R1年 建設部門、施工・道路の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 良く勉強されていて合格の可能性十分です。さらにこう書いておけば完璧なのに・・・と思われる惜しいところがあります。

 わかりきっている議論、原則論を丁寧に尽くしても物足りません。一般常識を超えたプロの提案が求められています。

 漠然とした答えがやや多いようで、コンピテンシーの表現が不足しているようです。このような場合どう書けば正解かは、ケースバイケースでチェックしないと正解が判断できません。これらを解決するのが添削とコーチングです。音声ガイドに基づいて練習さえしていけば必然的にわかるようになり、必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分36秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題

Ⅰ−2     我が国は,暴風,豪雨,豪雪,洪水,高潮,地震,津波,噴火その他の異常な自然現象に起因する自然災害に繰り返しさいなまれてきた。自然災害への対応については,南海トラフ地震,首都直下地震等が都区内将来に発生する可能性が高まっていることや,気候変動の影響等により水災害,土砂災害が多発していることから,その重要性がますます高まっている。   こうした状況下で,「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靭化」(ナショナル・レジリエンス)を推進していく必要があることを踏まえて,以下の問に答えよ。

(1)ハード整備の想定を超える大規模な自然災害に対して安全・安心な国土地域・経済社会を構築するために,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクと、それへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり,必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.安全・安心な国土・地域・経済社会を構築するための課題

1−1.リダンタンシーの確保

 大規模な自然災害の発生により経済社会に多大な影響を与える恐れがある。

 なぜなら、我が国の人口は大都市に集中しており、経済、政治、行政機能も大都市に集積しているため、大規模な自然災害が大都市で発生すると主要な機能が停止することが懸念されるからである。また、災害復旧を支えるネットワークが弱いことも要因として挙げられる。

 したがって、リダンタンシーの確保が課題である。

1−2.防災意識社会の構築

 ハード整備の想定を超える大規模な自然災害の発生が予見される場合は、人命を守るために国民による避難が必要である。

 しかし、避難指示などの情報が発令されているにも関わらず、逃げ遅れによる犠牲者が後を絶たない。これは過去の経験などから正常性のバイアスが働き、避難を決断できなかったことが原因として考えられる。

 したがって、防災意識社会の構築が課題である

根拠の説明がややくどいです。

2.リダンタンシーを確保するための解決策

2−1.コンパクト+ネットワーク

 大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するにはコンパクト+ネットワークが有効である。

 なぜなら、コンパクト化により行政サービス等を集約化し、ネットワーク化により圏域人口を拡大することで地方創生を促し、大都市への人口流出を緩和することができると考えられるからである。

 特にリニア中央新幹線の開通によるスーパーメガリージョンを形成することで、1日の移動圏域を拡大することで、対流を促進し、地方の活性化に寄与できると考えられる。

2−2.災害復旧を支えるネットワークの強化

 大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するには災害復旧を支えるネットワークの強化が有効である。

 なぜなら、災害復旧を支えるネットワークを強化することで、大規模な自然災害発生後、迅速な復旧を可能にし、経済社会に与える影響を緩和できると考えられるからである。

 具体的には、大都市の高規格環状道路の未整備区間の整備や主要な港湾、空港のラストマイルの整備によるモーダルコネクトの強化による陸路、海路、空路のネットワーク強化が挙げられる。あわせて、高規格幹線道路の暫定2車線区間の解消や、港湾の高潮対策、空港の耐震対策などをネットワークの耐震性を向上させることも有効である

3.新たに生じうるリスクとその対策

これは人口減少の対策なのに、どうして地方で困難なのか?

 コンパクト+ネットワークや災害復旧を支えるネットワークの強化を推進する上で、特に人口減少が進む地方部では費用対効果の観点から事業化が困難になることがリスクとして挙げられる。

 対としては防災の観点での便益を費用便益分析に適切に反映し、事業の有効性を示すことが挙げられる。

これがなぜ対策となるのですか。いったい何の対策なのか

 また、発現したストック効果を取りまとめ、見える化・見せる化することで国民のコンセンサスを得ることも重要である。

レポートだけで何が解決するのか?やや説明不足です。

4.業務遂行に当たり必要となる要件

4−1.技術者倫理の観点

 業務遂行に当たり技術者倫理の観点から必要となる要件として、業務で知り得た情報の守秘義務が挙げられる。

2-1、2-2の業務と直接関連ありません

これは当然必要なことです。問題を解いたことになりません。

 なぜなら業務で知り得た情報が外部に漏れることで、談合による不正入札に発展する場合などが考えられるからである。そのため、業務を遂行する上で、適切に情報管理することが重要である。

4−2.社会の持続可能性の観点

 業務遂行に当たり社会の持続可能性の観点から必要となる要件として、生物多様性の保全が挙げられる。

 生物の多様性を保全するためにはグリーンインフラの採用を検討することが重要である。具体的には多自然川づくりやエコロードを推進することで生物多様性の保全による持続可能な社会の形成に貢献できると考えられる。

なぜここでグリーン、エコなのか。社会の持続可能性をとにかく増せばよいという提案ではなく、主題は2と3で提案したことを遂行するための要件です。やや唐突な感じがします。

Ⅱ-1-2     

 平成30年3月の道路法改正により創設された,重要物流道路制度の目的を説明せよ。また,重要物流道路制度の概要について述べよ。

解答

1.重要物流道路制度の目的

・平常時・災害時を問わない安定的な物流の確保

国際競争力の強化

物流生産性の向上によるトラックドライバーの労働環境の改

目的とは直接的なことです。因果関係がやや遠いものは△です。

2.重要物流道路制度の概要

 高規格幹線道路、直轄国道、都市高速道路及び主要拠点へのラストマイルを国土交通大臣が重要物流道路として指定する。また、重要物流道路が災害により寸断される恐れのある区間では代替路が、防災拠点へ連絡する道路では補完路が指定される。

 指定された道路では以下の制度が適用される。

前置き抜きに、項目を2〜3挙げるように。

①国際海上輸送コンテナ車の特殊車両通行許可申請の不要措置

見識としては〇ですが、付帯的事項(役所の手続き)であり、建設道路工学の本質ではないので好ましくありません。

 国際海上コンテナ車の特殊車両通行許可申請の不要にするため、重要物流道路において建築限界の高さを4.5mから4.8mに引き上げる。

②被災時の国による道路啓開の代行支援

 重要物流道路及び代替路、補完路が被災した場合、地方公共団体は国に道路啓開の代行支援を要請することが可能となる。

民間施設直結スマートインターチェンジ整備の支援

 民間施設直結スマートインターチェンジの整備を行う民間事業者に対し、整備費用の一部を無利子貸付する支援を行う

支援されたいお気持ちはわかりますが、国の政策に依存することであり、国土交通省(国会)で承認されなければ実現しません。技術士の提案としては好ましくありません。

Ⅱ-2-2

ある市街地の生活道路(地区に住む人が地区内の移動あるいは地区から幹線街路に出るまでに利用する道路)において,地区に関係のない自動車の走行やスピードの出し過ぎなどの問題が発生しており,交通安全対策(ゾーン対策)が検討されている。

この対策の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1)調査,検討するべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について,留意すべき点,工夫する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

この問題は下のような道路での事故発生が増加していることに基づいています。そのような社会ニーズはお感じになっていますか。

解答

1.調査・検討すべき事項

①生活道路のネットワーク状況や構造

 築に関係のない自動車の走行ルートや交通安全対策を立案するために、生活道路のネットワーク状況や道路構造(幅員、線形、縦断勾配、横断勾配など)を調査する。

通過交通(抜け道)の恐れがあります。

②生活道路の交通特性

 生活道路の時間別、平日休日別の自動車交通量、自転車交通量、歩行者交通量や自動車の実勢速度、事故発生箇所や事故の状況についても調査し、生活道路の交通特性を把握する。

③生活道路の交通規制状況

 生活道路における速度規制の状況やスクールゾーンの指定、一方通行指定などを調査し、交通安全対策立案の際に考慮する。

2.業務を進める手順

①事前調査

 生活道路のネットワーク状況や構造、交通特性、交通規制状況等を現地調査または資料調査により事前に把握する。

 ETC2.0プローブデータが利用できる場合は、走行挙動履歴からヒヤリハット箇所を分析し、交通安全対策について検討する。

②交通安全対策の立案

 事前調査結果に基づき、最も効果的な交通安全対策を立案する。対策例としてはハンプ、シケイン、ライジングボラードなどが挙げられる。

 生活道路の利用者の状況やバリアフリー推進計画等を考慮し、横断舗装にハンプを設置する場合は歩道に段差のないスムース歩道の採用についても検討する。

 また、対策効果を事前に把握する必要がある場合は社会実験の実施についても検討する。例えばハンプであれば可搬式ハンプの設置やシケインであればラバポールの設置などが挙げられる。

③交通安全対策の効果の確認

 交通安全対策の効果を確認するため、対策実施後の交通状況を調査し、事前調査の結果と比較分析する。期待した効果が得られなかった場合は追加の安全対策について検討する。

3.関係者との調整方策

2の①〜③を進めるための調整ですが、その理解はよろしいですか。利害関係者同士の紛争解決ではありません。

 業務を効率的・効果的に進めるためには、計画段階から道路管理者、交通管理者、地元住民で構成される協議会を立ち上げることが有効である。

こうした形式や手続きではなく中身の話(何をするか)が必要です。

 なぜなら、協議会を通じて地元住民にアンケート調査を依頼したり、交通管理者に事故調書の提供などを依頼できる。また立案した安全対策について検討段階から協議会で議論することにより、速やかな合意形成を図ることができると考えられるからである。

こういう話ではなく生産的な提案が求められています。

Ⅲー2

 橋梁,トンネル等の道路構造物については,平成25年から平成26年にかけての道路法,同施行令及び同施行規則の改正を経て,平成26年度に策定された定期点検要領等に沿って,各道路管理者において点検が実施されており,平成30年度で一巡目の定期点検が完了したところである。道路構造物のメンテナンスを担当する技術者として,以下の問に答えよ。

(1)地方公共団体が,二巡目となる道路橋の定期点検を実施するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクと、それへの対策について述べよ。

解答

1.定期点検を実施する上での課題

1−1.予防保全による維持管理

 平成30年度で一巡目の定期点検が完了し、道路橋の損傷状況も明らかになった。しかし、地方公共団体では予防保全的措置がほとんど行われていない

 これは、予防保全的措置を実施するために必要な予算が確保されておらず、予防保全的措置が必要な個所に対する対応を先送りしていることが原因として考えられる。

途中の説明がくどいです。

 したがって、予防保全による維持管理型の体制への移行が課題である。

結論は結局同じ。それでは予算不足で無理では?

1−2.メンテナンスサイクルの継続

 令和元年度より二巡目の定期点検が開始されたが、地方公共団体において、定期点検の継続は困難である。

課題の文の末尾が否定形であまり好ましくありません。

なぜなら地方公共団体は全体の約7割の道路橋を管理しており、10年後には約半数が耐用年数である50年を経過する。そのため、修繕・更新に要する費用が増大し、点検に要する費用が大きな負担になると考えられるからである

 したがって、メンテナンスサイクルの継続が課題である。

途中の説明が冗長で、結論は結局最後の1行だけという説明不足となっています。

1−3.点検品質の確保

 道路橋の定期点検において、点検困難箇所を多く有することや部材別の健全度評価だけでなく、構造物全体としての健全性評価も必要なことから、点検技術者には高度な技術力が求められる。

ここは答えの前置きです。

 しかし、少子高齢化に伴う新規就労者の減少や厳しい建設産業の労働環境による就労者の定着が進まないことから、技術の伝承が十分に行えず、点検品質が低下することが懸念される。

冗長な根拠です。そして結論は下の1行にすぎません。

 したがって、点検品質の確保が課題である。

2.予防保全を実現するための解決策

2−1.アセットマネジメント

 予防保全による維持管理型の体制へ移行するにはアセットマネジメントが有効である。

この予防保全・アセットマネジメントの説明は今ではやや陳腐化しています。そろそろ新しい提案をしませんか。

 なぜなら、各ストックに対するライフサイクルコストを推計し、最適な維持管理シナリオとなるように、修繕・更新事業計画を策定することで、予防保全的措置を実施する予算を確保することができると考えられるからである。

 また修繕・更新に必要な事業費の推計結果を見える化し、国民のコンセンサスを得ることも予算確保の上で重要である。

これは行政の仕事であって技術士としての提案ではありません

2−2.新技術活用による点検の効率化

 予防保全による維持管理型の体制へ移行するには新技術活用による点検の効率化が有効である。

これが解決策。しかしまだ冗長です。

 なぜなら、新技術活用により点検の効率化を図ることで、点検に要する費用を削減し、予防保全的措置に要する費用に充てることができると考えられるからである。

 具体的には、赤外線サーモグラフィやドローンなどを活用した点検支援技術を採用することが挙げられる。また、各道路管理者の点検データをプラットフォームに集積し、分析することで点検の効率化を図るインフラメンテナンス2.0も推進する必要がある。

3.リスクとその対策

3−1.リスク:地方公共団体の技術職員不足

 アセットマネジメントや新技術活用による点検の効率化を推進する上で、地方公共団体の技術職員の不足がリスクとして挙げられる。

 なぜなら、現状、地方公共団体の技術職員は不足しており、適切な維持修繕・更新の事業計画の策定が困難になることや知識不足により新技術の採用を見送ることが懸念されるからである。

3−2.対策:民間人材の活用

 対策としては民間人材の活用が有効であると考えられる。

 なぜなら、PPP/PFIによる民間人材を活用することにより、地方公共団体の技術職員不足を解消でき、民間のノウハウを取り入れることで業務の効率化を図ることができると考えられるからである。

 具体的には、有料道路事業であればコンセッション方式の採用や東日本大震災の復興事業で採用された事業促進PPPの活用などが挙げられる。

楽観的すぎませんか。PPP/PFIをやれば何でも楽勝で解決するわけではありません。実務的提案を求められています。

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