R2年、2020年 衛生・廃棄物・資源循環 Ⅲ−1 問題 模範解答と解説
Ⅲ-1 環境と成長の好循環に結びつく環境課題の解決策(ソリューション)をビジネスチャンスになるような廃棄物処理が求められている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)あなたが専門とする分野における廃棄物処理上の今日的な環境課題について、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対してビジネスチャンスに結びつくような廃棄物処理上の複数の解決策(ソリューション)を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
模範解答1簡易答案形式1衛生、廃棄物 専門:処理施設計画 2021/4/18
1.環境と成長を結ぶ環境課題解決策とその観点
1) 廃棄物燃焼での熱電併給による産業構築
廃棄物燃焼での熱を有効利用できず排出している。廃棄物発電で回収しているが現状発電効率20%程度。発電と熱供給で回収を徹底する。焼却性能向上での公害問題を解決により廃棄物焼却設備を需要先近傍に設置し、電気と熱を供給するシステムを構築する。熱供給は、利用可能な工場・農業に販売し収益を得る。
工場へ今まで熱販売がなかった理由は何か。それを克服すること。
⇒湾岸限定を外します。ダイオキシン問題等でNIMBY施設であり、熱を利用しやすい農地や工業地帯の需要先近傍に立地していなかった。大規模化で安定連続運転、焼却性能もあがり公害問題もなくなった。
2) マテリアルリサイクルでの情報化による廃棄物安定調達
廃棄物は、分別が悪く安定供給できないため、リサイクル品質・量が悪いため売値が安価であった。
廃棄物は品質が悪く安定した供給が見込めず、リサイクル品質が悪く量を供給できない。リサイクルは、安定した廃棄物量と高い再生品質が必要。
このためには排出源の工場等の各製造段階で回収する。排出重量を遠隔管理し必要時に素材と量を収集が可能となる。これにより高い再生品質により製品価格・採算性の向上が見込める。
3)廃棄物のメタネーション等による燃料化
廃棄物は化石燃料由来も含まれ燃焼により排出され炭素循環できていない。廃棄物をガス化し、H、CO、CO2としメタネーションでメタン化、FT反応でナフサ・軽油等の燃料化する。有効利用後CCU等でCO2回収し循環構築する。炭素循環と廃棄物処理を両立できる。
2.重要課題「上記1」の解決策
2.1 解決策
1)工場ボイラの代替エネルギーとして収益化
焼却性能向上により廃棄物発電施設を製造工場近傍に設置可能となった。電気と熱を供給し収益化する。化石燃料を使用した産業用ボイラの代替として供給する。産業ボイラの代替であり、設置場所は問わない。廃棄物100tでC重油130万円の代替エネルギーになる。安定した価格でCO2削減になるメリットがある。
2)農業温室ハウスの代替エネルギーと光合成CO2供給よる収益化
農業温室ハウスに熱供給する。光合成に必要なCO2供給も行うことで農産物育成にも活用でき収益化できる。温室ハウスは、化石燃料ボイラを個別に設置で熱とCO2を供給している。この代替で設置場所は問わない。
3)水冷コンデンサ・ヒートポンプにより地域熱供給し暖房の代替
国内では、低温排熱を廃棄していた。これを水冷コンデンサやヒートポンプ採用により低温排熱を回収する。回収した熱を温水で供給することで、地域の暖房や給湯に使用できる。コペンハーゲンでは、熱供給会社が市中の大部分を廃棄物処理施設の熱エネルギーで供給(最大247MJ)している。
3.リスクとその対策
リスク:熱供給先の喪失
産業用に供給する場合は、安定した需要と収益を見込めるが景気変動等で需要先を喪失する場合がある。その対策として地域の冷暖房用として熱供給を実施する
安定した販売とCO2削減に貢献できる。また電気と熱の需要・市場価格に応じて送付先を選択化する。
模範解答1 簡易答案形式2 衛生、廃棄物 専門:処理施設計画 2021/5/3
(1) 廃棄物処理での環境と成長を結ぶ環境課題解決策
1) 廃棄物燃焼での熱電併給によるビジネス:
廃棄物処理は、NIMBYで立地が悪く廃熱を有効利用できず、発電効率20%程度で効率が悪かった。発電と熱回収を両方徹底する。焼却性能向上で公害問題解決により、焼却施設を需要先近傍に設置し電気と熱を併給する。電気は電線網へ、熱供給は利用可能な需要先に販売し収益を得る。
2) マテリアルリサイクルビジネスでの廃棄物安定調達の情報化:
廃棄物分別が悪く安定供給できないため、リサイクル品の品質が悪く、供給量に依存するため売値が安価になる課題がある。排出源の工場の各製造段階で回収する。排出重量を遠隔管理し必要時に高品質で量も回収できる。これによりリサイクルで高い品質で高価格により採算を向上する。
3) 廃棄物のメタネーション等による燃料化ビジネス:
廃棄物発電は、燃焼により一部回収するが大部分は大気へ放出され有効利用できない。化石燃料はGHG発生源として課題がある。廃棄物をガス化でH、CO、CO2に分離し、メタネーションでメタン化等で燃料化する。発生するCO2も有効利用し、バイオ燃料として新たなビジネス展開する。
(2) 最も重要な課題と、その解決策・ソリューション
廃棄物燃焼での熱電併給によるビジネス
1) 工場ボイラの代替エネルギーとして収益化
公害問題があったが、焼却性能向上により廃棄物発電施設を製造工場近傍に設置可能となった。電気と熱を供給し収益化する。工場の化石燃料ボイラの代替として供給する。安定した価格でCO2削減になるメリットがある。
2) 農業温室ハウスの代替エネルギーと光合成CO2供給での収益化
上記1)と同様に農地近傍での設置可能となった。農業用温室ハウスに供給する。また光合成に必要なCO2供給も行うことで農産物育成にも活用でき収益化する。
3) 低温排熱を利用した地域熱供給による収益化
これまで廃棄していた低温排熱を水冷コンデンサやヒートポンプを採用し80℃温水等で暖房や給湯に活用する。上記1)と同様に都市部に設置可能となった。安定した収益源となる。
(3) 新たに生じうるリスクとその対策
1)リスク : 温室効果ガス発生源として廃棄物発電への制限が入る。廃棄物中には、化石燃料由来のプラスチック等が含まれており、炭素税や焼却への制限が想定される。炭素税で利益が出ない。さらにプラ類の焼却不可の場合、プラ選別コスト、熱回収量半減により運営が不透明となる。
2)対策 : ①廃棄物処理施設にCCU導入による燃料化:排ガス処理後にCCUで排ガス中のCO2を回収により運転を継続できる。ただし運転コストが、3割上昇し採算性が悪化する。余剰電力での水素製造と連携しメタン化やメタノール化の燃料化で収益を得る。
②メタン発酵導入による燃料化:焼却が不可となった場合、選別装置でプラを選別する。有機物はメタン発酵でCH4とCO2を生成し、同様にメタン化やメタノール化の燃料化で収益を得る。
模範解答1 答案形式 衛生、廃棄物 専門:処理施設計画 2021/5/7
(1)廃棄物処理での環境と成長を結ぶ環境課題解決策
1)廃棄物燃焼での熱電併給によるビジネス
廃棄物処理は、NIMBYのため立地が悪く廃熱を有効利用できず、発電効率20%程度で効率が悪かった。発電と熱回収を両方徹底により総合効率100%弱達成できる。焼却施設を需要先近傍に設置し電気と熱を併給する。電気は電線網へ売電し、熱供給は蒸気や温水で利用可能な需要先に販売し、徹底した熱回収により収益を得て新たなビジネスとする。性能向上による環境問題解決により都市部で新たなビジネスが可能である。
2)DXによるリサイクルビジネスの発展
廃棄物は分別が悪く、廃棄物の供給が安定しない。そのためリサイクル品の品質が悪く、供給量に依存するため売値が安価になる課題がある。排出源である工場の各製造段階で回収、その排出重量を遠隔管理により必要時に高品質で必要量を回収するDX化を推進する。これによりリサイクルビジネスで、高い品質で高価格により採算性を向上できる。
3)廃棄物メタネーションによる燃料化
廃棄物発電は、燃焼しその一部の熱を回収するが大部分は大気放出され有効利用できていない。廃棄物中にはプラも含まれ温室効果ガス発生源として課題がある。廃棄物をガス化でH2、CO、CO2に分離し、メタネーションでメタン化し燃料化する。発生するCO2も有効利用しバイオ燃料として新たなビジネスを展開し収益を得る。
(2)最も重要な課題と、その解決策
廃棄物燃焼での熱電併給によるビジネス
1)工場ボイラの熱電併給によるビジネス
廃棄物燃焼は、ダイオキシン等の公害問題があった。焼却性能向上により廃棄物発電施設を製造工場近傍に設置可能である。工場に電気と熱を供給し収益を得る。その工場で使用していた化石燃料ボイラの代替として供給する。さらにバイオマスエネルギー分をJ-クレジット等で削減量をクレジット化し、追加収益を得る、
2)農業ハウスエネルギーでの収益化
廃棄物燃焼性能の改善により農地近傍での設置も可能となった。熱を農業用温室ハウスに供給する。また排気ガス中のCO2もCCU設備で回収し供給する。光合成に必要なCO2供給も行うことで農産物育成にも活用でき収益化できる。売電・熱供給・CO2供給で収益を複数で得る。
3)低温排熱を利用した地域熱供給による収益化
これまで利用せず、排気していた低温排熱を水冷コンデンサやヒートポンプを採用し、80℃温水等で暖房や給湯に活用する。高温排熱は発電、低温は熱供給で徹底した熱回収を行う。インフラエネルギーとして安定した収益源となる。供給先が複数化により収益の安定化が図れる。
(3)新たに生じうるリスクとその対策
1)リスク:さらなるCO2削減でカーボンマイナス目標により排出規制強化が予想される。バイオマスを含む廃棄物燃焼排ガスも該当する。
CO2排出ゼロまたはマイナスでは、廃棄物の焼却処理できない。処理インセンティブや売電・熱販売を得ることができず運営が困難となる。
2)対策:①CCU+燃料化でカーボンリサイクル
CCU+燃料化でカーボンの循環を構築でき、カーボンマイナスを実現し運営を継続できる。解決策として再エネ余剰電力でH2を製造し、回収CO2とH2でメタン化やメタノールで燃料化、販売し収益を得る。既存の廃棄物発電も本施設を追加により継続運営できる。
②メタン発酵設備導入による燃料化
燃焼を伴わない廃棄物処理方法で燃焼不可時も対応可能である。廃棄物のメタン発酵である。廃棄物を選別装置で、有機物とその他を選別する。有機物はメタン発酵の嫌気消化によりCH4とCO2を生成できる。これを用いてメタン化やメタノール化で燃料化し、これを販売し新たな収益を得る。カーボンニュートラルと収益化を両立できる。
解説
テーマにないことを記入しても、試験官から高く評価してもらえません。課題解決策では、メインの事項を明確に記入するようにしましょう。副次的なものを最初にもってこないとか、今までになかったビジネスは何かを明確にするようにしてください。「燃焼効率を上げて最大限熱回収→公害防止で街中に建設できる。そして熱供給→熱供給がメインで行く」など。
見出しの書き方は、簡潔に短く、コロンとかは無くて構いません。
留意点としては、ランニングコスト削減などではなく、経済性の高まること、例えばビジネス化などで新たに儲かることを記入するのが良いでしょう。ここではカーボンプライシングで排出権を肩代わりし収入にかえるなどの提案です。解決策の主題であるビジネス提案として解答する。副次的なものは不要です。単なる低炭素など提案しても仕方ありません。それはテーマ違いです。カーボンプライシングで収入を得ることを知友芯に考えるように。