№12 R3年 上下水道部門 下水道の答案について添削致しました。 2021/08/17

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この答案についての講評

 答案の表現力はこれで十分です。見識問題では正しく解答ができています。試験結果は、予想通りオールAで合格されました。素晴らしい結果です。上下水道部門下水道技術士としてのプロの答えを表現すればさらに合格しやすかったです。今回の試験ではそこまでの専門的な練習は不足していたのではないかと想像されます。

 これまで3回目も受験されて、しかも有料の講座もお受けになって苦労されているご様子なので残念です。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しい場合があります。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくして正解答案として高めてください。

 必須Ⅰでは、上下水道技術士の課題の議論がやや少なく、一般的な業務マネジメントとなっているように感じます。官民連携とか安直に組織や他者に頼るのではなく、技術士としてのご自身の提案があれば申し分なかったです。

選択科目Ⅱ-1は、省エネだけではなく下水道施設でのエネルギー生産、農業の生産性向上に貢献することを訴えましょう。Ⅱ-2は、出題者意図がやや読み取れていなかったようです。問題文にある「防災」と「減災」を組み合わせた・・の意味がカギです。ご自身のアイデアがまとまらないままでは専門家らしい提案は苦労されたと思います。Ⅲは、老朽化、耐震化の必要性はともかく、ICTの主題とはやや関係薄いのではありませんか。ここはICTの活用を推進して対応すべきかと思います。ナレッジマネジメントは◎です。この問題の主題のICTの活用との関係性について述べるると、さらに楽勝で本題に迫る得点力の高い答案が書けたのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分49秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1  日本の将来人口は減少していくと予測されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図ながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1)上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2 )抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げ、その課題 に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1) 上下水道事業に共通する課題(3つ)

①上下水道に携わる技術者の減少への対応

 上下水道に携わる官民双方の技術者は40〜50歳代が多く、人口減少などにより技術者は減少する傾向にある。今後長期的視点から上下水道事業を継続していくためには、ナレッジマネジメント、ICTの活用、官民連携などを行い、技術者減少に対応することが課題である。

■このページは合格点取れています。

②上下水道施設の老朽化及び更新需要の増大への対応

 上下水道施設の多くが老朽化により更新時期を迎えている。

そのため、アセットマネジメント手法を採用し、施設のリスク評価や影響評価に基づき、更新需要を平準化するとともに、効率的な施設維持管理を実施することが課題である。

③財政収支の悪化への対応

 人口減少に伴い料金収入が減ることが想定される一方で、更新や維持管理に要する費用が今後増えることが想定される。

 支出削減のための民間活用や、簡易水道・人口3万人以下の下水道事業への複式簿記・公営企業会計を導入し、健全な財政収支を確保することが課題である。

■経営改善はわかりますが、技術士の貢献になるでしょうか。下水道工学の視点からの指導、改善提案はありませんか。

(2) 最も重要と考える上下水道に共通する課題

①最も重要と考える課題

 前述の「(1)−①上下水道事業に携わる技術者の減少への対応」が最も重要な課題と考える。

 その理由は、上下水道事業を安心・安全に継続的に実施していくためには、技術の継承や研さんが必要だからである

■近年、理由は求められなくなりましたので書かれなくても構いません。解決策に注力しましょう。

②解決策

1)ナレッジマネジメントの採用

 ナレッジマネジメントの採用により技術継承と向上を図る。ベテラン職員の技術やノウハウは技術者の頭の中にあり暗黙知となっており、形式知化を図るとともに、業務手順のマニュアル化や標準化を図り、また、継続的な教育訓練を実施する研修計画を立案・実施することによって、技術継承を行うことが解決策である。

水道技術と関係の無い能力開発です。このような取り組みは何の事業でもいることです。技術士としてはどうなのか、水道技術に特化した話はありませんか。

■1)はOKです。合格点取れています。

2)ICTの活用

 ICT技術を活用して、技術の継承や業務の効率化を図る。具体的には、BIMやi-constructionによる施設工事の施工自動化、システムを活用したストックマネジメントやナレッジマネジメント、処理施設の運転監視制御システムの導入による業務の効率化などである。業務効率化により少ない技術者で事業を推進していくようにするのが解決策である。

■業務効率化はOKですが、上下水道の分野でICTはどのように進めますか。ただBIMやi-constructionしかありませんか。建設と同じようにすればよいだけでしょうか?キーワードを挙げるだけでなく、水道としての活用法に触れるようにしてください。

3)官民連携の推進、広域化・共同化

 DB、DBO、コンセッション方式などの民間への包括委託、PFIなどの民間資金の活用などが解決策である。事前のマーケットサウンディングやVFMの算定などによって官民連携の効果を事前に調査することに留意する。また広域化・共同化によって事務事業の効率化を図り、執行体制の省力化を図ることも解決策である。

(3) 新たに生じうるリスクと解決策

 ICT活用におけるサイバーテロが新たに生じうるリスクとして考えられる。関連システムが停止すると上下水道の供給が停止、大きな影響が発生する懸念がある。

■情報システムにサイバー攻撃はつきものです。易しすぎて技術士が挙げるリスクとは思えません。提案内容の「ナレッジマネジメント、ICT、官民連携」が完成した時点で、社会問題となることはありませんか。

 そのため、情報セキュリティ体制を強化することはもとより、上下水道事業に携わる技術者への教育・訓練を強化する。

(4) 技術者倫理、社会の持続可能性の観点からの業務遂行要件

 官民連携にあたっては、民間企業が公益よりも収益を優先する懸念がある。

■解決策のメインは「官民連携」できなく「ナレッジマネジメント、ICT」です。こちらについて述べる方がよいでしょう。

技術者として公益確保を最優先することを念頭に起き、民間の活用にあたっては、責任分担を明確化するなどの対応を図る。

 また、社会の持続可能性の観点からは、地球環境保全の重要性に鑑み、温室効果ガスの削減、省エネルギー、資源の有効利用などを施策として取り込むなどの対応が必要である。            以上

■社会の持続可能性のために温室効果ガスを削減するでは、ほぼイコールではありませんか。問いの真意は「問2の解決策、ナレッジマネジメント、ICT、官民連携でCO2削減するには、あなたは何の行動(要件)をしますか」という意味です。独自の取り組みが要ります。

問題文 II-1-4 下水汚泥のエネルギー利活用の目的を説明し、下水汚泥の固形燃料化と汚泥消化の特徴及び導入における留意点を述べよ。

(1) 上下水道事業に共通する課題(3つ)

①上下水道に携わる技術者の減少への対応

 上下水道に携わる官民双方の技術者は40〜50歳代が多く、人口減少などにより技術者は減少する傾向にある。今後長期的視点から上下水道事業を継続していくためには、ナレッジマネジメント、ICTの活用、官民連携などを行い、技術者減少に対応することが課題である。

■このページの①②は合格点取れています。

②上下水道施設の老朽化及び更新需要の増大への対応

 上下水道施設の多くが老朽化により更新時期を迎えている。

そのため、アセットマネジメント手法を採用し、施設のリスク評価や影響評価に基づき、更新需要を平準化するとともに、効率的な施設維持管理を実施することが課題である。

③財政収支の悪化への対応

 人口減少に伴い料金収入が減ることが想定される一方で、更新や維持管理に要する費用が今後増えることが想定される。

 支出削減のための民間活用や、簡易水道・人口3万人以下の下水道事業への複式簿記・公営企業会計を導入し、健全な財政収支を確保することが課題である。

■経営改善はわかりますが、技術士の貢献になるでしょうか。下水道工学の視点からの指導、改善提案はありませんか。

問題文 II-2-1 大規模な地震時においても下水道が有すべき機能を維持するため、既存の下水道施設への地震対策が必要である。そこで、重要な下水道施設の耐震化を図る「防災」と被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を組合せた下水道総合地震対策を計画することになった。あなたが業務責任者として選任された場合、下記の内容について記述 せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する 点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、すべき事項と内容

■問題文にある「防災」と「減災」を組み合わせた・とはどいう意味かお考えですか。

目的が不明確なままで、とりあえず白紙から調べ上げてそれから考える・・では専門家、経験者の答えになりません。調べる前にシナリオ、ポイントを決めてかかることです。

①上位計画、関連計画の調査・整理:下水道処理区を所管する地域防災計画、都市計画、総合治水計画など、関連する計画を調査し、整理する。

②下水道施設諸元の調査、整理:下水道処理施設、ポンプ場、管きょなどの施設諸元を整理し、耐震化状況を調査する。必要によっては耐震診断を実施し耐震性を判定する。

③被害想定の検討:市町村によっては地域防災計画の想定地震が複数存在することがあるため、想定地震動を調査する。そのうえで、想定地震による下水道施設の被害想定について検討する。

(2)業務手順と留意点・工夫点

■BCPは大事ですが、すべてではありません。またここはケーススタディなので、BCPの一般論は不要で、下水道施設をどうするか(それだけ)を特論する必要があります。

 地震対策はBCP(業務継続計画)を策定したうえで実施することが望ましい。

 以下、事前対策と事後対策に分けて業務手順を述べる。

①事前対策(防災)

 施設の耐震化を行う。具体的には、管きょ人孔部の耐震化、処理場建屋の耐震化、監視制御設備にかかる回線の二重化、機械・電気設備の自家発電設備の設置などを行う。財政上の制約から一斉に耐震化や更新を行うことが困難であるため、優先度を評価して、順次耐震化を実施することが留意点である。

②事後対策(減災)

 BCPに基づき、災害発生後の段階に応じた対応を行い、おおむねRTO(目標復旧時間)内に復旧できるようにする。RTOは発災後おおむね1ヶ月後と定める場合が多いが、下水道施設の被害想定や影響範囲、住民アンケートなどによって決定するのが望ましい。被害想定を基に、他都市や業者、自衛隊などからの応援受け入れ状況を調査したうえで、RTO内に復旧するために必要な体制を検討する。

 発災後の対応のため、予め施設復旧用の資機材や処理薬品の調達状況などサプライチェーンの調査や、必要な資機材の備蓄を行っておく。必要に応じて災害時応援協定を締結し、迅速に資機材を調達できるようにしておく。また、災害後の事業の対応力向上のため、災害対策訓練を実施する。

 災害時の情報連絡を円滑に進めるため、予め情報連絡に用いる報告様式を定めておくのが望ましい。

(3)関係者との調整方策

 災害後の対応力向上のため、平常時より、応援自治体・業者や自衛隊などの関係者との災害訓練を定期的に実施する

 また、耐震化事業の実施にあたっては費用が必要であるため、その必要性や耐震化を実施しなかった場合のリスクについて、財政部局や住民に説明するリスクコミュニケーションを図ることが必要である。

■このような心構え、一般論となっています。ここは問2に書いた手順をどのように実行するかをお考えください。

問題文 III-2 下水道事業は、人口減少による使用料収入の減少、老朽化施設の増加などの背景からより効率的な事業実施が求められており、また、降雨の局地化・集中化・激甚化に対する新たな防災・減災のあり方を検討する必要がある。さらに、人口減少社会における汚水処理の最適化、エネルギー・地球温暖化問題への対応なども求められている。

これら様々な課題に対して、持続的かつ質の高い下水道事業の展開を実現するためにICTの活用が推進されており、下水道事業の質・効率性の向上や情報の見える化を進める 責任者の立場として、以下の問いに答えよ。

(1)ICTの活用を推進して対応すべき課題について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1) ICTを活用して解決すべき課題

施設老朽化、耐震化への対

■老朽化、耐震化の必要性はともかく、ICTとは関係薄いのでは?ここはICTの活用を推進して対応すべき課題を端的に挙げるように。

 国内の多くの下水道施設が、高度経済成長期の拡張期に建設されたものであり、老朽化を迎えている。また、いまだに耐震化されていない下水道施設も多く存在する。

老朽化に対応し維持管理費用を低減させるため、ストックマネジメント手法などの導入が課題である。

②技術者の減少への対応

 下水道に携わる官民の技術者は40〜50歳代が多く、また、技術者数は減少の一途をたどっている。

そのため、ナレッジマネジメントなどにより技術の継承と技術力向上を図ることが課題である。

■ナレッジマネジメントで技術継承はともかく、ICTでなくともできることです。ここではICTをどう活用するか、その活用法について提案してください。

③財政収支の悪化への対応

 人口減少に伴う使用料収入が減少する一方で、今後の施設更新費用や維持管理費用が増大する可能性があり、財政収支の悪化が懸念される。

更新費用の平準化、維持管理費用などライフサイクルコストの削減、覆域簿記などの公営企業会計の導入によって、健全な財政収支を確保することが課題である。

■これも同じ。確かに下水道の課題ですが、この問題の主題のICTの活用との関係性が述べられていません。

(2) 最も重要と考える課題と複数の解決策

 最も重要な課題は前述の「(1)-①施設老朽化、耐震化への対応」である。下水道事業は国見が健康的に生活するためになくてはならないインフラ施設であり、処理を停止させると大きな影響が発生するからである。

 複数の解決策について次のとおり述べる。

■理由は不要です。

①ICT活用によるストックマネジメントの推進

GISや設備台帳システムを活用し、管きょ(布設位置、管種、建設年度など)や設備(建設年度、設備種類など)を収集整理する。管きょが埋設されている道路の重要度や処理停止による影響度を加味し、各施設のリスク評価を実施する。リスク評価結果に基づき、優先的に対応すべき施設に対して、スクリーニングを行う。管口カメラ調査などで劣化が進行している施設については、さらなる詳細な調査として、自走式カメラやUAVなどを用いて目視調査を行い、劣化度を判断する。必要な箇所の修繕や改築・維持管理についてストックマネジメント計画を策定し、実施する。

■①②はOKです。合格点取れています。ただし冗長なのでもう少し簡潔が良いでしょう。

②施設の監視制御設備導入による効率化

特に多くのポンプ場や設備を抱える場合、監視制御を集約する監視制御システムを導入することが解決策である。これにより施設の状況を把握し、エネルギー効率を考慮した取り替えを行う。広域化や共同化を行う際もスムーズに移行でき、施設老朽化に対応できる。

③浸水シミュレーションの精緻化

近年のICT技術の発展はめざましく、特にコンピュータの処理性能が向上している。そのため、分散モデルの採用など雨水流下シミュレーションの精緻化が可能となり、大雨時の照査降雨による浸水シミュレーションが実施でき、防災対策や耐震化の向上が図れる。

④施工自動化

CIMを用いた施設工事の施工自動化を採用することで、施設更新、耐震化の迅速化を図る。

⑤技術の継承

ナレッジマネジメントシステムの採用により、技術継承にあたってのベテラン職員の暗黙知の形式知化や、e-ラーニングシステムによる研修による技術力向上を図る。

(3) 新たに応じるリスクと対策

 サイバーテロが新たに応じるリスクの1つである。これによって関連システムが停止すると、下水処理自体が停止し、大きな影響が発生する可能性がある。

■サイバーテロは今や常識です。技術士問題の答えになりにくいです。一方、解決策は難解で水道部門では歯が立ちません。現実には下水道技術士の出る幕はないでしょう。ですので、提案はできても有意義な議論はできません。

 そのため、サイバーテロに対する情報セキュリティの強化、ISMSに基づく下水道技術者への教育訓練を図る。またICTが使えない場合でも非常時優先業務が実施できるよう、BCPの対象事象にサイバーテロを追加する。

さらに、ICT導入によりベンダーロックとなり、今後の維持管理費用が増大する恐れがある。そのため、データやシステム仕様の標準化などの対策を図る。

№11 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/08/11

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この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がB、選択科目がB,A(総合A)で残念なことに不合格と評価されました。答案の表現力は十分で、見識問題では正しく解答ができていましたので、合格の期待が持てました。しかし、建設部門鋼構造及びコンクリート技術士としてのプロの提案が足りなかったようです。これらを表現すれば合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像されるところが見受けられます。

これまで2回目受験されて、これまで有料の講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しかと思います。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくしていけば次第に正解に近づきます。

 必須Ⅰでは、課題の議論がやや抽象的に感じました。風水害に対応した課題に集中した方がよいでしょうまた、解決策の提案はやや独断的のようです。風水害に対する備えを論理的に展開してください。もっと具体的に気象予測や水理工学の提案をされると良いでしょう。選択科目Ⅱ-1はほぼOKです。Ⅱ-2はやや提案力、経験力が不足しているように感じました。Ⅲは予防保全の課題を述べ、やや議論が飛躍していましたが、結果的にはAで良かったです。無駄な記述に発散するのをなくして簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けて、合格しやすかったのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば必ず合格できます。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(33分47秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

(1)防災・減災を進める上での課題

1)ハードの観

■論文試験ですのでアンダーラインなど書かれても得点効果が期待できません。ない方がよいでしょう。表面的なことではなく内容で勝負しましょう。

 大規模地震や津波等の想定外の自然災害の発生によりハードが損傷している。その一方で、想定外であるため、ハードの機能を強化するだけでは災害を防ぐことはできない上、投資効果も低い。

そのため、ハードだけでなく、ソフトを適切に組合せた多重防除により、防災・減災対策を進めていくことが課題となる。

■抽象的すぎるように感じます。もちろんハードだけでなく、ソフトも含めた防除は必要です。しかしそれは何についてもいえる一般論です。本問、風水害に対応した課題は何でしょう。

2)担い手の観点

 現場の技能労働者が高齢化等により約1/3が今後数年の間に離職することが想定されている。また、若年就業者も減少傾向にある。その一方で、防災・減災、老朽化対策等、地域の守り手としての役割は増大している。

そのため、担い手不足を補い、防災・減災対策を進めていくことが課題となる。

■「担い手不足を補う」とは新規雇用なのか、省力化、ロボット化なのか、どちらですか。問題点だけではなく解決方向を示してください。

3)財源の観点

 高度成長期に建設された大量のインフラが一斉に更新時期を迎えようとしており、多額の更新費用がかかることが想定されている。その一方で、大規模地震等、自然災害が発生した場合、老朽部が弱点となり、崩壊することが想定される。

そのため、財源不足を補い、防災・減災対策を進めていくことが課題となる。

■「財源不足を補う」とは原価低減、事業縮小、人件費削減、予算取りなどの財務、経営的な課題のようです。ここは建設部門としての課題として、ロボット施工やPC化など無人化の方針を示すように。

(2)最重要課題と複数の解決策

 前項課題の内、最も重要な課題は、ハードとソフトの組合せである。理由は、ハードで時間をかせぎ、ソフトで避難する多重防御が人命をすくうために最も有効だと考えたためである。以下複数の解決策を述べる。

■理由までは不要です。

1)交通ネットワークの整備

 災害発生時に防災インフラが粘り強く壊れて時間をかせいでいる間に安全な場所に避難できるよう交通ネットワークを整備する。交通ネットワークは、ミッシングリンクを解消し、一部の路線が寸断しても他の健全な路線へ迂回できるよう代替路を確保しておく。また、復旧時の緊急輸送路としても活用していく。

■交通が途絶えて被害が拡大しているわけではありません。まずは風水害に対する備えです。

2)地域防災力の強化

 少子高齢化の進行により、一人暮らしの高齢者や寝たきり等の災害時要援護者も増加している。このため、災害時の避難を行うにしても自助が困難である。このため、地域毎に避難訓練等を行い、共助・公助を促進し、被害者の減少を図る。

■避難の問題はもちろんあります。しかし、死亡事故だけでなく経済的な被害も大きいのです。避難誘導が完全にできたとして、物損が大きければ生活できなくなります。

3)災害情報の配信

 災害発生時に、災害情報配信遅れは命取りとなりかねない。そのため、ドローン等により、いち早く現場から災害情報を収集し、スマートフォン等にリアルタイムで災害情報を配信する。配信する情報は、避難区域、避難場所等、表示され、見る人にとって分かりやすいことが重要である。

■1)〜3)ともに避難では、焦点が偏っているように感じます。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

 前項解決策を実行しても生じうる新たなリスクは、交通ネットワーク整備から漏れた住民への避難行動である。限られた予算で鋼道路橋等の整備を行うにはコンパクト+ネットワークの範囲から行うことが有効である。その一方で、山奥等の整備から漏れた地域は災害リスクが高くなる。

■ここは問2の解決策に由来するリスクを求めています。すなわち提案内容の自己チェックです。交通ネットワーク、地域防災力の整備という一見何も問題ないような解決策にどんなリスクが潜んでいますか。提案とは別にリスクを挙げることは易しいことですが、それは真の答えではありません。

 その対策は、コンパクト+ネットワーク範囲内への移住を促すことである。高齢者等、住み慣れた地域の住人から合意を得るには困難である。しかしながら、人命を第一に考え、人々が暮らすインフラを整備していくためには必要な対応と考える。

(4)業務を遂行する必要要件・留意点

1)技術者倫理の観点

 業務を遂行する必要要件は、公正・公平な倫理観である。国土強靭化を進める際、限られた予算と担い手で行うには選択と集中の観点が必要になる。その際は、発生確率や被害想定を基に公正・公平に対策を行う優先順位を決定し、進めることに留意する。  〇

2)社会の持続可能性の観点

 業務を遂行する必要要件は、とにかく人命を守り、経済社会の被害が致命的なものにならず、迅速に回復できるようにすることである。それが持続可能な社会の構築へとつながることに留意する。 

■「社会の持続可能」の意味をやや誤解されているようです。社会の持続可能性とは「SDGs」を意味しています。そして「要件」とは「人命を守り、経済社会の被害が致命的なものにならず、迅速に回復」といった解釈、心構えではなく、「あなたは社会の持続可能を高めるために技術士として何をしますか」という意味です。

末尾の「‥留意する」では対処方法が見えないので具体的に行動を記述することです。

■末尾の「以上」はなくても構いません。

以 上

問題文 Ⅱ−1−2

 鋼部材を高力ボルトにより連結する方法において、応力伝達機構から分類される接合方法を2つ挙げ、接合方法ごとに特徴と設計及び施工上の留意点について述べよ。ただし、高力ボルトと溶接を併用する接合方法は含めないものとする。

(1)摩擦接合

1)特徴:摩擦接合は、高力ボルトにより強力に締付け、材間に生じる摩擦抵抗により応力を伝達する接合方式である。

■いずれもよく解答できています。正解です。

2)設計・施工上の留意点

①設計:応力の伝達機構から接合面に板厚差があると応力の伝達が十分にできたくなるため、フィラープレートを挿入し、密着性を高める。

②施工:使用前にキャリブレーションを行う。締付け機械に設計で想定する軸力が得られるか確認するためである。また、トルシア形高力ボルトの軸力が導入されたか確認するため、ピンテールの破断を確認する。

(2)支圧接合

1)特徴:支圧接合は、ボルト軸部のせん断抵抗及びボルト軸部と孔壁との支圧力によって応力を伝達する接合方式である。

2)設計・施工上の留意点

①設計:応力の伝達機構から接合面に肌隙があっても適用可能である。その一方で、ボルト軸部を介するため疲労のリスクがある。そのため孔径を貫通・停止ゲージで管理を行う。

②施工:支圧接合に使用する打込み式高力ボルトは、施工時に騒音がともなうため、防音パネルを設置する等、周辺環境に留意の上、施工を行う。

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)対象鋼構造物と老朽化状況、調査・検討事項

1)老朽化の状況

 対象既設構造物は、鋼トラス橋であり、現行の耐震基準で補強する前に横構ガセットプレート(以下GPL)が破断した。そのため、破断したGPLの交換を行うとともに破断しなかったGPLの耐震補強を行う。また、落橋の危険があるため、通行止めにしている

■ここまでの込み入った設定は不要です。

問題のねらいは。1現行の基準を満たすように耐震性能を向上させ、2老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行う、の2点です。

2)調査・検討事項

①現地調査:破断したGPLの調査及び既設添接面の変形等の調査を行う。

■このように補修箇所を絞り込んでしまうと逆効果です。得意分野への解答の作為的な縮小に見えれば、消極的姿勢ととられかねません。

答えの汎用性は重要な正解の要件であることを忘れてはいけません。

②机上調査:既設の新設時の設計図書やその後の工事

履歴を調査し、復元図を作成する。また、①の調査結果を復元図に反映する。

③構造検討:②の復元図を基に被災状況を再現したFEM解析を行い、構造を検討する。

④接合方法検討:既設添接面の変形に合わせて接合方法を検討する。

⑤設計値と実応力の比較検討:FEM解析結果と静的載荷試験結果の比較検討を行う。

(2)業務を進める手順

 ①から⑤の手順で業務を進める。以下に留意点、工夫点を述べる。

1)構造検討

 交換するGPLの板厚は当初より増厚し、再度同程度の地震が来ても耐えられる構造とする。また、破断しなかったGPLは当て板で補強する耐震補強を行う。

さらに交換するGPLの構造は複雑で、同様の加工を再現すると加工工程に数日かかる。そのため、構造を省力化し、一日でも早い交通開放を目指す。

2)接合方法検討

 既設添接面が変形している場合、接合面に肌隙が生じる。そのため、摩擦接合では十分な応力の伝達ができないため、肌隙があっても適用可能な支圧接合を採用する。

3)静的載荷試験

部材交換後、静的載荷試験を実施し、FEM解析結果と近似していることを確認の上、交通開放を行う。理由は、もし間違った設計を実施したまま交通開放した場合、再び損傷する可能性があるためである。

(3)関係者との調整方策

 関係者との調整方策にICT技術を活用する。具体的にはウエアラブルカメラを使った遠隔確認である。ウエアラブルカメラの映像をネット経由で発注者の事務所に送ることで、破断状況を確認することができる。

このため、発注者と警察が協議を行い、通行止めを行う判断を迅速に行うことができる。また、落橋による重大事故や第三者災害を未然に防止することができる効果もある。

■ウエアラブルカメラの提案は橋の常時監視が狙いですか。しかし問題文は老朽化構造物の耐震補強の効率化を求めています。そのための調整です。やや意味が違うように感じます。

■新たな留意点であり、問2業務の「調整」とはやや違うようです。
問2に書いた3業務を効率的に進める。そのための関係者との調整方策です。
次の3要件を同時に満たすようにすると正解しやすいです。
① 「調整」の言葉の意味は、「過剰から不足にヒトモノカネを移して均して最適化する」ことです          例:スピード調整、年末調整、与党の党内調整
②  鋼コンのプロマネなのだから、関係者を指導して対して申し入れて、関係者の行動変容を促し、結果として全体プロジェクト取りまとめる。(単なる現場担当者ではない)
③  建設・鋼コン、コンクリートの技術応用を示す。(建設の施工や事務担当でもできることは×)

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)予防保全型メンテナンス推進の課題 

1)担い手の観点

 現場の技能労働者の高齢化や若年就業者の減少により担い手が不足している。その一方で、インフラ老朽化が急速に進行し、点検・診断を行う技術者の役割が増大している。このため、技術者の育成も課題であるが、今後の人口減少化では、その対策だけではいずれ限界が来る。そこで人的資源によらない点検・診断技術の開発が課題となる。

■予防保全と人的点検が対極にあるのでしょうか。やや議論が飛躍しているようです。

また、1)の主題は「自動点検」なのですが、そこに行くまでの「担い手」の議論は冗長です。単刀直入が良いでしょう。今日「担い手不足」は常識であり、いきなり自動化を訴えて構いません。

2)ストック数の観点

 高度成長期に建設された大量のインフラが一斉に更新時期を迎えようとしている。その一方で、人口が減少し、特に地方での減少は著しく、今度利用度の低いインフラが増えることが想定される。このため、利用度に応じたインフラを選択し、予算を集中させること。また、更新時期が重ならないように保全事業を平準化していくことが課題となる。

■インフラメンテナンスの遂行がテーマではありません。平準化がされたとしても、予防保全は万全にはなりません。単刀直入に「新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換」に向かう議論とした方がよいでしょう。

3)財源の観点

 損傷が深刻化してから補修補強を行う事後保全により更新費用が増大している。その上、人口減少・少子高齢化により今後も厳しい財政状況が続いてくことが想定される。このため、損傷が軽微な内に補修補強を行う予防保全に転換し、インフラの長寿命化を図るとともに、ライフサイクルコストを縮減していくことが課題となる。

■「予防保全に転換」では出題者の意図と同じです。出題趣旨の追認となります。

(2)前項最重要課題と複数の解決策

 前項課題の内、最も重要な課題は、1) 点検・診断技術の開発である。予防保全型メンテナンスを行うためには、まず点検・診断データの収集が必要であり、そのためには、点検・診断の効率化・省人化が必要である。以下複数の解決策を述べる。

■選定理由は、求められていないので不要です。

1)点検ロボットの活用

 担い手不足の問題に対して、点検ロボットの活用を提案する。従来は、河川上の鋼道路橋の点検は、足場を設置し、技術者による近接点検が行われていたが、飛行型点検ロボットの活用により、足場が不要となり、高精度の画像データを短時間かつ少人数で取得することができる。また、足場が不要となることで、工程短縮、コスト縮減、高所作業がなくなることにより安全性が向上する。

■解決策は非常に結構です。得点が期待できます。しかし、白書の暗記に頼った解答では、課題・解決策の展開にギャップが生じますので要注意です。

2)CIMの活用及びAI診断

 点検で得られた画像データに、位置情報がないと活用は困難である。このため、CIMモデルと紐付け、損傷位置を3次元的に見える化することで、構造物の弱部による損傷であるか診断しやすくなる。また、損傷部の画像データをAIにプログラムすることで、短時間で大量の診断を行うことができる。

3)アセットマネジメントの自動化

 点検・診断のデータのデータベース化を行い、構造物と資産と捉えるアセットマネジメントを実施する。

日本全国の点検・診断のビックデータをAIで自動判別できるようアセットマネジメントの自動化を行うことで、修繕を行う優先順位付けや平準化を短時間で大量にできるようになり、予防保全型のメンテナンスを行うことができるようになる。

(3)新たに生じるリスクとその対策

全ての解決策を実行しても生じる新たなリスクは、撤去するインフラの合意形成が得られないことである。 

■問2の提案「点検ロボット、CIM、アセットマネジメント自動化」をすることによってどうして、インフラ撤去が合意されなくなるのでしょう。意味が通じません。やや論理が飛躍しています。ここは自身の提案に対する評価を求めています。

点検・診断データが蓄積されると、アセットマネジメントが実施され、維持管理方針が策定される。その維持管理方針により、維持管理を続けるインフラと撤去するインフラに選別されていく。なぜなら、今後の人口減少社会を考察すると、コンパクト+ネットワークから外れた地方の人口減少地域ではインフラの利用度が低くなることは明確だからである。

■途中の説明が冗長です。

しかしながら、例えば、撤去方針とした鋼道路橋に代替橋があっても遠回りとなる等、不便となり、地域住民の合意が得られなくなるリスクが考えられる。

 その対策は、インフラの利用度や今後維持するためにかかる費用等、地域住民にていねいに説明し、理解が得られるよう努めることである。

■ただ「丁寧に説明する」では技術士の対応としては物足りないです。技術を背景としたプロマネの貢献はありませんか。出題のねらいは問2の自身の提案に対する、反省、弱点探しと、その補完です。建設部門、鋼構造の技術提案による課題遂行能力が求められています。

№10 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/08/9

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は論文として十分です。結果はAAAと期待通りの評価で合格されました。ただし、建設部門鋼構造及びコンクリート技術士としてのプロの答えを表現すればさらに合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像されるようなところが見受けられます。

  今回は3回目の受験だとのことですが、これまで有料の講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。記述内容にやや矛盾や無駄があり、出題者が求めるストライクゾーンが答えられていないみたいです。

  必須Ⅰでは、課題の「予防保全」はテーマとして求められた防災に限らず、すべてのインフラに共通した事項で、必然的な関係性があいまいです。また、解決策では、課題とやや似ており、ダブリとなる危険性があります。もっと具体的に気象予測や水理工学の提案をされると良いでしょう。選択科目Ⅱ-1,Ⅱ-2はほぼOKです。Ⅲは課題の表現で分析が甘いです。「新技術等活用」ではなく建設・鉄道の技術課題とすべきでした。このほか説明がやや冗長となっているようです。簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けたのではと思います。

  しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーが認められたので合格されました。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。合格のヒントを音声ガイド出申し上げます。

  技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(28分34秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.災害が激甚化・頻発化する中での新たな風水害対策の課題  

←■見出しは短く1行以内で表記してください。 

(1)安心安全なまちづくり

■アンダーラインはなくても構いません。

 二酸化炭素排出量増加に伴う地球温暖化により、頻発化・激甚化する風水害に対して、被害を最小化し、住民の安心・安全な生活を守るためには、都市のコンパクト化において、より安全地域への移住誘導といったまちづくり上の規制・誘導策と、防災・減災に真に必要な事業を総合的にパッケージで展開する仕組みを構築する事が課題である。

(2)予防保全への転換と防災インフラの構築

 構造物の維持管理は、現況事後保全となっており、体系的な維持管理となっていない。構造物に劣化が起こっていると発災時に防災インフラが所定の機能を発揮しないリスクがある。求められる機能を発揮するには、所定の性能を常に満足していることが必要であり、そのためには、事後保全から予防保全に転換していく必要がある。

(3)リダンタンシーの確保

大規模な自然災害の発生により経済社会に多大な影響を与える恐れがある。なぜなら、我が国の人口は大都市に集中しており、経済、政治、行政機能も大都市に集積しているため、大規模な自然災害が大都市で発生すると主要な機能が停止することが懸念されるからである。また、災害復旧を支えるネットワークが弱いことも要因として挙げられる。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

 上記の課題の中で、(3)リダンタンシーの確保が最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

(1)コンパクト+ネットワーク

大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するにはコンパクト+ネットワークが有効である。なぜなら、コンパクト化により行政サービス等を集約化し、ネットワーク化により圏域人口を拡大することで地方創生を促し、大都市への人口流出を緩和することができると考えられるからである。

■コンパクトシティーは課題1に相当するのでここでは領域外です。リダンタンシーについて集中しましょう。

また、リニア中央新幹線の開通によるスーパーメガリージョンを形成することで、1 日の移動圏域を拡大することで、対流を促進し、地方の活性化に寄与できると考えられる。

■解決策がやや発散しています。風水害との対応を明確にするようにしてください。網羅的に広い視点を示すため解決策として3項目程度は欲しいです。

(2)災害復旧を支えるネットワークの強化

大規模な自然災害に対してリダンタンシーを確保するには災害復旧を支えるネットワークの強化が有効で

ある。なぜなら、災害復旧を支えるネットワークを強化することで、大規模な自然災害発生後、迅速な復旧を可能にし、経済社会に与える影響を緩和できると考えられるからである。

具体的には、大都市の高規格環状道路の未整備区間

の整備や高規格幹線道路の暫定2車線区間の解消、緊急輸送道路の耐震性を向上させることも有効である。

3.新たに生じるうるリスクとその対策

(1)新たなリスク

コンパクト+ネットワークや災害復旧を支えるネットワークの強化を推進する上で、特に人口減少が進む地方部では費用対効果の観点から事業化が困難になることがリスクとして挙げられる。

■解決策の推進段階でのことではなく、完成した時点でのリスクを求めています。

(2)対策

防災の観点での便益を費用便益分析に適切に反映し、事業の有効性を示すことが挙げられる。また、発現したストック効果を取りまとめ、見える化・見せる化することで国民のコンセンサスを得ることも重要である。

■費用便益分析は、すべてのインフラに行われており、ここでのテーマ「風水害」に対応した内容ではないみたいです。

4.業務遂行に当たり必要となる要件

(1)技術者倫理の観点

 事業を行う際には、予算や工期面など様々な制約があり、その中で判断を迫られる場合がある。しかし、いかなる場合も不正を行わずに業務を進めることが技術者としての倫理の観点から必要である。

■技術者倫理とはもちろん不正を行ってはいけません。あまりにも悪すぎる喩えでは正しい説明になりません。もっと高い倫理観の例を示すのが良いでしょう。

(2)社会の持続可能性の観点

 社会の持続可能性の観点から必要となる要件として、生物多様性の保全が挙げられる。生物の多様性を保全するためにはグリーンインフラの採用を検討することが重要である。具体的には多自然川づくりやエコロードを推進することで生物多様性の保全による持続可能な社会の形成に貢献できると考えられる。

■こちらは正解です。末尾の「以上」はなくても構いません。

以 上

問題文 Ⅱ−1−4

 既設コンクリート構造物において、浮きやエフロレッセンスを伴うひび割れが局所的にみられた。当該構造物を長期間供用していくために詳細調査計画を策定すべく、非破壊試験を適用したい。そこで、生じている現象から推定される構造物内部の変状を想定したうえで求められる情報と適用すべき非破壊検査手法の組合せを2つ提案し、それぞれの計測原理及び実施に対する留意点を延べよ。

局所的な変状であることから、鉄筋のかぶり不足による鉄筋の発錆に伴う浮き、エフロレッセンスを想定

■構造物の部位と「生じている現象」だけを示す。

(1)赤外線サーモグラフィ法による内部欠陥の推定

 赤外線サーモグラフィ法は、日射等により生じた健全部と欠陥部の温度差を計測することで内部欠陥の検出を行う非破壊試験である。

 測定に当たっては、1日の日射受熱量が最大となる時間帯等健全部と欠陥部の温度差が大きくなる時間帯に測定を行う必要がある。なお、気温差が小さい場合や日射がない箇所、コンクリート表面が濡れている場合や汚れている場合は温度差が生じにくいため、内部欠陥と誤認する可能性があるため留意が必要である。また、検出深度は表面から10cm程度であることも留意が必要である

■はどう処置すればよいのか。行動まで示すと留意点として評価できます。

は制約事項。対処不能なので別な解決が必要です。そこまで示すように。

(2)電磁波レーダ法によるかぶり厚さの推定

 電磁波は、金属を透過せず、金属表面で全てを反射するという性質を利用した非破壊試験である。装置から発信した電磁波の反射波を受診することで、到達時間や強度などを測定し、反射波形を画像化することで鉄筋位置の推定を行う。

 コンクリートの比誘電率は、含水率による影響が大きく含水率が高い場合や表面が濡れている場合には、精度が低下したり計測できない場合がある反射波形の判読は、技術者の経験や技量により測定精度が左右されることに留意が必要である。

■これも具体的な処置、対処法を技術士としてノウハウを示すように。できないこと、誤差が大きい・・では使えません。

    以 上

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

・対象とする構造物:市街地を通過するコンクリート単柱式橋脚を有する鋼連続版桁橋

・老朽化の状況:上部工の伸縮装置のといからのろう水が橋脚をつたってかぶり不足と思われる箇所に浮きや錆び汁が発生している

1.調査・検討すべき事項とその内容

(1)対象橋梁の保有性能

 橋梁の設計・施工に関する既存資料(完成図書、橋梁補修・補強資料等)を確認し、耐震設計に必要な情報を整理し保有する耐震性能を確認する。

■具体的に「保有する耐震性能」はどう確認するのか示すように。資料確認は簡潔に。

(2)耐震補強工法の事前検討

 耐震補強工法は、橋梁の構造条件、河川や交通量等が施工条件に影響されるため、様々な制約条件を考慮した最適な耐震補強工法を経済合理性を踏まえ選択する。具体的には、橋脚補強は橋脚の水平耐力を過度に増加させることなく、じん性を向上させ粘り強い構造とする。方策としては、コンクリート充填工法や断面増し厚工法を考える。また、橋梁全体の補強については、橋全体の耐震性能の向上を図るものとし、個別部位の補強は最低限な補強に留める。橋梁全体の補強方策としては、免震工法や慣性力分散工法、変位拘束工法を検討する。

■具体的解決法に入り込みすぎています。ここでは調査、検討にとどめ、解決策は2で述べるように。

2.業務を進める手順及び留意点と工夫を要する点

(1)現地調査

 必要に応じて道路交通制限や高所足場の設置など安全条件の設定を行う。また、耐震補強を行う橋梁の劣化度や耐久性、損傷状況、施工を行う際の周辺状況等の情報を把握し、設計や施工に反映させる。

■せっかく1でまとめられたのに、生かされていません。白紙から現場施工管理するみたいです。

そして鋼コンなので施工管理より、コンクリート管理に重点を置くように。

(2)耐震補強設計

 道路橋示方書で決められた手順に従い耐震補強設計を行う。また、関係者でデザインレビューを実施する。

(3)現場施工

 事前調査で得られた情報を施工計画書に反映し、施工従事者に施工計画の説明を実施する。

 品質向上として、橋脚のコンクリート巻き立て工法は、過密配筋かつ巻き立て厚さが薄いため高性能AE減水剤を用いた締固め管理や耐震性能として要求される新旧構造物の応力伝達が確実に行われるような接着面の管理に留意する

■これら↑のことを4〜5の時系列の「手順」として挙げて、述べると良いでしょう。

3.関係者との調整方策

 関係者との協議は、影響が生じる可能性のある関係機関の特定に努める。協議を的確に行うことで、工事着手の遅延回避、協議の成立待ちによる手待ちを回避し施工期間の短縮が図られ、利害関係者への影響を最小限にとどめることが可能となる。

■現場管理の戦術みたいで、真の効率化ではないみたいに感じます。そのようなテクニックではなく、具体的に2の作業をどう改善するかについて述べてください。

近隣住民に対しては、視覚的に分かりやすい資料作成が有効と考え、CIMを活用し3次元モデルを用い施工ステップや道路交通規制状況を視覚的に説明することで工事に対する理解度向上を図り、合意形成に努める。

■住民はCIMの3Dの説明を求めているでしょうか。住民が不安視して反対するのは2Dが原因ではありません。本質を見極める必要があります。試験の対策ではなく、プロの提案を。

  以 上

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.予防保全型メンテナンスにおける課題

(1)地方自治体におけるメンテナンスサイクル

 道路橋は、全国に約70万橋存在しその内約7割になる約50万橋が市町村道であり、地方自治体の管理する道路橋をいかに効率的・効果的に管理していくかが重要である。また、限られた予算や技術者の中、地方自治体だけで維持管理を行うことは困難な課題がある。

■困難さを言うのではなく、現状を打開する新しいメンテナンス手法やシナリオ転換を鋼コンの視点から述べるように。

(2)点検品質の確保

 道路橋の定期点検において、点検困難箇所を多く有する事や部材別の健全度評価だけではなく、構造物全体としての健全性評価も必要なことから、点検技術者には高度な技術力が求められる。しかし、少子高齢化に伴う新規就労者の減少や厳しい建設産業の労働環境による就労者の定着が進まないことから、技術の伝承が十分に行えず、点検品質が低下することが懸念される。

(3)人口減少社会への対応

 我が国は今後、少子高齢化が急速に進行することにより、コンパクトシティ化の進行が見込まれる。これにより、中山間地域等の過疎化が更に進行し今後消滅する集落の発生も見込まれる。このため、中山間地域等の使用頻度が極端に少ない社会インフラについて、廃止・撤去等の選択と集中を行うことが人口減少社会対応から重要である。

■このテーマはどこから出てきましたか。予防保全型メンテナンスに焦点を絞って課題を挙げるように。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

 上記の課題の中で、(1)地方自治体におけるメンテナンスサイクルが最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

(1)ICT・AI技術の活用

 点検・診断等にICT・AIによる新技術を活用することで、省力化・効率化・低コスト化を行うことが重要である。具体的には、ドローンによる橋梁点検やAIによる構造物変状の診断が挙げられる。

■提案はOKです。ただし「地方自治体におけるメンテナンス」と系統がやや違うようです。技術志向の課題名が欲しかったです。

(2)基準類の整備等

 点検・診断結果のバラツキや維持修繕等の不適切な工法採用を回避するため統一した基準やマニュアルの整備が重要である。国が主導して主導して統一した基準やマニュアルを整備し、点検・診断や維持修繕工事の品質向上を図る。また、PPP/PFIによる民間人材を活用することで地方自治体の技術者不足の解消、民間のノウハウを取り入れることで業務の効率化を図る。

(3)データ活用型インフラメンテナンス

 IOTの新技術により、計測・点検、補修・更新等の膨大なデータが得られる。これらの情報を有効活用できる様に、インフラメンテナンス2.0の推進を行う。具体的には、各管理者の保有している情報から、電子化すべきデータの項目・内容等の統一を図り、併せて各管理者、企業、研究機関等が保有しているデータベースを活用することで、得られた情報を各管理者間相互共有や多くの情報分析によるメンテナンスの高度化、効率化が可能となる。

3.新たに生じるうるリスクとその対策

(1)新たなリスク

ドローン等の無人点検や新たなデータベース構築には、地方自治体特に小規模な市町村では、人材・体制、予算面で難しく、データ活用型インフラメンテナンス導入が進まない。

■比較的わかりやすい懸念事項であって、前提みたいなことです。リスクとは、もう少し深く考えて、技術士以外では予測困難なことがふさわしいです。手段的な事項よりシステム、根幹にかかわることを。

(2)対策

国による新たな補助金制度の設立や道路メンテナンス会議による各管理者と技術の共有を図ることや研修を通して体系的な技術アドバイスを実施する。また、PPP/PFIによる民間人材を活用することで地方自治体の技術者不足の解消、民間のノウハウを取り入れる。

以 上

№9 R3年 建設部門、鉄道の答案について添削致しました。 2021/08/08

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この答案についての講評

 答案の表現力は論文としてはこれで十分です。結果は期待通り、A評価で合格とのことでした。ただし、建設部門鉄道技術士としてのプロの答えを表現すればさらに合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像致します。

 今回は3回目の受験だとのことですが、これまで講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。記述内容にやや矛盾や無駄があり、出題者が求めるストライクゾーンが答えられていなかったみたいです。

 必須Ⅰでは、課題の「予防保全」はテーマとして求められた防災に限らず、すべてのインフラに共通した事項で、必然的な関係性があいまいです。また、解決策では、課題とやや似ており、ダブリとなる危険性があります。もっと具体的に気象予測や水理工学の提案をされると良いでしょう。選択科目Ⅱ-1,Ⅱ-2はほぼOKです。Ⅲは課題の表現で分析が甘いです。「新技術等活用」ではなく建設・鉄道の技術課題とすべきでした。このほか説明がやや冗長となっているようです。簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けたのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、合格されています。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドでヒントを申し上げます。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分8秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

問題文 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と課題と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.課題

①流域治水の推進

 従来の治水対策は河川域等の区域毎による治水対策が行われてきた。しかし、気候変動の影響により想定を超える風水害が発生している。そこで、対策区域の観点から、区域毎の治水対策ではなく、新たな取組みとして流域全体を一つの対策範囲とした流域治水の推進が風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

②ハザードマップの理解・認知度向上

 地方自治体においては風水害のリスクを示すハザードマップの整備を進めてきた。ハザードマップの整備は多くの自治体で完了している一方で、同マップに対する住民の理解・認知度は必ずしも高くない。そこで、住民の観点から、新たな取組みとしてハザードマップの理解・認知度向上が風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

③予防保全への転換

 防災インフラを含め、従来のインフラ保全は不具合が生じた際に修繕を施す事後保全が主流であった。しかし防災インフラにおいては平時から機能を保持することが非常に重要である。そこで、保全の観点から、新しい取組みとして、従来の事後保全から不具合が生じる前に修繕を実施する予防保全への転換を図ることが、風水害の被害防止・軽減に向けた課題である。

■予防保全は防災に限らず、すべてのインフラに共通した事項で、必然的な関係性があいまいです。防災インフラが特別メンテを必要としているわけもはありません。ここはできるだけ、予防保全など主題から離れた提案は避けた方が得策です。

2.解決策

 前頁の課題のうち①流域治水の推進を最も重要な課題とし、以下に解決策を示す。

①  気候変動を踏まえた治水計画の策定

 従来の治水計画は過去の降雨実績を基準に策定されてきた。しかし、気候変動の影響により想定を超える被害が発生しているため、今後は気候変動の影響を踏まえた降雨量、河川流量、浸水深さ及び潮位等を考慮した治水計画を策定し、治水対策を流域全体で実施する。

■課題とやや似ています。課題には「気候変動の影響・・流域全体を一つの対策範囲とした流域治水の推進が風水害の被害防止・軽減」とありほぼ同じです。ここはもっと具体的に気象予測や水理工学の提案が欲しいです。

②雨水貯留機能の向上

 集水域においては、これまでもダム等により雨水貯留を行い河川流量の抑制を行ってきた。しかし、既存の貯水能力を超えた大雨の際には河川流量を抑制が困難である。そこで新たに溜池や水田を活用し、集水域における雨水貯留の応力の向上を実施する。

③粘り強い構造の堤防整備

 河川域では、これまで河川の流下能力向上のために河道掘削、引堤及び堤防の嵩上げ等が行われてきた。しかし、一部堤防では越水時に即座に決壊する恐れがある。そこで、今後の堤防整備においては、新たに越水時においても即座位に決壊しないよう法尻部や陸側法面を補強した粘り強い構造の堤防を整備する。

④土地利用規制による住居等の移転

 現状、風水害のリスクが高い一部地域においては、住居等が建設されている。各種防災対策を実施しているが、今後も想定を超える風水害が発生する可能性がある。そこで、風水害のリスクが高い危険危険区域においては、土地利用の規制を行い、新たな街づくりと合わせて住居等の移転を実施していく。

3.新たなリスクと対応策

①リソース不足による運営への悪影響

 各解決策を実行する際は、多くの人的・財政的・時間的リソースが必要となる。リソースの少ない地方自治体では行政運営に悪影響を及ぼすリスクがある。

■これは提案内容が原因で生じることではなく、何の施策でも言えることです。問題文が求めている「前問(2)で示した解決策によって生じうるリスク」に相当しません。

②リスクマネジメントの導入

 上記リスクを回避するため、災害の発生頻度、発生時の深刻度、対策の効果及び費用などを考慮したリスクマネジメントを導入し、上記リスクを回避する。

4.要件

①公衆の安全確保

 本業務は限られた予算及び工期の中で遂行しなければならない。しかし、そのような状況下においても常に公衆の安全確保を最優先することが、本業務のける技術者倫理の観点における要件である。

■質問の意味を取り違えたようです。公衆の安全確保を最優先するために「治水計画、雨水貯留、補強、土地利用規制」で具体的に何をしますか。技術士としての工夫です。それが要件です。

②  環境・生態系の保全

 本業務において大規模なインフラ整備を実施する場合においても、既存の自然環境や生態系を保全することが社会の持続性の観点における要件であり、本業務においては上記2つの要件を常に留意する。

■これは環境保全であり、社会の持続性はやや意味が違います。SDGsというテーマをご覧になってください。

問題文 Ⅱ−1−1

ロングレール化のための「レール溶接法」を3つ挙げ、それぞれの溶接方法と特徴について説明せよ。

①  フラッシュバット溶接

 フラッシュバット溶接は2本のレールに対して高電圧を負荷し、電気抵抗の熱によりレール端部を溶かし圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が自動化されているため品質が安定している点である。なお、同溶接には大電源が必要であることから、基本的には工場における一次溶接に適している

■特徴とはできれば制約事項ではなく、性能、品質管理のテクニックなどプラスの内容がふさわしいでしょう。

②ガス圧接

 ガス圧接は2本のレールの端部を専用のガスバーナーで溶かし、レール同士を圧接する溶接方法である。同溶接の特徴は溶接部の強度が高く、溶接作業が半自動化されているため、比較的品質が安定している点である。また、同溶接の機材は小型化されており、線路脇での二次溶接に適している

■機器の話や施工性といった用法的事項ではなく、レールの熔接に関する原理的なことを焦点とされた方がよいでしょう。

③テルミット溶接

 テルミット溶接は2本のレール間に型枠を設置し、テルミット反応により溶けた溶剤をレール間に流し見込み、レールを溶接する方法である。同溶接の特徴はフラッシュバットやガス圧接と比較して、溶接部の強度及び品質安定性が劣るが、敷設されたレール同士を溶接する三次溶接に適している点である。

問題文 Ⅱ−2−1

 最大震度6強の地震が発生し、鉄道施設に被害が生じていることが想定された。このため、被害調査を行い運転再開時期の判断も含め復旧方針を策定することとなった。鉄道施設の保守に携わる建設部門の技術者として、この業務を進めるにあたり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査・検討事項

①土木構造物の状態調査

 地震発生時には土木構造部が損傷している可能性がある。高架区間においては高架橋の柱部にせん断又は曲げ破壊が生じていないか調査する。また、盛土区間においては盛土の安定性、地下区間においては側壁、上床及び中柱等に破壊が生じていないか調査する。

■①②は正解です。ただし書き方は「○○を調査して、○○を検討する」という文で表すと良いでしょう。

②軌道の状態調査

 地震発生時には軌道部材の損傷及び軌道変位が生じている可能性がある。そこで、レールを始めとした軌道部材の状態及び軌間等の軌道線形に著大な軌道変位が生じていないか調査する。

③走行支障物の調査

 地震発生時には線路脇の樹木の倒木や跨線橋からの落下物等、列車が走行する上での障害物が線路内に落下している可能性がある。そこで、線路内を中心とした走行支障物の有無について調査を行う。

2.業務の手順及び留意点・工夫点

①被害調査

 上記調査事項を考慮し、被害状況の調査を実施する。

■ここは業務の手順ですから、時系列に主な作業を並べて、品質管理を述べるようにしてください。せっかく1で挙げているのに、2で解決策の手順が記述されていません。

②運転再開可否の検討

 上記被害調査の結果を踏まえて、運転再開可否の検討を行う。なお、運転再開が可能だった場合においもて、事前に安全確認列車を走行させるなど工夫を施し、安全確認を徹底する。

③応急処置の検討・実施

 ②の段階で運転再開が出来なかった場合、被害状況に応じた応急処置を検討する。なお、旅客への影響を留意し、安全確認が完了した区間から順次、運転を再開する。また、平時から地震時の対応を想定し、可能な範囲で予め現地に緊急用資機材を配置する等の工夫を施すことで応急復旧の時間短縮が可能となる。

■事後のことは領域外です。

④運転再開可否の最終判断

 応急処置の結果を踏まえて、運転再開時期の最終判断を行う。なお、運転を再開した初期段階においては、徐行運転を行い線路内の状況に留意する。

3.関係者の調整方策

①旅客との調整

 旅客は早期の運転再開を望む一方で本業務の担当者としては安全確保が必須であ。そこで、被害状況や運転再開時期などの情報を適宜発信し、納得感・安心感が得られるように旅客と調整する。

■旅客と何をどう調整するのか。試験官は「調整」方法から技術士の判断力を測ろうとしているのに中身の話がありません。

②運行管理者との調整

 地震発生に伴い長時間にわたり運転を見合わせた場合、駅には多くの旅客が滞留する。そのような状況下で運転を再開した場合、多客による二次被害の発生が危惧される。そこで、運行管理者とは被害状況や運転再開時期について情報共有すると共に運転再開時のダイヤ等について調整する。

■情報共有はともかくダイヤ調整とは、関係者のだれと何をどう調整するのか、具体的に述べるように。

Ⅲ-1  

問題文 我が国においては、少子高齢化の進行により労働人口の減少傾向が続いている中で、「働き方改革」への対応が求められている状況である。建設業界では施工の効率化だけでなく現場休業の取組など、様々な取組が行われているが、鉄道工事に関しては終電から始発までの間や活線下での列車間合いで施工されることが多く、各鉄道事業者において運行形態や保守体制に応じて、さまざまな検討が行われている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

(1)鉄道工事における作業時間を確保する方策について、輸送サービスのあり方や保守の効率化も踏まえ、建設部門の技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.課題

①新技術等活用による点検・保守作業の効率化

 現在の鉄道工事の多くは労働集約型であることから、他の業界や産業に比べて必ずしも効率化されていない。そこで、技術面の観点から、新技術等を活用し鉄道の点検・保守作業の効率化を図ることが、限られた夜間時間帯及び列車間合いで作業時間を確保するための課題である。

■選択科目Ⅲ問題で「新技術等活用」では課題として曖昧すぎます。具体的にどんな新技術ですか。建設・鉄道の技術領域をここで宣言すると良いでしょう。

②列車運行時間の見直し

 これまでの鉄道輸送は旅客及び社会のニーズを踏まえて、可能な限り列車運行時間の確保に努めてきた。一方、昨今の新型コロナウイルスにより旅客需要は深夜及び早朝を含めて大きく減少している。そこで、旅客需要の観点から、始発列車の繰り下げ、日中の運行本数の減便及び終電の繰り上げ等を含めた列車運行時間の見直しが、作業時間確保における課題である。

■説明がやや冗長となっているようです

③大規模工事における計画運休

 線路切替のような大規模工事においては、現状の作業時間帯では実施が困難である。そこで、輸送サービスの観点から、線路切替のような大規模工事を実施する際には、予め旅客へ列車運休を周知すると共にバスなどによる代替輸送を確保し、計画的に運休を実施することが、作業時間確保にける課題の一つである。

■すなわち課題としては代替輸送を宣言すべきです。

2.解決策

 前頁に挙げた課題のうち①新技術等活用による点検・保守作業の効率化を最も重要な課題とし、以下にその解決策を示す。

①  状態監視保全の導入

 保守作業の効率化を図る際には、1回あたり作業内容を軽微にすることが有効である。1回あたりの保守作業を軽微にするためには、従来の損傷が生じてから保守を行う事後保全から、軌道や土木構造物の状態を監視し損傷が発生する前に軽微な保守を実施し、軌道等の健全性を確保する状態監視保全の導入を行う。

②営業車による線路モニタリングシステムの活用

 上記の状態監視保全を軌道に対して実施する際、線路モニタリングシステムを活用する。同システムは営業車の床下に慣性式の軌道検測装置、レーザー及びラインセンサカメラから構成されている。同システムを搭載した営業車の走行に合わせて、軌道状態をモニタリングすることが可能となる。同システムを活用することで状態監視保全が可能となると共に従来の徒歩巡回や軌道検査の代替が可能となり、軌道の保守作業を効率化することができる。

②  画像処理による土木構造物点検

 従来の土木構造物の点検は、専用の保守用車を極低速で走行させながら、同保守用車に乗車した検査員の近接目視点検が主流であった。同点検において、ひび割れ等の変状を確認するためには多くの労力と時間を要する。そこで、保守用車を上限速度以下で走行させながら、高画質カメラで土木構造物を撮像する。撮像データに画像処理を施し、構造物に対するひび割れ等を抽出することで、土木構造物の状態監視保全が可能となる共に土木構造物の保守作業を効率化することが可能となる。

3.新たなリスクと対応策

①人身事故等による作業時間の変更

 上述の解決策を全て実行し作業時間の確保に努めた場合においても、人身事故等の突発的な事象により運行ダイヤが乱れ、作業時間を変更せざるを得ないリスクがある

■これは提案内容が原因となって生じるリスクではありません。ご自身の提案に対する評価が求められています。「状態監視保全、営業車による線路モニタリングシステム、画像処理による土木構造物点検」をやればやるほど深刻になるリスクは何ですか。それが答えです。

②余裕を持った工期設定

 上記リスクの対応策として、予め不測の事態に備えて余裕を持った工期設定を行い、工期全体で作業時間を確保することで上記リスクを回避する。なお、余裕をもった工期設定を行う際、発注者は工期の長さに応じた適切な諸経費等を踏まえて、発注することが重要である。

■リスク対応というよりは、心構えみたいな印象を受けます。問題の解決を人に求めるのではなく、ここは技術志向の解決法でリスクに対処する内容としてください。

№8 R3年 機械部門、機構ダイナミクス・制御の答案について添削致しました。 2021/08/08

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この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。これなら合格の期待が持てます。ただし、機械部門技術士としての専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。

初めて受験されたためか、減点されないように注意するあまり、機械工学の本質的技術ではなく、前置きとしての仕様の話に発散しているように拝見いたします。ここはブレずに多品種少量生産、マスカスタマイゼーション、製造ライン機械学習などについて集中して提案するようにしてください。

また、必須Ⅰでは課題を得意分野に絞り込むのではなく、包括的に対処することが求められています。ご専門の鉄道技術に特化は禁物です。「設計の観点」もアルミ→鋼製化というようなわかりやすい対策をではなく、気密性など汎用性の高い課題を目指す方がよいでしょう。一方、選択Ⅲでは機械学習の課題が求められましたが、ご解答は「機械学習を他に代替する技術」のように拝見いたします。AIの深層学習は困難を乗り越える技術提案があればよかったです。

たとえこうした弱点があったとしても、マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分30秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

現代では社会や人々の生活に多くの機械製品・設備が深く浸透している。そしてそれらが何らかの要因により故障・破壊すると、その影響が拡大し、社会や人々の生活に甚大な被害をもたらすこともあり得る状況である。したがって、今後の新たな機械製品・設備の設計開発に際しては、公益の確保の観点からも、機械製品・設備の持つ公共への影響を充分考慮して設計しなければならない。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)故障・破壊により社会や環境に広範な影響を及ぼすような機械製品・設備を設計する場合、それらの持つ公共への影響を考慮すると、どのような課題を考えておかなければならないか、技術者の立場で機械技術全般に関する多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する機械技術者としての解決策を3つ示せ。

(3)提案した解決策をすべて実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。

(4)前問(2)〜(3)の業務遂行に当たり、機械技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点について述べよ。

1.鉄道車両の故障による社会への影響 

 鉄道車両において、台車は一重系の機器である。特に、軸箱が破壊されると、走行安全性の著しい低下から脱線に直結する。そこで、軸箱破壊による脱線を防止するための課題を論じる

■「機械技術全般に関する多面的な観点から」とはいきなり絞り込むとは反対に、広く課題を探索することが求められています。得意分野で専門的議論展開の作戦は△です。

1.1 軸箱の鋼製化(設計の観点) 

軸受破損に至ると、構成部品である保持器や転動体が装置内部に脱落する。これにより、軸箱全体が破壊されて脱線に至る。素材強度向上が必要である。そこで、鋼製化を提案する。現状、軸箱はアルミ合金製であることから、高張力鋼へ設計変更する。そのため、軸箱の破壊を食い止め、脱線防止が期待できる。

■アルミ→鋼製化というようなわかりやすい対策を求めるのではなく、漏れがない汎用性の高い課題を提案するように。広い考えを求めているので、この1例がわかっても仕方ありません。

1.2 状態監視手法の導入(運用の観点) 

軸受不良初期の流れは、最弱部の転動体や保持器に軽微なき裂が入ることがわかっている。しかし、現状は軸受の損傷状態を把握できない。そこで、軸受付近にセンサを設置して監視する手法を提案する。その後、接触不良による振動発生と回転不良による温度上昇が発生する。そのため、軸受破損に至る前に検知する。

1.3 軸箱の保守性向上(保守の観点) 

軸受破損に至る原因として、油漏れによる潤滑不良がある。保守時の油交換で、油栓の締結不良をもとに油が流出する。そこで、油交換不要で、油栓を開けない保守性の向上が必要である。そこで、グリース潤滑式の採用を提案する。グリース潤滑式では、油交換を不要とすることができる。すなわち、軸受破損に至る原因をつぶすことができる。

■専門的分析ではありますが「機械製品・設備の持つ公共への影響」についての議論がされていないようです。

また、Ⅰではあまり鉄道技術に特化した提案は禁物です。

2.最重要課題とその解決策 

最重要課題は、状態監視手法の導入と考える。その理由は、機器状態の推移を定量的に把握でき、事前に対策がうてるからである。

2.1 解決策 

①振動による監視:軸受の転動体や保持器にき裂が入ると、回転中の内輪、外輪の接触で定期的な特徴振動が発生する。その振動を軸受付近に加速度センサを設置し捕捉する。軸受の転動体や保持器の損傷周波数は、図1で与えられる。加速度を取得してエンベロープ処理、PSD分析を行い、その値を監視する。これにより、ノイズや外乱の影響を除外して、軸受不良のみの振動を捕捉できる。

②温度による監視:転動体や保持器にき裂が入ると、転動体のスキューが発生し回転不良が生じる。その後、転動体と内輪の端面の接触で温度が上昇する。その温度をシース型熱電対により外輪温度を直接測定する。これにより、軸受不良のみの温度を捕捉できる。

③音による監視:軸受のような金属品が損傷した瞬間に生じる音エネルギーを抽出するAE法を用いて検出する。本手法では、損傷位置まで推定できることから、軸受不良のみを検出できる。

3.得られる成果と新たな懸念事項および対応策 

3.1 得られる成果とその波及効果 

 解決策は、軸箱の軸受異常を予兆検知することができる。すなわち、脱線を防止することができて、重大事故による人命を失うことを避けることができる。

3.2 新たな懸念事項とその対応策 

 新たな懸念事項として誤検知がある。鉄道事業者は多くの車両を保有しており、車両により走行する線区も異なる。すなわち、一律のしきい値を設定した場合、誤検知がある。対策として、車両毎に保守直後のデータを学習させて基準とする。しきい値を車両毎に相対化して判定する仕組みを導入する。走行線区を一巡したデータを基準として、増加量をしきい値とすることで、誤検知なく検知でき、脱線を防止できる。       

4.業務遂行に当たり必要となる要件 

①公衆の安全を確保:故障が発生すると脱線に直結し人命が失われる。安全第一の運用を行う。留意点は、誤検知が増えると保守量とのバランスが必要となる。安全第一として、保守も可能なしきい値を設定する。

 

②軸受製造の省エネルギー化:軸受に関して使用可能であるが交換してしまう場合がある。これに対して、長期使用する独自基準を策定して製造の省エネ化を図る。留意点は、状態監視とあわせて圧縮残留応力をトレースすることで寿命予測する。 

■「製造の省エネ化」とはどういう意味ですか。

社会の持続可能性の観点とはSDGsのことを指しています。

     以上.

問題文 Ⅱ−1−2

動吸振器は副振動系の慣性力を利用した制振装置である。制振する対象を簡単に説明し、動吸振器のパラメータを決定して実際に適用するまでの方法と留意点を具体的に述べよ。

1.動吸振器の原理と制振する対象 

 動吸振器は、制振対象に対して、図1の通り質量体を直接的に付加させることで、連成振動により共振点での振動倍率を低下させる仕組みである。制振対象として、

・200m級の高層ビル

を取りあげる。また、入力として、地震波を想定する。尚、図1を用いて説明する。

20210713_2_1.jpg (191×218)

2.パラメータ決定から適用までの方法 

①制振対象の高層ビルm1についてFEM解析を行い、剛性k1、減衰c1を算出する。図2のωpで示す強制振動が入力された際の共振周波数を確認する。

②入力の地震波で想定する周波数と振幅を設定する。

③付加させる動吸振器m2および剛性k2、減衰c2についてパラメータスタディを行い、ωpでの倍率低減の目標値以下になるまで適正化をする。

強制振動が入力された際の共振周波数

3.留意点 

 使用上の留意点は、振動を低減させたい周波数を正確に抽出しておくことである。動吸振器自体は、パッシブで制振するものであるため、周波数が違っていると、振動低減効果が発揮されなくなる

■制約事項ではなく。解決策(技術)を提案するように。   以上.

問題文 Ⅱ−2−2

大きく生産ラインを変更することになり、従来は複数の作業者で行っていた複雑な組立作業を、協働ロボットを導入して効率化を図ることになった。導入において、「人間の作業性」、「稼働率」、「安全性」の3つの観点から十分なシステムインテグレーションを行いたい。この業務の担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について上記3つの観点から説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する

点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的に、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.鉄道車両の台車組立作業の効率化 

 鉄道車両の台車は、機械品の点数も多く複雑な構造をしている。その中で、最重要箇所である駆動装置付輪軸組立の工程にロボットを導入して効率化を図る。

1.1 人間の作業性の観点 

①調査項目(駆動装置のアキシャル隙間調整量) 

 駆動装置歯車箱には軸受がある。軸受の組立時、アキシャル隙間の調整が数mm単位の精度で必要であり、人間が実施するのは困難な作業がある。精度を確認するため、平均とバラツキを調査する。

■ここは「協働ロボット」に関連する課題分析です。

②検討項目(汎用ロボットの組立精度) 

 人間が不得意な作業でもロボットは得意分野とすることができる。ロボットの有効性を確認するため、汎用的なマニピュレータを用いて組立精度を検討する。

1.2 稼働率の観点 

①調査項目(組立作業に要する時間) 

 現行の駆動装置付き輪軸組立にかかる作業時間を調査する。また、前工程と後工程を含めた余裕時分、および歩留まり率を調査する。

■こちらも「協働ロボット」を導入したことによる課題になっていません。

②検討項目(導入ロボットの必要稼働時間) 

 当該工程のみの時間が短縮されても全工程効率化への影響度が低いのは避けるべきである。汎用的なマニュピレータを使用した際の作業時間を確認して、台車組立全体を考慮した上で必要な稼働時間を検討する。

1.3 安全性の観点 

①調査項目(作業者との接触場所の確認) 

 本工程は、車輪削正や輪軸圧入および歯車箱の取付と、大型機械設備を使用する。工場内の配置制約から設備同士が近接できない。輪軸を移動させる際に、その他作業者と接触するエリアがあるか動線を確認する。

②検討項目(作業者を認識する手法の検討) 

 ロボットは作業者との接触を避ける必要がある。作業者を認識するためのカメラやレーザーの導入を検討する。また、作業者との接触の可能性があるエリアを学習させる方法を検討する。

■これらについて、1.1, 1.2で議論すると良いでしょう。

2.業務を進める手順と留意すべき点、工夫点

①ロボットへの学習:組立精度向上と作業者との接触場所の学習に留意する。工夫点は、組立精度では、バラツキが少なくなる結果による強化学習をする。接触場所の学習では、多種の角度からの画像を学習させる。

②ロボットの運用:安全性確保に留意する。工夫点は、外乱が入力されてもロバスト性が維持できるようにH∞制御を適用する。また、異常発生時、モータ出力を即停止すると危険なため、姿勢維持する方式をとる。

■ロボット利用の一般論ではなく、「協働ロボット」を成功させる手順を示すように。

3.業務を効率的に進めるための関係者と調整方策

①現場作業者含めたDR:現場作業者からの信頼性が最重要である。現場作業者からフィードバックを受けてコミュニケーションを図る。

②安全最優先の設計:QFDを行い、安全性と必要機能を満たすよう設計班へリーダーシップをとる。以上.

■専門家による「調整」というより、一担当者としての心構え的な内容です。一般的な心構え論ではなく、提案事例に対して効率化の対処するように。プロマネの指導力で関係者を取りまとめるようにしてください。

Ⅲ-2  機械学習は、予測・最適化、業務の効率化、熟練技術者の減少への対応などの目的で、様々な分野での活用が進んでいる。一方で製造業においては、製品バラエティ対応性拡大、生産性向上、省力化を主眼として、従来主流だった少品種大量生産から、大量生産の効率でカスタム製品を生産するいわゆるマスカスタマイゼーションへの対応が進んでいる。マスカスタマイゼーションへの対応を目的として、産業用ロボットを用いた既存の製造ラインに機械学習を導入することを想定し、製造ラインの開発者、若しくは製造ラインを用いて製品を製造する生産者どちらか一方の立場で以下の問いに答えよ。

(1)製造ラインの開発者の立場、若しくは製造ラインを用いて製品を製造する生産者の立場、どちらか一方の立場を選択し、選択した立場を示せ。さらに、選択した立場で想定した製造ラインに機械学習を導入する際の課題について、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、それが重要と考える理由とその解決策を、機構ダイナミクス・制御分野の機械技術者の立場から3つ示せ。

(3)前問(2)で提示した全ての解決策を実行したうえで新たに生じるリスクとそれへんお対策を、機構ダイナミクス・制御分野の技術者の立場から示せ。

1.鉄道車両アクティブダンパ製造の機械学習適用

 鉄道車両用のアクティブダンパを取り上げる。アクティブダンパの製造は、機械構造品であるダンパ本体とシステム系である制御装置の製造が関わっている。ダンパを製造する生産者の立場として機械学習を導入する際の課題を記述する。

■やや前置き長いです。単刀直入に。

1.1 部品点数の削減(設計の観点)

 アクティブダンパのダンパ本体の構成部品は多種多様で複雑である。ダンパ本体やシリンダ以外に、ばね類、弁類、シール材など数mm単位の部品が複雑に構成されている。これらがロボットを適用して組み立てる際の障壁となっている現状がある。そこで、部品点数の削減を提案する。現行のダンパは、パッシブ状態であっても高い性能仕様を満たすために部品が構成されている。これらをソフトウェアによる制御方法を充実させることで代替し、品質の維持は可能となる。そのため、部品点数を削減し、ロボットへの機械学習適用が可能となる。

■これだと「機械学習を導入する際の課題」ではなく他に代替する技術になってしまいます。

1.2 異常検知システム適用(運用保守の観点)

 現状、ダンパ品質は製造プロセスの過程で、人間による介在がある。例えば、ダンパを摺動させて固渋がないかを確認している。そこで、異常検知システムを導入する。AIを活用した深層学習は特に画像分野に強く、X線による内部構造を可視化と組むことで組立異常を検出でき、ロボットへの適用が可能となる。

■AIを活用した深層学習は好適ということはわかりましたが、では課題は何ですか。困難を乗り越える技術提案が欲しいです。

1.3 ダンパ仕様の数値化

 アクティブダンパの製造では、機械構造品であるダンパの製造と、システム系の制御装置の製造のコンカレントエンジニアリングが導入され始めている。現状は、制御仕様を決定した後、ダンパ本体の製造へと引き継がれる形式をとっている。実際は、本工程で、システム設計者とソフトウェア設計者、および機械製造担当者との間で双方向的な情報のやりとりや修正が多いのが現状である。そこで、ダンパ仕様の数値化を提案する。これにより、従来は作業者間で行ってきた言語でのやりとりを不要とすることができて、ロボットへの学習が可能となる。

■ここも機械学習の本質ではなく、前置きとしての仕様の話です。多品種少量生産、マスカスタマイゼーション、製造ライン機械学習について集中して提案するように。

2.最重要課題とその解決策

 最重要課題は、ダンパ仕様の数値化と考える。その理由は、アクティブダンパの製造には、機械構成部品であるダンパの製造と、システム系である制御装置に関するシステム設計とソフトウェア設計が関わり、製造過程での不具合、歩留まりが発生してしまうと製造に与える影響は大きいからである。

■多品種少量生産、マスカスタマイゼーション、製造ラインの機械学習についての提案とするようにしましょう。

2.1 MBDの導入

 ダンパ仕様を数値化するにあたってMBDにより開発を行う。ダンパ性能では組立誤差を考慮することは重要であるが、ある程度の外乱、誤差を含めた上でのロバスト性を確保できるモデル化されたダンパとすることができる。制御手法は、H∞制御やVSS制御の代表   であるスライディングモード制御などの手法をとる。

2.2 HILSの導入

 ダンパ本体の製造過程で、ソフトウェアを用いて、ダンパ本体をシミュレーションの中に組み込み、性能仕様を満足するかをいち早く確認する。不具合があれば製造にフィードバックして改修する。

2.3 故障注入

 不具合を検知するシステムとして故障注入する。モデル化されたシステムにフォールトインジェクションと呼ばれる手法を用いて意図的に故障情報を注入して、性能異常を検出できる仕組みを導入する。

3.新たに生じるリスクとそれへの対策

3.1 新たに生じるリスク

 新たに生じるリスクは、入力時にエラーがあった場合に異常を検出できないリスクがある。ダンパ仕様は数値化されたが、他者と自己の比較により差異が見つからなかった場合は、異常を検出することができなくなる。

■他でも当てはまる一般論ではなく、2の提案内容が原因となって発生するリスクを挙げてください。

3.2 対策

 対策として、ダンパ仕様の変化点トレースを実施する。ダンパの仕様が確定した時点では、正しい仕様であるため、変更が加えられた度に記録をする。そうすることで、異常があった場合に、どの箇所で変更があったのかがわかるようになり、異常を検出できるようになる。                 以上.

№7 R3年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。 2021/08/07

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この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。これなら合格の期待が持てました。しかし試験結果は、必須科目がA、選択科目がB,A(総合B)でなんと残念なことに不合格と評価されました。都市及び地方計画技術士としての専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。

 初めて受験されたためか、減点されないよう注意のあまり前置きが長くなっているようにも拝見いたします。これだと消極的な印象を与えかねません。一方、課題はやや説明不足となっています。出題者は都市及び地方計画の観点で、幅広い技術応用を求めています。問題文の「観点」とは「都市及び地方計画の手法や概念」のことです。そのような専門的視点が求められています。

 このほか、選択科目Ⅲでは本質的課題を解かねばなりません。残念ながら「新しい生活様式」の実践、「都市における過密という課題を改めて顕在化させるとともに、日常生活のみならず、経済・社会全体のあり方や人々の行動様式・意識の変化、デジタル化の進展等多方面に影響を与え、都市に様々な変化をもたらした状況を踏まえ・・・」に応えていないようです。結果は幸いAで、ご解答が主題とはやや違っていても、解決策の提案が良かったためと想像致します。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。

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問題  Ⅰ-2 

Ⅰ−2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取り組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害を防止又は軽減するための課題 

 近年、気候変動に伴う降雨量の増加や海水面の上昇により、風水害が激甚化・頻発化しており、集水域・河川区域・氾濫域を一体的に捉える「流域治水」への転換が求められる。水災害リスクは、ハザードとその発生確率、暴露、脆弱性の3つの因子によって評価され、これらを観点とした課題を次に示す。

■前置きが長いです。一方、課題は説明不足となっています。「それぞれの観点を・・」とは都市及び地方計画の観点です。幅広い技術応用を求めています

1.1 ハザード防止の観点:氾濫を防ぐ 

■観点とはこのようなキーワードではなく建設、または都市及び地方計画の手法や概念です。そのような専門的視点が求められています。

 水災害そのものを発生させないために、堤防の強化、河床掘削、ダム等の整備、雨水浸透貯留施設の整備、田んぼやため池の保全等が必要である。ただし、近年の災害の不確実性の増大を考慮すると、インフラ整備のみでの対策には限界があると考えられる。

■ではどうすべきなのですか。具体的に示すように。

1.2 暴露防止の観点:被害対象を減少させる 

 水災害が発生しても、被害を受ける範囲を減らすために、土地利用の規制・誘導や高台等への移転、二線堤の整備などが必要と考えられる。ただし、地域との丁寧な合意形成が求められ、効果発現までに相応の期間を要すると考えられる。

■問題点も必要ですが、ノイズとなる場合もあります。

1.3 脆弱性防止の観点:被害軽減と早期復旧に備える 

 水災害が発生し、被害が生じた場合も、被害内容を軽減したり、早期の復旧・復興を進めるために、建築構造の工夫、地域の避難態勢の強化、BCP等の普及促進が必要である。個別敷地レベルの対策やソフト対策が主となり、迅速な減災効果が期待できる。

2.最も重要と考える課題とその解決策 

 1で挙げた課題のうち、最も重要な課題は、迅速に効果発現できる「1.3 脆弱性防止の観点:被害軽減と早期復旧に備える」と考える。その解決策を次に示す。

2.1 建築構造の工夫 

 建築物の嵩上げや高床化、ピロティ化、止水板の設置、電気設備の高所設置等により、浸水被害の軽減が見込める。また、想定浸水 深以下の部材を交換が容易な設えとすることで、復旧の容易化が期待できる。既存の建築物については、耐震性能・省エネ性能・バリアフリー性能の向上と併せて浸水対策を実施することで、費用負担を抑制できると考えられる。

2.2 地域の避難態勢の強化 

 公的避難所以外の公共施設やゆとり空間、民間空地等を活用することで、地域の多様な避難環境を確保し、安全性の向上と感染症のリスク低減が期待できる。

また、マイ・タイムライン作成を普及促進することで、住民の計画的な早期避難を促し、避難の実効性を高めることが重要である。

2.3 復旧・復興の事前対策 

 地域企業等へのBCPの策定と継続的な見直しを促進することで、地域経済の影響や公的負担の軽減が期待できる。また、行政と企業が、防災活動スペースや資機材、備蓄物資等の提供について地域防災協定を締結することも有効と考えられる。

3.新たに生じうるリスクとその対応策 

 2で挙げたすべての解決策を実行した場合に、地域住民の危機意識や認識の不足により、多様な避難環境等が十分に活用されず、減災効果を発揮できないリスクが考えられる。

■どうしてこうなるのか理解しにくいです。もうすこし論理的に。

 この対応策として、情報共有手段を複層的に活用し、住民の危機意識や認識を醸成することが有効と考える。その具体策を次に示す。

・従来の行政広報誌やホームページの活用

・地域やコミュニティを単位とした公聴会の開催

・まちなかなど人通りの多い場所でのオープンハウス

・子育て世代等向けのワークショップの開催

・フェイスブックやインスタグラム等のSNSの活用

4.業務遂行に当たり必要となる要件・留意点 

4.1 技術者としての倫理の観点 

 風水害対策事業には、予算や工期等の制約が生じる。しかし、技術者倫理の観点から、公共の安全を最優先に考え、これよりも予算や工期等を優先することをせず、適正に判断・分析し、業務を誠実に履行する。

■これは技術士倫理綱領と同じ内容では。要件とは具体的に自身の場合はどうするかの提案です。

4.2 社会の持続性の観点 

 社会の持続性の観点からは、環境の保全を重視し、企画・設計・施工・維持管理に至るまで、トータルの温室効果ガスの排出量削減や、地域の生物多様性や水環境の保全、地域景観との調和などに留意して業務を遂行する。

■社会の持続性の概念がややあいまいです。このような無難な解答もひとつですが、今後はSDGsを見られると良いでしょう。

問題文 Ⅱ−1−2

小さな敷地単位で低未利用地が散発的に発生する都市のスポンジ化によって、特にまちなかの都市機能の誘導・集約をはかるべき地域において、生活サービスの喪失、治安・景観の悪化等が引き起こされ、地域の魅力・価値が低下することが懸念されている。都市のスポンジ化に関わる土地利用上の課題を解決するために、土地の集約・再編の手法及び、土地の所有権と利用券を分離して低未利用地を利活用する手法について、異なるものをそれぞれ1つ示し、その概要、活用するメリット、活用するための留意点を説明せよ。

1.土地の集約・再編:交換分合 

1.1 概要 

 空き地や空き家どうしの価値が同等の場合、権利者が相互の合意に基づいて、民法に即り交換分合する。

■これでは都市計画の手法ではありません。(民法でしょう)

1.2 活用のメリット 

 低未利用地が虫食い状に発生する都市のスポンジ化により、低未利用地と土地活用意欲が低い権利者との間に、ミスマッチが生じている。活用意欲のある権利者の低未利用地についてまちなか等へ交換分合することによって、まちなかの魅力・価値の向上につながることが期待できる。

1.3 活用の留意点 

 土地と建物付き土地では、条件が異なるため交換できないと考えられることに留意を要する。

■このような制約条件よりも、効果的用法に導く工夫を提案した方が評価が高まります。

2.低未利用地活用:低未利用土地権利設定等促進計画 

2.1 概要 

 行政が土地所有者と利用希望者を能動的にコーディネートした上で、市町村が、空き地・空き家の使用権や貸借権等を設定する。

2.2 活用のメリット 

 不動産取得税や固定資産税等の税制措置がある。また、小さく分散した土地の活用意欲を高められる。

2.3 活用の留意点 

 行政に権利者の意向を踏まえ丁寧にコーディネートする技術が求められ、専門家の活用等が有効である

■留意点の意味がやや違うようです。

問題文 Ⅱ−2−2

地域の人口構成の将来予測を踏まえて保有公共施設を統廃合、再配置する計画を既に策定している人口30万人の地方都市の中心市街地において、廃校になった教育施設又はその跡地を活用して、市が所有権を保持したままで、民間事業者の資金とノウハウを取り入れて、市民及び来街者の利便に供する公共サービス機能及び民間サービス機能を導入する構想がある。あなたが、構想を実現するための事業推進業務の担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)具体の事業内容の検討に先立って、まちづくりの観点からあらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)構想の実現に至るまでの業務を進める手順を列挙し、業務を進めていく上での留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.まちづくりの観点からの調査・検討事項

1.1 都市の現況把握

 都市構造、人口・土地利用分布とその将来動向、居住・サービス・公共施設などの立地状況、主要な公共交通ネットワーク等、都市の現況を把握する。

■「市民及び来街者の利便に供する公共サービス機能及び民間サービス機能を導入する構想」に対してどう対応するのか方針が見えません。2,3も基礎的調査に終始していたため経験不足とみられた可能性があります。

1.2 災害ハザード情報の把握

 近年、地震・津波・水災害等が激甚化・頻発化している。ハザードマップ等を基本に、被災履歴や明治期の低湿地データ、地形分類図等から情報を把握する。

1.3 関連計画の整理

 市町村マスタープラン、立地適正化計画、公共施設等総合管理計画、地域防災計画、地域公共交通網形成計画、低炭素まちづくり計画、地域福祉計画など、関連計画を収集し、進捗状況を整理する。

2.業務を進める手順と留意点・工夫点

2.1 現況の把握と課題の整理

 都市の現況と将来動向把握、災害ハザード情報、関連計画などにより、事業を推進する施設(以下、「事業施設」)周辺地域の現況を把握する。また、事前に内容を整理した上で、現地調査を行い、周辺地域の環境や景観に配慮すべき事項を抽出し、事業推進の課題を整理する。

 課題の把握に当たっては、都市構造評価レーダーチャートを活用し、都市全体と事業施設周辺地域の状況を相対的に評価することも有効と考えられる。

2.2 先進事例の把握と目標像の設定

 廃校を活用した先進事例として、アートセンターや子育て支援施設、地域交流施設等がある。全国の先進事例を収集して、機能や空間像、立地条件、事業スキームを整理する。また、都市人口や立地条件が類似する等特に参考となる事例について現地視察を行い、関係者間でイメージを共有する。これらを踏まえ、事業推進の目標像を段階的に設定する。

■確かにこうした成功例の要件がわかればありがたいです。しかし、実はそのような経験が求められています。「私は知らないのでよく調査してから/知見を他から得てからします・・」では減点の危険性があります。

目標像は、生活利便性や安全、地域経済等、多角的な観点から設定する。

2.3 事業施設の計画

 目標像を実現するための具体的な事業施設について、必要な機能・規模・構造・発注方式・運営手法などを検討し、基本計画を作成する。その後、プロポーザル等により設計者を選定し、施工、維持管理を進める。

3.関係者との調整方策

3.1 行政内外の関係者との連携

 行政関係部局やまちづくり団体、NPO、民間事業者、学識経験者等横断的な検討会を設置して連携する。

3.2 住民意見の早期取入れ

 検討早期から地域住民の意見を聴取し、理解の促進や事業への反映を図る。ホームページ、公聴会、ワークショップ、SNS等の共有手段を複層的に活用する。

3.3 EBPMの推進

 GISやVR技術による課題・将来像を「見える化」し、関係者の認識共有と客観的な議論の実現を図る。

■こうした方法論、手法の話ではなく中身の議論が必要です。またプロマネの指導力、専門技術の応用はありませんか。

Ⅲ−1  新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、3つの密(密閉、密集、密接)の回避、不要不急の外出自粛、テレワークの推奨等の「新しい生活様式」の実践が求められている。

この「新しい生活様式」の実践は、都市における過密という課題を改めて顕在化させるとともに、日常生活のみならず、経済・社会全体のあり方や人々の行動様式・意識の変化、デジタル化の進展等多方面に影響を与え、都市に様々な変化をもたらしたと考えられる。

こうした状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)今後の都市政策を検討するときに考慮すべき、コロナ危機を契機として生じた変化や改めて顕在化した課題を、技術者としての立場で3つの異なる観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その生じた変化や顕在化した課題の具体的な内容を示せ。

(2)抽出した変化や課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ、それに対する都市政策上の対応策を複数示せ。

(3)すべての対応策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対策を示せ。

1.コロナ危機により顕在化した課題

1.1 まちづくりの観点:職住近接ニーズに対応したまちづくりの推進

 テレワークの浸透により、住む場と働く場が近づき、職住近接ニーズが高まっている。大都市はオフィス・住環境・文化・エンタメ機能を、郊外や地方都市は住む・働く・憩いの「地元生活圏の形成」を推進し、役割分担して、相互に魅力を高めることが必要である。

■相互にではなく技術士としてどう指導提案してまとめるかです。

1.2 交通の観点:まちづくりと一体の総合的交通戦略

 コロナ危機により公共交通利用者が減少し、近距離移動は、自転車に転換していると考えられる。自転車やシェアリングモビリティ等多様な移動手段の確保とその環境整備が求められる。また、混雑状況のリアルタイム発信や、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成等、総合的な交通戦略が必要である。

1.3 防災の観点:感染症対策と両立する避難の推進

 コロナ危機下での災害発生は「複合災害」となり、避難所での感染拡大などの二次リスクに備える必要がある。多様な避難環境の整備や非常時のバッファ機能の確保、リアルタイムデータの活用等、感染への対策を避難所運営と両立することが求められる。

■残念ながら「新しい生活様式」の実践、「都市における過密という課題を改めて顕在化させるとともに、日常生活のみならず、経済・社会全体のあり方や人々の行動様式・意識の変化、デジタル化の進展等多方面に影響を与え、都市に様々な変化をもたらした状況を踏まえ・・・」に応えていないようです。

2.最も重要と考える課題と対応策

 ■このテーマは主題とはやや違うように感じます。どちらかというと1.1を選択された方がよかったと思います。

公衆の安全・健康・福利を最優先と考える視点から、「1.3 防災の観点:感染症対策と両立する避難の推進」が最も重要な課題と考える。その対応策を次に示す。

2.1 多様な避難環境の確保

 災害時の避難所の過密を避けるため、多様な避難環境の確保が求められる。公的避難所以外の公共施設やゆとり空間、民間施設の活用等が挙げられる。

 また、地域住民へマイ・タイムライン作成を普及促進し、親せき・知人宅や宿泊施設などへの早期の計画的な避難を促し、避難の実効性を確保する必要がある。

2.2 緑とオープンスペースの柔軟な活用

 街路空間や公園・緑地、水辺空間、都市農地、民間空地等の緑とオープンスペースを活用することで、非常時のバッファ機能を確保することができる。

 平時にも、テレワーカーの作業場所やフィットネス等のスペースとして、都市の冗長性を高められる。

■間違いではありません。しかしやや効果が弱いです

2.3 リアルタイムデータの活用

 人流・滞在データを活用し、ミクロな空間の動きを把握することで、過密を避けるように人の動きを誘導することが必要である。また、リアルタイムデータの活用により、危険地域への人口滞留などのリスクを把握し、円滑な避難に役立てることができる。

3.波及効果

 2で挙げた対応策を実行することで、避難所での安全・安心を向上させることができ、都市の魅力を高めて、国際競争力の強化に寄与できると考える。

■波及効果というより、目的そのものに近いようです。これだと明確すぎて「波及」とは言いにくいです。

4.懸念事項とその対策

4.1 地域住民の理解促進

 懸念事項として、多様な避難環境を確保した場合も、関係する地域住民等の理解の不足により、十分な活用が行われないことが考えられる。

■どうして住民の理解不足か?やや唐突な感じです。

 対策として、行政広報誌やホームページ、ワークショップ、SNSなど、多様な情報発信手段を複層的に活用することが考えられる。

4.2 緑とオープンスペースの維持管理促進

 懸念事項として、整備した緑とオープンスペースを維持管理する担い手の不在により、非常時に十分な活用が図れないことが考えられる。

 対策として、まちづくり団体やNPO等を都市再生推進法人やみどり法人として指定することで、担い手を確保できると考える。また、まちなかウォーカブル区域内の都市公園では、都市公園リノベーション協定制度を活用することも有効と考えられる。

4.3 非常時の機能確保のための事前準備

 懸念事項として、リアルタイムデータを活用したシステムの不具合や誤作動、必要電源の途絶等により、企図した機能が確保できないことが考えられる。

 対策として、平時から同じデータを活用したシステムを運用し、非常時の対応をその延長に位置付けることが有効であると考える。また、BCPを作成すると共に、災害情報の更新等に応じて継続的な見直しを行い、非常用発電設備の設置など、具体的に対策しておくことが有効と考えられる。

■防災の心構えでしようか。できたら専門技術、すなわち都市及び地方計画の技術応用を踏まえた提案が欲しいです。こういった専門家の視点に訴える力は練習すれば高まります。

№6 R3年 建設部門、道路の答案について添削致しました。 2021/08/05

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この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。これなら合格の期待が持てます。ただし、道路技術士としての専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。内容的には、大きなテーマを包括的に捉えるのではなく、問題点を断片的に列挙する傾向があるように拝見いたします。できたら「・・新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で・・」に応えるたる技術応用による解決方針を示してください。

 また、長い見出し、箇条書きは印象悪いので不利かもしれません。見出しに2行、課題の選定理由を6行もかけるとはやや冗長です。逆に技術面からの提案を増やすようにしてください。そして比較的困難なく思いつく提案も見受けられますので、できたらもう少し先読みした分析が欲しいです。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分33秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

Ⅰ−2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取り組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害による被害を軽減又は防止するための課題

【課題①】いかに被害対象を減少させるか(防災ソフト対策の観点)

・災害時には避難情報や避難指示が発令されているが、逃げ遅れによる人的被害に加え、建物の倒壊等の被害が発生している。

・気候変動の影響で、災害発生条件が変化している可能性がある。

・防ぎきれない災害は発生すると認識し、被害最小化のために被害対象範囲を減少させる必要がある。

■問題点を断片的に列挙するだけでなく「・・新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で・・」に応えるたる技術応用による解決方針を示してください。

長い見出し、箇条書きは印象悪いので不利かもしれません。

【課題②】いかに関係者全体で災害抑制対策を実施するか(防災ハード対策の観点)

・近年、堤防の破堤や、強風による建物の倒壊、住宅屋根の破損など、想定外の規模の災害による甚大な被害が発生している。

・堤防の破堤を例にすると、河川管理者のみの対策では防ぎきれないため、行政・民間・自治体などの関係者が協力して災害抑制対策を実施する必要がある。

■協力・・確かに要りますが、しかし技術士としてはどう導いていきますか。

【課題③】いかに被害を最小化し早期復旧するか(災害復旧の観点)

・風水害により、防災拠点や医療福祉施設、道路や空港などの重要インフラが広域で被災している。

・人命救助や被災地の復旧支援のためには、社会経済が復旧不可能なダメージを受けないように、被害を最小化し、早期復旧のための事前対策を実施していく必要がある。

2.抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題とその課題に対する解決策

・最も重要と考えられる課題は、課題①いかに被害対象を減少させるか、である。

・対策必要箇所が減少するため、効果的な早期の対策が可能になる。また、被災範囲も減少するため災害発生時の早期復旧が可能になるなど、他の課題解決にも寄与するためである。解決策を以下に示す。

■見出しが2行、課題の選定理由も6行と冗長です。これは答案なので簡潔にいきましょう。

【解決策①】防災情報の充実

・土砂災害警戒区域や浸水想定区域等の危険箇所の認知度向上のため、行政による危険箇所の説明会や地域での防災教育を継続していく。

・土砂災害や強風、高潮、波浪などの災害リスクのある箇所は、危険箇所の看板を設置するなど、日常的に危険を認識できる環境を整備する。

■技術面からの提案を増やすようにしてください。

【解決策②】低リスク箇所への誘導

・土砂災害防止法による建築規制を進めるとともに、土砂災害警戒区域内などの危険箇所内の建物は、所有者による移転や補強を継続的に促していく。

・浸水被害軽減区域では、固定資産税の減免や住宅ローンの優遇など、インセンティブを付与し危険箇所に住まない工夫を行う。

【解決策③】避難体制の強化

・レーダー雨量計Xレインや河川ライブカメラ、危機管理型水位計を用いて高精度の洪水予測を行う。

・それぞれの状況に応じた適切な避難のため、マイ防災マップやマイタイムラインの作成を支援する。

3.解決策を実行しでも新たに生じるリスクとそれへの対策

【新たなリスク】正常性バイアス

・被害対象範囲が減少することで「自分だけは災害に合わないだろう」という正常性バイアスが働き、逃げ遅れによる人的被害が発生する可能性がある。

■わりと普通に思いつくこと。もう少し先読みした分析はありませんか

【対策】逃げなきゃコール

・遠くに住んでいる親族や地域防災リーダーなど、親しい人から災害の緊急性や危険性を伝えることで、正常性バイアスの防止と避難の実行性を向上させる。

4.倫理と社会の持続可能性の観点からの業務遂行要件

技術者倫理の観点

・住民の安心安全を第一に考え、災害危険箇所や災害リスクを説明するときは、メリットやデメリットを客観的事実として、住民目線で分かり易く伝えることが重要である。

社会の持続可能性の観点

・防風林やため池、山地の水源かん養機能の確保など、自然と防災の共存を常に念頭に置いて、将来世代に続く防災まちづくりを検討していくことが重要である。                   以上

Ⅱ−1−4 土工工事において施工プロセスの各段階でICTを全面的に活用する工事をICT施工というが、ICT土工の効果を2つ説明せよ。またICT土工における出来形管理の手法を具体的に2つ挙げ、それぞれ概要を説明せよ。

1.ICT土工の効果  アンダーラインは不要です

【効果①】作業の効率化

・一般的な土工では丁張を設置し重機による掘削を行う。ICT土工の場合は、重機の操作画面に計画勾配等が表示されるため、丁張設置が不要となる。

■丁張は結果であって、それが省力化ではありません。形にとらわれずに本質的違いを述べるように。

・また、大容量通信を用いた場合は、オペレーターの技量次第では複数台の重機を同時に操作可能となり、効率性が格段に向上する。

【効果②】作業員の危険作業の減少

・遠隔地から操作可能となるため、災害現場での二次被害や火山ガス、熱中症などの作業員の危険作業やリスクを減少させることができる。

・作業員が現場に立ち入ることが減るため、重機と作業員の接触による事故発生も抑制できる。

2.ICT土工の出来形管理手法

【手法①】UAVによる出来形測量

・UAVによる3次元測量の実施により、これまで人力で計測していた施工延長や土量が、点群データとして取得され、土工数量等が短時間かつ高精度で算出可能となる。

■UAVは飛行手段であって、測量原理の説明までするように

【手法②】VRデバイスでの竣工検査

・VRデバイスで設計データを表示させることで、視覚的に分かり易い形状確認、検査が可能となる。

・遠隔臨場とした場合は、現地に行くことなく竣工検査実施が可能となり、移動時間が無くなる。

■VRデバイスの検査はともかく、ここはICT土工における出来形管理の手法ですから、それにつなげる結論とするように。

↓末尾の「以上」は不要です。

 以上

Ⅱ−2−1 近年、未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路等の安全確保に関心が高まっており、ある市街地においても生活道路を含めた緊急的交通安全対策が検討されている。この対策の担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査、検討すべき事項とその内容

①道路構造の把握

・子供の移動経路上の道路構造を把握する。具体的には、道路規格、幅員、設計速度、歩道の有無、歩道の幅員などの基本事項に加え、安全対策としての道路標識やガードレールの有無などを把握し、県と運基礎資料とする。

■子供の移動とはどこからどこなのか。学校、塾など焦点を絞る。ゼロベースで調査するのではなく、この分野の経験が問われています。

②交通量の把握

・移動経路の道路の交通量を把握する。特に、事故が発生した場合に被害が大きくなりやすいバスやトラックなどの大型車両は、通園通学時間帯の詳細な交通量データを把握する。

③周辺道路における過去の事故発生データ

・周辺の道路で発生した事故について、発生時間帯や事故内容、発生箇所、事故発生箇所の地形的な特徴等を整理して、今回の検討箇所と比較する。ここであと一文何か記載したが忘れた。

■過去データからフィードバックは〇ですが、しかしねらいまで示すことです。考え方が問われています。

④交通安全が損なわれる原因の把握

・対策を検討するため、交通の安全が損なわれる原因について検討を行う。

■ここは↑書かれていることの意味が不明です。

2.留意すべき点、工夫すべき点を含めた業務実施手順

【手順①】資料収集整理

・道路台帳や道路計画時の設計資料データ、事故資料を収集整理する。

・収集資料を基に、机上で交通危険箇所や現地詳細確認箇所を抽出しておくことに留意する。

・また歩道橋などがある場合は、道路附属物点検結果を収集し健全度を把握するなどの工夫が必要である。

■形式的な見出しではなく、真に必要な対策は何か絞って具体的に挙げるように。「とりあえず、最初は基礎調査・・」とか言うのは△です。

【手順②】現地確認

・対象箇所の現地確認を行い、植生により見通しが悪い箇所や事故後の補修が実施されている箇所など、図面で把握できない情報を取得することに留意する。

・周辺の幼稚園や学校、バス会社や警察など実際の利道路利用者にヒアリングを行う工夫が必要である。

【手順③】対策の検討

・緊急対策としては、速効性の高いライジングボラードやシケイン、ハンブなどの設置を検討することに留意する。

・抜本的な対策も併せて検討し、状況に応じて選択もしくは追加対策できるような工夫を行う。

3.業務を効果的、効率的に進めるための調整方策

周辺住民への説明:周辺準民や保護者の方に対策内容の説明会を実施し、対策実施について了解を得る。

警察:対策実施にあたっての道路使用許可を得る。また状況に応じて通行規制の申請を行う。

3次元データの作成及び説明:上記の説明時には、対策の3次元データを作成し、ステークホルダーに対して分かり易い説明を行うとともに、理解度の向上を図る。

■3次元データを使うほど立体的で複雑な説明とは思えません。住民には3Dより、本質的な安全や技術配慮が有効です。

Ⅲ−2 高速道路ネットワークの進展に伴い、社会経済活動における高速道路の役割の重要性は増しており、持続的な経済成長や国際競争力の強化を図るため、高速道路をより効率的、効果的に活用していくことが重要である。しかし、我が国では、限られた財源の中でネットワークを繋げることを第一に高速道路の整備を進めてきた結果、開通延長の約4割が暫定2車線区間となっており、諸外国にも例を見ない状況にある。

(1)暫定2車線について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.高速道路の暫定2車線についての課題

【課題①】いかに災害時に交通を確保するか(人流・物流の観点)

・近年、気候変動による豪雨の激甚化、広域化により、土砂災害や水災害が頻発している。また、南海トラフ地震など首都直下型の地震発生も懸念されており、災害発生リスクが増大している。

・暫定2車線区間で災害が発生した場合は、ほぼ確実に通行止めとなり、避難や救援の人員や物資の輸送に大きな影響を与える。

・そのため、災害発生時に道路交通を確保する必要がある。

■2車線だからどうするのか。う回路やネットワークなど解決の方針を具体的に提案してください。

【課題②】いかに安全な道路にするか(安全の観点)

・暫定2車線区間はそのほとんどが対面通行となっており、ワイヤーロープ等での対策が実施されているが、事故が発生した場合は正面衝突になり易い。

・後続車両も事故をよけることが困難であり、巻き込まれることが多く、人命被害が甚大になり易い。

・そのため、事故が発生しにくい、発生しても被害を最小化できるような安全な道路にする必要がある。

■具体的に方針まで示す。

【課題③】いかに道路インフラを長寿命化するか(維持管理の観点)

・高度経済成長期に建設された高速道路インフラは、建設後50年を超える老朽化インフラが急増していく。

・暫定2車線では、道路の再構築や道路施設更新時には大規模な通行止めとなり、高速道路ネットワークへの影響が懸念される。

・そのため道路インフラを長寿命化する必要がある。

■この提案は2車線とは直に関係ありません。

2.抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題とその課題に対する解決策

・最も重要と考えられる課題は、課題①いかに災害時に交通を確保するか、である。

・災害時に高速道路を通行可能にできる対策が実施出来れば、同様の方法で事故発生時やインフラ修繕時の交通確保ができ、他の課題解決にも寄与できるためである。解決策を以下に示す。

■前置きが長いです。簡潔に。理由はなくても構いません。

【解決策①】災害に強い国土幹線ネットワークの構築

・高速道路の暫定2車線区間を4車線化する。災害や事故等が発生しやすいリスク箇所は、優先的に整備し、効果の早期発現を図る。

・リダンダンシー確保のため、国道や一般道とのダブルネットワークを確保する。

・防災危険箇所の対策実施で災害リスクを低下させる。

【解決策②】効果的な情報提供

・ETC2.0の通行実績データから、災害時でも通行可能な道路を示す通れるマップを早期に作成公表する。

・通行止めの基準を降雨量から土壌雨量指数に移行し、制度の高い効果的な通行止め情報とする。

【解決策③】局所的な防災減災対策

・高速道路や橋梁の被災や流出防止のため、護岸整備や根固め工の設置、支承補強などを実施する。

・高精度のLP地形図で検討した大規模土砂災害リスク箇所は、事前の被害減災対策を実施する。

・高速道路上で一般道がこ道部となっている箇所は、徒歩移動、避難用の坂路を構築し、異常時の緊急避難路して活用する。

3.解決策を実行しでも生じる新たなリスクとそれへの対策

【新たなリスク】技術革新による高速道路の需要変化

・高速道路の4車線化に費用も時間も要する。

・その間、自動運転社会やコンパクトシティが実現した場合には、例えば移動時間の概念が無くなるなど、交通の考え方が大きく変化する。高速道路に求められる役割や需要が変化し、期待した整備効果が発揮されない可能性がある。

■四車線化が完了した時点でのリスクです。コンパクトシティは別要因であり、ここでは関連付けない方がよいでしょう。

【対策①】デジタルツインとAIによる将来需要予測

・デジタルツイン上で現実世界と連動する交通シミュレーションを実施し、AIで今後の道路ネットワークの需要予測を行い、需要構造の将来予測を行う。

■AIは情報工学。道路技術での対応はありませんか。

【解決策②】PDCAサイクルによる計画の定期点検

随時PDCAサイクルで整備効果を分析し、需要に適合する整備計画に見直すことで、時代に即した効果的な対策を実施していくことが重要である。

■PDCAは技術者の心構えとしてはOK。しかし道路技術の応用はありませんか。

№5 R3年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 2021/08/04

答案の一覧>

この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。一目見てこれなら合格の期待が持てると感じました。試験結果は、必須科目がA、選択科目がB,A(総合A)で、みごと合格されました。。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習はやや不足していたのではないかと想像致します。まじめに白書を暗記して提案するのは初期段階ではOKですが、合格を確かにするには巧みな工夫の提案が欠かせません。

 拝見したところ問題点の記述が多く、一方どう解決するかという技術士としての提案が少ないようです。例えば課題のご提案の「省力化」などは、今日ビジネスマンの常識であり、それをどう実現するか、すなわち「ロボット化」や「システム化」などが真の課題です。こうした課題解決力、課題遂行能力はマンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で高められます。一方、経験知としてのご提案の「地下埋設物」などは、貴重な経験ではありますが、建設技術で解決できない事項であり、現実的にも別途工事であることから、建設・施工としての技術から発散しないように本質的領域で勝負しなければなりません。筆記答案の弱点は、口頭試験に備えて、真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を習得されて、口頭試験でも合格を勝ち取ってください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分33秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強雨、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)    災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)    前門(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)    前門(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)    前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で風水害による被害を防止又は軽減するための課題を以下に示す。

課題1:いかに想定外の災害に対応するか

 近年、わが国では時間雨量50㎜を超える短時間強雨の発生件数が増加し、総雨量1000㎜を以上の雨も記録されている。雨の降り方が激甚化・局地化・集中化している。河川やダム、砂防堰堤は想定雨量を元に計画されているので想定雨量を超える雨には対応できない。技術面の観点から、いかに想定外の災害に対応するかが課題である。

■課題がいずれも難題の説明に終始しているようなので、もう少し解決可能な取り組み方針を示した方がよいでしょう。

課題2:いかに日頃から維持管理するか

 わが国の主要インフラは高度経済成長期に造られた物が多く、老朽化が進んでいる。それらを全て補修し維持管理するには、時間と労力がかかりすぎる。しかし、維持管理業務に時間と労力を費やす財源には限りがある。仕組み面の観点から、いかに日頃から維持管理するかが課題である。

課題3:いかに省力化するか

 少子高齢化社会を迎え、若者の「理科離れ」や建設業の悪いイメージの影響で建設業では働き手の数が減少している。また、熟練工やベテラン技術者の退職で経験者の数も減少している。社会では「働き方改革」として、ひとりひとりの就業時間の短縮を求められている。しかし、近年のような激甚化した風災害にも対応しなければならない。以前よりも少ない人数で若手技術者のみで業務を行う必要がある。人材能力面の観点から、いかに省力化するかが課題である。

■省力化は一応はOKですが、今日社会人の常識でもありますので、技術士としては何らかの技術方針を示すように。

(2)上記に示した課題のうち、課題1の「いかに想定外の災害に対応するか」は喫緊の課題であり、最も重要な課題として解決策を以下に述べる。

解決策1:住民の意識改革

 現状以上にハザードマップを活用し、住民の意識を変えることが重要である。風水害を想定した市町村規模での避難訓練を実施することが効果的である。また、「緊急地震速報アラート」や「Jアラート」を活用して避難経路や避難場所を住民の携帯電話などに直接、通知できるようにすることで正しい情報を周知できると考える。

解決策2:大雨・洪水の対策(流域治水対策)

 近年、水害が頻発していることを考えると「施設の能力には限りがあり、施設では防ぎきれない災害は必ず発生するもの」へと考え方を変える必要がある。水害を未然に防ぐ予防保全対策(堤坊・遊水池整備、河道掘削、侵食・洗堀対策、漏水・浸水対策等)が効果的である。

解決策3:ライフラインの確保

 風水害には企業や地方公共団体などがソフト対策に重点を置き対応する必要がある。防災関係機関・公益事業者等の事業継続計画(BCP)の策定、氾濫水の排除、氾濫水の制御など企業の防災意識の向上が効果的である。また、氾濫しても甚大な被害にならないような「粘り強い施設整備」が重要である。

(3)上記で示した解決策を実行しても生じるリスクと、それへの対応策について以下に示す。

リスク:ハード整備により変化するハザード

 古いハザードマップで安全な場所であっても、災害対策工事によって隣の堤坊を整備したことによって、その場所で被災してしまうことが考えられる。

対応策:リアルタイムなハザードマップを周知

 災害対策工事として堤坊を整備しながらリアルタイムにハザードマップを更新し周知する。さらに、新しいハザードマップを用いて避難訓練を実施すると効果的である。また住民ひとりひとりがマイタイムラインを作成し準備することが重要である。

(4)上記の業務を遂行するに当たり、必要となる要件と留意点を以下に述べる。

要件:エンドユーザーの安全・安心の確保

 建設業は公共性が高いので、常にエンドユーザーの安全・安心を確保し、維持しなければならない。

つまり公益性を高めること。ではそのために「私」は何をしますか。答えの意味を誤解されているようです。公益性を高める独創的な提案・・それが求められている要件です。

留意点:安全・安心の維持

 「造って終わり」では無く、安全に長期間維持できるように留意する。            以上。

■これは施設の持続性です。そうではなくここで求められているのは、社会の持続性とはいわゆるSDGsのことです。

Ⅱ-1-3 

建設工事において使用される足場(つり足場を除く)の倒壊を防止するため、施工計画及び工事現場管理それぞれにおいて留意すべき事項を説明せよ。

施工計画

 建設工事において仮設足場を設置する際には事前に施工図や組立図を作成する。

■あまり当然すぎることは答案に不向きです。技術的な検討を要することに絞った方がよいでしょう。

そこで網やシートを考慮して風荷重を計算し「壁つなぎ」の数を計画する。

ただし、足場を設置する地域の風荷重を計算するように留意する。新設する構造物に関して壁つなぎを設置できない場合は地面からの控えを設置する。また、全ての足場を1度に設置するのではなく、安全な高さで組み立てを中止する。構築が進んで壁つなぎを設置できるようになってから残りの足場を組み立てるようにする。

工事現場管理

 仮設足場を用いて作業する技能者が作業に影響が出るので足場の一部を撤去してしまうことが考えられる。撤去した一部を元に戻さない影響で倒壊につながる危険性がある。そこで、足場の一部を撤去した場合には早期に必ず復旧するように周知・教育する。

■やや好ましくない利用の仕方です。効果的、安全性を高める方法について述べるようにしてください。

 また、仮設足場の使用前には必ず点検してから使用するようにする。大雨・大雪・地震時の後には必ず点検を実施して作業を開始する。点検時には、壁つなぎ、根がらみ、ジャッキベースの状態を注視する。

Ⅱ-2-2 住宅が密集する市街地において鉄道新設建設(高架構造、下図参照)が行われており、このうち延長500mの工区の下部工工事(主に20m間隔で橋脚を設置、1基当たりの基礎と橋脚の合計体積は約310m3、杭の体積は約210m3)を実施することとなった。なお、この工区に接している公道は、工区の両端で交差している市道(計2本)のみである。また、鉄道用地の両側には、工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)が併設して確保されている。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として以下の内容について記述せよ。

(1)効率的な施工をするために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要と思われるものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として工程管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

(1)本工事を効率的な施工とするために検討すべき事項を以下に説明する。

検討事項1:地下埋設物の検討

 本工事の橋脚は場所打ち杭を打設する必要があるので掘削工事や基礎部の土留め工事が考えられる。地盤を掘削するため、埋設物の調査を検討する必要がある。発注者や近隣の道路管理者や用地管理者を調査し埋設物の位置や高さを確認する。

■この↑提案は技術的な話ではないのであまりお勧めできません。

検討事項2:コンクリート工場の出荷可能量と距離

 当該橋脚は非常に多くのコンクリートが必要となるのでコンクリートの出荷可能量が重要である。打設予定位置とコンクリート工場の距離や工場のコンクリート出荷可能量、アジテーター車の台数など円滑にコンクリートを打設できるか検討する。

■この現場ではどうなのか。添付図から考えるように。

検討事項3:家屋調査と周辺環境

 住宅が密集する市街地で工事を行うため工事着手前に周辺の住宅や病院、工場などの破損状態を調査する。また、近接する住居へ騒音や振動の影響が少ないように工事用車両の出入口ゲートの位置を検討する。

(2)本工事において工程管理を行う留意点を以下に述べる。

調査事項

 場内に埋設物がある場合には試掘し位置と高さを確認する。実際に試掘する際には発注者や埋設物管理者に立ち会ってもらい確認してもらうと良い。

計画事項

 本工事は延長約500mの間に20m間隔で橋脚を設置するので、約20基の橋脚の構築が必要と考えられる。橋脚の施工順序を誤れば非常に効率が悪くなってしまうため、施工順序に留意する。

■ではどうすべきですか。具体的手順を示すように。留意点とは、効果的に解決が評価されます。できそうな見込み感が得られないとコンピテンシーが高まりません。下も同じです。

施工時

 検討・計画した内容を元に周辺環境を考慮して手順通りに慎重に作業をすすめる。1回のコンクリート打設量を多くしたいがコンクリート工場の最大出荷量や想定打設終了時間を考慮して打設リフトを設定する。

 工程管理は施工時よりも調査や計画を十分に進めることが重要であると考える。

(3)関係者との調整により決定される施工条件と調整方針及び調整方策について以下に述べる。

発注者との調整

発注者より工期短縮を求められることが考えられる。早期に本工事全域を着手し、早期に完了する方針で調整する。しかし、工事の着手時期や範囲、上部工工事業者への引き渡し時期などが不明確であると難しくなる。

調整方策としてはCIMを用いて3Dモデル化し調整することでお互いの理解が深まり早期に解決することが考えられる。また、近隣住民への説明にも用いることでイメージしやすくスムーズに工事を進めることができると考えられる。         以上。

■実際にこのようなことをご経験されたことはありますか。住民は3Dでわかりやすいからと言って、合意してくれるとは思えません。現実感がないと説得力に欠けます。そのような建設環境問題に発散するのではなく、問題文は「関係者との調整により決定される本工事での施工条件」ですから現場内の本質的な改善、効率化を追求してください。

Ⅲ-1 働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)本工事の工事従事者の週休二日を実現するため、検討すべき課題を以下に示す。

課題1:いかに週休二日と品質確保を両立するか

 近年、社会では「働き方改革」や「生産性向上」を目指す目的で業務を効率化する機械やソフトなどの技術が流通している。それらの機械やソフトは業務を効率化する半面、効率性を追求するあまり、構築する構造物の品質低下につながる危険性がある。技術面の観点から、いかに週休二日と品質確保を両立するかが課題である。

解決困難なトレードオフを示すだけでなく、どう解決するか、Ⅲでは建設施工技術での解決方針を示すようにしてください。

課題2:いかに週休二日と安全確保を両立するか

 少子高齢化社会を迎え、若者の「理科離れ」などの影響で働き手の数が減少している。また、熟練工やベテラン技術者の退職で経験者の数も減少している。慣れない若手技術者だけでは危険箇所に気付きにくい。少ない人数と日数で引き続き社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発を進めていく必要がある。人材能力面の観点から、いかに週休二日と安全確保を両立するかが課題である。

一般的には、解決策の無い、解けない問題です。それをどうするかまで言及するように。

課題3:いかに週休二日と原価低減を両立するか

 業務を効率化するICT建機やUAV、ソフトなどのうち、一般的になったものは低廉化してきたが、依然として高価である。それらを予算に見込まれていない状況で導入すると工事原価に大きな影響を与える。

 また、新しい技術の開発費用を工事原価で、まかなうことは難しい。新技術の開発はリスクが大きいので着手しづらい。制度面の観点から、いかに週休二日と原価低減を両立するかが課題である。

ここも同じ。問題に気づくだけでは不十分です。

(2)上記に示した課題のうち、課題1の「いかに週休二日と品質確保を両立するか」は喫緊の課題であり、最も重要な課題として解決策を以下に述べる。

つまり、工業化とか生産性の向上です

解決策1:コンクリートのプレキャスト化・ユニット化

 本工事は多工種工事であるのでコンクリート構築工事があると考えられる。そこで、コンクリートのプレキャスト化を導入する。プレキャストコンクリートは工場で製作するので天候の影響を受けず品質向上が見込まれる。また、鉄筋の機械式定着や機械継手を採用することで現場作業の省力化が期待できる。しかし、製作・運搬・納入時に破損させないように十分、留意する必要がある。

解決策2:情報化施工

 ICT土工から始まったICT重機を採用する。マシンガイダンスやマシンコントロールを導入し丁張や測量の業務を短縮することができる。さらに重機オペレーターが出来形を考慮しながら作業するので品質向上につながると考えられる。また、情報化施工によってデータに基づく検査が可能となるため、技術者の手間を減らしつつ従来と同等の品質管理を実施できると考える。

解決策3:国土交通プラットフォーム

 地理情報や土質・地質情報の管理は地方自治体や企業、団体などが管理していて、さまざまな様式である。2020年に国土交通省が公開した「国土交通プラットフォーム」を使用することで、施工計画の時点で本工事の地理情報、土質・地質情報を得ることができる。よって、現地での地質調査の回数や時間を短縮することができると考える。また、本工事が完了したあとも工事で知り得た情報や地質データを共有することで今後の業務に活かすことができると考えられる。

(3)上記で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について以下に示す。

懸念事項:若手技術者の技術力の低下

■比較的わかりやすい、一般的事項となっています。ここはもう少し、技術士としての鋭い分析の視点を示した方が良いでしょう。

 ICT建機や業務を効率化することで若手技術者の技術力の低下が考えられる。

対策:資格・教育制度の充実

 新しい資格や教育制度を充実させる。建設業法の改正により「監理技術者補佐」が導入されたが、監理技術者を補佐する1級技士補には、現時点で継続的な研鑽が求められていない。監理技術者の資格と同様に継続研鑽(CPD)制度を導入し技術者を教育することが有効であると考える。 

№4 R3年 総合技術監理・上下水道−下水道の答案について添削致しました。 2021/08/3

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この答案についての講評

 今回の試験ではよく頑張りました。これなら期待が持てるかもしれないと考えましたが、残念ながら結果はB評価でした。総監技術士の専門性をアウトプットするような表現が不足していたのではないかと想像致します。

 今回はDXのテーマでしたが、解答内容はデータ利用についてやや消極的姿勢と拝見いたしました。データの利活用の状況説明が主体となってしまって、総監技術士としての経験力が積極的に発揮されていないように拝見いたします。ご提案のデジタル化とは2D→3Dの変換とか、道路台帳のデジタル化であり、リスク対策の柱のAIも建設ではなく、どちらかというと情報工学の技術です。

 実務でどう総監の5つの管理を当てはめるか。また個別の要素技術を応用は・・・。これらは体験業務をもとに練習するしかありません。建設分野で情報をどう活用するかも同じです。練習しないと説明能力は高まりません。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、早く合格を勝ち取ってください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(16分54秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2

 近年の技術革新により,従来にない形でのデータ収集及びデータ解析が可能となり,様々な方面から事業や業務への利活用が期待されている。実際に,

1)日常の業務における意思決定において,これまで勘や経験に頼っていた部分をより定量的な知見に基づき合理的なものとするための試み,

2)ナレッジマネジメントやデジタル・コミュニケーション・ツールの援用とあわせ,これまで以上にデータの利活用を効果的なものとしていくことの追求,

3)人工知能(AI)やIoT,あるいはビッグデータ分析といったキーワードに関連する先端技術を活用した事業における新たな価値創出の探究

など,幅広いレベルでの利活用が考えられる。しかしその一方で,データの利活用に関しては様々な課題も顕在化してきている。したがって,データを利活用した事業・プロジェクトの推進について,総合技術監理の視点に立って検討を行うことは重要であると考えられる。 そこでここでは,あなたがこれまでに経験した,あるいはよく知っている事業又はプロジェクト(以下「事業・プロジェクト等」という。)を1つ取り上げ,その目的や創出している成果物等を踏まえ,その事業・プロジェクト等にデータを利活用することに関して総合技術監理の視点から以下の(1)〜(3)の問いに答えよ。

 ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う。」立場からの視点をいう。

 なお,書かれた論文を解価する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして倫文全体のまとまりを特に重視する。


(1)本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容と,それに関する現在のデータの利活用の状況について,次の①〜④に沿って示せ。  (問い(1)については,答案用紙2枚以内にまとめよ。) 

① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。 

② この事業・プロジェクト等の目的を記せ。 

③ この事業・プロジェクト等が創出している成果物(製品,構造物,サービス,技術,政策等)を記せ。 

④ この事業・プロジェクト等における,現在のデータの利活用の状況について,以下の項目をすべて含む形で記せ。

 なお,十分に利活用できていない状況を記すことを妨げない。

・どのようなデータを収集・解析しているか・事業・プロジェクト等にどのように活用しているか

(2)この事業・プロジェクト等において,現在既に利用できるデータや技術を用いて,今後導入が可能と思われるデータ利活用の方法を2つ取り上げ,それぞれについて以下の問いに答えよ。なお,2つの方法に対して,利用するデータや技術は共通のものでも,別々のものでも構わない。  (問い(2)については,答案用紙を替えたうえで,まず1つめの方法について1枚以内にまとめ,さらに答案用紙を替えたうえで2つめの方法について1枚以内にまとめよ。) 

① 利活用可能なデータの内容とその利活用の方法について記せ。 

② ①で記述した利活用を進めることで,事業・プロジェクト等にどのような効果をもたらすことが期待できるかを理由とともに記せ。 

③ ①で記述した利活用を進めていくうえで,総合技術監理の視点からどのような課題やリスクがあるかを記せ。ただし,2つの方法それぞれについて,5つの管理分野(経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理)のうちの2つ以上の視点を含むこととし,解答欄にはどの分野の視点であるかを明記すること。

(3)将来におけるこの事業・プロジェクト等(同種の別の事業・プロジェクト等でもよい)において,近い将来(おおむね5〜10年後)に新たに利用できるようになると思われるデータや,実現されると思われる技術を用いて,新たに導入が可能になると思われるデータ利活用の方法を1つ取り上げ,それについて以下の問いに答えよ。

 なお,想定する時期までに事業・プロジェクト等の内容や形態そのものが変化することを踏まえて解答しても構わない。 

 問3は用紙を替えたうえで、答案用紙1枚以内にまとめよ。 

① 利活用可能なデータの内容とその利活用の方法について記せ。 

② ①で記述した利活用を進めることで,事業・プロジェクト等にどのような効果をもたらすことが期待できるかを理由とともに記せ。 

③ ①で記述した利活用を進めていくうえでの課題やリスクを記せ。なお,想定するデータの利用可能性や技術の実現可能性に関する課題やリスクについては対象外とする。

(1)私が取り上げる事業

①事業の名称及び概要

 ●●●●道路は、■■市■区と▲▲市を結ぶ延長14.2kmの有料の自動車専用道路である。建設債務の返済完了予定年度である令和20年度迄を期限とし、◎◎◎道路公社により維持管理事業が実施され、その後、通行料金が無料化され、国に引き渡される予定である。●●●●道路は昭和53年に建設工事に着手され、建設から40年以上経過し、老朽化が進んでいる。また、交通量も毎年順調に増えており、輪荷重による道路施設への影響も大きくなっている。維持管理事業は通行料金を財源とし、道路施設の点検、調査、補修設計、補修工事、交通管制(パトロールカーによる落下物の回収や、交通事故発生時に交通整理を実施)、料金収受(ETC設備や料金収受員による通行料金の徴収)等の業務が発注されている。

■本問の主題であるデータ利用との関連性に絞って述べた方が良いでしょう。

②事業の目的

 維持管理事業により、良質な道路構造物を提供し、交通渋滞の緩和、地域経済の活性化、良好な市街地環境の形成を図ることが目的である。

③事業が創出している成果物

 道路利用者の安全性と快適性を確保した自動車専用道路の供用が成果物である。

④現在のデータの利活用の状況

●●●●道路は土工区間が少なく大半が高架区間と

なっている。道路法に基づき、5年に1回の橋梁点検を実施している。橋梁点検では、部材毎の損傷状況の写真を収集し、損傷程度を解析し、診断結果として健全度を作成している。これらのデータをもとに補修工事が実施され、道路施設を健全に保つことが可能となる。

■データ利用について消極的姿勢と受け取られます。

現在は、建設後初めての補修工事を実施しているが、道路施設の損傷状況は、海岸沿い等の立地条件や交通量の影響を受ける。適切な補修サイクル予測のため、補修工事の履歴を橋梁点検結果(写真と診断結果)とあわせて保存することに留意している。なお、●●●●道路は214橋あり、毎年、40橋程度、コンサルタントにより橋梁点検が実施されている。橋梁点検結果はエクセルベースとなっており、道路台帳と関連付けされておらず、日常的なパトロールへの利活用が難しい状況になっているのが課題である。 

■データの利活用の状況について述べるのが主体であり、問題点・課題ばかりでは物足りないです。残念ながら現状であまりデータが利用されていないようです。言い換えるとこの問題を解くのにふさわしい総監技術士としての経験力が足りないという厳しい評価をされないとも限りません。

(2)導入が可能なデータ利活用の方法

①-1データの内容と利活用の方法(1)

 現在紙ベース(2次元)となっている道路台帳を3次元化し、橋梁点検と関連付けを行う。

■このような2D,3Dのデータ形式の転換ではなくどのように利用するかの視点が必要です

②-1期待できる効果(1)

 道路台帳を3次元化し、橋梁点検と関連付けを行うことにより、日常的なパトロールで損傷個所を把握しやすくなり、道路施設の健全性確保に寄与する(安全管理)。

③-1課題やリスク(1)

道路台帳を3次元化するには、多額のコストを要す

る(経済性管理)。安全管理と経済性管理のトレードオフが生じている。また、3次元データを取り扱いするには、技術者の訓練が必要であり、対応できない者へのメンタルヘルスケアといった対応も必要となる(人的資源管理)。②-1の効果だけでは、経済性のデメリットを解消するのが難しいため、2つめの方法とあわせて、道路台帳の3次元化(情報管理)による効果を検討したい。

①    -2データの内容と利活用の方法(2)

①        -1と同様、道路台帳の3次元化である。

■これではダブリで、2つ答えたことになりません。

②-2期待できる効果(2)

 道路台帳を3次元化することにより、現在、人の目により機械を操作しているが、GPSやセンサーを利用したドローンや重機による橋梁点検・補修工事の無人化が可能となる。初期費用はかかるものの、長期的な人件費が抑制され、経済的なメリットが生じる(経済性管理)。

③-2課題やリスク(2)

3次元データを取り扱うための人材育成、メンタル

ヘルスケアといった課題への対応が必要である。一般的にベテラン職員から若手職員への知の移転が課題となる場合が多いが、データの3次元化についてはその逆となる可能性が高い。組織の長が積極的に関与し、教育訓練に十分な時間と費用を費やす(経済性管理)とともに、対応できない者へは、能力に応じた人材配置を行う等の対応(人的資源管理)が必要である。

■前頁と同じような議論です。

(3)新たに導入が可能なデータ利活用の方法

①データの内容と利活用の方法

将来、橋梁点検を実施する際、現在の橋梁点検結果

を利用し、AIが健全度を自動的に判定する。

                       ■AIが提案の主体となってはいけません

②期待できる効果

現在は橋梁点検で健全度を判定する際、橋梁点検マ

ニュアルを参照しながら、人の目で確認作業を行っており、相当な時間と労力を費やしている。AIによる自動判定により、かなり省力化されることとなる(経済性管理)。

③課題やリスク

AIによる自動判定はまだ開発途上の技術であり、今

後、橋梁点検結果のディープランニング等が必要である。また、健全度を算定する際の過程がブラックボックス化されることにより、職員の技術力向上につながりにくいという課題がある。このため、橋梁点検結果を抜き取り検査する等、技術力維持の対応が必要である(人的資源管理)。今後、少子高齢化が進行し、働き方が多様になるため、データの利活用による生産力向上が必要になるが、経済性管理のみならず、人的資源管理の観点からもクリアすべき課題は多い。

■AIの問題点・課題ですが、この業績についての議論がありません。これだと説明不足になってしまいます。

№3 R3年 上下水道部門 上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。 2021/08/3

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この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がA、選択科目がA,B(総合B)で、無事合格と評価されました。よく勉強されて専門的知識はお持ちだと思います。一方で技術士問題の意味がややお分かりではないところもあるように拝見いたします。出題趣旨が正確にわかれば正解率はもっと上がります。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 今回初回受験とのことで、論文の焦点が定まらずお困りになったのではないでしょうか。特にⅡ-2の問いのように答えの無い問題で発散してしまったようです。応用力を高める練習はされたでしょうか。白書の暗記だけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。技術士問題は、実現性の高いプロの答えでないと点が取れません。そのためには経験知を発揮する必要があります。

 本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分59秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 

  日本の将来人口は、減少していくと予想されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況下で執行体制の省力化を図りながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1)     上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)     抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)     解決策に共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)     業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)上下水道事業に共通する基盤強化に関する課題

上下水道事業を安定して継続していくためには、基盤強化を着実に進めていくことが必須であるが、以下の課題がある。

1)  老朽化設備の更新と財源の不足

高度経済成長期に大幅に整備が進んだ上下水道施設は、近年更新需要のピークを迎えている。一方、人口の減少に伴う料金収入の減少により、上下水道事業の財政収支は悪化傾向にあり、更新に必要な財源の確保が困難となっている。老朽化した設備は、事故リスクや災害時の被害拡大のリスクが高く、安定した上下水道事業の継続を妨げる要因となる。

■現状の説明に終始しているばかりではなく、今後どうしたら良いかという方向性を示す提案をしてください。

2)  熟練職員の持つ技術の継承

近年、上下水道事業体の熟練職員の大量退職時期を迎えている。一方、経営のスリム化や人口の減少により、新規職員の採用者数は減少傾向にあり、今後もその傾向が続くものと予想されている。そのため、上下水事業の安定稼働を支える熟練職員の技術ノウハウをいかに少数の若手職員に継承していくかということが課題となっている。

■ここは良く検討されました。正解です。

3)  自然災害対策

近年、大型台風やゲリラ豪雨をはじめとする異常気象や大規模地震といった自然災害が頻発するようになってきている。これらの自然災害は安定した上下水道事業の継続を妨げる要因となるため、施設の耐震化や浸水対策等の自然災害対策が求められている。

■こちらも、だからどうするのかという、技術的対処、課題を示すように。

(2)最も重要と考える課題とその解決策

 私は、全問で述べた3つの課題のうち、1)施設の老朽化と財源の不足が最も重要な課題と考える。以下に解決策を示す。 

■この↑ような冗長な前置きは不要です

①  アセットマネジメントの実施

上下水道施設の施設台帳や日々の点検記録を基に、設備ごとの重要度や老朽度を評価し、更新の優先順位を設定する。この結果に加えて地域ごとの財政状況や将来にわたる財政収支を考慮することにより、中長期的に効率的かつ効果的な更新計画を立てる。

②  施設の統廃合とダウンサイジング

老朽化施設の更新にあたり、施設の統廃合とダウンサイジングを検討する。これにより、更新事業費の抑制が図れるほか、維持管理費を含めたライフサイクルコストの削減が期待できる。将来の水需要の減少に合わせた適正規模に施設更新を行っていくことが重要である。

③  上下水道料金の値上げと国庫補助金の活

■これら↓は役所の仕事であって技術士の務めとは言いにくいです。

設の更新に必要な財源を確保するために、上下水道料金の値上げや国庫補助金の活用を検討する。上下水道料金の値上げについては、需要家は敏感であるため、事業内容や財政収支の詳細についてわかりやすく説明し、納得してもらうことが重要である。また、料金については事業体間の公平性や、将来世代との公平性が確保できるように留意する。

(3)解決策に共通して生じうるリスクとそれへの対応

全問で述べた3つの解決策に共通して生じうるリスクとして、ハードの整備や関係者との各種調整に時間や労力がかかることがあげられる。

■困難↑はないとは言えませんが、リスクというほどのことでしょうか。

対策としては、事業の広域化や官民連携、IT技術の活用によって事業の効率化を試みる。事業の広域化では、施設、人材、情報等の経営基盤の共有や有効活用により、運営の効率化が期待できる。官民連携では、民間企業の技術や経営に関するノウハウを有効活用することにより、運営の効率化を図る。IT技術の活用では、各種情報の一元管理や共有化のほか、業務の標準化やマニュアル整備により、効率化を図る。これらは、詳細内容について様々な手法が存在するため、事業体ごとの技術や財源の現状に応じて適切な方法を選択する。

■いろいろ雑多で焦点が絞りこめていません

(4)業務遂行において必要な要件

技術者は、公衆の安全と健康、利益の優先を常に念頭に置き、経営状況が厳しい中でも安定した事業の継続が可能となるように、自らの持つ技術を駆使する。また、将来にわたる社会の課題やニーズの変化を敏感にとらえて、対応していくことにより、社会の持続可能性を確保する。これらを実現するために、最新の技術を習得できるように継続研鑽するとともに、PDCAサイクルにより、自己の業務手順を常に改善し続ける意識を持つ。 

■ここはやや意味が違います。業績論文ではないのでこのような「私はこう考える」というような心構えは求めおらず、せっかく書かれても得点につながりません。問2の解決策についての独創的な提案、工夫、改善策を求めています。 

Ⅱ-1-1 

活性炭処理の種類とそれぞれの特徴と処理上の留意点について述べよ。

1.  粉状活性炭処理の特徴と留意点

粉状活性炭は、粉径数十µm程度の活性炭で、異臭味物質やトリハロメタン前駆物質、油、農薬等を吸着除去するために使用される。必要に応じて、塩素注入と組み合わせて導入される。比較的簡易に導入可能であるため、一時的、季節的な処理が必要な場合に採用されやすい。原水に直接注入される。以下に留意点を示す。

■「粉状」と「粒状」が焦点なのでそれに由来することに集中して述べると良いでしょう。下のような一般的な用法は求めていません。

原水の年間を通しての水質の変化を把握しておき、水質の急変があっても対応できるように、十分な量の活性炭を備蓄しておく。

・ドライ式の場合は、防火対策等、取扱に留意し、ウェット式の場合には溶解設備が必要となる。

2.  粒状活性炭処理の特徴と留意点

粒状活性炭設備は、敷き詰めた活性炭上に処理水を通すことにより、異臭味物質や溶解性物質の吸着除去を行う。固定床方式と流動床方式があり、必要に応じてオゾン処理と合わせて導入される。以下に留意点を示す。

■漠然と用法上の留意点を求めているわけではなく、粒状の弱点克服につながることだけ言うように。

活性炭の吸着効果を十分に得るために、処理水の流速は早くなりすぎないように監視する。処理水の最適な流速は、事前の処理実験によって決定しておく。

・活性炭の処理可能量の限界を超えた場合には、洗浄による更生や、活性炭の入替を実施する。

・点検や補修、洗浄の実施に備えて、活性炭設備は2系列以上設置する。  

Ⅱ-2-2 

河川表流水を水源とし、急速ろ過方式を採用する浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨の影響により、年に数回の頻度で原水が極めて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)    調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)    業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)    業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)     調査、検討すべき内容とその項目

■ゲリラ豪雨による高濁度原水の原因、事故はご存じですか。この問題は経験的知識が問われています。

下記のマーカーより、高濁度の原理について無対策のように読み取れます。

高濁度原水への対策として、はじめに、ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生した場合の原水の量的変化や時間的変化について調査する。次に、対象となる浄水場について、以下の情報を調査および把握することにより、対応手順について検討を実施する。

・薬品注入の方式と最大注入可能量および濁度計の測定可能範囲

・沈殿スラッジの最大処理可能量

・ろ過とその洗浄方式および洗浄頻度

・着水井、浄水池、配水池の貯留可能量

・非常時対応の人員および体制

(2)業務を進める手順と留意点、工夫を要する点

①ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生するまで

ゲリラ豪雨や局地的大雨が発生しやすい時期は、地域ごとに異なる傾向を持つため、それを念頭に置き、天気予報の短時間予報や週間予報を参照し、事前に予測する。また、職員間で情報共有する体制を整えておく。

②豪雨、大雨が発生してから濁度が上昇するまで

浄水場の周辺において、ゲリラ豪雨や局地的大雨が予想される場合や、実際発生した場合は、原水濁度の上昇に備えて以下の事前準備を実施しておく。

・薬品注入量の増加および濁度計の監視強化

・脱水機をはじめとする排水処理の先行運転

・ろ過池の洗浄実施 

■浄水所内の自らの普段の対応だけでは難しいでしょう。

・着水井、浄水池、配水池への貯留強化

原水濁度は急激に上昇する場合があるため、できる限り早期に実施することが望ましい。同一河川を水源とする事業体間で情報共有する体制を整えておくことが望ましい。

③原水の濁度が上昇した場合

 原水濁度の上昇が始まった場合、浄水処理の強化や濁度系の監視強化を行う。濁度の上昇が浄水場の処理可能量を超えた場合には、ピークカットにより取水停止をして、着水井、浄水池、配水池に貯留した水で給水を継続する。配水池が枯渇した場合に備えて、関係機関への連絡を行う。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための調整方策

 高濁度原水発生時でも一定の機能で給水を継続するために、BCPを策定しておく。具体的には、連絡体制や指揮命令系統、職員の行動手順や行動指針について明確化しておく。職員間で共有化しやすいように電子ベースでマニュアル化しておくことが望ましい。BCPの教育や周知が不十分である場合、特に混乱した状況下においては、対策が機能しない可能性が高い。そのため、日常から定期的に教育や訓練を実施し、実践的な対応力を養成しておく必要がある。また、訓練によって計画との乖離が明らかになった場合は、BCPを改善するようなPDCAサイクルの運用体制を構築しておくことも重要である。

■BCPとかPDCAとか留意点を求めているのではなく、「調整」について述べるようにすると良いでしょう。

Ⅲ-1 

中小規模の水道事業体の多くは、人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等に直面しており、技術的・財政的に様々な課題を抱えている。さらに、市町村合併等が行われた地域の水道事業者においては、浄水場等の水道施設が点在し、運転監視装置の設備機器構成や仕様が異なることにより、運転管理や保全管理が複雑になっている場合があり、適切な維持管理を難しくしている。上記の状況を踏まえ、水道分野の技術者として以下の問いに答えよ。   

(1)    水道施設の監視制御システムを整備するにあたり、技術者として多面的な観点から検討すべき課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえでその内容を示せ。

(2)    抽出した課題から最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の対応策を示せ。

(3)    対応策によって新たに生じるリスクと解決策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)     水道施設の監視制御システム整備にあたる課題

水道施設は、市民生活を守るために常時安定稼働することが最大の使命である。そのために、監視制御システムを整備し、日々の施設の運転管理や維持管理を適切に実施することが重要であるが、以下の課題がある。

1)  財源の不足

近年、人口減少に伴う料金収入の減少により、水道事業の財政は厳しい状況にある。固定費の割合が大きい水道事業では、料金収入の減少が財政悪化に直結し、今後もその傾向が続くと予想されている。中小規模事業体を中心に独立採算制の維持も厳しい状況にあり、監視制御システム整備のための財源確保が困難となっている。 

■問題点の指摘だけでなく、解決の方向性を示す。それが技術士の課題です。

予算取りは役所の仕事であって技術士の務めではありません。

2)  人材の確保

近年、団塊の世代を中心とした職員の大量退職時期を迎えている。一方、経営のスリム化や人口減少により、職員の新規採用者数は減少傾向にある。水道事業の健全な運営は、事業体職員による日々の施設の適切な維持管理によって成り立っており、そのための人材確保が課題となっている。  

■どうやってするのか、具体的方針まで示すようにしてください。

3)  運転管理、維持管理の容易性

水道事業を安定して稼働させるためには、取水から給水に至るまでの各過程の機器を適切に運転管理する必要がある。そのために、監視制御システムを整備し、一括管理することが有効であるが、誤操作等によって社会的に大きな影響を生じさせる恐れもある。これを防止するために、運転管理や維持管理が容易な仕様にシステムを整備することが重要である。

■情報化、IOTによる改善の方針を示すようにしてください。

(2)     最も重要と考える課題と対応策

私は、全問で述べた3つの課題のうち、2)人材の不足が最も重要と考える。以下に対応策を示す。

対応策①:監視制御システムの広域化

事業体毎に独立して整備された監視制御システムを通信回線等で接続し、監視制御の広域化を図る。これにより、少人数で集中的に広範囲の水道施設の監視制御が可能となり、運転管理や維持管理の効率が向上するほか、熟練の技術者が持つ技術の水平展開も期待できる。また、拠点毎に異なるシステムの仕様を統一することができる。

対応策②:IT技術の活用

水道施設の監視制御システムにIT技術を導入し、業務の効率化を図る。運転管理や維持管理において人間の技術や判断に依存する部分を減らすことにより、省人化することができる。具体的には以下の手法があげられる。

・浄水場内における各機器の制御の自動化

・プラントデータ解析による薬品注入量や機器の運転方法の最適化

・センサ技術による漏水の早期発見

・AI解析による水質変化の将来予測

対応策③:官民連携の導入

監視制御システムの整備に官民連携を導入することで、民間の持つ技術やノウハウの有効活用を図る。必要に応じて、監視制御システムの整備から、運転管理まで委託することも検討する。民間は独自の技術を持つ企業が多いため、施設の運転管理や維持管理の一層の効率化が期待できる。官側はモニタリング体制を構築することが重要である。

■役所の組織管理手法であって技術士の務めではありません。技術志向とは逆行しているように感じます。あまり触れるべきではないでしょう。

(3)     対応策によって新たに生じるリスクと解決策

全問で述べた3つの対応策によって、少人数で効率的な水道施設の運転管理や維持管理が可能となる。しかし、少人数となることで監視制御システムに異常が発生した時に対応する体制の構築が困難となることが新たなリスクとなる。以下に解決策を示す。

■これらリスク、解決策は一応間違いではありませんが、あまり難しい話ではありません。技術士の対応としてはもっと水道工学の技術的背景のあるいろいろなことがあると思います。そちらを書かれると良かったです。

解決策①:監視制御システムのバックアップ機能強化

監視制御システムの一部が異常になった場合でも、稼働が継続するように、サーバーやコントローラー等の監視機器を二重化し、バックアップ機能を強化する。また、停電時にもシステムへの電源供給を継続するために、UPSを整備しておく。

解決策②:システム異常時の対応マニュアルの作成

監視制御システム異常発生時の対応手順や連絡体制等についてマニュアル化しておき、適切に対応できるようにする。対応する人材が不足することが予想される場合は他の事業体と応援協定を結んでおく。  以上

№2 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/07/31

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この答案についての講評

試験結果は、必須科目がB、選択科目がA,Aと評価され、残念ながら不合格となっています専門的知識はお持ちだと思いますが、出題者の要求に対してダイレクトに答える練習が不足しているように拝見いたします。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 これまで2回受験されたとのことですが、応用力を高める練習はされたてこられたでしょうか。文章の直しだけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。技術士問題は、ヒントがなく、出題趣旨が難解です。出題者の意図が解釈できないと実力を発揮できません。

本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分35秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題 

Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害の対策についての課題

(1)既存インフラの適切なメンテナンス

我が国の橋梁、河川施設等のインフラは老朽化により保有性能が低下している。これにより耐災害性が低下している。先日の静岡県東部の豪雨でも沼津市の県道に架かる橋が洪水により沈下した。

よって、ストック効果により事前防災を図る観点から、既存インフラを適切にメンテナンスすることが課題である。

■「老朽化すると性能低下するから、低下しないように効果により事前防災を図る観点から正しくメンテする・・」これでは問題の趣旨そのものです。または、基本、心構えです。それができないから、この問いが出題されたのです。そうした問題を越えてどう改善するか具体的方針を示すように。

かし、市町村では、技術者、予算不足でメンテナンスサイクルを構築できていない。 

■後付けで問題を付加すると、本題がぼやけてしまうノイズとなります

(2)復旧活動の高度化による災害レジリエンスの確保

平成30年7月豪雨では、土砂災害による道路の通行止めが生じ、救護活動、復旧活動に支障をきたした。これは、被災状況の把握を職員によるパトロールや復旧計画を2次元図面で行っているからである。

よって、災害レジリエンスを確保する観点から、復旧活動を高度化することが課題である。しかし、迅速に状況把握できるドローン、3次元モデルの活用が進んでいない。

■復旧活動の高度化なのか、災害レジリエンスか、あるいは2D・3Dなのか方針がはっきりしません。問題文の「観点を明記したうえで、課題の内容を・・」ですから焦点を明確に言うように

(3)流域関係者の一体となった治水対策

令和元年東日本台風で計画断面を確保していた千曲川の堤防が決壊した。河川区域内のハード整備だけでは洪水を防ぐのは限界がある。

よって、個別の防災インフラ整備では対応できない観点から、流域関係者が一体となった治水対策を進めることが課題である。しかし、分野横断的な治水対策が進んでいない。

■自治体の方針に関する問題ではないのです。組織管理では△です

2.重要な課題と解決策

■理由は求められていません。

(1)重要な課題とその理由

 私は、課題(3)「流域関係者の一体となった治水対策」が最も重要な課題と考える。

 その理由は、課題(1)、(2)に比べ解決した場合の防災、減災効果が大きいと考えるからである。これまでの点や線の防災対策に比べ、面的な対策であるため、対策の効果が大きい。

(2)解決方針と具体策(3つ)

 課題(3)の解決方針は、河川区域、集水域、氾濫域を一つの流域と捉え、関係者が協力し流域治水を進め、多重防御することである。

 具体策①:河川上流ダムを有効活用する。例えば、提体のかさ上げや事前放流を行い、洪水調節容量を増やし、洪水流量のピーク時間を遅らせ、避難時間を確保する。

具体策②:河川区域では堤防を粘り強い構造に補強して決壊時間を遅らせる。また、霞堤、田んぼダムを整備し、洪水や内水を引き込む。

 具体策③:氾濫域や土砂災害警戒区域などの災害リスクの高い土地の利用を制限し、被害対象を少なくする。これらの場所を居住誘導区域から除外する。

 これらを効率的に行うために、国土交通データプラットフォームのデジタルツインを活用する。集約した地形、気象、人流データを基に災害をシミュレーションし、ピンポイントで堤防補強などを行う。また、避難場所が遠く、避難が困難なエリアは洪水避難タワーを建設する。

3.解決策に共通して生じうるリスクとその対策

 解決策は、部分的に被災リスクを受容するため、適切な避難行動を取らない場合、命を落すリスクがある。特に、高齢者等の災害弱者に配慮する必要がある。

■避難行動のまずさに由来するリスクであって、2の提案内容が原因ではありません。

 その対策として、高精度の避難情報の発信と公助を提案する。災害リスクラインの情報や6時間先の水位予測を発信する。また、これらの情報を周辺住民が災害弱者へ電話で伝える。併せて、地域の防災訓練でマイタイムラインを作成し、5段階の警戒レベルに応じた行動を決めておく。

4.業務遂行に必要となる要件

 流域治水では一部の住民、企業に不利益が生じることがある。例えば、事前放流すれば発電用の利水が減少することや土地の利用規制をしたら土地の価値が下がる可能性がある。公衆の安全を優先し、これらのリスクを隠ぺいせず、説明し理解を得るように努める。

■  ここの内容はよろしいようです。得点できています。

 治水対策としてハード整備を行う場合は、地球環境の保全の観点から、積極的にグリーンインフラを導入する。例えば、貯水機能のある公園や湿地帯を整備し、生物の生育場所を創出するように努める。

Ⅱ-1-3 技術の進歩に伴い、構造材料の高強度化が普及しつつある。鉄筋又はコンクリートいずれかの高強度材料について特徴的な性質を説明し、設計や施工における留意点について述べよ。

 高強度コンクリート(60N/mm2)について述べる。

1.特徴的な性質

フレッシュ時は、流動性、粘性が高く、水和熱が大きい。粉体量が多くなるため、水和熱が大きくなる。また、粘性が高いため、圧送負荷、練り混ぜ時の負荷が大きい。

硬化時は、緻密であるため劣化因子(水、酸素等)が浸入しづらく、耐久性が高い。一方で、空隙が少ないため、火災を受けた場合、爆裂の影響を受けやすい。

高強度であるため、PC部材に使用した場合、高いプレストレスをかけることができ、薄肉化、長スパン化することができる。これにより、基礎の負荷を軽減できる。 

2.設計・施工時の留意点

計時は、弾性変形以降に脆性的な破壊形態となることに留意する。 

■このような特性があるなら1で触れておくように。留意するとは具体的に何をどうしますか。その独創的な工夫がコンピテンシーとなります。

高強度であるため、弾性域内で保持できる応力は大きいが、応力超過後の破壊は脆性的である。その対策として、塑性化によるエネルギー吸収を期待する部材に使用する場合は、鋼繊維などの短繊維を混合(2%程度)し、曲げタフネスを向上させる。

施工時は、水セメント比が小さく、水和が活性化され、ブリージングが少ないため、プラスチック乾燥ひび割れと自己収縮ひび割れに留意する。この対策として、湿潤養生を十分行うとともに膨張材を添加しひび割れを防ぐ。

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1. 対象とする既設構造物:緊急輸送路に架かる河口付近の河川を跨ぐ2径間橋梁の単柱式RC橋脚の耐震補強。(上部工は補強対象外)

 老朽化の状況:下部工、上部工ともに0.3mm程度のひび割れが部分的に生じている。一部、鉄筋が露出。

 ■「鉄筋の露出」と上↑にあるのに、下記ではその対処がかかれていません。一応書かれた方がよいでしょう。

1.調査、検討すべき事項

(1)机上調査、現地調査

■基礎的調査、初期のスクリーニング調査は特別ねらいが見えないので挙げる必要はありません。老朽化したRC橋脚の耐震補強では何が支配因子なのか。近年の基準改正のチェックポイントは何か、が問われています。

設計に当たり諸元を把握するため、使用材料の種類、強度、配筋、構造(寸法、基礎形式)、地盤条件等を確認する。現地調査では、竣工図との差異、損傷状態(位置、寸法等)、重機、資材の搬入路等を調査する。併せて、損傷原因を定量的に把握するため、物理試験(塩化物イオン量、中性化深さ)をう。

(2)目標とする性能、性能評価方法の検討

 要求性能を、残供用年数、防災上の重要度等を踏まえ決定する。緊急輸送路の橋であるため、レベル2地震動に対し、限界状態2を確保する。耐震診断手法を、固有振動モード、支承条件、塑性化を考慮する部材等を踏まえ決定する。

(3)補強工法の検討(老朽化対策含む)

 要求性能を満足する補強工法を、ライフサイクルコスト、施工性、河川の制約条件(通水流量、河積阻害等)を踏まえ決定する。ひび割れ等に対しては、劣化因子(塩分)の除去工法、補修工法を検討する。

2.業務を進める手順

手順(1)補強設計

■このような↑形式的な手順の見出しではなく、本質的な設計趣旨、すなわちせん断→曲げ破壊型に修正することを示すようにしてください。このほかクラック対策も示す必要あります。

既設橋脚の耐震性能を評価し、要求性能を満足する補強構造を決定する。損傷に対し補修工法(断面修復工等)を設計する。補強時の留意点は、破壊形態を曲げ破壊型とすることである。工夫として、靭性補強を優先し、塑性化によるエネルギー吸収を考慮し、補強費用を抑える。

手順(2)施工計画

 上部工補修のための吊足場、橋脚補強のための仮締め切り工等の仮設工を計画し、工程計画を立案する。留意点は、河川内工事は非出水期しかできないことである。工期を短縮する工夫として、補強鉄筋(RC巻立て工)の継手を機械式とする。

■大事なことですが、これは施工計画の領域なので、簡潔に済ませるように。

手順(3)補強工事

 所要の出来形、品質を管理の上、補強工事を行う。留意点は、補強鉄筋と既設鉄筋との干渉による工事の手戻りである。工夫として、竣工図との差異を事前調査(RCレーダー)で十分把握する。

■一般的な工事管理の事項です。前提とした橋梁基礎の技術的提案はありませんか。

3.関係者との調整方策

 設計、工事の手戻りを防止するために設計初期段階で河川協議を行い、設計の制約条件(施工可能時期、通水断面等)となる事項を確認し、設計へ反映する。

■この↑関係者とはだれなのですか。これは設計作業の留意点ではありませんか?

 老朽化対策として、再劣化防止策(表面被覆工等)を行う場合、その必要性を発注者に説明し、理解を得る。劣化曲線図などの視覚的な資料を使い説明する。

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.予防保全型メンテナンスの推進に当たっての課題

(1)点検・状態把握の高度化

点検は現地での近接目視による状態把握が基本である。しかし、この手法はコスト、人的資本が多くかかる。市町村は、点検費用が高く予防保全型管理のための修繕費を確保できていない。

よって、点検を効率化する観点から、状態把握の手法を高度化することが課題である。しかし、ドローン等で効率的に状態を把握する技術が普及していない。

■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

(2)維持管理記録の高度化

点検調書は現場で作成する損傷図、写真を基に手作業で作成しており時間がかかる。また、修繕工事は2次元の図面で行っており、理解に時間がかかるとともに、間違いが生じやすい。

よって、調書作成や修繕工事の理解に要する時間を削減する観点から、維持管理記録を高度化することが課題である。しかし、自動点検調書作成システムや3次元モデルの導入が進んでいない。

(3)診断の高度化

健全度評価、補修時期の診断等は技術者が技術的知見に基づき定性的に行っているため、バラツキが生じやすい。なお、今後、高齢化で大量の熟練技術者が退職するため、属人的な診断では限界がある。

よって、判断を効率化するため、診断を高度化することが課題である。しかし、診断技術の開発に資する点検、修繕記録などのビッグデータは各管理者で保有しており集約、オープン化できておらず、診断技術の開発、現場導入が進んでいない。

2.重要な課題と解決策

(1)重要な課題とその理由

■課題の選定理由は求められていません。

 私は、課題(3)「診断技術の高度化」が最も重要な課題と考える。 

 その理由は、課題(1)、(2)に比べ、解決した場合の持続可能なメンテナンスサイクルの実現への波及効果が大きいと考えるからである。修繕は診断結果に基づき行っているため、診断の精度が劣ると、適切な時期に修繕が行えず、劣化の進行により修繕費が増加するとともに、安全性が低下する

(2)解決方針と具体策

 課題(3)の解決方針は、点検、修繕記録などのビッグデータを集約、オープン化し、診断技術の開発を促進させ、現場導入を進めることである。

 具体策①:ビッグデータを基にAI劣化診断技術を開発し現場で活用する。AI技術は、部材やコンクリート強度に応じた診断を行えるようにする。

■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

具体策②:既設コンクリート構造物にセンサー(LPWA等)を設置し、ひずみ、固有振動数等のデータを取得し、AIで修繕時期を判断する。

 具体策③:取得した応答値や部材の残断面から残存強度、劣化曲線を算出する。その劣化曲線から今後の劣化進行を予測する。これを基に定量的な管理水準を設定する。

具体策④:健全度、残存強度、劣化予測を踏まえ、AI技術で修繕の優先順位を自動で決定する。

ここで留意すべき点はデジタル人材の育成を行うことである。建設業はデジタルシフトが遅れており、デジタル技術を使用できる人材が少ない。そこで、国が主導しデジタル教育の研修会、IT人材との交流会などを行い、デジタル人材を育成する。

3.解決策に共通して生じうるリスクとその対策

 診断をAIに頼ることで、技術者が技術的検証をする機会が減り技術力が低下し、緊急時の対応力が低下するリスクがある。これにより、構造物の安全性が低下するリスクがある。また、AI解析技術の誤診断による既存インフラの安全性低下リスクがある。例えば、修繕すべき構造物が放置される可能性がある。

 ■ここはとてもよく述べられていますので◎です。

その対策として、OFF-JTによる教育、ベテラン技術者とチームを組んだ業務遂行、AI技術の誤診断チェック体制の構築を提案する。現場作業はデジタル技術を使う若手とベテラン技術者がチームを組んで行う。デジタル技術は、最新が常に変化するため、その妥当性を検証できる体制を整備しておく。デジタル技術は発展途上であるため、定期的な見直し、バージョンアップなどの作業が必要となる。

№1 R3年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。 2021/07/27

答案の一覧>

この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がB、選択科目がA,Aで残念なことに不合格と評価されました。これまで複数回受験されてこられて、今回の試験では健闘されたと感じております。これなら合格の期待が持てるかもしれないと感じましたが、必須科目での減点が響いたようです。

 残念ながらこれまで、指導機関での正式な練習をされてこられなかったせいもあり、問いに対して的確に応えられていない箇所がありました。技術士問題は、ヒントがなく、出題趣旨が難解です。出題者の意図をあいまい程度にしかご理解されていないようなので、実力が十分発揮できずに苦戦されてきた可能性があります。本講座で練習されると、こうした試験のねらいが明解になりますので、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できに違いありません。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(22分53秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

問題文 日本の将来人口は、減少していくと予想されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、こんごも安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図りながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1)上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題のないようを示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)業務遂行において、必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1) 課題

①執行体制の省力化

観点:ヒト

■人、物、金は考える1つの便法であって、このようなことが技術士試験の目的とは考えにくいです。強調してもあまり意味は薄いでしょう。それより省力化の必要性、課題について本質的内容を訴えるようにしてください。

内容:人口減少により職員数の減少が見込まれるので

   上下水道の安全性や強靭性を確保しながら、省

   人力化する必要がある。水道工学面の課題がありません。

②老朽化への対応

観点:モノ

内容:多くの施設が老朽化しており、水質ニーズの高まりを踏まえた更新と施設の改善を行う必要がある。また、特定の時期に更新需要が突出して高まることのないよう平準化を考えて対応する必要がある。

■老朽化への対応とはつまり何をすることかイメージする必要があります。老朽化が悪いことは明らかです。しかし老朽化をどう解消するかに対して、水道工学の技術応用を示す必要があります。平準化も同じです。平準化を考えただけでは実現は無理で、それを水道業務の中で実現する過程に技術応用があります

③経営基盤の強化

観点:カネ

内容:事業の継続性を確保するため、料金の適正化や

事業の効率化、省エネにより経営基盤を強化する必要がある。

(2) 最も重要な課題と解決策

課題:老朽化への対応

理由:上下水道施設が老朽化により故障してしまうと大きな社会的影響があるため。

解決策①アセットマネジメント

■内容的にはOKですが、しかしアセットマネジメントの一般論のようです。水道の場合どうなのか、掘り下げた話が欲しいです。

 各施設の情報について集約・整理を行い、更新の優先順位付けを行う。更新後の仕様を複数検討し、イニシャルコスト、ランニングコストを算出し、廃止までのライフサイクルコストにより比較検討を行う。中長期的に更新と維持管理を併せて計画し、全体のライフサイクルコストの縮減を図る。

解決策②官民連携

■ここは正解です。

 民間資金を活用し、建設・維持管理を一括発注するPFI(BTO、BOO等)や、設計・建設・運転を一括発注するDBO方式等の民間に裁量のある発注方式を行うことで、民間の創意工夫とノウハウを活かした効率的な更新を行う。

解決策③広域化

 広域化後に施設の更新と合わせて統廃合を行う。これにより広域的な地域全体での最適な施設配置を目指す。

解決策④ICTの活用

 各種設備にセンサーを取り付けIOT化して劣化予測を行い、更新計画に反映する。また、監視制御の更新時にはAI技術を取り入れ省人力化や無人化を図る。

リスク①予測を超えた需要変動

 新型感染症の流行により、人々の生活様式の変化や経済活動の変化がある。そのため、従来の需要予測を超えた変動が起きる可能性がある。

■解決策に共通して生じうる新たなリスクとは、問2の解決策が原因となって発生するリスクを求めています。アセットマネジメントしたからと言って新型感染症が流行することはありません。また「予測を超えた需要変動」とは、予測に問題があったのか、需要が社会的要因で変化した可能性があります。いずれも提案とは別要因となります。

対応策①

 人口動態等の各指標やPIの変化に注意し、適宜需要予測を改訂していく。

リスク②更新工事中の災害対応

 更新工事では設備の停止を伴うことがあり、災害対応能力の低下が懸念される。

対応策②

 工事中は代替設備や仮設設備を用意して、施設能力を低下しないようにする。また、近隣事業体との連携により災害対応能力を向上させておく。

(4) 倫理等

・公衆の利益、健康、安全を最優先として業務にあたる。

・官民連携を進めるにあたっては説明責任を果たす。

・需要者に対して誠実に対応する。

・環境負荷の低い材料や設備を選定する。

・他の職員と連携して技術伝承に努める。

・地域の仕事であってもSDGs等の国際的な動向を意識する。

・最新技術等の情報を取り入れ継続研鑽を行う。

■問4で求めているのは、このような心構え、行動方針ではありません。

問2の業務、すなわちアセマネ、官民連携、広域化するのに、ただふつうにするのではなく、技術士らしく技術者倫理と社会持続可能性まで高めてするには、仕事のプラスαとして何をしますか、という意味です。

 本講座ではこのような細かい意味、対処法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

活性炭処理の種類とそれぞれの特徴と処理上の留意点について述べよ。

(1) 活性炭処理の種類

①粉末活性炭注入

 粉末活性炭を着水井等に注入し、臭気物質等を吸着させ、沈殿池で沈殿させることにより処理する。ドライ炭とウエット炭注入方式がある。

②粒状活性炭ろ過

 粒状活性炭のろ層を通過させることで水処理する。前段に塩素を注入しなければろ層に微生物が付着し、有機物の処理ができる。オゾン処理の後段に組み合わせることがある。

■根拠や提案に対する技術的な背景がやや薄いようなので、もう少し具体的に補足してください。

(2) 特徴と留意点

①粉末活性炭注入

 必要な時にのみ使用できるので、注入期間が長くなければ比較的低コストとなる。粉末活性炭を注入すると脱水ケーキが黒くなるので、脱水ケーキを園芸用等として販売する際には留意する

■「販売する際に留意する」とはつまり何することか、具体的に表すように。 湿気対策は〇です。

ドライ炭はサイロに貯蔵するが、湿気により固まりやすい。エアブラスターや加振装置を設置する。

②粒状活性炭

 常時処理となるので高コストとなりやすい。長く使うと目詰まりするので、定期的に洗浄する。石炭系とヤシガラ系があり変更する際には特性の違いに留意する

「特性の違いに留意する」とはつまり何することか? 具体的に処置法を表現してください。

また、ろ材入替え後には、微粉炭が二次側に流出することがあるので試運転・試験を慎重に行う。生物活性炭はろ材入替後に微生物が付くまで日数を要す。

Ⅱ−2−2

   問題文 河川表流水を水源とし、急速ろ過方式を採用する浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨の影響により、年に数回の頻度で原水がきわめて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者としてすすめるにあたり、以下の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべきじこうとその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整法案について述べよ。

(1) 調査、検討すべき事項

①調査

過去の事例や他の地域の事例を調査する。近年、気象の変動が激しくなってきているので、できるだけ最新情報を集める。

■ケーススタディでは経験、知識を求めているので、「わからないのでゼロから調べて対処します」では信頼に足る答えになりません。経験力をもとに対処方法を示してください。

・施設能力の余裕度を確認し、高濁対応時にボトルネックとなる部分を洗い出す。

・水源を調査し、豪雨時に高濁の要因となり得る場所を把握しておく。

■これを初めから調べておいて、単刀直入に応えるようにしてください。

②検討

・運転方針について検討する。

・ハード対策について検討する。

・高濁を早めに察知する方法を検討する。

(2) 手順と留意点

■手順としては一般的で、期待される応えにはなっていないようです。留意点としては改善の提案をしてください。

この内容を読んでも、現状改善につながる具体的方策は得られません。

①情報収集 

上記調査により、対応すべき濁度と持続時間を決定する。 

②組織的対応方針 

大きな視点での対応方針を決め、各部署で足並みを揃えて対応できるようにする。その際には、各浄水場の実情を加味し、現実とかけ離れた方針とならないよう留意する。

■見出しの「情報収集、組織的対応方針、ハード対策、ソフト対策」はいずれも形式的な作業区分であり、河川表流水水源の急速ろ過浄水場のゲリラ豪雨対策がイメージできません。マネジメント論ではなく、水道問題の対処法を具体的に表すように。

③ハード対策

ボトルネックとなる設備の改善や設備の増強を行う。

大がかりな工事になることがあるので、アセットマネジメントや長期的な施設整備計画との整合を図る。

・薬品注入設備:凝集剤やアルカリ剤の注入量や貯槽容量の増強

・浄水池:高濁のピークカットのため取水停止ができるよう、容量を増加する。

・処理施設:傾斜板の追加により処理能力を増強する。また、汚泥処理の能力を上げるため、脱水機や天日乾燥床を増設する。

・水源:他の系統の河川からの取水や地下水を代替水源とする。

④ソフト対策

運転マニュアルを改訂し、対応能力の向上を図る。

(3) 調整方策

・組織内 

 役割分担と責任を明確にする。情報の共有を確実に行う

■コンサルタントの実務上の「調整」の意味が読み取れません。

本講座では3つの要件を求めています。①調整とは、過剰から減らして、それを移して、不足を解消して最適化している、②プロマネの指導力がある、③専門分野の技術応用がある。この3つを表現しましょう。

他の組織 

 河川の水質状況を迅速に共有できる体制をとる。上水の相互融通を検討する。 

・需要者等 

 本取り組みについて説明責任を果たす

Ⅲ−1

問題文 中小規模の水道事業者の多くは、人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等に直面しており、技術的・財政的に様々な課題を抱えている。

 さらに、市町村合併等が行われた地域の水道事業者においては、浄水場などの水道施設が点在し、運転監視装置の設備機器厚生や仕様が異なることにより、運転管理や保全管理が複雑になっている場合があり、適切な維持管理を難しくしている。

(1)水道施設の監視制御システムを整備するに当たり、技術者として多面的な観点から検討すべき課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえでその内容を示せ。

(2)抽出したかだいから最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の対応策を示せ。

(3)対応策によってあらたに生じるリスクと解決策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1) 課題

効率化と省人力化(持続の観点)

■ここはOKです。

 人口減少に伴い水需要の減少、人材不足が見込まれるため、監視制御システムの整備により事業の効率化と省人力化を行い、経営基盤を強化することが課題である。

災害対応能力の向上(強靭の観点)

 人口減少下でも災害対応能力を確保するため、監視制御システムの整備により、複数の浄水場間の相互融通を迅速に行えるようにする必要がある。

■現実的にこの↑ようなことはあると思いますが、しかし残念ながらこの問題での焦点ではありません。別な観点が必要かと思います。

水質の確保(安全の観点)

 水質変動時にベテラン職員のカンによって薬品注入量を変更する事例があるが、将来的に立ち行かなくなる。技術の言語化と標準化を行い、監視制御システムによる自動計算を行う必要がある。

■何故水質、安全に着目ですか・・・やや唐突な感じです。論理的に、問題点からひも解いて課題を挙げるようにしてください。

(2) 最も重要な課題と対応策

課題:効率化と省人力化(持続の観点)

選定理由:水道は国民の生活に欠かせないものであり、各地域の水道事業を持続させることは社会の持続可能性の確保に寄与するため。

■こうした理由はわかりやすい当然のことですし、問題文で求められてはいませんので簡潔に述べてください。

対応策①中央集中化

 監視制御システムを整備し、中央の拠点から複数の施設を制御できるようにする。これにより中央以外の施設を無人化する。通信の速さと確実性に留意して整備を行う。

対応策②標準化による維持管理性の向上

市町村合併や広域化した事業体では類似システムを複数運用し維持管理性が低下していることがある。水道情報活用システムの仕様に監視制御システムの仕様を合わせることで、プラットフォーム化とインターフェースの標準化を行い、維持管理性を高める。また、事務系システムも連携し、事務の効率化への波及効果が期待できる。

対応策③AI技術の活用

 薬品注入量と水質状況をディープラーニングさせ、AIが適正注入量を算出し、薬品コストを低減する。

水需要の変動をAIにディープラーニングさせ、AIに水需要の予測に基づいて処理や水圧の適正化を行わせて運転コストを下げる。

対応策④IOT技術の活用

 老朽化設備に各種センサーを取り付け、データーをシステムに取り込むことで故障に早く気付いたり、予見したりできるようにする。また、スマートメーター

で漏水箇所を早く特定できるようにする。

(3) 新たなリスクと対応策

リスク①ハッキング 

 監視制御システムを高度なものにすると、ハッキングを受けた時の影響範囲が広くなる。

■今はDXの時代ですから、この話は何にでも当てはまることなので、やや安直です。水道事業、問2で書いたご提案に特有なリスクはありませんか。

対応策

・サイバーセキュリティの強化

 OSは常に最新のものとし、ファイヤウォールやアンチウイルスソフトが有効であるか確認する。サーバー室の入退室管理やUSBメモリーの管理を確実に行う。

・システムの冗長化

 分散制御装置や現場盤で運転ができるようにしておく。職員に対する訓練を実施する。

リスク②システムのブラックボックス化

 監視制御システムが高度なものになると仕組みが把握できなくなり、故障時の対応や技術伝承に支障をきたす。

■この辺りは正解です。

対応

・発注時に内容を開示するよう求めて、仕組みの見える化を行う。

・各種パラメーターを変更できる仕様とし、パラメーターの最適化を職員が行うことで技術力を維持する。

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