R1年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。

答案の一覧>

この答案についての講評

 相当勉強されていて見識は十分ですが、独自に答案練習を続けてこられたせいか、解答法についての戦略が欠けているように見受けられます。Ⅰ-1は分析力は素晴らしいです。しかし最後の問いでは論点がややそれていたようです。今回Ⅰ-1では問3、4で応用的な問題が出題されました。このような難問に対して落ち着いて答える必要があります。また、Ⅱ-2は残念ながら出題者のねらいが見えていなかったようです。その結果プロのエンジニアの答えになっていません。問いが求めている議論の中心に答えないと点が取れません。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 これからは、毎年応用力問題の傾向が続きますので、変化球のように、考えたことのない未知の問題を解かされます。ですから普段から練習しないと解けません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分24秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1

  上下水道は、市民生活にとって重要なライフラインであり、災害や事故発生時においても事業を一定のレベルで継続させ、早期に業務レベルを復旧することが必要不可欠である。このため、頻発するさまざまな災害や事故にもいても実効性のある上下水道共通の計画立案と災害リスクの低減が求められている。

 上記のような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で多面的な観点から上下水道に共通する課題を抽出し、分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる上下水道事業に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

(1)技術者としての立場で多面的な観点から上下水道に共通する課題を抽出し、分析せよ。

問題文をそのまますべて書き写す必要はありません。

 上下水道事業が抱える問題を踏まえて課題を抽出する。上下水道事業が抱える問題は以下の通りである。

  ①人口減少による料金収入の減少

  ②給水量減少に伴う施設の効率性低下

  ③都市部の人口集中に伴う水源の汚染

  ④渇水や豪雨などによる利水の安定性低下

  ⑤高度経済成長期に布設された管路や施設の老朽化  

1がやや冗長です。ここまで書かなくてもOKです。エネルギーを温存された方がよいでしょう。

  ⑥料金収入減少など外部環境の変化により施設更新のための資金の確保が困難

  ⑦団塊世代職員の大量退職による職員数の減少および高齢化

 以上の問題を踏まえると水道事業の課題は以下の通りである。

  ①アセットマネジメントの実践

 中長期的な財政収支見通しを元に、管路や施設の更新を計画的に実施する。必要に応じて水道料金の見直しを実施する。

  ②省エネによる経営効率の向上

 省エネによるライフサイクルコスト削減により経営効率を向上させる。

全体を合格答案としてまとめる戦略が足りないように感じます。

  ③人口減少を踏まえた水道施設の再構築

 ダウンサイジングも含めた利用人口に見合った施設規模とすることで維持管理費の縮減を図る。

  ④水源の保全

 水源涵養機能を高める事で洪水や水源水質事故などのリスクを低減する。

  ⑤高度処理

 生物膜処理などの高度処理を実施することで給水水質や放流水質を向上させる。

  ⑥危機管理対策

 事故や災害に対する対応力を強化する。

  ⑦広域化・官民連携

 水道事業の運営基盤を強化する。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる上下水道事業に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

 災害や事故のリスク低減を図るうえでは、水源の保全を行う事で水循環の健全性を確保することが最も重要と考える。

 解決策としては以下の通りである。

 1)集水、排水区域内の保全対策

 関係する環境行政機関、上下流地域住民、ボランティア団体等と協働で水源保全を行う。

  ①関係機関と情報交換と共有を図り、密接な連携の元、集水、排水区域の自然環境の保全を行う。下水道事業者は、排水規制の遵守を徹底する。

②集水、排水区域の森林の水源涵養機能を高めるため、森林の整備を行う。また、乱開発による水質の汚染防止を図る目的で山林や原野を自ら取得する。

  ③上下流地域の交流等により水源地や水源林の大切さを認識する事業等を積極的に行う。

  ④水道原水の水質保全を目的とした水源二法の活用を図る。

 2)貯水池における保全対策

  ①湛水区域の樹木を伐採する。

  ②貯水循環により水温成層を破壊し、貯留水の水質改善を図る。

  ③底泥浚渫によりリン等の栄養塩類を除去する。

  ④流入水バイパス

 問題となる流入水を貯水池の下流へ放流する。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

 貯水循環を例に挙げると、水温成層の破壊により水温が下降し、下流域の稲作や漁業へ影響を与える可能性がある。そのため、対策としては躍層を破壊せず底層部に酸素を供給し底層部の水質を改善する深層曝気循環法などを活用する。

「貯水循環」に勝手に絞り込んでは△です。汎用的な答えが求められています。

 このようなリスクに対応するため、下流域の関係者とも情報交換や共有を図る事が重要である。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 業務遂行において、応急的な処置ではなく恒久的な対策を主眼に置くことで将来世代にわたる社会の持続可能性の確保に努める。

このような個人的な思いでは△。答えになっていません。問4では、業務遂行、すなわち答案の(2)(3)に書かれた内容について、考えることであって、心構えを書くところではありません。

Ⅱ-1-2     

 凝集沈殿地(横流式)の処理の仕組みと運転における複数の留意点を述べよ。

解答

1.処理の仕組み

凝集沈殿処理は混和工程、フロック形成工程、沈殿工程で構成されるため、それぞれの工程について述べる。

 1)混和工程:原水中に含まれるコロイド状の濁質は負に帯電しているため、水中では互いに反発して浮遊した状態で存在している。そのため正の電荷を持つ鉄やアルミニウムなどの金属水酸化物を注入して急速攪拌して均一に分散させることで電気的反発力を打ち消し、微小なフロックを形成する。

 2)フロック形成工程:緩速攪拌してファンデルワールス力や凝集剤の架橋作用によってフロックを大きく成長させる。

 3)沈殿工程:懸濁物質やフロックの大部分を重力沈降作用によって沈殿除去し、後段のろ過池にかかる負荷を軽減する。

 水面積負荷は沈降速度よりも小さくする必要がある。沈降面積を大きくするほど処理量を増やすことができ、2段式や傾斜板を使用した沈殿池が該当する。

2.運転における留意点

 ①原水の水温によって凝集性が変わるため、季節変動による水温やフロックの形成状態、沈降状態を監視する必要がある。

監視してどうするのか?どうすべきかが具体的に書かれていません。

 ②沈殿池に直射日光が当たる場合、水温の変化による密度流の影響に留意する必要がある。

密度流がどうだと、何をどうするのか?

Ⅱ-2-2

 河川表流水を原水とする急速ろ過方式の浄水場においてスラッジの脱水効率の低下が問題となっており、改善が求められている。

 あなたが、この改善業務の担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について説明せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

解答

1. 調査、検討すべき事項とその内容

 原因究明を行うため、水源と施設に分けて調査・検討を行う。

 残念ながら問題点が見えていないようです。この種の問題では過去の経験から問題の原因が予見できないと、てきぱきとした対処ができません。その結果、結局あれもこれもとりあえず全部調べて後から考える…今は原因については何もわからない・・・・・という対応になりこれではプロのエンジニアの答えになりません。

 1)水源

  ①流域調査

 河川へ流入する下水など、河川の水質を形成する流域の環境や流量などを調査する。

 また、降雨などによる高濁水や水源水質事故の影響の有無についても調査する。

  ②水質調査

 項目としては、水温、濁度、pH値などを測定する。

 2)施設

 原因となる設備ごとに分けて調査・検討を行う。

  ①混和池

   ・攪拌状況

   ・フロック形成状況

   ・薬注量

  ②フロック形成池

   ・攪拌状況

   ・フロック形成状況

   ・薬注量

  ③沈殿池

   ・処理水量

   ・フロックの沈降状況

   ・キャリーオーバーの有無

   ・ジャーテストによる最適pHや薬注量の確認

  ・既存の凝集剤では凝集性が悪い場合は、他の凝集剤を検討する。

  ④調整工程

   ・スラッジ濃度

   ・返送水の水質、水量

  ⑤汚泥濃縮工程

   ・スラッジ濃度

   ・汚泥濃縮機の運転状態

   ⑥脱水工程

   ・ケーキの含水率

    ・脱水機の運転状態

残念ながら原因が分からないため、解決策が決まらず、それに伴う手順や留意点も意味のある内容になっていません。一般論にすぎず、答案の答えではありません。

2.業務を進める手順について、留意点、工夫点を含めて述べよ。

 ①調査、検討する項目は多岐にわたるため、全てを一から調査するのではなく、日常管理における運転データーシートなどを利用する。

 ②問題が起きている脱水工程から調査・検討を開始し、対象を順次前段装置へ移していくと効率的に業務を実施できる。

 ③水安全計画などを事前に作成しておき、リスクとなるポイントを事前に

抽出しておくことで作業を円滑に実施できる。

3.業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

①流域の関係者と平常時からリスクコミュニケーションを図ることで、流域に関する情報を事前に把握するができる。

②運転管理マニュアルを作成し、定期的な訓練やマニュアルの見直しおよび改定を行う事で円滑な維持管理を図る。

Ⅲー1

  我が国の水道普及率は約98%となり、ほとんどの国民が水道を利用できるようになっている。一方で近年の水道を取り巻く環境は大きく変化し、特に水道水に対する安全性・快適性への関心がますますたかまっていることから、今後はさらにレベルの高い水質管理を実践することが求められている。

 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)安全・快適な水道水を供給するために、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、分析せよ。
(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要な技術的課題と考えるものを1つ挙げ、解決するための技術的提案を複数示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

(1)安全・快適な水道水を供給するために、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、分析せよ

↑見出しは冗長なので1行にするように

 水道事業が抱える問題を踏まえて課題を抽出する。水道事業が抱える問題は以下の通りである。

  ①人口減少による料金収入の減少

  ②給水量減少に伴う施設の効率性低下

  ③都市部の人口集中に伴う水源の汚染

  ④渇水や豪雨などによる利水の安定性低下

  ⑤高度経済成長期に布設された管路や施設の老朽化

1は書きすぎです

  ⑥料金収入減少など外部環境の変化により施設更新のための資金の確保が困難

  ⑦団塊世代職員の大量退職による職員数の減少および高齢化

 以上の問題を踏まえると安全・快適な水道水を供給するための水道事業の課題は以下の通りである。

  ①アセットマネジメントの実践

 中長期的な財政収支見通しを元に、管路や施設の更新を計画的に実施する。必要に応じて水道料金の見直しを実施する。

  ②省エネによる経営効率の向上

 省エネによるライフサイクルコスト削減により経営効率を向上させる。

  ③人口減少を踏まえた水道施設の再構築

 ダウンサイジングも含めた利用人口に見合った施設規模とすることで維持管理費の縮減を図る。

  ④水源の保全

 水源涵養機能を高める事で洪水や水源水質事故などのリスクを低減する。

  ⑤高度処理

 活性炭処理やオゾン処理などの高度処理を実施することで給水水質を向上させる。

  ⑥危機管理対策

 事故や災害に対する対応力を強化する。

  ⑦広域化・官民連携

 水道事業の運営基盤を強化する。

(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要な技術的課題と考えるものを1つ挙げ、解決するための技術的提案を複数示せ。

 安全・快適な水道水を供給するためには、水道事業の広域化を行い、運営基盤を強化する事が最も重要と考える。

 解決策としては以下の通りである。

 1)水質管理の一元化と技術レベルアップ

 水質試験センターを共同設置し、水質試験・検査業務を共同で行い、水質管理の一元化を図る。

 設備を1箇所に集約した事により維持管理費の縮減および管理の一元化によるスケールメリットを得る事が期待できる。

 また、熟練した水質技術者をリーダーとして技術研修を行い、レベルアップと技術継承を図る。

 2)施設の運転監視業務の集中化

 最も規模の大きい事業体の浄水場に隣接して新たな中央監視所を構築する。それ以外の浄水場や配水場には遠方監視施設や監視制御施設を設置して運転監視の集中化を図る。

 設備を1箇所に集約した事により維持管理費の縮減および管理の一元化によるスケールメリットを得る事が期待できる。また、維持管理に必要な人員も削減できる。

 3)緊急時連絡管の整備

 近隣の水道事業者等と連絡管を整備し、漏水事故や大規模な水源水質事故等の非常時に水を融通する事でバックアップ機能の強化、給水の安定性を図る。

 4)資機材の共同備蓄

 緊急時の応急復旧用や応急給水用の資機材等を近隣の水道事業者などと共同備蓄する事により、備蓄し機材の充実および経費削減を図る。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ

↓これがどうしてリスクてなのですか?リスクとは発生頻度が小さく、壊滅的経済被害を伴うものです。

 解決策に共通して建設費や機器購入費等がかかる。そのため、人口減少による施設のダウンサイジング等を検討し、維持管理費用の縮減や停止させる設備内の機器の転用等で支出を抑える必要がある。また、関連事業者との密接な連携および情報の共有化が必要なため、定期的な合同訓練や情報のデータベース化を実施する必要がある。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
9:00~18:00
定休日
不定期

ご不明点などございましたら、
お問合せフォームかもしくはメールよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

03-6661-2356

マンツーマン個別指導で驚異的合格率!
技術士二次試験対策ならお任せ!
面談、電話、音声ガイド・コーチングで100%納得
添削回数は無制限、夜間・休日も相談可能

お電話でのお問合せ

03-6661-2356

<受付時間>
10:00~17:00

  • 試験対策講座のご案内

株式会社
技術士合格への道研究所

住所

〒103-0008
東京都中央区日本橋中洲2-3 サンヴェール日本橋水天宮605

営業時間

10:00~17:00

定休日

不定期