R1年 建設部門、鋼構造・コンクリートの答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 見識はお持ちだと思いますが、残念なことに、Ⅰ-1はバランスに課題があるようです。社会の持続可能性とは全員が勉強が必要です。答案末尾に掲載したリンクをご覧ください。Ⅱ-2は減点された可能性があります。手順については具体的に「エレクトロスラグ溶接、ラメラテア」など主要課題を早めに取り上げて実質的な提案すればよかったと思います。

出題者の求めていることが単刀直入に答えられていませんでした。ご自身は「自分の得意分野に無理やり引き込んで回答したが、この切り口でいいのか知りたい。」とのことで、自己流の書き方では限界があるようです。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分38秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き方の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上などにより、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

(1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出して分析せよ。。

(2)(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)(3)を業務として遂行するにあたり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1. 課題

 我が国の人口は平成10年にピークを迎え2065年には9000万人に、また労働者人口も4500万人まで減少することが見込まれている。また建設系の労働者はその3割を55歳以上が占めており、10年後にはその大半が離職することが予想されている。

また若手の理系離れも進んでおり、人材不足が深刻であり、また少子高齢化が進行しているため税収が減少することから国内の事業が縮小することが予想できる。

一方で東南アジア等では、質の高いインフラシステムに対して旺盛な需要があり、日本の高い技術が必要とされている。

 以上の背景を踏まえ以下の3点が課題である。

①人材が不足する中で、建設生産プロセスをいかに効率的に推進するか

②国内需要が低下する中で海外の旺盛なインフラ需要をいかに確実に取り込むか

③上記の2つの課題を解決するため、いかに新技術の開発を推進するか

どうしてここまで2を書かねばならなかったのでしょうか。

2,解決策

 上記の課題の内最も重要な課題は①の建設生産プロセスの効率的な推進である。以下にそれに対する3つの解決策を示す

①i-constructionの推進技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 従来計測機器を人手により実施していた測量にドローンにGPSと3次元レーザースキャナを搭載し3次元データを取得する。

 また、主に国交省の直轄工事で平成28年度から適用しているICT土工を地方公共団体へ水平展開する。

 さらに、ICT土工に加え、舗装工事や浚渫工事へもICT施工の適用範囲を拡大し、さらなる各建設生産プロセスの効率化を推進する。

 設計段階においてもCIMを採用し、3次元設計を推進することで、数量の自動算出や、測量時に取得した架空線等の支障物の3次元データを取り込んだ施工計画を立案することで、橋梁の架設ブロック割りを最適化し、現場での手戻りを回避する。

 また、3D動画の作成や3Dプリンターを活用した模型を作成し地元説明で説得力のあるプレゼンを実施することで、地元との合意形成を迅速化する。

 3Dモデルに4D(時間)や5D(コスト)を組み入れることで施工ステップやコストを見えるかすることが可能となり、事業の推進に大きく寄与する。

 さらに出来形計測時には3Dスキャナでの出来形計測値と設計値を照合することで省力化する。

 測量、設計、施工時に積み上げ属性を持たせた3Dデータは、点検結果や補修履歴も付与し、効率的な維持管理にも活用する。

②二次製品の採用

 コンクリート工では、埋設型枠を採用することで型枠の設置や脱型の工程が省略し、現場作業の負担を軽減する。併せて、部材の形状・寸法の共通化及び標準規格化することで、鉄筋をプレファブ化することで現場での配筋作業を省力化する。

 さらに、フレッシュコンクリートには高流動コンクリートを採用し、締固め工の作業人員の削減を図ることで、作業の効率化を図る。

③は特になくてもよかったでしょう

③労働環境の改善

 受発注者で連携し、受注者と発注者の両方の視点から労働安全マネジメントを徹底する。

 PDCAサイクルを徹底することで、不慣れな作業員でも事故に対するリスクを認識することが可能となり事故による現場作業員の減少を回避し生産性を確保する。

3.リスクと対策

■下記2つは共にリスクと呼べるものではないでしょう

・初期投資

 各建設生産プロセスの省力化で生まれたコストで補完する。

・人材不足

 建設リカレント教育を実施し必要な人材を効率的に育成する。

■下記は2行では技術者倫理、社会持続可能性の観点が見えません。

4.必要な要件

・粘り強い意志と実行力

・PDCAの確実な実施による持続性を確保す

■そもそも問題趣旨の社会持続可能性とはもっと広い概念です。

この下のリンクを見てください。

社会を見据えた持続可能性

持続可能性「Sustainabilityサステナビリティ」とは何

持続可能な社会とは

持続可能性

Ⅱ-1-4    

 鋼構造物の疲労き裂の発生状況を把握するための現地における調査又は試験方法を2つ挙げ、それぞれの概要と適用位あたっての留意点を述べよ。ただし、外観目視調査は除く。

解答

1.磁気探傷試験(MT)

 磁性体に表出又は2~3mm程度の深さにあるき裂があると、そのき裂に直行する方向を磁化した際に漏洩磁束が発生する。

 その漏洩磁束に黒色や蛍光磁粉を流すとき裂に吸着され、き裂が拡大され目視が可能となる。

留意点:磁化する方向がき裂の方向と直行していないと正確な検査ができない。また磁粉を流す方向も同様で直行させる必要がある。

 磁性体ではないアルミニウムやステンレスでは適用できない。また2~3mm以深の内部キズは検知できない。←なぜか

2.超音波探傷試験(UT)

 直進性が強く、境界面やき裂で反射する超音波の性質を活用した試験方法

 探触子から発信した超音波がき裂や境界面から反射する時間を計測し、き裂の位置と寸法を計測する。計測結果は、モニターにエコーとして表示される。

留意点:ブローホールなどの球状の欠陥は正確に計測できない。また、低温割れなどの欠陥は48時間以上経過したのちに試験を行う。

 目視できないき裂を探査するため一定の技量が必要となる。←「一定の技量」とはどの程度か?

■ほとんど完璧に近い内容で、言うことありません。マーカー部分について根拠を挙げておけば、なおよかったでしよう。

Ⅱ−2−2

 鋼構造物の品質や精度を確保する上で、不適合(不良、不具合)を未然に防ぐことが重要である。あなたが、鋼構造物の品質や精度に関わる重大不適合の再発防止策を立案する担当責任者として、業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)技術的に重大と考える不適合の事例を1つ挙げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

1.事例

 鋼製橋脚の隅角部は板が複雑に交差しており溶接の品質確保が難しい。また高度成長期には様々な溶接手法が適用されていたり低品質の材料が使用されている事例がある。

 地震時には隅角部に大きな応力が発生し、たとえ微小な溶接欠陥や割れであったとしてもそれを起点とし延性的に進展し、重大な損傷に発展する可能性がある。

2.調査内容

①発見された損傷が近接目視点検時の場合、磁気探傷試験や超音波探傷試験を組み合わせ、損傷の位置と寸法を確認する 

②事前にしゅん功図書を確認し、板組や溶接方法や材料等の基本条件を調べておく。

③施工計画書や材料ミルシートで施工方法や使用材料の特徴を調べておく。

④現地では、必要に応じて、断面をマクロ試験でき裂の位置が溶接金属内なのかルートギャップからなのかを特定す

3. 業務手順と留意するべき点

 上述の調査をすることを踏まえ、業務手順を示す。

(1)原因調査

 現地の詳細調査及び事前の書類調査を実施する。 

(2)原因推定

■とても惜しいです。これら↓の内容を、「上記2.調査内容」に書くべきでした。

エレクトロスラグ溶接による溶接欠陥 

 大電力で大量の溶接を行うため施工性がいいが、欠陥も発生しやすい。同じ受注者が施工した他の個所についても同様の欠陥が発生している可能性が高いため、点検範囲を拡大する。

ラメラテア

 材料に硫黄分が多く含まれている場合に、溶接で板厚方向に板が引っ張られ割れが生じてしまうことがある。同じ鋼材メーカーで同じ時期に生産された板を使用している類似箇所の点検が必要。

・板組

 隅角部には溶接線が3方向で交差する箇所があり、溶接の品質が確保しにくい。大きなギャップが内部に残ってしまうためそこを起点とした疲労き裂が発生しやすいため、同様の板組箇所を点検する。

(3)対策立案

■残念ながら下記は説明不足です。これでは具体的な対策法がわかりません。

①    同じ施工方法を採用しない

②    対策された材料(耐ラメラテア材)を使用する。

③  設計時に不具合の発生しにくい板組を採用し、受発注者で協議し、設計変更で対応する

4.関係者との調整方策

下記の内容は、この業務でなくとも、いつでも、何でも当てはまることです。いわば心構えみたいなことで、申し訳ありませんが、技術的内容と言えません。ここは具体的に(2)と(3)で書いたことに対して、どう巧みに進めるかという視点で、プロマネとしての取りまとめの業務を表現してください。

 受発注者間で役割分担を明確に分担するよう指示し、

PDCAのサイクルをしっかり回し、確実に業務を推進する。必要であれば産学から有識者を招きアドバイスをいただき、正しいアウトプットを導く。

Ⅲ−2

 鋼構造物には通常の供用時における外力や環境条件などによる経年劣化に加え、豪雨、地震、火山噴火などの自然現象や車両・船舶の衝突などの人的加護によっても損傷が発生しうる。構造安全性を損なう劣化・損傷を受けた場合、速やかに適切な補修・補強策や再発防止策を立案する必要がある。その立案を担当する技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)構造安全性を損なう劣化・損傷を1つ想定し、その発生状況を概説したのち多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。ただし、疲労亀裂は除くものとする。

(2)(1)で抽出した課題のうち、鋼構造物で最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

どうして↓このような冗長な前置きを書かれたのかわかりません。全く不要です。昔の技術士答案の作戦であり、今は通用しません。

.背景 

 わが国では平成30年7月に集中豪雨、9月に台風21号、さらに北海胆振東部地震が発生し各地に甚大な被害を及ぼした。

 また今後30年以内に南海トラフ地震が7割から8割の確率で発生することが予想されており、近年は激甚化した自然災害が頻発化かつ局地化している状況となってい

2.想定する損傷

 規模の大きい地震が発生し、鋼道路橋の支承が損傷し、路面に30cmの段差が生じている。

 下部工は橋脚耐震補強が実施されており上部工と下部工にはおおきな損傷は発生していない。

 一方で、支承は平成8年以前の設計基準で設計されており、水平震度Khは0.25、鉛直荷重Vは0.1Rd

で設計されていた。

 そのため、アンカーボルトの引き抜け、サイドブロックの破断及び上沓と下沓が外れ、その結果、路面上に30cmの段差が生じた。

3.課題

 以上の損傷の発生状況を踏まえ、以下の3つの課題を抽出する

補修・補強策や再発防止策を立案するのですから、残念ながらこれらは答えになりません。

①災害復旧を早急に推進するため、緊急車両を通過できるよう、いかに応急復旧を迅速に実施するか

②被災地域に物資を運び入れ、早期の復興を実現するため、一般車両を通過できるよう、いかに応急復旧を実施するか

③今後発生すると想定される大地震が発生しても既設の構造物が想定した損傷で収まるよう耐震性の向上をいかに迅速で確実に実施するか

4.解決策

 鋼構造物で最も重要な課題は③の迅速で確実な耐震性向上の実施であり、以下に3つの解決策を示す

(1)耐震補強

2の想定する損傷とは無関係の話です。対策として一貫性がありません。

 想定される地震力に応じた断面耐力となるよう各部材を補強する。橋脚の基部のように弾性応答で抑えることが困難な部材には塑性応答を許容し、設計上は水平震度をその応答塑性率に応じて低減する。Khc=Kh÷√(2μ―1)、ここでμ=塑性率

(2)制震による耐震性向上

 粘性ダンパー等により、構造物固有の減衰率に加え減衰効果のある装置を追加し地震時の応答を低減する手法。

 速度に依存する粘性オイルダンパー、水平力に依存する摩擦ダンパーや変形量に依存するせん断パネルダンパー等種々のタイプのダンパーが存在しており、目的に応じた選定が必要である。

 詳細な影響を評価するためには動的効果をモデル化し動的解析に組み入れる必要がある。

③免振による耐震性向上

 例えば上部工と下部工の間にゴム支承を挟み応答を切りはなし、構造物全体を長周期化することで、地震応答を低減する手法。

 ゴム支承の中に鉛プラグを埋めこんだり、高減衰ゴムを適用することで制震と組み合わせ、さらなる応答低減を図ることが多い。

 地震力を低減できる一方で、長周期化することで変位量が増大するため伸縮装置や支承のサイドブロックの許容変位量の設定に留意が必要。

 また制震と同様にその効果を正確に評価するためには動的解析が必要。

5.リスクと対策

コストや工期は工事の前提みたいなものであり、意味のあるリスク分析になりません。

想定されるリスクと対策は以下の通りである。

・相応のコストが必要。ただし、道路啓開路線上の橋梁等重要な橋を選択し、緊急三か年対応とするなどして集中的に事業を推進することでコストを最適化できる。

・相応の工事期間が必要。ただし、その進捗率を見える化、見せる化を徹底し、適切な進捗管理を実施する。

残念ながらリスクが書かれていません。リスクとは頻度が小さくて経済損失の大きい出来事です。

ハード対策だけでは不十分。住民目線でのソフト対策を推進する。例えば橋梁上で被災した場合の避難方法や緊急車両への配慮等についての広報を徹底し、防災意識の啓発活動を実施する。

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