№3 R3年 上下水道部門 上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。 2021/08/3

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この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がA、選択科目がA,B(総合B)で、無事合格と評価されました。よく勉強されて専門的知識はお持ちだと思います。一方で技術士問題の意味がややお分かりではないところもあるように拝見いたします。出題趣旨が正確にわかれば正解率はもっと上がります。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 今回初回受験とのことで、論文の焦点が定まらずお困りになったのではないでしょうか。特にⅡ-2の問いのように答えの無い問題で発散してしまったようです。応用力を高める練習はされたでしょうか。白書の暗記だけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。技術士問題は、実現性の高いプロの答えでないと点が取れません。そのためには経験知を発揮する必要があります。

 本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分59秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 

  日本の将来人口は、減少していくと予想されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況下で執行体制の省力化を図りながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1)     上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)     抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)     解決策に共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)     業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)上下水道事業に共通する基盤強化に関する課題

上下水道事業を安定して継続していくためには、基盤強化を着実に進めていくことが必須であるが、以下の課題がある。

1)  老朽化設備の更新と財源の不足

高度経済成長期に大幅に整備が進んだ上下水道施設は、近年更新需要のピークを迎えている。一方、人口の減少に伴う料金収入の減少により、上下水道事業の財政収支は悪化傾向にあり、更新に必要な財源の確保が困難となっている。老朽化した設備は、事故リスクや災害時の被害拡大のリスクが高く、安定した上下水道事業の継続を妨げる要因となる。

■現状の説明に終始しているばかりではなく、今後どうしたら良いかという方向性を示す提案をしてください。

2)  熟練職員の持つ技術の継承

近年、上下水道事業体の熟練職員の大量退職時期を迎えている。一方、経営のスリム化や人口の減少により、新規職員の採用者数は減少傾向にあり、今後もその傾向が続くものと予想されている。そのため、上下水事業の安定稼働を支える熟練職員の技術ノウハウをいかに少数の若手職員に継承していくかということが課題となっている。

■ここは良く検討されました。正解です。

3)  自然災害対策

近年、大型台風やゲリラ豪雨をはじめとする異常気象や大規模地震といった自然災害が頻発するようになってきている。これらの自然災害は安定した上下水道事業の継続を妨げる要因となるため、施設の耐震化や浸水対策等の自然災害対策が求められている。

■こちらも、だからどうするのかという、技術的対処、課題を示すように。

(2)最も重要と考える課題とその解決策

 私は、全問で述べた3つの課題のうち、1)施設の老朽化と財源の不足が最も重要な課題と考える。以下に解決策を示す。 

■この↑ような冗長な前置きは不要です

①  アセットマネジメントの実施

上下水道施設の施設台帳や日々の点検記録を基に、設備ごとの重要度や老朽度を評価し、更新の優先順位を設定する。この結果に加えて地域ごとの財政状況や将来にわたる財政収支を考慮することにより、中長期的に効率的かつ効果的な更新計画を立てる。

②  施設の統廃合とダウンサイジング

老朽化施設の更新にあたり、施設の統廃合とダウンサイジングを検討する。これにより、更新事業費の抑制が図れるほか、維持管理費を含めたライフサイクルコストの削減が期待できる。将来の水需要の減少に合わせた適正規模に施設更新を行っていくことが重要である。

③  上下水道料金の値上げと国庫補助金の活

■これら↓は役所の仕事であって技術士の務めとは言いにくいです。

設の更新に必要な財源を確保するために、上下水道料金の値上げや国庫補助金の活用を検討する。上下水道料金の値上げについては、需要家は敏感であるため、事業内容や財政収支の詳細についてわかりやすく説明し、納得してもらうことが重要である。また、料金については事業体間の公平性や、将来世代との公平性が確保できるように留意する。

(3)解決策に共通して生じうるリスクとそれへの対応

全問で述べた3つの解決策に共通して生じうるリスクとして、ハードの整備や関係者との各種調整に時間や労力がかかることがあげられる。

■困難↑はないとは言えませんが、リスクというほどのことでしょうか。

対策としては、事業の広域化や官民連携、IT技術の活用によって事業の効率化を試みる。事業の広域化では、施設、人材、情報等の経営基盤の共有や有効活用により、運営の効率化が期待できる。官民連携では、民間企業の技術や経営に関するノウハウを有効活用することにより、運営の効率化を図る。IT技術の活用では、各種情報の一元管理や共有化のほか、業務の標準化やマニュアル整備により、効率化を図る。これらは、詳細内容について様々な手法が存在するため、事業体ごとの技術や財源の現状に応じて適切な方法を選択する。

■いろいろ雑多で焦点が絞りこめていません

(4)業務遂行において必要な要件

技術者は、公衆の安全と健康、利益の優先を常に念頭に置き、経営状況が厳しい中でも安定した事業の継続が可能となるように、自らの持つ技術を駆使する。また、将来にわたる社会の課題やニーズの変化を敏感にとらえて、対応していくことにより、社会の持続可能性を確保する。これらを実現するために、最新の技術を習得できるように継続研鑽するとともに、PDCAサイクルにより、自己の業務手順を常に改善し続ける意識を持つ。 

■ここはやや意味が違います。業績論文ではないのでこのような「私はこう考える」というような心構えは求めおらず、せっかく書かれても得点につながりません。問2の解決策についての独創的な提案、工夫、改善策を求めています。 

Ⅱ-1-1 

活性炭処理の種類とそれぞれの特徴と処理上の留意点について述べよ。

1.  粉状活性炭処理の特徴と留意点

粉状活性炭は、粉径数十µm程度の活性炭で、異臭味物質やトリハロメタン前駆物質、油、農薬等を吸着除去するために使用される。必要に応じて、塩素注入と組み合わせて導入される。比較的簡易に導入可能であるため、一時的、季節的な処理が必要な場合に採用されやすい。原水に直接注入される。以下に留意点を示す。

■「粉状」と「粒状」が焦点なのでそれに由来することに集中して述べると良いでしょう。下のような一般的な用法は求めていません。

原水の年間を通しての水質の変化を把握しておき、水質の急変があっても対応できるように、十分な量の活性炭を備蓄しておく。

・ドライ式の場合は、防火対策等、取扱に留意し、ウェット式の場合には溶解設備が必要となる。

2.  粒状活性炭処理の特徴と留意点

粒状活性炭設備は、敷き詰めた活性炭上に処理水を通すことにより、異臭味物質や溶解性物質の吸着除去を行う。固定床方式と流動床方式があり、必要に応じてオゾン処理と合わせて導入される。以下に留意点を示す。

■漠然と用法上の留意点を求めているわけではなく、粒状の弱点克服につながることだけ言うように。

活性炭の吸着効果を十分に得るために、処理水の流速は早くなりすぎないように監視する。処理水の最適な流速は、事前の処理実験によって決定しておく。

・活性炭の処理可能量の限界を超えた場合には、洗浄による更生や、活性炭の入替を実施する。

・点検や補修、洗浄の実施に備えて、活性炭設備は2系列以上設置する。  

Ⅱ-2-2 

河川表流水を水源とし、急速ろ過方式を採用する浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨の影響により、年に数回の頻度で原水が極めて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)    調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)    業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)    業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)     調査、検討すべき内容とその項目

■ゲリラ豪雨による高濁度原水の原因、事故はご存じですか。この問題は経験的知識が問われています。

下記のマーカーより、高濁度の原理について無対策のように読み取れます。

高濁度原水への対策として、はじめに、ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生した場合の原水の量的変化や時間的変化について調査する。次に、対象となる浄水場について、以下の情報を調査および把握することにより、対応手順について検討を実施する。

・薬品注入の方式と最大注入可能量および濁度計の測定可能範囲

・沈殿スラッジの最大処理可能量

・ろ過とその洗浄方式および洗浄頻度

・着水井、浄水池、配水池の貯留可能量

・非常時対応の人員および体制

(2)業務を進める手順と留意点、工夫を要する点

①ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生するまで

ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生しやすい時期は、地域ごとに異なる傾向を持つため、それを念頭に置き、天気予報の短時間予報や週間予報を参照し、事前に予測する。また、職員間で情報共有する体制を整えておく。

②豪雨、大雨が発生してから濁度が上昇するまで

浄水場の周辺において、ゲリラ豪雨や局地的大雨が予想される場合や、実際発生した場合は、原水濁度の上昇に備えて以下の事前準備を実施しておく。

・薬品注入量の増加および濁度計の監視強化

・脱水機をはじめとする排水処理の先行運転

・ろ過池の洗浄実施 

■浄水所内の自らの普段の対応だけでは難しいでしょう。

・着水井、浄水池、配水池への貯留強化

原水濁度は急激に上昇する場合があるため、できる限り早期に実施することが望ましい。同一河川を水源とする事業体間で情報共有する体制を整えておくことが望ましい。

③原水の濁度が上昇した場合

 原水濁度の上昇が始まった場合、浄水処理の強化や濁度系の監視強化を行う。濁度の上昇が浄水場の処理可能量を超えた場合には、ピークカットにより取水停止をして、着水井、浄水池、配水池に貯留した水で給水を継続する。配水池が枯渇した場合に備えて、関係機関への連絡を行う。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための調整方策

 高濁度原水発生時でも一定の機能で給水を継続するために、BCPを策定しておく。具体的には、連絡体制や指揮命令系統、職員の行動手順や行動指針について明確化しておく。職員間で共有化しやすいように電子ベースでマニュアル化しておくことが望ましい。BCPの教育や周知が不十分である場合、特に混乱した状況下においては、対策が機能しない可能性が高い。そのため、日常から定期的に教育や訓練を実施し、実践的な対応力を養成しておく必要がある。また、訓練によって計画との乖離が明らかになった場合は、BCPを改善するようなPDCAサイクルの運用体制を構築しておくことも重要である。

■BCPとかPDCAとか留意点を求めているのではなく、「調整」について述べるようにすると良いでしょう。

Ⅲ-1 

中小規模の水道事業体の多くは、人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等に直面しており、技術的・財政的に様々な課題を抱えている。さらに、市町村合併等が行われた地域の水道事業者においては、浄水場等の水道施設が点在し、運転監視装置の設備機器構成や仕様が異なることにより、運転管理や保全管理が複雑になっている場合があり、適切な維持管理を難しくしている。上記の状況を踏まえ、水道分野の技術者として以下の問いに答えよ。   

(1)    水道施設の監視制御システムを整備するにあたり、技術者として多面的な観点から検討すべき課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえでその内容を示せ。

(2)    抽出した課題から最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の対応策を示せ。

(3)    対応策によって新たに生じるリスクと解決策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)     水道施設の監視制御システム整備にあたる課題

水道施設は、市民生活を守るために常時安定稼働することが最大の使命である。そのために、監視制御システムを整備し、日々の施設の運転管理や維持管理を適切に実施することが重要であるが、以下の課題がある。

1)  財源の不足

近年、人口減少に伴う料金収入の減少により、水道事業の財政は厳しい状況にある。固定費の割合が大きい水道事業では、料金収入の減少が財政悪化に直結し、今後もその傾向が続くと予想されている。中小規模事業体を中心に独立採算制の維持も厳しい状況にあり、監視制御システム整備のための財源確保が困難となっている。 

■問題点の指摘だけでなく、解決の方向性を示す。それが技術士の課題です。

予算取りは役所の仕事であって技術士の務めではありません。

2)  人材の確保

近年、団塊の世代を中心とした職員の大量退職時期を迎えている。一方、経営のスリム化や人口減少により、職員の新規採用者数は減少傾向にある。水道事業の健全な運営は、事業体職員による日々の施設の適切な維持管理によって成り立っており、そのための人材確保が課題となっている。  

■どうやってするのか、具体的方針まで示すようにしてください。

3)  運転管理、維持管理の容易性

水道事業を安定して稼働させるためには、取水から給水に至るまでの各過程の機器を適切に運転管理する必要がある。そのために、監視制御システムを整備し、一括管理することが有効であるが、誤操作等によって社会的に大きな影響を生じさせる恐れもある。これを防止するために、運転管理や維持管理が容易な仕様にシステムを整備することが重要である。

■情報化、IOTによる改善の方針を示すようにしてください。

(2)     最も重要と考える課題と対応策

私は、全問で述べた3つの課題のうち、2)人材の不足が最も重要と考える。以下に対応策を示す。

対応策①:監視制御システムの広域化

事業体毎に独立して整備された監視制御システムを通信回線等で接続し、監視制御の広域化を図る。これにより、少人数で集中的に広範囲の水道施設の監視制御が可能となり、運転管理や維持管理の効率が向上するほか、熟練の技術者が持つ技術の水平展開も期待できる。また、拠点毎に異なるシステムの仕様を統一することができる。

対応策②:IT技術の活用

水道施設の監視制御システムにIT技術を導入し、業務の効率化を図る。運転管理や維持管理において人間の技術や判断に依存する部分を減らすことにより、省人化することができる。具体的には以下の手法があげられる。

・浄水場内における各機器の制御の自動化

・プラントデータ解析による薬品注入量や機器の運転方法の最適化

・センサ技術による漏水の早期発見

・AI解析による水質変化の将来予測

対応策③:官民連携の導入

監視制御システムの整備に官民連携を導入することで、民間の持つ技術やノウハウの有効活用を図る。必要に応じて、監視制御システムの整備から、運転管理まで委託することも検討する。民間は独自の技術を持つ企業が多いため、施設の運転管理や維持管理の一層の効率化が期待できる。官側はモニタリング体制を構築することが重要である。

■役所の組織管理手法であって技術士の務めではありません。技術志向とは逆行しているように感じます。あまり触れるべきではないでしょう。

(3)     対応策によって新たに生じるリスクと解決策

全問で述べた3つの対応策によって、少人数で効率的な水道施設の運転管理や維持管理が可能となる。しかし、少人数となることで監視制御システムに異常が発生した時に対応する体制の構築が困難となることが新たなリスクとなる。以下に解決策を示す。

■これらリスク、解決策は一応間違いではありませんが、あまり難しい話ではありません。技術士の対応としてはもっと水道工学の技術的背景のあるいろいろなことがあると思います。そちらを書かれると良かったです。

解決策①:監視制御システムのバックアップ機能強化

監視制御システムの一部が異常になった場合でも、稼働が継続するように、サーバーやコントローラー等の監視機器を二重化し、バックアップ機能を強化する。また、停電時にもシステムへの電源供給を継続するために、UPSを整備しておく。

解決策②:システム異常時の対応マニュアルの作成

監視制御システム異常発生時の対応手順や連絡体制等についてマニュアル化しておき、適切に対応できるようにする。対応する人材が不足することが予想される場合は他の事業体と応援協定を結んでおく。  以上

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