R1年 環境部門、環境測定の答案について添削致しました。
この答案についての講評
全体的な書き方の注意として、前置きが長いようです。現在は単刀直入に書くことが求められています。本質的なの提案は遅いようです。しかも、提案内容は従来技術そのものであって、新たな技術提案ではありません。また、末尾のリスクはわずか3行しかなく、バランスが悪かったようです。大変惜しいことをされたと思っています。
見識は備わっていますので、あとは書き方だけです。最新の答案作成の基本をご理解されていないように見受けられます。これは惜しいです。何か良いコメントを書かねば・・、と考えて作成されていませんか。しかし、試験官が求めているのは、純粋に問いの答えとしての提案です。それがないと、最悪の場合ほとんど点をもらえない危険性があります。
答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。
本講座の答案練習をされれば、本来の論文としての説明の仕方を習得していただけると思います。そうすれば楽勝で合格できるでしょう。技術士は勉強すれば必ず合格します。1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。もしよろしければお力になりたいと考えております。音声ガイドコーチングを用いた指導では、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。
音声ガイドによるコーチング指導内容(13分51秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題
I −1 環境課題への取組がイノベーションを誘発する過去の好例がある。例えば,自動車排ガス対策として三元触媒を利用するために導入されたエンジンの燃焼電子コントロール技術を燃費向上等のより広範な制御に用いることにより,我が国の自動車の燃費が飛躍的に向上した事例など,環境保全が進んだ事例がある。このような取組を契機として我が国のイノベーションを活発化するという観点から,持続可能な社会・経済システムへの転換に必要となる従来の枠を超えたイノベーションの社会実装について問うものである。
(1)持続可能な社会への転換のためにイノベーションが必要となる複数の課題を技術者としての立場で抽出し,多面的な観点から分析せよ。
(2)そのうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その解決策を複数示せ。
(3)その上で,解決策に新たに生じ得るリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。
解答
(1)持続可能な社会への転換のためにイノベーションが必要となる課題について
国連総会で全会一致で採択されたSDGsではゴール12の“持続可能な生産・消費”の関係で説明をする.例えば以下のような課題が考えられる.それぞれについての多面的な観点での分析を含めて以下に列挙する.
下記のは、問題点の記述に終始しています。簡潔にまとめて早めに課題の説明に入った方が前向きでよいでしょう。
1.太陽電池システムの生産に必要不可欠な限られた資源であるレアメタルを代替する金属元素の使用
(ア)持続可能な社会への転換のための再生可能エネルギーに関すること
(イ)枯渇することが懸念される資源であるレアメタルに関すること
これらの(ア)と(イ)については,相反する問題となっており,光変換効率に優れた無機金属材料を開発するイノベーションが必要となっている.
2.食糧生産に必須の元素である植物三大栄養素であるリンの回収のための植物プランクトンの探索
前提や状況は整理はされますが、しかしそのことをあえてここで整理しなくてもよいのでは。それより単刀直入に課題を述べた方がよいでしょう。
(ア)肥料の主成分となっているリン鉱石の枯渇が懸念されること
(イ)農業用地から流出し下流の水環境を汚染し,ひいては赤潮発生の原因となっていること
期待したいイノベーションとしてはリンの高効率回収を可能にする植物プランクトンの作出である.流出したリンを効率よく吸収する植物プランクトンをファイトレメディエーション技術を駆使しして増殖させ,回収したものを再び農地に還元することで,リン資源のリサイクルを図るものである.
3.温室効果ガス排出量が大きい石炭火力発電における微粉炭燃焼ボイラーの燃焼効率の向上
(ア)単位熱量あたりに排出する二酸化炭素量が大きくなる石炭の高効率化
(イ)石炭は埋蔵資源量の豊富な化石燃料であること
確かにこのような技術が開発できれば素晴らしいですがしかし、
・・・・それ自体が大変なことなのでは。無理難題を提案しても実現性が伴わなければ逆効果です。
必要なイノベーションとして流動層燃焼技術のさらなる進化があげられる.これによって石油や天然ガス並みに効率の良い燃焼状態が確保できれば,埋蔵資源量の大きさがむしろ環境保全に有利に働くようになる.
(2)石炭火力発電に関わる諸問題と解決策について
2019年12月にフランスで開催されたCOP25では,小泉環境大臣から日本のエネルギー政策としては原子力発電を積極的に使用しない代わりに石炭火力発電を使用していくエネルギーミックスについて発表があった.これにより日本は環境にとってよくない行動を取る国に与えられる賞である“化石賞”を国際NGOの団体から与えられた.しかし石炭は本当に環境に悪いのであろうか?石炭は固体であるため,流体である石油や天然ガスに比べて燃焼効率が悪いのは確かであり,燃焼によって得られる発電効率から排出される二酸化炭素量は化石燃料の中では最も悪いのであるが,熱力学的に考えればどの化石燃料を用いたところで,C+O2→CO2という酸化反応で得られる燃焼熱は同じである.従って,固体である石炭を流体のように扱うためのイノベーションによって,解決されていく.そのためには次の二つのイノベーションが求められる.
下記は既に実現されている在来技術にすぎません。
(ア)石炭を均質に粉砕し微粉炭に調製することで比表面積を高め,燃焼効率を向上させるとともに,流動化を容易にするイノベーション
こちら↓は成熟した在来技術です。
(イ)循環型流動層ボイラーの圧力損失の低減と燃焼の高効率化
ア、イ共に間違いではありませんが、ただこれらをするだけでは解決になりません。
一歩進んだ解決策が求められています。
(3)解決策に生じうる新たなリスクとそれへの対策
石炭の燃焼効率の向上は,石炭の粉塵爆発のリスクが増加することを意味する.静電気対策が重要になる.
新たに生じるリスクではなく、これは古来からあるリスクのようです。
(4)以上の業務遂行に必要な要件を技術者倫理,社会の持続可能性の観点で述べよ.
(2)で述べたような「石炭=悪」というような,短絡的なイメージはえてして声の大きなNGO組織に踊らされたマスコミを通じて広まった噂レベルの話に過ぎないことが多い.技術者として科学的に確かなことを説明しつつ,石炭火力発電に関するイノベーションの活発化によって,化石燃料の枯渇という観点からも持続可能な社会の構築に向けた努力と払っていく必要がある. ↑これをどうやって遂行するかが見えません
確実にいえることはこの5年間で日本は温室効果ガスの削減量を削減できたことであり,多くの削減義務のある先進国で達成できなかった目標を日本は達成したということである.このことは堂々と胸を張って国際社会に主張して然るべきである.
意気込みはわかりますが、このような見解、評論を求めているわけではありません。