2018年2月4日 衛生部門、建築環境科目の方の電話による指導

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 この日のコーチングによる指導時間は10時00分から、1時間00分間に行なわれ,その受講者様は衛生部門、建築環境科目を目指す方で、場所は東京から電話を用いて相談されました。衛生工学部門建築環境施設のO様は平成29年V問題で悩まれていました。その問題は次のような内容です。



 建築関連5団体は、今日の地球環境問題と建築との係わりの認識に基づき、「地球環境・建築憲章」を制定し、持続可能な循環型社会の実現にむかって、連携して取り組むことを宣言している。先ず、その骨子となる5つの方針とその概要を述べよ。次に、各自の専門領域において、その方針を実現するための技術を3つ提案し、それらの概要と実現に向けての方法と課題を具体的に延べよ。



 そして本講座の3段階答案作成法を用いて一応の完成答案を作成した訳ですが、しかし最後の課題の設定で十分な提案できかねていました。というのはこの問題ではテーマに適合する技術を3つ提案し、その課題を任意に展開する内容だったのですが、しかし意味のある巧みな展開となっていませんでした。

 O様は提案技術として「雨水・排水の再利用」を挙げて概要と課題を次のように述べられていました。



(概要)
 雨水や排水といった2系統の水源から得る、多元給水システムを採用し、雑用水として水資源の循環利用を図る。
(実現に向けての方法)
@屋上などから雨水集水し、スクリーンで固形物を除去し、更に沈砂槽・沈殿槽で微細物質を除去してからろ過及び消毒装置を経由して貯留後、ポンプ圧送する。
A排水は、手洗い・洗面などの低汚濁雑排水を集水し、生物膜ろ過処理・活性炭吸着・塩素滅菌処理を行い、再生利用水槽に貯留した後、雑用水として供給する。
(課題)
@各処理槽のコンクリート基礎工事等を削減させる為に、砕石やプラスチック材を利用した地下空隙貯留とした貯留と浸透機能を併せ持つ構造設計が課題となる
A膜処理性能を維持する為、乱流促進材の技術を開発させ、膜面での水の流束や乱れを制御する事により汚濁物質が付着しにくい流動条件とする事が課題となる。



 しかし、この1の課題では衛生工学の本質的な技術が出ていないし、 2の課題では膜処理を取り上げたのは良かったですが、しかしディテールの課題にすぎない汎用性の小さいものでした。これではエンジニアのコンピテンシーを大きく訴える事は出来ません。

 課題を提起するという能力は技術士のコンピテンシーの比較的高い能力と位置付けられており、今後技術士問題が難易度を増すにつれて出題される可能性が高いと予想されたので、課題について練習することにしました。
 
 O様が、その後最初に提案された課題は次のような内容でした。


@雨水貯留槽内などにおける藻類の増殖原因となる窒素やリンの除去処理を高める為、栄養塩類除去技術を開発させ、藻類除去による維持管理の削減を図る事が課題となる。

A再生水利用とするトイレ器具水栓類に付着するスライムを抑制させる為に、供給先の貯留槽や送水過程での薬液注入を制御する事により、残留塩素の消費を抑制させる抗菌保持が課題となる。

B再生水の経済性を高める為、再生水として要求される水質に対し、所要の機能を満たす各処理施設のプロセスを複合化した構造とする事により、建設、維持管理の両面で経費を削減させる事が課題となる。

C再生水処理過程の保守管理を容易化する為、ばっ気槽の次工程に膜分離処理方式を取り入れ、沈殿槽過程を省略させる事により、管理項目を少なくし、設備状況を簡易的な指標で把握できるようにする事が課題となる。

D再生水の需要拡大を図る為には、耐薬品性と物理的強度を持つセラミック膜と浮上ろ材による上高流ろ過とする高速繊維ろ過を組み合わせた装置とする事により、再生水の水質向上と安定的に製造できるシステム構成とする事が課題である。

E再生水の利用促進を高める為には、渇水時などにおける利用転換の際の水質を担保するオゾン処理や膜処理技術といった処理方法を組み合わせる事により、全ての利用用途に適用した水質基準の再生水を造水させる事が課題である。


これらは色々な意味で問題を抱えていました。

@雨水貯留槽内などにおける藻類の増殖原因となる窒素やリンの除去処理を高める為、栄養塩類除去技術を開発させ、藻類除去による維持管理の削減を図る事が課題となる。
■課題の本質は末尾の「藻類除去による維持管理の削減を図る事が課題となる。」にあり、それ以前のフレーズは修飾語にすぎません。主題の文に比べて修飾子が長いと冗長感につながります
また「栄養塩類除去技術を開発させ、」とありますが、この栄養塩類除去技術とは何か具体性にかけています。

A再生水利用とするトイレ器具水栓類に付着するスライムを抑制させる為に、供給先の貯留槽や送水過程での薬液注入を制御する事により、残留塩素の消費を抑制させる抗菌保持が課題となる。
■この課題は問題ないみたいです。

B再生水の経済性を高める為、再生水として要求される水質に対し、所要の機能を満たす各処理施設のプロセスを複合化した構造とする事により、建設、維持管理の両面で経費を削減させる事が課題となる。
■「所要の機能を満たす各処理施設」では何のことかわかりません。また方法論についても「プロセスを複合化した構造」ってとありますが、そのような復号化によってなぜ経費削減できるのか肝心の技術的メカニズムがイメージできません技術課題を求めるということはその部門科目の技術をどのように応用するかということを確かめるためのものであり、その理由から応用技術が明確にイメージできるものでなければなりません

C再生水処理過程の保守管理を容易化する為、ばっ気槽の次工程に膜分離処理方式を取り入れ、沈殿槽過程を省略させる事により、管理項目を少なくし、設備状況を簡易的な指標で把握できるようにする事が課題となる。
■膜分離が簡便な方法であることが想像できますが、しかし膜分離によってなぜ「沈殿槽過程を省略」できるのか意味がわかりません。沈殿過程がなくなれば管理項目が少なくなるでしょうけれども、「簡易的な指標で把握できる」 かどうかは疑問です。

D再生水の需要拡大を図る為には、耐薬品性と物理的強度を持つセラミック膜と浮上ろ材による上高流ろ過とする高速繊維ろ過を組み合わせた装置とする事により、再生水の水質向上と安定的に製造できるシステム構成とする事が課題である。
■「再生水の水質向上と安定製造」は納得できますが、「耐薬品性と物理的強度を持つセラミック膜と浮上ろ材による上高流ろ過とする高速繊維ろ過を組み合わせた装置」では、まるで商品紹介のようであまりにもスペシャルな固有の手段すぎます。課題としてまとめるためには、技術課題にふさわしい汎用性が必要です。

E再生水の利用促進を高める為には、渇水時などにおける利用転換の際の水質を担保するオゾン処理や膜処理技術といった処理方法を組み合わせる事により、全ての利用用途に適用した水質基準の再生水を造水させる事が課題である。
■まず「渇水時の利用転換」とか「全ての利用用途に適用した水質基準」などねらいや言葉の意味が不明です。少なくとも課題としての意味やねらいがわかるように説明しなければなりません。

 O様の課題についての練習は、こうしたダメ出しを経て短期間のうちに技術士にふさわしい完成された課題となりました。課題をどう表現するかという事は、すなわちエンジニアがこれから自らどのように技術研鑽すべきかという選択を表しており、エンジニアの経験や哲学が直接的に反映されるものです。課題をどう考えるかは、暗記の勉強で学ぶ事はできず、上司から部下の技術継承を行っていくしかありません。本講座では個別コーチングの過程でそうした技術継承を行えるように指導しております。     

 

  コーチングがいかに役立つかご理解いただけましたか。本研究所では受講生様の進度に合わせて指導しています。論文の理解度が欠けていると判断ときや、業績についても新しい視点が必要と判断したときは、随時電話、スカイプにてご相談の時間を持つように講師の側からお知らせしております。皆さんの技術士合格への疑問を短時間で解決するよう努めています。