2018年9月30日 建設部門、施工管理科目の方のスカイプによるコーチング指導

電話、スカイプによる指導内容ページトップへ >

 この日のコーチングによる指導時間は14時から、1時間30分間行なわれ,その受講者様は建設部門、施工管理科目を目指す方で、居住地、兵庫県からスカイプを用いて相談されました。業務内容の詳細について現時点での評価として何を書いたら良いかわからないということでご相談をいただきました。

 一般的に業績論文のまとめには、成果や今後の展望を書いたりしますが、こうした内容が専門的知見を表すことから技術士にふさわしい資質能力を表現できると考えられています。しかし、専門的知見が独創性や技術的な工夫に富んだものでなければ逆効果となってしまいます。そこで本研究所ではコンピテンシーの観点から、各自の業績の中にどんな知見があったかを掘り下げる分析をやっております。それが技術的体験チェックシートの項目6、「現時点での評価」なのです。

 当初いただいた技術的体験チェックシートの項目6の内容は、下記のようなテンプレートに沿って受講者様が作成した文書でして、残念ながらこれを読んでも冗長だし、見識としての意味が不明で、このままでは論文には使えないと考えました。実はこの「現時点の評価」はとても難解で初回で正解できる方はほとんどいないのです。 本研究所では個別コーチングによって内容を分析しながら絞り込んで作成していきます。
 現時点での評価は@〜Cまで4項目ありました。それぞれコメントを申し上げます。


@舗装点検車により時速約60qで走行しながら非接触で赤外線計測し、全長14.4`を昼間2日で損傷調査を行おうとしたが、失敗したことは、計測時は昼間の計測であることから交通流への影響から時速60kmの走行で計測したことであった。この原因は、走行しながら走行位置をGPSで取得し、赤外線サーモグラフィカメラによる撮影のため、低速(時速30q程度)の方が誤差が少なく、より正確なデータが取得できると予測されるためである。この事態に至ったのは、昼間の低速(時速30q程度)走行により交通流への影響があった。また、他の路線の調査で時速70kmの走行でも計測が可能であったため、時速60kmの走行による計測するという判断を誤っていたことが原因である。これにより得られた知見は、計測時が交通量の多い昼間であるから時速60km〜70kmの高速で走行するのではなく、より精度の高いデータを取得するため、交通量の少ない時期を選定し、交通流への影響が少ない範囲で低速(時速30km〜40km)で計測するということである。


■講師コメント
 60キロで計測したことがなぜ失敗だったのか。 60キロより30キロの方が誤差が少ない根拠は何か明らかではありません。こうした計測は高速である方が望ましいですから、少しでもスピードアップが開かれることを目指すべきです。ここではまず60キロ計測での問題点を分析し、技術的に改善し、ゆくゆくは100`を目指すべきだと考えます。


 

 

A舗装点検車により時速約60qで走行しながら非接触で赤外線計測し、全長14.4`を昼間2日で損傷調査を行おうとしたが、失敗したことは、赤外線計測装置は当初、マイクロボロメータ型赤外線サーモグラフィカメラを使用していたが、インジウムアンチモン型赤外線サーモグラフィカメラが適していたことが判明し、採用することとしたことであった。この原因は、マイクロボロメータ型赤外線サーモグラフィカメラは性能的に問題があるため、高速走行計測に不適であるため、インジウムアンチモン型赤外線サーモグラフィカメラが適していたことが判明したためである。この事態に至ったのは、マイクロボロメータ型赤外線サーモグラフィカメラが安価であるため、採用するという判断を誤っていたことが原因である。これにより得られた知見は、高速走行計測ではインジウムアンチモン型赤外線サーモグラフィカメラを採用するべきであるということである。


■講師コメント
 赤外線サーモカメラの形式の違いによる分解の違いはあって当然です。この例ではマイクロボロメータ型赤外線サーモグラフィカメラより、インジウムアンチモン型赤外線サーモグラフィカメラの方が分解能が高いということですが、一方カメラの価格は後者の方が10倍くらい高いという問題があります。したがって、コストが許されるなら後者が良いに決まっています。ということでこのカメラの違いによる測定精度の改善は業務の改善にあまり寄与しませんし、第一、建設部門施工計画としての技術応用がほとんどありません。このため論文に取り上げる内容としては不向きであると考えました。


B赤外線計測法の検出精度を高めるため、RC高欄部にて精度因子を検証し、日射と外気温が支配因子と判明しその適格条件に従って計測したが、失敗したことは、赤外線計測ではひびわれが舗装表面に発生している場合は、表層側損傷なのか基層側損傷かを判別することが困難であった。また、可視画像で確認できなかった表面付着物をブリスタリングと一部判定した箇所があった。この原因は、赤外線計測法では遠隔で損傷の深さまでの測定や一部の微細な損傷の判別が困難であるためである。この事態に至ったのは、場合によっては複合調査等(目視調査、路面性状調査等)でひびわれや微細な損傷の状況を把握し、総合的な判断を行うことの必要性の判断を誤っていたことが原因である。これにより得られた知見は、必要に応じて複合調査等を行い、損傷の深さ等も判断する必要がある。しかしながら、内部構造が視覚化できていることから、内部 に大きな熱変状(滞水、ひびわれ)が発生しているときは、赤外線画像に温度変化として現れる。ということである。


■講師コメント
 この問題は部分的特殊性によって赤外カメラだけでは判断がつかない場所があるという課題を表しています。ここから得られる知見は、ジョイント部分など他要員での損傷が予想される場所では赤外カメラの他に物理探査の手法を用いて複合的調査を行う必要があるということである。


C打音試験、コア採取等の現地調査の結果より、不良個所を特定し、赤外線計測精度検証の試験箇所を選定したが、失敗したことは、不良個所を選定したが、排水性舗装の場合、舗装構成、施工年月の同じ条件でも、舗装や排水桝のドレインパイプの目詰まりで舗装と床板の間の滞水状況が異なっていたということである。舗装構成、施工年月の同じ条件でも複数個所を試験箇所として選定しておくと目詰まりと滞水の関連性を検証できたが、今回は数か所しか試験箇所を選定していなかった。
この原因は、排水性舗装の場合は目詰まりにより吸水されず舗装と床板の間に空隙があっても滞水しないことである。一方、排水桝のドレインパイプが目詰まりしていると排水桝へ排水されず舗装と床板の間に滞水してしまうためである。この事態に至ったのは、舗装構成、施工年月の条件が同じ場合であれば、滞水状況も同じであるとの判断を誤っていたことが原因である。これにより得られた知見は、舗装構成、施工年月が同じ条件でも舗装や排水桝のドレインパイプの目詰まりにより滞水状況が異なり、赤外線画像にも違いが現れるということである。


■講師コメント

 

 この失敗体験が表しているのは、排水性舗装において、雨天の後の排水が不十分な場合に誤差要因となる可能性があるということである。このためここから得られる知見は降雨の後は数日から数週間赤外測定を控えるいうことが必要であると言うことです。


D赤外線計測の適合因子、日射、気温について、上記@箇所での判別試験により最適条件として、晴天の昼過ぎ(13時〜15時)を割り出したが、失敗したことは、調査条件の異なる判別試験として11月〜2月の月別での判別試験を行ったが、月別での大きな傾向が見られなかったことであった。この原因は、月別では温度差に大きな違いが見られなかった。また、年間を通して行えなかったためである。この事態に至ったのは、月別によって季節や時期など(冬季より夏季が有利など)により検出の程度が異なると考え、調査条件の一つとして判断を誤っていたことが原因である。これにより得られた知見は、赤外線計測での損傷検出は月別では大きな影響はなく、天候や時間帯など他の要因が大きいということである。


■講師コメント

 

 この体験では、実施時期によって赤外計測の精度に差が生じて、季節による向き不向きがあるのではないか、という仮説を検証したわけです。結果はそのような傾向はなく仮説は棄却されました。このため一見成果はなかったかのように見えますが、この体験に解釈を加えて知見とする事は不可能ではありません。すなわち、外気温の違いによって赤外計測の差が生じるかと考えたが、実際には赤外計測に影響与える因子は太陽光の日射であり、この条件は年間を通して、晴天であればあまり大きな変化は無く、赤外カメラ計測に季節的な変化は無いということです。すなわち、厳寒期はコンクリート構造物自体が冷え切っており、少しの加熱で不良個所がくっきりと出るし、一方、夏期はコンクリート構造物の温度は上がるものの、それ以上に太陽光のエネルギーが増すために、不良箇所が大きく加熱されて、くっきりと表れるということです。



 このように、業務を遂行するのに根拠となるような前向きな知見を体験から獲得していくことが大事です。技術士という職務は人に教える務めであり、資格を取って指導的立場にたつ人が多いようです。その時に専門家として指導できるか否かは、上記で述べたような体験から得た知見があるかどうかにかかっています。 マニュアルの知識では、誰もが知っているために、そのような知見では人を導くことができません。

 

 専門家は専門家であるためには、過去の独創的な体験によって得られた知見を沢山保有して、多くの人が道の問題に出くわした時に明解に解決策を示すことが必要なのです。このため技術士試験問題では、そのような一般の人に解決方法わからない難解な問題をわざと提示して、他の技術者を導いて解決に至る道筋を示せるような優れたエンジニアの力を試しているのです。

 もしご自分の技術力や応用力が試されているとしたらどうしますか。知識を述べるだけでは自身のエンジニアとしての優位性を示すことはできません。こうした専門家としての技量を表出しなければならない問題に対して、本研究所では各受講者様のコンピテンシーの分析を行ない、問題ごとにベストの提案をして、試験官からの評価を高めることができるように答えの方向性をご提案しています。このコンピテンシーを高める行動原理は、試験だけでなく、現実の業務の中で「私の提案は会社で取り上げられることが増えた」ととう好評を博しております。