№2 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/07/31

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この答案についての講評

試験結果は、必須科目がB、選択科目がA,Aと評価され、残念ながら不合格となっています専門的知識はお持ちだと思いますが、出題者の要求に対してダイレクトに答える練習が不足しているように拝見いたします。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 これまで2回受験されたとのことですが、応用力を高める練習はされたてこられたでしょうか。文章の直しだけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。技術士問題は、ヒントがなく、出題趣旨が難解です。出題者の意図が解釈できないと実力を発揮できません。

本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分35秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題 

Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害の対策についての課題

(1)既存インフラの適切なメンテナンス

我が国の橋梁、河川施設等のインフラは老朽化により保有性能が低下している。これにより耐災害性が低下している。先日の静岡県東部の豪雨でも沼津市の県道に架かる橋が洪水により沈下した。

よって、ストック効果により事前防災を図る観点から、既存インフラを適切にメンテナンスすることが課題である。

■「老朽化すると性能低下するから、低下しないように効果により事前防災を図る観点から正しくメンテする・・」これでは問題の趣旨そのものです。または、基本、心構えです。それができないから、この問いが出題されたのです。そうした問題を越えてどう改善するか具体的方針を示すように。

かし、市町村では、技術者、予算不足でメンテナンスサイクルを構築できていない。 

■後付けで問題を付加すると、本題がぼやけてしまうノイズとなります

(2)復旧活動の高度化による災害レジリエンスの確保

平成30年7月豪雨では、土砂災害による道路の通行止めが生じ、救護活動、復旧活動に支障をきたした。これは、被災状況の把握を職員によるパトロールや復旧計画を2次元図面で行っているからである。

よって、災害レジリエンスを確保する観点から、復旧活動を高度化することが課題である。しかし、迅速に状況把握できるドローン、3次元モデルの活用が進んでいない。

■復旧活動の高度化なのか、災害レジリエンスか、あるいは2D・3Dなのか方針がはっきりしません。問題文の「観点を明記したうえで、課題の内容を・・」ですから焦点を明確に言うように

(3)流域関係者の一体となった治水対策

令和元年東日本台風で計画断面を確保していた千曲川の堤防が決壊した。河川区域内のハード整備だけでは洪水を防ぐのは限界がある。

よって、個別の防災インフラ整備では対応できない観点から、流域関係者が一体となった治水対策を進めることが課題である。しかし、分野横断的な治水対策が進んでいない。

■自治体の方針に関する問題ではないのです。組織管理では△です

2.重要な課題と解決策

■理由は求められていません。

(1)重要な課題とその理由

 私は、課題(3)「流域関係者の一体となった治水対策」が最も重要な課題と考える。

 その理由は、課題(1)、(2)に比べ解決した場合の防災、減災効果が大きいと考えるからである。これまでの点や線の防災対策に比べ、面的な対策であるため、対策の効果が大きい。

(2)解決方針と具体策(3つ)

 課題(3)の解決方針は、河川区域、集水域、氾濫域を一つの流域と捉え、関係者が協力し流域治水を進め、多重防御することである。

 具体策①:河川上流ダムを有効活用する。例えば、提体のかさ上げや事前放流を行い、洪水調節容量を増やし、洪水流量のピーク時間を遅らせ、避難時間を確保する。

具体策②:河川区域では堤防を粘り強い構造に補強して決壊時間を遅らせる。また、霞堤、田んぼダムを整備し、洪水や内水を引き込む。

 具体策③:氾濫域や土砂災害警戒区域などの災害リスクの高い土地の利用を制限し、被害対象を少なくする。これらの場所を居住誘導区域から除外する。

 これらを効率的に行うために、国土交通データプラットフォームのデジタルツインを活用する。集約した地形、気象、人流データを基に災害をシミュレーションし、ピンポイントで堤防補強などを行う。また、避難場所が遠く、避難が困難なエリアは洪水避難タワーを建設する。

3.解決策に共通して生じうるリスクとその対策

 解決策は、部分的に被災リスクを受容するため、適切な避難行動を取らない場合、命を落すリスクがある。特に、高齢者等の災害弱者に配慮する必要がある。

■避難行動のまずさに由来するリスクであって、2の提案内容が原因ではありません。

 その対策として、高精度の避難情報の発信と公助を提案する。災害リスクラインの情報や6時間先の水位予測を発信する。また、これらの情報を周辺住民が災害弱者へ電話で伝える。併せて、地域の防災訓練でマイタイムラインを作成し、5段階の警戒レベルに応じた行動を決めておく。

4.業務遂行に必要となる要件

 流域治水では一部の住民、企業に不利益が生じることがある。例えば、事前放流すれば発電用の利水が減少することや土地の利用規制をしたら土地の価値が下がる可能性がある。公衆の安全を優先し、これらのリスクを隠ぺいせず、説明し理解を得るように努める。

■  ここの内容はよろしいようです。得点できています。

 治水対策としてハード整備を行う場合は、地球環境の保全の観点から、積極的にグリーンインフラを導入する。例えば、貯水機能のある公園や湿地帯を整備し、生物の生育場所を創出するように努める。

Ⅱ-1-3 技術の進歩に伴い、構造材料の高強度化が普及しつつある。鉄筋又はコンクリートいずれかの高強度材料について特徴的な性質を説明し、設計や施工における留意点について述べよ。

 高強度コンクリート(60N/mm2)について述べる。

1.特徴的な性質

フレッシュ時は、流動性、粘性が高く、水和熱が大きい。粉体量が多くなるため、水和熱が大きくなる。また、粘性が高いため、圧送負荷、練り混ぜ時の負荷が大きい。

硬化時は、緻密であるため劣化因子(水、酸素等)が浸入しづらく、耐久性が高い。一方で、空隙が少ないため、火災を受けた場合、爆裂の影響を受けやすい。

高強度であるため、PC部材に使用した場合、高いプレストレスをかけることができ、薄肉化、長スパン化することができる。これにより、基礎の負荷を軽減できる。 

2.設計・施工時の留意点

計時は、弾性変形以降に脆性的な破壊形態となることに留意する。 

■このような特性があるなら1で触れておくように。留意するとは具体的に何をどうしますか。その独創的な工夫がコンピテンシーとなります。

高強度であるため、弾性域内で保持できる応力は大きいが、応力超過後の破壊は脆性的である。その対策として、塑性化によるエネルギー吸収を期待する部材に使用する場合は、鋼繊維などの短繊維を混合(2%程度)し、曲げタフネスを向上させる。

施工時は、水セメント比が小さく、水和が活性化され、ブリージングが少ないため、プラスチック乾燥ひび割れと自己収縮ひび割れに留意する。この対策として、湿潤養生を十分行うとともに膨張材を添加しひび割れを防ぐ。

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1. 対象とする既設構造物:緊急輸送路に架かる河口付近の河川を跨ぐ2径間橋梁の単柱式RC橋脚の耐震補強。(上部工は補強対象外)

 老朽化の状況:下部工、上部工ともに0.3mm程度のひび割れが部分的に生じている。一部、鉄筋が露出。

 ■「鉄筋の露出」と上↑にあるのに、下記ではその対処がかかれていません。一応書かれた方がよいでしょう。

1.調査、検討すべき事項

(1)机上調査、現地調査

■基礎的調査、初期のスクリーニング調査は特別ねらいが見えないので挙げる必要はありません。老朽化したRC橋脚の耐震補強では何が支配因子なのか。近年の基準改正のチェックポイントは何か、が問われています。

設計に当たり諸元を把握するため、使用材料の種類、強度、配筋、構造(寸法、基礎形式)、地盤条件等を確認する。現地調査では、竣工図との差異、損傷状態(位置、寸法等)、重機、資材の搬入路等を調査する。併せて、損傷原因を定量的に把握するため、物理試験(塩化物イオン量、中性化深さ)をう。

(2)目標とする性能、性能評価方法の検討

 要求性能を、残供用年数、防災上の重要度等を踏まえ決定する。緊急輸送路の橋であるため、レベル2地震動に対し、限界状態2を確保する。耐震診断手法を、固有振動モード、支承条件、塑性化を考慮する部材等を踏まえ決定する。

(3)補強工法の検討(老朽化対策含む)

 要求性能を満足する補強工法を、ライフサイクルコスト、施工性、河川の制約条件(通水流量、河積阻害等)を踏まえ決定する。ひび割れ等に対しては、劣化因子(塩分)の除去工法、補修工法を検討する。

2.業務を進める手順

手順(1)補強設計

■このような↑形式的な手順の見出しではなく、本質的な設計趣旨、すなわちせん断→曲げ破壊型に修正することを示すようにしてください。このほかクラック対策も示す必要あります。

既設橋脚の耐震性能を評価し、要求性能を満足する補強構造を決定する。損傷に対し補修工法(断面修復工等)を設計する。補強時の留意点は、破壊形態を曲げ破壊型とすることである。工夫として、靭性補強を優先し、塑性化によるエネルギー吸収を考慮し、補強費用を抑える。

手順(2)施工計画

 上部工補修のための吊足場、橋脚補強のための仮締め切り工等の仮設工を計画し、工程計画を立案する。留意点は、河川内工事は非出水期しかできないことである。工期を短縮する工夫として、補強鉄筋(RC巻立て工)の継手を機械式とする。

■大事なことですが、これは施工計画の領域なので、簡潔に済ませるように。

手順(3)補強工事

 所要の出来形、品質を管理の上、補強工事を行う。留意点は、補強鉄筋と既設鉄筋との干渉による工事の手戻りである。工夫として、竣工図との差異を事前調査(RCレーダー)で十分把握する。

■一般的な工事管理の事項です。前提とした橋梁基礎の技術的提案はありませんか。

3.関係者との調整方策

 設計、工事の手戻りを防止するために設計初期段階で河川協議を行い、設計の制約条件(施工可能時期、通水断面等)となる事項を確認し、設計へ反映する。

■この↑関係者とはだれなのですか。これは設計作業の留意点ではありませんか?

 老朽化対策として、再劣化防止策(表面被覆工等)を行う場合、その必要性を発注者に説明し、理解を得る。劣化曲線図などの視覚的な資料を使い説明する。

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.予防保全型メンテナンスの推進に当たっての課題

(1)点検・状態把握の高度化

点検は現地での近接目視による状態把握が基本である。しかし、この手法はコスト、人的資本が多くかかる。市町村は、点検費用が高く予防保全型管理のための修繕費を確保できていない。

よって、点検を効率化する観点から、状態把握の手法を高度化することが課題である。しかし、ドローン等で効率的に状態を把握する技術が普及していない。

■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

(2)維持管理記録の高度化

点検調書は現場で作成する損傷図、写真を基に手作業で作成しており時間がかかる。また、修繕工事は2次元の図面で行っており、理解に時間がかかるとともに、間違いが生じやすい。

よって、調書作成や修繕工事の理解に要する時間を削減する観点から、維持管理記録を高度化することが課題である。しかし、自動点検調書作成システムや3次元モデルの導入が進んでいない。

(3)診断の高度化

健全度評価、補修時期の診断等は技術者が技術的知見に基づき定性的に行っているため、バラツキが生じやすい。なお、今後、高齢化で大量の熟練技術者が退職するため、属人的な診断では限界がある。

よって、判断を効率化するため、診断を高度化することが課題である。しかし、診断技術の開発に資する点検、修繕記録などのビッグデータは各管理者で保有しており集約、オープン化できておらず、診断技術の開発、現場導入が進んでいない。

2.重要な課題と解決策

(1)重要な課題とその理由

■課題の選定理由は求められていません。

 私は、課題(3)「診断技術の高度化」が最も重要な課題と考える。 

 その理由は、課題(1)、(2)に比べ、解決した場合の持続可能なメンテナンスサイクルの実現への波及効果が大きいと考えるからである。修繕は診断結果に基づき行っているため、診断の精度が劣ると、適切な時期に修繕が行えず、劣化の進行により修繕費が増加するとともに、安全性が低下する

(2)解決方針と具体策

 課題(3)の解決方針は、点検、修繕記録などのビッグデータを集約、オープン化し、診断技術の開発を促進させ、現場導入を進めることである。

 具体策①:ビッグデータを基にAI劣化診断技術を開発し現場で活用する。AI技術は、部材やコンクリート強度に応じた診断を行えるようにする。

■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

具体策②:既設コンクリート構造物にセンサー(LPWA等)を設置し、ひずみ、固有振動数等のデータを取得し、AIで修繕時期を判断する。

 具体策③:取得した応答値や部材の残断面から残存強度、劣化曲線を算出する。その劣化曲線から今後の劣化進行を予測する。これを基に定量的な管理水準を設定する。

具体策④:健全度、残存強度、劣化予測を踏まえ、AI技術で修繕の優先順位を自動で決定する。

ここで留意すべき点はデジタル人材の育成を行うことである。建設業はデジタルシフトが遅れており、デジタル技術を使用できる人材が少ない。そこで、国が主導しデジタル教育の研修会、IT人材との交流会などを行い、デジタル人材を育成する。

3.解決策に共通して生じうるリスクとその対策

 診断をAIに頼ることで、技術者が技術的検証をする機会が減り技術力が低下し、緊急時の対応力が低下するリスクがある。これにより、構造物の安全性が低下するリスクがある。また、AI解析技術の誤診断による既存インフラの安全性低下リスクがある。例えば、修繕すべき構造物が放置される可能性がある。

 ■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

その対策として、OFF-JTによる教育、ベテラン技術者とチームを組んだ業務遂行、AI技術の誤診断チェック体制の構築を提案する。現場作業はデジタル技術を使う若手とベテラン技術者がチームを組んで行う。デジタル技術は、最新が常に変化するため、その妥当性を検証できる体制を整備しておく。デジタル技術は発展途上であるため、定期的な見直し、バージョンアップなどの作業が必要となる。

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