R1年 森林部門、森林土木の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 見識はお持ちだと思いますが、残念なことに、出題者の求めていることが単刀直入に答えられていませんでした。ご自身は「自分の得意分野に無理やり引き込んで回答したが、この切り口でいいのか知りたい。」とのことで、自己流の書き方では限界があるようです。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。


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 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分23秒)がダウンロードされますのでお聞きください>


問題  

T−2日本では、収益性の悪化などの理由により皆伐・再造林が進まず、結果として高齢級人工林が増加している現状にある。

(1)このことから考えられる負の影響を、技術者としてあなたの専門的立場から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた影響から1つを取り上げ、複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策によって新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(3)の対策を遂行するに当たって必要な要件を、技術者倫理、社会の持続可能性観点から述べよ。


解答

(1) 高齢級人工林にかかる負の影響について

1)齢級配置のアンバランス

現在10齢級以上の人工林は5割以上となっているが、2020年にはこの割合が7割となると予想されている。

この場合、若齢級の人工林が少なくなる事から、下刈、除伐等の保育技術の継承が困難となり、保育作業の不足から、林地崩壊等の災害の素因となる。

2)流木災害の激化

 近年、我が国においては、温暖化に伴う気候変動により、長時間に渡る極端な集中豪雨に見舞われ、林地崩壊に伴う流木災害が毎年発生している。

 今後、収益性の悪化等で、皆伐・再造林が進まなければ、人工林は大径化し、また、手入れ不足の人工林が林地崩壊を引き起こすことで、流木災害は激化すると考える。

(2) 流木災害激化の解決策について

 人工林の林地崩壊が流木発生の原因であるため、以下の解決策となる。

1)林内植生の根系の発達、侵食防止対策

 樹木の根系は、土壌中のせん断抵抗力を増加させるとともに、根系の引き抜き抵抗によって、林地崩壊防止機能を発揮するため、根系の発達促進が必要である。

 また、下層植生等の地被物により、土壌侵食防止機能も発揮される。

 これらの機能を十分発揮させるためには、間伐を中心とする、適切な森林整備が必要である。

2)針広混交林化

 スギ、ヒノキを中心とする人工林に、深根性の広葉樹を導入することによって、土壌中に複数層の根系ネットワークを形成させる事が有効である。

 また、広葉樹からの落葉落枝が、更に土壌浸食への抵抗性を高める。

(3) 新たなリスクについて   ←ここはリスクが何か明確に書かれていないのでわかりません。

1)林内植生の根系の発達、侵食防止対策

 急激に強度の間伐を行わず、弱度の間伐を複数回実施し、目標とする立木密度に仕立てる事が重要である(これは対策に相当します)

特に過密な人工林で一度に強度の間伐を行うと、風害等気象災害が発生する可能性がある。また、林内の乾燥が進む可能性もある。(こちらは問題点であり、リスクが書かれていません)

 一方、下層植生を繁茂させようとしても、近年増加しているシカによる食害で、下層植生が消失する事例があるため、間伐等森林整備を実施した範囲を、獣害防止ネットで囲う対策が必要である。

2)針広混交化

 広葉樹は天然更新により導入するが、1)と同様のリスクが有る他、周囲の競合する植生の影響で、発芽した稚樹の生育が遅れたり、枯死する可能性があるため、天然更新がしにくいリスクがある。

■これも問題であってリスクではありません

 この対策は、1)に加え、下刈等保育作業を行うことと、豊作年に地がき等の更新補助作業を行うことが必要と考える。

(4) 対策にかかる必要な要件について

■技術者倫理、社会の持続可能性の観点はそれぞれどこにありますか。

 

 森林管理や鳥獣保護等森林の生態系の知見を有するとともに、間伐等森林整備にも精通している人材の確保、育成が必要である。つまり、スイス等ヨーロッパにおける「フォレスター」の働きをもつ人材の育成が必要と考える。

 また、シカによる森林被害の抜本的な対策は、頭数管理だと考える。そのためには、捕獲事業の強化や、狩猟による頭数管理が必要であるが、野生とは言え、鳥獣を捕獲する事に対する、世論の醸成が進んでいない。今後、ジビエ等で野生鳥獣の食肉が流通すると、世論の醸成が進んでいくものと思われる。

 最後に、皆伐・再造林が進まないのは、木材の使用先が少ないためである。

 今後、新規の住宅着工数は減少すると予想されており、ますます木材使用量が減少していく中で、非住宅分野、中高層住宅分野の木造化や、内外装の木質化を進めることにより、木材使用量の拡大を図る事が最大の要件である。この事により、循環型社会形成が促進されると、期待される。 

論理的にやや無理があるでしょう

 

 


U-1-4    

 林道における排水施設について、その種類を挙げながら説明し、それぞれの目的や設置に当たっての注意点を述べよ。 


解答

1)林道の排水施設は、大きく分けて、@側溝、A横断溝、B溝渠、C地下排水工、Dのり面排水工に分類され、それぞれ次のとおりとなる

@側溝  これだと言葉の意味に近いので、解答としての提案価値が低いです。

路面水やのり面水を集水し、処理する機能を持つもので、林道の縦断方向に設置される。

 下流側は水量が多くなるので、適切な位置で横断方向へ排水することが必要である。

A横断溝

 路面水による路面侵食を防止するために、適切な間隔で設置し、横断方向に排水する。路面水発生を防止するため、設置間隔が長くならないよう注意のこと。

B溝渠

 渓流水等を、林道を横断させて排水するもので、開渠、暗渠、洗い越し工に分類される。

 落葉等で閉塞しないよう、余裕を持った断面とすることに注意のこと。

C地下排水工

 湧水や流入水により、路盤や基礎地盤内に間隙水圧が生じないよう、円滑に排水するもので、湧水等の発生箇所の把握が必要である。

Dのり面排水工

切土及び盛土のり面に発生する流水を、処理するものである。小段の排水については、横断勾配を設けることが必要である。


U−2−1

 東日本大震災に起因する津波によって東北地方などの海岸防災林が大面積にわたり甚大な被害がもたらされたことから、現在その復旧再生への取組がなされている。海岸防災林は、潮害、飛砂、風害の防備等に加え、津波に対する被害軽減の機能も確認されており、これら復旧への取組の知見が今後の全国の海岸防災林の整備に生かされることが期待される。以上のような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)海岸防災林の復旧・再生を図るために,東北地方などの海岸防災林の被害状況や復旧の取組を踏まえて,今後,海岸防災林の復旧・再生を図るために,検討すべき事項について列挙せよ。

(2)(1)の検討事項について,あなたが特に重要と考える技術的課題を1つ以上挙げ,その解決方策を提案せよ。

(3)将来,あなたの提案を津波被害が予想される地域に適用する際,起こりうる問題点と対応策について述べよ。


解答

■このような冗長な前置きでは、消極的な姿勢(文字数かせぎ)と受け取られて点を取れません。逆効果です。

(1)平23311日に発生した東日本大震災により発生した、10mを超える津波により、東北地方における海岸防災林を、根から流出させた。しかし、一部の海岸防災林は、漂流する船舶等を捕捉すると共に、津波の威力を減勢した事例が報告されている。また、樹木につかまる事で、津波の引き波から生還した事例も報告されており、人命を救う働きもあった。 

 東日本大震災から8年経過した現在においても、用地買収や、盛土の造成等が進められている一方、準備が整った地域から植栽が進められており、海岸防災林の再構築が進められている

 この海岸防災林を再造成する中で、検討すべき事項もあり、それを以下に挙げる。


■下記のような一般論の項目ではなく、実際に東北で行われている復旧の取り組みから、問題点を見つけて、そうした障害を乗り越えるための検討事項を挙げよ、と求めているのです。具体的な内容を想定してベストの提案をしてください。

@樹種の選定 

A樹木の根系を地中深くまで伸長させる。 

B防潮堤等と組み合わせた多重防御の中での役割

■樹木の根が深い方が強い、などということは想像しなくても分かります。問題はどうやって深く根を張らせるかにあります。

 

(2) 重要と考える技術的課題について

 私が重要と考える技術的課題は、樹木の根系を地中深くまで伸長させることである。

 先の大震災により発生した津波により、樹木が根から抜けて流出したことは、今後の海岸防災林の造成に、大きな問題であると考える。

 この解決方策は、地下水位を低下させるとともに、盛土により2m程度地盤を嵩上げすることで、マツ類の根系を地中深くまで誘導することである

■これ↑は非常に困難なことです。実現性が低い提案は、エンジニアとしての常識が疑われる場合がありますのでご注意ください。

 

 また、直径生長を促すことで、船舶等漂流物の捕捉機能を高めることも必要である。

 

■(3)は正しい問題の趣旨がイメージできていません。出題者は津波被害地域にこの提案を行った場合に起こりうる問題点、対策を求めています。地域を限定した議論なのです。

一方答案に書かれている答えは、場所とは関係ない一般論です。一般論に発散せずに

 

(3) 起こりうる問題点と対応策について

 海岸防災林を造成する際に、その中心となる樹種は、深根性のアカマツ、クロマツであるが、マツクイムシ対策が必要であるため、抵抗性マツを使用する事が必要である。

 また、広葉樹では、カシワ、タブノキ、コナラが海岸防災林に使用できる事から、マツに混在させることも可能だ。

 海岸防災林の造成では、1ha 当たり1万本程度の植栽本数が必要となる事から、抵抗性マツの供給体制が問題となる。

 このため、広葉樹をある程度の割合で導入する事は、抵抗性マツの供給力の負担を減少させる事が可能となる。

 また、多様な樹種の導入は、多様な生物相を形成することになる事から、海岸防災林においても、森林の有する多面的機能の発揮が期待される。

■クロマツ、広葉樹の議論が冗長です。一方末尾は評論的な議論に発散しています。ここはねらいを明確にして津波被害防止に私有中すべきです。森林科学66号に書きのような参考となる記事が掲載されています。こうした記事から学ぶことが大切です。

深層崩壊


V−1

 近年、地球温暖化に起因すると思われる異常な降雨が各地で見られ、それによる大規模な崩壊などの山地災害が発生している。これらの災害の発生は従来多く発生した比較的小規模な表層崩壊とは異なるものがある。大規模な崩壊については、従来の防災対策と異なった対策も必要となってくることから、対策のリスクも考慮した被害の軽減が求められている。森林土木の技術者として以下の問いについて答えよ。

(1)大規模な崩壊について,近年の降雨の特徴を踏まえてその発生機構の概略を述べるとともに,森林の防災機能,災害の発生形態等の観点から多面的に課題を抽出せよ。

(2)抽出した課題に対する解決策として,機構調査,対策調査,構造物によるハード対策を説明せよ。

(3)異常な気象条件等による新たに生ずるリスクとその対策について,主としてソフト面から述べよ。


解答

(1)-1 発生機構の概略

 温暖化に伴う気候変動により、毎年長時間に渡る極端な集中豪雨が発生している。

 一方、我が国の山岳地帯の地形は急峻で、かつ、火山堆積物、風化花崗岩、断層、破砕帯等風化、浸食にぜい弱な地質が広範囲に分布している。

 近年発生している、長時間に渡る集中豪雨は、森林の根系が影響を及ぼす範囲の土壌を飽和させ、更に深部の地層において、間隙水圧を発生させることにより、深層からの崩壊を引き起こす。

(1)-2 課題

 大規模な崩壊と、流木災害の状況から、課題は以下のとおりとなる。

■対策にすぐ結論付けるのではなく、目的とかねらいを示してください。いきなり方策が3つ出てきても課題になりません。

@林地崩壊の防止

A山脚固定

B流木発生、流下の抑止、抑制

■正解は次のページにあります。こうしたページから学ぶことが合格の道です。

深層崩壊〜その実態と対応〜

増加する深層崩壊、特に危険な8%の地域を調査

木曽川上流域における深層崩壊の発生する恐れのある斜面の抽出検討事例

深層崩壊の発生予測手法と警戒対応の確立

 

(2) 解決策について

■@機構調査、A対策調査、B構造物ハード対策この3つを見出しとして書いてください。

@林地崩壊の防止

 森林内の根系の影響範囲を、可能な限り深部まで拡大するため、間伐を中心とする適切な森林整備により、根系の深部への伸長が必要である。

 また、針広混交林化により、深根性の広葉樹の導入を図ることも有効である。

 しかし、更に深部からの崩壊には、森林の持つ防災機能の限界を超えており、対応が不可能である。

 特に、0次谷等山腹の凹地形においては、雨水が集中しやすく、深層の間隙水圧が発生し、崩壊する可能性がある事から、ボーリング調査等によりすべり面を機構解析し、アンカー工、ロックボルト工、暗渠工、集水ボーリング工等の必要な対策を、予防的に行うことが必要である。

A山脚固定

 大規模な崩壊、地すべり性崩壊は、山腹の最下方から上部に伸びるすべり面に沿って崩壊するため、山腹最下方の山脚に治山ダム工を設置し、その上流部の堆砂により、崩壊に対する抵抗性を増加する。また、必要に応じて流路工、護岸工を設置し、渓岸侵食を防止すること。

B流木発生、流下の抑止、抑制

 山腹崩壊により、発生した流木の流下抑止、抑制と、流下中の洪水、土石流に渓岸の立木が巻き込まれ、新たな流木化を抑止する必要がある。

 流木の捕捉は、流下速度が遅い状況で効率がいいとされているので、可能な限り発生源に近い箇所で、スリットダムを設置することが有効である。

 また、渓岸の立木は事前に伐採しておき、流木化を防止すると共に、周囲の森林は、間伐を中心とする適切な森林整備により、渓岸侵食を防止する。

 

(3) 新たに生ずるリスクとその対策について

 近年の想定を超える集中豪雨により、治山事業の全体計画策定時点では予想されなかった、土砂量や流木量が発生する可能性がある。

 その場合、一部の流木は、下流の市街地に流出し、様々な被害を及ぼすことになる。

 また、スリットダムに堆積している石礫や流木の除去が進まないまま、次期の豪雨に見舞われる可能性もある。このため、ハード対策と並行し、ハザードマップの作成及び説明会の開催や、住民への情報提供、避難所の整備及び、避難所までのルートの整備等のソフト対策も必要である。

■残念ながら↑ここで言うハード対策とは避難ではありません。最初に前提として深層崩壊が宣言されていますので、その予測に関することでしょう

 一方、下流の河川管理者や、砂防部局と連携し、施設の管理状況等の意見交換を行うことや、平素から地元住民に対する啓発活動、情報提供を行うことが必要であるとともに、事前の防災情報の入手には、地元気象台との連携が不可欠である。

 このことから、災害対策、軽減には、各関係機関と地元住民との密なコミュニケーションを、平素から図っておくことが最大の対策である。