№20 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/18

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この答案についての講評

 答案の表現力は概ね良くかけていらっしゃいます。見識は十分かと思います。しかし、試験結果は、Ⅰ:A、Ⅱ:B、Ⅲ:A(総合:B)と残念な結果でした。ご自身からはⅡ-2およびⅢの改善点を知りたいと伺っておりました。
 拝見したところ、やはり原因はⅡ-2にありそうです。それはご自身が訴えていらっしゃる「題意の読み取り方が弱い」ということではなく、ケーススタディ形式の問題に対して、出題者が求める事項がしっかりと書かれていないことが原因のようです。こうした出題者、あるいは、発注者や事業主の意向に応えることはビジネスマンとして最も大事なことでして、技術士試験ではよく問われます。Ⅱ-2は特にそうです。この能力は、自身の考えを答案に表して、添削を受けて、確認、修正することでのみ上達します。暗記では学ぶことはできません。本研究所の講座を受講されますとこうしたプロの知見がコーチングでしっかりと学べます。
 ご自身は、いわゆるキーワード学習に力を入れて、とにかく書くことを主眼に考えていらっしゃいました。しかし、キーワード知識を暗記するだけでは合格はできません。試験の問題は毎年変化しており、応用力が問われますので、臨機応変にベストの対応を示すことが必要なのです。

 技術士試験では、昔のように答案を暗記してアレンジして書いていては合格出来ません。技術士コンピテンシーを身につけて、ご自身の力を引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(27分57秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.激甚化・頻発化する風水害を防止・軽減するための課題

■タイトルは答案用紙では2行となっていますが、短くても構いません

(1)事前整備の観点より、横断的な連携した取り組みの課題

 我が国は全国土の約7割が山地・丘陵地を占めており、災害が起こりやすい国土条件であり、地球温暖化の影響の気候変動により降水量が増加し、風水害が激甚化している。現状は多様な分野でシステムの構築を個別最適化して進めているが、個別最適化では拡張性に乏しいため、横断的な取り組みを行う必要がある。よって、防災・減災の共通目的で、各分野で整備を進めるべき。

■「個別最適、横断的、防災・減災の共通目的」では風水害に対する課題が見えません。白書の暗記、転記では△

(2)国民意識の観点より、防災意識社会への転換の課題

 災害発生時の支援は、プッシュ型やプル型などの公助だけでは限界があることから、普段からの自助・互助・共助の意識を高めることが重要である。また、高齢単身世帯の増加によりコミュニティ機能が低下しているため、防災意識社会への転換が課題である。よって、国民の視点に立った対策により継続的に防災警戒体制を構築すべき。

■国民意識は行政の課題であって、コンサルタントの技術的課題ではありません。それより水害の課題はなにですか?

(3)情報提供の観点より、わかりやすい情報発信の課題

 リスクエリア面積に対し、全人口の約7割が災害リスクの高いエリアに居住しており、ハザードマップの公表や大雨特別警報を発信しているが、具体的な非難に繋がっていないのが現状である。よって、危機管理型水位計や監視カメラなど、可視化された情報を積極的に提供し、具体的な避難に繋げるべき。

■具体的で◎です。

2.最も重要と考える課題に対する解決策

 激甚化・頻発化する災害に対応するため、全体最適化した横断的な連携による整備を進めることが最も重要な課題と考え、以下に解決策を述べる。

(1)流域治水の転換

 砂防、河川、下水道、海岸の管理者がそれぞれ整備を個別最適化していることから、集水域、河川区域、氾濫区域を一元化し一つの流域として連携して取り組む流域治水への転換が解決策である。具体的には、集水域では自然環境の特性を利用したグリーンインフラを活用し、雨水の貯留、浸透を促進する。河川区域では、利水ダムの事前放流による貯留量の確保である。氾濫区域では、ため池や田んぼの高度利用や宅地のかさ上げ、災害リスクの高いエリアから低いエリアへの住居の誘導、土地利用制限である。

■ここ↑の内容は◎です。これがA評価となった要因です。

(2)ストック効果の最大化

 高度経済成長期に中注して整備されたインフラが加速度的に老朽化していることから、インフラ長寿命化計画によるインフラメンテナンスを行い、ストック効果の最大化を図ることが解決策である。メンテナンスに当たっては、ライフサイクルコスト縮減を意識することが重要であり、事後保全から予防保全への転換や、BIM/CIMを活用した生産性向上を図る必要がある。

■風水害対策の話がありません。

(3)道路インフラの強化

 道路インフラは、災害時の救命救急や早期の復旧、支援物資の輸送に重要であることから、道路交通のネットワークの強化やミッシングリンクの解消が解決策である。また、暫定2車線の高速道路区間の4車線化や踏切道の立体交差化を進めることで強靭化が図れる。

■ネットワーク、強靭化は〇ですが、ミッシングリンク、暫定2車線、踏切立体化はここで挙げる必要ないのでは。

3.新たに生じうるリスクと対応策

 上記の解決策を実行しても新たに生じうるリスクは、継続的な予算の確保の問題である。対応策は、3次元データをデータベース化し、システムをプラットフォーム化することで、AI・IoTを活用した評価により高度予測が可能となることから、予算配分の選択と集中を行うことである。

■リスクの意味が違うようです。「前問(2)の解決策を実行しても新たに生じうるリスク」です。「予算確保」は前からある問題ですから相当しません。

システムプラットフォーム化、AI・IoTは情報工学分野ですから専門技術になりません。予算配分選択は行政課題。

4.業務として遂行するに当たり必要となる要件・留意点

 技術者は一企業の利益のみを追求するのではなく、社会全体の公益確保を第一に考え、エンドユーザーの安心・安全を守る。また、インフラ整備に当たっては、地形改変等の環境負荷が発生する懸念があることから、自然環境、地域環境、生活環境にも配慮する必要がある。

■残念ながら意味が違います。問2に書いた業務を遂行するために「必要となる要件・留意点」です。提案に対する自己評価です。技術者倫理、社会持続性の2つの観点から述べることが求められています。

論文で心構えが問われることはありません。

問題文 

Ⅱ-1-3

土石流を捕捉するための砂防堰堤について、水通し部の型式から透過型及び不透過型に分類し、それぞれの特徴と採用に当たっての留意点を述べよ。また、2つのうち1つの型式を選択し、高さ15m未満の砂防堰堤における越流部の安定計算に用いる設計外力の考え方及び留意点を述べよ。

1.透過型および不透過型の特徴と留意点

(1)透過型

 鋼製部などで水通しにスリットが設けられており、常時流水に混入されている土砂が貯まらないことから、常に捕捉域を確保でき、土砂と流木を効率よく捕捉可能である。また、不透過型に比べて規模が小さくなる傾向にある。

 採用に当たっての留意点は、土石流によって鋼製部が破壊された事例があることから、流体力や礫径が大きい場所では、注意が必要である。 具体的提案は?

(2)不透過型

 常時流水に含まれる土砂によって堆砂域が貯まり、満砂となる。平常時の堆砂勾配で緩勾配化したところに、土石流が衝突し減速することで土石流を捕捉する。

 採用に当たっての留意点は、流木を効率よく捕捉することができないことから、下流に流木捕捉が必要となる。河床材料が細粒土主体となる場所では、不透過型が有利である。

■弱点を探して、品質改善する提案を言うように。これでは特に何も留意しなくてもよいという意味となります

2.不透過型における越流部の安定計算に用いる設計外力の考え方及び留意点

 洪水時と土石流時において、自重、静水圧、土砂堆砂圧を、転倒、滑動、内部応力、地盤支持力について検討する。土石流時には土石流流体力、土石流の重さを考慮する。土石流水深分堆砂高を下げることに留意する。参考図

■計算原理は〇です。留意点はこのような維持管理のことではなく、構造計算の注意です。砂防施設の設計に答えがあります。

Ⅱ-2-1 

  インフラの維持管理・更新を計画的に進めていくために、施設の老朽化(長寿命化)対策に関する計画策定の業務を担当事となった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。

(1)業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的な内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について述べよ。併せて、それらに関し、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 以下、砂防分野について述べる。

1.業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報

(1)資料収集

 砂防関係施設が整備された当時は、土石流の外力を考慮していない可能性があることから、既往の砂防計画を確認し、求められている機能や性能を整理する。

■このようなことはないでしょう

(2)自然特性・社会特性の整理

 既往の文献を確認し、地形や過去の土砂災害履歴を整理する。また、要配慮者利用施設、避難場所、避難路などを把握する。

■調査対象が漠然としていて、老朽化の支配因子が見えません。ここはもっと絞ると良いでしょう。

(3)業務計画の整理

 業務内容のスケジュールを確認しタイムマネジメントを行った上で、業務内容を分担し短工期を図る。また、ヒューマンエラーを回避するために社内照査体制を構築し、手戻りを無くす。

■残念ながら一般論としての「姿勢」が多く、建設・河川としての長寿命化対策の焦点が見えません。

2.業務を進める手順

(1)現地調査

現地調査では、災害リスクを考慮した事前準備による安全管理を行う。

外観調査を行い、構造物の劣化状況・損傷状況を調査し、損傷や劣化が確認された際は詳細点検を実施する。詳細点検では、コア抜きによる地質調査、圧縮強度試験、中性化試験を実施する。

(2)施設計画

 費用対効果を算出し、ライフサイクルコスト縮減を意識した修繕・改築・更新の検討を行。工夫点としては、数値シミュレーションを行い、最適となる施設計画を策定する。

(3)施設設計

 現地調査によって明らかとなった巨礫や流木などの外力を用いて、砂防関係施設の性能を評価する。工夫点としては、現地発生材の有効活用や残存型枠による工期短縮を図ることである。

■問題が見えていませんから、手順が発散しています。

3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

■調整とは「何かを減らして、何かを増やす」プロマネの取りまとめ、最適化です。連絡やコミニケーション、話し合いとは違います。

(1)社内担当者

 短工期が要求されるため、業務を分担し、レビュー・チェック体制を整備し情報共有を行う。

(2)発注者

 方針や設計外力の諸元などについて綿密に協議を行い、協議簿を作成する。

(3)河川管理者および道路管理者

 工事における道路利用や下流域での河川改修などの影響が想定されるため、横断的な連携を行う。

(4)地域住民

 現地調査では、私有地に立ち入ることが想定されるため、事前にわかりやすく業務目的を説明する。

Ⅲ-1 

Society5.0の取り組みが進んでいる。水防災分野でも、危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性・・

(1)水防災分野での遠隔化の取組を推進していくうえでの課題を、水防災対策施設の有する特性を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.水防災分野での遠隔化の取組を推進していくうえでの課題

(1)人材確保の観点から、いかに新技術を活用するかの課題

 少子高齢化により、1995年をピークに生産年齢人口は継続的に減少しており、65歳以上のベテラン技術者の大量離職が想定されることから、2023年までに21万人の人材不足を解消する必要がある。よって、人材不足解消のためにいかに新技術を活用するかが課題であり、生産性を向上させるべき。

■新技術はOKですが、人材難は課題ではありません。危険性、狭溢性、立地の辺すう性によるアクセス困難な特性を踏まえて」となっています。

(2)働き方の観点から、遠隔化の生活への浸透・定着の課題

 我が国の新技術の生活への定着率は諸外国に比べ低いことから、新技術の生活への定着の遅れが課題である。中でも、ICTを利用した遠隔操作による働き方であるテレワークは、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方であることから、ソフトなどのシステムの平準化やデジタル化を推進すべきである。

(3)サイバー攻撃のリスクの観点より、セキュリティ対策の課題

 新技術の活用では、共通プラットフォーム上にセンサーや危機管理水位計、監視カメラなどのビックデータが点在するため、常にサイバー攻撃のリスクがあるため、セキュリティ対策の強化が課題である。よって、データの真正性の確保やデータ管理のシステム構築を行うべきである。

2.最も重要と考える課題に対する解決策

 人材不足は今後も継続的に進む問題であることから、生産性向上に向けた新技術の活用を最も重要と考え、以下に解決策を述べる。

(1)BIM/CIMの活用

 調査、計画、設計、施工、維持管理における建設生産プロセス全体で3次元モデルを連携することが解決策である。施工分野においては、GNSSを利用したICT機器を搭載した重機によるICT施工が行われているが、建設生産プロセス全体で共通化されていない。調査、計画、設計段階において3次元データを活用するためには、地形モデルと設計モデルの高精度化が重要であり、LPデータやSAR衛星データの活用により制度の高い地形モデルを構築することが生産性向上を図るうえで重要である。

■これでは河川より、鋼コン分野の対応に近いです。

(2)AI・IoTによる高度予測

 維持管理において重要となる点検・調査におけるドローンなどのUAVの利活用による3次元データをデータベース化し、インフラデータプラットフォームを構築することで生産性向上が図られることから解決策である。また、蓄積したデータにより、AI・IoTを活用した劣化予測が可能となり、維持管理の選択と集中が可能となる。

■河川についての対策がかかれていません。

(3)気候変動への対応

 我が国の国土の約7割が山地・丘陵地を占めており、災害が発生しやすい国土条件である。地球温暖化の影響である気候変動による降雨量増加に伴い、災害の頻発・激甚化が問題となっていることから、XRAINの配信エリア拡大やスネークラインのCL超過指標による災害予想の高精度化を進めることが解決策である。

3.波及効果と懸念事項への対応策

(1)波及効果

 上記の解決策を実行した上で生じる波及効果は、国土が強靭化されることによって、持続可能で暮らしやすい社会の実現に繋がることである。

(2)懸念事項への対応策

 懸念事項としては、新技術の進歩に伴い機械や機器を操作する能力は高まるが、自らが計算や計測をする機会が減少するため、若手技術者の技術力が低下することである。解決策として、新技術に対応した資格制度の導入や、OFF−JTやナレッジマネジメントなど、若手技術者の教育制度を構築することである。

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