R1年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。

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この答案についての講評

 この答案はとても残念なことに、Ⅰ-1は問題文の趣旨に対して、解答が述べられていないようでした。このため厳しい評価となっていたようです。生産性のテーマに対して、働き方改革とか、問題文とのダブリとも読み取れる内容であり、実質的な提案すればよかったと思います。この原因として、予想して用意した答案を書きだした結果となっていて、答案が今年の問題趣旨に適合していなかったようです。Ⅱ-1は合格点です。Ⅱ-2は後半部分でやや意味が通じないみたいです。Ⅲ-2は本質的なことについての答えが少なかったようです。都市構造の変革を提案できれば、専門家らしい内容となって楽勝で合格できたかと思います。

 答案の良いところ、悪いところ、それから得点する上での注意は音声でご説明いたしますのでお聞き願います。

 技術士試験の難しさは、何を求められているかわからないところにあります。一方、このような試験に対して、技術経営、マーケット志向の視点から考えると間違いがありません。音声ガイドコーチングでは、予想問題練習で問題への対処法をご説明しますので必ず合格できます。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分52秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  

I −1 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上等により、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっている事を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)       建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)       (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       (2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)       (1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

解答

1.背景 

        下線はなくても構いません。内容が勝負です。

 昨今、少子高齢化に伴い人口減少が進むことによって、現役世代の働き手が減少し必要な労働力が確保出来なくなってきている。総務省によれば、生産年齢人口は2003年の7900万人に対し、2060年では4480万人に減少する。それに追随し、税収の減少や生産性の低下は免れない。加えて社会資本の老朽化が進み、自然災害の脅威も高まっている。

特に背景は求められていません。単刀直入に課題を述べましょう。

2. 生産性向上に関する課題

(1)建設技術者の魅力の向上

 労働者数の減少に伴い、長時間労働等の労働環境も悪化してきている。さらに、工事現場では、衣食住関連、エネルギー、情報などに至って多種多様化してきている。

 このような環境下に技術者にとって働き方改革に配慮した魅力ある労働環境を整備し向上させることが求められている。

ニーズの変化だからどうして「働き方改革に配慮して魅力ある労働環境整備」なのか論理が理解できません。生産性はどこへ行きましたか?

(2)建設事業の価値の向上

 我が国の近未来像として、交通インフラの進展やICTの進歩とともに、交通・物流・建設などにおいて自動化・機械化へと発展している。人々は災害リスクと相まって暮らし方も変化しつつある。

 このような背景下で、社会経済の安定に向けて技術革新や新技術開発のみにとらわれず新たな価値を生み出す建設イノベーションとしての取り組みが迫られている。災害リスクだからどうして・・新たな価値なのか。理解できません。こちらも生産性は?

(3)建設事業の経済効果の向上

 少子高齢化に伴う経済性の減少を、人口減少の影響を上回る生産性向上に進む方策が迫られている。

これは問題趣旨とダブリ。この解決に至る課題が求められています

3.重要と考える課題とその解決策

今年の問題を予測し誤ったようです。「働き方改革の答案」を用意していたのに「生産性」では書けません。このような暗記式の論文では正解できません。

無理をして書かれた結果、途中で採点が中止されて厳しい評価になったのではないかと思われます。

我が国の社会資本を担う、働き手の減少と相まって働き方改革の2面性に鑑み、生産性向上に最も重要と考える課題は、建設技術者の魅力を高めることである。

 なぜなら、建設技術者の減少は、担い手不足という深刻な問題を背景に災害対策・インフラ整備・メンテナンスなどを支えることが危惧されるからである。その課題への解決策を次に掲げる。

①    長時間労働の是正

②    発注者による適正な工期設定の推進

③    生産性向上(i-コンストラクション)

④    ダイバーシティ(多様な人材活用)

4.新たに生じうるリスクと対応

 上記で掲示した解決策により、新たに生じうるリスクとしては、担い手不足による多様な人材を活用するあまり、次のリスクが懸念される。

①    外国人労働者問題

②    技能者の技術伝承

③    高齢者雇用問題

④    正規非正規雇用問題

能力ある人材の不足が様々なリスクを生んでいる一方で、それらの対策として建設イノベーションの取り組みがあげられる。多様な人材の取り組みと活躍する場をもって新たな価値の創生がなされる。具体的には次のとおり。

①    オープン・イノベーション(新技術開発に関して産学官連携や異業種交流等を図ること)

②    I-コンストラクション(生産性向上)

③    建設キャリアアップシステム(技能者の技能や経験を評価し処遇改善すること)

5.業務遂行に必要とみる要件

 生産年齢人口の減少に伴う日本経済の波及は甚大なものといえる。担い手問題に伴う働き方改革は、最も重要なキーである。同様に、イノベーションや生産性向上も三位一体になってこそ日本経済が持続的な確実性が高まる。

 さらにこれらの遂行は、次世代への社会経済の安定に寄与でき、技術者倫理を踏まえた中で観光・ビジネス展開等の情報の強化により異業種とのイノベーションにつながる。

Ⅱ-1-4  

都市における公園緑地の多面的な機能を4つに区分して説明せよ。

解答

1.都市の憩いとしての機能

 都市における公園緑地は、都市住民の心の安らぎ、潤いのある憩いの空間としての機能がある。共働きによる家族間のコミュニケーションの場として、さらには子育て支援としての役割がある。

2.CO2削減としての機能

 都市における公園緑地は、緑の保全と緑化の推進が図られ、このことでCO2削減としての機能がある。

 高木を大きく育てたり、間伐や草刈りなどを行うことで、環境に優しい都市づくりにつながる役割がある。

3.子どもの情緒を育む機能

都市における公園緑地は、公園内の遊具により子どもの情緒を育成する機能がある。

ダブリはなくすように。また子育てだけではありません。

 遊具による遊びを通じて、コミュニケーション能力やルールを身につける役割がある。

4.防災活動拠点としての機能

 都市における気軽に立ち寄れることから、災害時の集合場所や避難場所としての防災活動拠点としての機能がある。

 さらに、炊き出しや防災資機材の保管など、救急・救助活動の拠点としての役割がある。

この下のリンクを見てください。答えがあります。

都市公園の役割

都市公園の9つのストック効果 6ページ

(講座の指導ではこのようにしてヒントをご紹介しております)

Ⅱ−2−1

 防災・減災対策と並行して、事前に被災後の復興まちづくりを考えながら準備しておく復興事前準備の取組を進めておくことが重要となっている。このため平時から災害が発生した際のことを想定し、ソフト的対策を含む防災・減災対策と並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておくことが必要である。大規模地震による被災の懸念のある地方公共団体において、復興事前準備の取組を行うことになり、あなたがこの業務の担当責任者として進めることになった。下記の内容について記述せよ。

(1)     調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)     業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)     業務を効果的、効率的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

解答

1.調査・検討すべき事項とその内容

(1)大規模地震の対策

 大規模地震発生時、建物倒壊や道路閉塞、火災等が発生する。このため、避難対策と延焼防止策の調査・検討を行う。

 その内容としては、広域避難路や延焼遮断環境軸となる都市計画道路の整備、その沿道家屋の不燃化、耐震化の調査・検討を行う。

(2)津波災害の対策

 東日本大震災の津波発生時、堤防が決壊するなどハード整備の質的限界が明らかになった。このため、ハードソフトベストミックスの調査・検討が求められる。

 その内容としては、ハードは粘り強く壊れにくい構造とし、ソフトは、自助・共助・公助による避難対策等の充実について調査・検討する。

間違いではありませんが、出題趣旨の「ソフト的対策を含む防災・減災対策と並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておく」は読み取られましたか。

2.業務を進める手順

(1)地域特性の把握

 大規模地震に対して、建物密度、老朽度合い、道路幅員、公共空地等の調査・整理を行う。津波発生に対して、浸水シミュレーションによる浸水エリアの把握を行う。

 取り組みに当たっては、過去に発生した災害時の状況把握の際、地元の聞き取りや意見交換を行うことに留意する。

(2)基本的な方針の策定

 都市の総合計画や都市計画マスタープランに位置づけられた都市の関連計画と整合を図っていく。

 取り組みに当たっては、現状把握や住民の意向を踏まえた都市の将来性を掲げ、将来像を実現するための数値目標を設定することに留意する。

申し訳ありませんが、これはどこでも普通にやっている一般論で、この答案の答えではありません。

(3)具体的施策の立案

 多様な主体との協働体制の構築や施策の重点化を図るため、数値目標を達成するための具体的施策を立案する。

 取り組みに当たっては、高齢者や女子・子ども等の災害弱者とのコミュニティを図りながら実現性を高めていくことに留意する。

やはり一般論のようです。

(4)計画・事業の評価 

 事業実施による数値目標の達成度を評価・公表する。 

 取り組みに当たっては、住民・企業者の意見を踏まえ、翌年度に反映させることに留意する。

残念ながらこちらは答えに相当しません。

3.関係者との調整方策

残念ながらここは問題の意味が違います。業務を効果的、効率的に進めるための関係者との調整方策、すなわち上記2の(1)〜(3)について効果的、効率的に進めるための方策です。新たに住民対応することではありません。

 地域住民の意識啓発を図るため、住宅や職場の災害リスクや最寄りの避難場所の情報の共有化を図る。

 具体的には、住民への出前講座や街歩きによる発見などを行い、興味や関心の高まりにつなげていく。

 さらに、避難においては、自主防災組織を立ち上げ、災害弱者を誰が助けるかなど共助を強化する。

Ⅲ−2

  鉄軌道を含む公共交通の分担率が一定程度ある地方の都市圏において、都市圏全体を俯瞰する視点から、人口減少・少子高齢化を踏まえた都市の持続可能的経営を目的として都市構造の再編を進めることになった。あなたがその計画策定を担当責任者として進めるに当たり、以下の問いに答えよ。 なお、都市構造の再編を進めるに当たっては、公共交通が都市の形成に影響を及ぼすことを着目し、公共交通の利用を前提とするものとする。

(1)都市計画の技術者としての立場で多面的な観点から計画策定に係る課題を抽出し、その課題を分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つあげ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

解答

1.計画策定に係る課題

(1)人口減少の視点に立った都市の活性化

 当該地方都市では、公共交通の分担率が一定程度あるが、モータリゼーションの進展によって、大型商業施設や高度医療施設が郊外に配置され、市街地が拡散している。併せて、人々は利便性が良く比較的安価な郊外に居住している。

よって計画策定に係る課題は、このまま拡散型都市構造が続くと人口減少も相まって、財政面や人材面から都市を維持できない恐れがある。(前置き部分)

従って、持続的経営にあたって、都市のコンパクト化を図り、居住誘導区域や都市機能誘導区域に人々を誘導し、都市の活力を高めることである。(課題)

(2)高齢者の視点に立った交通弱者の救済

 都市全体が広く低密度化しており、公共交通網により都市全体をカバーすることができず、自家用車による移動が主体となっている。その結果、公共交通機関の利用率は更に低下し悪循環になっている。

よって計画策定に係る課題は、高齢化の進行が早い地方都市において自家用車の運転に不安を感じ運転できなくなる交通弱者が増加する恐れがある。(前置き部分)

従って、都市の持続的経営にあたって、公共交通機関の利用促進を図り交通弱者を解消することである。(課題)

 課題の内容に比べて、前置き部分の文字数が多くなっています。前提条件や問題点の説明は簡潔にして、技術士としての提案に相当する課題をしっかり述べるようにしてください。

ここは「多面的な観点から」課題を抽出・・分析し、さらに(2)では「最も重要と考える課題を」解くのですからせめて3項目くらいほしいところです。

2.最も重要と考える課題と解決策

 鉄軌道を含む公共交通を気軽に利用できる環境の創設や公共交通ネットワークを目指すことは、交通弱者のストレス軽減につながり最も重要な課題と考える。

 その解決策としては、鉄道とバスのアクセスや複数路線が運行している公共交通機関にハブとなる交通結節点を設け、利用者の利便性や速達性が確保されるよう、運行表や乗降場所を改善する。

 併せて、待合スペースを整備し休憩できる空間を確保するとともに、ユニバーサルデザインの考えに基づいた安心して移動できる空間の創設を図る。

 さらに、PPP/PFIの民間の導入を図るなど民間事業と整合を図りながら、駅には核となる商業と共同住宅の複合施設を誘導し、歩いて暮らせるまちづくりの実現を図っていく。

交通施設の改善だけでは都市構造の再編としては不十分です。また項目を羅列するのではなく、明確な見出し、段落として表してプレゼンすることです。コミュニケーション能力が求められています。

3.新たに生じうるリスクとその対応

(1)公共交通空白地域の対応

 公共交通の利用が少ない路線については、費用対効果が懸念される。

なぜなら、鉄道・バス等の運行を維持していくためには、一定人数以上の利用客を確保することが必要であり、地域の人口減によって採算が合わない空白地域が増加する恐れがあるからである。

 それへの対応としては、従来型の鉄道やバスに変わってコンパクトな公共交通網やデマンド交通の導入を図るとともに、利用動向についての現況調査を行い、運行表や停留所を確定する。

これらの調査は、定期的に継続し、利用動向の変化に合わせて、臨機応変に公共交通ネットワークの見直しを行う。

(2)利害関係者との合意形成

このことは、リスクというよりは、いつでも予想される問題点にすぎません。当面の問題は解決されるとして、技術士でなければ予測しえない重大な問題を推論することを求めています。

 利害関係者との合意形成が長期化する恐れがあることである。

なぜなら、都市機能誘導区域及び居住誘導区域の都市市街地では、多くの関係者がおり、土地利用の意思や整備手法も多様だと考えられるからである。

 それへの対応としては、都市基盤施設や公共公益施設を集積することで土地の利用度が向上する意義や必要性を共有しながら投資効率の高いまちづくりを推進する。

こうしたことは、計画の初期段階から住民説明会やワークショップを行い、意見・要望を把握し、都市将来像の実効性を確保しながら計画の策定を行う。

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