№9 R3年 建設部門、鉄道の答案について添削致しました。 2021/08/08

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は論文としてはこれで十分です。結果は期待通り、A評価で合格とのことでした。ただし、建設部門鉄道技術士としてのプロの答えを表現すればさらに合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像致します。

 今回は3回目の受験だとのことですが、これまで講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。記述内容にやや矛盾や無駄があり、出題者が求めるストライクゾーンが答えられていなかったみたいです。

 必須Ⅰでは、課題の「予防保全」はテーマとして求められた防災に限らず、すべてのインフラに共通した事項で、必然的な関係性があいまいです。また、解決策では、課題とやや似ており、ダブリとなる危険性があります。もっと具体的に気象予測や水理工学の提案をされると良いでしょう。選択科目Ⅱ-1,Ⅱ-2はほぼOKです。Ⅲは課題の表現で分析が甘いです。「新技術等活用」ではなく建設・鉄道の技術課題とすべきでした。このほか説明がやや冗長となっているようです。簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けたのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、合格されています。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドでヒントを申し上げます。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分8秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

問題文 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と課題と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.課題

①流域治水の推進

 従来の治水対策は河川域等の区域毎による治水対策が行われてきた。しかし、気候変動の影響により想定を超える風水害が発生している。そこで、対策区域の観点から、区域毎の治水対策ではなく、新たな取組みとして流域全体を一つの対策範囲とした流域治水の推進が風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

②ハザードマップの理解・認知度向上

 地方自治体においては風水害のリスクを示すハザードマップの整備を進めてきた。ハザードマップの整備は多くの自治体で完了している一方で、同マップに対する住民の理解・認知度は必ずしも高くない。そこで、住民の観点から、新たな取組みとしてハザードマップの理解・認知度向上が風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

③予防保全への転換

 防災インフラを含め、従来のインフラ保全は不具合が生じた際に修繕を施す事後保全が主流であった。しかし防災インフラにおいては平時から機能を保持することが非常に重要である。そこで、保全の観点から、新しい取組みとして、従来の事後保全から不具合が生じる前に修繕を実施する予防保全への転換を図ることが、風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

■予防保全は防災に限らず、すべてのインフラに共通した事項で、必然的な関係性があいまいです。防災インフラが特別メンテを必要としているわけもはありません。ここはできるだけ、予防保全など主題から離れた提案は避けた方が得策です。

2.解決策

 前頁の課題のうち①流域治水の推進を最も重要な課題とし、以下に解決策を示す。

①  気候変動を踏まえた治水計画の策定

 従来の治水計画は過去の降雨実績を基準に策定されてきた。しかし、気候変動の影響により想定を超える被害が発生しているため、今後は気候変動の影響を踏まえた降雨量、河川流量、浸水深さ及び潮位等を考慮した治水計画を策定し、治水対策を流域全体で実施する。

■課題とやや似ています。課題には「気候変動の影響・・流域全体を一つの対策範囲とした流域治水の推進が風水害の被害防止・軽減」とありほぼ同じです。ここはもっと具体的に気象予測や水理工学の提案が欲しいです。

②雨水貯留機能の向上

 集水域においては、これまでもダム等により雨水貯留を行い河川流量の抑制を行ってきた。しかし、既存の貯水能力を超えた大雨の際には河川流量を抑制が困難である。そこで新たに溜池や水田を活用し、集水域における雨水貯留の応力の向上を実施する。

③粘り強い構造の堤防整備

 河川域では、これまで河川の流下能力向上のために河道掘削、引堤及び堤防の嵩上げ等が行われてきた。しかし、一部堤防では越水時に即座に決壊する恐れがある。そこで、今後の堤防整備においては、新たに越水時においても即座位に決壊しないよう法尻部や陸側法面を補強した粘り強い構造の堤防を整備する。

④土地利用規制による住居等の移転

 現状、風水害のリスクが高い一部地域においては、住居等が建設されている。各種防災対策を実施しているが、今後も想定を超える風水害が発生する可能性がある。そこで、風水害のリスクが高い危険危険区域においては、土地利用の規制を行い、新たな街づくりと合わせて住居等の移転を実施していく。

3.新たなリスクと対応策

①リソース不足による運営への悪影響

 各解決策を実行する際は、多くの人的・財政的・時間的リソースが必要となる。リソースの少ない地方自治体では行政運営に悪影響を及ぼすリスクがある。

■これは提案内容が原因で生じることではなく、何の施策でも言えることです。問題文が求めている「前問(2)で示した解決策によって生じうるリスク」に相当しません。

②リスクマネジメントの導入

 上記リスクを回避するため、災害の発生頻度、発生時の深刻度、対策の効果及び費用などを考慮したリスクマネジメントを導入し、上記リスクを回避する。

4.要件

①公衆の安全確保

 本業務は限られた予算及び工期の中で遂行しなければならない。しかし、そのような状況下においても常に公衆の安全確保を最優先することが、本業務のける技術者倫理の観点における要件である。

■質問の意味を取り違えたようです。公衆の安全確保を最優先するために「治水計画、雨水貯留、補強、土地利用規制」で具体的に何をしますか。技術士としての工夫です。それが要件です。

②  環境・生態系の保全

 本業務において大規模なインフラ整備を実施する場合においても、既存の自然環境や生態系を保全することが社会の持続性の観点における要件であり、本業務においては上記2つの要件を常に留意する。

■これは環境保全であり、社会の持続性はやや意味が違います。SDGsというテーマをご覧になってください。

問題文 Ⅱ−1−1

ロングレール化のための「レール溶接法」を3つ挙げ、それぞれの溶接方法と特徴について説明せよ。

①  フラッシュバット溶接

 フラッシュバット溶接は2本のレールに対して高電圧を負荷し、電気抵抗の熱によりレール端部を溶かし圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が自動化されているため品質が安定している点である。なお、同溶接には大電源が必要であることから、基本的には工場における一次溶接に適している

■特徴とはできれば制約事項ではなく、性能、品質管理のテクニックなどプラスの内容がふさわしいでしょう。

②ガス圧接

 ガス圧接は2本のレールの端部を専用のガスバーナーで溶かし、レール同士を圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が半自動化されているため、比較的品質が安定している点である。また、同溶接の機材は小型化されており、線路脇での二次溶接に適している

■機器の話や施工性といった用法的事項ではなく、レールの熔接に関する原理的なことを焦点とされた方がよいでしょう。

③テルミット溶接

 テルミット溶接は2本のレール間に型枠を設置し、テルミット反応により溶けた溶剤をレール間に流し見込み、レールを溶接する方法である。同溶接の特徴はフラッシュバットやガス圧接と比較して、溶接部の強度及び品質安定性が劣るが、敷設されたレール同士を溶接する三次溶接に適している点である。

問題文 Ⅱ−2−1

 最大震度6強の地震が発生し、鉄道施設に被害が生じていることが想定された。このため、被害調査を行い運転再開時期の判断も含め復旧方針を策定することとなった。鉄道施設の保守に携わる建設部門の技術者として、この業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査・検討事項

①土木構造物の状態調査

 地震発生時には土木構造部が損傷している可能性がある。高架区間においては高架橋の柱部にせん断又は曲げ破壊が生じていないか調査する。また、盛土区間においては盛土の安定性、地下区間においては側壁、上床及び中柱等に破壊が生じていないか調査する。

■①②は正解です。ただし書き方は「○○を調査して、○○を検討する」という文で表すと良いでしょう。

②軌道の状態調査

 地震発生時には軌道部材の損傷及び軌道変位が生じている可能性がある。そこで、レールを始めとした軌道部材の状態及び軌間等の軌道線形に著大な軌道変位が生じていないか調査する。

③走行支障物の調査

 地震発生時には線路脇の樹木の倒木や跨線橋からの落下物等、列車が走行する上での障害物が線路内に落下している可能性がある。そこで、線路内を中心とした走行支障物の有無について調査を行う。

2.業務の手順及び留意点・工夫点

①被害調査

 上記調査事項を考慮し、被害状況の調査を実施する。

■ここは業務の手順ですから、時系列に主な作業を並べて、品質管理を述べるようにしてください。せっかく1で挙げているのに、2で解決策の手順が記述されていません。

②運転再開可否の検討

 上記被害調査の結果を踏まえて、運転再開可否の検討を行う。なお、運転再開が可能だった場合においもて、事前に安全確認列車を走行させるなど工夫を施し、安全確認を徹底する。

③応急処置の検討・実施

 ②の段階で運転再開が出来なかった場合、被害状況に応じた応急処置を検討する。なお、旅客への影響を留意し、安全確認が完了した区間から順次、運転を再開する。また、平時から地震時の対応を想定し、可能な範囲で予め現地に緊急用資機材を配置する等の工夫を施すことで応急復旧の時間短縮が可能となる。

■事後のことは領域外です。

④運転再開可否の最終判断

 応急処置の結果を踏まえて、運転再開時期の最終判断を行う。なお、運転を再開した初期段階においては、徐行運転を行い線路内の状況に留意する。

3.関係者の調整方策

①旅客との調整

 旅客は早期の運転再開を望む一方で本業務の担当者としては安全確保が必須であ。そこで、被害状況や運転再開時期などの情報を適宜発信し、納得感・安心感が得られるように旅客と調整する。

■旅客と何をどう調整するのか。試験官は「調整」方法から技術士の判断力を測ろうとしているのに中身の話がありません。

②運行管理者との調整

 地震発生に伴い長時間にわたり運転を見合わせた場合、駅には多くの旅客が滞留する。そのような状況下で運転を再開した場合、多客による二次被害の発生が危惧される。そこで、運行管理者とは被害状況や運転再開時期について情報共有すると共に運転再開時のダイヤ等について調整する。

■情報共有はともかくダイヤ調整とは、関係者のだれと何をどう調整するのか、具体的に述べるように。

Ⅲ-1  

問題文 我が国においては、少子高齢化の進行により労働人口の減少傾向が続いている中で、「働き方改革」への対応が求められている状況である。建設業界では施工の効率化だけでなく現場休業の取組など、様々な取組が行われているが、鉄道工事に関しては終電から始発までの間や活線下での列車間合いで施工されることが多く、各鉄道事業者において運行形態や保守体制に応じて、さまざまな検討が行われている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

(1)鉄道工事における作業時間を確保する方策について、輸送サービスのあり方や保守の効率化も踏まえ、建設部門の技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.課題

①新技術等活用による点検・保守作業の効率化

 現在の鉄道工事の多くは労働集約型であることから、他の業界や産業に比べて必ずしも効率化されていない。そこで、技術面の観点から、新技術等を活用し鉄道の点検・保守作業の効率化を図ることが、限られた夜間時間帯及び列車間合いで作業時間を確保するための課題である。

■選択科目Ⅲ問題で「新技術等活用」では課題として曖昧すぎます。具体的にどんな新技術ですか。建設・鉄道の技術領域をここで宣言すると良いでしょう。

②列車運行時間の見直し

 これまでの鉄道輸送は旅客及び社会のニーズを踏まえて、可能な限り列車運行時間の確保に努めてきた。一方、昨今の新型コロナウイルスにより旅客需要は深夜及び早朝を含めて大きく減少している。そこで、旅客需要の観点から、始発列車の繰り下げ、日中の運行本数の減便及び終電の繰り上げ等を含めた列車運行時間の見直しが、作業時間確保における課題である。

■説明がやや冗長となっているようです

③大規模工事における計画運休

 線路切替のような大規模工事においては、現状の作業時間帯では実施が困難である。そこで、輸送サービスの観点から、線路切替のような大規模工事を実施する際には、予め旅客へ列車運休を周知すると共にバスなどによる代替輸送を確保し、計画的に運休を実施することが、作業時間確保にける課題の一つである。

■すなわち課題としては代替輸送を宣言すべきです。

2.解決策

 前頁に挙げた課題のうち①新技術等活用による点検・保守作業の効率化を最も重要な課題とし、以下にその解決策を示す。

①  状態監視保全の導入

 保守作業の効率化を図る際には、1回あたり作業内容を軽微にすることが有効である。1回あたりの保守作業を軽微にするためには、従来の損傷が生じてから保守を行う事後保全から、軌道や土木構造物の状態を監視し損傷が発生する前に軽微な保守を実施し、軌道等の健全性を確保する状態監視保全の導入を行う。

②営業車による線路モニタリングシステムの活用

 上記の状態監視保全を軌道に対して実施する際、線路モニタリングシステムを活用する。同システムは営業車の床下に慣性式の軌道検測装置、レーザー及びラインセンサカメラから構成されている。同システムを搭載した営業車の走行に合わせて、軌道状態をモニタリングすることが可能となる。同システムを活用することで状態監視保全が可能となると共に従来の徒歩巡回や軌道検査の代替が可能となり、軌道の保守作業を効率化することができる。

②  画像処理による土木構造物点検

 従来の土木構造物の点検は、専用の保守用車を極低速で走行させながら、同保守用車に乗車した検査員の近接目視点検が主流であった。同点検において、ひび割れ等の変状を確認するためには多くの労力と時間を要する。そこで、保守用車を上限速度以下で走行させながら、高画質カメラで土木構造物を撮像する。撮像データに画像処理を施し、構造物に対するひび割れ等を抽出することで、土木構造物の状態監視保全が可能となる共に土木構造物の保守作業を効率化することが可能となる。

3.新たなリスクと対応策

①人身事故等による作業時間の変更

 上述の解決策を全て実行し作業時間の確保に努めた場合においても、人身事故等の突発的な事象により運行ダイヤが乱れ、作業時間を変更せざるを得ないリスクがある

■これは提案内容が原因となって生じるリスクではありません。ご自身の提案に対する評価が求められています。「状態監視保全、営業車による線路モニタリングシステム、画像処理による土木構造物点検」をやればやるほど深刻になるリスクは何ですか。それが答えです。

②余裕を持った工期設定

 上記リスクの対応策として、予め不測の事態に備えて余裕を持った工期設定を行い、工期全体で作業時間を確保することで上記リスクを回避する。なお、余裕をもった工期設定を行う際、発注者は工期の長さに応じた適切な諸経費等を踏まえて、発注することが重要である。

■リスク対応というよりは、心構えみたいな印象を受けます。問題の解決を人に求めるのではなく、ここは技術志向の解決法でリスクに対処する内容としてください。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
9:00~18:00
定休日
不定期

ご不明点などございましたら、
お問合せフォームかもしくはメールよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

03-6661-2356

マンツーマン個別指導で驚異的合格率!
技術士二次試験対策ならお任せ!
面談、電話、音声ガイド・コーチングで100%納得
添削回数は無制限、夜間・休日も相談可能

お電話でのお問合せ

03-6661-2356

<受付時間>
10:00~17:00

  • 試験対策講座のご案内

株式会社
技術士合格への道研究所

住所

〒103-0008
東京都中央区日本橋中洲2-3 サンヴェール日本橋水天宮605

営業時間

10:00~17:00

定休日

不定期