機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅱ-1 解答者05 専門:強度設計

機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅱ-1 解答者05 専門:強度設計

予想問題 Ⅱ-1-1 簡易答案

フラクトグラフィーは破壊形態毎に異なる特徴を示す。次の破壊形態から2つ選定し、それぞれ機械の破壊原因調査における判別法を述べよ。

 

延性破壊、脆性破壊、疲労、腐食疲労、応力腐食割れ、クリープ破壊

1.       延性破壊の判別法

 

①         目視確認

目視で伸び、くびれ、曲がりなどの塑性変形があるかどうかを確認。直径や板厚の減少の確認などが有効。

②マクロ観察

破面は一般に鈍灰色で、垂直破断部分は繊維状。せん断破壊部分は金属色で主応力と45度の斜めの破面。塑性変形が大きい場合はリューダーズライン。

③破面の突合せ

破断した破面を突き合わせると2つの破面が密着しない。

④ミクロ観察:ディンプル模様が見られる。

2.       脆性破壊の判別法

①         目視確認

破面近傍に塑性変形がない。破面は推定される主応力の方向と垂直で、おむね平坦。

②マクロ観察

破面近傍に塑性変形がない。破面は結晶状、粒状。破面は推定される主応力の方向と垂直で平坦。

③破面の突合せ:破壊した2つの破面を突き合わせると、おむね密着する。

④ミクロ観察: リバーパターンを持つ、へき開、擬へき開破面。

予想問題 Ⅱ-1-2 簡易答案

 

 アルミ合金材料について材料強度の観点で留意すべき点を2つ挙げ、その内容とともに対処方法を説明せよ。

1.        縦弾性係数が鉄に比べて小さい

 

アルミ合金は、種類が様々であり、鉄(SS400)を上回る強度を持つものもある。ただし縦弾性係数はどのアルミ合金であっても鉄の約1/3であることから同じ力が加われば、アルミ合金は鉄の3倍のたわみが生じる。このため対処法とし、アルミ合金は押出加工で複雑な断面形状を生産できることからフレーム断面形状の断面係数を大きくして剛性を高め、軽量にしながらたわみを防止する。

2.        熱膨張係数が鉄に対して大きい

アルミ合金は熱膨張率が鉄の2倍で高く、高温が掛かる長い鉄部品とアルミ部品をネジ止めする場合、熱膨張率の差で長さの差が生じネジが緩むことがある。対処法として接着剤を併用する。これにより弾性接着剤の特性から熱膨張係数の異なる材料に接合部に柔軟性を確保させ、使用時に強度とゆるみ防止を両立できる。

 

予想問題 Ⅱ-1-3 簡易答案

金属材料の機械試験の方法として代表的なものを2つ挙げ、それぞれの具体的な方法と機械的特性に及ぼす影響について述べよ。

1.        引張試験

 

①          試験方法

事前に試験片の寸法計測を行った後、ひずみゲージを貼り付け、試験片を試験機に取り付け伸び計を設置。試験機に引張速度等の試験条件を入力し、データ収録装置の設定後に測定を開始。最後に試験片が破断されるまで測定する。

②          機械的特性に及ぼす影響

応力とひずみとの関係を得ることで比例限度・弾性限度・下降伏点・降伏点・最大応力等が得られる。

2.        クリープ試験

①          試験方法

引張り試験片に一定荷重を与え長時間放置する。破壊に至るまでの時間を応力(荷重)を変えて測定しグラフにプロットする。この曲線から破壊に達する応力と時間の関係が求まる。

③          機械的特性に及ぼす影響

試験により時間-ひずみ線図や応力-破壊時間線図が得られる。クリープ特性である変形量の増加特性、除外力による変形の回復統制、破壊応力の低下特性が得られる。

予想問題 Ⅱ-1-4 簡易答案

 

 金属材料の非破壊検査の方法として従来から実施されてきた古典的な手法に対して、近年はより効率化あるいは欠陥の検出精度を向上させる手法が開発されている。その具体例を2つ挙げ、従来の非破壊検査手法と比較して優位点について述べよ。

1.        フェイズドアレイ

 

①          概要

探触子を構成する振動子を1mm程度の幅に細分化し、連続的に並べて個々の振動子に加えるパルスのタイミングを電子的に制御する。超音波ビームを任意の方向に偏向させたり、集束させたり、連続的に移動できる。全探傷データから欠陥画像を表示できる。

②          優位点

超音波ビームを任意の深さに集束でき、厚手材で高感度の探傷可能。瞬時に広い範囲を全面探傷できる。多数の素子からなる幅の大きい探触子を使用し溶接部探傷でのジグザグ走査が不要。

2.        TOFD

①          概要

送信探触子と受信探触子を向かい合わせて配置し、送信探触子から縦波を伝播させ内部のキズの上端および下端で発生した回折波を受信探触子で受信する方法。キズの深さと高さが正確に測定できる。

②          優位点

欠陥の高さ計測が高精度で可能、また探触子走査が単純で自動化が容易

機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅱ-2 解答者05 専門:強度設計

機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅱ-2 解答者05 専門:強度設計

予想問題 Ⅱ-2-1 簡易答案

 供用中の機械・構造物の健全性,余寿命を定量的に精度良く評価し,それを維持管理するため、下記の内容について記述せよ。

 

(1)損傷モードを設定の上、余寿命評価のために調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意点・工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務が困難に遭遇するとしたら何か。それを効率的、効果的に進めるために有力者を複数挙げ、支援を得る方策について述べよ。

1.           調査、検討すべき項目

 

調査、検討対象として損傷モードを疲労損傷とし、余寿命評価する。

①          調査対象部位の決定

②          :機械・構造物の過去損傷事例や損傷までの運転時間、ま

た使用環境、運転条件を把握する。

③          疲労試験の実施:予め損傷部の材料について、疲労試験を行い、疲労損傷量(疲

労寿命比)と非破壊検査データの関係を予め調査する。

④          非破壊試験:診断の対象となる部位について、疲労損傷の進行に伴う材料の組

織変化、物性変化を非破壊検査手法で検出し、寿命を評価する。

2.業務を進める手順

①疲労損傷プロセスの調査:機械・構造物の過去損傷事例や損傷までの運転時間、また使用環境、運転時間を把握する。また調達、製造を含めた材料や設計、加工、組立に起因する損傷の可能性を調査し、安全かつ合理的に運用されていることを確認する。

②疲労試験の実施:疲労損傷部位が確定している部材を試験片として活用し、使用応力範囲や部材に働く力の種類(曲げ、引張等)に合わせて疲労試験を行い、疲労損傷量とき裂寸法との関係を明らかにし、非破壊検査時に検査するデータとの相関関係を得る。

③非破検査の実施:微小き裂の検出に関して、磁粉探傷などの表面検査、マイクロスコープによる目視検査、内部の欠陥は超音波探傷法を活用する。より詳細な寸法を得るため、断面でのきずの位置関係を画像可視化できるTOFD法を活用する。

④余寿命評価:発生したき裂の特性を評価し、き裂先端の形状に着目し、き裂先端が開口、鈍化しているか等の判断をするため、レプリカ法により診断対象部位をレプリカ膜上に転写させ、顕微鏡により拡大観察することでき裂サイズを計測し、疲労試験で得た疲労損傷量とき裂寸法の関係から余寿命を明らかにする。

3.効率的、効果的に進めるための有力者と支援を得る方策

①          検査会社社長:磁粉探傷、超音波探傷等、様々な検査業務を1人で兼務することで多能工化し、人材育成するメリットを検査会社に促すことで生産工程の改善を進め効率化する。

②          研究部門長:機械構造物の寿命予測に関して、構造設計理論に基づく解釈に基づく評価方法は受け入れる代わりに実機で余寿命を検証確認する方法は受け入れるよう申し入れ、事前に食い違いを防止する。

③          資産管理部門長:TOFD法と表面近傍を探傷するパルス反射法を組み合わせ、板厚全域の探傷を可能にでき省人化による効率化を図ることを検査会社に申し入れる。装置利用で省人化、工程短縮が図れ、大幅に保守費を低減できるメリットと引き換えに装置無償貸与のため社内資産管理部門に合意を得る。

機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅲ 解答者05 専門:強度設計

機械部門 選択科目 材料強度・信頼性 予想問題Ⅲ 解答者05 専門:強度設計

予想問題 Ⅲ-1 簡易答案

機械システム、構造物が予測困難な負荷による影響によって金属疲労を起こし、想定外の事故を引き起こすことがある。あなたが機械システム、構造物の材料強度分野の責任者であるとして、想定外の事故を防止することをふまえ、以下の問いに答えよ。

 

(1)具体的な設備・構造物を1つ想定し、予測が困難な負荷による金属疲労破壊事例を複数挙げよ。

(2)複数挙げた事例の中から1つを選択し、解決策を複数挙げよ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。また対策における技術的な限界を説明せよ。

1. 多面的な観点から複数の課題

具体的な設備・構造物として遠心脱水機を挙げる。

①熱応力による熱疲労破壊:遠心脱水機は実運転時に高温かつ温度変動を持つ熱

処理汚泥がフィードパイプ(SUS304)を通してロータ内に投入される。パイプ内面は圧縮応力を生ずる一方、外表面は外気温にさらされているため運転時は熱応力が発生する。一方、停止時は熱処理汚泥の影響を受けないことから運転停止に伴い応力振幅を与える。さらに高温による塑性変形に起因して応力集中も重畳され疲労強度が低下し、破壊に至る。

②振動応力によるフレッティング疲労破壊:回転体を支持する軸締結においてシ

ャフトと勘合する部材の剛性差部材の剛性の違いに伴う弾性変形の差に基づく微小な相対すべりを生じることにより、接触部に大きな接線力を生じ、これがシャフトはめ合い部において早期のき裂発生とき裂進展の加速を生じることで疲労強度が顕著に低下し、予期せぬ破壊が生じる。

③スクリュー羽根の疲労破壊:遠心脱水機は高速回転するロータ内のスクリュー

羽根は汚泥の搬送負荷増減による応力変動を受けるが、スクリューシャフトと羽根間の溶接部は溶接熱による影響も受け、引張残留応力を受ける。この応力が平均応力として作用することで疲労強度を低下させ、予期せぬ破壊を生じる。

2.解決策

スクリュー羽根の疲労破壊を事例として挙げ、複数の解決策を示す。

①溶接管理による残留応力低減:スクリュー胴部と羽根の溶接時、溶接入熱管理

を行い、熱拘束を抑えることで残留応力を低減する。さらに溶接線の両側を加熱させることで生じる熱応力を利用する両側加熱法によって残留応力を低減する。

②ショットピーニングによる圧縮残留応力付加:溶接部にショットピーニングを

行い、圧縮残留応力を付加し疲労強度を向上する。

③X線応力測定による残留応力の計測:溶接入熱管理やショットピーニングによ

る残留応力低減効果を把握するためsin2φ法によるX線応力測定により残留応力を計測し、効果を確認する。

2.解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策、技術的限界

遠心脱水機は投入される汚泥の比重や質によりスクリュー羽根に発生する応力が変動する。このため残留応力低減により平均応力による影響は少なくなっても疲労限度以下の応力で疲労破壊する。このため羽根に発生する実働応力波形とレインフロー法による計数結果、また溶接構造物の応力集中部の局部応力による疲労強度データベースを基にして修正マイナー則から疲労寿命を予測し、材料強度の妥当性を確かめる。

予想問題 Ⅲ-1 完成答案

機械システム、構造物が予測困難な負荷による影響によって金属疲労を起こし、想定外の事故を引き起こすことがある。あなたが機械システム、構造物の材料強度分野の責任者であるとして、想定外の事故を防止することをふまえ、以下の問いに答えよ。

 

(1)具体的な設備・構造物を1つ想定し、予測が困難な負荷による金属疲労破壊事例を複数挙げよ。

(2)複数挙げた事例の中から1つを選択し、解決策を複数挙げよ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。また対策における技術的な限界を説明せよ。

(1)多面的な観点から抽出した課題

 

具体的な設備・構造物として遠心脱水機を挙げる。

①フィードパイプの熱疲労破壊

 遠心脱水機の運転時、高温汚泥がフィードパイプを通して高速回転するロータ内に投入される。この時、パイプ内面は高温汚泥、外面が外気温にさらされるため、パイプには熱応力が発生する。停止時は高温汚泥の影響を受けないためパイプに熱応力は発生しない。このため運転・停止の周期でパイプ内面に応力振幅が発生する。一方、パイプ内面は高速で流れる高温汚泥に含まれる砂分に起因するエロ-ジョンによって減肉され、応力集中が発生する。このためパイプに応力集中と熱応力が組み合わさり微視的亀裂が発生・進展し、予期せぬ熱疲労破壊によりパイプ折損事故が生じる。

②振動応力によるフレッティング疲労破壊

 遠心脱水機のロータを支持する軸締結部では、ロータとはめ合う部材との間で剛性差の相違による弾性変形差に基づく微小な相対すべりを生じる。このため軸締結部に大きな接線力が発生し、ロータに早期のき裂進展の加速を生じてフレッティング疲労破壊が生じる。

③スクリュー羽根の疲労破壊

 遠心脱水機のロータ内に設置されるスクリューは、胴部とらせん状に巻いた羽根で構成され遠心力によって固液分離された高圧汚泥を連続搬送する役割がある。スクリュー羽根は汚泥より反力を受けるが、汚泥濃度や質により負荷が増減するため応力振幅を受ける。一方、スクリューシャフトと羽根間の溶接部は溶接熱による影響も受け、引張残留応力を受ける。この応力が平均応力として作用することで疲労強度を低下させ、予期せぬ疲労破壊を生じる。

(2)事例と解決策

 スクリュー羽根の疲労破壊を挙げ解決策を示す。

①溶接管理による残留応力低減

 スクリュー羽根溶接部は隅肉溶接であり、溶接止端部や不溶着ルート部を起点とした疲労き裂進展が生じるため完全溶込み開先溶接とする。またスクリュー胴部と羽根の溶接時、溶接入熱管理を行い、熱拘束を抑えることで残留応力を低減する。さらに溶接線の両側を加熱させる両側加熱法により残留応力の発生を抑制し、平均応力を低減し、疲労強度低下を抑制する。

②ショットピーニングによる圧縮残留応力付加

 溶接部にショットピーニングを行い、圧縮残留応力を付加し疲労強度を向上する。またショットピーニングを板材に向かって行い、板のそり量とボール圧痕の密度から投射分布を管理する。これにより目標加工表面に対して圧縮残留応力を均一に溶接部に与えているかを管理することができる。

③X線応力測定による残留応力の計測

 残留応力低減効果を把握するため対象部に単一方向からX線を照射し、平面センサで環状の回折X線を全周検出するcosα法を採用する。これにより装置小型化、現場活用が容易となり、圧縮残留応力付加状況を施工現場で定量的に把握することが可能となる。

(3)リスクとそれへの対策、技術的限界

①リスク 

 遠心脱水機は投入される汚泥の比重や質によりスクリュー羽根に発生する応力が変動する。このため疲労限度が消失し、残留応力低減を低減しても疲労限度以下の応力で疲労破壊する恐れがある。

②リスクへの対策

 スクリュー羽根に発生する実働応力をレインフロー法による計数する。また溶接構造物の応力集中部の局部応力による疲労強度データベースを基にして修正マイナー則から疲労寿命を予測する。これにより長期運用をベースとした材料強度の妥当性を確かめる。

①技術的限界

 実働応力波形は統計的情報として疲労寿命を予測できるが、実際は汚泥の質や比重は変化していく恐れがあり、予測される寿命は確かではない。このため定期的に実働応力を計測するか、実働応力の計測をモニタリングしておくことで運用状況に応じて疲労寿命を予測できるようにしておく必要がある。

予想問題 Ⅲ-2 簡易答案

機械システムでは環境要因が複雑に力学的負荷条件と相まって大規模な構造破壊に発展し、大事故が起きる場合がある。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

 

(1)環境要因が複雑に相まって想定外の事故が起きる事象を具体的に設定してその概要を示すとともに、想定外の事故を防止するため、技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

1.事象の概要及び課題の抽出と分析

 

概要 鉄道車両の台車枠溶接部の隙間部に腐食ピットが発生して応力集中が発生して疲労破壊して剛性が低下し、振動が増幅することに伴い走行を担う車軸が折損することで車両が脱線し、横転して大破する。

①応力腐食割れへの配慮

鉄道構体は軽量化を目的としてアルミニウム合金が使用される。アルミニウム合金は亜鉛を含有するため応力腐食割れ感受性が強い。電車走行時に銅や鉄の摩耗粉や雨水により発生する腐食環境や鉄道走行時に受ける静的な引張応力や溶接構造物の溶接残留応力部は応力腐食割れの要因となる。アルミニウム合金の結晶粒の配置や応力発生抑制、またバタリング溶接等により欠陥に伴う応力集中、残留応力発生を抑制する必要がある。

②電食に伴う腐食疲労への配慮

鉄道レールは湿潤もしくは塩分の飛散とレールに流れる電流が漏れやすい場所といった環境が相まって腐食疲労が発生する。このため腐食量を変数とした疲労損傷許容設計により定期交換を前提とした保守管理が必要。

③水素脆性破壊への配慮

鉄道台車枠の締結部で使用される、静的荷重を受けるボルトが電食や雨水による影響による水素侵入で材質脆化の影響を受け時間の経過と共に前兆なく突然破断する。このため水素が入らないようベーキング処理を行い、塗装や油塗布等の防錆処理を行う必要がある。

2.課題(電食を伴う腐食疲労への配慮)の解決策

①レールの疲労強度の向上

レール形状の応力集中発生部の形状を滑らかにし、切り欠き係数を小さくすることで疲労強度を高め、電食による初期き裂発生を抑制する。

②レール溶接部への対策

レール溶接部の凹凸部の存在により応力が生じ、レール底部に疲労き裂が発生することからレール削正を実施し、応力集中箇所をなくす。

③防食への対策

電流漏洩による電気化学的腐食で鉄分が溶出することによる破損を防ぐため、レール底部や締結装置フランジ部への防食被覆加工を施す。

3.解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策 

1)解決策に共通して新たに生じうるリスク:

レールの疲労強度向上に加え、レールの表面を削ることにより、列車の通過に伴って生じたレールの表面のわずかな状態変化を整えて傷の発生を予防している。しかしレールと車輪の接触影響層は深く、通常実施されるレール削正では微視的なき裂を除去することは困難であり、レール削正によってそのき裂の進展を助長させることがある。また防食被覆加工を行うことでキズが発見できずレール折損させる恐れがある。このため鉄道が脱線し、横転して大破するリスクがある。

リスクへの対策:レール削正は切削量が大きく、ミリング式のレール削正車を導入し、キズを残さないようにする。また削正面の仕上げを目的とした追加パス(削正車の通過数)を組み合わせて削正することで表面粗さを改善することで疲労き裂進展を防止する。さらに走行しながらレールの欠陥を自動検出して記録する超音波レール探傷車システムを導入し、超音波によるレールの内部欠陥だけでなく、画像処理技術を応用した断面摩耗計測やレーザ光を利用した波状摩耗計測を行う。これにより電食を起点としたレール折損に伴う電車脱線事故を防止する。

予想問題 Ⅲ-3 簡易答案

近年はIOTの進展に伴い、製品の付加価値に加えてデータを活用した価値形成が求められているが、強度設計分野において、製造プロセスのデータ収集・活用によるカイゼン活動(暗黙知の形式知化、不可視知の可視知化)には取り組んでいるもののカイゼン以上の付加価値提供には結びつけられていない。

 

(1)材料強度的な観点から付加価値形成に関わるデータを示し、データ活用にあたって技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

1.材料強度的な観点から付加価値形成に関わるデータと活用にあたっての課題

 

(ア)トレーサビリティシステム導入 による生産効率化、品質向上

電子タグやAIによる画像記録等により製品やロットごとにシリアル番号を付与し、それぞれの工程で作業内容や検査結果、寸法情報などのデータと紐づけ、後工程の組み立て作業に活用する。これにより素材調達、製造工程において強度不足等、信頼性を損なうトラブルを未然防止可能なトレーサビリティシステムを確立し、生産の効率化、品質の向上を図ることが課題。

(イ)3Dモデル化によるCAE・工法組み込みによる開発合理性向上

3Dモデルを用いた形状、解析、制御、機能、統計データにより力学解析や成形、鋳造不良、形状安定性等、強度や信頼性に関わる開発業務をフロントローディングすることで開発合理性を向上させることが課題。

(ウ)製品設備の状態監視保全によるライフサイクルコスト低減

製品設備に変位センサ、歪ゲージを取り付け、運用状況時における力学的挙動に関するデータをモニタリングする。収集・監視しデータと実際に発生した設備異常とを関連付け、分析し、設備の材料強度低下に起因する故障の兆候・条件を明らかにすることで故障発生時期を予測する。これにより信頼性を確保しながら予防保全を行い、製品ライフサイクルコストの低減につなげていくことが課題。

2.課題の解決策

最も重要な課題は開発合理性向上

①3Dデータ活用いよる製品可視化

3Dモデルの導入により製品を可視化し、さらにCAD・CAM・CAEの連携させることにより強度解析、形状安定性、加工性等を同時に検討できるようにする。

②CAM・CAEによる現物・現実との比較検証による信頼性確保

3D形状認識技術を活用して外観形状をスキャンし、3D設計モデルと比較することで設計データと関連付けて良品比較を行う。さらに納入済み製品や試作品に製品の使用状況や使用環境のデータを収集・把握し、CAM、CAEにより予測した力学的挙動と比較する。これにより材料データ・設計仕様との因果関係を明らかにすし、強度信頼性を確保する。

③品質工学の活用

納入済み製品や試作機から集めた膨大なデータをばらつきなどの影響度やパラメータの影響度をSN比、感度を解析し、分析結果に基づいて、設計仕様・生産方法を修正・改善して最適化することで、製品の強度信頼性を向上させる。

3.解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策

1)解決策に共通して新たに生じうるリスク

例として原子炉でのリスクを挙げる。炉内を流れる高温・高圧の次冷却水と安全な2次冷却水との間で熱交換を行い、この2次冷却水から蒸気発生器で発電用の蒸気を作る。高温の水と水蒸気の気液混相流が蒸気細管内を高速で流れた時に、現場条件に合わせた気液混合率でCAE解析していた場合では問題はない。しかし予測できない実寸と解析寸法のずれや温度条件のわずかな相違で気液混合率が変動し、共振周波数が一致して予想外の共振振動が細管に発生する。共振振動に伴って保持部分で亀裂が入り放射能を含んだ蒸気が漏出する事故リスクがある。

2)リスクへの対策

製造工程や運用におけるリスクマネジメントとFMEA、DRBFM)、FTAを駆使した品質未然防止対策により冗長性設計を行いリスクを回避する。

予想問題 Ⅲ-4 簡易答案

CO2による地球温暖化問題に端を発して、近年、 自動車の環境対応、燃費向上のために、軽量化の動きが高まっている。従来単一の材料が用いられてきた自動車用材料について、部品全体ないしその一部分を複数の素材へ転換、併用することで軽量化や機能向上を実現する材料の適材適所適用するマルチマテリアル化のため、様々な異種材料接合技術が開発されている。

 

(1)異種材料接合技術を適用するために必要となる技術について、材料力学的な視点から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた技術のうち、具体的な構造物や機械を1つ想定し、必要とされる技術を2つ選んでその技術的課題について述べよ。

(3)(1)で述べた異種材料接合技術を適用することによって期待される効果、及び想定されるリスクについて述べよ。

1. 異種材料接合技術を適用するために必要となる技術

 

(ア)熱圧着接合技術

接合する金属、プラスチックに化学的に接合する物質を表面に塗布し、プラスチック側を押し付け、熱と圧力をかけて接合する。界面で強固に化学的結合するため気密性や防水性が高い技術である。

(イ)レーザーリベット接合技術

貫通穴を設けた軽量化材料を同じ金属のリベットと金属板で挟み込みリベットと金属板に隙間を設けた上でレーザー溶接することで接合力を得る技術であり、リベットを使って材料を挟み込んで固定する方法のため接合対象となる材料は鋼とAl合金、鋼とCFRP、鋼とプラスチック等、様々な異種材料を対象にできる。

(ウ)摩擦攪拌点接合技術(CFRPとAl合金接合)

先端がネジ加工されたプローブを有した接合ツールを回転させ、圧入させることで上下板の材料を攪拌し、摩擦熱を発生させ接合する技術である。PPベースのCFRPとAl合金を溶着して接合できる。

2.課題の解決策

自動車ボディで軽量化に必要なCFRPとAl合金接合に摩擦攪拌点接合技術、また自動車の回路基板を搭載する電子制御ユニットなどのきょう体で熱圧着接合技術が必要とされる。

①摩擦攪拌点接合技術:接合するCFRPが導電性を持つため、電食を防

ぐため接合部にシールを施す必要がある。

②熱圧着接合技術:熱圧着工程で接合強度にバラツキが生じるため非破壊で接合

強度を検査できる技術が必要。

3.異種材料接合技術を適用することにより期待される効果とリスク

1)期待される効果

・部品材料を軽量な材料に置き換え製品重量の軽減を図ることができる。これにより二酸化炭素排出規制が厳しい自動車エンジンの負荷を下げる効果がある。

・電子制御ユニットのきょう体に利用することで故障要因となる液体や気体の侵入を防ぎ、防水性、気密性を確保させることで品質を安定化させる効果がある。

2)リスク

異種材料の接合強度が高まれば、廃棄時やリサイクル時に分離が困難となり、廃棄時に異種材を分離せずに廃棄され環境破壊につながるリスクがある。さらに分離できた場合でも膨大なコストがかかり、経済的損失を被る恐れがある。

リスクへの対策として強度が強い解体性接着剤、また強度が強くても解体できるシート剤の開発、複数の因子がないと接着が外れない接着剤の開発等、接合に加え解体容易性を持つ接合技術の開発を進める。

予想問題 Ⅲ-4 完成答案

(1)異種材料接合を適用のために必要となる技術

 

①熱圧着接合技術

 接合する合金、プラスチックに化学的に接合する物質を表面に塗布し、プラスチック側を押し付け、熱と圧力をかけて接合する。界面で強固に化学的結合するため気密性や防水性が高い技術である。金属の表面にサンドブラストで凹凸を付けるといった物理的な処理が不要で通常使用される合金をそのまま利用できる利点がある。

②レーザーリベット接合技術

 貫通穴を設けた軽量化材料を同じ金属のリベットと金属板で挟み込みリベットと金属板に隙間を設けた上でレーザー溶接することで接合力を得る技術である。機械的締結に加え溶融接合を組み合わせることで強固な接合強度が得られる。リベットを使って材料を挟み込んで固定する方法のため接合対象となる材料は鋼とAl合金、鋼とCFRP、鋼とプラスチック等、様々な異種材料を対象にできる。

③摩擦攪拌点接合技術

 先端がネジ加工されたプローブを有した接合ツールを回転させ、圧入させることで上下板の材料を攪拌し、摩擦熱を発生させ接合する技術である。摩擦攪拌点接合の接合条件はツール回転速度、接合時間、ツールの挿入深さがあるが、いずれも通常の工作機械の有する制御技術により施工が可能である。このため高い施工安定性や継手品質の再現性が期待できる。

(2)必要とされる技術と課題

 自動車ではボディの軽量化と合わせて量産時の施工安定性、信頼性を目的とし、CFRPとAl合金接合に摩擦攪拌点接合技術が必要とされる。一方、自動車の回路基板を搭載する電子制御ユニットなどのきょう体では、気密性や防水性が要求されるため熱圧着接合技術が必要とされる。

①摩擦攪拌点接合技術

 摩擦攪拌点接合技術は接合する材料の組み合わせによって最も高い接合強度が得られるツール形状やその回転速度、接合時間、ツール挿入深さが異なる。このため材料の組み合わせに応じてそれら条件に対し、使用時に想定される外力条件に合わせて引張試験等の機械的特性により評価を行い決定する必要がある。また接合するCFRPが導電性を持つため、電食を防ぐため接合部にシールを施す必要がある。

②熱圧着接合技術

 熱圧着接合技術を使った構造部材では信頼性を確保するために、接着強度に悪影響を及ぼす欠陥を確実に検出できる非破壊検査方法が求められている。接着面の欠陥は表面からは見えないため、比較的簡便に内部欠陥を検出できるレーザー超音波可視化探傷検査が有望である。このためパルスレーザーを任意形状の被検体表面で非接触高速走査させ、励起された超音波を超音波探触子で検出、伝搬する様子を「見える化」するレーザー超音波可視化技術の確立が課題である。

(3)期待される効果とリスク

①期待される効果

 摩擦攪拌点接合技術を適用することにより自動車のボディで使用される部品材料を軽量な材料に置き換え製品重量の軽減を図ることができる。これにより二酸化炭素排出規制が厳しい自動車エンジンの負荷を下げる効果がある。一方、熱圧着接合技術を電子制御ユニットのきょう体に適用することで軽量化を進めながら故障要因となる液体や気体の侵入を防ぎ、防水・気密性を確保させることで品質を安定化させる効果がある。

②リスク

 異種材料の接合強度が高まれば、廃棄時やリサイクル時に分離が困難となり、廃棄時に異種材を分離せずに廃棄され環境破壊につながるリスクがある。さらに分離できた場合でも膨大なコストがかかり、経済的損失を被る恐れがある。

③リスクへの対策

 リスクへの対策として強度が強い解体性接着剤、また強度が強くても解体できるシート剤の開発、複数の因子がないと接着が外れない接着剤の開発等、接合に加え解体容易性を持つ接合技術の開発を進める。

予想問題 Ⅲ-5 簡易答案

開発設計プロセスの中には品質管理手法が織り込まれ、それら手法を使った証拠を示さなければ次のプロセスに進めない仕組みを構築することが品質問題の未然防止のためには重要である。

 

また過去の品質問題の参照や蓄積されたデータベースの有効活用が必要である。

(1)具体的な量産工業製品を挙げ、開発設計プロセスにおいて設計変更を行う上で活用される品質管理手法を複数示し、特徴を説明せよ。

(2)上記で示した品質管理手法のうち1つを選択し、材料強度の観点から検討すべき項目と解決策を示せ。

(3)解決策に対して共通に生じうるリスクとそれへの対策を考え、最終的な対応策について述べよ。

1.設計変更を行う上で活用される品質管理手法

量産工業製品として自動車を挙げる。

(ア)4M変更管理:設計変更に際して人(Man)の原因、機械(Machine)の原

因、材料(Material)の原因、方法(Method)の4つの視点で考え、問題の要因等を整理することで、偏りや抜けのない洗い出しが可能となる。

(イ)DRBFM(故障モードに基づく設計審査):設計や変更に伴い、どんな故

障モードが想定されて、心配なのか、その問題点に対する原因・要因はどんなところにあり、設計でどのように対策をするのかを明らかにし、改善を図る。

(ウ)統計的品質管理:工程や検査ロットからサンプルを抜き取って、それを測

定し、サンプルのデータに基づいて、工程や検査ロットの実態を把握するため、QC七つ道具、相関分析・回帰分析、実験計画法、タグチメソッドなどを使い、統計的方法や抜取検査、サンプリングなどを使い品質管理を行う。

2.材料強度の観点から検討すべき項目と解決策

品質管理方法として4M管理を挙げる。

①MANの視点:設計変更に伴い加工、仕上げ業務、溶接業務等、技能を有する

製造プロセスにおいては人員が変わることで製造品質が影響を受ける可能性がある。製造員の能力を力量評価表として定め、製造に必要な力量評価を紐づけすることで人員が変更することに伴って生じる製造品質低下のリスクを回避する。

②MACHINEの視点:設計変更に伴い、工作機械、溶接機、治具・工具等の生産設備が変更になることで、振動、揺れ、挙動、におい、スパークなど、異常の兆候が生じる恐れがある。設備を安定的に稼働させるためにも、適切なメンテナンス、変化点の管理を行う。

②MATERIALの視点:設計変更に伴う材料の物性変更、素材購入先の変更

により材料強度の低下やバラツキが生じる恐れがある。このため素材変更の際、仕様書、図面、評価方法、またサプライヤーとの契約書等、材料強度に影響を与える因子はすべて数値化し、規制することで変更によるリスクを回避する。

③METHODの視点:

設計変更に伴い製造方法、製造条件等が変わることで材料強度に影響する品質への影響が考えられる。加工・組立QC工程表を策定し、設計品質を実現するための製造プロセスを予め標準化し、製造工程を5W1hで管理し、変化点を可視化する。

3.解決策に対して共通に生じうるリスクと対策

リスク:予防対策の仕組みを万全に講じても、生産現場では、変化点がきっかけ

となって不具合が生じるため、様々な変化点が生じても不具合が生じないように管理する必要がある。

対策:異常を定義し、何を異常と定義するか点検項目、手順、判定基準を明確にする。その上であらかじめ予測ができる変化点発生時の管理を明確し、さらに予測できない突発的な変化点発生時の管理を明確にし、速やかに原因究明と処置を行い、再発防止を図る。また管理状態の見える化し、異常状態や管理すべき変化点の項目をリストアップし、4M管理ボード、アラーム表示等を採用する。

予想問題 Ⅲ-6 簡易答案

インフラ設備・構造物は近年、急速な老朽化が進んでいるが、我が国は財源不足で維持管理に必要な手当てができない、老朽化した構造物の点検が十分にできていないといった問題が顕在化しており、予期せぬ重大事故が起こる恐れがある。あなたがこのような維持管理の危機を打開するため材料強度分野の責任者であるとして、以下の問いに答えよ。

 

(1)具体的な設備・構造物を1つ想定し、維持管理の危機を打開するための検討課題を複数挙げよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。因の特定と再発防止策について、技術的な限界を説明せよ。

1.維持管理の危機を打開するための検討課題

 

具体的な設備として下水処理場で活用される遠心脱水機を想定する。遠心脱水機は汚泥処理工程で使用される設備であり、停止すると下水処理運用に深刻な影響を及ぼす。遠心脱水機は高速で回転するロータ内に汚泥を投入し、遠心力で固液分離する装置であるが、起動停止の繰り返しや気液交番部における硫化水素ガスに伴う腐食を起点とした疲労破壊、部品摩耗、減肉による破損が懸念される。

(ア)状態監視、診断技術の確立

 遠心脱水機の運転停止時、ロータ内部に汚泥が残存し、腐食雰囲気を形成するが、起動停止の繰り返しや運転時の振動によって腐食発生によるき裂を起点とした疲労破壊が発生する。また汚泥をロータ内に投入するフィード部はエロ-ジョンに伴う減肉より折損する。さらに脱水機制御電装部は腐食雰囲気から運転制御を担うインバータ内プリント基板が腐食で劣化して故障する。これらはいずれも故障によって脱水機の運用に甚大な影響を及ぼすことから、これらの状態監視、診断技術の確立が課題である。

(イ)点検手法の確立

遠心脱水機は高速回転するロータ内スクリューで砂分を多量に含む汚泥に遠心力を与え固液分離ながらせん断、圧搾するためタングステンカーバイドのスクリュー刃先超硬チップが摩耗、劣化して強度が不足して脱落し、回転体を構成するスクリューやボウル等に甚大な損傷を与える恐れがある。しかし回転体内部は容易に分解できず、スクリュー刃先の摩耗状態を点検する技術の確立が課題である。

(ウ)長寿命化技術の確立

遠心脱水機は高速回転するロータ内スクリューを支持する軸受部のシール性能は、遠心力を受けながら汚泥による内圧を受ける環境であり、シール性が悪化することにより軸受が破損し、これが脱水機の定期工場整備のボトルネックとなっている。このためこのシール性能を長寿命化する技術の向上が課題である。

2.課題に対する解決策

重要な課題は状態監視、診断技術の確立

①電装部の腐食センサによる診断:遠心脱水機の運転制御を担う制御装置内に

設置するインバータ基板部に小型の金属腐食センサを設置し、状態監視することで段階的な腐食進行度を検知し予期せぬ故障の未然防止を図る。

②AEセンサによるロータ疲労診断:AEセンサを活用し、運転停止時にロータ

内部を広範囲にわたり検査し、き裂進展量を状態監視し、計測期間における疲労損傷度から累積疲労損傷度を算出することで各疲労余寿命の評価を行い、ロータ破損発生リスクを予知する。

③パルス渦流探傷によるフィードパイプ減肉診断:汚泥フィードパイプは腐食性

流体によるエロ-ジョンによる減肉により折損することが懸念されることから、電磁誘導による渦電流を利用して非接触で金属板厚と減肉速度を連続計測し、強度不足により折損する時期を正確に診断する。

3.解決策に対して共通に生じうるリスクと対策

リスク:診断箇所は過去からの経験に基づき損傷部を想定して決定しているが、想定していない場所での予期せぬ腐食、疲労、減肉等による損傷リスクがある。

対策:定期的な内部点検を併用することで診断箇所の妥当性を評価する。

予想問題 Ⅲ-7 簡易答案

地球温暖化の防止は人類共通の課題であり、地球温暖化の原因となっている炭素の排出を防ぐために、化石燃料からの脱却を目指す低炭素化が重要となっている。低炭素化を進める方法として水素を身近なエネルギーとして活用する「水素社会」の実現に向けた様々な取り組みが進められている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

 

 (1)水素社会実現に向けて必要となる技術について、材料強度分野の視点から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた事項のうち、重要と考えるものを1つ選び、それを材料や強度の観点から解決するための具体的な技術的提案を述べよ。

(3)(2)の提案の想定される効果及び懸念されるリスクについて述べよ。

1.水素社会実現に向けて必要となる技術について

 

①水素脆性を考慮した材料開発: 燃料電池自動車と水素ステーションの普及拡大には脆化しにくく低コストの新しい構造材料の開発が必要である。

②水素環境を伴う部材の強度設計手法の確立:高圧水素ガス環境下で使用される部材や極低温の液体水素輸送・貯留用タンクの安全性や信頼性を保証する強度設計が必要。

③水素雰囲気でのトライボロジー技術の確立:燃料電池自動車に水素ガスを供給する水素インフラ設備の機械要素部品は水素ガス中で摺動を伴い使用されるため摩耗、焼付き等の損傷を防止する技術の確立が必要。

2.水素環境を伴う部材の強度設計手法確立するための提案

①高圧水素ガス環境下での力学特性評価:高圧水素ガス環境中で様々な材料について疲労試験を行い、水素ガスによるき裂進展への影響を明らかにし、S-N曲線や水素誘起き裂進展下限界値を明らかにする。また疲労限度が消失する場合は損傷許容設計を導入する。

②極低温下での力学特性評価:極低温水素の下で使用される材料に関して、シャルピー衝撃試験を行い、延性―脆性遷移曲線を得ることで材料強度の温度依存性を把握することで衝撃を受ける部材の設計に活用可能とする。

③接合・接手部の力学的評価:機械式接手や溶接接手は水素環境においても水素漏れリスクがなく、極低温環境において機械式接手種類や溶接施工方法の違いが力学的特性に及ぼす影響について材料特性評価を行い、接手部の信頼性を確保する。

3.解決策に対して共通に生じうるリスクと対策

効果:解決策により高圧水素・極低温環境において様々な使用条件・材料で信頼性なる強度設計が可能となる。

リスク:水素ガスの充てん、放出による繰り返し荷重を受ける水素ガスタンクの疲労試験で実機と同一の繰り返し周波数、ガス圧力を再現することは困難。このため疲労き裂伝播速度にガス圧の変動に伴う応力振幅に加え、周波数依存性があれば実機は試験結果よりき裂進展速度が高まり、疲労破壊に伴いガスタンク爆発事故が発生するリスクがある。

対策:水素が漏れる可能性がある該当箇所に対しては日常点検、月次点検で水素ガスが接触すると色が変化する水素検知テープ等を活用し、目視で漏洩を検知することで疲労破壊による爆発事故を回避する。

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