機械部門 必須科目 解答者01 機構ダイナミクス・制御 専門:精密機器
機械部門 必須科目 解答者01 機構ダイナミクス・制御 専門:精密機器
予想問題 Ⅰ-1 簡易答案1
問題
我が国は、今後労働力人口が減少する状況の下で、技術的な国際競争力を更に高めていく必要がある。特に消費者は価格以上の機能・性能を備えた製品であるか、つまりコストパフォーマンスの高い製品かという点を一つの基準として製品を評価し購入する傾向にある。そこで、ものづくりの観点からこれを有利に展開する手段として、「デジタルトランスフォーメーション」の導入によるものづくりの効率化が挙げられる。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.検討項目と課題
(1)フロントローディング:3D-CADデータの段階で品質部が耐久性シミュレーションする。最終試作品に耐久試験の問題がでると各部門の追加コストが莫大となる。それを抑制し価格への転嫁を抑えつつ、耐久品質を向上させる。
(2)バーチャルコミッショニング:メカ部分の試作機でなく3Dデータを動かして制御系を仕上げる。制御系とよりマッチするメカ部分の修正も試作品のコストなしにできる。よって価格への転嫁を抑えつつ制御系も優れた製品を提供できる。
(3)製造工程低コスト化:設計部門が3D-CADで構想試作品設計の段階で製造部門が工程設計をシミュレーションする。製品の機能・性能を向上させる新構造の製造を低コストで製造可能にし、価値(=機能÷コスト)を向上させる。
2.最も重要と考える課題「1.(1) フロントローディング」の解決策
(1)開発コスト抑制:低コストで開発する為試作を1回で済ませる。それでも高い機能・性能を持たす為試作前にCAEで耐久性等の品質項目も確認解決しておく。
(2)製造コスト抑制:同じ機能・性能を満たす設計候補から最も製造コストの安い設計を選択する。候補はジェネレイティブデザインでコストをかけず挙げる。
(3)顧客ニーズ対応製品:顧客の真のニーズに対応した製品にして製品の価値をあげる。IoTで収集したビッグデータからかゆい所に手の届くニーズを分析する。
3.リスクと対策
リスク:CAEで仕様とコストを追求すると実物を確認する機会がなく、製品が消費者の感性とかけ売れないリスクがある。フラッグシップの一眼レフカメラの外装がABS樹脂で防水等十分でも売れない。なぜならユーザは撮影機能だけでなくCAEで見積もるのが困難なステータスや審美性といった事を求めてカメラを買うからである。
対策:3Dプリンタによるモックアップでの確認やバーチャルリアリティで製品検証する。フィラ入り樹脂等で低コストを維持しつつ質感を持たせる。
4.業務遂行要件
倫理の観点:品質問題につながる事象を設計段階にてFTAで漏れなく抽出し試作前のCAEによる検討項目に入れる。これは公衆の利益の優先に相当する。
予想問題 Ⅰ-2 簡易答案1
日本の機械産業は、自動車、電気電子産業、製造機器、精密機器、医療機器などのニーズに応えた高付加価値機械、高機能製品を提供することにより競争力を高め発展してきた。しかし、最近は中国、台湾、韓国などの技術力向上により、これらの機械産業の国際競争力が低下傾向にある。また、グローバル化の進展、技術情報の急激な進歩及び地球温暖化に伴う環境規制強化など、競争環境の急激な変化に見舞われ、従来の施策のみでは今後の日本の機械産業の発展には限界がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)日本の機械産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題を、機械技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、分析せよ。
(2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げて、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に関連して新たに生じうるリスクとその対策について述べよ。
(4)(1)から(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.日本の機械産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題
(1)日本が得意な擦り合わせ設計に更にCAEを活用しより高付加価値なハイブリッド車に注力する。充電インフラの整備困難な国ではEVより現実解である。そこでCAEを活用し燃料費がEVに大きく勝るハイブリッド車を設計する。
(2)日本が得意とする高技能を要する高付加価値製品の製造技術に更にIoTを活用しベアリングの製造をする。多くの製品に汎用的に搭載される軸受は持続的社会実現に必要な省エネに寄与する重要部品である。そこで従来の高度技能に加えてIoTで検査結果を加工機へリアルタイムでフィードバックし品質をより安定化させ、数年で割高分を回収できる軸受性能を追求し普及させる。
(3)Covid-19や温暖化に配慮しつつ持続的社会実現に必要な省エネに寄与する空調装置を世界に製造販売する。そこで各国の気候や住宅事情に合った地域別仕様で開発する。その際従来のPLC制御に拘らずAI制御も活用し快適性を維持しつつ省エネでその地域の電力供給に空調が負荷をかけない様にする。
2.最重要課題のCAEの積極活用に対する複数の解決策
(1)バーチャルコミッショニングを使って実験ではやりきれない多数の制御条件とそれらにおけるエンジン・モータの駆動を再現し制御条件を最適化する。
(2)磁石の大きさと磁気回路を最適化して軽量化と高効率化により燃費の向上を最適にするハイブリッド用モータを磁気シミュレーションで設計する。
(3)必要なトルクと出力の組み合わせ毎にエンジンとモータの駆動条件をそれぞれどうすれば最も高燃費かシミュレーションで求める。
3.リスクと対策
CAEで最適化設計をするとエンジンとモータがお互い補完し合って共に性能限界で駆動する機会も少なく想定以上に長持ちする。するとせっかく新モデルを出しても売れないリスクがある。そこで車の運行状況や燃費の実使用におけるビッグデータをIoTで取得しCAEで活用する事で更に改良した製品を作る。
4.業務遂行において必要な要件
(1)開発メンバに外国人やシニアを入れる事で従来の日本の強みと最新ハイテクを融合させ競争力を向上させられるのに加え、自社及び社会の持続の源泉となる。
(2)リサイクルしやすい設計にすることで不法投棄抑止を促進し、加えて将来世代も引き続き貴重な資源を使える様にして、社会の持続の源泉となる。
予想問題 Ⅰ-3 簡易答案1
我が国は2000年前後から機械製品の生産拠点を海外に移してきた。これにより国際競争力を更に高めていくことを目論んでいた。しかし国際情勢の変化から、近年生産拠点の日本への回帰や、海外の進出国を変更するといった転換がはかられている。特に日本へ回帰した場合、そのものづくりのやり方は海外に移す前のやり方とは大きく異なっている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.必要な検討項目
(1)イノベーション拠点化:国内生産拠点は海外生産拠点との差別化を図るための拠点とし、新しい技術や製品など新たな付加価値を産み出す。
(2)マザー工場化:海外へ移管する生産技術や海外工場のバックアップを担う。
(3)フレキシブル工場化:多品種少量生産や短納期対応などに柔軟に対応する。
2.最も重要と考える課題「1.(1)イノベーション拠点化」の解決策
(1)新生産装置導入:新たに開発された新型生産装置を最初に導入し課題出しと対策を完了した上でまずは国内マザー工場、そしてマザー工場から海外工場へ水平展開する。
(2)新製品早期立ち上げ:新製品の開発と工程設計を開発・設計部門とコンカレントエンジニアリングを行う事で安定的生産開始を早期に可能にする。
(3)ノウハウ形式知化:熟練工の暗黙知によるノウハウをIoTや3Dの活用により形式知化するツールを研究部門と協業して構築する。そしてマザー工場が海外工場にノウハウを効率良く伝えられる様にする。
3.リスクと対策
リスク:イノベーション工場が研究部門、開発設計部門、マザー工場と国内部門との協業が増え交流が活発になると、海外工場の生の声を聞く機会が減る。その結果海外工場のイノベーション化も試みた提案をしたつもりでも、海外工場の実情を加味しない受け入れ難い提案に陥りやすくなるリスクがある。
対策:ITやIoTを使って海外工場の稼働状況をイノベーション工場にいながら見える化し、又気軽にリモートでコミュニケーションを取れる環境を構築する。
4.業務遂行に必要な要件
(1)倫理の観点:他部門のメンバを尊重しつつ自らの意見も主張して最善の施策を模索する。これは相互の協力及び公正かつ誠実な履行に相当する。
(2)社会の持続性の観点:職場のメンバにシニア、障害者、外国人等を入れ多様にしてイノベーションを多様な切り口で推進し、更に自社及び社会の持続の源泉とする。「働きがいも経済成長も」に相当する。
予想問題 Ⅰ-4 簡易答案1
日本の消費資源は多く、また、資源の多くを海外からの輸入に頼っている。世界の人々が日本人と同じ生活をした場合、地球が2.9個必要という試算もある。よってこのままの生産・消費のライフスタイルでは次世代の我が国の社会が成り立たなくなるおそれがある。そこで国際的な取組であるSDGs(持続可能な開発目標)について我が国でも積極的な取組が行われている。SDGsの目標の一つに「つくる責任、使う責任」がある。これは持続可能な生産消費形態を確保することを目的とするものである。そんな中エコデザインはつくる責任に対して機械技術者に求められる重要事項の一つである。限りある資源を廃棄する製品から回収しあらたな製品に活用する仕組みを構築するエコデザインは、3Rを更に進化させた者であり、持続的社会を維持するために非常に重要である。
(1)「エコデザイン」を履行するための機械機器・装置のものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。
1.エコデザイン履行の課題
(1)自動リサイクル装置のセット設計:製品のエコデザインとそれに最適な自動リサイクル装置をセットで設計する。
(2)良いアイデアの幅広い製品搭載:エコデザインの特許はパテントプールで管理し、良いエコデザインが普及し、将来は標準化による部品の再利用にもつながる。
(3)業界全体での総括的取り組み:製品が備えるべき最低のエコデザインの要件を業界団体の自主規制として制定する。
2.最も重要と考える「1(1)」の課題の解決策
(1)3Dデータの活用: CAD、CAEを使ってエコデザイン製品がリサイクル装置で自動処理されるのを検証し、製品、装置双方の設計レベルを向上させる。
(2)リサイクル業者との協業:CADとCAEの計算結果の視覚化表示により製品設計を3Dマウントディスプレイによるバーチャルリアリティでリサイクル業者にレビューする。そして装置をより良いものにする。
(3)自動リサイクル装置の普及:製品がモデルチェンジした際には容易に装置の仕様を変えられる様に、ロボットハンドをアタッチメント式にする等汎用適応性をリサイクル装置に持たせる。
3.リスクと対策
リスク:せっかくリサイクル装置を作っても業者が導入しないリスクがある。
対策:リースにして処理した台数に応じて課金する。
4.業務遂行において必要な要件
技術者倫理も高めて遂行するには、リサイクル容易な金属で3Dプリンタを使ったセル加工で軽量化しプラスチックに代替する等、自動リサイクル装置の工程以降の最終工程までの工程も考慮した設計をする。これは公益の利益の優先、持続可能性の確保に相当する。
予想問題 Ⅰ-5 簡易答案1
我が国は、今後労働力人口が減少する状況の下で、技術的な国際競争力を更に高めていく必要がある。特に労働者人口の減少は深刻であり、効率的なものづくりをしないとメイドインジャパンは消える運命をたどる可能性がある。そこで、ものづくりの高効率化を根本的に向上させる「デジタルトランスフォーメーション」の導入が期待されている。機械製品のものづくりにおいても、「デジタルトランスフォーメーション」は大きな高効率化のインパクトを与えようとしている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1. 課題の抽出と分析
(1)製品企画でのビッグデータ活用:顧客元の自社製品と自社をIoTで結び顧客が製品をいつ、どの様に操作したかを逐一把握する。顧客のニーズをより満たす競争力ある製品を効率的に企画する。
(2)設計での3D-CAD活用:3D-CADで設計した試作品のメカ部分をバーチャルコミッショニングで制御シミュレーションし、メカ部分の完成を待たずして制御系を仕上げる。
(3)生産での履歴活用:1部品毎製造履歴を確認・記録し、製造中即時に不良品を発見可能にして効率的・確実に工程能力指数を維持する。
2.「1(1)製品企画でのビッグデータ活用」の課題に対する解決策
(1)ビッグデータ分析:顧客がどの様な機能を真に欲しがり又不要としているかをビッグデータから読み解き製品仕様を決める。工作機器のロボットアームの軌跡データを集め、高頻度の軌跡を短くしタクトを短縮させる自由度のアームにする。
(2)ツール環境整備:OLAP、OLTPを使って効率的にビッグデータ分析をする。上述の工作機器では、軌跡データを簡略化した経路グラフの自動生成による起動分析技術を活用して、頻度の高い軌跡を探し出す。
(3)データ環境構築:製品に取付けたスマートセンシングにより必要なデータを収集し、IoTを使ってメーカへ逐次送信する。上述の工作機器では、ロボットアームの軌跡と加工されているワークの軌跡を時間的相関がわかる形で収集する。
3.リスクと対策
リスク:ビッグデータを基準としたニーズに基づき製品企画を続けて行くと、いつしかマイノリティのニーズを無視した製品企画に陥るリスクがある。
対策:企画担当者が疑似体験技術を使ってビッグデータを補完するマイノリティのニーズデータを収集しニーズを満たすユニバーサルデザインを企画に反映させる。
(4)業務遂行において必要な要件
倫理の観点:ビッグデータは管理を徹底し個人情報の保護に努める。これは秘密の保持に相当する。
社会の持続性の観点:ビッグデータ分析ではシニア等多様なメンバを入れる。多面的ニーズを考慮した企画力向上、雇用機会提供で社会の持続性に寄与する。働きがいも経済成長も、に相当する。
予想問題 Ⅰ-6 簡易答案1
データの改ざんなど、近年製造業の技術的な不正が相次いで発覚し、如何にメイドインジャパンの信頼を取り戻すかに対して国内外から関心が寄せられている。この背景としては日本の技術力によって維持されていた諸外国に比較して高い競争力、それを支えた高いQCDを近年維持できなくなった点が根本原因の一つと考えられる。よって今こそ日本のものづくりにおける高いQCDを維持するためにアクションを起こす必要がある。それには他国でやられていない品質(仕様)を達成し、ものづくりの効率化により短納期やコストを下げる必要がある。
(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.検討すべき課題
(1)高品質・短期間の設計:日本が得意な擦り合わせ設計に更にCAEを積極活用してより高付加価値な仕様の製品設計を素早く行う。これにより耐久性や燃料費がEVに大きく勝るハイブリッド車を設計する。
(2)高品質の生産:日本が得意とする高技能を要する高付加価値製品の製造技術に更にIoTでワーク1つ毎の検査結果を加工機へリアルタイムでフィードバックし工程能力指数を向上させ品質をより安定化させる。
(3)効率化による短納期・低コスト化:日本が得意とする産業ロボットとFAを更に効率を上げるためにIoTでMES(製造実行システム)に結び製造現場を完全自動化する。
2.最重要課題「1.(1)高品質・短期間の設計」の解決策
(1)S-N曲線データと応力計算値Sから耐久寿命を算出する。これにより時間をかけずに高機能設計の耐久寿命と初期破壊箇所を明らかにする。
(2)短時間に高精度の計算をする為にモデルを最適化する。サンブナンの原理を用いたモデル最適化をする。
(3)短時間で要求精度を満たす計算ができる様に最小のメッシュ数にする。例えば応力勾配小の領域や評価領域より遠い領域は粗くメッシュを分割する。
3.リスクと対策
(1)リスク:高品質・短期間でシミュレーションをする為の複数の近似テクニック(耐久寿命算出の際の平均応力修正理論、サンブナンの原理、メッシュ数低減)を同時に使うと、それらの交互作用で想定外の計算と実際とのかい離が生じるリスクがある。
(2)対策:最終設計については試作品でリアルな性能確認を行う。
4.業務遂行において必要な要件
(1)倫理の観点:加工機へフィードバックしていたワーク1つ毎の検査結果を一定期間保管し、万が一顧客元で製品事故発生の際にトレイサビリティを取れる様にする。これは真実性の確保に相当する。
(2)社会の持続可能性の観点:高いQCDのみならず高いエコロジーも設計に加える。エコデザインにしてユーザのリサイクルに係る負担を小さくし、資源再利用を促進する。これはつくる責任、つかう責任に相当する。
予想問題 Ⅰ-7 簡易答案1
工場の効率化を求めSmart Factoryの構想が以前からあったが、世界的にCOVID-19(コロナウイルス)が流行した今日その注目度は一気に大きくなった。製品の工場検収は現地訪問不要のリモート検収、指導者と受講者が3Dゴーグルで画像を共有して行う技術指導、工場間をIoTでつないでインフラ共有など、様々な取組が行われている。これらの取り組みをうまく軌道に乗せて、COVID-19の対策をしつつものづくりの効率もあげられるものづくりのやり方に転換する必要がある。
このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)機械製品のものづくりの手法を上記の考え方に沿って転換する場合に必要な検討項目を、技術者としての立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
1.必要な検討項目
(1)工場管理業務のスマート化:IoTでスマートセンサや製造装置、ロボットをつなぎ、在庫管理や装置への部品供給、仕掛品、完成品の管理を行う。感染は物に付着したウイルスとの接触や人と人の接触によるのでそれを防止する。
(2)リモートコンタクト:各地工場にカメラ、電子タグ、各種センサーを設置する。それらのデータをクラウド上で共有しマザー工場にいながら各地工場の生産状況を確認可能にする。ウイルスが人の移動で拡散するのを防止する。
(3)工程設計最適化:製造装置をIoTでつなぎ、作業員レスでの工程設計をする。ウイルスは人と人の接触で感染するのでそれを防止する。どうしても人の介在を要する工程は、作業員同士の接触を避けるレイアウトを検討する。
2.最も重要と考える管理業務のスマート化の解決策
(1)部品メーカとの協業:部品メーカと自社工場の在庫部品の増減の相関関係の傾向をAIで学習させ最適な供給・受給が両社で成り立つ様にする。これにより物流業務を最小にとどめ、物流に伴うウイルス拡散のリスクを低減する。
(2)収納・庫出自動化:納品された部品をロボットが自動で所定の部品棚に収納する。工作機器からの部品切れ信号を受けた管理システムがロボットに部品を棚から自動採取させ指定場所まで自動搬送させ人同士の接触を避ける。
(3)生産数管理:営業部員のPCや納品済み製品を管理システムとIoTでつなぐ。即時に製品や消耗品の必要生産数を把握しAIで分析して先々の需要数まで予想して無駄な生産を無くし、ウイルスが人から人へ拡散するのを防止する。
3.リスクと対策
リスク:スマート化すればする程ハッキングされた際に被る被害が広範に渡るため、長期操業停止のリスクがある。
対策:適切にファイアーウォールを構築し、逐次ウイルスチェックを行うシステムを完備する。
4.業務遂行に必要な要件
(1)倫理の観点:部品業者と互いの効率向上に有効な情報を共有する仕組みの構築を要件とする。これは相互に信頼し相手の立場を尊重し協力する事に相当する。
(2)社会の持続可能性の観点:自動化し省人化を推進する事を要件とする。これはCOVID-19対策及び就業者一人当たりの実質GDPの年間成長率向上に相当する。
予想問題 Ⅰ-8 簡易答案1
交通や通信の発達した今日、ものづくりの現場で使う部品やモジュールは世界一安いコストと品質を両立したものを求めて、世界各国から集められている。しかし災害、国際紛争などでサプライチェーンが寸断され生産が止まってしまうリスクに常にさらされてきた。今回COVID-19(コロナウイルス)の世界的流行もサプライチェーンの寸断を助長するものとして懸念されている。この状況を鑑み、我が国の生産業において世界中に工場を進出させている多くは安いコストと品質を両立できる新たなサプライヤを世界各地で発掘・育成し、100%地産地消することで事業継続を維持しようとしている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)上述の地産地消型のものづくりに向けて、あなたの専門分野だけでなく機械全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ
1.地産地消型のものづくりの課題
(1)部品や工程を小分けにして得意な企業に任せる。
(2)サプライヤの在庫数をデータベース化し、部品仕入れ先の自由度を増して、在庫を充足する。
(3)目的とする機能、品質を満たしながら、調達可能な部品や機能へ変更することにより、製造を維持する。
2. 最も重要な課題1.(1)の解決策
(1)工程の小分け化:自社の調達部門において部品の製造工程を理解し、各工程をどの現地企業に任せれば良いか判断する。切削加工が得意な企業に切削加工を任せた後に、放電加工の得意な企業に切削ではできない微細な追加工を依頼する。
(2)物流確保:安価で高品質な現地運送業者を確保する。工程毎に異なる企業を部品が行ったり来たりする。よってコスト低減の為安価でなければならない。加えて時間通りに破損なく届く事で次工程の企業が効率良く低コストで作業できる。
(3)進捗管理:仕掛部品が今どの企業で何の工程をしているのか自社が即時分かる様にして進ちょく管理する。各企業の部品の出荷データや受入データを自社と各企業が共通で接続できるクラウドにあげておく。
3.リスクと対策
リスク:進ちょくをクラウドで管理され、決まった日時にモノを受け取りに取りに来られるという納期に対するプレッシャーに各企業はさらされる。更に各企業は他社には絶対負けないというプライドもある。その結果企業による品質データの改ざんのリスクがある。
対策: IoTで各企業の検査装置の生データが逐次自社に送られる様にする。
4.業務遂行に必要な要件
現地企業や運送会社の選定においてはQCDだけではなく、環境に配慮しているかも判断指標にする。これは地球環境の保全等、将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める事に相当する。