R1年 金属部門、表面技術の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 素材産業では国際競争力が問われていますのでそのような準備が必要です。しかし残念ながらそのような準備がされていなかったようです。音声ガイドに基づいて練習していけば予想問題に対する対策法がわかるようになり、必ず合格できます。


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問題

T−1     

問題文 金属材料製造における主要技術の多くは、生産現場の経験の蓄積に基づいて改善されてきた。国際競争力強化へ向けた新展開を図るためには、従来の技術を承継しつつ、新たな概念に基づく更なる生産技術・プリセスの高度化も不可欠となる。また、既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料の開発も視野に入れていかなければいけない。上記の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)構造材料を対象として、新たな生産技術・プロセスや新材料を検討するうえで、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、あなたの専門技術を踏まえて考えを述べよ。

(4)上記事項を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。


解答

1.新たな生産技術・プロセスや新材料を検討する上で考えられる課題 

 考えられる課題を以下に記載する

見出しの視点の取り方が違ったようです

@    特性面の課題:我が国の国際競争力強化のためには、より高強度なものやより軽量なものなど、従来よりも高い特性をもつ材料の開発が必要である。

これらはごく当たり前のことでは?問題文の要求は2つです。

  • 従来の技術を承継しつつ、新たな概念に基づく更なる生産技術・プリセスの高度化
  • 既存材料の特性を凌ぐ新しい金属材料の開発

 

Aコスト面の課題:競争力強化のためには、従来の特性を維持したまま更に低コスト化することも求められる。生産技術・プロセスを高度化し、より低コストに材料を生産することが必要である。

B環境面の課題:近年では国際的な環境保全への意識の高まりから、環境に優しいものづくりが求められている。良好な特性や低コストを実現しつつ、鉛や六価クロムなどの有害物質を使用しないなど、環境への配慮も両立したものづくりが必要である。

C技術承継面の課題:現在の生産現場では、一担当者レベルの暗黙知と言える技術が多く存在する。その技術が充分に承継されないまま労働者が引退し、暗黙知な技術が失われつつある。これを防ぐために、暗黙知な部分も含めた技術承継が必要である。

2.最も重要と考える課題と、それに対する解決策 

 上述した課題のうち、私はC技術承継面の課題が最も重要と考える。なぜなら、近年では少子高齢化が急速に進んでいることから労働者の平均年齢が上昇を続けている背景があるため、技術が失われてしまう危機が最も差し迫っていると考えるからである。そこで、上記課題に対する解決策を以下に列挙する。

a)マニュアルや手順書の整備:暗黙知も含めた技術をマニュアルや手順書などの書類に残すことで、後生に技術を承継する。

b)OJTの実施:熟練の作業者が教育者となり、後進の作業者に対して教育を行う。コツ・ノウハウといった部分を含めて教育することで、暗黙知な技術も承継される。

c)センサによるデータ収集:清算作業におけるパラメータや生産したものの特性をセンサによりデータ化し収集する。収集したデータを利活用し、技術を承継する。

残念ながら上記のような金属工学技術と関係ない手続きなどを議論する場ではありません

 

3.解決策に生じうるリスクと、それに対する対策 

 上述した解決策に共通して生じうるリスクとして、適切に技術が伝達されないということが挙げられる。例えば、溶射作業時の手の角度など作業中のちょっとしたコツは言葉で説明しにくいといったケースや、そもそも担当者がなにげなくやっているだけで技術と認識しておらず説明がされないといったことが考えられる。

 これに対する対策として、IoT やAI技術の利活用が挙げられる。例えば、溶射等は手作業で実施することが多くあるが、作業者の腕や手に加速度センサなどのセンサを取り付けた状態で溶射作業を実施し、作業中の腕や手の角度や位置等のデータを収集し、コツを見える化することで技術承継をより確かなものにする。更には、AIやロボット技術も活用し、熟練作業者の動きを再現した溶射ロボットの開発等にも展開できる。

4.業務遂行における必要な要件 

・技術的な視点から

 作業者にセンサを取り付けるという性質上、センサは作業者の容赦作業のジャマにならない形状や生態親和性でなければならない。また、作業者のどこに、何のセンサを取り付ければ、技術を的確にデータ化することが可能かよく検討する必要がある。

・技術者倫理、社会の持続可能性の観点から

作業者にとっては自分が蓄積したコツ・ノウハウなどの技術を公開することであり、自分の技術や仕事が奪われるといった思考に至る可能性がある。作業者の協力を得るためにも、技術承継の必要性、作業者の技術の重要性、仕事を奪うわけではないといった事を伝え、作業者のフォローをよく行うことが必要である。

また、前述の通り少子高齢化が進んでいる現在では、技術承継をする後進がいないことも懸念される。社会の持続可能性を考慮し、ロボット技術の活用まで展開することが必要である。これにより労働人口減少の対策にもなる。

 

なぜここでグリーン、エコなのか。社会の持続可能性をとにかく増せばよいという提案ではなく、主題は2と3で提案したことを遂行するための要件です。やや唐突な感じがします。

 


U-1-1     

真空技術を利用した成膜法について1つ挙げ、原理、技術的特徴、実用上の注意点を述べよ。


解答

真空技術を利用した成膜法の1つであるスパッタリングについて、以下に記載する。

1.原理

 真空容器内に基材と成膜材料(ターゲット)を設置し、電極とターゲット間に高電圧を印加する。すると導入ガスであるアルゴンや酸素がイオン化し、ターゲットに勢いよく衝突する。その際にターゲットから原子がはじき出され、はじき出された原子が基材に到達し付着・堆積することで成膜する手法である。

2.技術的特徴

a)膜の密着強度や緻密性が高い。

b)成膜時間の制御により高精度な膜厚制御が可能である。

c)反応性ガス(酸素や窒素)を使用することで、容易に酸化膜や窒化膜の成膜が可能である。

d)処理液等が不要で、低環境負荷である。

3.実用上の注意点

 成膜速度は高くないので厚膜形成は苦手である

これは注意点ではなく、制約事項 注意しなくても必然的にこうなります

 

また、真空容器を要するので処理可能な基材のサイズに制約が生じる。基材の形状は基本的に板状に限られ、三次元な基材に対するスパッタリングは開発は進められているが(バレルスパッタリング等)、一般的な実用には至っていない

ここは注意点ですから、巧みに行うための提案を書いてください。できないこと、制約事項は聞いてもも仕方ないことです。生産的な提案はありませんか。 スピード化、品質向上、コストダウンetc

 


U-2-2

 電子機器の小型化に伴い、モジュール基盤の配線微細化が求められている。この配線を形成する1つの技術として、新たに湿式めっきを開発することとなった。この業務の担当責任者として進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。


 

解答

電子機器の小型化のための配線微細化です。新たに湿式めっきを開発する・・この意義は何かをお考え下さい。

 

1.調査、検討すべき事項とその内容

a)配線の材質:形成が必要な膜の材質調査は必須である。湿式めっきの場合、成膜が容易な材質や困難な材質が存在し、また、成膜可能だとしてもその成膜パラメータは膜の材質により変わるからである。

b)配線の厚さ:配線形成に必要な膜の厚さにより、適用すべき湿式めっきの種類が変わる。例えば、ある程度以上の厚みが必要であれば電解めっきが適し、逆に膜厚は薄く高精度な膜厚制御が必要であれば無電解めっきが適する。

配線の密度、配線断面(幅)は?

 

c)基板のサイズ:湿式めっきの場合、基板を処理液に浸漬する必要がある。基板のサイズにより必要となる浴槽のサイズが異なるため、基板サイズの調査が必要である。

(1)調査、検討すべき事項とは配線微細化と、湿式めっきの対応です。

 

d)モジュール基板の使用環境:実際の使用環境を調査し、その環境でも不良の発生しない膜とする必要がある。例えば、基板上に膜を形成するという性質上、温度変化のある環境では基板と膜の熱膨張率の違いから膜には熱応力が生じる。熱応力が生じても回路が断線などの不良が発生しない膜厚や材質の設計が必要である。

 

(2)業務を進める手順にでは、配線微細化・湿式めっきする上での、品質向上につながる、留意事項や工夫を述べてください。

2.業務遂行手順(留意点、工夫点含む)

 業務の遂行手順をいかに記載する。

@調査を実施し、要求事項をまとめる。この時、現在の生産方法や特性等も併せて調査しておくと、開発完了時にレビューしやすい。

A得られた要求事項を基に、適用するめっきの方針を決定する。例えば、必要な膜厚や材質にで電解めっきか無電解めっきかを決める。

B決定した方針を基に、細かな生産におけるパラメータを調整しながら試作及び評価を行う。この時、1条件ずつ試作・評価を繰り返すのではなく、複数の条件でまとめて試作・評価を行うことで、生産パラメータと得られる特性のそう考えられやすくなり、効率的に開発が進められる。

CBの結果から最終的な生産条件を決定し、その結果生産された物が要求事項を満たしているか確認する。要求事項を満たしていれば、既存の物との比較等のレビューを行い、開発を完了する。

3.関係者との調整方策

・試作段階における方策:開発活動において、実験用の生産装置・ラインの有無に関わらず、実際の製品の生産装置・ラインを使用する必要がある時が必ずある。その際には製品の生産に大きな影響を与えないよう、実施時期や実施者等について生産担当者等の関係者と事前によく打ち合わせてく。

・開発完了後における方策:開発した生産技術をスムーズに現場に伝達できるよう、手順書等を十分に整備し、必要であれば時間を確保して教育の機会を設ける。

このような作業手順についての提案をしたところで何の意義があるのでしょう。関係者との調整とは、プロマネとして下請けや、協力業者に裁量権を与えて仕様の最適化を図ってもらい、結果として製品の品質を高める(そのようなことを下請けや、協力業者に促す)提案です。

 



Vー1

 RoHS指令は現在各種産業分野の環境規制に及んでいる。本気性が我が国の製造業に与える影響は計り知れないものがある。このような状況を踏まえて金属表面処理の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更に当たって、技術者としての立場で多面的な観点で課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)あなたの技術的提案の効果及び潜在的に持っている不確実性あるいはリスクについて、具体的に論述せよ。



解答

1.         RoHS指令発令後の製造技術や製品設計の変更における課題

特性の観点から見たときにどんな課題がありますか。

@特性面の課題:製造技術や製品設計の変更により、製品の持つ特性が低下してしまう可能性がある。例えば、近年では鉛入りはんだに代わり鉛フリーはんだが使用されているが、鉛入りはんだでは発生しなかったウイスかという現象が鉛フリーはんだでは発生するようになってしまった。製造技術や製品設計の変更をしても、極力特性が低下しないようにする必要がある。

Aコスト面の課題:RoHS指令では6種類(RoHsUでは10種類)の材料が有害物質として指定され、製品に規定値以上含有されないことが求められている。そのため、製品設計の変更時には上記の有害物質を使わず代替品となる材料を使用することが多い。しかし、現状では代替品となる材料は比較的高価な傾向にあり、製品としてのコスト増加につながる。RoHS指令に対応しながらも同等のコスト、あるいは低コストな製品設計が求められている。

結局、有意義な課題の方向性を示せていません。

 

B環境面の課題:上述の通り、RoHS指令では指定した有害物質が製品に含有しないことが望まれているが、製造現場でも有害物質を使用しないようにする取組が行われている。例えば、硬質クロムめっきの製造現場では従来六価クロムの浴が使用されてきたが、六価クロムはRoHS指令で有害物質に指定されている。このため、六価クロム浴に代わり三価クロム浴を用いた硬質クロムめっきの実用化が進められている。しかし、現状では三価クロム浴は排液処理が困難であり、処理時に必要な電力消費も大きい。有害物質を使用しないという利点はあるが、排液処理や消費電力といった他の環境側面で問題を抱えており、更なる低環境負荷な表面処理技術が望まれている。

不要な議論に発散しています

2.最も重要な課題とその解決策 

 上述した課題のうち、B環境面の課題が最も重要であると私は考える。なぜなら、近年では持続可能な開発への意識が国際的に高まっており、特性やコスト面で優れていても環境面への配慮に欠けた製品は求められないと考えるためである。

 課題に対する解決策を以下に記載する。

a)乾式めっきへの移行:真空蒸着やスパッタリング等、処理液を必要としない、つまり排液処理も不要な乾式めっきを適用する。例えば、六価クロムによる硬質クロムめっきはスパッタリングで直接クロムを成膜する技術開発を行いそれに移行する。あるいは、高い硬度を求めるだけなら、既存技術である窒化チタンの成膜等も考えられる。

b)他の材質のめっきでの代用:六価クロム浴を使用することで問題にされることの多い硬質クロムメッキは、基材に高い硬度や摩擦係数の低減を目的として適用されることが多い。しかし、本来硬質クロムめっき程の硬度(約1000HV)は必要なくそれよりも低い硬度でも問題ない用途でも硬質クロムめっきが適用されているケースも多い。そのような物に対しては、硬質クロムめっきほどではないが高高度なニッケルめっき(600

HV)やアルマイト(200〜600HV)等で代用することも対策として挙げられる。ニッケルめっきやアルマイトは製造工程においてもRoHS指令で指定される有害物質を使用しておらず、より低環境負荷な表面処理技術であると言える。

3.技術的提案の効果及び不確実性あるいはリスク 

a)乾式めっきへの移行

・効果

 乾式めっきは処理液を必要としないため、湿式めっきと比較して極めて環境に優しい処理方法である。

・不確実性あるいはリスク

式めっきには真空技術を利用したものが多くある。その性質上真空容器が必要となり、処理可能な基材のサイズに制約が生じる

b)他の材質のめっきでの代用

・効果

 既存技術で代用可能な条件であれば、技術開発の必要もなくすぐに実行でき、直ちに低環境負荷の製品が出来上がる。

・不確実性あるいはリスク

 特性が低いもので代用する場合、必要な仕様の調査が充分でないと不具合発生の恐れがある。