№31 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/05/10

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがA、ⅡはB、ⅢがBであり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できます。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、問題文で与えられた問題に対して、対策の必要性等は述べられていますが、肝心の主題である問題解決につながる課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文が多く、この文形では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案がアピールできません。A評価を取れてよかったところもありますが、技術士にふさわしい事項をもっと取り上げた方が良いかと思います。答えが常識的だったり、わかりやすすぎることは、技術士答案の答えではないと気づくべきです。あとは論文の書き方について、これは文章の書き方の本が多数出ていますので、一度習得されると役立ちます。

 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

  後半の音声(4:52)

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分38秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

Ⅰ−2  問題文 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、雨風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)全問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての論理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.多面的な課題抽出と内容

①いかに事前防災対策を実施するか

我が国は、気温上昇等の気候変動が他国に比べて大きく、近年では全国的に集中的・局所的な豪雨が頻発している状況である。また、日本は急峻で脆弱な地盤が分布し、丘陵地や斜面にまで開発が進んでいるので風水害に弱いとされている。そして、人口、資産が密集している大都市は、洪水時の水位より低い位置のため潜在的リスクが高い状況である。

 ■この↑ような問題点の記述が長く、ご自身の提案が少ないようです。前置きは簡潔に、提案を積極的に述べると良いでしょう。ご提案↓は見出しとやや趣旨が違うようです。

そこで風水害を回避するための、高規格堤防等のハード設備の整備が重要である。

②いかに「防災意識社会」へ転換するか

 ■この「如何に・・」の文は大変さを強調する一方、提案を見えなくする弱点があります。

 近年に発生した風水害を教訓にして、国、地方自治体、企業、国民の全てが「防災意識社会」へ転換することが重要である。国や地方自治体が企画する防災訓練や避難訓練を積極的にアピールし、多くの人を巻き込む必要がある。また、住民が参加する「まちごとまるごとハザードマップ」を活用するなどして、防災への意識を高めていくことが重要である。

■ 防災意識社会へ転換するため、ハザードマップ活用が課題です。そのことを単刀直入に、見出しにも書いたらいかがでしょうか。説得力増します。

③いかに内水氾濫における浸水を防除するか

 内水氾濫における浸水を防除し、都市が健全な発展を図るために、下水管渠や排水設備の整備が需要である。

■ややバランス悪いです。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

2−1.最も重要と考える課題

 私が最も重要と考える課題は、「いかに事前防災対策を実施するか」である。

2−2.複数の解決策

①築堤・河道掘削・遊水池等のハード対策

 風水害に対して、築堤・河道掘削・遊水池等のハード対策を実施することが解決策である。さらに、既存インフラの有効活用として、ダムの嵩上げや放流設備の増設も有効である。

②地域特性を考慮した治水対策

 風水害に対して、堤防設備の整備のほかに、輪中堤の整備と災害危険区域の指定等の地域特性を考慮した治水対策が重要である。

③総合的防災対策

 上記①、②の対策のほかに、防災講習や防災訓練、ハザードマップや避難経路の共有等のソフト対策も重要である。水防管理団体と河川管理者が洪水リスクの高い箇所の共同点検や、水防講習を行うことも効果的である。ハード対策とソフト対策をうまく組み合わせるHSBM(ハードソフトベストミクス)の考え方で、総合的に対策していくことが解決策である。

④河川等の災害時のリアルタイム災害状況の確認

 災害状況をリアルタイムに把握することが解決策である。いくつかの方法を下記する。

④−1.集中豪雨等の雨量を確認するX-RAIN

④−2.河川の流量や水位を測定するADCP流速計

    CCTV映像画像診断

④−3.浸水範囲を把握するSAR衛星

■こうした事例展開が必ずしも良いわけではありません。

文章形で提案内容を補足された方が良いでしょう。

3.新たに生じるリスクと対応策

3−1.リスク

 対策を実施する費用が大きくなる。また、様々な対策には新技術が必要なため、それを扱う人材と教育が必要となる。

■間違いではないものの、答えとしてふさわしくはないと考えられます。わかりやすいからです。わかりやすすぎて技術士でもわかっていることです。当たり前すぎて、このようなことを聞くために設問したのではないと考えるべきです。

3−2.対応策

 国からの協力金や総合評価方式での加点等のインセンティブを与えることが解決策である。また。PPP/PFIを推進して、民間企業の財源や技術力を活用することも重要である。

4.技術者として必要となる要件・留意点

 技術者は一企業や一部の部門の利益を優先するのではなく、常に社会全体の公益確保の観点から業務をしなければならない。社会状況や最先端技術の動向を常に把握しながら、業務ごとに見直しを図り、より良い社会になっていくよう努めなければならない。

■技術者としではなく、「技術者論理、社会の持続性の観点からの要件」です。確かにそのような心構えは必要ですが、ここでは具体的に問2の提案をもとに、「あなたならどう工夫して対応するか」と問われています。

Ⅱ−1−3 建設工事において使用される足場(つり足場を除く)の倒壊を防止するため、施工計画及び工事現場管理それぞれにおいて留意すべき事項を説明せよ。

足場の倒壊防止のために留意すべき事項を、施工計画時と現場管理時に分けて記述する。

■前置↑きはなくても構いません。

・施工計画

①足場本体を設置するスペース(幅、高さ、長さ)は、どれくらいか

②足場の足元の基礎地盤は強固で安定しているか

③足場施工のための施工ヤードは確保できるか

④足場設置後の作業はどんな用途か(コンクリート構造物構築や、点検作業など)

⑤作業の中で最も荷重が大きくなる時の荷重はどれくらいか

⑥直接作業でかかる荷重以外の、風荷重や地震荷重を考慮しているか

■正解はこの5,6でしょう。あとは一般的な注意であって、留意点とは違うようです。

⑦足場周辺の既存構造物等と連結することができるか

・現場管理

①設計された材料と同じ材料が現場に入ってきているか(材料検収)

②設計された図面通り、現場でも組み立てられているか

③足場の足元の基礎地盤は強固で安定しているか

 雨水により弱くならないよう排水に注意する

④1スパン当たりの荷重明示と、それが守られているか

⑤足場周辺の既存構造物等と連結しているか。もしくは一時的な杭や鋼材と連結しているか 

■チェックリストの羅列です。要因をまとめるように。分析的な視点が求められています。あまり常識的すぎるものはなくても構いません。

問題文Ⅱ−2−2   住宅が密集する市街地において鉄道新設建設(高架構造、下図参照)が行われており、このうち延長500mの工区の下部工工事(主に20m間隔で橋脚を設置、1基当たりの基礎と橋脚の合計体積は約310m3、杭の体積は約210m3)を実施することとなった。なお、この工区に接している公道は、工区の両端で交差している市道(計2本)のみである。また、鉄道用地の両側には、工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)が併設して確保されている。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として以下の内容について記述せよ。

(1)効率的な施工をするために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要と思われるものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として工程管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

1.効率的な施工のために、検討すべき事項と内容

①生コン車のルートの確保

 施工延長500mの中に、約20m間隔で橋脚(基礎と橋脚の合計体積約310m3)を施工する工事のため、生コン車の往来が非常に多くなる。また、工事エリアは住宅が密集する市街地のため、接触事故が起きないような幅員が広く、渋滞を避けることができる一般道の運行ルートを調査・選定することが重要である。さらに一般道から工事エリアに入る工事用道路との交差部をどこに設置するかの検討も重要である。

②施工ヤードの確保

 橋脚を構築していくのが主な工事で、重機による掘削、クレーン等の揚重機による鉄筋・型枠組立、コンクリートポンプ車によるコンクリート打設と、多岐の作業が発生する。作業ごとに作業のしやすい施工ヤード位置や面積が違ったり、材料の置き場等の調整が必要となってくる。本工事では、鉄道用地の両側に工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)があるため、この箇所をいつ引き渡す必要があるか等を関係者と調整し、施工ヤードとして活用するか判断する必要がある。あらゆる状況を把握して、総合的に効率的になる施工ヤードの確保が重要である。

③施工効率化の施工方法の検討

 当該工事では、ほぼ同じ形状のコンクリート構造物を複数構築していくと考えれるため、橋脚構築の効率化のための施工方法の検討が必要であると考える。検討する工法は下記の通りである。

③―1.プレキャスト化、プレハブ化

③−2.高流動コンクリート

■ここまでの考え方自体は間違ってはいません。ただし内容が冗長でとても読みにくいです。特に②は説明長いです。思いついたことを羅列するのではなく、要因毎にまとめて表現してください。それが論文の書き方です。

2.工程管理の方法と留意点

 当該工事では橋脚のコンクリート品質不良を発生させることが、工程遅延に一番影響すると考える。寸法、体積が大きく温度応力ひび割れが懸念される。そのため施工前に温度応力解析を実施し、目標ひび割れ指数を満足する配合や養生方法を決定することが重要である。施工時は、解析の諸条件と同じ施工ができているか、もしくは解析に比べ安全側で施工できているかの確認を行う。また、掘削、鉄筋・型枠組立等の作業進捗は、月間工程や週間工程で遅延が起きていないかの確認を行う。遅延している場合は、原因追及し必要に応じて人員増員等の対策を行うことが必要である。

■ここ↑も同じで冗長です。いろいろ問1で検討したことはどのように実行するのですか。書かれているのは温度応力ひび割れと工程遅延の管理だけです。偏りがあり過ぎます。

3.関係者との調整により決定される施工条件と、調整方法及び調整方策

 上記1.③の「コンクリート構造物の施工方法」である。現場の状況を把握し、各施工方法の品質や工程予算等を比較検討した資料を作成し、関係者と協議を行う。総合的に優れた工法を選択し、設計変更を行った後に施工を行う。

■外形的な建前だけで技術的内容が書かれていません。資料作成し比較検討するのは現場会議の常ですが、それは会議の手段であって、「調整」の中身の話ではありません。関係者協議は会議とか連絡を意味し、これ自体は技術士でなくとも出来ます。

                  以上

問題文Ⅲ−1   働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.多面的な課題抽出と内容

①いかにi-ConstructionやICT・デジタル技術を活用するか

建設業は、一品生産の業態、降雨等の自然影響が大きいため機械化が難しく、他産業と比べて生産性が悪い。また、調査・測量・設計・施工・管理・更新等の業務が多岐に渡り、関わる人材が大きく情報共有・伝達が非常に難しい。これらを解決し、生産性を向上するために、i-ConstructionやICT・デジタル技術を活用することが重要である。

■↑前半の前置きが長く、一方後半の結論が説明不足です。一番力説すべきなのに残念です。

下の2,3↓は比較的バランスは取れています。

②いかに建設業従事者の満足度を向上させるか

 建設業は3K職場と呼ばれ、社会的イメージが良くないとされている。労働負荷が大きく賃金が安い環境を改善し、魅力ある職場として担い手を確保する必要がある。そのために、建設キャリアアップシステムを施工計画の段階で導入することとし、活用することが重要である。就業履歴や保有資格を登録し、給与アップや社会保険の充実を図ることが可能となる。

③いかに適切な設計変更を推進するか

 上記②を推進し、週休2日を実現するには下請け企業の作業員の方々の給与アップが不可欠である。そのために元請け企業は、下請け企業に対して、今までの週休1日条件での見積金額でなく、週休2日条件での見積金額を提示するよう指示することが必要である。週休2日でも作業員の方々が今まで通りの生活ができるかが重要なポイントである。

■ここで段落を分けた方が良いでしょう。

そして、元請け企業にも利益が生まれるよう、設計変更の対象となる箇所があった場合には、発注者と迅速に協議をすることが重要である。適切な設計変更が行えるように、発注者は設計図書に設計条件、施工条件を明確に記載することが非常に重要である。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

2−1.最も重要と考える課題

 私が最も重要と考える課題は、「いかにi-ConstructionやICT・デジタル技術を活用するか」である。

2−2.複数の解決策

①    i-ConstructionやICT・デジタル技術の適用拡大

 国交省が主体となって推進しているi-Constructionでは、ICTやデジタル技術を主に土工事から進めている。測量や浚渫工へ適用は拡大してきているが、今後ほかの分野に幅広く推進していくことが重要である。

■「ほかの分野」とは何か。

②プレキャスト化、プレハブ化、高流動コンクリートの活用

 コンクリート構造物築造に対して、従来までの現位置で鉄筋・型枠組立てを行い、コンクリートを打設する方法からの転換が必要である。コンクリート二次製品工場で予め作製されたコンクリートを、現地で組立てる方法に転換し、生産性を向上させることが解決策である。また、普通コンクリートに比べて締固め作業が少なくなる高流動コンクリートを活用することで、人員の削減を図ることができ、生産性向上につながると考える。

②    遠隔地からの業務

 近年のICT・デジタル技術の発展に伴い、遠隔地からの業務が可能となってきている。例えば、スマートグラスを活用した施工指示や現場巡回である。そして5G通信がもっと身近になることで、大容量のデータ通信が可能になり、高精度な施工等も遠隔で可能になる。これらの遠隔地からの業務を活用することで生産性が向上できると考える。

生産性向上を提案したのに、なぜ高得点に評価してもらえないのか。それは、問題趣旨が生産性ではなく働き方改革を目指しているからです。

3.新たに生じる懸念事項とそれへの対策

3−1.懸念事項

 対策を実施する費用が大きくなる。また、慣れない対策を実施することに必死になり、結果的に生産性向上とならない可能性がある。

■余り難しくない話です。技術士でなくともわかる常識。もっと問題の本質を見極めた提案が欲しいところです。

3−2.対策

 国からの協力金や総合評価方式での加点等のインセンティブを与えることが解決策である。生産性向上につなげていくためには、国として新しい技術活用のための講習会を実施することや、モデル事務所等を設けて活用のためのマニュアル整備等を行っていくことが重要である。

■国の援助では主体性がありません。今はそのような時代ではありません。国家に資金もなく、半導体や量子コンピュータなど国益に直結する技術ならともかく、建設の支援はそこまで手厚くはしてくれません。社会・マーケット需要に対する正しい認識が求められます。

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