問題文 Ⅲ-1
第五次環境基本計画(平成30年4月17日閣議決定)において、各地域が自立・分散型の社会を形成し、地域資源等を補完し支え合う「地域循環共生圏」の創造を目指すとされた。
(1)廃棄物処理を核とする「地域循環共生圏」を構築するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
模範解答1 (簡易答案1) 添削履歴4 作成日2020/6/17 衛生部門 廃棄物・資源循環 専門事項 処理設備設計
1. 廃棄物処理での地域循環共生圏構築における課題
1) 廃棄物の適正処理と都市部と地方(農村部)連携による地域循環
地域の特色に合った廃棄物処理と地域循環を構築する。都市部は、廃棄物発電を高効率大規模化し電力を供給。地方はメタン発酵を行い、残渣を肥料で農地還元。都市と地方では、都市から食品廃棄物を供給し、適正処理し農産物還元する。
2)廃棄物発電による熱電併給を中心としたCEMS構築
脱炭素源として再生可能エネルギーである廃棄物発電を中心とした地域新電力による電気の地産地消の構築。またCEMSを構築し安定的なエネルギー源とする。
3)廃棄物適正処理とゼロエミッション構築
廃棄物の分別を徹底し、容器包装・ペットボトル等、食品残渣・汚泥、缶・金属類、紙類を再生・有効利用により循環を構築しゼロエミッションを達成する。その電力は、廃棄物発電等の再生可能エネルギーを活用。
2.最も重要な課題と、その解決策
2.1 廃棄物の適正処理と都市部と地方連携による地域循環
1)農村部での適正処理と地域循環
厨芥類や食品廃棄物をメタン発酵し、メタンガスを再エネ源として電気・熱で地域供給する。廃液・残渣は、肥料で農地還元し、作物育成、供給の循環を構築。
2)都市部での適正処理と地域循環
規模による最大効率化した廃棄物発電を構築する。6MPa×450℃ボイラ、排ガス再循環・低空気比燃焼等の技術を採用し、廃プラも混焼させリサイクル。安定供給できる再エネ固定電源として電気・熱供給を行う。
3)地域間を相互に補完し、多面的な循環を構築する。
都市部の下水汚泥・食品廃棄物を地方のメタン発酵施設へ、地方の選定枝等を都市の廃棄物発電所へ相互に供給し、高効率化させ、地域循環と共生を強化する。
3.新たに生じうるリスクとその対策
1)リスク メタン発酵等を都市に集約できない。有機廃棄物の排出元と肥料等需要先も地方であり、都市輸送によるコスト・CO
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排出で行き詰る。さらに都市と地方の循環停止により、地方で人口減少、雇用衰退し、1次産業も衰退する。
2)対策 多層化による安定供給:都市・農村の2者間では、設備停止等で循環停止、電気・熱供給停止で、循環が滞る。隣接する都市や地方を多層化し、循環物を増加させ相互に補う体制を構築する。
人口減少に対応した公共サービス:再エネ供給するシュタットベルケを地域で構築し、地域資源の活用、雇用創出、受益者へのサービス還元する。
模範解答1 (簡易答案2) 添削履歴0 作成日2020/6/20 衛生部門 廃棄物・資源循環 専門事項 処理設備設計
(1) 廃棄物処理での地域循環共生圏構築における課題 1) 廃棄物の適正処理と都市部と地方(農村部)連携による地域循環:
地域の特色に合った廃棄物処理と地域循環を構築する。都市部は、廃棄物発電を高効率大規模化し規模のメリットで、高効率化し電力を供給する。地方は廃棄物のメタン発酵を行い、残渣を肥料で農地還元する。都市と地方では、都市から食品廃棄物を供給し、適正処理し農産物還元する。
2) 廃棄物発電による熱電併給を中心としたCEMS構築:
脱炭素源として再生可能エネルギーである廃棄物発電を中心とした地域新電力による電気の地産地消の構築する。また地域全体のエネルギーを管理するCEMSを構築し安定的なエネルギー源とする。
3) 廃棄物適正処理とゼロエミッション構築
廃棄物の分別を徹底し、容器包装・ペットボトル等、食品残渣・汚泥、缶・金属類、紙類を再生・有効利用により循環を構築しゼロエミッションを達成する。その電力源は、廃棄物発電等の再生可能エネルギーを活用する。
(2) 最も重要な課題と、その解決策
廃棄物の適正処理と都市部と地方連携による地域循環
1) 農村部での適正処理と地域循環
厨芥類や食品廃棄物をメタン発酵し、メタンガスを再エネ源として電気・熱を地域供給する。廃液および残渣は、肥料として農地還元し、作物育成、作物の市場供給の循環を構築する。
2) 都市部での適正処理と地域循環
規模による最大効率化した廃棄物発電を構築する。6MPa×450℃ボイラ、排ガス再循環・低空気比燃焼等の技術を採用し、廃プラも混焼させサーマルリサイクルする。安定供給できる再エネ固定電源として電気・熱供給できる。
3) 地域間を相互に補完し、多面的な循環を構築する。
都市部の下水汚泥・食品廃棄物を地方のメタン発酵施設へ、地方の選定枝等の固形燃料を都市の廃棄物発電所へ相互に供給し、適材適所化、高効率化させ、地域循環と共生を強化する。
(3) 新たに生じうるリスクとその対策
1)リスク : メタン発酵等を都市に集約できない。下水汚泥や畜産廃棄物等の有機廃棄物の排出元と肥料等需要先も地方であり、都市への輸送によるコスト・CO2排出で行き詰る。さらに都市と地方の地域循環の停止により、地方で人口減少、雇用衰退し、1次産業も衰退してしまう。
2)対策 : ①循環の多層化による安定供給:都市・農村の2者間だけでは、その設備停止等で循環が停止し、電気・熱供給停止で地域循環が滞る。隣接する都市や地方で循環を多層化され、循環物を増加し、リスクに対して相互に補う体制を構築する。
②人口減少に対応した公共サービス:再エネ供給するシュタットベルケを地域で構築し、出資者の住民および民間事業者で、地域に合った規模・設備で、地域資源を活用し、地域の雇用創出、受益者へサービスを還元する。これにより社会情勢が変化しても対応できる体制とする。
模範解答1 (完成答案) 添削履歴3 作成日2020/7/1 衛生部門 廃棄物・資源循環 専門事項 処理設備設計
(1)廃棄物処理での地域循環共生圏構築の課題
1) 廃棄物処理と都市・地方連携による地域循環
地域の特色に合った廃棄物処理と地域循環を構築する。都市部は廃棄物発電を高効率大規模化しスケールメリットで高効率化と高電力量を供給する。地方は廃棄物のメタン発酵を行い、残渣を肥料で農地還元する。都市と地方では、都市から食品廃棄物を供給し、循環利用し農産物を還元する。
2) 熱電併給の廃棄物発電によるCEMS構築:
脱炭素源として再生可能エネルギーである廃棄物発電を中心とした地域新電力による電気の地産地消の構築する。また地域全体のエネルギーを管理するCEMSを構築し安定的なエネルギー源とする。
3) 廃棄物適正処理とゼロエミッション構築:
廃棄物の分別を徹底し、容器包装・ペットボトル等、食品残渣・汚泥、缶・金属類、紙類を再生・有効利用により循環を構築しゼロエミッションを達成する。その電力源は、廃棄物発電等の再生可能エネルギーを活用する。
(2) 最も重要な課題と、その解決策
廃棄物処理と都市・地方連携による地域循環
1) 農村部での適正処理と地域循環
厨芥類や食品廃棄物をメタン発酵し、発生したメタンガスを再エネ源として利用し、電気・熱を地域供給する。発酵残渣および廃液は、肥料・液肥として農地還元し、作物育成、その作物を市場供給することで循環を構築する。
2) 都市部での適正処理と地域循環
廃棄物を収集が容易な都市では、廃棄物発電に特化し、規模による最大効率化した廃棄物発電を構築する。6MPa×450℃ボイラ、排ガス再循環・低空気比燃焼等の技術を廃棄物発電に採用し、廃プラも混焼させサーマルリサイクルする。安定供給できる再エネ固定電源として電気・熱供給する。
3) 地域間を相互に補完し、多面的な循環構築
都市部の下水汚泥・食品廃棄物などの有機系廃棄物を地方のメタン発酵施設へ、地方の選定枝等の固形燃料を都市の廃棄物発電所へ相互に供給し、適材適所化、それぞれで高効率化させ、地域循環と共生のつながりを強化する。
(3)新たに生じうるリスクとその対策
1) リスク:メタン発酵等を都市に集約できない。
下水汚泥や畜産廃棄物等の有機系廃棄物の排出元と、肥料等需要先も地方である。これらの都市への輸送によるコスト・CO2排出増加で行き詰る。都市集約により都市と地方の地域循環の停止も発生することで、地方で人口減少、雇用衰退し、1次産業も衰退してしまう。また都市への一極集中により、災害による被災リスクが高まる。復興、公衆衛生、静脈産業の要が停止する。
2) 対策 :
①循環の多層化による安定供給
都市・農村の2者間だけでは、その設備停止等で循環が停止し、電気・熱供給停止で地域循環が滞る。隣接する都市や地方で循環を多層化され、循環物を増加し、リスクに対して相互に補う体制を構築する。廃棄物や農作物だけでなく、電気および熱も相互供給する体制により安定した供給が可能となる。また地域資源を活用し、その地域にあった循環を構築することで、長期にわたって継続可能となる。
②シュタットベルケによる地産地消の促進
エネルギー供給等を地域に特化して経営するシュタットベルケを地域で構築する。再エネである廃棄物発電を中心に、地域内の廃処理、電力・熱供給を地産地消する
事例として、人口が少ないみやま市と人口の多い柳川市の連携とシュタットベルケ構築がある。農業・食品産業の多いみやま市で、生ごみをメタン発酵、残渣を農地還元。柳川市で廃棄物発電を大規模化し、得られた電力をシュタットベルケを通じて地域還元・地産地消している。
このように廃棄物とシュタットベルケを通じて都市と地方が連携し、長所と短所を相互に補い地域循環を構築することができる。
解説
(全般について)
目標記述時間は120分以内としてください。
前置き分を深く読むこと。問題のテーマ(出題者の要求、出題趣旨)を読み解き、地位循環共生圏とは何か、技術者の立場で考えるように。
地域循環共生圏とは、各地域の特性を生かした強みを発揮→地域資源を活かし、自立すること。分散型社会を形成→地域特性に応じて補完し支えあいます。その段階を考えること。
見出しは、簡潔に1行以内として簡潔に書き、細かく書く必要はない。
見出しは趣旨が間違えないよう「問2の答え」とわかればよいのです。
(1)課題の分析のしかたについて
問題のテーマの趣旨を把握して、テーマに整合性が取れた課題を抽出するように。
課題とは、問題に対して技術者が提案する技術応用です。特定の分野に限定しない、個別の課題、施設の課題に限定せず、多面的に地域循環共生圏につながるかを考える必要があります。
問題テーマの趣旨に沿った課題を設定(ストーリーを構築)する必要があります。しっかりした課題の設定ができればその後の点数が決まり、もしそうでない場合は、その後の解決策提案、リスクと対策につながらず、大きく減点されることになります。
課題は、広い分野で異なる視点のものを3種類程度抽出ようにしてください。
主題にない範囲まで、課題を広げない。廃棄物での地域循環共生圏でCO2、CCSはやりすぎ(問題文にCO2はない、出題者の意図を考えること)。問題分から素直に読み解くようにして、細分化して各論にしないことです。
課題の中心は何かを考えて設定してください。知っている各論をたくさん盛り込めば良いというものではなく、課題ごとに中心となるもの1本に絞るようにしてください。
答案の結論は、環境省の方針をまねる必要はありません。技術者の立場で、多面的な観点で有効な課題を設定します。実例から持ってきてもOKです。経験を問いかけていますので、あまり難しく考えないことです。
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
方策は具体的な衛生工学。廃棄物処理の技術的応用したものにする
技術者の立場で、〇〇法、数式、具体的な汎用技術等を使って課題の解決方法を説明してください。
なぜ重要なのか等の前置きは特に自由用ではないのでなるだけ省くように。
(3)リスクの導き方、書き方などについて
リスクとは、提案によって波生的に生じる損害発生頻度が小さく、被害額の大きいものとします。予測困難な経済損失事象をリスクとして示す。
解決策により〇〇が悪化・変化し、新たに〇〇の被害が想定される。というイメージです。
正しい文章表現としてください。なぜ困難なのか、どういう時に困難なのかを明確に示すように。さらに問題点がどこにあるかを考えるように。問題点を無理に作ると、どのような悪いことが起こるのかを考える。
解決策に具体的事例を入れて、一般論として他の市でもうまくいくので、複数都市が連携して対処する・・・。。例えばこのようなことを記述します。そして地方と都市の関係をつなげて問題解決する方針を宣言してください。