№19 R3年 建設部門、施工積算の答案について添削致しました。 2021/10/30

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがAではあるものの、ⅡはCのため、ⅢがAなのにⅡ・Ⅲ総合でBとなり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、Ⅱ-2だけ が 弱点を抱えているようです。他答案はいずれも よく点を取れており 問題ないと思います。Ⅱ-2が なぜこんなに厳しい評価を受けたのか については、 ケースワーク問題の 特殊性があるかと思います。試験官が示した 特定の 条件の現場について、 ちゃんと 要求事項を聞き入れて 計画しているかどうかが 問われています。

 問1では 安全性に留意されたみたいですが、 出題者の要求は効率性でした。また問2では、 どこでも使える一般的な現場の手順を 示されたようですが、 求められているのは 現場の特性に応じた固有の手順でした。これらの点が 出題者の要求と 違っていたために、 期待に応えることができなかったのだと思います。 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1、多面的な課題

(1)いかに想定を上回る風水害に対応するか

 我が国は災害大国であり、毎年のように台風、津波、豪雨、洪水など、風水害に被災している。また、近年は気候変動による風水害など想定を上回る外力による災害も頻発しており、最近では線状降水帯による土砂災害、河川氾濫などの被災も多い。技術面の観点から、いかに想定を上回る風水害に対応するかが課題である。

(2)いかに被災しない住み方をするか

 土砂災害の際に生命に危険が生じる可能性の高いレッドゾーン、河川反乱の際に浸水、家ごと流されるなどの被害を受けやすい地盤の低い密集地で暮らす住民も多い。制度面の観点から、いかに被災しない住み方をするかが課題である。

(3)いかに少ない人材で対応するか

 我が国は少子高齢化が進んでおり、将来的な技術者不足が顕著である。建設業は多くの人が関わる典型的な労働集約型産業である。河川改修、堤防強化など、修繕工事の需要があっても、技術者不足により施工できない現場が発生している。人材面の観点から、いかに少ない人員で対応するかが課題である。

2、最も重要な課題、解決策

(1)最も重要な課題

(1)いかに想定を上回る風水害に対応するかが最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

2、解決策

(1)甚大化する風水害への対策

①流域治水対策

 河川管理者だけでなく、流域全体のあらゆる関係者と協力して幅広い治水対策を行う。砂防施設の整備、貯留、堤防の強化などを推進する。

②構造物の補修補強、津波対策

 道路橋示方書に沿った橋梁補修工事を実施する。また、根固めブロック設置、堤防背面の補強、バックウォーター対策など、粘り強い堤防の構築を推進する。

③ネットワーク強化

 災害時の輸送ルート確保のため、高規格道路の四車線化、ミッシングリンクの解消を推進する。また、直轄国道と高規格道路のダブルネットワーク化を図る。

(2)老朽化するインフラ対策

①インフラメンテナンスの集中的実施

 現段階で維持修繕が遅れている河川やダム、定期点検でメンテナンスの必要があると判断された橋梁、トンネルなど、集中的にメンテナンス工事を実施する。

②戦略的な予防保全の実施

 集中的なメンテナンスにより、ライフサイクルコストを考慮した費用対効果の高い工事を優先的に実施し、多くの維持管理、修繕工事を実施する。

③構造物の長寿命化

構造物の長寿命化計画を立案し、安心安全なインフラの構築を図る。

(3)デジタル化

①国土強靭化に関する施策のデジタル化

 ICT基準を策定し、導入環境を整備する。防災・減災、国土強靭化などに関する建設生産システム全体をデジタル化する。インフラDX技術を活用する。

②災害情報のデジタル化

 港湾において、ドローン、カメラ、衛星などを活用した被災情報の把握を行う。また、気象情報、防災情報、被災情報などを高度化し、災害時の迅速な復旧体制を構築する。

3、共通して生じうるリスク、解決策

(1)共通して生じうるリスク

 ハードを整備するとハザードが移り変わる可能性がある。これまで使用したハザードマップ、タイムライン、避難路などが使用できなくなるリスクが生じる。

(2)解決策

 ハードの整備に合わせて、ソフトも都度見直しできる体制の構築が解決策として考えられる。

4、業務を遂行するに当たり必要となる要件

 技術者として、常に公益を最優先にして取組み、構築して終わりではなく、維持管理し続けなければならない。常に安全な状態を維持するように考えることが重要である。                以上

■Ⅰについてはよくお考えになりました。A評価ですので特にコメントありません。

問題文 

Ⅱ-1-4

高流動コンクリートの特徴を説明せよ。また、高流動コンクリートを採用する目的と施工上の留意点をそれぞれ説明せよ。

1、高流動コンクリートの特徴

 高流動コンクリートは高い流動性を有しているコンクリートである。流動化剤を使用しており、製造に手間を要することから、高価なコンクリートとして扱われている。また、骨材寸法が小さく、水分量が多い。

2、高流動コンクリートを採用する目的

 高流動コンクリートの自己充填性、高流動性を目的に採用される。近年は、高層化、耐震化、複雑化した構造物が多く、使用される鉄筋径、配筋量が多く、過密鉄筋となることが多い。高流動コンクリートを使用することで、間隙なく充填することができる。

3、高流動コンクリートの施工上の留意点

(1)運搬時

 高流動コンクリートは材料分離がしやすい性質がある。運搬時には留意が必要である。

(2)打設時

 自己充填作用があり、材料分離しやすいことから、バイブレーターは不要であるが、補助的に使用する際は留意が必要である。ポンプ車を使用する際は、閉塞を生じやすいため、配管長、配管径などに留意しなければならない。

(3)養生時

 高流動コンクリートは、側圧が高くなることから、型枠の補強、木製型枠ではなく、強度の強い鋼製型枠を使用するなど、留意しなければならない。  以上

■言うは易しく行うのが↑困難なこと。こうした難題がどのようにしたらできるか、技術ノウハウを示すとコンピテンシーになります。

Ⅱ-2-2 住宅が密集する市街地において鉄道新線建設(高架構造、下図参照)が行われており、このうち延長500mの工区の下部工工事(主に20m間隔で橋脚を設置、1基当たりの基礎と橋脚の合計体積は約310m3、杭の体積は約210m3)を実施することとなった。なお、この工区に接している公道は、工区の両端で交差している市道(計2本)のみである。また、鉄道用地の両側には、工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)が併設して確保されている。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として以下の内容について記述せよ。

(1)効率的な施工をするために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要と思われるものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として工程管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

1、効率的な施工をするための検討すべき事項

(1)土留め

 現場は市街地内であり、周辺環境を考慮して施工しなければならない。特に、隣接道路からフーチング計画位置まで密接しており、土留めの設置位置、根入れ深さに制約が生じるため、安全な設置方法を検討する。

■求めているのは「安全」ではなく「効率的な施工」です。方向性が違ってしまった感じがいたします。

(2)型枠支保工

 コンクリート打設時の型枠支保工の沈下を防止するため、適切な支保工の材料、設計荷重などを検討する。また、道路境界付近の施工であるため、型枠支保工の設置位置、安全対策などについても検討する。市街地での施工となるため、資材の搬入出路、保管場所についても検討する。また、20m感覚で橋脚を設置することから、型枠、支保工の転用についても検討する。

(3)マスコン対策

 マスコンに該当するため、温度ひび割れ、沈下ひび割れ対策について検討する。また、基礎と橋脚、場所打ち杭の生コンを運搬するのに100台以上の生コン車の運搬計画、複数のポンプ車の配置などについても検討する。

2.工程管理(業務を進める手順と留意点)

(1)業務を進める手順

①現地調査、設計図書の確認

 現地調査を行い、当初設計と差異の確認を行う。

②施工計画書の立案、作成

現地調査を基に施工計画書の立案、作成を行う。

③工事説明会の実施

 近隣住民への工事説明会を実施する。

④施工

 施工計画書に沿って施工する。変更が生じた場合には、早急に協議、修正を行い、関係者に周知する。

■ここがどこの現場でも使える一般論となっています。求めているのはこの現場の手順ですから、現場の特性をとらえて、かつ時系列の4〜5の作業項目ごとにまとめると良いでしょう。

(2)留意すべき点

 交通誘導員を配置、標示板等を活用し、通行車両の安全確保に留意する。コンクリートの品質を確保するために、型枠支保工の沈下に留意する。土留めの倒壊・崩壊を防止するため、土留めの変位に留意する。

3、関係者との調整事項、調整方針・調整方策

(1)調整事項(施工条件)

 「土留め変位」についての対応を調整事項とする。

(2)調整方策

(1)発注者および道路管理者

 打合せを行い、施工方法について承認を得る。土留めの動態観測を常時行い、変位が確認された場合に備え、常に連絡を取れる体制を築く。

(2)近隣住民、通行車両

 標示板を使用しての事前案内、工事車両の出入口、作業時間、時期などを告知する。

(3)鉄道管理者

 事前打合せ、現地立会を行い、施工方法について承認を得る。緊急時の連絡体制、対応策を築く。 

■現場管理者としてどうふるまうかではなく、プロマネとしての取りまとめを表現したいです。

Ⅲ-1 働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大されている。

 建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対策、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

 このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対応について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1、多面的な課題

(1)いかに働き方改革をするか

 建設業は3K(きつい、きたない、危険)の印象があり、就業先として魅力が低く、担い手が少ない。週休二日を実現するには施工の省力化、環境改善などが必要であり、発注者、受注者共に働き方改革を推進する必要がある。技術面の観点から、いかに働き方改革するかが課題である。

(2)いかに品質低下を防止するか

 週休二日により稼働日が減少することで、結果的に工期がひっ迫し、品質低下につながる可能性がある。工期ひっ迫による焦りから、判断ミス、チェックミスが生じ、品質低下を招く危険性がある。品質面の観点から、いかに品質低下を防ぐかが課題である。

(3)いかに賃金を確保するか

 東日本大震災以降、公共事業労務費単価は上昇傾向にあるが、元請企業と下請企業の賃金格差は拡大している。給与体系が日払いの労働者も多く存在し、週休二日にすることで、労働日数が少なくなり、賃金が減少する。建設業は人手不足であり、労働者は少しでも賃金の高い現場を優先する。賃金が確保できなければ、現場に働き手が集まらなくなり、施工計画自体の見通しが立たなくなる可能性がある。賃金面の観点から、いかに賃金を確保するかが課題である。

2、最も重要な課題、解決策

(1)最も重要な課題

 上記の課題の中で、(1)いかに働き方改革をするか、が最も需要な課題と考え、以下に解決策を示す。

(2)解決策

1)ICT(i-construction)の導入

①ICT工事の導入

 ICT基準を整備し、将来的に地方自治体まで展開する。また、進行が遅れている橋梁、地盤改良など、多方面の分野での導入を推進する。

②BIM/CIMの活用

 設計から施工、維持管理まで、3Dデータ化を推進し、建設生産管理システム全体で利活用する。また、CIMガイドラインの整備を推進する。

③プレキャスト化の推進

 大型コンクリート構造物(ボックスカルバート、L型擁壁など)において、現場打ちよりも費用対効果が高く、品質が安定しているプレキャスト化を推進する。

2)新・担い手3法

①適正な工期設定

 発注時の休日、準備期間を考慮した適正な工期設定、施工時期の平準化など、長時間労働を是正し、労働環境の改善を図る。

②適正な契約

 受注者に対して、適正な工期、金額での下請契約の締結を図る。下請け企業の適正な利益の確保を図る。

③現場の処遇改善

 建設業の許可要件に社会保険加入を追加、下請企業の労務費相当額は現金払いとするなど処遇改善を図る。

3)新3Kに向けた取組み

①「労務費見積尊重宣言」促進モデル工事の実施

 下請けの労務費見積を尊重する企業に対して、総合評価、成績評点などを有利にする体制を構築する。

②CCUS義務化モデル工事

 WTO工事を含む一般土木工事において、CCUS活用の目標と達成状況に応じて評点を加減点するモデル工事を発注する。

③誇り、やりがい、魅力の醸成

 建設業は社会資本の担い手、地域の守り手として役目を果たしている。建設業に対してのリブランディングの提言を推進する。

3、懸念事項と対策

(1)懸念事項

 施工プロセスの省力化により、これまで当たり前だった施工工程がブラックボックス化され、若手技術者の技術力が低下するといった懸念事項が生じる。

(2)リスク対策

 研修会、資格制度、CCUSの活用、OJTだけでなく、OFF−JTも実施するなど、技術力の維持・向上に向けた取り組みが対策として考えられる。以上

■Ⅲについてはよくお考えになりました。A評価ですので特にコメントありません。

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