問題文
B市(人口40万人)の公共下水道(合流式)において、保有する大部分の下水道管渠の老朽化が進み、下水道管きょに起因する道路陥没の発生が急増するなど、老朽化対策が急務となっている。また、勃発する浸水被害への対応や、予想される大地震への備え等もすすめていかなければならない状況にある。しかしながら、本格的な人口減少社会の到来による下水道使用料収入の減少、昭和40年代から平成10年代に集中的に整備された下水道施設の老朽化、さらにこれに対する技術者の減少など課題となっている。このような状況を踏まえて計画的かつ効果的に管渠の老朽化対策を進める技術者として下記の問いに答えよ。
(1)計画かつ効果的な管きょの老朽化対策を進める技術者として多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その選定理由を述べるとともにその課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)それらの解決策により新たに生じるリスクを示とともにそれらへの対策を述べよ。
模範解答1 (簡易答案1) 添削履歴5 作成日2020/7/13 上下水道部門 下水道 専門事項 下水渠
1.管きょの老朽化対策を進めるための課題抽出と分析
1)既設管渠のネットワ−ク化で機能の向上で浸水対策
管渠の一部をネットワ-ク化し浸水エリアのバイパス管として能力を上げる。また、管きょの一部に貯留機能を持たせる。
2)既設管耐震化の備えで既設耐震化工法対応
大きな地震では、地盤の液状化現象が発生し多数のマンホ−ル浮上するのでマンホ−ル浮上対応を行う。管きょとマンホ−ルの接続部をフレキシブルな構造に改良し非開削に既設耐震化工法を行う。
3)道路陥没防止の取付管改良
道路陥没の主な原因である、陶管の取付管が集中している地域(取付管改良集中地域)において、重点的に硬質塩化ビニル管へ改良進める
2.最も重要な課題と選定理由、課題に対する解決策
1)最も重要と考える課題と選定理由
①既設管渠のネットワ-ク化の課題
理由:管渠老朽化による能力不足にゲリラ豪雨が多く、道路の冠水・床下と床上の浸水が多発し市民生活が安全で安心できない状況となるので重要である。
2)課題に対する複数の解決策
①管渠ネットワ-ク化で水位を平準化対策
既設管渠ネットワ-クにより、満水状態の管渠から余裕のある管渠へ流下させ、人孔からに溢水を軽減させる。
②バイパス管・管内貯留の活用
既設管渠の流下能力不足を、新設のパイパス管を設置し、能力不足を貯留機能で向上させる。
③ポンプ場の増設:ポンプ場の増設により、内水対策を行う。
3.新たに生じるリスクとリスクへの対策
1)リスク
①既設管ネットワ-ク管網による環境対応:合流式のため水位上昇による越流システムに予想以上の流量が発生し、地域全体の、汚水が河川に流下され環境上問題となる。
2)対策:①雨水貯留施設設置:越流水の予測し、水位を低下させ汚水の放流をさせないため、雨水貯留施設を設置する。
この簡易答案1では、添削指導において次のようなことをご指導申し上げました。
1回目添削
問題文をじっくり読んで、市の担当者になりきった気持ちで考えてください。
そして、市長さんが言うような大まかな話ではなく、単刀直入に課題を挙げてください。
この①〜⑧につながる技術課題です。
① 人口40万人の公共下水道
② 合流式である
③ 大部分の下水道管渠の老朽化 昭和40年代から平成10年代に集中的に整備された
④ 道路陥没の発生が急増
⑤ 浸水被害
⑥ 大地震への備え
⑦ 人口減少による下水道使用料収入の減少
⑧ 技術者の減少
これらをもとに3つ課題を選定する
2回目添削
このような ケースワークでの 提案型の問題では 予め詳細調査をやってから 答える という姿勢は許されません。
経験知識を問いかけているところもありますので 、問題文を読んで ご自身で検討した上で 、結論を推論して答えるようにしてください 。
1.管渠の老朽化対策を進める課題抽出と分析1)データベースシステム構築×
(すぐに対応する対策を問われている)
このような一般論ではなくこの市でどこが一番老朽化していると思いますか。
経験が問われていますので調べてからでは×です。
2)地震対応(被害の大きい場所はどこか・耐震の備えはどうするか)
「地震被害が高い箇所」とはこの市ではどこですか。推論してシナリオを考えることです
3)浸水対応(管渠の一部をネットワ-ク化し浸水エリアのバイパス管)
ネットワーク化の趣旨を見出しに書くように。曖昧(ストック)では×ことです。
2.最も重要な課題と選定理由、課題に対する解決策1)データべ−スシステム構築これ自体は事務的な手段にすぎません。
2)課題に対する解決策解決策の「柱」を3つ挙げるようにしてください。
3.解決策のリスクとその対策 ①民間活力の導入リスクを挙げるように。これは対策
3回目添削
①道路陥没防止の課題 ここは因果関係を言うところではありません。最も重要と考える理由を述べるように。
① 陶管の取付管改良
雨水・汚水両方の取付管を、重点地区から全部改良する。←とは具体的に。つまりどうするのですか。
1)リスク
①豪雨や地下水からの発生:豪雨により雨水が地下に浸透し、地下水位が高くなり、管きょのひび割れ部たジョイント部から侵入し陥没が発生する。
これは偶然そうなるわけであって、2)の解決策に起因してなるわけではありません。「(3)それらの解決策のリスクを示し・・」の意味わかりませんか。
4回目添削
問1は1,2,3の答えは、優先度が真逆の3,2,1の順ではありませんか。
1は全く老朽化事故の対策にすぎず、あまり技術的発展性がありません。ただのダメ直し。
道路の陥没ですから、下水道というよりは道路問題。迷惑はかけますが、難しい話は何もありません。
2は下水道としての課題が少しはあります。
3の既設管渠のネットワ−ク化は技術応用性が期待でき、これを最重要として1番にしてください。
そして問2は既設管渠のネットワ−ク化について提案してください。
模範解答1 (簡易答案2) 添削履歴2 作成日2020/7/19 上下水道部門 下水道 専門事項 下水渠
1.管きょの老朽化対策を進めるための課題抽出と分析
1)既設管渠のネットワ−ク化で機能の向上で浸水対策
既設管渠の一部をネットワ-ク化し、浸水エリアのバイパス管として能力を上げる。また、管きょの一部に貯留機能を持たせる。
2)既設耐震化工法で既設耐震化構造を対応
大きな地震では、地盤の液状化現象が発生し多数のマンホ−ルが浮上するのでマンホ−ル浮上抑制対応を行う。管きょとマンホ−ルの接続部をフレキシブルな構造に改良するため、非開削で既設耐震化工法を行う。
3)道路陥没防止の取付管改良
道路陥没の主な原因である、陶管の取付管が集中している地域(取付管改良集中地域)において、重点的に硬質塩化ビニル管へ改良または更生工法で改良を進める。
2.最も重要な課題と選定理由、課題に対する解決策
1)最も重要と考える課題と選定理由
①既設管渠のネットワ-ク化で浸水対応する課題
理由:管渠老朽化による能力不足でゲリラ豪雨に対応できないため、道路の冠水・床下と床上の浸水が多発し市民生活が安全で安心できない状況となるので重要である。
2)課題に対する複数の解決策
①管渠ネットワ-ク化で水位を平準化対策
既設管渠ネットワ-クにより、満水状態の管渠から余裕のある管渠へ流下させ、人孔からの溢水を軽減させる。
②バイパス管・管内貯留の活用
既設管渠の流下能力不足を、新設のパイパス管を布設し、流下能力の拡大を図る。また、管渠サイズを広げ管内貯留機能で雨水貯留し能力向上図る。
③ポンプ場の増設
ポンプ場の増設により、大雨が降る前に既設管内の雨水を早期に河川へ放流し、内水対策を行う。
3.新たに生じるリスクとリスクへの対策
1)リスク
①既設管ネットワ-ク管網による環境対応:合流式のため水位上昇による越流システムに予想以上の流量が発生し、地域全体の汚水が河川に流下され環境上問題となる。
2)対策:①雨水貯留施設設置:越流水の予測し、水位を低下させ汚水の放流をさせないため、雨水貯留施設を設置する。②スクリーン設置:汚濁物流出を抑制するため、放流口にスクリ−ン設置する③越流堰を嵩上げ:水位が上がるため、越流堰を嵩上げして対応する。
模範解答1 (完成答案) 添削履歴1 作成日2020/7/27 上下水道部門 下水道 専門事項 下水渠
1.管きょの老朽化対策の課題抽出と分析
1)既設管渠ネットワ−ク化による浸水対応
既設管渠の一部をネットワ-ク化し、浸水エリアのバイパス管として能力を上げる。また、管きょの一部に貯留機能を持たせる。浸水重点エリヤと浸水しないのエリヤをル-プにして、余裕のある管渠へ流下可能な状態とする。
2)既設耐震化工法で既設耐震化構造
大きな地震では、地盤の液状化現象が発生し多数のマンホ−ルが浮上するのでマンホ−ル浮上抑制対応を行う。なお、非開削マンホ-ル浮上工法としてフロ-トレス工法やインナ−ウェイト工法を使用する。管きょとマンホ−ルの接続部をフレキシブルな構造に改良するため、非開削で既設耐震化工法を行う。
3)道路陥没防止の取付管改良
道路陥没の主な原因である、陶管の取付管が集中している地域(取付管改良集中地域)において、重点的に硬質塩化ビニル管へ改良または更生工法で改良を進める。また、管渠のズレやクラックからの土砂の進入によるもののあるので、更生工法による対応が必要である。
2.課題と選定理由、課題に対する解決策
1)課題と選定理由
①既設管渠ネットワ-ク化の課題
理由:管渠老朽化による能力不足で、ゲリラ豪雨や台風に対応できないため、道路の冠水・床下と床上の浸水が多発し市民生活が安全で安心できない状況となるので重要である。
2)課題に対する解決策
①管渠ネットワ-ク化で水位を平準化対策
既設管渠ネットワ-ク化により、満水状態の管渠から余裕のある管渠へ流下させ、人孔からの溢水を軽減させる。なお、既設管渠の水位がさがるか氾濫解析シュミレ-ションにより地域全体を確認し対策を行うことで見直しする。
②バイパス管・管内貯留の活用
既設管渠の流下能力不足を、新設のパイパス管を布設し、流下能力の拡大を図る。また、管渠サイズを広げ管内貯留機能で雨水貯留し能力向上を図る。
③ポンプ場の増設
ポンプ場の増設により、大雨が降る前に既設管内の雨水を早期に河川へ放流し、管渠内の雨水を無くし内水対策を行う。なお、ポンプの管理については、人材不足を考慮し、内水位と外水位を監視し自動運転システムを利用する。
④止水板の設置
管渠の能力不足により、浸水が発生する地下街の入口や、マンション等の地下への入口に、止水板を設置し浸水の軽減を図る。なお、管理上は、豪雨などの予測を事前に行い降雨前に止水板を設置することで、安全対策を行う。
3.新たに生じるリスクとリスクへの対策
1)新たに生じるリスク
・既設管ネットワ-クによる汚濁物流出
合流式では、汚濁物が沈殿させてゆっくり流下するが、ネットワーク化により断面変化や落差と流下方向も様々となる。豪雨による非常流現象の合流下水は、水位上昇し3Qを超えて、越流システムに予想以上の流量が発生し、汚濁物質を含んだ雨水が河川に流下され環境上問題となる。
2)リスクへの対策
①雨水貯留施設設置
越流水の予測し、水位を低下させ汚水の放流をさせないため、雨水貯留施設を設置し放流量を抑制する。
②スクリーン設置
ゲリラ豪雨等で合流式下水道の流れが、乱流となり汚濁物流出を抑制するため、雨水吐きの放流口にスクリ−ン設置する。
③越流堰を嵩上げ
水位が上がるため、越流堰を嵩上げして汚濁物の対応する。
④浸透施設の設置
雨水浸透施設(浸透桝・浸透井戸・浸透舗装・浸透側溝・浸透管等)を設置して、雨水の流入量を削減する。
解説
(1)課題の分析のしかたについて
問題文を読んで市の担当者になり切った気持ちで、すぐに実効性のある課題を挙げるようにしてください。例えばアセットマネジメントや長寿命化計画など、内容の見えない計画段階のものは好ましくありません。
実際に進める方向性(取り組む事項)担当直入に3つ挙げる。
このような提案型の問題では、調査をやって物事を明らかにしてから対策するのではなく、ご自分で経験したことをベースにシナリオを作成して、検討した上での推論で答えることが必要です。
デ-タべースシステムの構築などの提案は、事務手段であって水道工学とは言いにくいです。
具体的な対策する内容で考えます。例えば、既設管のネットワ−ク化・既設耐震化工法等
浸水など下水道に特化した内容とするように。
分析では、重大と考えた根拠を示すことを忘れないように。
問題文(合流式・老朽化・道路陥没・浸水被害等)で示された課題内容は、すぐに実行可能な対策を考えて、方向性を決めてください。これから研究するのは×です。
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
課題に対する解決策を3つ程度挙げて網羅性、広い視点を示す。
具体的な対策を書くように。
問題の前置き文の要求に応えるような内容としてください。
見出しが長いと時間がかかり実戦的ではありません。意味が損なわないように短縮するように。
選定理由は、因果関係など冗長にならないようにして、最も重要と考える理由を端的に述べることです。例えば、施策によって市民がどうなるか、なぜそれが必要か、重要事項何かなど。
(3)リスクの導き方、書き方などについて
リスクとは、発生頻度が小さく経済的損失の大きな出来事を指します。
自身の提案に由来して起きるリスクであること。
提案した対策で品質の不足部分がないか考えてください。
例えば水害や内水氾濫リスクで、下水道管きょの流量が予想以上となってしまうのは、なぜか。専門家が設計しているのにも関わらず、予想上限値を超えてしまう理由は?そこにリスクの本質があるので根本原因にちゃんと言及するようにしてください。