問題文
近年、大規模な自然災害が国内外で発生している。さらに、気候変動に伴う自然災害の激化や大規模地震の発生等が懸念されており、防災・減災のさらなる取組が必要となっている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)近年発生した大規模な自然災害について1事例を抽出し、具体的に生じた事象や課題を3項目記載し、それぞれの事象や課題に対して、河川、砂防及び海岸・海洋分野の技術者として、被害の軽減に向けて取り組むべき具体的な方策について記述せよ。
(2)各種の自然災害を対象としたハザードマップ作成の取組が進められている。住民の主体的な避難行動を促す観点から現状のハザードマップの課題を2つ記述せよ。
(3)(2)であなたが取り上げた2つの課題のそれぞれについて、改善策を具体的に記述せよ。
模範解答1 (簡易答案形式1) 添削履歴 3回 完成日 2018/5/19 専門事項 河川計画
1. 大規模土砂災害と取り組むべき方策
事例:平成26年8月に発生した広島市の土砂災害について
事象や課題①:土砂災害警戒区域を住民が把握できていない。
方策①:シミュレーションを用いて土砂災害危険を認識させる。
事象や課題②:避難所、避難経路が安全な場所にない、避難所、避難経路を理解できていない
方策②:ハザードマップを用いた防災教育を通じて安全な避難所・避難経路の設定、周知
事象や課題③:避難勧告が発令されないと自主的に避難できない。
方策③:メッシュごとに土砂災害発生危険度を示した情報提供による自主避難を行う。
2.現状の土砂災害ハザードマップの課題
(1)災害時に十分活用できていない。
- 災害時にハザードマップを活用しやすくする仕組みが必要である。
- 住民説明会等の参加率が低い高齢者や外国人労働者等にハザードマップを浸透させる必要がある。
(2)住民が自発的に行動する仕組みが必要である。
- 安全な避難所・避難経路を住住民が判断することが必要である。
- 避難勧告が待つのではなく、雨量が災害情報を確認し、自発的な避難を行う仕組みを作る。
3.改善策
(1)ハザードマップの活用率を増加させる仕組み
SNSに疎い高齢者にも情報提供でもきるようテレビのデータボタンでの取得や、ハザードマップ専用のタブレットの配布を行う。
自治会単位で防災リーダーを定め、説明会に出席しない高齢者や外国人労働者等に説明する。
(2)具体的な行動をとる仕組み
各災害危険箇所のシミュレーションを作成し、自分が住む地域や避難経路のリスクを認識する。
住民自らがマップに危険箇所等を記入したマイマップを作成し、自発的な避難行動を促す。
5kmメッシュごとに土砂災害発生危険度を示した情報やGPSを用いて最寄りの避難所へナビゲーションするリアルタイムハザードマップを作成する。
模範解答1 (答案形式) 添削履歴 3回 完成日 2018/6/5 専門事項 河川計画
1. 大規模土砂災害と取り組むべき方策
平成26年8月に発生した広島市の土砂災害について課題と方策を以下に述べる。
事象や課題①:自分が住んでいる地域が土砂災害警戒区域に指定されているか、どんな災害が起こりうるかを住民が把握できていなかった。
方策①:土砂災害警戒区域について多用な情報提供と、各区域について土砂災害発生シミュレーション作成し、起こりうる土砂災害を認識させることが必要である。
事象や課題②:山際に住宅地が密集しており、避難所・避難経路が安全な場所になかったり、避難所・避難経路を把握できていない住民がいた。
方策②:ハザードマップを用いた防災教育や避難訓練を行い、各々が安全な避難所・避難経路を設定する必要がある。
事象や課題③:降雨のピークが深夜だったこともあり、市町村の避難勧告が遅れた。避難勧告が発令されないと自主的に避難できないことが課題である。
方策③:5kmメッシュごとに土砂災害発生危険度を示した情報をリアルタイムで提供し、住民各々が避難するか否かを判断する仕組みを作成する。
2.現状の土砂災害ハザードマップの課題
(1)土砂災害に対する理解力の向上
現状のハザードマップでは警戒区域が記載されているだけで、実際に自分が住んでいる地域でどんな土砂災害が発生するのかを認識するには十分ではない。
土砂災害発生シミュレーションを用いて発生しうる土砂災害を住民が具体的に理解することにより、安全な避難所・避難経路を判断することが可能となる。
(2)住民が自発的に行動する仕組みが必要である。
安全な場所に避難所がなかったり、避難する途中で被災する場合がある。安全な避難所・避難経路を住民が判断することが必要である。
避難勧告が発令されないと避難できない、発令されても避難しない場合がある。避難勧告が待つのではなく、雨量予測や災害発生危険度情報を住民自らが確認し、自発的な避難を行う仕組みを作る。
3.改善策
(1)土砂災害に対する理解を高めるための方策
1)土砂災害シミュレーションの作成
自分が住む地域で実際にどんな災害が発生するのかをできるだけリアルに認識させることが必要である。全国に約50万箇所の土砂災害危険箇所があり、各斜面の地形地質条件等を用いた数値解析による土砂災害シミュレーションを作成することは現実的ではない。グーグルアース等の衛星写真を用いて現在公表されているハザードマップの土砂災害危険区域をベースにして土砂を堆積させる簡易的な方法で動画を作成する。リアルな映像を提供することにより、動画を用いて自分が住む地域や避難経路でどのような土砂災害が発生するかを具体的に認識させることが必要である。
2)地域コミュニティーによる活動
地方自治体は、アドバイザーとして土砂災害の専門化を派遣する等の支援を行い、自治会単位でハザードマップを活用した避難訓練を実施することを推進する。地域ごとに防災リーダーを定め、同じ地域に住む住民が話し合うことにより自分が住む地域のリスクを理解できるようになる。同時多発的に発生する土砂災害では、自治体に頼ることはできないため、個々が土砂災害のリスクを認識し、自助・共助が主体となり避難することにより、逃げ遅れを防ぐことができる。
(2)具体的な行動をとる仕組み
1)住民自ら作成する仕組み
ハザードマップに最寄りの避難所や避難経路を住民自らが記載する形式にし、住民説明会や避難訓練を行う。住民自らがマップに危険箇所等を記入したマイマップを作成することにより、マップへの理解を深めるとともに自発的な避難行動を促す。
2)リアルタイムハザードマップの公表
今後の雨量予測や5kmメッシュごとに土砂災害発生危険度を示した情報提供、GPSを用いて最寄りの避難所へナビゲーションするリアルタイムハザードマップを作成する。インターネットで公表することにより、自宅外であっても住民自らがとるべき行動を判断できるようにする。