が期待でき技術者や再業者不足が解消できる。また、高所作業車の足場設置の資機材の海上輸送、足場の設置が困難な海上にある橋梁、人が容易に近づけない危険な場所など大がかりな仮設工が不要となりコスト縮減が図られる。

③-2 残される課題:将来の予算・技術者不足に対応する橋梁群全体(2400橋)のメンテナンスサイクル(点検・診断・措置・記録)の最適化の課題が残る。 

(4)遠い将来の新技術導入

①将来技術の名称とその機能

技術名称1:ビッグテータによる人口知能(AI)技術機能:技術者が考案した機械学習アルゴリズムにより、ビッグデータ上の全国の橋梁データ(環境、劣化要因、補修工法、補修効果など)をディープラーニングし、最も効率的な補修時期や補修工法を示唆する機能。

②新技術導入による事業の内容の変化 補修時期や補修工法などについて、限られた範囲のメンテナンス情報をもとに担当技術者が判断するものから、関係者全員でAIが示唆した情報を共有し判断することとなる。

③将来技術導入で残される課題、新たに生ずる課題

③−1 残された課題社会・経済の変化や基準類の見直しなどAIのアルゴリズムの範囲外は分析できないため、人の手による俯瞰的な判断をAIに覚えこませる作業が残る。

③−2 新たに生じる課題AIのアルゴリズムの領域を広げ進化させる技術者やAIの効用と限界を正しく理解したうえでAIの示唆やそれ以外の判断材料を俯瞰し判断する技術者の養成が必要である。データ分析によるAIの示唆で「橋の撤去」を行う場合など、橋の利用者に俗人的な主観などバイアスがかかることを配慮し理解されやすい説明シナリオを考えることが必要となる。

解説

(1)取り上げる事業の内容

 ここでは2ページ以降で記述する解答のもとになる業績について概要を記述します。注意することは、後のページで書きやすいようにシンプルな構成とすることです。誤解されやすいのは業績の成果が評価されると勘違いして、業績論文みたいな業務概要になってしまうことです。この業績における貢献や成果はここでは評価対象ではありませんので、業績の概要を公シンプルに記述することが大切です。

 この答案では必要事項が簡潔に示されています。記号を番号を冒頭に書いてそれに続けて内容を簡潔にまとめています。難しいのは、「③事業の背景、事業上の制約、事業内容の概略」で、ともすると業界全体のことには発散してしまう危険性があります。あくまでも本業績に対してどうかと言う視点でもって、絞り込んで考える必要があります。背景の内容や制約事項は、あくまでも(2)で記述する内容を書きやすいように考慮してシンプルにまとめておくことが肝要です

(2)最近の技術導入による事業内容の変化とその影響

 導入する技術については簡潔に最初に宣言します。そしてここでの回答の主体は「②最新の技術の導入による事業内容の変化」ですので、変化の内容がなんであるかを端的に表すことです。間違いやすい事は、成り行きを書いたり対策を書いたりすることで、あくまでも(2)は分析を求めているといであると言うことを認識する必要があります。

(3)遠からぬ将来の新技術導入

 ここでは(2)とは違って、現在は研究途上にありかつ1部で実用化されているような新しい技術を提案します。なぜそのような新技術を求められるかというと、専門家として自らの技術分野の将来を見越して新技術をウォッチングしているかと言う姿勢を問いかけているからです。ですので、すでに実用化されている技術は好ましくありません。

 また、同時に検討すべき事はその技術がこの業績の主要課題を解決する機能があるか、この部門・科目の技術応用に相当するものであるかどうかをチェックする必要があります。ただ新規性があると言うだけで、本質的な問題を解決する技術でなかったり、あるいは他分野の技術応用に相当するものであるとしたら解答として好ましくありません。

(4)遠い将来の新技術導入

 ここでは(3)よりさらに推し進めて、現在はまた研究途上にあり実用化されていないような構想段階での技術を取り上げるのが望ましいでしょう。なぜこのような問いかけが行われるかと言うと、現在取り組んでいる業務上の専門知識ではなく、業務から離れて広く技術分野を見渡している、そのような広い見識が試されているということです。技術提案内容について詳細に説明する必要はありませんが、その機能や課題について概略をとらえておく必要があります。

模範解答2

(1)取り上げる事業内容

①名称と目的
a)名称:道路構造物の長寿命化対策
b)目的 構造物の長寿命化を推進し、ライフサイクルコスト(LCC)の低減を図る。 

②事業の規模や組織体制 県が管理する橋梁2500橋及び150か所のトンネル及びボックスカルバート等の道路構造物を対象とする。 組織体制については、県内7か所に置かれる県土整備事務所にある維持課に道路構造物長寿命化対策係を設置し担当を2〜3名配置を行う。

③事業内容
a)背景状況 高度経済成長期以前に建設された道路構造物に、橋梁が約4割を占め、道路トンネルにおいては、2割近くが対象となっており、ボックスカルバートについては1割程度である。 これら道路構造物の高齢化に伴い鋼材やコンクリートといった使用材料の劣化が進行していくため構造物の劣化対策を進める必要がある。
b)事業上の制約構造物の点検は、近接目視により実施すると法令に定められているが、高所にある橋梁については、橋梁点検車や吊足場等により近接目視を行う必要があり、時間や費用がかかる。 診断においては、現状では非破壊検査データの信頼性に問題があるため適切な対処方法が選定できない可能性がある。 補修工の実施においては、作業空間が狭小であることなどの、メンテナンスを考慮していない設計により補修時の施工が困難となるケースがある。
c)事業内容の概略 制約条件のある中で構造物の点検・診断・補修工を行い、長寿命化を図らなければならない。そのため、経済的な点検や工法の選定、対応できる技術者の養成、作業時の安全管理、長寿命化に関するナレッジマネジメントの構築等の対応を行う必要がある。

(2)最近導入が図られた技術

①技術の名称

 UAV(ドローン)a)機能:マルチコプターであり、高所にある構造物に空中から近接して、搭載したカメラにより撮影が出来、目視が困難な部位も部材の状況を確認することができる。b)導入された理由 橋梁構造物の点検は、高所において困難であり、時間と費用を伴うが、UAVの採用により効率的に近接目視の点検が可能となり、点検時間の短縮と費用の低減が可能となることによる。

②事業内容や形態の変化

 法令に定められている5年に1回の近接目視点検を実施する上で、高所に架かる橋梁においては、橋梁点検車や吊足場等に点検のために架設が必要なくなり、目視困難である部位の状況を容易に関さるすることができ迅速に業務をすすめることが可能となる。

③事業の影響a)メリット

 UAV機器の導入により、点検時間の短縮、費用の縮減が可能となり、少ない人員で効率的に点検を実施することができる。法令に定められた5年に1回の点検実施の確実性が増すこととなり、安全安心な道路の確保に寄与する。

b)デメリット

 UAV機器の操作業のデメリットとしてGPSを利用しての位置上の精度、飛行時間の短さ、雨天時の運行の困難、風の影響、墜落のリスク等がある。又、劣化箇所を発見した際に、触診等により更なる詳細なデータをただちに得られないリスクも生じる。

c)トレードオフ

 UAVの活用は点検コストの低減が図られるが、市街地等においては、安全性を高めるため直接目視による点検を実施する必要も生じコストが増加する。そのため機器の安全への信頼性向上を図ることや、現場条件に応じた点検方法選定等の慎重な検討が必要である。

(3)将来の新技術の導入について

①想定する新技術

a)名称:レーザースキャンナー技術による3次元化
b)機能
 レーザーにより構造物の点群を押さえることにより、変状の進行を確認することができる。技術の進展により構造物の点群を座標として管理することが可能となることで変状の履歴を明確に捉える機能を有する。

②解決される課題 構造物の点検及び診断を行うにあたっては、構造物台帳が整備されておらず、事業実施に支障をきたしている。この技術を導入することにより、構造物の現状を把握することで今後精度の高い履歴を得ることが可能となり、経済性管理を高めていくことができる。

③解決される点 構造物台帳を3次元化できることで、3次元モデルでの検討が容易となり点検、診断の精度が増すことで経済性管理において、必要な補修設計ができLCCの低減を図ることが可能となる。又、安全管理、人的資源管理において労災防止並びに人員不足に対処できる。

④解決されない点 構造物の状況を効率的に把握するための、全国の道路構造物の3次元データを一元化し蓄積すると容量はエクスバイトにも上る可能性があり、データの保存と管理に問題を残す。

(3)遠い将来おける将来技術について

①想定する新技術
a)名称:人口知能とつながる構造物
b)機能
 IOTが進展することで構造物に組み込んだセンサーにより構造物の状況を計測したデータがインターネットとつながり、人口知能により構造物の劣化等の状況判断を行い、必要と判断すればロボット技術等により自動的に補修していく機能を持つ。

②事業の内容や形態の変化 点検、診断、補修について自動化されることで、維持管理に必要な人員が縮小され、人件費が低減する。又、人に関する安全管理の必要性が低くなり安全性が高められる。維持管理担当者は補修状況をインターネットにより画面等で確認することとなる。更に、維持管理に必要な情報が蓄積されることで、知見が得られやすくなり構造物の長寿命化に対して有効な対策が打てLCCの減少を図ることができる。

③将来技術導入において残る課題、生じる新たな課題 維持管理のビックデータ化よりデータ管理や情報セキュリティーの厳格さが益々求められることとなる。又、将来技術の進展により維持管理に関する情報がブラックボックス化することとなるが、現場においてロボット等の管理も含めた高度な技術に対応できる技術者を養成していくことが必要となってくる。

解説

作成中

模範答案3

(1)私が取り上げる事業の内容

①名称:〇〇排水区雨水貯留管建設工事

 目的:〇〇地区の局所雨水対策として該当箇所に貯留管を構築し、浸水被害低減を図る。

②規模:貯留管φ2000mm、延長L=220m、

貯留量V=720m3

人数および構成:発注課人員数20名、元受企業体6名、作業員 常時10名程度

③背景及び制約

周辺住民から浸水被害軽減という事業効果だけではなく、工事施工中の振動騒音被害の低減や駐車場への出入り制限抑制などの生活環境保全を求められた。そこで施工方法を開削工法から非開削工法へと変更し、発進立坑を公共用地である公園に配置し、到達立坑を浸水箇所の道路上に配置した。一般道路上の占用作業を最小限に低減し、一般の生活導線を確保した。

(2)最近導入された技術による変化や影響

①名称:大口径推進工法における急曲線推進技術

機能:φ2000mmの大口径推進機に中折れジャッキを4か所に配置することにより、推進機が急曲線を描けること。

導入理由:R=25m急曲線S字カーブの曲線推進施工を可能とするため。

②変化内容

従来の大口径推進工法ではR=25mの曲線を描きながら推進することは不可能であるため、直線線形に折れ点を設定し、中間立坑を設置することで対応してきた。しかし新技術により曲線施工が可能となったことで以下の変化が発生する。

・最低2か所必要な中間立坑設置の削減

・大規模かつ長期間にわたる通行規制の削減

・中間立坑での鏡切り作業が削減され、出水事故リスクの低減

・曲線部での振動騒音被害の削減

 また、貯留管直径を大口径から縮小することで曲線半径を緩和させる方策も考えられる。しかし、所定の貯留量を維持するためには推進距離を延長する必要が発生する。これに対しても新技術により、

・公園からの発進では距離不足となるため、新たな公道からの発進作業削減

・距離による限界推進延長を超える対応としての中間立坑設置の回避

これらの変化により住民から求められた生活環境の維持に貢献できる。

③事業への影響

1)メリット

大口径推進工法であるため、主として発進立坑での騒音対策を重点的に実施した。立坑周囲は防音フェンスにて囲い、主要な騒音設備には吸音マットにて養生を行った。仮設鋼矢板などは低振動低騒音工法を採用し、使用機械も低騒音機を使用した。場内には常時騒音振動を計測し、市民にも見えるようにすることで、騒音に対する施工中作業員への意識向上を図った。それらの結果、一般公道作業に比べて騒音が85dbから60db程度まで低減できた。

2)デメリット

公道作業削減のため地下での特殊作業を施工する必要がある。形状が極力推進線形に近づくことが理想であるため、R=25mに対しては4基のジャッキを配置させる推進機の改良、曲線線形を追随しながら漏水しない短尺管の採用、それらの改良に対して従来推進工法に比べてコストアップが必要となった。

3)トレードオフ

周辺住民の生活環境維持のためには極力路上施工を削減する必要があった。道路規制を伴わない公園からの発進施工を実現するには大口径が必要となり、中間立坑を削減するには地下での曲線施工を可能とする特殊技術が必要となった。このような理由でコストアップするため、環境維持とのトレードオフが発生した。そこで中間立坑施工時で必要とされていた代替駐車場賃貸料削減や、立坑沈設時の家屋被害発生リスクを低減させ事前調査費と事後補償費を削減、また中間立坑削減による工期短縮で現場設備賃料の削減を実施し、トレードオフを解決した。

(3)遠からぬ将来の新技術導入

①名称:泥水加水による泥土分離システムの開発

機能:泥土圧推進における発生泥土を泥水添加してふるい分けすることで、水と土に分離する。

②課題

泥土圧推進は砂質土層で土圧管理に有効な工法であるが、掘削泥土は泥状のため直接搬出が不能であった。掘削泥土を産業廃棄物処理する必要がありコスト高が課題であった。新技術導入により掘削土はリサイクル可能な砂質土として回収可能となるため解決される。

③【どのように解決したか】

最初から泥水を加水すると粘性が低下し切羽での土圧管理が困難となる。そのため切羽より回収後の泥土に適度な加水を別途配管にて添加することで粘性が低下し、振動ふるいによる水と土の分離が可能となる。配管や振動ふるいなどの新規設備整備費が発生するが、産業廃棄物処理費の削減により大幅なコストカットとなる。

【解決されない部分】

従来より細粒分は軽いため振動ふるいでの分離は不

可能である。細粒分は泥水として比重調整を行いながら循環利用するが、徐々に高濃度になる。希釈不能となった泥水についてはフィルタープレスにて減容は可能だが、少量の産業廃棄物は発生する。

(4)遠い将来の一段と進んだ技術導入

①名称:推進工法のITプログラムによる全自動化

機能:推進位置の情報化による測量業務の省略、流

量データ管理による配管内圧送状況の把握、地上か

らの材料自動供給等により地下での人力作業を排除

する。

②変化

地下での人力作業が省略されハザードが存在しない

ため労働災害のリスクが低減される。また、地上の集中監視室でのオペレーターが非常に重要な役割を持つようになる。

 人による目視点検を行わないため、資機材の耐摩耗性が求められ、予知保全に対する需要が拡大する。

③【残る課題】

推進管や添加剤の搬入荷下ろし、土砂やゴミ等の積

み込み搬出、およびそれらの車両誘導や第三者事故防止のための安全管理などは引き続き必要であり、人間の目視確認による状況判断が必要な作業が残る。

 【新たな課題】

ITプログラムで施工が完了するため、作業員全般

が地下現場での施工経験不足となり、暗黙知などの技術伝承が困難となる。小さな事故発生でも対応ミスにより大事故に発展するリスクが拡大する。そのため想定事象と対応策を形式知として蓄積し、定期教育によるナレッジマネジメント実施が必要となる。

模範答案4

総監・建設-施工計画、施工設備及び積算

簡易答案

(1)事業の内容

①事業の名称及び目的

〇〇県〇〇医療センターの建替工事

②事業の規模及び組織及び構成

 規模 地下2階地上13階塔屋1階

 作業所所員54名

③事業背景状況及び事業上の制約,事業概略

 既存建物の設備の老朽化及び耐震性を改善するために建替工事を行う。〇〇県より工期を3か月短縮する要請があった。また,県予算よりオーバーしているため全体プランの見直しやSRC構造の見直しで10%の予算圧縮が落札条件となった。

 プランはスパンを広くとり将来のプラン変更が容易にできる構造としたい要求があった。

工期は2年6ヶ月。小児医療センターは,免震構造の建家でベッド数316床。すべての診療科に対応した小児重篤救急患者への診療体制が向上する。

(2)導入技術

①-1技術名称 柱コンクリート梁鉄骨構法

①-2機能 

床段差を設けることが容易にでき,スパンを長くすることが可能な構法。

①-3導入理由

 最も工期が長くかかるSRC造の設計から最も労務が削減でき,工期短縮も可能で,コストダウンも可能な構法のため。

②-1技術導入により事業内容や形態の変化

 着工時,構造部材の製作期間が短期間のため,工程管理の自由度が高まる。

③-1メリット スパンがRC造より広くすることができRC造やSRC造より床段差が容易にできプランの自由度が増す。柱がRC造のため鉄骨+耐火被覆より埃が無く改修工事ができる。

③-2デメリット 柱がRCのためS造と比較して断面が大きくなり床面積が狭くなる。

③-3トレードオフ問題 

スパンが広くしたり床段差を設けることは可能でプランの自由度は増すが鉄骨梁部材断面が大きくなったり,製作コストが高くなる。

(3)遠からぬ将来の新技術

①-1名称 プレーシングブーム

①-2機能 タワー式コンクリート圧送ポンプ

②完全に解決される課題

 水平配管や立ち上り配管がなくなり,半径30m以内は,すべてブームで柱コンクリートの打設が可能となる。各所の雑コンクリート基礎の工期短縮。

③-1課題の解決事項

 柱コンクリート打設の際,3回に分けて打設するが配管盛替えの打継時間の短縮によりコールドジョイントを防止する。

③-2未解決事項

 打設終了時にブームの配管内の洗浄作業は残る。

(4)さらに遠い将来の課題と解決策

①-1想定する将来技術

 BIMを利用した三次元のシュミレーション図を基に施主・設計者・施工者の合意形成が早期でき,BIMで書かれた設計図のため,施工図・製作図が不要となる。

①-2機能 

意匠構造設備電気の三次元データを同じ図面上で整合させ,各部材データには属性情報があり施工数量や仕様も入力されている。

②新技術導入による事業内容や形態の変化

施工計画を立案する際三次元で手順を確認できる。同時に施工数量が把握できるため工程計画が容易にできる。その結果業者間の作業が明確になり工期の短縮が可能となる。

③-1 残された課題

 BIMの持つ属性情報の管理機能を生かすために建築部材の情報を収集し,テンプレート化してシステムに入力する必要があり,この作業に多大な労力が必要となる。

③-2 新たに生じる可能性ある課題

既にシンガポールでは実施されているが確認申請図の提出がBIMデータとなる。

答案形式5

(1)事業の内容

①事業の名称及び目的

 事業名称は,〇〇県〇〇医療センター建設工事である。目的は,現在〇〇市ある県立〇〇医療センターを〇〇市に移設し建替えることである。

②事業の規模及び担当する組織の人数や構成

 建物の規模は,地下2階地上13階塔屋1階,延床面積約6万8千㎡,300床の免震構造の病院である。本建設工事を施工するに当たり,所長はじめ現業長,工務長,事務長以下総勢52名の組織で取り組んだ。

③事業の置かれている背景状況及び事業上の制約  工期がないためフロントローディングによる,着工

時の手配調達が求められた。そのため完成度の高い図

面データを作成する必要があった。

院内床下LAN配線や新規検査機対応のために床段差を

容易に設けれる構造体に見直す必要があった。

床段差は鉄骨梁で対応して柱だけ先行してコンクリ

ート打設する方法がある。しかし柱型枠は,単独で自立して頂部を固定するため建物の精度確保が難しい。また,一般的打設法では3回に分けてコン打設する必要があり,配管の盛り替え作業を必要とした。

コンクリート打設範囲は,プラン上は半径30m以内に

まとまっていた。合理化工法が可能と予想された。

(2)導入技術

①-1技術名称

 柱コンクリート梁鉄骨構法(RCSS構法)

①-2機能

 プランに対し構造的な自由度があり,スパンを長くすることができる。

①-3 導入理由

工期の短縮が可能であるため。導入構法である柱コンクリート梁鉄骨構法は,梁が鉄骨梁しかないためSRC造と比較して1フロア当たり梁作業で4日間の工期が短縮可能となる。

コストの圧縮が可能であるため。導入構法は,構造体の柱は鉄骨の製作が不要となる。梁においては,梁鉄骨断面は大きくなり耐火被覆は増えるものの,現場における鉄筋,型枠,仮設足場の資材と労務が全く不要となりコストが10%以上削減が見込める。

柱と梁の接合部の取付が,柱コンクリートの天端に梁鉄骨を載せ,柱仕口まわりに鉄板を巻き付けだけで済みコストダウンができる。

②この技術導入により事業の内容や形態の変化

SRC造の場合,鉄骨の工場製作のため,早期に鉄骨材の発注製作打合せに時間を要する。しかし,導入構法の場合,梁の鉄骨製作は残るが柱がRCのため鉄骨の製作の時間を必要としない。また,柱は現場施工であるが,配筋と型枠の準備ができれば,事前の準備期間は短期間に済む。

したがって,鉄骨製作にかかる準備工事を削減できることにより他の工事の工程管理に時間を費やすことが可能となる。

③この技術導入の評価

③-1メリット

 SRC造と比較して工程とコストメリットがある他に構造的な自由度がある。

床段差を設けるためには,1本の梁全体を下げて,下げ,かつそれ以外の箇所は梁上をふかす必要があった。一方この構法では,鉄骨梁を45度の斜めの部材を設けて台形状に製作することで床段差は可能であった。

③-2デメリット

 導入構法は,柱がRC造となるため,SRC造よりは5〜10%程度,S造よりは,10〜15%程度柱断面が大きくなるために使用可能な床面積が減少する。

 柱型枠は,押し引きのチェーンと斜めサポートしかないため,鉛直の建入れ精度確保が難しい。

③-3トレードオフ問題

 導入構法により,きめ細かい空間意匠に対応は可能であるため,スパンを広くしたり床段差を設けることができる。しかし,一方,床段差箇所が多くなれば梁鉄骨の構造補強や床段差型枠や配筋のコストはかかる。

(3)遠からぬ将来の新技術

①-1想定する新技術

 プレーシングブーム。

①-2機能

タワー式の支柱の最上部にコンクリート圧送用のブーム及び配管を設置したもの。

②完全に解決される課題

 柱だけ先行して打設する際,半径30m以内であればすべての柱に対し直接柱型枠にコンクリート打設が可能となるため,水平配管や立ち上り配管が不要となる。

 また,セットバックしている屋上がある建物は,各屋上の設備基礎,パラペット立ち上り躯体や防水押えコンクリートに対し,直接打設が可能となる。

③-1課題がどのように解決されるか

 柱コンクリートを打設する場合,配管の盛り替え作業がないため,打継時間が短縮することが可能となり,コールドジョイントを防止することができる。

 また,打設の度に配管を盛り替え作業がなくなり残コン処理が不要となるため,労務費と産業廃棄物処分費が削減できる。

③-2解決されない部分

 コンクリート打設終了時に水平ブームの配管内にコンクリートが一部残り,洗浄して処分する必要がある。後始末の作業は依然として避けられない。

(4)さらに遠い将来技術の解決内容と課題

①-1想定する将来技術

 BIMを利用した現場運営管理。BIMを利用した三次元シュミレーションデータを基に施主・設計者・施工者の生産のスピード化が図れる。

 設計データがさまざまな角度から検証ができるため検討箇所が明確になる。

①-2機能

 三次元データを同じ画面上で意匠・構造・設備・電気を整合させ完成度の高い図面データを作成できる。また,属性情報として施工数量や仕様情報も入力されているため,積算数量の精度が高く,仕様の変更もスピーディーにできる。

②将来技術導入により事業内容や形態の変化

 精度の高い図面データでフロントローディングが可能となる。また,施工計画を立案する際にも,計画の内容の周知が容易にできる。綿密な施工計画ができるので,無駄な労務,資機材の手配がなくなり生産性が向上する。

③-1将来技術導入後も残る課題

 BIMデータの属性情報の管理機能が早期決定や詳細検証を促す一番のメリットである。しかし,この属性情報のデータを入力するには,建築部材の情報を収集しテンプレート化してシステムに入力する必要があり,この作業に多大な労力が必要となる。

③-2新たに生じる可能性のある課題

 BIMデータの属性情報の管理機構によりさまざまな仕様の検討が可能なため,プロジェクトの全体工程の中で,物決めのスケジュール管理やデータ管理をするBIMマネージャーが今後新たに必要となる。

模範答案5  部門    建設部門 専門科目  構造及びコンクリート 専門事項  コンクリート 作成日  H28.7.27 添削履歴№   9

(1)更新計画の内容

①更新計画

自動車専用道路網のうち、〇〇高速道路の更新計画である。

②更新計画の概要

②−1対象の機能 

道路構造物としての健全性を維持することで、道路利用者の安全性と快適性を確保し、道路ネットワーク上の重要な幹線道路として機能する。

②−2規模

環状高速道路全長約10kmのコンクリート構造物の健全性を診断し、診断結果に伴う更新事業が計画されている。

②−3特徴

地方と各都市とを結ぶ〇〇高速道路は、RCボックスカルバート地下構造物として、供用後30年以上が経過しており、道路構造物の高齢化が急速に進展している現状を踏まえると、大規模な更新が必要となる。

②−4背景

当該地域周辺は、自然豊かな環境であるとともに、住宅が多く立ち並ぶ密集地でもある。

(2)人口減少による社会影響

①社会影響

1)地域や都市に与える影響:人口減少地域の拡大

2)経済や財政に与える影響:労働力人口の減少

②社会影響に対しての影響

1)人口減少地域の拡大

②−1理由:人口減少や人口構造の変化によって、利便性の高い地域に人が流出するから。

②−2影響の程度:老年人口の割合が高くなるほど、人口減少地域の拡大範囲は広がる。

②−3更新計画との関わり:道路利用者が減少すると料金収入が不足するため、道路のルートや新規インターチェンジ位置の選定に関係する。

2)労働力人口の減少

②−1理由:生産年齢人口が1995年から減少し続けており、技術者や熟練工も同様に減少するから。

②−2影響の程度:2000年を境に老年人口が年少人口を上回ることから、労働力人口は、今後、更に減少する。

②−3更新計画との関わり:2050年には、生産年齢人口が現在より約40%に当たる約3千2百万人が減少することが予想される。労働力人口減少が拡大すると、技術者や熟練工等の労務を調達することが困難となる。

(3)社会影響に対する対応策とその効果

①-1対応策<人口減少地域の拡大>

インターチェンジやサービスエリア等の道路施設に対し、民間のノウハウを取り入れたコンセッション事業を活用する。また、スマートインターチェンジを積極的に導入し、サービスを改善することで道路利用者の増加を図る。

②-1提案理由及びその効果

a.理由:道路の利便性が向上することで、需要の増加を図るため。

効果:道路施設等の新規事業によって、新しい雇用が創出されることで人の流入が促進される。また、広域的な自治体のネットワークが構築されることで、地域の観光産業振興も期待ができる。<経済性管理>

負の効果:道路施設等の急速な開発によって、周辺地域の生活環境悪化及び急激な人の流入のために生活の基盤となるインフラ整備が追い付かないことが懸念される。

b.トレードオフ:地域経済の活性化と周辺地域における生活環境の悪化がトレードオフである。そのため、当該範囲に対して以下の環境保全対策を実施する。

(1)騒音低減対策として、住宅が多く立ち並ぶ密集地周辺に防音壁を設置する。

(2)振動低減対策として、振動軽減舗装を採用する。

また、道路供用後に事後調査を実施し、環境アセスメントで予測した効果が現われなかった場合には、適切な改善策を図る。<社会環境管理>

c.その他の留意点:コンセッション事業を活用した更新計画の策定にあたっては、民間事業者の創意工夫による更新事業価値の向上と活発な競争環境による最適な事業者の選定が重要となる。そのために、公共側から市場調査等の積極的な情報提供や参加意欲の換気を行うことが不可欠である。<経済性管理>

①-2対応策<労働力人口の減少>

労働力人口が減少するなかでも、いかに生産性を維持・向上していくかが課題となる。そのため、業績や生産性を高めるP機能とチームワークを強化・維持するM機能の能力の両者を併せ持つリーダーを中心とした組織編制とすることで、生産性の向上を図る。また、マズローの欲求段階説のうち、自己実現の欲求を満たすようなインセンティブを組織構成員に与えてモチベーションの向上を図る。

②-2提案理由及びその効果

a.理由:労働力人口の減少によって、更新事業の生産性が低下することを抑制するため。

効果:品質不具合や工期遅延を発生することなく、更新事業を運営することができる。<経済性管理>また施工・品質・工程等に関する更新事業の課題を自らが早期に抽出し、組織を活用してその課題を解決する能力を身に付けることができる。<人的資源管理>

負の効果:組織構成員の成熟度が更新事業の進捗によって変化するため、課題設定方法やリーダーシップのスタイルを成熟度によって変えていかないと、事業の生産性を維持・向上していくことが困難となる。

b.トレードオフ:PM理論を展開すればするほど生産性は向上するが、一方で、P機能とM機能を状況に応じて適切に使い分けないと品質不具合や工程遅延が生じ、組織が機能しなくなる。そのため、以下の対策を講じる必要がある。

・自身の能力より少しだけ高いレベルの小目標を課題として設定し、それを達成させるような自己インセンティブを与える。

・非公式組織を活用し、人間関係を円滑にすることで組織内に協調関係を作り出す。

c.その他の留意点:更新事業期間中に業務が集中する場合、組織のリーダーは、職場の雰囲気や人間関係等を洞察しながら適切な時期に以下の対策を講じる必要がある。<人的資源管理>

・業務の優先順位を明確にする。

・アウトソーシング等の導入により、局所的に労務を集中させて作業の標準化を図る。

模範解答6  作成日 2017.06.19 添削履歴№ 1 部門 総合技術監理 専門科目 電気電子-電気設備 専門事項 工場電気設備

(1) 私が取り上げる事業内容

①   事業の名称及び目的

事業名称:エネルギーマネジメントシステムの採用(以下EMS)

目的:工場エネルギーコストの削減

②   事業の規模及び担当する組織の人数や構成

事業の規模:クリーンルーム6か所 半導体製造装置約220台 契約電力25000kW

組織人数や構成:工場従業員約800名 ファシリティエンジニア38名

③   事業の置かれている背景状況及び事業場の制約、事業内容の概略

背景:契約電力25000kWで年間エネルギーコスト約20億円(その内電気料金は年間約18億円)

制約:半導体製品の製品品質はクリーンルーム環境や製造の工程に依存する。エネルギー削減を推進することでデリバリや品質に影響を与えてはならない。

事業概略:熱源・空調・電気設備監視システム・空調監視システムなど独立したシステムで個別制御を行なっている負荷制御を一括管理し生産機器から施設設備まで全体のエネルギー最適化を図る。

(2) 最近導入された技術で事業内容や形態に比較的大きな影響を与えたもの。この技術導入によって事業内容や形態がどのように変化したか、またその変化の影響評価

①   取上げる事業名称、その機能、導入された理由

事業名称:FEMS(ファシリティ・マネジメント・システム)

機能:工場全体に散らばる負荷設備の運転状況の可視化や稼動停止などのトレンド管理。ピーク負荷時のデマンドを抑制またはシフトするためデマンドレスポンスを可能にする。

導入理由:半導体生産工場は電力を大量消費する。多くの電力需要先は生産装置でありデマンド電力抑制やピークシフトを実現するため品質に影響させないことが最優先された。そこで設備運転状況を常時監視し最適運転制御を行ない製品に影響を与えず省エネを行う必要性があった。

②   事業内容や形態がどのように変化したか

全ての設備(熱源・空調・電気設備等)が一元管

理され可視化される。無駄な運転状況は最適運転

制御により解消される。

③   事業への影響評価

メリット:エネルギーコストが削減できる(経済性管理)、使用エネルギー削減による環境負荷低減が可能になる(社会環境管理)、生産装置や施設設備運転データを集積し有効活用できる(情報管理)

デメリット:初期導入コストが甚大である(経済性管理)、FEMS導入によりシステム運用、保全に必要なファシリティエンジニアへの教育が必要となる(人的資源管理)、システムを統合し一元管理するため施設設備に加え生産設備両方に精通した人材の育成が必要となる(人的資源管理)

トレードオフ:FEMS採用によりエネルギーコスト削減(経済性管理)が可能となるが同時に省エネに伴う製品の品質低下(安全性管理)を起こしてはいけない。

(3) 遠からぬ将来新技術導入で今存在する課題の1つが解決されるであろう状況

①   想定する新技術名称とその機能

新技術名称:再生可能エネルギー

その機能:再生可能エネルギーによる創エネを行うことで自産自消のエネルギーを保有できる。この電力で工場内電力の需給調整が可能となる。

②   この新技術により解決されるであろう課題

解決される課題:工場内に電力のバッファを保有することでピークデマンドを抑制し電力コストを削減できる。

③   新技術導入により課題がどう解決されるか、また解決されない部分は何か

解決されない部分:再生可能エネルギーが太陽光発電である場合には夜間、風力発電である場合には無風時に期待した発電電力を得ることができずバッファとしての機能を発揮しきれない。

(4) さらに遠い将来、この事業に存在する課題にいくつかが解決され、事業の内容や形態が大きく変化する可能性について予想される変化の状況及び導入されても残る課題

①   想定する将来技術の名称とその機能

新技術名:CEMS(シティエネルギーマネジメントシステム)

その機能:工場とCEMSの連系で事業所単位のエネルギー需給調節ではなく地域でのエネルギー需給調整が可能となる。

②   技術導入により事業内容や形態がどのように変化するか

創エネ・畜エネで余剰電力を売電することでインセンティブを得るほか、契約電力の大幅な削減ができる可能性がある。契約を締結することで電源喪失時にも地域から電力を得て生産を継続することも可能となる。

③   この技術が挿入されても残るであろう課題、また新たに生じる可能性のある課題

残るであろう課題:分散したクリーンルームを6つ保有する工場は変電所も点在し大きな配電損失を生じさせている。EMS制御だけでなく負荷設備の集約等の配電損失低減などを並行し進め総合的なエネルギー効率化を講じる必要性がある。

新たに生じる課題:ネットワークのオープン化により外部から工場設備の発停を操作したりネットワークセキュリティ上のリスクが顕在化することが予想される。

模範解答7 簡易答案形式 作成日 2017.06.29 添削履歴№ 1 部門 総合技術監理 専門科目 建設−コ・鋼 専門事項 コンクリート構造

(1)取り上げる事業内容

①事業の名称及び目的

1)事業の名称:PC橋梁の劣化調査、補修・補強設計

2)目的:築後35年、新示方書等に準じ耐久性・耐震性確保した設計

②事業の規模及び組織の人員・構成

1)規模:橋長135m、幅員25m、3径間連続PC箱桁橋

2)人員構成:私管理技術者、照査技術者、担当技術者5人

③事業の背景及び制約、事業概要

1)背景:築後数十年橋梁には既存資料無く、現況復元手法が課題。技術者等不足が懸念され労働生産性の向上が喫緊の課題

2)制約:既存資料は台帳のみ。桁下〜河川間が狭い等のためフーチング形状や杭配置測定不可

3)事業概要:築後35年橋梁を今後25年供用、現橋の構造諸元等のデータを適切に調査・復元し、対応策

(2)最近導入された技術

①技術の名称・機能及び導入の理由

1)名称:非破壊検査(超音波測定試験等)

2)機能:測定不可の部材を非破壊試験にて測定の機能

3)導入の理由:直接測定不可の部材を非破壊検査により測定可能。併せて内部の欠損状況の把握・コンク強度確認

②事業内容や形態変化:従来小径φ5cm貫通コアにて計測。この検査により構造物損傷低減「環境」・機器操作訓練「人的」、調査期間短縮「経済」等の変化

③事業への影響・評価 メリット:作業の効率化等「経済」・社内技術力向上「人的」、デメリット:機器の操作訓練費発生「経済」、トレードオフ:操作技術習得〜訓練費発生

(3)遠からぬ将来の新技術導入

①新技術の名称と機能

1)名称:赤外線カメラ搭載ドローン調査とCIM導入の統合

2)機能: CIMモデルを構築して作業効率化。後続作業へデータ継承の機能

②解決される課題:公的機関→民間業者へデータ提供により作業迅速化

③課題解決方法と未解決課題:診断・成果品質の向上など「経済」、操作技術者の雇用・操作育成等課題「人的」

(4)遠い将来の新技術導入

①将来技術の名称と機能

1)名称:土とコンク等異種物質内部の可視化可能な高精度調査機器使用

2)機能:高度技術により杭の径・配置状況や背面側鉄筋の径・位置等を3D確認、CIMデータの保存・有効活用

②事業の内容や形態の変化:高度調査技術の活用により労働生産性の向上「人的」、作業時間短縮「経済」と調査機器高額「経済」がトレードオフ

③導入後に残る課題:高度調査機器・CIM技術者の選任、新規雇用

・新たな課題:発注者側のCIMデータ受取・利活用

模範解答7 答案形式 作成日 2017.07.13 添削履歴№ 1 部門 総合技術監理 専門科目 建設−コ・鋼 専門事項 コンクリート構造

(1)私が取り上げる事業の内容 

①事業の名称及び目的

1)事業の名称:PC橋梁の点検・劣化調査及び補修・補強設計

2)事業の目的:本橋は築後35年が経過し、劣化損傷が確認され、これまでに道路橋における活荷重の変更(一等橋→B活荷重等)、また昨今の大規模地震発生に伴う耐震設計方法の変更など新道路橋示方書(以降新道示と称す)が大幅に改定され、新道示に適合していない。本橋がライフラインとして重要路線であることから、新道示に準じた対応策を講じる必要がある。

②事業の規模及び担当する組織の人員・構成

1)事業の規模:橋長135m、幅員25m(4車線)の2級河川に架かるPC3径間連続箱桁橋である。

2)人員・構成:私は本業務の管理技術者、その他に照査技術者、担当技術者5名の計7名体制である。

③事業の背景及び制約、事業概要

1)事業の背景:昨今の河川・橋梁等の公共事業では、近い将来建設就業者、特に若手技術者・技能者が大幅に不足する事態が懸念され、労働生産性の向上が喫緊の課題となっている背景がある。また、築後数十年経過の橋梁は、既存資料等が殆ど無いものが多く、今後維持管理するには如何に現況を適切に復元するかという課題解決すべき背景がある。

2)事業の制約:発注者からの提供資料は、橋梁台帳のみである。河川は常時水位が1m程度、河床は6m程度の軟弱な砂質土、また桁下空間は3mと狭いことから、フーチング周囲を締切ってその形状や寸法及び杭の径や配置状況等の調査は困難である。

3)事業概要:対象橋梁が塩害対策区分Ⅱに位置し、塩害による劣化損傷が確認されることから劣化詳細調査を行い、新道示に基づき橋梁補修・耐震補強設計を実施する。本橋は橋梁台帳しか残存していないことから、先ず建設当時の標準設計の利用、可能な範囲で構造物の形状・寸法を計測する。それから、配筋状態、直接測定不可能な箇所の部材厚計測等については、背面側掘削やコンクリート表面ハツリ調査等を実施する。

(2)最近導入された技術 

①技術の名称・機能及び導入の理由

1)技術の名称:非破壊検査(超音波測定・衝撃弾性波試験等)により、構造部材の寸法・形状を測定する。

2)機能:構造物の背面側が土中となる箇所等について、非破壊検査機器等を用いることにより部材厚等が測定でき、信頼性の高い復元設計を実現できる機能を有する。さらに、この測定結果をデータ保存することにより、後続作業に継承する機能を有する。

3)導入の理由:メージャー等では測定不可能な箇所について、超音波測定機器等の非破壊検査を実施することにより部材厚測定が可能となる。また、この検査により部材内部の空隙等の損傷状況の把握、それと既設コンクリートの強度確認ができる。

②事業の内容や形態の変化

 従来は、橋梁のコンクリート構造物の竪壁等に対する部材厚の測定は、φ5cm程度の小径コア機器で採取するなど部分破壊により部材厚を測定していたが、非破壊試験により現在供用中の構造体を傷つけることなく測定できるため構造体の現状を維持できる。この非破壊検査により構造物に損傷を与えないことから環境破壊の低減「社会環境管理」、また現場作業量が少ないことから調査期間の大幅短縮「経済性管理」及び技能者等の高所作業量の軽減「安全管理」につながる。それに現場で調査データを直接電子データとして取込むことで、これらの情報の整理・活用など効率化が図れる「情報管理」。

③事業への影響及び評価

メリット:現場作業量の低減及びデータ整理・保存等の充実・簡素化により、作業効率が向上し作業時間短縮に貢献できる「経済性管理」。非破壊検査技術をOff-JT等で習得することにより、社内技術者の技術力向上が図れる「人的資源開発」。

デメリット:非破壊検査機器の操作訓練のために、訓練費用が発生する「経済性管理」。

トレードオフ:非破壊検査の習得には費用が掛かるが、反面、社内技術者の技術力向上が期待できる。

(3)遠からぬ将来の新技術導入 

①新技術の名称と機能

1)名称:赤外線カメラ搭載のドローン調査とCIM導入の統合

2)機能:近い将来、国土交通省が推進している一連の計画、調査、設計、施工、維持管理の各プロセスでCIMモデルを連携、段階的に構築しながら建設生産システムの効率化を目指すことになる。UAVによる橋梁全体の3次元点群データや空中写真等の電子データをCIMに取込み、それらの電子データを有効活用することで橋梁点検・調査及び補修設計等の作業効率向上が図れ、さらに後続の施工や維持管理等に継承する機能を持つ。

②解決される課題

 現在、公共施設管理者側が保有・管理するCIMデータを民間設計業者・施工業者・施設管理者への提供等により作業の効率化等が図れ、人的資源管理の面で労働生産性向上という部分的な課題が解決される。

③新技術による課題解決方法と未解決課題

課題解決方法:赤外線カメラ搭載したドローン調査と橋梁設計にCIMを導入することにより、橋梁点検調査における点検精度の向上、点検の可視化、診断・成果品質の向上など、課題が解決される「経済性管理」。

未解決課題:CIMやドローン操作技術者の新規雇用、既雇用技術者に対するOff-JT等の技術習得・教育訓練等の課題が残される「人的資源管理」。

(4)遠い将来の新技術導入 

①将来技術の名称と機能

1)将来技術の名称:土とコンクリート等の異種物質内部の測定・可視化可能な高精度調査機器を用いた調査

2)機能:土やコンクリート・木材等の異種物質が混在する物体の内部を可視化可能な高精度高性能調機器を用いて、RC構造物裏側付近の鉄筋径・配筋、或いはフーチング直下の杭の径・配置状況等を詳細に計測し、3D  画像作成・処理が可能な機能を有する。これらをCIMデータとして効率的に整理・保存する機能がある。

②事業の内容や形態の変化

将来、国内の就業労働者の減少に伴い建設技術者・技能者不足が懸念されるが、この高度な調査技術の活用により、技術者の労働生産性の向上という課題が解決される「人的資源管理」。さらに、この調査技術の活用により作業効率が向上し作業期間の短縮「経済性管理」が期待されるが、調査機器はかなり高額であり「経済性管理」、これらはトレードオフの関係となる。

③導入後も残る課題と新たに生じる課題

1)導入後も残る課題:高精な調査機器及びCIMを適切に利活用できる技術者の選任・育成、新規雇用、或いはアウトソーシング等による対応などの課題が残る。

2)新たに生じる課題:発注者のCIMデータの受け取り方法の課題がある。さらに、建設業界として最新技術の普及、調査機器精度の信頼性の課題がある。 

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