H26年 建設部門、施工積算 Ⅱ-1-3問題 模範解答と解説

問題文

 埋設物が存在する場所で土木工事を施工する場合、公衆災害防止のために遵守しなければならない項目を3つ挙げ、それぞれについて概説せよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

1.埋設物の確認 

  • 1次調査(台帳調査・現地調査・関係機関調査)を行う。
  • 本調査(埋設管人孔等の目視確認、電磁誘導法探査、埋設物探査)を行う。
  • 最終調査(試掘)を行う。

2.既設埋設管の維持管理と仮設構造物の管理

  • 既設の管が変形しないような維持管理を行う。
  • 構造物を施工するための仮設構造物(土留めや切梁など)の鋼材の変異や背面の沈下がないかの計測や管理を行う。

3.リスク管理

  • 各関係機関に災害のリスクを抑制のための提案(新設管路への切替えや管路の切回しなど)を行う。

模範解答2 答案形式

1.埋設物の確認

 1次調査として、埋設物を資料等で調査を行う。次に本調査として、現地での位置や深さなどを把握するため、埋設管人孔等の目視確認、電磁誘導法探査、埋設物探査を行う。最終調査として試掘を行う。試掘は、本調査で行った結果の再確認と掘削の際の埋戻し土の粒径や地下水位の状況などを確認する。

2.仮設構造物と既設管の維持管理

 掘削作業において、既設の管を変形させないために土止めを使用している。その土止めを変形しないように計測を行い管理する。また、背面の土砂の沈下や道路の陥没などに注意を払う。既設埋設管の維持管理は、管の特性を考慮し、変形しないような防護方法を行う。分岐や曲りや管末を露出状態にする場合は、管が抜ける可能性があるので注意する。

3.リスク管理

 各関係機関に災害のリスク抑制のための管理に対する提案を行う。構造物施工中は、万が一の管の破壊・破損に備える。例えば水道であれば、給水車を配置し飲み水を提供するなどの準備を行う。電気であれば、迂回線路の使用電力が集中することによる停電の可能性を考慮して時間を決め使用電力の抑制をお願いする。ガスであれば、1次的に使用できない時間を設けるなどのことを行う。

模範解答(3) 簡易答案形式

(1) 埋設物調査

①資料調査

 過去の図面などに基づいて、埋設物の種類や構造、位置、深さなどを調査する。

②物理探査

 埋設物の位置の確認方法として磁気探査、電磁波レーダー探査がある。

③試掘

 特定した埋設物の位置を実際に掘削して確認する。

(2) 埋設物の変位変形防止

①吊防護

 埋設物を掘出すときは埋設物の変形防止のために、桁からワイヤーや鋼材などを利用して吊下げた状態にする。

②埋設物の切り回し

 吊防護が不適当である場合には、埋設物を工事に支障しないような位置に切り回しておく。

③土留壁の変形による影響防止

土留壁は変形しないように、剛性の高いものを採用する必要がある。

 (3) 埋設物損傷に関するリスク管理

①埋設管共用の一時停止

 供給を一時的に停止し、その間に工事を行う。

②関係者への周知

 事前に埋設管理者や消防、警察などの各機関に事前に周知しておく。

③リスクアセスメント

 事前にリスクアセスメントを行い、万一損傷した場合の対応策を検討しておく。

H26年 建設部門、施工積算 Ⅱ-2-1問題 模範解答と解説

問題文

 要求される性能、品質を備えたコンクリート構造物を所定の工期内に安全かつ経済的に建設するためには、的確で合理的な施工計画が必須である。市街地の道路下にコンクリート構造物を施工する際の施工計画の立案に当たり、以下の問いに答えよ。

(1)施工計画の検討項目の1つである「コンクリートの現場までの運搬・受入計画」に記載すべき内容を述べよ。

(2)コンクリートの受入計画において、コンクリートの練上り時のスランプは、打込み、荷卸し、練上り時の各作業段階でのスランプの変化を考慮して設定するが、各段階における設定の考え方及び留意点について述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

(1)施工計画に記載する内容 

(1)-1 運搬の方法 

現場までの運搬・現場内の運搬、経路、時間を記載する。ヒヤリマップを作成し、アジテータが現場まで安全に運搬できるように努める。

(1)−2 現場内の運搬方法  

現場内の運搬方法は、打設時間に合わせた打設量の計画、打継回数とする。ポンプやシュートなどの使用による材料分離が少なくなるように投入口を計画する。

(1)−3 受入計画 

受入計画は、コンクリート仕様の確認をする。また、その頻度は、運搬車の最初の1台は、スランプと空気量と塩化物、2,3,4,5台は、スランプの確認を行い、50m3ごとにスランプと空気量を確認する。規格値なども記載する。

(2)スランプ設定の考え方及び留意点 

(2)−1 打込みの最少スランプ 

打込みの最少スランプは、筒先でワーカビリテイーが確保できる範囲内で最小値を上回っていることを確認する。留意点として、最少スランプは、部材ごと(スラブ・柱・はり・壁)など鉄筋のあきにより選定するのが良い。

(2)−2 荷卸しの目標スランプ  

荷卸しの目標スランプは、打込みの最少スランプに荷卸し箇所から打込までの現場内運搬によるスランプの低下を加えた値とし、目標値に対しての許容幅は、±2.5㎝とする。留意点としては、ポンプの圧送条件により流動化剤などを使用し、品質変化を見込んだ値とする。

(2)−3 練上りの目標スランプ  

練上りの目標スランプは、荷卸し箇所までの場外運搬にともなうスランプの低下を考慮して定める。留意点としては、運搬時間と季節の温度変化(春、秋では30分で1㎝、夏は、30分で1.5㎝、冬は、60分で1㎝)のスランプ低下を見込んだ値とする。

模範解答2 答案形式

(1)施工計画に記載する内容 

(1)-1 運搬の方法 

現場までの運搬、現場内の運搬、経路、時間を記載する。市街地の現場のため、現場までの運搬には、ヒヤリマップを作成する。ヒヤリマップには、スクールゾーンや介護福祉施設などを明示し、速度を落としながら通過するなどアジテータが現場まで安全に運搬できるように努める。

(1)−2 現場内の運搬方法  

現場内の運搬方法は、打設時間に合わせた打設量の計画、打継回数とする。道路下の構造物のため、ポンプやシュートなどの使用による材料分離が少なくなるように投入口を計画する。ポンプ車の配置には、配置図を作成し、ガードマンの配置場所やアジテータの入替スペース、待機場所についても記載する。

(1)−3 受入計画 

受入計画は、コンクリートの仕様の確認をする。また、その頻度は、運搬車の最初の1台は、スランプと空気量と塩化物と圧縮強度用の供試体の作製をする。2、3、4、5台は、スランプの確認を行い、50m3ごとにスランプと空気量を確認する。規格値なども記載する。また、これ以外の台数についても変状に変化がみられる場合には、試験をして確認する。早期脱型が必要なときには、若材齢用の供試体を採取し、強度を満足したなら脱型することも記載する。

(2)スランプ設定の考え方及び留意点 

(2)−1 打込みの最少スランプ 

打込みの最少スランプは、ポンプの筒先でワーカビリテイーが確保できる範囲内で最小値を上回っていることを確認する。留意点として、最少スランプは、部材ごと(スラブ・柱・はり・壁)、鋼材量や鋼材あき等の構造条件、および締固め作業高さ等の施工条件に応じて選定するのが良い。

(2)−2 荷卸しの目標スランプ  

荷卸しの目標スランプは、打込みの最少スランプに荷卸し箇所から打込までの現場内運搬によるスランプの低下および製造段階での品質のばらつきを加えた値とし、目標値に対しての許容幅は、スランプが8〜18㎝±2.5㎝、21㎝±1.5〜2.0㎝とする。なお、荷卸しから打込までの時間経過のスランプの変化は、試し練り時に経時変化を確認し、変化量を見込むようにする。留意点としては、ポンプの圧送条件により流動化剤などを使用し、品質変化を見込んだ値とする。

(2)−3 練上りの目標スランプ  

練上りの目標スランプは、荷卸し箇所までの場外運搬にともなうスランプの低下を考慮して定める。留意点としては、運搬時間と季節の温度変化(春、秋では30分で1㎝、夏は、30分で1.5㎝、冬は、60分で1㎝)のスランプ低下を見込んだ値とする。

模範解答(3) 簡易答案形式

(1) 記載すべき事項

①運搬計画の記載事項

(a)    交通渋滞により生コンの運搬が遅れると、材料分離や硬化が始まるため、品質が低下する。よって事前に迂回路を設定しておく。

(b)    生コン運搬時の気温が高い状態や運搬時間が長いと、コンクリート温度の上昇がして生コンの硬化が早まる。よって硬化防止の措置を行う。

(c)    路下への投入により生コンの材料分離が発生した場合は、型枠内へ打込む前に一度荷受けして再度練り混ぜを行い、材料分離を防止する。

②受入れ計画の記載事項

(a)    現場では打設前に生コンの配合、温度、気温、スランプ、単位水量、塩化物量、空気量、水セメント比の品質確認試験を行う。

(b)    現場からの車両出入りの時間ロスを防止するために誘導員を配置しスムーズな入退場を行う。

(c)    打設時のポンプ車やミキサー車の拘束撹拌音は騒音の元であるので防音シートを設置するなどして対策する。

(2) スランプ設定の考え方

①打込み時

考え方:部材の種類や鉄筋量、作業高さ等の打込み・締固め方法等の施工条件に合わせて型枠に確実に充填できる最小スランプ以上であることを確認する。

留意点:型枠による給水や配管の給水によりスランプが低下しないように、事前に適宜給水しておく。

②荷卸し時

考え方:打込みの最小スランプに、場内運搬による低下量や荷卸し箇所での許容差を見込んで設定する。

留意点:スランプは時間と共に低下していくので、混和剤を使用してスランプ保持性を確保する。

③練上がり時

考え方:荷卸し時の目標値に、場内運搬時間に伴う低下量として30分で1㎝程度のスランプ低下を見込む。見込む。

留意点:スランプは標準時期と比較して、夏季と冬季では気温により低下量が異なる。また事前に試験練りを行い、所要時間によるスランプ低下量も把握して、その分を見込んで設定する。

H26年 建設部門、施工積算 Ⅱ-1-2問題 模範解答と解説

問題文

鉄筋コンクリート構造物の耐久性を阻害する要因を3つ挙げ、それぞれについて使用材料又はコンクリート配合設計での対策を述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

(1) 要因1 アルカリシリカ反応

アルカリシリカ反応は、骨材中のアルカリとシリカが反応することで生成したアルカリシリガゲルが吸水膨張して起こる。対策としては、低アルカリ型セメントを使用することや、骨材の膨張性を判定し、無害判定の骨材を使用する。

(2) 要因2 中性化

 中性化の原因は、アルカリ性であるコンクリート内に、酸性である空気中の二酸化炭素が侵入することで中性化され、内部の鉄筋等の鋼材の腐食に繋がる。従って、中性化を促進する高炉セメントを使用しないことや、水セメント比が小さい密実なコンクリートにして、二酸化炭素の侵入を防止する必要がある。

(3) 要因3 塩害

 塩害の原因は、コンクリート内部に規定値以上の塩分が入ることによって内部の鉄筋等の鋼材が腐食することが原因である。従って、腐食の原因である内部に存在する塩化物イオン量を0.3㎏/m3以下にすることや、高炉セメントB種を使用して密実なコンクリートにして塩分の侵入を防止する。

H26年 建設部門、施工積算 Ⅲ-1問題 模範解答と解説

問題文

 東日本大震災の復興事業に加え、大規模自然災害に対する防災・減災対策や社会インフラの老朽化対策、更に東京オリンピック・パラリンピック関連工事など、今後、建設工事の増加が見込まれている。一方、建設就業者数は近年減少しており、2012年にはピーク時の7割程度となっている。このため建設業では増大する建設需要に対応し、より一層の生産性向上が求められている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)          建設現場において、生産性を阻害する要因を3つ挙げ、説明せよ。

(2)          (1)で挙げた3つの要因に対し、それぞれについて生産性向上に向けた実現可能な技術的解決策を一つ上げ、その効果を論述せよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

(1)建設現場で生産性が低い原因

①重労働の上に高齢化している

少子高齢化の影響は建設現場においてあらわれており、作業員が高齢化してきているため、作業の能率が低下してきている。

また建設現場は未だに手作業が多いため、高齢者にとっては重労働となり、生産性が低くなる。

②技術の伝承不足によるミスや手戻りの増加

 団塊の世代の技術者の定年退職により、十分な技術の伝承が行われず、ミスや手戻りが増加する。このため技術力がなくてもできる単純作業しか行えなくなる。

また多くの技術者が集い、技術の伝承ができるような現場も減少している。

③労働災害の発生リスクが高い

 建設現場では不注意やミスの発生が、直ちに労働災害に結びつく危険性が高い。一度災害が発生しると、工事は休止や中止となり、十分な再発防止対策を行ってから再開することになる。このため工程が厳しくなっていき、非効率な施工になっていく。

また高所作業や溶接作業のように特殊な環境での作業は、転落や感電のような災害発生のリスクが高くなる。

(2) 実現可能な解決策

①重機械の活用による重労働の削減

 重機械活用することで、重量物の上げ下げや移動が容易になり労働者の負担が低減できる。

またクレーンやバックホウを小型化することで、狭隘な場所での重機作業が可能になり人間が行う細かな作業にも対応できる。

②次世代技術者の早期育成

 建設機械の操作を単純化することで、特別な技能や経験が無くても操作が可能になり、施工技術の早期取得になる。

またこれに加えてベテラン技術者の現場経験に基づいた安全対策などを補完指導することで効率的な技術者育成に繋がる。

③危険作業の削減

橋梁の点検や状態管理には、センサーによるモニタリング技術やUAV(無線飛行体)を活用することで、高所足場上での点検作業などが不要となり安全対策になる。

また汚染物のある場所など、通常人が作業できない所には重機械や作業用ロボットを使用することで安全性が向上する。

H26年 建設・道路 Ⅲ-2問題 模範解答と解説

問題文

近い将来に、首都直下地震 、東海・東南海・南海地震の発生が予想されているが、こうした大規模地震災害に備える上で。道路に関わる技術者の立場から、以下の問いに答えよ。

(1)大規模地震災害が発生した場合における道路の役割について、東日本大震災の経験を踏まえ、多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた役割のうち、1つを取り上げて、それを果たすための課題及びその解決策について述べよ。

(3)(2)で述べた解決策について、実効性をより高める上での留意事項をのべよ。

模範解答1  簡易答案形式

(1)大規模地震災害が発生した場合の道路の役割

1)救援物資の輸送

 被災者を救援するため、緊急物資輸送・災害復旧の広域的な緊急輸送路。

2)避難ルート

 津波発生時に高台、津波避難ビル等への避難ルート。 

3)緊急避難地

 津波発生時の避難地として、高速道路のり面を活用。

(2)緊急輸送路の役割達成の課題及び解決策

1)課題

①地震に対して強靭性を持った耐震補強を行う。

②多様な迂回路を選択できるようにする。

③海上輸送で代替えするため、港湾道路を補強する。

2)解決策

①主要橋梁の耐震補強および土構造物の耐震補強

ア. 主要橋梁の耐震補強:長さ15m 以上の橋梁について、老朽化補修と併せてレベル2地震動に対する耐震性能2を確保する補強を行う。

イ. 長大切土のり面の崩壊防止:C O吹付け受圧版(RC格子枠)、摩擦型アンカーによる地山安全率の向上を図る。

②効率的な迂回路の提供:主要幹線にITSスポット網を整備し、詳細な道路情報により広域的(1000km)な最適迂回路をカーナビにより情報提供する。

・スマートIC設置による高速道路の利用促進:現道の長いIC(平均10km)間に経済的なスマートICを設置し、効率的で多様な迂回路ルートを確保する。

③港湾道路の補強:地震時の液状化・流動化判定を行い、落橋の恐れのある橋梁について、橋脚のRC巻立てによる補強、および上部工の落橋防止装置を設置する。

3)解決策について実効性を高める留意事項

①ア.迅速な機能回復を行うため、橋脚部の柱部で曲げによる塑性化によりエネルギー吸収を図り、上部構造は供用性確保のため弾性域に留める。

イ.長大切土面の崩壊防止工法:受圧版は、合理的なRC連続梁構造とし、せん断定数は直線すべり法により逆算法で求め導入アンカー力を計算する。

②ア.情報通信網の耐震化:光ケーブル埋設により災害に強い情報通信網の形成。

イ.ボトルネックの解消:アクセス道路の狭幅員箇所は改良し交通容量を拡大。 ③道路と前面の水底高低差5m以上、水際線から100m範囲、沖積層の飽和砂質土地盤の橋梁について、液状化・流動化判定する。

模範答案2 答案形式

(1)大規模地震災害が発生した場合の道路の役割

1)救援物資の輸送及び災害復旧

 地震災害による被災者や孤立者を救援するため、救助・救急・医療・消火活動を行い、避難者へ緊急物資の輸送を行う。

また、災害復旧のための広域的な緊急輸送路として使用する。

2)避難ルート

 津波発生時に住民が、避難地(高台、津波避難ビル等)に向かう通路、および高速道路のり面を活用した避難地への階段、斜路等で避難する。

また、高速道路IC付近は避難者の溜まり場となるため、一般道路からオン・オフランプ間のアクセス道路を避難路とする。

3)緊急避難地

 津波発生時の緊急避難地として、横断歩道橋、のり面の小段部、高架橋および、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアを活用する。

(2)緊急輸送路の役割達成の課題及び解決策

1)強靭性を備えた耐震補強

以下の補強対策により、常時および地震時の安全性を向上させ、強靭性を備えた緊急輸送路を確保する。

ア.橋梁の安全性向上

長さ15m以上の橋梁について、老朽化補修を行う。補修橋梁は、損傷の進行により安全性が脅かされる三大損傷(疲労、塩害、アルカリ骨材反応)のある橋梁を対象とする。併せて、レベル2地震動に対する耐震性能2を確保する補強を行う。

イ. 長大切土のり面の崩壊防止

風化のり面を整正しアンカー工で、のり面の長期安定化を図る。このため受圧版は、地山密着型の鉄筋コンクリート格子枠を吹付工法により施工し、摩擦型永久アンカーにより地山安全率を1.2に向上させる。併せて格子枠内の小崩壊を、鉄筋挿入により抑止する。

2)効率的な迂回路の提供

ア. ITSスポット網の整備

主要幹線にITSスポットを10km〜15km間隔で整備し、詳細な道路情報を広域的(約1000km)な最適迂回路をカーナビにより情報提供する。

イ.スマートIC設置による多様な迂回路の確保

現道の長いIC(平均10km)間に経済的なスマートICを設置し、効率的で多様な迂回路ルートを確保する。        

3) 海上輸送で代替えするための道路選定

 船舶の接岸後、迅速な緊急物資の輸送を行うため、一般道路に至る港湾道路で複数路線を選定する。このため、現道の道路線形、幅員等を調査し車種別に通行可能な経路をカーナビに入力し、最適ルートの選定が可能な形にする。

3)解決策について実効性を高める留意事項

1)主要橋梁および土構造物の耐震補強

ア.橋梁上部・下部工の設計方針

耐震性能2に対する橋の限界状態は、迅速な機能回復を行うため、下部構造では橋脚部の柱部で曲げによる塑性化によりエネルギー吸収を図る。上部構造は供用性確保のため弾性域に留める考え方とする。

イ. 長大切土のり面の崩壊防止

受圧版は、合理的なRC連続梁構造とする。のり面の安定計算に必要なせん断定数は、直線すべり法により逆算法で求める。また、のり面の長期安定化を図るため、のり面の初期始動を抑止する締付けアンカー力を地山に導入する。

2)効率的な迂回路の提供

ア. 通行経路選定網の整備

ITSスポットは、主要幹線の山間部で災害危険度の高い箇所、都市部では、事故・渋滞箇所を重点的に設置する。これにより、現地の災害・交通事故等の情報を収集し、最適な通行経路選定網を形成する。

イ.通行機能の効率化

アクセス道路の幅員が狭く(幅員5m未満)、かつ視距の悪い区間は、出合頭事故の恐れがあるため、対向車接近システムにより注意を喚起する。これにより、事故防止を図り、交通機能の効率化を図る。

3) 港湾道路の交通円滑化

大型・小型車別の通行経路についてカーナビ地図に明示し、経路選択が可能なシステムに改良する。

H26年 建設・鋼構造・コン Ⅱ-2-1問題 模範解答と解説

問題文

構造物の耐震性を向上させるための基本的な考え方を3つ挙げ、それぞれについて鋼構造物における適用事例を記述せよ。

模範解答1 簡易答案

1.断面補強

(1)考え方:構造物の塑性変形の繰り返しにより地震エネルギーを吸収する。

(2)適用事例:鋼製ラーメン橋脚の梁の耐震補強

 梁の腹板部への補剛材の設置により、せん断座屈強度を向上させ、破壊形態を、梁部の脆性的なせん断破壊から、柱基部の塑性変形による延性的な曲げ破壊へ移行させた。

2.制震

(1)考え方:構造物に設置した装置の塑性変形の繰り返しや粘性抵抗により地震エネルギーを吸収する

(2)適用事例:鋼上路式ローゼ橋へのダンパーブレース設置

 水平地震力に対して軸力で抵抗するブレース部にダンパーを設置し、その内部にある鋼材の塑性変形や油の粘性抵抗により振動を抑制した。

3.免震

(1)考え方:上記、制震の考え方に加え、構造物の長周期化により地震応答を低減

する。

(2)適用事例:連続鋼桁橋への免震支承の設置

 鉛プラグの塑性変形による振動の抑制に加え、ゴム支持により上部工の固有周期を長くすることで、地震の卓越周期から外し、上部工の応答加速度を低減した。

模範解答1 答案形式

1.断面補強

①考え方:構造物自身の塑性変形の繰返しにより、地震エネルギーを吸収する。

②適用事例:鋼製ラーメン橋脚の梁の耐震補強

 梁の腹板部に補剛材を設置し、せん断座屈強度を向上させた。これにより、破壊形態を、梁部の脆性的なせん断破壊形から、柱基部の塑性変形による延性的な曲げ破壊形へ移行させた。

2.制震

①考え方:構造物に設置した装置が塑性変形の繰返しや粘性抵抗をすることで、地震エネルギーを吸収する。

②適用事例:鋼上路式ローゼ橋へのダンパーブレース設置

 地震力に対して軸力で抵抗するブレースの部材軸に ダンパーを設置し、その内部にある鋼材の塑性変形 の繰返しや、油の粘性抵抗により振動を抑制した。3.免震

①考え方:上記、制震の考え方に加え、構造物の長周 期化により地震応答を低減する。

②適用事例:連続高架橋への免震支承の設置

 鉛プラグの塑性変形の繰返しにより、振動の抑制をした。それに加え、上部工の固有周期を、ゴム支持により長周期化することで、地震の卓越周期から外し、上部工の応答加速度を低減した。

H26年 建設部門、都市および地方計画 Ⅱ-1-1問題 模範解答と解説

問題文

 様々なエリアマネジメントの活動が行われているが、多くの活動に共通効果を3つ述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

1.エリアマネジメント活動に共通する効果

(1)快適な地域環境の形成と持続性の確保

①まちなみや景観への効果

最低敷地規模の設定等地区計画の決定、緑地率等まちづくりルールの策定、主要な景観要素となる屋外広告物ガイドライン等の策定により、まちなみや景観の向上を図る。

②防災・防犯・安全への効果

 まちづくりルールを策定し、空地の工事以外の資材・廃材置場利用の制限、外灯・常夜灯の設置等により防災・防犯・安全性の向上を図る。

(2)地域活力の回復・増進

①消費活動や売上、雇用などの経済への効果

 物販・飲食等直営店舗の運営と土地建物共同化等不動産事業の展開で雇用の創出を図る。

②にぎわいや集客への効果

 道路上を活用したカフェやイベントの開催等により賑わいを創出する。

 (3)資産価値の維持・増大

 ①賃料や空室率等の不動産への効果

  身の丈にあったリノベーションの展開で空き店舗を解消し、資産価値の維持・増大に貢献する。

模範解答(2) 答案形式

1.エリアマネジメント活動に共通する効果

1-1.快適な地域環境の形成と持続性の確保

(1)まちなみや景観への効果

 最低敷地規模の設定等地区計画の決定、緑地率等まちづくりルールの策定、屋外広告物ガイドラインの策定等により、まちなみや景観の向上を図る。

(2)防災・防犯・安全への効果

 まちづくりルールを策定し、空地の工事以外の資材・廃材置場利用の制限、外灯・常夜灯の設置等により、防災・防犯・安全性の向上を図る。

1-2.地域活力の回復・増進

(1)消費活動や売上、雇用などの経済への効果

 物販・飲食等直営店舗の運営や土地建物共同化等の不動産事業の展開することで雇用の創出を図る。

(2)にぎわいや集客への効果

 道路及び河川空間を活用したカフェやイベントの開催等により、にぎわいを創出するとともに買い物客や観光客等の集客へ貢献する。

1-3.資産価値の維持・増大

(1)賃料や空室率等不動産への効果

 身の丈にあったリノベーションを展開することで、空き店舗を解消し、商店街の魅力向上となり資産価値の維持・増大に貢献する。

H26年 建設部門、都市および地方計画 Ⅱ-2-1問題 模範解答と解説

問題文

 近年、歴史上重要な建造物及び周辺の市街地と人々の営みを一体的に捉え、良好な市街地環境の向上を目指す「歴史まちづくり」の取り組みが全国で広がりをみせている。城郭を中心に武家地、寺社地、町人地等が計画的に配置されていた城下町を起源とする地方の都市において「歴史まちづくり」を進めるための計画を策定することになった。この業務の担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。(2枚)

(1) 計画策定に当たって検討すべき事項と背景

(2) 計画策定の手順とその内容

(3) 計画策定を進める際に工夫あるいは留意すべき事項

模範解答(1) 簡易答案形式

(1)計画策定にあたって検討すべき事項と背景

 ①城郭及び武家・寺社・町人地に存する地域資源を結ぶ動線計画

 ②武家・寺社・町人地の土地利用及び景観計画

 ③祭礼等地域に残る伝統文化の持続可能な伝承

【背景】貴重な文化財の保全と地域の活性化に係るまちづくり

(2)計画策定の手順とその内容

 ①城郭等文化財の歴史的価値の共有とその周辺に存する地域資源の発掘

  文化財の歴史的史実の整理とその周辺の地域資源を発掘し、その関連性を整理することで磨きをかけ魅力向上に繋げる。この時、地域で引き継がれている伝統文化ついても整理する。

 ②文化財及び地域資源の分布状況と動線計画、景観計画の策定

  文化財と地域資源の分布状況を整理し、歴史や物語がイメージできるようなルートを選定し、その動線計画と建築物を含む沿道の景観整備計画を行う。

 ③整備計画及び維持管理を含むマネジメント計画の策定

  歴史的資源の保存活用に繋がる整備計画の立案と地域活性化に繋がるイベント等の開催等マネジメント計画を策定する。

(3)計画策定を進める際に工夫あるいは留意すべき事項

 計画策定にあたり、地域住民の参加を積極的に呼びかけ、デザイン等景観整備に反映することで、将来的な維持管理やボランティアガイドの参加へ繋げる。

H26年 建設部門、都市および地方計画 Ⅲ-1 問題 模範解答と解説

問題文

 本格的な人口減少・少子高齢化が顕在化しつつある地方都市における、都市の再構築に関し、以下の問いに答えよ。(3枚以内)

(1)持続可能な都市経営の確保に向け想定される課題を述べよ。

(2)課題に対する基本的な解決の方策を都市構造のあり方に着目して述べよ。

(3)解決の方策の実行に際し、想定される負の側面と対応の方向性を具体的かつ多面的に述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

(1) 持続可能な都市経営の確保に向け想定される課題

①厳しい財政状況におけるインフラの維持更新

②コンパクトシティーの実現

③複数拠点を連絡する公共交通ネットワークの構築

④都市内のバリアフリー化の推進

(2) 課題に対する基本的な解決の方策

①コンパクトシティーの実現に合わせた社会インフラの集約

都市機能や居住地を中心部に集約するのと同時に、郊外において不要になったインフラを更新せず廃止する。

②空地・空ビルを活用した住宅・高齢者福祉施設・子育て支援施設等の移転

中心部の空地・空ビルをフロアー単位で活用し、高齢者福祉施設や子育て支援施設等を移転配置する。

③LRT等の整備、P&Rとバスロケーションシステム等の活用による公共交通の利用促進

都市内の車両交通量を減らすP&Rの採用、高齢者社会と利便性を向上させるLRTやバスロケーションシステムの導入を図る。

④病院・公共施設等主要な施設と居住地を結ぶ特定経路のバリアフリー化の実現

 高齢者等が頻度高く利用する市役所や病院等の施設を結ぶ道路を特定経路として位置づけ、期限を定め早急なバリアフリー化を行う。

(3) 負の側面と対応の方向性

【負の側面】

①住宅や都市機能の中心部への集約による郊外の限界集落化

 郊外に位置する集落は、住宅等の中心部への移転に伴い人口減少が進み、空き地・空き家が増加するとともにコミュニティーの維持が困難となり、高齢化と相まって限界集落の様相を呈する。

【対応の方向性】

①耕作放棄地や空地を農地や緩衝緑地

 耕作放棄地や空地を都市緑地法の活用により、市民農園等の農地や特別緑地保全地域等の緩衝緑地に指定する。

②中心部と違う敷地が広く緑豊かで近くで農作業ができるゆとりある住宅地

 小規模な拠点として持続的な都市経営を行う場合は、中心部とは異なる魅力を持つ居住地として敷地が広く緑豊かで近くで農業ができるゆとりのある空間が求められる。

模範解答(2) 答案形式

1.持続可能な都市経営の確保に向け想定される課題

1-1.厳しい財政状況におけるインフラの維持更新

(1)予防保全による長寿命化

 社会インフラは、今後一斉に更新時期を迎えることから、その状態を適切に把握したうえで社会経済情勢の変化に応じて集約統合を判断することが重要となる。そのため、予防保全の考え方を取り入れた長寿命化を図り、維持管理コストをトータルで削減することが課題となる。

 (2)社会インフラの効率的活用

 社会インフラは、その機能低下の大きな要因の一つに老朽化があり、特定のインフラに対する需要が大きくならないように、効率的な活用が課題となる。

(3) 社会インフラにおける民間活用

 厳しい財政状況における社会インフラの整備・維持更新は、公的主体だけでは限界があり、民間の資金・ノウハウの活用が課題となる。

1-2.コンパクトシティの実現

(1)都市機能の集約と中心部への人口回帰

 行政サービスの低下を防ぎ、効率的で持続可能な都市経営を行うには、一定の人口密度を保ち、都市施設の計画的な集約配置が課題となる。

(2)公共交通の確保と都市内バリアフリーの推進

 高齢者の急激な増加とそれに伴う医療・介護需要の増大に対応するため、高齢者が効率的に医療・福祉サービスを利用できるように、公共交通の確保と都市内のバリアフリー化が課題となる。

2. 課題に対する基本的な解決の方策

2-1.持続可能なインフラの維持更新

(1) 公共施設の長寿命化と再配置計画

 公共施設の再配置は、一概にサービス低下につながるものではなく、自治会館をサークル活動に開放する等、より身近な場所で公共施設の機能を補完するものと市民の理解を深める。

(2)市場メカニズムの活用と空間の多面的活用

 道路等社会インフラは、ロードプライシング等により交通量を制御し、特定の社会インフラに対する需要が過度にならないよう効率的活用をする。また、道路空間や河川空間等にオープンカフェ等を開設することでにぎわいを演出する等、多面的な活用を行う。

(3)PPP/PFI等民間の活用

 所有権を公的機関に残したまま運営のみ民間に任せるコンセッション方式等、多様な手法で民間の資金やノウハウを活用し、公共施設の整備等の効率化やサービス水準の向上を目指す。

2-2.コンパクトシティの実現

(1)都市機能の集約と土地利用の厳格化

 コンパクトで快適な都市環境は、都市機能誘導区域・居住誘導区域を設定し、都市的土地利用のエリアを明確にしたうえで、外側の開発を厳しく抑制、内側における土地利用を厳格化することで創出される。 (2)歩いて暮らせるまちづくり

 高齢者等の移動が円滑になるように、低床車両のLRTの導入、バスロケーションシステム等の導入により利便性を向上させ、歩いて暮らせるまちを目指す。

 また、高齢者が頻度高く利用する市役所や病院等の施設を結ぶ道路を特定経路として位置づけ、期限を定め早急なバリアフリー化を行う。

3.負の側面と対応の方向性

3-1.負の側面

 縁辺部の集落は、住宅等の中心部への移転に伴い人口減少が進み、空き地・空き家が増加するとともにコミュニティーの維持が困難となり、高齢化と相まって限界集落の様相を呈する。

3-2.対応の方向性

 市街地縁辺部は、日本の原風景である里地・里山と貴重な水源となる山々を有する。その貴重な自然と文化を持続可能なものにするためには、一定の集落の存続が必要であり、中心部とは異なる役割を持った住宅地として再整備することが必要となる。

例えば、敷地が広く緑豊かで近くで農作業ができるゆったり過ごせる住宅地を目指し、耕作放棄地や空地を積極的に市民農園や緩衝緑地にする。

H26年 建設部門、建設環境 Ⅱ-1-1問題 模範解答と解説

問題文

 ヒートアイランド現象の原因と考えられるものを3つに大別して、それらについて概説せよ。また、それぞれの原因を緩和するための建設分野における具体的対策を述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

1.ヒートアイランド現象の原因

分析と要因

 ヒートアイランド現象の原因と考えられるものを3つ上げ、それぞれについて以下に概説する。

原因①人工排熱の増加

 人間活動により排出される人工排熱が増加している。

原因②低保水性・高比熱の人工地表面の増加

 コンクリートやアスファルトは、昼間に太陽熱を受けてわずかな水分蒸発が気化熱を奪う以外は蓄熱・放熱し、夜間も比熱が高く冷めずに放熱が続く。

原因③熱が逃げにくい都市構造

 密集した建築物群は風通しを阻害して熱をその場に滞留させる。

2.ヒートアイランド現象の原因を緩和する建設分野における具体的対策

 実現可能な実施案

①   住宅・建築物の省エネルギー化よる人工排熱の低減

②   舗装面・建築物といった人工被覆面の熱環境の改善

③   都市内におけるオープンスペースの確保

模範解答(2) 答案形式

1.ヒートアイランド現象の原因

原因①低保水性・高比熱の人工被覆面の増加

 アスファルトやコンクリートは、太陽熱を受ける昼間は低保水性のため気化熱による熱収奪はわずかで大部分は蓄・放熱する。高比熱のため夜間も放熱する。

原因②熱が逃げにくい都市構造

 密集した建築物群は風通しを阻害して熱をその場に滞留させる。

原因③人工排熱の増加

 空調機器等から排出される人工排熱が増加している。

2.建設分野における具体的対策

(1)舗装面・建築物外装の熱環境改善

(1-1)舗装面;保水性舗装が有効である。自動車道の耐久性・安全性は課題を残しているが、歩道・公園施設等から導入可能である。

(1-2)建築物;屋上・壁面緑化により被覆面温度を下げる。屋根・屋上の表面形状改良、明度を高めることで反射率を上げて放射冷却を高め、蓄熱を抑える。

(2)都市内における「風の道」の形成

水路・建物形状の曲線化、建物間空隙の再生、緑地配置による冷涼風の染み出し効果によって冷涼な風を都市内部にまで至らせる「風の道」を形成していく。

 (3)住宅・建築物の省エネルギー化

二重窓、外壁の断熱性向上で建物の気密性を高め、空調機器使用を抑える。

H26年 建設部門、建設環境 Ⅲ-1 問題 模範解答と解説

問題文

 大規模な津波・高潮・洪水等の自然災害に対する備えとして、事前防災・減災を推進することが必要となってきている。一方、我が国の生物多様性の損失はすべての生態系に及んでおり、今後は、自然と共生できる事前防災・減災を進めていくことが重要になると考えられる。このような状況を考慮し、以下の問いに答えよ。

(1)事前防災・減災の取り組みを進めながら生物多様性の保全を図るために検討すべき事項を多面的に記述せよ。

(2)(1)の検討すべき事項の中から、生物多様性の保全を図る上で、あなたが最も重要と考えるものを、他の事項との比較を行った上で1つ挙げ、その理由を論述せよ。

(3)(2)で挙げた事項に対する技術的課題を2つ挙げ、それぞれについて、解決するための技術的提案を具体的に述べよ

模範解答(1) 簡易答案形式

(1)生物多様性保全に配慮した事前防災・減災に必要な検討事項

1)海岸・沿岸域生態系再生と構造体の併用による津波・高潮防護施設の強靭化

2)河川の生物多様性と治水機能の両立による流域圏の持続可能な減災 

3)過去の社会資本整備で失われた自然環境再生による減災効果の発揮

(2)沿岸域の事前防災・減災の必要性の高まり

我が国の沿岸域は、南北への広がりと複雑な海岸地形を有しており、生物多様性については2)の河川環境にも増して優れている。また、以前の開発行為により多くの自然環境が消失したエリアでもあることから、その再生は3)の対策を兼ねる。よって沿岸域の対策は2)、3)と比較して重要である。

(3)沿岸域の生物多様性保全に配慮した事前防災・減災の技術的課題と提案

課題①構造体による平常時の生物多様性と被災時の減災機能の発揮

課題②海洋生物の生息基盤としての防災施設の活用

提案①「緑の防潮堤」による自然共生型の新たな防災施設整備

提案②潜堤への海藻着生を利用した藻場再生と砂浜海岸の防護

H26年 建設部門、河川砂防 Ⅱ-1-1問題(都市河川の水害対策) 模範解答と解説

問題文

 近年の水害の特徴について述べるとともに,都市部の河川における水害対策についてハード・ソフト両面から述べよ。

 模範解答  答案形式

1.近年の水害の特徴

①局地的豪雨により洪水ピークが尖鋭となること

 中小河川は,流域面積が小さく局地的豪雨により,洪水ピークに達するまでの時間が短く,安全に避難箇所へ移動する時間も短い。特に近代都市化による地下空間への浸水リスクが大きい。

②排水不良により内水氾濫が起こりやすい

 アスファルト舗装,宅地造成などから,これまでより不浸透域が拡大し流出率が増大した。その結果,降雨による表面水そのものが河川に流出せずに堤内地において内水氾濫を引き起こす。

2.都市河川における水害対策

①浸透施設および貯留施設によるハード対策

 内水氾濫に対しては,以下のハード対策を行い,降雨による表面水の流出率の減少を図る。

a.浸透施設:浸透枡,透水性舗装の整備による雨水排水の流出率の低減

b.貯留施設:地下空間を活用した降雨の一時貯留の洪水ピークカットによる流出率の低減

②リアルタイムの洪水予測による避難支援ソフト対策

 XバンドMPレーダおよび浸水計の計測結果により,分散型洪水予測システムによるリアルタイムの洪水予測を行う。そして,その結果をユビキタス環境・技術を活用し,洪水被害発生までのリードタイムを利用して避難支援を行う。

H26年 建設部門、河川砂防 Ⅱ-1-2問題(河道閉塞・天然ダム) 模範解答と解説

問題文

 河道閉塞(天然ダムの形成)、火山噴火による降灰、地すべりの活動のいずれか1つを選び、これに起因する更なる被害を防止・軽減するためのソフト、ハードそれぞれの対策について述べよ。

 模範解答  答案形式

1.火山噴火の降灰に起因する被害防止対策

1-1.降灰後の土砂災害に対するソフト対策

①土石流に対応した避難基準降雨の設定

降灰により,地表の浸透能が変化し,損失雨量が増して土石流が発生しやすくなることから,過去の噴火後の土石流発生事例から避難基準降雨を設定する。

②リアルタイム・ハザードマップによる危険区域の想定

監視,計測機器の観測データから逐次計算方式による数値シミュレーションにより危険区域の想定し,避難支援を行う。

1-2.降灰後の土砂災害に対するハード対策

①無人化施工による緊急対策

無人化施工により人的二次被害を避けた仮設導流堤防,遊砂地などの整備を図る。

②恒久対策による泥流型土石流の捕捉

清流乱流の流速分布に近く流速の早い泥流型土石流に対して,最下流に設置した不透過型砂防堰堤により補足し,渓流保全工を整備して安全に流下させる。

H26年 建設部門、河川砂防 Ⅱ-2-2問題(南海トラフ地震対策) 模範解答と解説

問題文

 近年,南海トラフ地震等の巨大地震に備えて,「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」等の整備や,具体的な対策の策定が進められている。南海トラフ地震等の巨大地震が発生した際には,強い揺れ,液状化・地盤沈下,巨大な津波等の発生による被害が想定される。そこで,河川,砂防及び海岸・海洋分野の観点から,以下の問いに答えよ。

(1)南海トラフ地震等の巨大地震の発生により想定される被害を2つ以上取り上げ,その被害を軽減するため,平常時から準備しておくべき対策と対策実施の際に留意すべき事項を述べよ。

(2)(1)で取り上げた想定される被害について,巨大地震発生時の応急対策と対策実施の際に留意すべき事項を述べよ。

模範解答1   簡易答案形式

(1)巨大地震の発生による被害及び対策

1)広範囲な堤防の液状化

①平常時の巨大地震対策

  • 堤内液状化を考慮した堤体耐震補強対策
  • 堤防基礎地盤の液状化対策

②平常時の巨大地震に対する留意点

  • レベル2(L2)地震動に対する耐震性能照査による堤防の機能確保

2)河川への津波遡上による浸水被害

①平常時の巨大地震対策

  • 河川防災施設の遠距離操作化

②平常時の巨大地震に対する対策の留意点

  • 東日本大震災を教訓とした道路盛土の二線堤整備
  • 近傍の建物を避難施設としたハザードマップ作成

(2)巨大地震発生時の応急対策および留意事項

1)堤防の液状化に対する応急対策および留意事項

①巨大地震時の応急対策

  • 堤防損傷箇所の補強対策

  —緊急的な点検により堤防損傷箇所を把握する。

②巨大地震時に応急対策を実施する際の留意事項

  • 地盤沈下量を考慮した堤防高の確保

  —堤防の沈下量を計測

2)津波遡上による浸水被害に対する応急対策および留意事項

①巨大地震時の応急対策

  • 排水機場による浸水の排水

②巨大地震時に応急対策を実施する際の留意事項

  • 地震後の降雨による堤内地排水の確保

  —内水氾濫の防止

模範解答2   答案形式

(1)巨大地震の発生による被害及び対策

1)液状化による堤防の崩壊

 南海トラフ等の海洋型の巨大地震は,長い時間にわたり,繰り返し荷重が堤防に作用することから,せん断抵抗を失い,液状化により堤防が崩壊する。

①堤防の液状化対策

 軟弱粘性土を基礎とする河川堤防は,圧密沈下により閉封飽和域が増加し,堤体内の水位が高く,堤体本体が液状化しやすい。よって,ドレーン工,抑え盛土工の設置により,堤体崩壊を防止する。

②留意点

 堤体内浸透水の排水を促進し,堤体内の液状化範囲を減じる。そして,堤防の安定化を図り,計画高水位(H.W.L)を確保して堤防機能を保持する。

2)河川への津波遡上による浸水被害

 地震後には,巨大津波が河川を遡上する。その遡上した津波が河川堤防を越水し,広範囲に浸水被害が発生する。

①浸水被害対策

 レベル2の津波には,東日本大震災において道路盛土が津波の遡上を防止した。以上を教訓として他事業と連携し,河川,道路施設の自律分散協調による多重防御により浸水被害拡大防止を図る。

②留意点

道路盛土による二線堤の整備にあたっては,平常時に自律的に機能し,有益な費用対効果を発生する道路交通網として整備を行う。

(2)巨大地震発生時の応急対策および留意事項

1)堤防の液状化対策

①液状化応急対策

 早急な施工の可能な盛土による仮堤防の築造を行い,計画高水位の確保を行う。また,被害の著しい箇所については,土嚢とシート保護による雨水浸透防止対策を行う。

②留意事項

 仮堤防の築堤にあたっては,鋼矢板などの遮水性機能を有する材料を盛土と同時に施工し,浸水破壊の二次被害の防止を図る。

2)津波遡上による浸水被害対策

①津波遡上に対する応急対策

 浸水被害の発生したエリアにおいては,排水ポンプ車により,堤内地の強制排水を行い,浸水エリアの減少を図る。

H26年 建設部門、河川砂防 Ⅲ-1問題(河道閉塞・天然ダム) 模範解答と解説

問題文

 我が国の社会資本は、高度成長期などに集中的に整備され、国民の日々の生活を支えるとともに、産業・経済活動の基盤となってきた。今後、これらの社会資本の老朽化が急速に進むが、限られた財源の中で的確に維持管理・更新していく必要がある。このような状況の中で、以下の問いに答えよ。

(1)今後、河川、砂防及び海岸・海洋分野における社会資本の維持管理・更新を的確に行っていくために、留意すべき事項を幅広い視点から概説せよ。

(2)(1)で概説した留意すべき事項を踏まえ、あなたが最も重要と考える技術的課題を2つ挙げ、それを解決するための技術的提案を示せ。

(3)(2)の技術的提案それぞれについて、実行する際のリスクや課題について論述せよ。

模範解答   答案形式

1)社会資本の維持管理・更新を行うための留意点

1)劣化損傷予測技術の向上

 河川構造物は,流水,土砂移動による磨耗,乾燥収縮などにより,水衝部が最も損傷を受けやすい。よって,水理学的,材料力学的機能を保持できなくなるまでの定量的な把握を行う。

 劣化予測は,マルコフ連鎖モデルを用いて,将来の不確実性を最小化し,河川構造物に対する要求性能を満たす管理目標を定量化する。

2)脆弱性箇所の合理的な手法による点検箇所抽出

 洪水等による既往災害履歴を参考に粗度係数等の各種パラメータを数値シミュレーションにより同定し,脆弱性が顕在化する箇所を抽出し,集中的に補強を行う。

3)広範囲な流域の河川施設の合理的な維持管理

 河川構造物は,上流から下流及び支川を含めた広範囲に設置されている。

 特に維持管理に費やす労力の占める割合が大きい,①洪水調節機能を持つダムや②樋門・樋管等のゲート施設の維持管理,③延長の長い河川及び海岸堤防について合理的な維持管理を行う。

(2)留意点を踏まえた技術的課題と提案

1)重要と考えられる維持管理の課題

①リスク評価による重点点検箇所の抽出

 過去の災害被害状況から学ぶことは,経験に基づく科学的な方法を導入する一つの方法となるが,災害被害が発生してからの原因究明となり事後保全と同様になる。

 よって,リスク評価に基づき,過去に経験した結果から将来予測される被害に予防保全的に対処し,脆弱性の顕在化する箇所を重点点検箇所として特定する。

②広範囲な流域にわたる河川施設の維持管理の簡素化

 ゲート施設においては,水頭差や水圧等による位置エネルギーを利用した維持管理の簡素化の実施を行う。

 また,堤防施設においては,計測技術を活用した維持管理の簡素化を実施する。

2)重要と考えられる維持管理の技術的提案

①リスク評価手法に基づく重点点検箇所の対策

 リスク評価手法により,破壊・崩壊モードを推定し脆弱性の顕在化する崩壊危険箇所を同定し,点検・モニタリング箇所を特定する。

 そして,リスクの発生確率及びそのリスクが顕在化した場合の規模を定量的・定性的に把握し,超過洪水による越水,地震時の液状化に対してリダンダンシーを持つスーパー堤防化等によるリスク低減対策を行う。

②点検技術を活用した人力・コスト縮減対策

a)ゲート施設の自動化による維持管理の簡素化

 ゲート施設が設置された河川構造物は,以下のような簡素化を行い,付帯施設である機械・電気設備等に要する維持管理の人力・コスト縮減を図る。

・既設ダム:再開発によるゲートレス化

・樋門施設:フラップゲートによる自動開閉化

b)計測技術を活用した維持管理の簡素化

 延長の長い堤防施設は,レーザフロファイラー,車両搭載型のレーザスキャナによる広範囲な点検により日常点検の簡素化を行い,効率化を図る。

(3)技術的提案を実施する際のリスクや課題

①リスク評価の不確実性

 治水の基本は,水系一貫であることから,河川の脆弱性の顕在化する箇所を強化することで,その上下流の他の箇所が洪水リスク(不利益)にさらされることがある。

 この損失を氾濫原の保全,避難行動指示などの多様な方策の組み合わせ(ポートフォリオ)により流域全体でバランスをとることが課題となる。

②再開発ダムへの堆砂リスク

 ダムの貯水池の堆砂は,100年規模のライフサイクルが考えられることから,計画を越えた時点で,カタストロフ的な変化もたらすものでは無い。

 よって,再開発のゲートレス化により,自然越流による洪水調節が変化し,下流への洪水リスクが増加する。

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