№4 R3年 総合技術監理・上下水道−下水道の答案について添削致しました。 2021/08/3
今回の試験ではよく頑張りました。これなら期待が持てるかもしれないと考えましたが、残念ながら結果はB評価でした。総監技術士の専門性をアウトプットするような表現が不足していたのではないかと想像致します。
今回はDXのテーマでしたが、解答内容はデータ利用についてやや消極的姿勢と拝見いたしました。データの利活用の状況説明が主体となってしまって、総監技術士としての経験力が積極的に発揮されていないように拝見いたします。ご提案のデジタル化とは2D→3Dの変換とか、道路台帳のデジタル化であり、リスク対策の柱のAIも建設ではなく、どちらかというと情報工学の技術です。
実務でどう総監の5つの管理を当てはめるか。また個別の要素技術を応用は・・・。これらは体験業務をもとに練習するしかありません。建設分野で情報をどう活用するかも同じです。練習しないと説明能力は高まりません。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。
技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、早く合格を勝ち取ってください。
音声ガイドによるコーチング指導内容(16分54秒)がダウンロードされますのでお聞きください>
問題 Ⅰ-2
近年の技術革新により,従来にない形でのデータ収集及びデータ解析が可能となり,様々な方面から事業や業務への利活用が期待されている。実際に,
1)日常の業務における意思決定において,これまで勘や経験に頼っていた部分をより定量的な知見に基づき合理的なものとするための試み,
2)ナレッジマネジメントやデジタル・コミュニケーション・ツールの援用とあわせ,これまで以上にデータの利活用を効果的なものとしていくことの追求,
3)人工知能(AI)やIoT,あるいはビッグデータ分析といったキーワードに関連する先端技術を活用した事業における新たな価値創出の探究
など,幅広いレベルでの利活用が考えられる。しかしその一方で,データの利活用に関しては様々な課題も顕在化してきている。したがって,データを利活用した事業・プロジェクトの推進について,総合技術監理の視点に立って検討を行うことは重要であると考えられる。 そこでここでは,あなたがこれまでに経験した,あるいはよく知っている事業又はプロジェクト(以下「事業・プロジェクト等」という。)を1つ取り上げ,その目的や創出している成果物等を踏まえ,その事業・プロジェクト等にデータを利活用することに関して総合技術監理の視点から以下の(1)〜(3)の問いに答えよ。
ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う。」立場からの視点をいう。
なお,書かれた論文を解価する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして倫文全体のまとまりを特に重視する。
(1)本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容と,それに関する現在のデータの利活用の状況について,次の①〜④に沿って示せ。 (問い(1)については,答案用紙2枚以内にまとめよ。)
① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。
② この事業・プロジェクト等の目的を記せ。
③ この事業・プロジェクト等が創出している成果物(製品,構造物,サービス,技術,政策等)を記せ。
④ この事業・プロジェクト等における,現在のデータの利活用の状況について,以下の項目をすべて含む形で記せ。
なお,十分に利活用できていない状況を記すことを妨げない。
・どのようなデータを収集・解析しているか・事業・プロジェクト等にどのように活用しているか
(2)この事業・プロジェクト等において,現在既に利用できるデータや技術を用いて,今後導入が可能と思われるデータ利活用の方法を2つ取り上げ,それぞれについて以下の問いに答えよ。なお,2つの方法に対して,利用するデータや技術は共通のものでも,別々のものでも構わない。 (問い(2)については,答案用紙を替えたうえで,まず1つめの方法について1枚以内にまとめ,さらに答案用紙を替えたうえで2つめの方法について1枚以内にまとめよ。)
① 利活用可能なデータの内容とその利活用の方法について記せ。
② ①で記述した利活用を進めることで,事業・プロジェクト等にどのような効果をもたらすことが期待できるかを理由とともに記せ。
③ ①で記述した利活用を進めていくうえで,総合技術監理の視点からどのような課題やリスクがあるかを記せ。ただし,2つの方法それぞれについて,5つの管理分野(経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理)のうちの2つ以上の視点を含むこととし,解答欄にはどの分野の視点であるかを明記すること。
(3)将来におけるこの事業・プロジェクト等(同種の別の事業・プロジェクト等でもよい)において,近い将来(おおむね5〜10年後)に新たに利用できるようになると思われるデータや,実現されると思われる技術を用いて,新たに導入が可能になると思われるデータ利活用の方法を1つ取り上げ,それについて以下の問いに答えよ。
なお,想定する時期までに事業・プロジェクト等の内容や形態そのものが変化することを踏まえて解答しても構わない。
問3は用紙を替えたうえで、答案用紙1枚以内にまとめよ。
① 利活用可能なデータの内容とその利活用の方法について記せ。
② ①で記述した利活用を進めることで,事業・プロジェクト等にどのような効果をもたらすことが期待できるかを理由とともに記せ。
③ ①で記述した利活用を進めていくうえでの課題やリスクを記せ。なお,想定するデータの利用可能性や技術の実現可能性に関する課題やリスクについては対象外とする。
(1)私が取り上げる事業
①事業の名称及び概要
●●●●道路は、■■市■区と▲▲市を結ぶ延長14.2kmの有料の自動車専用道路である。建設債務の返済完了予定年度である令和20年度迄を期限とし、◎◎◎道路公社により維持管理事業が実施され、その後、通行料金が無料化され、国に引き渡される予定である。●●●●道路は昭和53年に建設工事に着手され、建設から40年以上経過し、老朽化が進んでいる。また、交通量も毎年順調に増えており、輪荷重による道路施設への影響も大きくなっている。維持管理事業は通行料金を財源とし、道路施設の点検、調査、補修設計、補修工事、交通管制(パトロールカーによる落下物の回収や、交通事故発生時に交通整理を実施)、料金収受(ETC設備や料金収受員による通行料金の徴収)等の業務が発注されている。
■本問の主題であるデータ利用との関連性に絞って述べた方が良いでしょう。
②事業の目的
維持管理事業により、良質な道路構造物を提供し、交通渋滞の緩和、地域経済の活性化、良好な市街地環境の形成を図ることが目的である。
③事業が創出している成果物
道路利用者の安全性と快適性を確保した自動車専用道路の供用が成果物である。
④現在のデータの利活用の状況
●●●●道路は土工区間が少なく大半が高架区間と
なっている。道路法に基づき、5年に1回の橋梁点検を実施している。橋梁点検では、部材毎の損傷状況の写真を収集し、損傷程度を解析し、診断結果として健全度を作成している。これらのデータをもとに補修工事が実施され、道路施設を健全に保つことが可能となる。
■データ利用について消極的姿勢と受け取られます。
現在は、建設後初めての補修工事を実施しているが、道路施設の損傷状況は、海岸沿い等の立地条件や交通量の影響を受ける。適切な補修サイクル予測のため、補修工事の履歴を橋梁点検結果(写真と診断結果)とあわせて保存することに留意している。なお、●●●●道路は214橋あり、毎年、40橋程度、コンサルタントにより橋梁点検が実施されている。橋梁点検結果はエクセルベースとなっており、道路台帳と関連付けされておらず、日常的なパトロールへの利活用が難しい状況になっているのが課題である。
■データの利活用の状況について述べるのが主体であり、問題点・課題ばかりでは物足りないです。残念ながら現状であまりデータが利用されていないようです。言い換えるとこの問題を解くのにふさわしい総監技術士としての経験力が足りないという厳しい評価をされないとも限りません。
(2)導入が可能なデータ利活用の方法
①-1データの内容と利活用の方法(1)
現在紙ベース(2次元)となっている道路台帳を3次元化し、橋梁点検と関連付けを行う。
■このような2D,3Dのデータ形式の転換ではなくどのように利用するかの視点が必要です
②-1期待できる効果(1)
道路台帳を3次元化し、橋梁点検と関連付けを行うことにより、日常的なパトロールで損傷個所を把握しやすくなり、道路施設の健全性確保に寄与する(安全管理)。
③-1課題やリスク(1)
道路台帳を3次元化するには、多額のコストを要す
る(経済性管理)。安全管理と経済性管理のトレードオフが生じている。また、3次元データを取り扱いするには、技術者の訓練が必要であり、対応できない者へのメンタルヘルスケアといった対応も必要となる(人的資源管理)。②-1の効果だけでは、経済性のデメリットを解消するのが難しいため、2つめの方法とあわせて、道路台帳の3次元化(情報管理)による効果を検討したい。
① -2データの内容と利活用の方法(2)
① -1と同様、道路台帳の3次元化である。
■これではダブリで、2つ答えたことになりません。
②-2期待できる効果(2)
道路台帳を3次元化することにより、現在、人の目により機械を操作しているが、GPSやセンサーを利用したドローンや重機による橋梁点検・補修工事の無人化が可能となる。初期費用はかかるものの、長期的な人件費が抑制され、経済的なメリットが生じる(経済性管理)。
③-2課題やリスク(2)
3次元データを取り扱うための人材育成、メンタル
ヘルスケアといった課題への対応が必要である。一般的にベテラン職員から若手職員への知の移転が課題となる場合が多いが、データの3次元化についてはその逆となる可能性が高い。組織の長が積極的に関与し、教育訓練に十分な時間と費用を費やす(経済性管理)とともに、対応できない者へは、能力に応じた人材配置を行う等の対応(人的資源管理)が必要である。
■前頁と同じような議論です。
(3)新たに導入が可能なデータ利活用の方法
①データの内容と利活用の方法
将来、橋梁点検を実施する際、現在の橋梁点検結果
を利用し、AIが健全度を自動的に判定する。
■AIが提案の主体となってはいけません
②期待できる効果
現在は橋梁点検で健全度を判定する際、橋梁点検マ
ニュアルを参照しながら、人の目で確認作業を行っており、相当な時間と労力を費やしている。AIによる自動判定により、かなり省力化されることとなる(経済性管理)。
③課題やリスク
AIによる自動判定はまだ開発途上の技術であり、今
後、橋梁点検結果のディープランニング等が必要である。また、健全度を算定する際の過程がブラックボックス化されることにより、職員の技術力向上につながりにくいという課題がある。このため、橋梁点検結果を抜き取り検査する等、技術力維持の対応が必要である(人的資源管理)。今後、少子高齢化が進行し、働き方が多様になるため、データの利活用による生産力向上が必要になるが、経済性管理のみならず、人的資源管理の観点からもクリアすべき課題は多い。
■AIの問題点・課題ですが、この業績についての議論がありません。これだと説明不足になってしまいます。